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1 アラサー女騎士師団長ババア呼ばわりされる
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「おいおい。今度の遠征、とうとうテレーズ師団長とこだぜ?」
「はぁーあ。ババアと一緒かよ。無駄に気を遣うんだよな」
「でも一応女だからな。でも、遣う必要のない気を遣うのが、精神的にキツイんだよな」
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。って、辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
おーい。お前達ー。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
特にババアと言った奴、ナタンって名前だっけ? しっかりブラックリスト入りしたからなー!!
もう片方は……。ま、一般的な意見だから許容範囲だな。あれにまで目くじら立てていたら、私が狭量だと思われるか。うん、許そう。
ババア呼ばわりされている私、テレーズ・リヴィエ。アラサー女子。いや、アラサーですって言うと、20代も入って良い表現なんだよね。本当は31歳ですけど。
ここ、サレイト王国で、女騎士なんてしているのは私1人だけ。いや、毎年、新人の女の子も入団はするのだ。しかし、1年も経たずに退団する。
理由は簡単。数少ない女性騎士はモテにモテ、すぐに結婚して辞めていく。そりゃあ自分が男だったら、危険な騎士なんて仕事、しないで欲しいと思うけど……。
そんなんだから、新人女性騎士は『今年の嫁候補』なんて言われたりするんだよ。お見合い目的じゃないんだからさ、毎年入団時期に、浮かれんなよな!! ほんと勘弁してほしいわ。
私は、18歳で入団しているから、それなりに立場は上だ。同じ階級の者は4人いるが、これでも団長、副団長に次ぐ師団長だ。あんな下っ端新人の言う事なんて、全く気にならないんだよー。
……ウソです。『ババア』は傷つくよ。年月は平等に過ぎるんだから、自分だってジジイになるんだからねって、すごく言いたい!!
入団して来たばかりのヒヨッコは、半年間の研修中に、ローテーションを組み、各師団で訓練を受ける。そこで資質を見極め、本人の希望調査も出来るだけ反映させながら、各師団に配属されていくのだ。
第1から第5師団まであるが、私は第4師団の師団長。うちはテイマーを集めた師団だ。あのナタンってガキは、私の可愛いププちゃんに、お灸を据えてもらおうかね。フフフフフ。
どうやってナタンを懲らしめてやろうか考えていると、第5師団長のダミアンが来た。これまた、ネチっこいのに見つかったな……。
師団長になるまで知らなかったが、第5は計略と事務担当以外に、裏の仕事も担っている。この国の騎士団は暗部も抱えているのだ。
「随分新人に可愛がられているみたいですねぇ。いただけないなぁ。私以外に意地悪されるなんてぇ」
そう言って、私の髪をクルクルと自分の指に絡めてくる。まるで、蛇の様な男。あまり関わりたくない奴だ。
「あー。テレーズとダミアンが一緒にいるー。ねえねえ、何の話をしてるのー?」
パタパタと走って来たのは、第3師団長のエミール。弟みたいで可愛いのだが、あざとい。自分の見せ方を知っているタイプだ。
「エミール! 話はまだ終わっていない」
そう言って、ドカドカとエミールを追いかけて来たのは、第2師団長のテオドール。曲がった事が大嫌い。融通がきかない堅物だ。
「せっかく4人が集まったから、今度の遠征について打ち合わせでもする?」
なんだかんだで、私も仕事人間なのだ。時間は有効に使おう。
「ミカエル不在でやるのは、まずいのではないか?」
「僕もそう思うなー」
「私も、後々面倒事になるのは嫌ですねぇ」
はぁん? みんなミカエルを気にし過ぎじゃない?
