4 / 30
第1章 恋人未満編
4 大人になりたい男の子 ロイ
しおりを挟む
小鳥のさえずりを聴きながら、朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸いこみ、魔法雑貨屋『天使のはしご』のプレートをオープンにします。
さあ、今日も一日頑張りましょう――
「雑貨屋のお姉さん、おはようございます。お店の中を見てもいいですか?」
「はい。どうぞ、ゆっくり見てください」
朝一番でお店に来たのは、日本なら中学生くらいの男の子でした。
お目当ての物が見つからないのか、一時間はお店の中を眺めています。
時々ため息をこぼしていますね……。お困りでしょうか?
まずは一息ついてほしいので、お茶を一杯淹れました。
「どうぞお茶でも飲んで、お休みください」
「あ、ありがとうございます」
「なにかお探し物ですか?」
私がたずねると、戸惑いがちに男の子が教えてくれました。
「早く大人になる道具を探していました……」
「どうして早く大人になりたいのですか?」
「家は貧乏なんです。早くちゃんとした仕事に就いて、お金を稼いで両親を助けたくて……」
私は悩みました。この世にそんな魔道具はありません。
私が願えば、男の子の願いは叶うのかもしれませんし、もしかするとお金さえも……。が、そういう問題ではないでしょう。
しばし、考えを巡らせます。
「一度これを試してみてはいかがでしょうか?」
私は才能チェック魔紙を戸棚から取り出し、男の子にお渡ししました。安価ですし、男の子にとって、きっとこの先の指針になると思います。
結果は十分程度で分かるので、ハードルも低く、物は試しとやり易いのでは?
そのことを説明すると、大きな明るい声で返事をしてくれました。
「やってみたいです!」
使い方をご説明し、浮き出す文字で質問してくる魔紙に、男の子は次々と答えを書き込んで行きます。
さあ、後は結果を待つだけです。
「お疲れ様でした。お茶よりも、ジュースがいいですか?」
「はい。ジュースがいいです。お気遣いありがとうございます」
照れくさそうに男の子が答えたので、今度は林檎ジュースをお出ししました。
とても礼儀正しく、しっかりしたお子さんです。それでもまだジュースを好む年頃ですよね。配慮が足りませんでした。
その時、『天使のはしご』では珍しく、お客さんの来訪が重なりました。
「雑貨屋? 開いているな」
またまた隊長さんです。
「今は朝の見まわり途中なんだが――おや? 先客がいたか?」
「おはようございます、隊長さん」
「二人でゆっくりして、なにをしていたんだ?」
「この方の才能を調べていたところです」
「結果を待つ間、ごちそうになっていました」
「お、才能チェック魔紙か。どれ?」
隊長さんが魔紙を見ると、結果が浮き出てきました。
「「「騎士!!」」」
男の子本人もですが、隊長さんも私も驚きました。他にもいろいろ才能はありましたが、騎士の才能が抜きん出ていたのです。
「いくつになる?」
「今年十四になります」
「そうか、騎士試験を受けてみないか? 受験料は高くない。ここで道具を買うよりも安いぞ?」
「そうなんですか?」
隊長さん……、商売人を目の前に、なんてことを言うのでしょう。
「まずは見習からだが、それでも給料が出る」
「は、はい! 受けさせてください! ロイと申します!」
「分かった。願書を『天使のはしご』に持ってこよう」
「よろしくお願いします!」
とんとん拍子に話がまとまりました。今回、私の出番はないようです。だから普通にお祈りをします。
私は手を合わせて願いました――
『ロイ君の、騎士試験合格を願っています』
それから変わったことがあります。
なぜか隊長さんが、一週間置きに『天使のはしご』に顔を出すようになったのです。
最初は願書を届けに来ただけかと思っていましたが、翌週にはロイ君が試験を無事受けたこと、そのまた翌週には一次選考を通過したことを報せてくれました。
「それでな、このまま行けばロイは来月から見習い騎士になれそうだ。おい? ちゃんと聞いているのか?」
「え、はい。聞いております」
こんな調子で入り浸るのですが、隊長さんはお暇なのでしょうか? こちらが心配になってくるのですが……。
これもまた、なにかに巻き込まれる前兆なのでしょうか……?
