道参人夜話

曽我部浩人

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第六夜   疱瘡婆

第2話 アバター女

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 ──私立西桜さいおう女学院。

 マイルたちが通うことになる東王とうおう大学附属高等学校の近くにある女子校で、近隣ではお嬢様学校として有名である。とは言うものの、通っているのは良家の子女ではなく、もっぱら普通の女の子ばかりだ。

 では、どうしてお嬢様学校として有名なのか?

 それは女の子の質がハンパなく極上だから──とのこと。

 可愛くて性格の良い美少女ばかりが通うので、世間の理想を体現したような女子校として有名らしい。

 その西桜女学院を訪れた──女子校に相応しくない2人。

 着古した僧衣に網代笠あじろがさ、手には錫杖しゃくじょうというスタイルの幽谷響やまびこ

 その後ろには黒のスーツは普段通りだが、魔道師としての仕事なので女性化している信一郎が立っている。

 こんな怪しい2人組が女子校に訪問できるのだろうか?
 などと思いきや、あっさり顔パスだった。

 幽谷響が周到に根回ししていたようである。

 職員室に入ると、待ち構えていたようにひとりの女性がやってきた。

「幽谷響さんですね──お待ちしておりました」
 信一郎たちに挨拶をしてきたのは、絵に描いたような女教師だった。

 綺麗にまとめた髪、真面目そうな風貌に厳格なデザイン眼鏡、地味な色のレディススーツを着込み、全身を固める頑なさには一分の弛みもない。

「この西桜女学院で二年生の担任をしております──大須おおす宮子みやこと申します」

 折り目正しく名乗られた幽谷響も、笠を取って礼儀正しく挨拶する。

「こりゃどうもご丁寧に……こちらに御在学の秋田あきた美里みさと嬢にご紹介を受けた幽谷響と申しやす。どうぞよろしく。こちらは拙の友人でして、こういった事象に詳しい先生で名を……」

源田げんだ信乃しのと申します」
 幽谷響に促されたので信一郎も自己紹介しておいた(偽名だが)。

 大須は2人を応接室へ案内しようとしたが、幽谷響はそれを辞退した。

「早速ですが、生徒さんたちの許へ参りやしょう。皆さん随分とお困りのようでございやすし、早いこと治してあげるがよろしいかと存じます」

「ですが、当学園で起きている事態の説明などは……?」
「それは道すがらにお聞きしいたしやしょう。なぁに、おおよそは美里嬢から聞き及んでおりやすんで」

 大須は当惑しながらも、幽谷響の意を汲んで廊下へと出た。
 彼女は校内を案内しつつ、この学園で起きていることを話し始めた。

「秋田さんから聞いておられるようですが……念のため、私からもご説明させていただきますわね」

 溯ること四ヶ月ほど前──生徒たちの間で奇妙な病気が流行り出した。

 それは身体のあちこちに吹き出物ができる奇病。

 顔を中心に発疹はっしんができ、やがて豆のように大きくなり、化膿してうみを持つようになって痛むのだが、その吹き出物は硬くてなかなか潰れない。

 無理に潰そうとすれば激痛が走り、その後は醜く残ってしまう。

「まるで疱瘡ほうそう……天然痘てんねんとうのようでございやすね」

 かつて業病ごうびょうと恐れられた天然痘は、そういった吹き出物が目立つ病気だ。

「はい。仰るとおりですわ。ですが天然痘のように高熱を出したり呼吸器系や消化器系にダメージを与えることはないようです。あくまでも痛みを伴う吹き出物だけ……なんとも不気味な病気です」

 当然、生徒たちは保健室に駆け込んだ。

 しかし、保険医では手に負えず、皮膚科の専門医なども招いたが原因はわからず終い。ありきたりな塗り薬や抗生物質を与えるのが関の山。

 そして、薬などでは誰も治りはしなかった。

「ただでさえ年頃の女の子たちはニキビや肌荒れを気にするのに……」
 信一郎がそう呟くと、大須も憂鬱ゆううつそうに相槌あいづちを打った。

「ええ、病気にかかった生徒たちは嘆き悲しむばかり、まだ罹っていない少女たちは自分たちもああなるんじゃないかと戦々恐々。教師陣は彼女たちの心のケアさえ満足にできない有り様……正直、もう限界です」