「別に、後で報告すればいいじゃない?」
「はぁ!? ダメに決まってるだろ!!」
ビクッとして後ろを振り向くと、第1師団長のミカエルが立っていた。
「みんな、俺が来たことに気づいていたのに。お前はププがいないと本当にダメなやつだな」
全師団長が揃ったので、まずは、軽く私の脳内にある、各師団長の紹介を見て欲しい。
第1師団師団長 ミカエル――すかした奴――前衛担当で剣の騎士
第2師団師団長 テオドール――真面目堅物――護衛担当で盾の騎士
第3師団師団長 エミール――弟キャラ――魔法担当で魔法の騎士
第4師団師団長 テレーズ――アラサー女子――テイム担当で魔物の騎士
第5師団師団長 ダミアン――蛇男――計略と事務担当、実は暗部担当で知恵の騎士
ザックリとこんな感じだ。この体制で魔物や悪人と日々戦い、民の生活を守るのが私達、王国騎士団だ!
そう、私達は民のあこがれ! みんながウットリ、私達騎士を眺めるのだ!
……って、これは嘘……。現実は違うのよ。
みんな、花形の第1や第3と、王族を護る第2が好きだ。うちは怖がられる事も多いし、第5はほぼ表に出ない。憧れの騎士様は123なのだ。
「で、次が最後の新人遠征だろ? それぞれ目ぼしい新人はいるのか? 取り合いするのも面倒だしな? そろそろ協議を開始するから考えておいてくれ」
いつもミカエルは、何故かいつの間にかリーダーみたいになる。花形師団だからって仕切らないでよね! みんな同格なんですからね!
「うちは癖が強いですからねぇ。でも、何人かは考えていますよぉ」
ああ、蛇に睨まれた蛙さんがいる。
「うちも大体決まったかなー」
「私は最後まで見ないと、何とも言えないな」
「テレーズはどうなんだ?」
「それを聞いてどうなるのよ? どうせ他所で余った人材が、いつもうちに来るじゃない?」
本人の希望調査の前に、気に入った新人がいれば、師団長が直接、口説き落とす場合もある。
でも大抵123に希望が殺到し、あぶれた者がうちの第4に来る。ちなみに第5は、1度蛇に睨まれると、その新人は9割9分、第5に希望を出す。
残る1分は逃亡者ね。恐ろしや……。
**********
――そうこうしているうちに、今年最後の、新人訓練の遠征が始まった――
え? なんですか、この不審人物は!?
「はぁーあ。ババアと一緒かよ。無駄に気を遣うんだよな」
「でも一応女だからな。でも、遣う必要のない気を遣うのが、精神的にキツイんだよな」
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。って、辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
おーい。お前達ー。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
特にババアと言った奴、ナタンって名前だっけ? しっかりブラックリスト入りしたからなー!!
もう片方は……。ま、一般的な意見だから許容範囲だな。あれにまで目くじら立てていたら、私が狭量だと思われるか。うん、許そう。
ババア呼ばわりされている私、テレーズ・リヴィエ。アラサー女子。いや、アラサーですって言うと、20代も入って良い表現なんだよね。本当は31歳ですけど。
ここ、サレイト王国で、女騎士なんてしているのは私1人だけ。いや、毎年、新人の女の子も入団はするのだ。しかし、1年も経たずに退団する。
理由は簡単。数少ない女性騎士はモテにモテ、すぐに結婚して辞めていく。そりゃあ自分が男だったら、危険な騎士なんて仕事、しないで欲しいと思うけど……。
そんなんだから、新人女性騎士は『今年の嫁候補』なんて言われたりするんだよ。お見合い目的じゃないんだからさ、毎年入団時期に、浮かれんなよな!! ほんと勘弁してほしいわ。
私は、18歳で入団しているから、それなりに立場は上だ。同じ階級の者は4人いるが、これでも団長、副団長に次ぐ師団長だ。あんな下っ端新人の言う事なんて、全く気にならないんだよー。
……ウソです。『ババア』は傷つくよ。年月は平等に過ぎるんだから、自分だってジジイになるんだからねって、すごく言いたい!!
入団して来たばかりのヒヨッコは、半年間の研修中に、ローテーションを組み、各師団で訓練を受ける。そこで資質を見極め、本人の希望調査も出来るだけ反映させながら、各師団に配属されていくのだ。
第1から第5師団まであるが、私は第4師団の師団長。うちはテイマーを集めた師団だ。あのナタンってガキは、私の可愛いププちゃんに、お灸を据えてもらおうかね。フフフフフ。
どうやってナタンを懲らしめてやろうか考えていると、第5師団長のダミアンが来た。これまた、ネチっこいのに見つかったな……。
師団長になるまで知らなかったが、第5は計略と事務担当以外に、裏の仕事も担っている。この国の騎士団は暗部も抱えているのだ。
「随分新人に可愛がられているみたいですねぇ。いただけないなぁ。私以外に意地悪されるなんてぇ」
そう言って、私の髪をクルクルと自分の指に絡めてくる。まるで、蛇の様な男。あまり関わりたくない奴だ。
「あー。テレーズとダミアンが一緒にいるー。ねえねえ、何の話をしてるのー?」
パタパタと走って来たのは、第3師団長のエミール。弟みたいで可愛いのだが、あざとい。自分の見せ方を知っているタイプだ。
「エミール! 話はまだ終わっていない」
そう言って、ドカドカとエミールを追いかけて来たのは、第2師団長のテオドール。曲がった事が大嫌い。融通がきかない堅物だ。
「せっかく4人が集まったから、今度の遠征について打ち合わせでもする?」
なんだかんだで、私も仕事人間なのだ。時間は有効に使おう。
「ミカエル不在でやるのは、まずいのではないか?」
「僕もそう思うなー」
「私も、後々面倒事になるのは嫌ですねぇ」
はぁん? みんなミカエルを気にし過ぎじゃない?
「別に、後で報告すればいいじゃない?」
「はぁ!? ダメに決まってるだろ!!」
ビクッとして後ろを振り向くと、第1師団長のミカエルが立っていた。
「みんな、俺が来たことに気づいていたのに。お前はププがいないと本当にダメなやつだな」
全師団長が揃ったので、まずは、軽く私の脳内にある、各師団長の紹介を見て欲しい。
第1師団師団長 ミカエル――すかした奴――前衛担当で剣の騎士
第2師団師団長 テオドール――真面目堅物――護衛担当で盾の騎士
第3師団師団長 エミール――弟キャラ――魔法担当で魔法の騎士
第4師団師団長 テレーズ――アラサー女子――テイム担当で魔物の騎士
第5師団師団長 ダミアン――蛇男――計略と事務担当、実は暗部担当で知恵の騎士
ザックリとこんな感じだ。この体制で魔物や悪人と日々戦い、民の生活を守るのが私達、王国騎士団だ!
そう、私達は民のあこがれ! みんながウットリ、私達騎士を眺めるのだ!
……って、これは嘘……。現実は違うのよ。
みんな、花形の第1や第3と、王族を護る第2が好きだ。うちは怖がられる事も多いし、第5はほぼ表に出ない。憧れの騎士様は123なのだ。
「で、次が最後の新人遠征だろ? それぞれ目ぼしい新人はいるのか? 取り合いするのも面倒だしな? そろそろ協議を開始するから考えておいてくれ」
いつもミカエルは、何故かいつの間にかリーダーみたいになる。花形師団だからって仕切らないでよね! みんな同格なんですからね!
「うちは癖が強いですからねぇ。でも、何人かは考えていますよぉ」
ああ、蛇に睨まれた蛙さんがいる。
「うちも大体決まったかなー」
「私は最後まで見ないと、何とも言えないな」
「テレーズはどうなんだ?」
「それを聞いてどうなるのよ? どうせ他所で余った人材が、いつもうちに来るじゃない?」
本人の希望調査の前に、気に入った新人がいれば、師団長が直接、口説き落とす場合もある。
でも大抵123に希望が殺到し、あぶれた者がうちの第4に来る。ちなみに第5は、1度蛇に睨まれると、その新人は9割9分、第5に希望を出す。
残る1分は逃亡者ね。恐ろしや……。
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――そうこうしているうちに、今年最後の、新人訓練の遠征が始まった――
え? なんですか、この不審人物は!?
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