ロイ君はご実家から騎士団に通い、見習い騎士としての道を歩み始めました。
「セルマさん! 今日、初めてお給料をいただいたんです!」
「よかったです。ロイ君が毎日訓練を頑張ったからですね」
お給料をもらって、家計を助けられることが嬉しいみたいです。
予定はまったくありませんが、こんな息子さんがいてくれたら、母親冥利に尽きるでしょう。
「覚えることがいっぱいで大変ですが、とてもやりがいがあって毎日楽しいです! それで――」
ロイ君は初めてのお給料で、家族みんなへのプレゼントを買いたいそうです。
「じいちゃんとばあちゃんには腰痛用のサポーターと、母ちゃんには激落ち洗剤一揃え、弟たちには模造剣かな……」
ポリポリと襟足を掻きながら、独り言を言っています。これが気を張っていない時のロイ君なのですね。
私がその姿を微笑ましく感じていると、どうやら全員分のプレゼントが決まったみたいです。
「とにかくなんでもいいから、早く大人になって稼ぎたいと思っていました。でも、セルマさんから才能チェック魔紙を勧められて、今はよかったと思っています」
「そうでしたか」
「隊長にしごかれヘトヘトになると、早く追い越したいって思うんです。貧乏から抜け出したいとばかり考えていましたが、初めて自分がこうなりたいって目標を見つけることができました」
「夢ができたんですね? 目標は隊長さんですか?」
「はい! セルマさんと出会えたおかげです!」
「そんな、大袈裟ですよ」
「ロイ、ずいぶんと楽しそうだな?」
「たっ、隊長!! あっ、用事を思い出しました! 失礼します!」
「ありがとうございました。気をつけてお帰りください」
初めてのお給料日ですから、いろいろとご予定があるのでしょう。孝行息子のロイ君が帰り、またまた隊長さんがお店に入って来ました。
「いらっしゃいませ」
「あ、ああ。今日は給料日だからな、なにか便利そうな物を買いに来た」
う~ん。便利そうな物ですか……。なにをお勧めしたらいいのか、見当がつきません。隊長さんがどんなお方で、どのようなライフスタイルを送っているのか知らないと難しいですね……。
少し話を聞いてみようかと考えていると、お店の外から大きな声が聞こえてきました。
「隊長ー? どこですかー? 早く奢ってくださいよー。腹ペコでーす」
「下っぱの俺たちにごちそうしてくれるって、昨日言ってたじゃないですかー」
「「……」」
「お約束がありましたか?」
「給料日だから、部下にたかられているだけだ……」
このまま街中を捜索されても大変ですよね。私は隊長さんからお話を聞くことをあきらめました。
「隊長さんは慕われているのですね。お店にはまた今度、ゆっくりいらしてください」
「あ、ああ。また来る」
そこまでガッカリされなくてもいいと思うのですが、肩を落として隊長さんは帰っていきました。
さて、今日はそろそろ店仕舞いとしましょう。
自分の才能はなにかと思い悩み迷う時期も、後から考えると掛け替えのない素敵な時間です。
描いた夢をひたすら追いかける生き方も素敵です。
ロイ君のように家族のために生き、その中で生き甲斐や目標を見つけて生きるのも、これまた素敵な生き方ですね。
「いらっしゃいませ」
今日も魔法雑貨屋『天使のはしご』に、わけありっぽいお客さんがやって来ました――
さあ、今日も一日頑張りましょう――
「雑貨屋のお姉さん、おはようございます。お店の中を見てもいいですか?」
「はい。どうぞ、ゆっくり見てください」
朝一番でお店に来たのは、日本なら中学生くらいの男の子でした。
お目当ての物が見つからないのか、一時間はお店の中を眺めています。
時々ため息をこぼしていますね……。お困りでしょうか?
