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女優
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来年公開予定の映画・幕末のキャラウェイ制作会議の席上で、津田監督が思わぬ言葉を口にした。会場のスタッフたちよりも、参加している芸能プロダクションへ向けての発言は、弱小事務所のマネージャー兼、取締役の高木にしたら喜ばしい内容だった。
3年前に公開されたヒット作、正しい殺し方を教えますは、動画配信サイトのみで公開され、そのクオリティーの高さは映画界に衝撃を与えた。
津田はあかつき国際映画学校を卒業後、しばらくはアダルトビデオの助監督をしていた。
大手の映画会社に就職出来なかったことと、根っからの反骨精神と好奇心がそうさせた。
アンダーグラウンドな世界でも、将来の糧になるアイデアはたくさん生まれた。
AV女優が次々とホストを騙して富豪になる前作のアイデアは、助監督時代に培われたもので、休日の殆どは取材に費やした。
金もかかったが、映画人としての自我を保ち続ける最善策だと思い続け、決して挫折することはなかった。
制作委員会を設けない津田組には、強力なバックアップも存在した。
インターネットサービス企業の連恋グループである。
その才能に早くから目をつけていた社長の山崎は、多額の出資金と引き換えに、津田をエンタメ部門の専属監督として招き入れた。
「同じ釜の飯を食ったんだ。好きに映画を撮ってくれよ」
そう言う山崎も、あかつき国際映画学校出身だった。
津田は兼ねてから、新人俳優が育たない日本の現状を危惧して、小劇場や大衆演劇界からもキャスティングをしていた。今回、準主役に抜擢する予定の女優は元はアダルトビデオ出身だが、今では殺され女優としてサスペンスドラマや映画にも出演している。
名前は鎌田靜子と言った。
津田は一度だけ、彼女と仕事をしているが、芸名を変えていたので資料を見るまでは気が付かなかった。
建前的に、オーディションに参加してもらうつもりではいるが、演技力の高さからいっても靜子以外の女優の起用は考えられなかった。
「有名無名に関係なく、オーデション次第ではキャスティングの変更も大いに有り得ます。私からはそんなところです」
津田の淡々とした振る舞いに、大手プロダクションの関係者は苦笑いするのが精いっぱいだった。裏ではぽっと出の奇抜な監督だとか、所詮は一発屋止まりといった先人たちの期待も尽く裏切られてきた昨今、津田組を敵に回すのは得策ではないと誰もが思い始めていた。
対する高木は嬉しかった。
鎌田静子を売り出すチャンス。旬を逃してはならないと思った。
実直で研究熱心で、殺され女優や死体女優と揶揄されても、腐らずにここまで頑張ってきたのだから、どうせなら一気にスターダムにのし上げてやりたいと高木は考えていた。
チャンスはいつでも転がっている。
それを掴めるのか、気が付かないままで終わるのかは自分次第なのだ。
そんな風に、自分に言い聞かせていた。
3年前に公開されたヒット作、正しい殺し方を教えますは、動画配信サイトのみで公開され、そのクオリティーの高さは映画界に衝撃を与えた。
津田はあかつき国際映画学校を卒業後、しばらくはアダルトビデオの助監督をしていた。
大手の映画会社に就職出来なかったことと、根っからの反骨精神と好奇心がそうさせた。
アンダーグラウンドな世界でも、将来の糧になるアイデアはたくさん生まれた。
AV女優が次々とホストを騙して富豪になる前作のアイデアは、助監督時代に培われたもので、休日の殆どは取材に費やした。
金もかかったが、映画人としての自我を保ち続ける最善策だと思い続け、決して挫折することはなかった。
制作委員会を設けない津田組には、強力なバックアップも存在した。
インターネットサービス企業の連恋グループである。
その才能に早くから目をつけていた社長の山崎は、多額の出資金と引き換えに、津田をエンタメ部門の専属監督として招き入れた。
「同じ釜の飯を食ったんだ。好きに映画を撮ってくれよ」
そう言う山崎も、あかつき国際映画学校出身だった。
津田は兼ねてから、新人俳優が育たない日本の現状を危惧して、小劇場や大衆演劇界からもキャスティングをしていた。今回、準主役に抜擢する予定の女優は元はアダルトビデオ出身だが、今では殺され女優としてサスペンスドラマや映画にも出演している。
名前は鎌田靜子と言った。
津田は一度だけ、彼女と仕事をしているが、芸名を変えていたので資料を見るまでは気が付かなかった。
建前的に、オーディションに参加してもらうつもりではいるが、演技力の高さからいっても靜子以外の女優の起用は考えられなかった。
「有名無名に関係なく、オーデション次第ではキャスティングの変更も大いに有り得ます。私からはそんなところです」
津田の淡々とした振る舞いに、大手プロダクションの関係者は苦笑いするのが精いっぱいだった。裏ではぽっと出の奇抜な監督だとか、所詮は一発屋止まりといった先人たちの期待も尽く裏切られてきた昨今、津田組を敵に回すのは得策ではないと誰もが思い始めていた。
対する高木は嬉しかった。
鎌田静子を売り出すチャンス。旬を逃してはならないと思った。
実直で研究熱心で、殺され女優や死体女優と揶揄されても、腐らずにここまで頑張ってきたのだから、どうせなら一気にスターダムにのし上げてやりたいと高木は考えていた。
チャンスはいつでも転がっている。
それを掴めるのか、気が付かないままで終わるのかは自分次第なのだ。
そんな風に、自分に言い聞かせていた。
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