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第5章 神殿のダンジョン

29話

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「ねえ、次はゲーセンに行こ!」

「ゲーセン? 何をする場所ですか?」

「えっと……見た方が早いよ」

 葵はセリナの手を繋ぐと、人混みをかき分けながらゲームセンターに向かった。セリナは少し戸惑いながらも、興味津々な顔で周囲を見渡していた。

 ゲーム機が並ぶカラフルな空間に、子供から大人まで楽しそうに遊ぶ人々の姿があった。音楽や笑い声が響き渡り、ライトが眩しいほど輝いている。

「すごく賑やかな場所ですね」

「うん、そうでしょ、まずはシューティングゲームに挑戦してみようか」

 葵はセリナをゲーム機に案内した。スクリーンに映った敵を撃つシンプルなルールにセリナはすぐに夢中になった。

「セリナちゃん! 右から来てるよ!」

「はい! 任せて下さい!」

 ダンジョン攻略の時に培った連携力を発揮して、葵とセリナはノーダメージでゲームを進めていく。


〈2人とも楽しそうでいいな~〉
〈セリナちゃんゲームの才能もあるね!〉
〈勇者がシューティングゲームをするとかなんか面白いねw〉
〈すごいな……このゲーム苦手なんだよね〉
〈以前これで散々100円玉を持ってかれたんだよな(泣〉


 視聴者の応援も受けつつ、2人は敵を倒していき、ついにボスの部屋までたどり着いた。

「セリナちゃん! ボスだよ! 本気でいくよ!」

「はい!」

 2人の目は真剣そのものだった。まるで本物の魔物を倒す時のような集中力で、敵の弱点を攻めていく。

「セリナちゃん! 今だよ!」

「はい!」

 セリナは銃を構えてボスの心臓を狙った。渾身の一撃がボスに大ダメージを与え、なんと一度もコンティニューせずにクリアーしてしまった。

「すごい、すごい! ノーミスでクリアーだよ!」

「葵さんのフォローがあったからですよ」

 2人は銃をしまうとハイタッチをした。コメント欄でも葵とセリナのコンビネーションを讃える意見で溢れる。

「次は何をしたい?」

「そうですね……あれが気になります」

 セリナが指を刺した先には、UFOキャッチャーがずらりと並んでいた。色とりどりのぬいぐるみやお菓子がガラスケースの中に積まれている。

「これで景品を取るんだよ」

 葵はコインを入れてクレーンを操作してみせた。しかし、思うようにはいかず、ぬいぐるみは取れなかった。

「難しそうですね……でも、やってみたいです!」

 セリナは真剣な目でクレーンを見つめて慎重に動かした。クレーンはゆっくりと下がっていき、うさぎのぬいぐるみの耳を掴み上げた。そのまま引きずるように穴の方に向かっていく。

「やった! 取れましたよ!」

「すごいじゃん、セリナちゃん! やったね!」

「ありがとうございます!」

 セリナは子供のようにパァッと明るい笑みを浮かべてうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。

「じゃあ次はエアーホッケーで勝負をしよ!」

「エアーホッケー……それはどんなゲームですか?」

「簡単だよ。円盤を飛ばして相手のゴールに入れるだけ。速いから反射神経が重要なんだよ」

 葵はセリナを案内して、向かい合うように両側に立った。ゲームをスタートさせると、ピンク色のパックが滑らかに飛び出してきた。

「いきます!」

 セリナは真剣な顔でパックを打ち返す。葵も笑みを浮かべながらも手加減せずに鋭い反射神経で返した。パックは目にも止まらぬ速さで台の上を滑り、カンカンと爽快な音を立てた。

「上手いねセリナちゃん! でも負けないよ!」

 葵は攻撃の手を緩めず、左右に素早くパックを送り込む。しかしセリナも必死にくらいついて反撃を繰り出した。2人の対決は白熱し、コメント欄も大いに盛り上がる。


〈2人とも頑張れ~!〉
〈2人のまじバトル面白い!〉
〈速すぎて目で追いつかない!〉
〈よくワンピースとドレスでそこまで動けるね〉
〈楽しそうでいいな~〉
〈もう完全にカップルにしか見えない(笑〉


「ここで決めます!」

 セリナはタイミングを見計らい、強烈な一撃を放った。パックは一直線に飛んでいき、葵のゴールに見事入った。ガシャッという音が響き、セリナは驚きと喜びが混じった表情を見せた。

「やった……勝ちました!」

 葵は目を丸くして笑顔で拍手を送った。

「すごい! 初めてなのに本当に強かったよ!」

「ありがとうございます! 葵さんのおかげで楽しくできました!」

 セリナは照れくさそうに頬を赤めながらも、ニコッと笑みを浮かべた。

「ねえ、なんだかお腹が空いたよね。カフェにでも行かない?」

「いいですね! 賛成です!」

 葵とセリナはゲーセンを後にすると、近くのカフェに向かうことにした。
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