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3 伯爵令嬢の企て
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(あーあ、セオドア様が留学してから、毎日つまんなぁーイ。クソ真面目なモニカと一緒にいても、ちっとも楽しくなぁーイ)
モニカと嫌々一緒にいたのは、幼なじみだと云うセオドア様に近づきたかったから。ただそれだけ。そうじゃなかったら、あんな堅物と友達ごっこなんか出来る訳がない。
ただ、モニカも人とずっとベッタリするタイプじゃなくて、時には離れてリフレッシュする時間があったから何とか耐えられた感じだ。
でも、モニカが卒業パーティーでセオドア様と婚約するんじゃないかって事に気がついてからは、面白くないプラス何でこんなつまらない女がセオドア様のお眼鏡に適ったのかと、毎日イラついて気分は最悪だった。
でも神様はちゃんと見てくれている。可愛い私に、チャンスを与えてくれたのだ。
「セオドア様が留学して半月も経つわねー。今頃何をしているんだろう。私も外国に行ってみたいなぁ。でも、食事が口に合うか分からないわよね。セオドア様はお元気かしら?」
とりあえず適当な事をペラペラ喋って、モニカと会話を成立させておく。本当に面倒くさいけれど、セオドア様の最新情報を手に入れるためだから仕方がない。
「身体は頑丈な方です。食べ物の好き嫌いもないですし、きっと元気にやっていますよ。あら? カトラリーがセットされていませんでした」
(プッ。ざまぁみろ! ん? カトラリーがないって? これは使える状況かもしれない)
私は今から、悪役公爵令嬢モニカに使役される可哀想な伯爵令嬢ドロテアを演じよう。自主自立を掲げ誇りある帝国学園の生徒なのに、恋人を奪われた逆恨みから恋敵をメイドの様に扱いイビリ倒す意地悪令嬢にモニカを仕立て上げるのだ。
「あら、おばさんが置き忘れたのね。いいわよ、私今日は朝食を摂る時間がなくて、もう一品食べようかと迷っていたところなの。ついでに取ってきてあげるわー」
モニカの悪い噂が広まればセオドア様の心もモニカから離れ、留学から戻った暁には私を婚約者に選んでくれるはず。愛の力で嘘を真実にかえるのだ!
「そんな、悪いですから私も一緒に行きます」
(おいおい、あんたは私をイビル悪者なんだから、大人しく座って待っていればいいのよ)
慌ててモニカの肩を押さえ、悲しそうに目を閉じながらかぶりを振る。
「いいから、いいから。慣れない新入生は麗しきモニカ様が通る度に黄色い声を上げて食事どころではなくなるから、モニカは大人しくここで待っていて」
「まあ。逆に迷惑になってしまうのですね。それではドロテアさん、お願いします」
よしよしこれでオッケーだ。さて、命令されて慌てて取りに行く感じにしてみようか。
私って、人生の役に立たない勉強には興味を持てないだけで、能力自体はとってもあるのよね。咄嗟にこうしてよく回る頭脳に、我ながら惚れ惚れしてしまう。
どうせモニカは、地味にチマチマ努力しているんだ。本当に賢いのは私の方。それなのに、いつもモニカばかりチヤホヤされて不愉快だ。
(何が学年トップよ。私の方がよっぽど頭がいいんだから!)
やっぱりモニカはなんかムカつく。そう再認識しイラついていたら、たちまちカウンターに到着していた。
(さて、ここでひと芝居、華麗に演じてみせましょう!)