 本当に限界なのか、大須はうんざりしたように溜め息を吐いた。

「近頃ではアバター女・・・・・という馬鹿げた怪談まで囁かれるような有り様で……」
「……アバター女?」

 怪談とか都市伝説という単語に釣られる──これは民俗学者の性だ。

 特に信一郎はそういった民間伝承を研究しているのだ。
 不謹慎ながらも興味を持ってしまう。

「よくある学校の階段ですわ──このような話です」

 昔、この西桜女学院に顔面ニキビだらけの女生徒がいた。
 彼女はそのニキビだらけの顔のせいでイジメを受け、それを苦に自殺してしまったという。

 以来、彼女の怨念はアバター女となって西桜女学院に棲みつき、生徒たちを自分と同じようにニキビだらけの醜い顔にしてやろうと彷徨さまよっている

 そんな都市伝説めいた怪談だ。

「今回の奇病は彼女のせいだと生徒たちは噂しています。朝一番に教室へ入ったら彼女に待っていたとか、放課後の廊下で出会して追いかけられたとか、彼女と目を合わせるとニキビを感染うつされるとか……ついには目撃談まで出てきて、挙げ句の果てにはイジメ問題にまで発展して……」

「……イジメ問題?」
 消え入りそうな大須の言葉尻を、幽谷響は耳聡く拾った。

「いえ、それは学内の問題ですので、私共が解決すること……とにかく、そのアバター女のせいで登校拒否になってしまった生徒まで出ているのです。もう参ってしまいますわ」

 口裂け女やカシマレイコ、最近だとヒキコさんなどに分類される妖女系の怪談のようだ。それもこの学園のみに流布する、極めて局所的な怪談らしい。

「しかし、何をもってアバター女などと名付けやしたかね」
 幽谷響は誰に問い掛ける出もなく言った。

「アバターというのはアレでやしょう? ネットやゲームなんかで、自分の分身となるキャラクターを指す言葉でございやしたよね? そんな映画もありやしたが、意味合いはほとんど同じのはず……」

 元来、アバターの語源はサンスクリット語のアヴァターラ。

 本来の意味は「神仏の化身」というもので、それが西洋風に読み直され、今では「ネット上での分身」という使われ方をされるようになった。

「そのアバターとはあまり関係ないようですわ」
 大須の見解としては、どちらかと言えば語感の問題らしい。

「あばたもえくぼ──ということわざがありますよね?」

 あばたとは痘痕あばた、天然痘のあとである。

 これは肌に酷い痕跡を残してしまう。恋する者は相手のそうした痘痕もえくぼのように可愛らしく見えるもの、という意味のことわざだ。

「生徒の誰かがそのことわざを知っていたのでしょう。その痘痕あばたがアバターへと転じて、アバター女という風になったのではないか……私はそう考えておりますわ」

「なるほど、言葉の音を拾ってそれらしく名付けたってことでやすね」
「……そうなのかな?」

 幽谷響は納得したようだが、信一郎はどうにも引っ掛かった。

 道筋が違う・・・・・──そんな気がしてならない。

 話の筋道が少し逸れたからか、大須は軽く咳払いをした。

「アバター女の噂はともかく……生徒たちに奇妙な病が蔓延しているのは事実です。それも医学ではどうにもならない。おまけにこの馬鹿騒ぎ、こうなるとオカルトも信じたくなり……」

拙僧せっそうのような怪しい拝み屋にも頼りたくなる、ということでございやすね?」

 自分で怪しいと銘打ってれば世話がない。

「しかし、大須教諭が物分かりの良いお人で助かりやした。いくら生徒の頼みとはいえ、拙たちのような得体の知れない人間を、こうして校内に招いていただけたのでございやすからね」

 まったくだ。信一郎が女子校の先生なら絶対にお断りだ。
 大須はもう一度咳払いをすると、立て板に水を流すように話し始めた。

「生徒の意見は可能な限り聞いてあげるのが私の教育方針です。まして秋田さんは我が校でも人気者で、他の生徒や教師たちの信頼も厚い生徒です。彼女の意見なら聞き捨てなりません。それに貴方たちがどのようなことをしてくださるかは知り得ませんが、それが生徒たちの精神的負担を軽くする一助になればと……」

 どうやら「自分は正しい」と理論を立てて正当化しているようだ。

 話を聞く限り、その秋田美里というこの学園の生徒が依頼主らしい。彼女を通じて幽谷響はこの学園に働きかけ、こうして仕事を取り次いだのだろう。

 ところで──どうしてあかねを潜り込ませる必要があったんだ?

