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14 オリーヴを返せ!
しおりを挟む両親とロイクは、ロイクとクラリス嬢の結婚式の打ち合わせの為に出かけていた。俺は両親にこの件を急いで知らせるよう執事に指示を出すと、一人で王宮へ向かった。
俺の母は現国王陛下の妹だ。王太子アランは、俺にとっては小さい頃から遊んでやった、弟分のような従弟である。
勝手知ったる王宮の中をズンズン進む。
すると、顔見知りの近衛騎士数人に止められた。
「ブロンディ様、ここから先へは何人も通してはならぬと、王太子殿下の命が出ております。何卒”ダリアの間”にてお待ち下さい」
何だと? ナメとんのか!?
「ふざけるな! アラン殿下が私の婚約者をムリヤリ攫って王宮に連れ込んだのだぞ! オリーヴは返してもらう!」
俺が近衛騎士の制止を無視して進もうとすると、騎士達が力づくで俺を止めようとして揉み合いになった。
「放せ! このヤロー! 邪魔するな! オリーヴを返せよ! オラァァ!!」
怒りのあまり、公爵家令息の仮面が剥がれてくる俺。
大声で喚きながら暴れる俺のもとへ、王太子側近の腹黒眼鏡が慌ててやって来た。現宰相ボワレー公爵の三男モーリスだ。ちなみにモーリスは、俺にとってもアランにとっても幼馴染である。
「ルイゾン、落ち着け!」
「モーリス! てめぇ! オリーヴを返しやがれ!」
「ルイゾン。ここは王宮だ。言葉遣いに気を付けろ。どこのチンピラだよ? まったく」
モーリスのヤツが、そう言いながら眉を顰める。
「悪党はそっちだろうが! 他人の婚約者を拉致しやがって! お前、側近のくせに何やってんだ!? 何故、アラン殿下を止めなかった!? この能無しヤロー! オリーヴ! オリーヴ! 何処にいる?! オリーヴ!!」
「大きな声を出すなよ。オリーヴ嬢は無事だ。心配するな」
「信用できるか! この腹黒眼鏡!」
「何だと!?」
「とにかく、ここを通しやがれ! オリーヴ! オリーヴ! どこだ!?」
「おい、取り押さえろ。多少、手荒な事をしても構わん」
モーリスが近衛騎士達に命じる。何てヤツだ!!
俺は近衛騎士数人に腕や肩を押さえられたまま、言ってやった。
「なぁ、モーリス。昔、王妃様が大切になさってた花壇を荒らしたのはお前だよな。なのに、お前は年下のアラン殿下に罪を擦り付けた。アラン殿下は何の事だか訳も分からぬまま、王妃様に酷く叱責されて大泣きしてたよな」
「う、うるさい! それは私が7歳の時の事だろーが!」
「そうそう。騎士団の訓練を見学しただけでビビッて小便を漏らしたこともあったな。モーリスが漏ーらす、ってか? 情けねぇ男!」
「こ、子供の頃の話をするな!」
「学園時代、お前がストーキングした令嬢は――」
「わぁーっ! わぁーっ! やめろ!! ルイゾン!!」
「これ以上、恥ずかしい過去をバラされたくなかったら、オリーヴを返せ! オリーヴは何処だ!?」
「な、何て卑怯な!」
「どっちがだよ!?」
その時だ。
「ルイゾン様!」
廊下の奥から愛しい声がして、オリーヴが姿を現した。アランも一緒だ。
「オリーヴ!!」
俺は、力を緩めた騎士達の腕を振り払うと、目の前にいたモーリスを突き飛ばして、オリーヴに駆け寄る。そして思い切り彼女を抱きしめた。
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