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第21章 黒き世界樹そびえる三つ巴の大地
第509話:守るも攻めるも我武者羅な一進一退
しおりを挟む魔導制御型誘導爆撃兵器――トールハンマー。
伝説の戦神トールが愛用した撃鎚ミョルニルを参考に造られた、ミサイルやロケットに近い魔導兵器。形状も野太い鉄柱のように頑丈そうだ。
ミョルニルは投擲すると必ず敵の頭に命中する。
その頭を打ち砕いた後、使い手であるトールの元に帰ってくる。
トールハンマーはこのミョルニルの性能を受け継いでいた。
発射台から撃ち出されたトールハンマーは魔力を凝らすと、弾頭にミョルニルを模した鉄槌を形作る。これは凄まじい雷撃を押し固めたようなものだ。ハンマーのような形状になった弾頭は航空力学を無視して豪速で飛翔する。
目指すは敵兵がもっとも密集した地点。
着弾するとと同時に大爆撃を引き起こし、鉄槌を象っていた弾頭は全方位に骨を打ち砕いて灰にするほど雷撃をのべつ幕なしに撒き散らす。
都市の中央に着弾すれば五割方は灰燼に帰す威力だ。
破壊の限りを尽くしたトールハンマーは、爆心地の中心に傾いだ鉄柱のように立ち尽くす。しかし、これで終わらないのがドヴェルグ族の技術力。
役目を終えたトールハンマーは帰還する。
伝説のミョルニルよろしく、発射台に戻ってくるのだ。
この発射台は魔力の高速充電器も兼ねているので、帰ってきたトールハンマーは即座に魔力を充電されると再発射されていく。
発射と帰還を幾度となく繰り返すため、どんなものに直撃しても変形することのないよう壊れにくい形をしているのだ。
超長距離射程式電磁加速砲――レーヴァティン。
伝説の悪神ロキが死者の国にて神秘のルーン文字を鍛えたものだとされる、剣とも槍とも言われている謎めいた武器に肖った命名をされていた。
レーヴァティンに関して判明していることは三つ。
ひとつ、傷付ける魔の杖という異名を持つこと。
ふたつ、世界樹の頂きに留まる黄金の雄鶏を速やかに殺せること。
みっつ、封印されているため誰も使えないこと。
(※レーヴァティンはレーギャルという9つの錠前がついた箱に収められ、女巨人シンモラがその番人を務める。もしレーヴァティンを使いたければシンモラに賄賂を送るしかないのだが、その賄賂は黄金の雄鶏の尾羽しか認められない。しかし、世界樹のもっとも高い枝に留まる黄金の雄鶏を仕留めるためにはレーヴァティンを使わなければならない……堂々巡りで不可能というわけである)
世界樹の頂きにいる黄金の雄鶏を射殺す槍剣。
この電磁加速砲もその超が付くほど長距離の射程を実現したことから、憎たらしい悪神の手になる武器とはいえ、その名を借りることとなった。
ドヴェルグ族に言わせれば皮肉めいた評価とのこと。
砲身を埋め尽くす勢いで刻まれたルーン文字。
単なる電磁的な加速に留まらず、魔術的ブーストも加算された弾丸は音速を超えて数多のものを貫いてもその速度を鈍らせることはない。また従来の電磁加速砲は金属片を砲弾として射出するが、これは一味違う。
真なる世界最硬のアダマント鋼を薄くコーティングした特殊砲弾。
こちらにも貫通、爆砕、撃破、抹殺……などの敵を打ち倒すことを突き詰めたルーン文字がこれでもかと刻まれており、破壊力の底上げをしている。
そしてトールハンマーと同様の機能も内蔵されていた。
周囲に敵が密集していると感知すると大爆発を巻き起こすのだ。
そのための高性能爆薬がみっしり詰め込まれている。
トールハンマーとレーヴァティンの大火力による一斉射撃。
足すことの着弾地点を中心に、半径数百mは塵も残さぬ衝撃波と爆風で吹き飛ばす広範囲爆撃。更に足すことの雷撃を始めとした属性付与攻撃。
ただし、これが実戦への初投入であることを引き算する。
「どうだ……私たちの技術は……ッ!?」
通じているのか? とフレイは祈るように呟いた。
隊列を組む兵士たちもは固唾を呑んで見届けようとしていた。
中でもフレイの期待を込めた集中力が群を抜いていた。
親の敵を見つめる険悪な眼差しで瞳を眇めて、霧の中で立ち尽くしたかのように冷や汗で濡れそぼっても、瞬きひとつせず注視していた。
地下都市へ向けて進軍中だった深きものども。
その最前列が地下都市まで残り一㎞の距離に踏み込んだ瞬間、最大火力の初撃をお見舞いしたのだ。その威力は如何に? とフレイは見定めていた。
濛々とキノコを思わせる爆煙が立ち上る。
磯臭さを混ぜた焦げ臭い黒煙が目の前まで迫ってきていた。
――調理中の魚介類を焦がした時の匂い。
そう表現するのが妥当な臭気が吹く風を染めている。
衝撃波と爆風が舞い上がる煙を吹き飛ばすと、深きものどもに与えた損害がようやく垣間見えてくる。フレイは勿論、兵士一同も目を見張った。
《いあ! いあ! いああああぁ……ッ! いあぁっ!》
《くとぅるう゛ぉ……る・りええい・うがぁ……ッ!》
《ねめ! ねめぇ! てけるりりぃぃ……いあぁぁかかかかっ!》
深きものどもの悲鳴が鳴り止まない。
進軍する最前列は完全に崩壊したと見ていいだろう。
今の一斉砲火で仕留めた敵は数知れず。
恐らく数千から万の桁に届くまで打ち倒せたはずだ。
立っている者もほとんどおらず、五体を失った場所からドボドボと血や内臓をぶちまけている。それでも大半の深きものどもは立ち上がろうとしており、常識はずれな生命力の強さを見せつけていた。
奴らが不死身に近いのは先刻承知のこと。
だが、辛うじて生き残った者もその場に足を止めていた。
先述のように聞こえる、呪文なのか呪詛なのかわからない文言を断末魔のように叫びながら、血と肉片を滴らせて二の足を踏んでいた。
恐れている――地下都市の攻勢をだ。
「通じてるッ! 私たちの一撃に足を竦ませているッ!」
