【完結】小さな村の娘に生まれ変わった私は、また王子に愛されて幸せに暮らします。みんな私の事を小娘扱いするけど、実はお姫様だったのよ!

風見鳥

文字の大きさ
上 下
17 / 40
第2章 内政

15話

しおりを挟む
パトレシア視点

 ちょうど時刻も夕暮れで仕事終わりの人たちで溢れていた。確かここは……私がまだクレア妃だった頃に訪れたお店ね。ここで初めてイアンと出会って3千本のお酒を注文したわね。

「マスターいつものラム酒を頼むよ」

 イアンはカウンター席に座ると、ちょび髭を生やした店主に声をかけた。

「私も同じのでお願いします!」

 イアンは驚いた表情で私を見て警告を入れる。  

「王妃、流石に女性にこの酒は……」

「心配いりません!」

 私は警告を無視して出されたラム酒を飲み干すと、追加を頼んだ。これには周りでみていた人たちも目を丸くする。

「凄い飲みっぷりだな~ 僕も追加を頼むよ!」

 商談の細かい打合せをするはずだったのに、気がついたら飲み比べが始まっていた。一杯、また一杯と飲み干すたびに歓声が上がり謎の盛り上がりが起きる。そしてついに決着がついた。

「ダメだ~ 僕の負けだ、その体でどうして平気なんだよ~」

 イアンは顔を真っ赤にしてカウンターにうつ伏せる。あれ? もう終わり?

「よければこの薬をどうぞ、二日酔いを軽減させる事が出来ますよ」

「これはご親切にどうも」

 イアンは手を震わせながら薬を受け取ると、水と共に飲み干した。そして寝落ちしてしまった。

「マスターさん、お金は置いておきますね」

「毎度あり」

「ちなみに、この人はどうずればいいですか?」

「そのうち仲間が迎えに来るはずさ。貴方はそろそろ家に戻りなさい。それと年頃の女性がこんな所に来るのはおよしなさい」

「すみません、気をつけます」

 外に出るとすっかり真夜中になっていた。まずい、門限をとっくに過ぎてる!

 急いで王宮に戻ったが、やはり門は閉まっていた。その門の前で黒い人影が体を埋めて座っている。あれはまさか……

「パトレシア、こんな夜遅くまで何をしていたんだい?」

 黒い人影の正体はなんとマルクスだった。

「えっと……酒屋に行ってまして……」

「なっ、なんだって⁉︎ こんな夜遅くに行ったら危ないじゃないか!」

 マルクスは仰天して声を荒げる。ごもっとも過ぎて何も言い返せない……

「ごめんなさい。本当はもっと早く帰る予定だったのですが……」

「何か変な事はされなかったかい?」

「大丈夫でしたよ。イアンさんと行ったので」

「イアン⁉︎ 男と2人で出かけたのかい?」

「えっと……商談の続きを話したかったので……」

「………そうか……とりあえず、もう遅いから部屋に戻ろう」

 マルクスは明らかに拗ねた様子で頬を膨らませると、私を寝室に招いた。そして少し強引にベットに押し倒すと、長めのキスをした。

「んんっ‼︎」

 それは口を開いた濃密なものだった。まるで雷に撃たれたような衝撃が全身に駆け巡り、体が震える。

「心配したんだよ……パトレシア……」

 そのまま流れるようにドレスを脱がされて両手首を掴まれた。窓から差し込む月明かりに照らされて露出した肌がマルクスの目にはっきりと映る。

「ねぇ……ちょっと痛い……」

「ごめん、他の人にパトレシアが取られるのが怖くて……」

「大丈夫ですよ。私はもう何処にもいきません。ずっと側にいますよ」

 クレア妃の頃はマルクスを置いて先に死んでしまった。でも今回は違う! これからはずっと彼の側にいよう。彼と第二の人生を共に歩んでいきたい。途中で死ぬような真似は絶対にしない!

「マルクス……好きよ」

 私は背中に腕を回して抱きつくと、大切な贈り物を渡すようにそっとキスを交わした。普段はされる側だったけど、いざする側になると少し恥ずかしい……

 でも、気持ちが伝わったのか、マルクスの瞳から一筋の涙が溢れて頬を濡らした。

 そして、割れ物を扱うような繊細な手つきで私の頬を撫でると、覆い被さるように抱きついてきた。

「もう君を離さない……」

 2人の体がこれ以上ないくらい密着する。少し重たいけど、守られているような気がして心地よい。私は肩の力を抜くと、マルクスの全てを受け入れた。

「愛してるよ……パトレシア」 

 溶けてしまいそうな幸せな一時に浸っていると、マルクスが私の耳元で愛を囁いてきた。おかしいな……お酒には全然酔わなかったのに……

「……………私もよ……」

 その夜はマルクスに散々酔わされてしまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

処理中です...