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 昔々、大陸の覇者 白 蓮眞ハク レンシンは、かつて発展途上であった中ツ国を大陸統一せしめるまで発展させた。
 残すは大陸外れに位置する真澄鏡という、歴史の古い小さな島国のみ。

 別名 盗賊島とも呼ばれるこの真澄鏡は、その異名の如く治安が悪い。人口の約半数以上が盗賊と揶揄されるほど蔓延っており、根も歯もない噂では 内紛が起きすぎて、国家が誕生して以来、一度も他国と戦争をしたことがないとまで言われている。

 しかしそんな噂が立つ事も無理はない。
 なぜなら真澄鏡は、どこの国とも外交を行っていない閉ざされた国、つまりは鎖国状態である。
 その為、今の島の内情は誰も知らない。


 __完全制覇を目指し、仮想1530年 季節は春。
 蓮眞は1万の兵を連れて、真澄鏡を襲撃した。
 後に島で襲撃された海の名に因んだ「沈月海の乱」と呼ばれるこの出来事は、真澄鏡を開国させる軌跡の始まりとして、後世に語り継がれた。


 ここからは、その沈月海の乱から約半月後の話に入る。
 沈月海の乱を皮切りに、大国 中ツ国と島国 真澄鏡の戦が始まった。真澄鏡にとっては初めての他国との戦と言っても過言ではないだろう。


 蓮眞が引き連れた軍兵は約一万、対して真澄鏡の兵士の数は、僅か三千。


 圧倒的不利な状況の真澄鏡に、大陸中が負け戦だと嘲笑った。
 しかし、蓮眞は違った。
 たかが三千、されど三千。数にこそ差はあれど、その三千人の兵士達だけで長きに亘る内戦を収めてきたのだ。
 言わば、全員が戦争玄人と言っても過言ではない。

 __中でも警戒すべきは軍を率いる五人の幹部。

 戦場において絶対的リーダーであり、地獄の鬼の生まれ変わりと言わしめる一級上将 荊木いばらぎ
 
 軍師の才も持ち合わせた兵士、真澄鏡一残虐非道な策略家  二級上将 楠茂くすしげ
 
 “戦場の悪童“の異名を持つ、白い悪魔 二級上将 花垣はながき

 島の中で剣技の才では右に出るものはいない、寡黙な剣才  中将 亥藏いぐら

 そして、軍兵紅一点であり異例の幹部入りを果たした女兵士 少将 乱華らんか

 一人につき軍隊一隊分の実力を持つと言われる彼ら相手に、たった一万の兵士しか連れて来られなかったことに、蓮眞は不安を抱いていた。

 本格的に戦が始まれば、島中が戦火の海と化してまさに地獄絵図となる……はずだった。



__「え?」



 沈月海の乱から五日も経たぬまま、突如として戦争は終わった。
 
 結果は、真澄鏡の惨敗だった。
 負け戦だと嘲笑われるどころの問題ではない。寺子屋で歴史を学ぶ後世の子どもからも大爆笑されるレベルである。
 戦で死者が出るどころか、中ツ国側の負傷者は最も酷くて逆剥けが捲れた程度。逆に戦利として幹部5人を含めた数百人の兵士を捕虜として自国へ連れて帰る始末である。

 そして、ここからが本編。
 史上稀に見る短い戦が終わって数日経った日から話は始まる。

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