まずは一息ついてほしいので、お茶を一杯淹れました。
「どうぞお茶でも飲んで、お休みください」
「あ、ありがとうございます」
「なにかお探し物ですか?」
私がたずねると、戸惑いがちに男の子が教えてくれました。
「早く大人になる道具を探していました……」
「どうして早く大人になりたいのですか?」
「家は貧乏なんです。早くちゃんとした仕事に就いて、お金を稼いで両親を助けたくて……」
私は悩みました。この世にそんな魔道具はありません。
私が願えば、男の子の願いは叶うのかもしれませんし、もしかするとお金さえも……。が、そういう問題ではないでしょう。
しばし、考えを巡らせます。
「一度これを試してみてはいかがでしょうか?」
私は才能チェック魔紙を戸棚から取り出し、男の子にお渡ししました。安価ですし、男の子にとって、きっとこの先の指針になると思います。
結果は十分程度で分かるので、ハードルも低く、物は試しとやり易いのでは?
そのことを説明すると、大きな明るい声で返事をしてくれました。
「やってみたいです!」
使い方をご説明し、浮き出す文字で質問してくる魔紙に、男の子は次々と答えを書き込んで行きます。
さあ、後は結果を待つだけです。
「お疲れ様でした。お茶よりも、ジュースがいいですか?」
「はい。ジュースがいいです。お気遣いありがとうございます」
照れくさそうに男の子が答えたので、今度は林檎ジュースをお出ししました。
とても礼儀正しく、しっかりしたお子さんです。それでもまだジュースを好む年頃ですよね。配慮が足りませんでした。
その時、『天使のはしご』では珍しく、お客さんの来訪が重なりました。
「雑貨屋? 開いているな」
またまた隊長さんです。
「今は朝の見まわり途中なんだが――おや? 先客がいたか?」
「おはようございます、隊長さん」
「二人でゆっくりして、なにをしていたんだ?」
「この方の才能を調べていたところです」
「結果を待つ間、ごちそうになっていました」
「お、才能チェック魔紙か。どれ?」
隊長さんが魔紙を見ると、結果が浮き出てきました。
「「「騎士!!」」」
男の子本人もですが、隊長さんも私も驚きました。他にもいろいろ才能はありましたが、騎士の才能が抜きん出ていたのです。
「いくつになる?」
「今年十四になります」
「そうか、騎士試験を受けてみないか? 受験料は高くない。ここで道具を買うよりも安いぞ?」
「そうなんですか?」
隊長さん……、商売人を目の前に、なんてことを言うのでしょう。
「まずは見習からだが、それでも給料が出る」
「は、はい! 受けさせてください! ロイと申します!」
「分かった。願書を『天使のはしご』に持ってこよう」
「よろしくお願いします!」
とんとん拍子に話がまとまりました。今回、私の出番はないようです。だから普通にお祈りをします。
私は手を合わせて願いました――
『ロイ君の、騎士試験合格を願っています』
それから変わったことがあります。
なぜか隊長さんが、一週間置きに『天使のはしご』に顔を出すようになったのです。
最初は願書を届けに来ただけかと思っていましたが、翌週にはロイ君が試験を無事受けたこと、そのまた翌週には一次選考を通過したことを報せてくれました。
「それでな、このまま行けばロイは来月から見習い騎士になれそうだ。おい? ちゃんと聞いているのか?」
「え、はい。聞いております」
こんな調子で入り浸るのですが、隊長さんはお暇なのでしょうか? こちらが心配になってくるのですが……。
これもまた、なにかに巻き込まれる前兆なのでしょうか……?