 ちなみに茜は、もう学校内に潜入済みである。

 信一郎たちが学校を訪れる数時間前に、ここの制服を着せて潜入させてある。

 春休みといえど部活動が活発なことで知られる学園なので、情報を仕入れるには申し分ないだろう。

 幽谷響は「女子高生たちの生の声が聞きたい」と言っていたが……まだ調査中なのだろうか?

 大須に案内されて着いた先は、西桜女学院の生徒会室だった。

「ご連絡がありましたので、先程お話しした原因不明の皮膚病に罹った生徒は全員、こちらに呼び集めておきましたわ」

「治すんならいっぺんにしてあげるべきでございやしょう」

 部屋に入った途端──陰鬱な空気へ沈むような感覚に飲み込まれる。
 生徒会室の中には、数十人の女の子たちが待っていた。

 彼女たちはみんな一様に暗い顔で俯いており、その顔には大きなガーゼを当てている。中にはミイラになったかのように全身に包帯を巻いている子もいた。
 見ているだけで痛々しい。

「──オジさん!!」
 女の子たちの中心にいた少女が、幽谷響を見るなり声を上げた。

 長い黒髪のストレートがよく似合う、純和風な雰囲気の綺麗な子だ。
 女の子の中でも一際目を引く美貌を持っているが、可哀想に彼女の右頬も大きなガーゼで覆い隠されている。

 少女は幽谷響に駆け寄ると、幽谷響の背に合わせてしゃがんだ。

「オジさん、本当に……本当に来てくれたんだね?」
 泣き出しそうな少女の手を取り、幽谷響は頼もしい声で言った。

「はい、オジさんは可愛い女の子との約束は守りやすぜ」

 この子が秋田美里という少女なのだろう。

 美里が幽谷響に駆け寄ったのを見て、教室にいた女の子たちが一斉にこちらへ振り向いた。興味津々といった様子である。

「あれが秋田さんの言ってた凄いオジさん?」「小っさ、アタシより小っさ」「でも声はカッコよくない?」「てか、後ろのキレイな巨乳のオネーさん誰?」「なんか、とんでもなくアンバランスなコンビだよね」

 気落ちしててもかしましい女の子たち、大須は静粛せいしゅくしようとする。
 それより先に幽谷響が錫杖を鳴らして、少女たちの注目を集めた。

「──お静かに、お嬢さん方」
 
 幽谷響が指を鳴らすと、どこからともなくクラシック音楽が流れてきた。

 校内放送用のスピーカーからではなく、幽谷響から聞こえてくるものでもなく、まるで立体音響のように教室全体に響き渡っている。

 目の前で楽団が演奏しているかのよう臨場感だ。

 突然のことに少女たちは騒然、大須も目を丸くしている。

「奇天烈な人物の登場に騒ぎたくなる気持ちは酌み取れやすが、まずはお静かに願いやす。ここは音楽でも聴いて落ち着いていただきやしょうか──おや、クラッシックはお気に召しやせんか? では流行はやりのアイドル系はいかがでございやしょう? マニアックなインディーズもいけやすぜ? それとも放送中のアニメソングにしやしょうか? まさかその若さでジャズが好みというお嬢さんはおりますまいな?」

 幽谷響が指を鳴らせば、スムーズに音楽が変わっていく。
 やがてそれは鎮静効果でもありそうな静かなBGMに変わった。

 それも幽谷響が奏でる鎮静音楽だ。
 度肝を抜かれている少女たちさえ落ち着かせてしまう。

「改めて、自己紹介させていただきやしょう──拙僧せっそうの名は幽谷響やまびこ

 少女たちおとなしくなったところで、幽谷響は黒板の前に立つ。

「この世にて奏でられた鎮魂歌を、あの世で悶える亡者たちに伝え聞かせるのを生業とする流れの坊主でございやす……まあ、今のはちょっとしたデモンストレーションと受け取ってくだせえ」

