【完結】小さな村の娘に生まれ変わった私は、また王子に愛されて幸せに暮らします。みんな私の事を小娘扱いするけど、実はお姫様だったのよ!

風見鳥

文字の大きさ
上 下
3 / 40
第1章 再会

1話

しおりを挟む


 生産職なみゆきちだけど、実はちょー強い。針と糸を使わせたら右に出るものはいないのだ。ほら、某仕事人にも糸使いいるじゃん? あんな感じー。暗殺者向きなんだよねー。

 打って変わってぼく。ちょー弱い。付加術で自分を強化したって、元がアレだからそんなに強くならない。だから役に立つため、他人のサポート特化できたえてきた。ので、ぼく自身はちょー弱い。大事なことなので二回言いました。

 で、先生。ちょー強いけど詠唱とか溜めがあるので完全に後衛。いわゆる火力魔術師だねー。回復もできるけどやっぱ溜めが――以下略。しかも賢者って本当は大規模戦闘に適してる職業らしいよ。本当はこんな室内で戦う人じゃないのだ。……どうして攻城戦パーティーに戦略兵器を混ぜたし、アルスター。

 というわけで、このメンツで戦闘に突入しちゃうと、必然的にみゆきちが前衛になっちゃう。


 ――何でぼくがこんな思考をしているかというと、ぶっちゃけこのメンツで戦闘に突入しちゃったからだ。

 転移の罠が発動してとっさに手を繋げたのはぼくとみゆきちと先生だけだったみたいで、気付くと中庭。そこには貴族の集団が、お待ちしておりましたとばかりに襲いかかって来たんだよね。
 フツー前口上とかあるでしょ? 今回、全くそんなのナシ。余裕なさすぎ!

「樹ー、バフ超大盛りマシマシでー」
「はいよー。『攻アップ』に『防アップ』に『すばやさアップ』入りましたー」

 ちなみに『かしこさアップ』はかけない。バーサーカーには賢さなど必要ないのだ。本能で殺るのみ。……あ、これ言ったらみゆきちにコロコロされてしまうのでナイショで。

 次々とみゆきちの糸で拘束されていく貴族っぽい人達。ちょろい。……と、思いきや。

「装飾師などに遅れをとるな! こちらの方が人数で勝っているのだから囲い込め!!」

 ヒゲ面でひときわ豪華な衣装のオジさんが、不穏な内容をわめき散らしている。むむむっ、これはさすがのみゆきちも多勢に無勢かなー?

「せんせーには『詠唱速度アップ』盛っておくんで、よろですー」
「はーい。それじゃあ行きますよ! 『|吹雪よ(テンペスタ・ディ・ネーヴェ)』!」

 先生の魔術で、足元から凍りついて行く貴族っぽい人達。頭だけは凍ってないところをみると、加減はしてるんだろうけど流石は戦略兵器級。こんな城の中庭なんかあっという間に氷漬け。めっちゃ寒いです。ぶるぶる。

「みゆきちー、何か羽織るもの作ってよ」
「材料ないから無理」

 素気無く断られちゃった。ぼくらアイテムボックス持ちじゃないからねぇ。シータちゃんとか、四次元ポケット持ってる友瀬ちゃんが羨ましい。

「……ですよねー」

 逆に言えば、材料あったら作ってくれるって事だ。みゆきちってば優しー。

「ええっと……先生、張り切りすぎちゃったかしら……?」
「いえいえ。丁度いい感じでっす」
「頭だけ凍らせてないとか、先生器用すぎるよ!」

 ぼくとみゆきちの言葉に照れる先生。くるりと貴族たちの方に向き直って、口を開いた。

「――では、あなた方にお聞きしたいのですが……アルスター王は一体何を企んでいるのですか?」

 先生の言葉で初めて『ああ、あの王さま何か企んでるんだー?』と気付いたぼく。まあ、城の入り口が意味ありげに開けっ放しだったし、入り口でわざわざ待ってたしねー。挙句に転移の罠で分断。他に何かあってもおかしくないかあ。

「しょ、正直に答えるとでも……?」

 寒さに震えつつも気丈に振る舞う貴族の人。おう、これが貴族の誇りってやつですね。プライド高いだけともいうけど。でも氷漬けにされてる状態でこんな態度とられてもなぁ……。

「……まあ良いでしょう。しらみつぶしに城を探索すれば良いだけの話ですし」

 早々に追及を諦める先生。先生はあれだね、RPGとかだとダンジョンの宝箱全部開けてからボスに挑むタイプ。

「じゃあ、行きましょっか先生! 樹も早くいくわよー」

 みゆきちは元気いっぱいだなあ。ぼくは寒くて動きたくないや。できれば暖かい布団がほしい。あ、でもここから離れたら暖かくなるかー。早よ行こう。

 ……それにしても最近の女の人ってホント強いよねー。守る必要とか全然ない。むしろ守ってくださいって感じ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

処理中です...