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惑星クレアより愛をこめて・ハローミスターモンキー
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ボクは知っているんだ。
ここはみんなが存在しない世界だってことを。
首なしの人たちの中で、頭がある人間は特別な存在で、外の世界と交信するにはモールス信号が必要だってのも知っている。
神様はピエロに扮したお猿さんだから、ボクは真理を教えてあげたくていつも地面に絵を描いているんだけど、時々通り過ぎる頭のあるお姉さんは、それはにせものだって笑うからボクはその絵を蹴散らすんだ。
赤茶けた砂に交ざる黄色いキリストは、失敗したバームクーヘンみたいに空に溶けて、ボクはバターを探すのだけれどいつまでたっても見つからない。
ボクには弟がいた。
ママの胎内でお風呂に入っていると、摺りガラス越しにスマホをバスルームに向けている姿があって、恐る恐るドアを開いてみると、怯えた顔をした弟が佇んでいて。
「玄関の扉が開かないんだ」
と、言っていた。
ボクが裸のまま扉を確認すると、鍵穴には大量のメープルシロップが塗りたくられていて、無数のアリさんたちがわっせわっせと集まっていた。
扉が壊れてしまったのはコレのせいだよと弟に言ってあげると、その目が見る見るうちに悲しい涙目になって。
「ママが戻ってこないんだ」
と、泣きじゃくってしまった。
ボクは何とか弟を慰めようとするのだけど、ミスターモンキーが邪魔をするせいでどうにもならなくて、それでもカウチソファーに座らせてキャンディーをあげたりもしたのだけど。
「ママが戻ってこないんだ」
としか言わない。
だからボクは、弟の手を引いて思い切り扉を開けたんだ。
そこには、キレイに洗濯物を畳んでいる死んだ顔をした若い女の人が立っていて、ニコリともせずにせっせとボク達の洋服を畳んでいた。
スイカみたいな緑色の被り物をしていた女の人は、どう見たってママじゃなかった。けれども、二進も三進もいかないから、ボク達は彼女をママと呼ぶようになった。
だからボク達は、本当のママを知らない。
惑星クレアには夜がないから、ママが誰だろうと恐くはないし悲しくもないけど、頭上に浮かぶ7つのお月様を眺めていると、とても辛くて遠くに行きたくなるから、その日以来弟の存在も消した。
モールス信号は規則正しくなんかなくて、不愉快な波長とリズムがボクの塩基を刺激する。
「頭なんかなくなればいいのに」
ミスターモンキーに相談したけど、彼女はハッキリ言った。
それは出来ない相談だって。
それでもボクは、真理というのを知っているから、頭上に浮かんだお月様・カンナ・トンガリ・ンジャメナ・TOKYO・インク・D51・ソウリダイジンを眺めているのだけど、そこに居住する生命体は、嘘っぱちの世界で誰かに搾取されながら暮らしているのがやりきれないから、たった今ロケットを創って助けに行くつもりなんだ。
あの子たちにはDNAというのがあって、そこにはA・T・G・Cの4つの塩基がならんでいるらしいけど、肝心なのは誰も知らないQという存在。こいつにいたずらをすると、生命体はあっという間に消えちゃうんだ。
教えてあげなきゃ。
TOKYOに行かなきゃいけない。
だってQを見つけたのは昔々のボクなんだもの。
砂漠に落っこちた衛星をしらべていたら、ピンクグレープみたいな砂がくっついていて、それは超銀河宇宙線G線だったからこれはいけないと思って、バタバタしてるうちに誰かに殺されちゃったみたいなんだ。
生きている全てのものに自然浄化作用はあるから、世界が冷たくなりすぎたらみんな消えてなくなるんだけど、超銀河宇宙線G線を放射する役割はきっと神様なんだろうなあ。
ボクじゃない。
モールス信号はバチバチ・・・バチバチ・・・音を鳴らすけど、首なしの人たちは耳がないから意味なんて理解できないし、しようと努力もしないからいつも笑って通り過ぎていく。
「やあ、ごきげんいかが?」
あいさつにこたえてもくれない首なしの人達は、列になって歩くと崖の上から宇宙空間に身を投げていったのさ。
ミスターモンキーにしてみたら、さぞ滑稽なんだろうな。
きっと監視されてるはずだから、にっこり笑っておかなくちゃ。
ロケットに乗るにはひとつだけ決まり事があって、体温が37,5℃以下であること。1℃でも越えたら、飛行士として認めてもらえないから面倒だけど、常に外気温と体温が同じボクには関係ない。
今の惑星クレアはマイナス105℃だから、ボクに触れた生命体はみんな凍ってアイスキャンディーみたいに粉々になっちゃう。けれど、しばらくすると気温は1000℃を越えちゃうから、触った生命体は今度はドロドロに溶けてしまうんだ。
それが居心地のいい証拠。
ボクは首なし人間とは違う。
お気に入りのフォックス眼鏡の鼻当てが、そう言えとさっきからうるさいから、しかたなく本音を話しているけどうるさい。
やっぱりうるさい。
うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ、男は寄るな気持ち悪い男は寄るな気持ち悪い。インテリぶったリーマンはゲスリーマンインテリゲスリーマンインテリゲスリーマン、お話してもいいですか?お話してもいいですか?ああ、来るな来るな近寄るな近寄るな。ロケットがロケットが・・・ロケットロケットロケット。