「ああ、なんでこんな事になってしまったんだろう……」
「どうかしたのかい?」
「モニカが、カトラリーが置かれていなかったって凄い剣幕でご立腹なの。ここの職員はろくな料理も作れない上、物を置くことさえも出来ないのかって……」
私が感じた事をそのまま言ってやった。
「なんだって!? ずいぶんと酷い事を言うもんだね!」
「ごめんね、おばさん。カトラリーを一式お願い」
「その上人を顎で使うなんて、モニカ嬢を見損なったよ!」
周りのおばさんたちも、何事かとこちらの様子を覗きこんでいる。シメシメだ。このおばさんと私のやり取りは、すぐに食堂の職員の間で広まるだろう。
「違うの。今までのモニカは、そんな事を言う人じゃなかったの。きっと、私が幼なじみのセオドア様をモニカから奪ってしまったから……。それから段々不安定になってしまったみたいなの……。横取りした私が悪いんだから、モニカの事をあまり悪く言わないで……。あ、早く戻らないとまた機嫌が悪くなっちゃう!」
私は目に涙を湛えながらおばさんたちにそう言い残し、カトラリーを持ってモニカの所へ戻った。
「どうかしたのですか?」
「栄養分たっぷりそうな物しか残ってなかったの。最近お肉が付いてきたのを思い出しちゃったから、見るだけで我慢することにしたわ。――はい、モニカ様。こちらをどうぞ」
この現場を皆が見ていても良いように、いかにも命令されて動く使用人の様に仰々しくカトラリーを配置した。
(演技じゃなかったら絶対にしたくないけどね!)
「フフッ。そうだったのですね。ありがとうございました」
ありがとうございます? モニカは能天気だ。皆がこちらを見ているよ? 食堂のおばさんたちなんて、目が吊り上がっている。不敵に笑いながら、私に給仕させている様に見えている事だろう。
自慢の料理にケチつけられたんだ。謝らない限り食堂の皆の怒りは解消されないはずだ。ま、何もしていないモニカが彼女たちに謝る事なんて、一生ないんだけれど。
それから、モニカはおばさんたちからあからさまにランチの量を減らされていた。その分、私には多めにランチを盛り付けてくれる。私一人の時には「頑張るんだよ」「あたしたちはドロテアちゃんの味方だからね」なんて励ますような事を言いながらだ。チョロイ。
で、私は虐げられてもモニカを庇う健気な良い子を順調に演じ続けている。
でも、あんな少ない昼食なのに、モニカは参る様子がない。もう一月はほとんど食べられていないはずなのに、おかしな事もあるものだ。もっと、何か別の方法で、モニカを貶める事も考えてみないといけないのかもしれない。
モニカと嫌々一緒にいたのは、幼なじみだと云うセオドア様に近づきたかったから。ただそれだけ。そうじゃなかったら、あんな堅物と友達ごっこなんか出来る訳がない。
ただ、モニカも人とずっとベッタリするタイプじゃなくて、時には離れてリフレッシュする時間があったから何とか耐えられた感じだ。
でも、モニカが卒業パーティーでセオドア様と婚約するんじゃないかって事に気がついてからは、面白くないプラス何でこんなつまらない女がセオドア様のお眼鏡に適ったのかと、毎日イラついて気分は最悪だった。
でも神様はちゃんと見てくれている。可愛い私に、チャンスを与えてくれたのだ。
「セオドア様が留学して半月も経つわねー。今頃何をしているんだろう。私も外国に行ってみたいなぁ。でも、食事が口に合うか分からないわよね。セオドア様はお元気かしら?」
とりあえず適当な事をペラペラ喋って、モニカと会話を成立させておく。本当に面倒くさいけれど、セオドア様の最新情報を手に入れるためだから仕方がない。
「身体は頑丈な方です。食べ物の好き嫌いもないですし、きっと元気にやっていますよ。あら? カトラリーがセットされていませんでした」
(プッ。ざまぁみろ! ん? カトラリーがないって? これは使える状況かもしれない)
私は今から、悪役公爵令嬢モニカに使役される可哀想な伯爵令嬢ドロテアを演じよう。自主自立を掲げ誇りある帝国学園の生徒なのに、恋人を奪われた逆恨みから恋敵をメイドの様に扱いイビリ倒す意地悪令嬢にモニカを仕立て上げるのだ。
「あら、おばさんが置き忘れたのね。いいわよ、私今日は朝食を摂る時間がなくて、もう一品食べようかと迷っていたところなの。ついでに取ってきてあげるわー」
モニカの悪い噂が広まればセオドア様の心もモニカから離れ、留学から戻った暁には私を婚約者に選んでくれるはず。愛の力で嘘を真実にかえるのだ!