それを認めた瞬間、フレイは歓喜の声を上げた。
「効果覿面だ! みんなの造った武器で……外来者たちを倒せるぞッ!」
王女の号令は瞬く間に兵士たちの間に広がり、戦勝祝いには早いが歓声が鬨の声となって広がっていく。しかし、喜びに浸ってばかりはいられない。
「ドリモグ! 地底工兵部隊に通達を!」
フレイは浮かれることなく足下へ指示を飛ばした。
彼女が携える箱に隠れていたモグラ族の若い将兵は、「ハッ!」と鋭い返事とともに敬礼すると、全身をドリルのように回転させて地中に潜った。
地下へ掘り進めば仲間の築いたトンネルに辿り着く。
モグラの将兵はトンネルの末端にまで届く大声を張り上げる。
「地底工兵部隊に伝達! ガングニール起動開始! 射出パターン[B]!」
了解ッ! とトンネルに待機していた工兵たちが応じた。
待ってましたとばかりに起爆ボタンを次々と押していく、モグラ、マーモット、ウォンバットの工兵たち。その効果はすぐさま地上へと現れた。
地下都市からの砲撃に足止めを喰らう半魚人軍団。
しかし、進軍の停止もそう長くは続かない。
海の底からいくらでも半魚人の兵隊が湧いて出てくるからだ。
死に体となった前線を押し退けて掻き分けて前進する。
いいや、そんな可愛いものじゃない。
最前列にいた連中がやられても何処吹く風。まだ無傷のままな後続の深きものどもは、冷酷にも仲間の屍をわざとらしく踏み拉きながら進んでいた。
血も涙もないとはまさに奴らのためにある言葉だ。
そんな彼らに前触れもなく槍衾が襲いかかった。
左右や横ではなく、頭上からでもない。足下から突き上げるようにだ。
魔法式設置型魔力地雷――ガングニール。
北欧神話の主神オーディンが所有する神槍グングニルが名前の由来だ。
こちらも撃鎚ミョルニルのように投擲すれば必ず当たる“必中”効果を持っているが、残念ながら“必殺”までには至らないと伝えられている。
オーディンをしてミョルニルとグングニルを含む六つの神宝を前にして「この中でもっとも優れているのはミョルニル」と明言するほどだった。
それでも主神が携える神々の武器には違いない。
その威力を模倣したこの地雷は、無数の槍を突き上げるものだ。
地中を掘り進むことを得意としたモフモフたち。
その中でも精鋭部隊が深きものどもが通るであろう道の真下に、坑道も斯くやという立派なトンネルを張り巡らせ、そこに設置した魔法の地雷である。
この地雷は敵が踏むと爆発するタイプではない。
起爆はこちらの意志で行う必要があるものの、その分タイミングを見計らうことができ、トールハンマーのように繰り返し使える充電機能も備わっている。
地上へ現れるのは――魔力を固めた槍。
深きものどもを串刺しにして消失し、起爆ボタンを押せばまた現れる。
ひとつの地雷から何十本もの槍が突き出し、それが地面にビッシリ敷き詰めているので、ボタンを連打すれば何千何万もの槍衾が襲うのと変わらない。
次々と串刺しにされる深きものども。
全身を何本もの槍で突き上げられるように刺されれば、不死身に近い不死の肉体であろうと激痛に悩まされて足も止まるというものだ。
そこへ再びミサイルとレールガンの砲撃をお見舞いしていく。
爆発からの衝撃波を浴びて跡形もなく吹き飛ぶ者もいれば、槍に串刺しにされたまま爆炎に焙られて焼死する者もいる。地面は焦土と化していき、土塊さえ燃え尽きて灰になるほどの輻射熱が辺りを覆っていた。
串焼きのような半魚人の死に様を見たフレイは口元をへの字に曲げる。
「煮ても焼いても食えない……か」
人一倍国と民を愛する気質ゆえか、殺戮を好む性質ではない。
両親を死に追い遣った原因でもある侵略者の先兵であろうと、その死に顔にいい顔を見せるはずもなかった。苦渋を飲んだかのように不味い表情だ。
それでも――手加減する理由にはならない。
フレイは周囲に控える通信兵たちに檄を飛ばしていく。
「第一陣に続き第二陣も砲撃を完了したら再装填準備! ツバサさんとミサキくんから龍脈のエネルギー回してもらってるんだから急いで! 地底工兵部隊にも新たに伝達! 槍の効果は十分! 調子に乗って連発しすぎないように!」
地下都市の兵士たちにフレイは的確な采配を送る。
砲撃を担当する砲兵部隊にはスマホにも似た魔術式の通信機で指示を送り、近くに控えさせていたモフモフの兵士たちを各方面へ伝令に走らせた。
「慌てるな! 焦るな! 己が受け持つ仕事を確実にこなしていけ!」
傍らに立つゴルドガドはその補佐に徹していた。
事ここに至りフレイの才覚にすべてを託したのか、いつものように口煩く注意することはない。彼女の指揮を補うことに専念する。
地下都市のある山脈へ殺到する深きものどもの大軍勢。
軍隊の初列を押し進めてくる半魚人どもを魔力兵器で迎え撃つフレイたち。
初手では完全に地下都市側に軍配が上がっていた。
しかし――敵も然る者。
別次元から空間を越えて真なる世界へ侵略してきたのは伊達ではない。
「奴ら……ッ! 近付いてきてる!?」
切羽詰まったフレイの声は地下都市の兵団に緊張を走らせた。
深きものどもが約一㎞まで迫ったところで迎撃を始めたため、双方の間合いは900m前後離れていた。大火力による砲撃と地雷による足止めで前線を崩壊させ、それ以上は一歩も近付けさせていないはずだったが……。
横に置いた箱。それを縛る黒革のベルトをフレイは強く握り締めた。
「ジリジリとだけど……迫ってきてる!」
警告にも聞こえる王女の声に地下都市の兵士たちも身構える。
目を凝らす視線の先――深きものどもの前線部隊。
その顔触れが変貌を遂げていた。
分厚い鱗と頑強な甲殻に覆われた屈強な半魚人が並んでいるのだ。
まるで重装甲の歩兵である。