 インパクトとしては十分だろう。少女たちは固唾を呑んでいた。

「今日はこちらの秋田美里嬢の御紹介で、大須宮子教諭の計らいによりやってまいった次第でございやす」

 軽く一礼した幽谷響は、いつもより噛み砕いた前口上を続けた。

「さて、お嬢さん方の抱えている苦悩を取り除くためにやってきた次第でございやすが、どうにも拙僧には荷が重すぎるようでございやす。拙僧にできるのは皆さんの気持ちを和らげる音を紡ぐのが精一杯……しかし、どうぞ御安心くだせえ。お嬢さん方の憂いを晴らせる偉い先生をお連れしやしたからね」

「あ、どうも、源田信乃といいます」
 紹介された信一郎は、小心者っぽく挨拶しておいた。

「事情はわかりました。では診てみますので……秋田さんだっけ?」
 信一郎は幽谷響の傍らにいる美里を手招いた。

「まずは代表ってことで君からでいいかな?」

「あ、はい……お、お願いします」

 人見知りするかのように尻込みする美里を招き寄せる。
 信一郎は彼女を手近な椅子に座らせた。

 美里の了解を得て、頬のガーゼを取り除く。
 そのガーゼの下から現れたのは、無惨に荒らされた乙女の柔肌だった。

 すべての絵の具を混ぜたかのような汚い色をした吹き出物。

 それが葡萄ぶどうの房のように右頬を埋め尽くしていた。中央の物ほど豆のように大きく、末端に広がるほど小さく群れている。

「……これは酷い」
 信一郎が思わず唸ると、美里は瞳を固く閉じて唇を噛み締めた。

 こんな肌になってしまったことへの悲しみ。
 その肌を見られてしまったことへの恥ずかしさ。

 それ意外にも別の感情──。
 何かの脅迫観念に取り憑かれているのが見え隠れしていた。

「でも、もう大丈夫……すぐ治るからね」
 信一郎は優しく言い聞かせると、美里の頬へ手を添える。

 ウィルス性の感染症か──信一郎はすぐさまこの病気を理解した。

 魔道師『木魂こだま』はあらゆる生命体の状態を把握できる。

 この能力があれば患者に触れただけでどんな病態かを把握できるし、その身体に巣食う病原体さえ意のままに操れるのだ。

「──はい、治ったよ」

 信一郎が美里の頬に触れた途端、全ての吹き出物は乾燥した土のようになり、軽く叩いただけでボロボロと崩れていった。

 崩れ落ちた吹き出物の下からは、元通りの美しい肌が現れる。

 美里は呆気に取られていたが、頬を撫でるとその感触に驚いた。

「え……? あれ……? う、嘘っ!? 治ってる? 本当に治ってる!?」
 信じられないのか、美里は自分の頬を何度も触っていた。

 見守っていた女の子たちもあまりの出来事に大騒ぎしている。
 こんな簡単に治るとは思いも寄らなかったのだろう。

 何より、一番驚いているのは教師であるはずの大須だった。

「そんな、まさか……あ、あなたたち、一体何者なんですか!?」
 切羽詰まったように問い詰める大須に、幽谷響は勝ち誇ったように笑う。

生憎あいにく、ゆすりたかりが得意なエセ霊能力者じゃございやせん──拙僧たちは本物・・でございやすよ」

 それにしても大須の反応は過剰だった。
 驚きの他にほのかな落胆さえ垣間見えるほどだ。

 戸惑う大須は幽谷響に任せて、信一郎は騒いでいる女の子たちに向かった。
 今にも押し寄せてきそうな彼女たちに優しい声で言い聞かせる。

「御覧の通り、この病気はすぐに治せる。だから慌てず順番に並んでね」

 幽谷響の鎮静音楽の効果もあるのか、少女たちは騒ぐのをやめると大人しく言うことを聞いてくれた。それでもこの病気が治るという事実と、魔法みたいな信一郎の能力を前にしてテンションは高めだった。



 一刻も早く治してあげよう──信一郎は手早く処置を終えていった。


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