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第1章 再会

9話

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「あれ……ここは?」

 気がつくとそこは薄暗い建物の中……ではなくてフカフカのベットの上だった。ここはマルクスの寝室かしら? そうだ……確かウィリアムと戦ってそれで怪我をして……

「よかった……気がついたんだね」

 隣にはマルクスがいて私の手を握ってくれていた。

「心配したんだよ、パトレシア」

「……………ごめんなさい」

 私はぺこりと頭を下げると、小さな声で謝った。マルクスを支えると言っておきながら、また先に逝ってしまうところだった。

「もうこんな無茶な事はやめてくれ、命がどれだけあっても持たないよ……」

 マルクスは隣に腰を下ろすと、傷口に手を添えて優しく撫でてくれた。不思議な事にズキズキとした鋭い痛みが治っていく。

「こんな事をしたらクレアに怒られるかな?」

 マルクスはそっと離れようとしたが、私は手を握りしめて引き留めた。

「心配いりません。クレア妃なら許してくれます。私が言うんですから間違いありません!」

「そうか……不思議だな……君が言うと本当にそんな気がしてくる」

 先に距離を詰めたのはどちらだろうか? 私たちは互いに手を取り合うと、無言で抱きしめ合った。その温もりを……その香りを全身で感じながら、二人の体が深く一つに重なっていく。

「………愛してるよ、パトレシア……」

 マルクスは愛しむような目で私を見つめると、そっとキスをした。熱い何かが体に注がれて、徐々に甘くなるキスに頭がポォーっとしてくる。

 そして、空白の時間を埋めるように何度も愛し合った。静かな寝室に互いの吐息が響いて不思議なリズムを刻む。

 心臓は破裂しそうなほど脈打ち、呼吸も乱れるが、深い愛情に包まれて幸せな気持ちで満たされていく。

「ねぇ……君は一体、何者なんだい?」

 マルクスが顔を近づけて私の耳元でそっと囁く。

「えっと……」

 私は少し考える素振りを見せると、イタズラっぽい笑みを浮かべて答えた。

「実は……クレア妃の生まれ変わりなの」

「えっ、何だって?」

「みんな私の事を小娘扱いするけど、実はお姫様だったのよ!」

 マルクスは一瞬ポカーンっとした表情をしたが、すぐに頬を綻ばせて高らかに笑い声をあげた。

「はっはっはっ! そうか、そうだったのか……通りでクレアに似ているわけだ!」

 よほど面白い冗談だと思ったのか、マルクスはお腹を抑え、涙を流しながら笑い続ける。

「もう一度僕の所に会いに来てくれてありがとう……クレア……」

 その表情は昔を思い出すような……遠くを見つめる目をしていた。

 そして、軽く咳払いをすると、真剣な顔で私を見つめる。

「これからもよろしくね、パトレシア……」
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