今までの連中がノーマル装備だとしたら、新たに現れたのは重武装。それもフルプレートアーマーの上に耐火装備まで重ね着したかのような重装備だ。中には両手の鰭を広げて強固な盾として使っている者までいた。
ライオットシールドの強化版みたいなものである。
――甲冑魚。
かつて古代の地球の海に棲息した、全身に鎧をまとったかのように外骨格めいた骨質板で身体を守っていた魚類を彷彿とさせるデザインだ。
ただし、その防御力は比較にならない。
爆発も衝撃波も物ともせず、炎をにもビクともしない。
電磁加速された貫通力に優れた砲弾はさすがに防げないようだが、厚く硬く広げた鰭の表面を滑らせることで回避する方法を試みていた。
あの盾みたいな鰭は弾頭を逸らすためのものだ。
勿論、爆撃から身を守るためのシールドの役目も果たしていた。
足回りの装甲も万全なのか、地中から突き上げる魔力の槍も貫き通せず、弾き返す音が鳴り響いていた。足並みを崩すくらいが関の山である。
重武装した半魚人たちがスクラムを組んで躙り寄ってきていた。
爆破に押されても一歩一歩、間合いを詰めるようにだ。
「あんな奴ら……さっきまでいなかったぞ!?」
ギリリッ、とフレイは悔しそうに音が鳴るほど歯噛みした。
これほど重武装した深きものどもは先ほどまで一匹も確認できていない。
それも道理――彼らは進軍中に肉体を変形させていた。
地下都市からの爆撃により想定外の被害が出たことで、後備えに控えていた深きものどもが対応するべく肉体改造した結果だった。
地獄のような環境でも間を置かずに肉体を対応させていく。
非常識極まりない環境適応能力だ。
驚異的な肉体機能を目の当たりにしたフレイはたじろぎそうになる。
「……いや、完全に防げてはいない! 何とか凌いでるだけだ! 攻撃自体はちゃんと効いてる! 砲撃の手を休めるなぁーッ!」
撃って撃って撃ちまくれーッ! とフレイは発破を掛けた。
工兵たちも姫様に負けじと大声を上げて作業を急ぎ、迫り来る深きものどもの群れに向けてひたすら砲火を射掛けていく。爆撃は確かに効いているのだが、半魚人たちは怯むことなく進軍の歩を進めていた。
深きものどもは着実に前線を押し上げている。
どれだけ同胞がトールハンマーやレーヴァテインに吹き飛ばされ、ガングニールで串刺しにされようとも、後ろに続く者が意に介することはない。
――私が死んでも代わりがいるもの。
この有名な台詞を体現するかの如く、仲間の屍を踏み越えて地下都市の入り口へと接近するのみだ。想像を絶する人的資材があればこそできる荒業。
兵士の損耗を計算しない――悪魔的な人海戦術だ。
人倫を無視するところが蕃神らしいとも言える。
しかし、彼らとて悪戯に兵力を削られるのはお気に召さない様子。
地下都市の迎撃に対抗するための手を打ってきた。
「……もう出てきおったか!?」
まだ早い! とゴルドガドは悔しげに呻いてしまう。
進撃を続ける深きものどもの軍勢。
その後ろに血肉めいた色の泡が湧いたかと思えば、ゴボゴボと不快な濁音を響かせて膨張し、山のように大きな肉塊となって蠢いていた。肉の表面にいくつもの割れ目が生じると、そこから大小無数の目や口が現れる。
――テケリ・リ! テケリ・リ!
いくつも開いた口は耳障りで奇怪な泣き声を繰り返した。
耳や鼻めいた器官も生じ、手や足の形をした何本もの触手が地面を掴む。
それを引っ張ることで肉塊も深きものどもの進軍に加わった。
――生体兵器ショゴス。
変幻自在の万能細胞を有した不定形の生命体。名状しがたい怪物だ。
深きものどもはこれを飼い慣らすように使役していた。
クトゥルフ神話の原典だと、深きものどもとショゴスは手を結んだ協力関係だとか、同盟を組んでいる、対等な関係であることを示唆されている。
果たして真なる世界の彼らの関係性はどれほどのものか?
少なくとも共闘できる関係性ではあるらしい。
ツバサたちとハンティングエンジェルスが出会えた海上戦でも駆り出しており、肉の塊を砲塔に仕立ててエネルギー波を打ち出したり、目や耳といった五感を備えた生物型のミサイルを撃ち出しなどの攻撃を繰り出してきた。
――テケリ・リ! テケリ・リ! テケリ・リッ!
不安定な奇声を上げながら、絶えず肉体を流動させるショゴス。
塔のように大きな砲塔が迫り出し、ミサイルの弾頭が開眼する。
どちらの照準も山脈の中腹を捉えていた。
そこは――地下都市の工業地帯。
工場は片付けられ、砲撃のための兵器が設置されている。
深きものどもとしても地下都市からの遠距離砲撃は鬱陶しいのだろう。ショゴスの生体レーザーや生体ミサイルが狙いを定めていた。
発射シークエンスも素早く、どちらも即座に発射された。
先手で封じるどころか迎撃も間に合わない手際の良さだ。肉塊が砲塔やミサイルを形作った同時に発射するものだから対処が間に合わない。
ヤバい! とフレイたちが空を切るそれらを見送った瞬間。
上空に爆発の連鎖が轟然と響き渡る。
ショゴスの放った何条ものエネルギー波はおろか、縦横無尽に飛び交う何百匹もの生体ミサイルも、山脈に命中する前に空中で爆散してしまった。
地下都市の者たちも深きものどもも呆気に取られる。
ショゴスの砲撃を防いだもの――それは不可思議な結界だった。
山脈を取り囲む全長50mの城壁。
五神同盟の助っ人が一晩で建てた、絶壁のような高さを誇る重厚な防壁だ。
円を描くようにそそり立つこれらを支柱として、透明なドーム状の結界が広大に展開されていた。うっすらも魔法を刻んだ紋様が浮かんでいる。
その結界の表面に、いくつもの頑強そうな盾型結界が張り付いていた。
一見すると厚みのある銅鏡のような形をしている。
黄金の輝きを放つ円盤状の盾型結界。
実際にショゴスの攻撃を防いだのは、ドーム状の結界の表面を自由に動き回ることでオールレンジに対応できるこの盾型結界だった。
それがどういうものかを理解したフレイは胸を撫で下ろした。
「助かった……まったく、大した守護天使サマだよ」
姫様が仰ぎ見るのは山脈の頂上近く、眼下を一望できる展望台。
そこに五神同盟からの助っ人が配備されていた。
「うん――上出来です」
教えた通りの結界を作ったマリナをモミジは素直に褒めた。
水聖国家オクトアード 魔女 モミジ・タキヤシャ。
仙道師エンオウの義妹にして相棒、そして婚約者の少女である。
もう二十歳になるエンオウの下ながら小柄なため幼く見えるが、スリーサイズの発育は素晴らしいトランジスタグラマー。そのはち切れんばかりの肢体を飾るのは、派手な着物を露出度高めにアレンジした衣装。
頭には魔女帽子を被り、高下駄のような履き物を履いている。
花魁と魔女をアバンギャルドに和洋折衷させたファッションだ。
感情の起伏に乏しいため、無口系クール美少女で通っているが、中身は若旦那にゾッコンの素直系クール美少女でもある。やや茶色に近い黒髪は二つに分けて前へと垂らし、その先端をリボンで軽く結っていた。
大きな丸眼鏡の奥では円らな瞳が半眼で空を見据えている。
「基礎となる結界の強度は十分です。接近する敵意に反応して局所的に円形防壁を発現、受け止めた攻撃のエネルギーを消費させて無効化……うん」
パーフェクトです、とモミジはサムズアップした。
「ありがとうございます、モミジさん!」
ハキハキ返事をしたのはマリナだった。
ハトホル太母国 五女 マリナ・マルガリーテ。
ツバサをお母さんと慕う子供たちの一人。出会いはVRMMORPGにまで遡るため、11人にもなったツバサの子供たちの中では古参である。
お姫様なロリータファッションが似合う10歳の美幼女。
薄紫の髪は三つ編みにして二つに結っており、頭にはプリンセスらしく王冠を模した帽子を被っている。左右に分けた髪には赤と青のリボンを結んでいるが、これはそれぞれツバサとミロのイメージカラーだ。
マリナの周囲には無数の魔法陣が浮かんでいる。
これはドーム状の結界を操るための制御盤のようなもの。
それを小さな指先でタッチパネルよろしくタップするマリナは、地下都市の山脈を守る大規模な結界をほぼ一人で操作していた。
マリナの過大能力──【神聖なる幼女の不可侵領域】。
ネーミングセンスの酷さはさておいて。
才能もあるのか、結界に関しては五神同盟でマリナの右に出る者はいない。俗ないい方は好きではないが、最強といっても過言ではないだろう。
当人がまだLV999でないものの頼りにすることが多い。
幾度となく五神同盟を守ってくれたものだ。
しかし、そこはまだ十歳ちょっとの少女。
才能はあっても技術や経験は未熟なところが多々あった。それはマリナ自身も認めているところで、日々研鑽に励んでいる努力家だ。
その道の先達へ教えを請うのも忘れない。
一方、モミジも魔法関係の才能は五神同盟でも抜きん出ていた。
現実世界にいた頃から鬼女の末裔と恐れられた才能は、エンオウの母親でもあるお師匠様によって魔女として開花し、それがVRMMORPGを通すことで魔女神として順調にランクアップしていた。
勿論、結界に関する魔法にも卓越している。
そこまで魔法を修めたモミジをして「結界に関するものならば私を超える将来性を感じさせます」と太鼓判を押されたのがマリナである。
そのマリナが――モミジに応援を頼んだ。
頼れるお姉さんとして選ばれたのでモミジも乗り気らしい。
実戦経験という絶好の機会に恵まれたのを最大限に活用して、実地訓練でマリナの才能を育てようと目論んでいた。
あの特殊な結界はモミジからのテコ入れである。
いいですか、とモミジは教鞭に見立てた人差し指を振る。
「マリナちゃんが編み出した、内側からの攻撃は通過させるけど外側からの攻撃は一切シャットアウトする結界……一見するとチート過ぎる結界に思えるですけど、危なっかしいところが目を引きます。まず第一に不安定です」
「はい、それはワタシも実感がありました……」
モミジの指導を受けるマリナは言い返さず反省の色を示した。
「前にスプリガン族の皆さんと一緒に蕃神と戦った時、センセイの力も借りて初めて使ってみたんですが……この結界、大体の攻撃は防げたんですけど、強い一撃には耐えられなくてすぐに壊されちゃって……」
(※第249話~第250話参照)
「そう、有り体に言えば脆いのです」
モミジは問題点がどこにあるかを指摘していく。
「堅く守られた結界の内側から攻撃し放題。一見するとズルして無敵モードで最強と考えたくなりますが、一方通行とはいえ内側から物理的に干渉……つまり攻撃を素通りさせられるのは結界として不完全な証でもあるのです」
結ばれた世界と書いて――結界。
「物理にしろ魔法にしろ、外的な災いから守るための結界はちゃんと空間を閉じて結ばなくてはいけません。内側と外側は別の世界になるのです」
「一方通行でも行き来できたらそこが脆くなる……」
ですね! とマリナは反省すべき点をしっかり解釈した。
モミジは「宜しいです」と満足げに頷いた。
「そうです。それを踏まえて一方通行の結界を活かしたまま、結界の内側を死守するべく鉄壁の防御をとる方法。それが……」
この二層式結界術です、とモミジは講義のように語り出す。
理論的には以下の通りになる。
「まず第一層の結界――これは通常の結界でもいいですけど、マリナちゃんが考案した内側からの攻撃のみを通す一方通行型にしても構いません。防御力に注力することも必要ですが、あくまでも基礎となる第一層と考えてください」
その上に第二層となる結界を重ねて構築する。
「こちらの結界はセンサーの役割を重視して、何らかの脅威が迫ったらノータイムで反応。最強クラスの波動砲でも受け止められるくらいの分厚い盾型防壁をサイズに合わせて発現させるようにセッティングすれば……」
「それが二層式結界術……で、これなんですね?」
そうです、とモミジは首肯した。
モミジの指導を受けたマリナが展開させたドーム状の結界。
土台となる部分は山脈を取り囲むように設置された50m城壁の力を借りているが、かなり大規模に整えた大型結界である。
御覧の通り、地下都市からの砲撃はすべて通過させてきた。
しかし、先ほどのショゴスによる砲撃は完全に遮断。盾型防壁で受け止めて爆散させ、その爆発の威力すらも掻き消すように消滅させていた。
モミジは人差し指に続いて中指も立てる。
ピースサインを小さく振りながら小さな魔女の講釈は続いた。
「第一層の結界の強度をマシマシにすれば当然防御力は高くなり、鉄壁の守りとして陣地を守ります。迎撃や反撃を考慮して一方通行型の結界にしたとしても、先ほどのように味方へ被害を及ぼさない防御力を維持することができます」
「はい、勉強になります!」
生真面目なマリナは一言一句に頷き、前向きに参考にしていた。
二層式なので結界に回す労力が多いかと思えば、二層目の結界は攻撃が接近したタイミングを見計らい、盾型防壁を瞬間的に出現させればいいので割と省エネ設定だという。ピンポイントな集中砲火にも対処できるのもいい。
「盾型防壁を発動させるタイミングは目視でもいいですが、このように予め自身の周りに術式を這わせておくことで自動制御にするのもオススメです」
目視が間に合わなくても自動制御がフォローしてくれる。
そのための術式設定だという。
モミジは自動制御の術式を古典的な巻物に転写しており、自分を取り巻くように何本も取り巻かせていた。まるで複雑なジャイロスコープのようだ。
「はい、それも参考にさせていただきましたが……」
チラリ、とマリナは自分の背中を振り返る。
「ワタシのは天使の羽っぽいんですが……これでいいんですか?」
モミジに指導されるまま自動術式を設定したら、マリナの場合は天使の翼みたいな形状となって背中に広がっていた。フレイの視力はこれを捉えていたため「守護天使さま」と評したわけである。
マリナの可憐さも相俟って、本当に天使のような愛らしさだ。
「可愛いからいいのです。可愛いは正義なのです」
モミジは二度目のサムズアップをマリナへと送った。ついでチラリと後ろへ視線を送ると「自分に倣うのです」と命令的な目配せを飛ばした。
「……うん、俺も可愛いと思うよ」
「マリナちゃんカワイイー☆ マジモンの天使だよ守護天使サマだよー☆ 記念に写真をいいかな? 一枚といわず十枚くらいー☆」
エンオウとイケヤはそれぞれの個性を活かして褒めちぎった。
片や武骨で不器用ながら真心を込めた言葉と柔らかな拍手を送り、片や惜しみない派手派手しさで称賛する。足して二で割ればちょうどいい塩梅だ。
「あ……ありがとうございます」
褒められたマリナは頬を赤らめると、照れ臭そうに俯いてしまった。
水星国家オクトアード 仙道師 エンオウ・ヤマミネ。
エンテイ帝国 輝公子 イケヤ・セイヤソイヤ。
南方大陸への出征メンバーとして選抜されたこの二人。今回の戦争では守りの要となる結界を担当するマリナとモミジの護衛役を任されていた。
モミジの兄貴分にして婚約者であるエンオウ。
身の丈2mの筋肉モリモリマッチョの変態みたいな巨漢ながら、爽やかイケメン風の童顔。毛皮付きフライトジャケットとパツパツのジーパンがよく似合う。
巨体を支えるため靴底の分厚い特製ブーツを愛用している。
猛将キョウコウを「社長☆」と崇める元ホストのイケヤ。
顎先の尖った二枚目半で見た目通りにチャラいのだが、意外と誠実な好青年だ。エンテイ帝国の援軍としての立派に働いてくれている。
しかし、目に眩しいほど光り輝くスーツは如何なものか?
とにかく、この二人が結界を担当する美少女二人の守りについていた。
――結界があるとしても安心はできない。
深きものどもは蕃神の“王”が率いるのではなく、その眷族にして奉仕種族という位置付けではあるものの、何を仕掛けてくるか読めない不気味さがある。決して油断はできないので、護衛役を割り振ることとなった。
「では、私もマリナちゃんに力添えして結界に集中するです」
ボディーガードがよろしくです、とモミジはウィンクで合図を送る。それにエンオウとイケヤは気さくな笑顔で手を振って応じた。
モミジがお姉さんらしくマリナの後ろを守るように立つ。
そして、新たな巻物が何本も広げられる。魔法の方程式が記されたそれらはモミジごとマリナを守護するが如く何重にも円を描いていく。
同時に地下都市を守る結界の強度が急上昇。
マリナの結界にモミジの力が上乗せされたからだ。
生体兵器ショゴスからの砲撃が苛烈さを増そうとも、何百枚もの盾型防壁が次々と現れて余すところなく防ぎきっていた。
地下都市からの砲撃は素通りさせ、深きものどもの軍勢に打撃を与える。
「うーん、こっちだけチートモードって感じだねぇ☆」
一方的にも見えるやり取りを額に手を添えて眺めていたイケヤは、ちょっとばかりの申し訳なさで眉尻を動かしながら呟いた。
エンオウは表情では理解を示すも言葉では正当性を主張する。
「あちらも度し難い人海戦術を使ってるんだからお互い様ですよ」
「どっちもどっちってことだね。仕方ないかー☆」
ではでは☆ とイケヤは持ち上げた両手に光り輝く魔力を凝らした。
この二人――単なる護衛役ではない。
遠距離からでも砲撃に負けず劣らない弾幕攻撃ができるため、マリナとモミジを守りつつ地下都市を後方支援する役目も仰せつかっているのだ。
「お魚さんの部隊もけっこう上陸してきたみたいだしー☆」
「……ぼちぼち俺たちも動きますか」
エンオウも腰撓めにした拳に“気”を溜め込むと、鋭い閃光を放つ光球へと練り上げる。程良いところで山脈の上空へ突き上げるように打ち上げた。
