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スマホ解除
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入院から約1ヶ月を経過した9月上旬、やっとスマートフォンを触ってもいいと許可が下りた。状態も安定しているし、今の私なら掲示板を熱心に見続けることはしないだろうというのが先生の考えだった。
ただし、病院のルールで午前と午後で各1時間という決まりがあった。前に入院した時は1日30分だったはずだから、だいぶ長くなったなという印象だ。それ以外はスマートフォンは持ち物BOXに入れておくというのが病院の決まりだ。
約1ヶ月ぶりにスマートフォンを開くと、400件ほどLINEが入っていた。そのほとんどが企業からの宣伝のメッセージだった。
Uちゃんにはだいぶ迷惑をかけてしまったし、一応B棟に移れたことをまずは報告しようと思った。
私はUちゃんに電話をかけた。
しかし、Uちゃんは電話に応答せず、話すことは出来なかった。
入院する前、車の後部座席から手を振る私に、Uちゃんが手を振り返してくれたことを昨日のように思い出した。
Uちゃんならいつか電話が繋がり話すことが出来るだろうと思っていた。
しかし、入院中Uちゃんから電話がかかってくることはなかったし、私の電話に出てくれることもなかった。不安を覚えたが、Uちゃんと私の縁は今の時点で切れることはないだろうという安心感もあった。Uちゃんも体調が悪くなってるのかもしれないし、もしそうだとすればこの病院に入院するだろうし、あまり深く考えるのはやめようと思った。
白田さんからは「生きてる?」とLINEがあった。そのメッセージの前に白田さんが取り消したメッセージが1件あって、見ることは出来ないけど、何て書いてくれたんだろうとそれが気になった。
電話はどちらかというと苦手でUちゃんですらかけることに躊躇してしまうこともある私だけど、この時は早く白田さんの声が聞きたくて仕方がなかった。
私はLINEの音声通話の文字をタップした。今は平日の午後だ。白田さんは仕事中なのか応答はなかった。
今日はもう繋がらないかな。そう思った10分後、白田さんからLINE電話がかかってきた。
私は直ぐ様応答した。
「もしもし?今大丈夫?」
「大丈夫じゃなかったら、かけへんわ!」懐かしい声がした。
「ごめん、平日の午後に……」
「いや、そんなん全然大丈夫やけどさ……てか、長いわ!」
「長い?」
「欠勤した日に一番に予約取っとったのに……。スマホ触れなかったん?」
「うん、許可が下りなくて……」
「いや、ホントに長かった!」
「でも1ヶ月ぐらいじゃん!」
「1ヶ月よ?だいぶ長いわ!」
「怒ることないじゃん……」
私は白田さんの声が聞けたことが嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。
ただし、病院のルールで午前と午後で各1時間という決まりがあった。前に入院した時は1日30分だったはずだから、だいぶ長くなったなという印象だ。それ以外はスマートフォンは持ち物BOXに入れておくというのが病院の決まりだ。
約1ヶ月ぶりにスマートフォンを開くと、400件ほどLINEが入っていた。そのほとんどが企業からの宣伝のメッセージだった。
Uちゃんにはだいぶ迷惑をかけてしまったし、一応B棟に移れたことをまずは報告しようと思った。
私はUちゃんに電話をかけた。
しかし、Uちゃんは電話に応答せず、話すことは出来なかった。
入院する前、車の後部座席から手を振る私に、Uちゃんが手を振り返してくれたことを昨日のように思い出した。
Uちゃんならいつか電話が繋がり話すことが出来るだろうと思っていた。
しかし、入院中Uちゃんから電話がかかってくることはなかったし、私の電話に出てくれることもなかった。不安を覚えたが、Uちゃんと私の縁は今の時点で切れることはないだろうという安心感もあった。Uちゃんも体調が悪くなってるのかもしれないし、もしそうだとすればこの病院に入院するだろうし、あまり深く考えるのはやめようと思った。
白田さんからは「生きてる?」とLINEがあった。そのメッセージの前に白田さんが取り消したメッセージが1件あって、見ることは出来ないけど、何て書いてくれたんだろうとそれが気になった。
電話はどちらかというと苦手でUちゃんですらかけることに躊躇してしまうこともある私だけど、この時は早く白田さんの声が聞きたくて仕方がなかった。
私はLINEの音声通話の文字をタップした。今は平日の午後だ。白田さんは仕事中なのか応答はなかった。
今日はもう繋がらないかな。そう思った10分後、白田さんからLINE電話がかかってきた。
私は直ぐ様応答した。
「もしもし?今大丈夫?」
「大丈夫じゃなかったら、かけへんわ!」懐かしい声がした。
「ごめん、平日の午後に……」
「いや、そんなん全然大丈夫やけどさ……てか、長いわ!」
「長い?」
「欠勤した日に一番に予約取っとったのに……。スマホ触れなかったん?」
「うん、許可が下りなくて……」
「いや、ホントに長かった!」
「でも1ヶ月ぐらいじゃん!」
「1ヶ月よ?だいぶ長いわ!」
「怒ることないじゃん……」
私は白田さんの声が聞けたことが嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。
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