ここはみんなが存在しない世界だってことを。
首なしの人たちの中で、頭がある人間は特別な存在で、外の世界と交信するにはモールス信号が必要だってのも知っている。
神様はピエロに扮したお猿さんだから、ボクは真理を教えてあげたくていつも地面に絵を描いているんだけど、時々通り過ぎる頭のあるお姉さんは、それはにせものだって笑うからボクはその絵を蹴散らすんだ。
赤茶けた砂に交ざる黄色いキリストは、失敗したバームクーヘンみたいに空に溶けて、ボクはバターを探すのだけれどいつまでたっても見つからない。
ボクには弟がいた。
ママの胎内でお風呂に入っていると、摺りガラス越しにスマホをバスルームに向けている姿があって、恐る恐るドアを開いてみると、怯えた顔をした弟が佇んでいて。
「玄関の扉が開かないんだ」
と、言っていた。
ボクが裸のまま扉を確認すると、鍵穴には大量のメープルシロップが塗りたくられていて、無数のアリさんたちがわっせわっせと集まっていた。
扉が壊れてしまったのはコレのせいだよと弟に言ってあげると、その目が見る見るうちに悲しい涙目になって。
「ママが戻ってこないんだ」
と、泣きじゃくってしまった。
ボクは何とか弟を慰めようとするのだけど、ミスターモンキーが邪魔をするせいでどうにもならなくて、それでもカウチソファーに座らせてキャンディーをあげたりもしたのだけど。
「ママが戻ってこないんだ」
としか言わない。
だからボクは、弟の手を引いて思い切り扉を開けたんだ。
そこには、キレイに洗濯物を畳んでいる死んだ顔をした若い女の人が立っていて、ニコリともせずにせっせとボク達の洋服を畳んでいた。
スイカみたいな緑色の被り物をしていた女の人は、どう見たってママじゃなかった。けれども、二進も三進もいかないから、ボク達は彼女をママと呼ぶようになった。
だからボク達は、本当のママを知らない。
惑星クレアには夜がないから、ママが誰だろうと恐くはないし悲しくもないけど、頭上に浮かぶ7つのお月様を眺めていると、とても辛くて遠くに行きたくなるから、その日以来弟の存在も消した。
モールス信号は規則正しくなんかなくて、不愉快な波長とリズムがボクの塩基を刺激する。
「頭なんかなくなればいいのに」
ミスターモンキーに相談したけど、彼女はハッキリ言った。
それは出来ない相談だって。
それでもボクは、真理というのを知っているから、頭上に浮かんだお月様・カンナ・トンガリ・ンジャメナ・TOKYO・インク・D51・ソウリダイジンを眺めているのだけど、そこに居住する生命体は、嘘っぱちの世界で誰かに搾取されながら暮らしているのがやりきれないから、たった今ロケットを創って助けに行くつもりなんだ。
あの子たちにはDNAというのがあって、そこにはA・T・G・Cの4つの塩基がならんでいるらしいけど、肝心なのは誰も知らないQという存在。こいつにいたずらをすると、生命体はあっという間に消えちゃうんだ。
教えてあげなきゃ。
TOKYOに行かなきゃいけない。
だってQを見つけたのは昔々のボクなんだもの。
砂漠に落っこちた衛星をしらべていたら、ピンクグレープみたいな砂がくっついていて、それは超銀河宇宙線G線だったからこれはいけないと思って、バタバタしてるうちに誰かに殺されちゃったみたいなんだ。
生きている全てのものに自然浄化作用はあるから、世界が冷たくなりすぎたらみんな消えてなくなるんだけど、超銀河宇宙線G線を放射する役割はきっと神様なんだろうなあ。
ボクじゃない。
モールス信号はバチバチ・・・バチバチ・・・音を鳴らすけど、首なしの人たちは耳がないから意味なんて理解できないし、しようと努力もしないからいつも笑って通り過ぎていく。
「やあ、ごきげんいかが?」
あいさつにこたえてもくれない首なしの人達は、列になって歩くと崖の上から宇宙空間に身を投げていったのさ。
ミスターモンキーにしてみたら、さぞ滑稽なんだろうな。
きっと監視されてるはずだから、にっこり笑っておかなくちゃ。
ロケットに乗るにはひとつだけ決まり事があって、体温が37,5℃以下であること。1℃でも越えたら、飛行士として認めてもらえないから面倒だけど、常に外気温と体温が同じボクには関係ない。
今の惑星クレアはマイナス105℃だから、ボクに触れた生命体はみんな凍ってアイスキャンディーみたいに粉々になっちゃう。けれど、しばらくすると気温は1000℃を越えちゃうから、触った生命体は今度はドロドロに溶けてしまうんだ。
それが居心地のいい証拠。
ボクは首なし人間とは違う。
お気に入りのフォックス眼鏡の鼻当てが、そう言えとさっきからうるさいから、しかたなく本音を話しているけどうるさい。
やっぱりうるさい。
うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ、男は寄るな気持ち悪い男は寄るな気持ち悪い。インテリぶったリーマンはゲスリーマンインテリゲスリーマンインテリゲスリーマン、お話してもいいですか?お話してもいいですか?ああ、来るな来るな近寄るな近寄るな。ロケットがロケットが・・・ロケットロケットロケット。
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