太陽と見紛うほどの光量を発するエンオウの気功玉。
それは妖しい色彩を帯び、心臓のような脈動を繰り返していた。
打ち上げた時はバランスボールサイズだったが、数十倍に膨らんだところで気功玉を睨め上げていたエンオウが静かな声で命じるように告げる。
「降り注げ――妖霊星」
肥大化した気功玉は弾け飛び、数え切れない気功の散弾となって地表へ向かって落ちていく。弾けた際に指向性を持たされたのか、散弾はすべて深きものどもの群れへと狙い澄ますように落下していった。
地面へ落ちると同時に大爆発を引き起こすのは言わずもがな。
重武装した深きものどもでも直撃すれば一溜まりもない。
隙間がないほど縦列を組んで進軍していた半魚人の大軍勢は、これにより大いに足並みを狂わされ、兵力をどんどんと削がれていった。
「やるねーエンオウくん☆ よーし、ボクも負けてられないぞー☆」
対抗心を燃やしたイケヤも魔力の光を解き放つ。
それは青い空に光の大河を渡したように広がりながら伸びていく。さながら天の川かミルキーウェイ、水平線の彼方まで届きそうな勢いだ。
空に渡された光の川は無数の星の瞬きへと変化する。
「エレクトリカルゥゥゥ……メテオシャワぁぁぁーーーッ!」
電撃を帯びた光弾が村雨よろしく降り注ぐ。
こちらは豪雨のように小さな雨粒みたいな光の矢が大量に落ちるのだが、そのすべてが貫通力に優れて電撃の属性を帯びた攻撃的な光弾である。
エンオウの気功弾と比べれば殺傷率は低いが、足止めの効果は大きい。感電させれば筋肉や神経が使い物にならなくなるので尚更だ。
「負傷した仲間は死体より厄介っていうからねー☆」
映画からの豆知識だけど☆ とイケヤは感電させる意図を呟いた。
深きものどもの様子から察するに、負傷した仲間を助ける衛生兵の概念はない。しかし、感電して微動だにしない仲間はさぞかし邪魔だろう。
イケヤの狙いはこちらにあるようだ。
傍観に留まらない――護衛役からの援護射撃。
頼みの綱である生体兵器ショゴスの砲撃を結界により撃墜され、それどころかドヴェルグ族からの砲撃に勝るとも劣らない遠距離攻撃による爆撃で、深きものどもにも焦りや動揺が見え隠れするようになってきた。
それでも奴らはストイックに進撃を続けてくる。
死を前にして脅える素振りはあった。
だが、死を忌避する本能を噛み殺してでも前に出てくるのだ。
よっぽど上司に当たる“本隊”が恐ろしいのか、自軍の兵士がバタバタと倒れていくのを横目に、あの鉛の円盤を奪おうと戦場へ踏み込んでくる。
死を恐れない兵隊ほど恐ろしいものはない。
我が身を顧みないから、当たり前のように捨て身の特攻を実行に移す。
深きものどもは個人の意志が尊重されないのか薄弱なのか、全体意志にも通じた種族意識で立ち向かってくるため、個を潰しても効果はないに等しい。
ゆえに我武者羅な人海戦術一辺倒で突き進んでくる。
如何なる大火力を以てして数千数万の同胞を殺めたとしても、怯みはすれど臆しはしない。ただただ目的達成のために動いていた。
ならば、こちらも根絶やしにする覚悟で挑まねばなるまい。
しばらく一進一退の攻防が続く。
大陸島に潮の香りと血肉が焼ける焦臭い煙が満遍なく充満した頃、戦火によって立ち上る黒煙を目眩ましにして動く物影があった。
深きものどもの群れである。
背の高い城壁に囲まれた地下都市の正面入り口。
フレイたちの亜神族混成部隊が待ち構えるそこへ軍勢の波が押し寄せているのは相変わらずだが、度重なる爆撃によって散らばるのを余儀なくされた半魚人の兵士たちは、隊列からはぐれながらも個々に再集結していた。
軍列に戻らない散兵が集い、いくつもの部隊となって散開する。
バカ正直に正面突破を狙うだけが能ではない。
――旧神の印。
深きものどもが地下都市の攻略を躊躇した最大の理由。
恐らくは半魚人たちも「探している鉛の円盤はアソコにあるのでは?」と勘繰っていた地下都市への侵攻に二の足を踏ませた障害その物である。
蕃神の眷族は旧神の印を恐れて近付けない。
深きものどもとて例外ではなかった。
大陸島の各地に埋もれていた旧神の印を発見したドヴェルグ族はその効果に気付くと、たくさんの旧神の印を発掘して国土防衛に利用した。
国を囲むように土塁を築き、そこに旧神の印を埋め込んだのだ。
このせいで深きものどもは迂闊に近寄れなくなった。
その印章を埋め込んだ土塁が取り払われた今、背が高いだけの城壁を乗り越えてドーム状の結界を打ち破れば侵入することも可能なわけだ。
蕃神の眷族にしてみれば、旧神の印に近付くより容易いことらしい。
それに気付いた深きものどもが部隊を左右へと展開していく。
城壁や結界を破るため生体兵器も同行させていた。
一直線に幅広の軍勢で縦列を組んでいた深きものどもの軍勢。
それが次第に左右へと割れていき、地下都市を包囲するべく軍勢を輪を広げようとしていた。恐ろしいことに兵隊ならばいくらでも動員できる。
底が知れない人海戦術は本当に恐ろしいものだ。
そして、彼らが個々に有する異常と評するしかない肉体能力も発露される。
「半魚人さんたち……結界を破ろうとしてます! いえ……」
溶かそうとしてます! と結界担当のマリナが悲鳴を上げた。
深きものどもは結界に覆われた城壁にしがみつく。
鋭く研ぎ澄まされた鉤爪や逆立った甲殻を上手に使って壁に取り付くと、魚や蛙じみた口を大きく開いて粘液みたいなものを吐き出していた。
それを浴びた城壁は白煙を上げ、結界もろとも溶解されていく。
溶けて脆くなったところに拳骨や手刀を叩き込んだり、硬そうな岩を投石したり、それこそ生体兵器による砲撃で穴をこじ開けようとしていた。
生体兵器の扱いも一味変えてくる。
――テケリ・リ! テケリ・リリリィィッン!