「そんな、悪いですから私も一緒に行きます」
(おいおい、あんたは私をイビル悪者なんだから、大人しく座って待っていればいいのよ)
慌ててモニカの肩を押さえ、悲しそうに目を閉じながらかぶりを振る。
「いいから、いいから。慣れない新入生は麗しきモニカ様が通る度に黄色い声を上げて食事どころではなくなるから、モニカは大人しくここで待っていて」
「まあ。逆に迷惑になってしまうのですね。それではドロテアさん、お願いします」
よしよしこれでオッケーだ。さて、命令されて慌てて取りに行く感じにしてみようか。
私って、人生の役に立たない勉強には興味を持てないだけで、能力自体はとってもあるのよね。咄嗟にこうしてよく回る頭脳に、我ながら惚れ惚れしてしまう。
どうせモニカは、地味にチマチマ努力しているんだ。本当に賢いのは私の方。それなのに、いつもモニカばかりチヤホヤされて不愉快だ。
(何が学年トップよ。私の方がよっぽど頭がいいんだから!)
やっぱりモニカはなんかムカつく。そう再認識しイラついていたら、たちまちカウンターに到着していた。
(さて、ここでひと芝居、華麗に演じてみせましょう!)
「ああ、なんでこんな事になってしまったんだろう……」
「どうかしたのかい?」
「モニカが、カトラリーが置かれていなかったって凄い剣幕でご立腹なの。ここの職員はろくな料理も作れない上、物を置くことさえも出来ないのかって……」
私が感じた事をそのまま言ってやった。
「なんだって!? ずいぶんと酷い事を言うもんだね!」
「ごめんね、おばさん。カトラリーを一式お願い」
「その上人を顎で使うなんて、モニカ嬢を見損なったよ!」
周りのおばさんたちも、何事かとこちらの様子を覗きこんでいる。シメシメだ。このおばさんと私のやり取りは、すぐに食堂の職員の間で広まるだろう。
「違うの。今までのモニカは、そんな事を言う人じゃなかったの。きっと、私が幼なじみのセオドア様をモニカから奪ってしまったから……。それから段々不安定になってしまったみたいなの……。横取りした私が悪いんだから、モニカの事をあまり悪く言わないで……。あ、早く戻らないとまた機嫌が悪くなっちゃう!」
私は目に涙を湛えながらおばさんたちにそう言い残し、カトラリーを持ってモニカの所へ戻った。
「どうかしたのですか?」
「栄養分たっぷりそうな物しか残ってなかったの。最近お肉が付いてきたのを思い出しちゃったから、見るだけで我慢することにしたわ。――はい、モニカ様。こちらをどうぞ」
この現場を皆が見ていても良いように、いかにも命令されて動く使用人の様に仰々しくカトラリーを配置した。
(演技じゃなかったら絶対にしたくないけどね!)
「フフッ。そうだったのですね。ありがとうございました」
ありがとうございます? モニカは能天気だ。皆がこちらを見ているよ? 食堂のおばさんたちなんて、目が吊り上がっている。不敵に笑いながら、私に給仕させている様に見えている事だろう。
自慢の料理にケチつけられたんだ。謝らない限り食堂の皆の怒りは解消されないはずだ。ま、何もしていないモニカが彼女たちに謝る事なんて、一生ないんだけれど。
それから、モニカはおばさんたちからあからさまにランチの量を減らされていた。その分、私には多めにランチを盛り付けてくれる。私一人の時には「頑張るんだよ」「あたしたちはドロテアちゃんの味方だからね」なんて励ますような事を言いながらだ。チョロイ。
で、私は虐げられてもモニカを庇う健気な良い子を順調に演じ続けている。
でも、あんな少ない昼食なのに、モニカは参る様子がない。もう一月はほとんど食べられていないはずなのに、おかしな事もあるものだ。もっと、何か別の方法で、モニカを貶める事も考えてみないといけないのかもしれない。
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