ロイ君はご実家から騎士団に通い、見習い騎士としての道を歩み始めました。
「セルマさん! 今日、初めてお給料をいただいたんです!」
「よかったです。ロイ君が毎日訓練を頑張ったからですね」
お給料をもらって、家計を助けられることが嬉しいみたいです。
予定はまったくありませんが、こんな息子さんがいてくれたら、母親冥利に尽きるでしょう。
「覚えることがいっぱいで大変ですが、とてもやりがいがあって毎日楽しいです! それで――」
ロイ君は初めてのお給料で、家族みんなへのプレゼントを買いたいそうです。
「じいちゃんとばあちゃんには腰痛用のサポーターと、母ちゃんには激落ち洗剤一揃え、弟たちには模造剣かな……」
ポリポリと襟足を掻きながら、独り言を言っています。これが気を張っていない時のロイ君なのですね。
私がその姿を微笑ましく感じていると、どうやら全員分のプレゼントが決まったみたいです。
「とにかくなんでもいいから、早く大人になって稼ぎたいと思っていました。でも、セルマさんから才能チェック魔紙を勧められて、今はよかったと思っています」
「そうでしたか」
「隊長にしごかれヘトヘトになると、早く追い越したいって思うんです。貧乏から抜け出したいとばかり考えていましたが、初めて自分がこうなりたいって目標を見つけることができました」
「夢ができたんですね? 目標は隊長さんですか?」
「はい! セルマさんと出会えたおかげです!」
「そんな、大袈裟ですよ」
「ロイ、ずいぶんと楽しそうだな?」
「たっ、隊長!! あっ、用事を思い出しました! 失礼します!」
「ありがとうございました。気をつけてお帰りください」
初めてのお給料日ですから、いろいろとご予定があるのでしょう。孝行息子のロイ君が帰り、またまた隊長さんがお店に入って来ました。
「いらっしゃいませ」
「あ、ああ。今日は給料日だからな、なにか便利そうな物を買いに来た」
う~ん。便利そうな物ですか……。なにをお勧めしたらいいのか、見当がつきません。隊長さんがどんなお方で、どのようなライフスタイルを送っているのか知らないと難しいですね……。
少し話を聞いてみようかと考えていると、お店の外から大きな声が聞こえてきました。
「隊長ー? どこですかー? 早く奢ってくださいよー。腹ペコでーす」
「下っぱの俺たちにごちそうしてくれるって、昨日言ってたじゃないですかー」
「「……」」
「お約束がありましたか?」
「給料日だから、部下にたかられているだけだ……」
このまま街中を捜索されても大変ですよね。私は隊長さんからお話を聞くことをあきらめました。
「隊長さんは慕われているのですね。お店にはまた今度、ゆっくりいらしてください」
「あ、ああ。また来る」
そこまでガッカリされなくてもいいと思うのですが、肩を落として隊長さんは帰っていきました。
さて、今日はそろそろ店仕舞いとしましょう。
自分の才能はなにかと思い悩み迷う時期も、後から考えると掛け替えのない素敵な時間です。
描いた夢をひたすら追いかける生き方も素敵です。
ロイ君のように家族のために生き、その中で生き甲斐や目標を見つけて生きるのも、これまた素敵な生き方ですね。
「いらっしゃいませ」
今日も魔法雑貨屋『天使のはしご』に、わけありっぽいお客さんがやって来ました――
10
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
女嫌いな騎士団長が味わう、苦くて甘い恋の上書き
待鳥園子
恋愛
「では、言い出したお前が犠牲になれ」
「嫌ですぅ!」
惚れ薬の効果上書きで、女嫌いな騎士団長が一時的に好きになる対象になる事になったローラ。
薬の効果が切れるまで一ヶ月だし、すぐだろうと思っていたけれど、久しぶりに会ったルドルフ団長の様子がどうやらおかしいようで!?
※来栖もよりーぬ先生に「30ぐらいの女性苦手なヒーロー」と誕生日プレゼントリクエストされたので書きました。

婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
安眠にどね
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】

平民から貴族令嬢に。それはお断りできますか?
しゃーりん
恋愛
母親が亡くなり一人になった平民のナターシャは、魔力が多いため、母の遺言通りに領主に保護を求めた。
領主にはナターシャのような領民を保護してもらえることになっている。
メイドとして働き始めるが、魔力の多いナターシャは重宝され可愛がられる。
領主の息子ルーズベルトもナターシャに優しくしてくれたが、彼は学園に通うために王都で暮らすことになった。
領地に帰ってくるのは学園の長期休暇のときだけ。
王都に遊びにおいでと誘われたがナターシャは断った。
しかし、急遽、王都に来るようにと連絡が来てナターシャは王都へと向かう。
「君の亡くなった両親は本当の両親ではないかもしれない」
ルーズベルトの言葉の意味をナターシャは理解できなかった。
今更両親が誰とか知る必要ある?貴族令嬢かもしれない?それはお断りしたい。というお話です。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる