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この頃になると、さあ忙しくなります。
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この頃になると、さあ忙しくなります。
小さな小さな手と手にかごを抱えて、キコはお母さんのおつかいに行くことになりました。
お母さんに頼まれたのはスダジイとクリ、ギンナン、アケビそれにナナカマド。かごいっぱいに取って来るように言いつけられたのでした。
キコは最近めっきりつめたくなった風にかむりのずきんを取られそうになりながら、森の中を歩いていきます。
木の実がある場所は春にも夏にもつれてこられたことがあるので小さなキコでもへっちゃらです。
キコは春や夏に見た、元気な虫たちにかこまれて咲いていた可憐な花々や、慈雨に打たれて鮮やかにぬれた顔ほども大きな葉っぱを思い出して楽しみになるのでした。足どりは自然ととんとんと跳ねるように落ち葉を進んで行きました。
「どんどんどんぐり、ぎんぎんぎんなん、
くるくるくりと、ぱっくりあけび、
あーかいあかいはななかまど」
キコは歌をうたいながら森を進んで行きます。
途中、お父さんに教えられたきのこを見つけました。
それは食べられるきのこです。
キコはくんくんきのこに鼻を寄せました。ふんわりとした香ばしい匂いがします。
キコはお母さんが作るこのきのこの汁が大好きでした。おもわずよだれが出てきます。
でもキコは首をふりふり、自分に言い聞かせます。
今日はお母さんに頼まれた、スダジイとクリ、ギンナン、アケビそれにナナカマドを取りに来たのです。いくらお母さんの得意なきのこ汁がのみたくても、今日はがまんです。
「どんどんどんぐり、ぎんぎんぎんなん、
くるくるくりと、ぱっくりあけび、
あーかいあかいはななかまど」
キコはまた歌をうたいながら森を進んで行きます。
お兄さんに教えられた大きな大きな切り株をまたいで越えれば、ほら、ギンナンのおいしい匂いが漂ってきました。
「ぎんぎんぎんなん、いっぱいぎんなん」
キコは嬉しくなって駆け出しました。
あたりはきいろい葉っぱで埋め尽くされて、とってもきれいです。
お父さんから聞いたことがあります。
キコが生まれる前に亡くなってしまったおじいさんはそれはそれはきれいなイチョウ色の毛皮を持っていたということです。
だからキコはイチョウを見るたびに知らないおじいさんのことを思い出します。
キコは何も知らなくても、おじいさんはキコのことを知っている気がしてきて、とてもすてきな気分になれるのです。
「ぎんぎんぎんなん、きれいなイチョウ」
歌をうたいながらギンナンを集めていきます。
キコはお父さんにならったように、次々とギンナンのまるっこい実から飛び出た茎を取り外していきました。くるりとまわすと力を入れなくともすんなり取れるのです。
もうかごにはスダジイとクリ、ギンナン、それにアケビが山のように入っています。
あとはナナカマドだけです。
「あーかいあかい、ななかまど」
キコはまた歌をうたいながらナナカマドの木を目指して歩き出しました。
お母さんのおつかいはこれが初めてでした。
今日はキコが初めて独りで森を歩く日なのです。
お兄さんは言っていました。
森の奥にはおそろしく大きな熊が住んでいるから行ってはいけないと。
お父さんは言っていました。
森を超えた向うから猟師が銃を持ってやって来るから行きすぎてはいけないと。
お母さんは言っていました。
森の木の実は森のみんなのものだから独り占めはいけないと。
その言いつけをみんなみんな守って、キコは森を歩いていきます。
「どんどんどんぐり、ぎんぎんぎんなん、
くるくるくりと、ぱっくりあけび、
あーかいあかいはななかまど」
でもおかしいのです。
歩けども歩けども、ならったナナカマドの木が見当たりません。
キコはたしかこのあたりだったと覚えていました。
でもあのあかい実が見えてきません。
もう誰かがキコより先にナナカマドをごっそり取って行ってしまったのでしょうか。
キコはもしかしたら記憶違いだったかもしれないと森の奥へとさらに入って行きました。
おつかいのものはあとナナカマドだけなのです。
すると木々の合間からちいさな小屋が煙突から煙を吹いてたっているのが見えてきました。
キコはまたおかしいな、と小首をかしげました。
こんなところに小屋なんか今まで無かったのです。見たことがありません。
でも小屋の前の庭はこぎれいに整えられて、あたかも昔からそこにあったかのようにどこもかしこも手入れが行き届いています。
「あ!」
そしてキコはその庭にスダジイもクリもギンナンもアケビもあることに気付きました。
その庭は小屋の裏の方へも続いています。もしかしたら、この家の庭にはキコの探しているナナカマドもあるかもしれません。
森に住むみんなのおきてをこの小屋に住む人が守っていれば庭に囲っている木の実も分けてもらえるでしょう。
キコはその小屋の戸を叩いてみることにしました。
小さな小さな手と手にかごを抱えて、キコはお母さんのおつかいに行くことになりました。
お母さんに頼まれたのはスダジイとクリ、ギンナン、アケビそれにナナカマド。かごいっぱいに取って来るように言いつけられたのでした。
キコは最近めっきりつめたくなった風にかむりのずきんを取られそうになりながら、森の中を歩いていきます。
木の実がある場所は春にも夏にもつれてこられたことがあるので小さなキコでもへっちゃらです。
キコは春や夏に見た、元気な虫たちにかこまれて咲いていた可憐な花々や、慈雨に打たれて鮮やかにぬれた顔ほども大きな葉っぱを思い出して楽しみになるのでした。足どりは自然ととんとんと跳ねるように落ち葉を進んで行きました。
「どんどんどんぐり、ぎんぎんぎんなん、
くるくるくりと、ぱっくりあけび、
あーかいあかいはななかまど」
キコは歌をうたいながら森を進んで行きます。
途中、お父さんに教えられたきのこを見つけました。
それは食べられるきのこです。
キコはくんくんきのこに鼻を寄せました。ふんわりとした香ばしい匂いがします。
キコはお母さんが作るこのきのこの汁が大好きでした。おもわずよだれが出てきます。
でもキコは首をふりふり、自分に言い聞かせます。
今日はお母さんに頼まれた、スダジイとクリ、ギンナン、アケビそれにナナカマドを取りに来たのです。いくらお母さんの得意なきのこ汁がのみたくても、今日はがまんです。
「どんどんどんぐり、ぎんぎんぎんなん、
くるくるくりと、ぱっくりあけび、
あーかいあかいはななかまど」
キコはまた歌をうたいながら森を進んで行きます。
お兄さんに教えられた大きな大きな切り株をまたいで越えれば、ほら、ギンナンのおいしい匂いが漂ってきました。
「ぎんぎんぎんなん、いっぱいぎんなん」
キコは嬉しくなって駆け出しました。
あたりはきいろい葉っぱで埋め尽くされて、とってもきれいです。
お父さんから聞いたことがあります。
キコが生まれる前に亡くなってしまったおじいさんはそれはそれはきれいなイチョウ色の毛皮を持っていたということです。
だからキコはイチョウを見るたびに知らないおじいさんのことを思い出します。
キコは何も知らなくても、おじいさんはキコのことを知っている気がしてきて、とてもすてきな気分になれるのです。
「ぎんぎんぎんなん、きれいなイチョウ」
歌をうたいながらギンナンを集めていきます。
キコはお父さんにならったように、次々とギンナンのまるっこい実から飛び出た茎を取り外していきました。くるりとまわすと力を入れなくともすんなり取れるのです。
もうかごにはスダジイとクリ、ギンナン、それにアケビが山のように入っています。
あとはナナカマドだけです。
「あーかいあかい、ななかまど」
キコはまた歌をうたいながらナナカマドの木を目指して歩き出しました。
お母さんのおつかいはこれが初めてでした。
今日はキコが初めて独りで森を歩く日なのです。
お兄さんは言っていました。
森の奥にはおそろしく大きな熊が住んでいるから行ってはいけないと。
お父さんは言っていました。
森を超えた向うから猟師が銃を持ってやって来るから行きすぎてはいけないと。
お母さんは言っていました。
森の木の実は森のみんなのものだから独り占めはいけないと。
その言いつけをみんなみんな守って、キコは森を歩いていきます。
「どんどんどんぐり、ぎんぎんぎんなん、
くるくるくりと、ぱっくりあけび、
あーかいあかいはななかまど」
でもおかしいのです。
歩けども歩けども、ならったナナカマドの木が見当たりません。
キコはたしかこのあたりだったと覚えていました。
でもあのあかい実が見えてきません。
もう誰かがキコより先にナナカマドをごっそり取って行ってしまったのでしょうか。
キコはもしかしたら記憶違いだったかもしれないと森の奥へとさらに入って行きました。
おつかいのものはあとナナカマドだけなのです。
すると木々の合間からちいさな小屋が煙突から煙を吹いてたっているのが見えてきました。
キコはまたおかしいな、と小首をかしげました。
こんなところに小屋なんか今まで無かったのです。見たことがありません。
でも小屋の前の庭はこぎれいに整えられて、あたかも昔からそこにあったかのようにどこもかしこも手入れが行き届いています。
「あ!」
そしてキコはその庭にスダジイもクリもギンナンもアケビもあることに気付きました。
その庭は小屋の裏の方へも続いています。もしかしたら、この家の庭にはキコの探しているナナカマドもあるかもしれません。
森に住むみんなのおきてをこの小屋に住む人が守っていれば庭に囲っている木の実も分けてもらえるでしょう。
キコはその小屋の戸を叩いてみることにしました。
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