粘液を掛けた場所に接近させると、肉塊は硬質化させた三角錐を尖らせる。螺旋状に回転させて突撃する様はドリルによる掘削そのものだった。
咄嗟にモミジが対応するも表情は芳しくない。
「ぬぅ……盾型防壁を顕現させても意に介しませんか……ッ!」
深きものどもが穴を開けようとする箇所に銅鏡めいた盾型防壁を配備するのだが、半魚人の兵士は動じることなく穴開け作業に没頭していた。
城壁と結界をぶち抜く作戦は他にもあるようだ。
壁に取り付いて溶解液を吐く部隊とは距離を置いた一団。
彼らは両腕を「前へ倣え」みたいな動作で持ち上げると、水掻きの目立つ両手をピンと伸ばして掌を合わせた。そこから音を立てて水飛沫が噴き上がる。
発射されるのは高圧水流――それも工業用レベルの威力だ。
限界を超えて圧縮してから噴出させた水流ジェットはダイヤモンドすら両断すると聞くが、彼らはそれを生身でやってのけた。
尋常ではない水圧は結界ごと城壁を削ぐ威力だ。
もはや単なる水流には留まらない。レーザー光線みたいな破壊力を有していた。鉄砲魚ならぬレーザー魚なんて洒落にならない。
このレーザー水流、出し方に決まりはないらしい。
多くは両手を合わせた指先から発射しているが、中には両肘を立ててクロスさせたところから出す者もいた。どうやら手か腕を交差させればいいようだ。
見る者が見れば「スペ○ウム光線だ!」と叫んだだろう。
そういう必殺技に見えなくもなかった。
一匹一匹のレーザー水流は結界を脅かすほどではないが、数が増えれば破壊力も増していく。そこに生体兵器が加われれば倍率も高まる。
これには結界担当コンビも顔面蒼白になってしまう。
「なっ……そんな芸当もできるですか!?」
「き、聞いてないです!? インスマンスの影にも書いてませんでした!」
絶句するモミジの前でマリナが抗議するように喚いた。
読書家のマリナは幼年組ながらクトゥルフ神話の原作小説を何冊も読破しており、蕃神の基礎知識を学んでいた。だからこそ原典と異なる点があることにどうしても納得がいかないようだ。
爆撃に耐える甲殻を数秒で形成する表皮――。
堅牢な城壁や結界をも脅かす溶解液を生成する器官――。
体液を絞るように圧縮して放つレーザー水流――。
どれもクトゥルフ神話に語られる深きものどもにはない特徴だ。
いや、特技といってもいいだろう。
攻撃力防御力ともに戦闘特化に偏りすぎている。地球や真なる世界の生物学に基づいた常識が通じないとはいえ、常軌を逸した環境適応力だ。
フミカが案じていた懸念がまさにこれだった。
――どのような状況にも即応できる肉体機能。
環境に馴染むどころではない。
自らの意志で最適な肉体改変を自身に施すことで、どんな過酷な環境であろうと生き延びる可能性の幅を広げる。これはもう生物として進化や適応の範疇を超え、自己肉体改造能力とでも呼ぶべきものだ。
それは戦争という緊張状態に追い込まれれば加速する。
戦闘経験を積めば積むほど、数多いる個体の中から機転を利かして、現状を打破する最適解な自己改造を施した優良個体が現れるらしい。
最悪なのは、この自己改造が伝播する点だ。
ある深きものどもが「こうしたらよくね?」と閃いて実践すると、他の連中がそれを見て「オレもオレも!」と模倣することにある。
人間も似たようなものだが、彼らの伝播は瞬く間に広がっていく。
現に大半の深きものどもがレーザー水流を使い熟していた。
――学習能力が早過ぎる。
地球ならばインスマンスの住人くらいが関の山なのだろう。
人間と同等以上の知能、深海の水圧にも耐える不老不死の肉体、一対一ならば人間を圧倒できる身体能力を備えた半魚人。それが数を頼みに襲い掛かってくる。
同じ深きものどもでも地球産ならばその程度で済むはずだ。
しかし過酷な真なる世界の環境では、より凶悪に進化適応していた。
結界をも溶かす溶解液を吐き出す器官を生成したり、高圧レーザー水流をスタイリッシュに合掌した手から打ったり、仮面○イダーの怪人みたいに甲殻をまとった形態に変身もできるようだ。
別次元に待機中だとされている深きものどもの“本隊”。
蕃神でもなければ満足に生命活動を保つこともできない極限空間で待ち続ける彼らは、果たしてどのような姿に変異しているのか?
想像したくはないが、恐ろしい予想ばかりが脳裏を駆け巡っていた。
結界ごと城壁を破ろうとする深きものどもの部隊。
攻撃的な肉体に変化しつつ城壁に張り付いて破壊工作に勤しんでおり、連れてきた生体兵器ショゴスもフル活用して、城壁突破を目論んでいた。
「……さ、させません!」
「その意気や良し、です。マリナちゃん」
マリナとモミジは結界の強度を引き上げる。
二層の結界どちらも出力を増して防御性能を向上させると、攻撃を防ぐための盾型防壁もこれまでと比較にならない規模で展開させていく。
「いかんな……敵の隊列を崩すより本陣を守るのを優先しないと」
「こういうのタワーディフェンスあるあるだよねー☆」
上陸してくる深きものどもへ気功弾や光弾を降らしていたエンオウとイケヤも、臨機応変に結界へ取り付く不埒者どもを撃ち落とし始めた。
だが――焼け石に水だった。
海の底からいくらでも湧いてくる深きものどもは数知れず。
増援は時間を追うごとに増えていき、生物にも関わらず指数関数的な速さで数を増やしていくのだから堪らない。
際限なく左右に展開していた半魚人の部隊は、ついには地下都市の山脈を包囲する城壁を取り囲むまでに数を増やしていた。そいつらは現場に着くと同時に様々な手段で攻撃を開始し、結界と城壁を執拗に壊そうとする。
まるで壁を埋め尽くすほど蛙が張り付いたかのような有り様だ。
このままでは城壁が落とされるのも時間の問題……。
『満を持して……ここぞとばかりにドカアアアァァァーーーンンッ!!』
その時――壁が反撃した。
比喩ではない。城壁から大小様々な手や足が飛びだしてきたかと思えば、壁に取り付いていた深きものどもを一気に蹴散らしたのだ。
突き出された手足はほぼ武装している。
殴られたら痛そうな籠手で足甲を装備していたり、カイザーナックルを嵌めていたり、鉄下駄を履いていたり……無節操だが何らかの武装を帯びていた。素手や素足もあるが、深きものどもを叩き潰すサイズ感はあった。
城壁の反撃は全方位へ繰り出されている。はっきり言って圧巻だ。
結界ごと城壁を破ろうとしていた半魚人はほぼ吹き飛ばされており、今の一撃で致命傷を負って動かなくなった者も少なくない。
気の利いたことに、壁際にいた生体兵器もなるべく撃破していた。
まさか破るべき壁に抵抗されるとは思うまい。
「アーッハッハッハッ! 見たか効いたか堪えたか魚野郎ども!」
感情が薄い深きものどもですら呆然としていると、どこからともなく甲高い女の哄笑が聞こえてきた。拡声器を通しているのか大音量で届けられる。
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三人それぞれ名乗りを終えてたところで姿勢を変えると、中心にいるマーナを讃えるような格好で妙ちきりんなポーズを取った。
「「「誰が呼んだか三人揃って“サンアック”!!! 推参!!!」」」
……どうやら三悪トリオとしてのチーム名を決めたらしい。
唱和するように異口同音でチーム名を叫んだ途端、三人組の後ろでカラフルな大爆発が起きた。見栄えはいいが破壊力のない花火のようなものだ。
特撮ヒーローの登場などでお目に掛かる演出かも知れない。
穂村組の構成員――またの名を三悪トリオ。
先日めでたくLV999に昇格したので、こうして蕃神との戦いに参戦させても役に立つレベルの強さになってくれた仲良し三人組だ。
昨日バンダユウが眷族召喚で喚んだのは彼女たちである。
旧神の印入りの土塁に代わって建築された――全長50mもの城壁。
急拵えとはいえ、あれを一晩で建てたのは彼らの大仕事だった。
「三悪だからサンアック……安直すぎないダスか?」
爆発が収まる頃、ポーズをやめたドロマンが真顔で呟いた。
すかさずホネツギーが異を唱える。
「え~? でもシンプルイズベストだからこれで行こうって決めたじゃなぁ~い。ドロ○ボーとかガ○コッツみたいでわかりやすいしさぁ~ん?」
「むう、それはまあそうなんダスが……」
「でもさ、ドロマンじゃないけど安直に決めすぎたかも知れないねぇ」
マーナもポーズを解くと嘆息交じりに感想を漏らす。
「そりゃあ三悪トリオはあたしら憧れのチームだけどさ、仮にも五神同盟に属する正義の味方よ? なのにサンアックって……やっぱりイイモンらしいネーミングのが良かったんじゃ……ヤッタ○マンとかゼン○マンとかさぁ?」
「うぅん! ボクちゃんたちのアイデンティティ壊れちゃうッ!?」
あまり納得のいかないマーナとドロマンの反応に、ホネツギーはこだわりがあるのか剥き身な骨の身体を慣らして身悶えていた。
悠長に語り合う彼らへ――総攻撃が浴びせられる。
「「「どわああああああああああっ!? なになになんなのーッ!?」」」
絶叫まで息を揃えるサンアックトリオ。
城壁の上も結界に守られて事なきを得ているが、総攻撃を浴びせられた衝撃は内側にも響くので三人そろってド派手にすっ転んでいた。
総攻撃を仕掛けたのは深きものどもの皆さん。
表情は読み取りにくいが怒り心頭のご様子だ。
火炎放射みたいな勢いで溶解液を吹きかけたり、電磁加速砲と見間違えるレベルの高圧レーザー水流を撃ち出したり、ショゴスに何本もの砲塔を造らせて砲撃したり、とにかくサンアックを目の敵にして猛攻を続けていた。
口々に人語ではない声でギャアギャア騒いでいる。
さすがに聞き分けられないが、どうやら罵詈雑言のようだ。
『さっきのはオンドレどもの仕業かコラぁ! よくもワイらをビビらせてくれよってからに! しかもウチのモンごっつう殺られとるやんけ!? どないしてくれんやドサンピンどもがぁ! この落とし前は一兆倍にして返したるからなぁ!』
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期せずして深きものどもは攻撃を一点に集約させることとなり、マリナとモミジが懸命に保っている結界を突き破るように誘導してしまった。
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マリナは幼さゆえに慌てふためいて泣きそうだが、その出自ゆえ年不相応に肝が据わっているモミジは額に青筋を立てて静かに怒っていた。
「あわわわっ……おまえたち! さっさと応戦おしよ!」
モミジの怒りを察したのか、マーナは大慌てで体勢を立て直した。
いの一番に立ち上がったマーナは、まだズッコけている部下たちの尻を力いっぱい蹴り飛ばすと、深きものどもに対抗するべく動けと命じる。
「ご安心くださいマーナ様、既に準備は整っております」
いつもよりキリッとした顔付きになるホネツギー。
しかし、まだ尻を高々と持ち上げたまま這いつくばっている状態で、その突き上げた尻をマーナに蹴られてほんのり頬を赤らめていた。
彼の手には赤いボタンが握られている。
ポチッとな! と合い言葉とともにホネツギーはボタンを押した。
「今週のビックリドッキリメカ! 発進よぉ~ん!」
「三悪を志す者としてそれは許される掛け声なんダスか!?」
ドロマンのツッコミも気にすることなく、ホネツギーがボタンを押すと人海戦術を得意とする半魚人への対策を仕込んだ絡繰が動き出す。
深きものどもを自力で振り払った城壁。
それが仄かな光を発するとともに脈動を始めたかと思えば、再び城壁から武装した手足が伸びるように現れる。まるで城壁が変形したかのようだが、実際には城壁から数え切れないほどの何かが生まれつつあるのだ。
それは――全身鎧に身を包んだ兵士の軍隊。
ただし鎧騎士でも鎧武者でもなく、どちらかといえばSF映画に登場する近未来的なパワードスーツで武装した兵士である。
身にまとう鎧は金属質ではなく、滑らかで流線的だった。
強いて言えば硬そうな陶磁器によく似た質感だ。
兵士の体格も人間サイズが主流だが、2mから3mを超えるオーガのように頼もしい者まで種類豊富。一応、すべての兵士は五体を有した人体を模しているが、中には明らかに人間らしくない骨格をした兵士もいる。
手足が異様に長いのは序の口、逆関節や四本脚はさながら昆虫だ。
そもそも身体を動かす度、ロボットめいた駆動音や蒸気を噴き出すので、その手の機動兵器としか思えない雰囲気を漂わせていた。
――この兵士たちは生物ではない。
城壁から現れた時点で察しが付くと思うが、サンアックが各々の過大能力を撚り合わせることで完成させた高性能ゴーレム兵である。
ホネツギーの過大能力──【我は骨なり骨こそすべての礎とならん】。
あらゆる骨を召喚して支配下に置く死霊系の過大能力。
城壁を建てる際、ホネツギーはこの大量の骨を召喚して文字通り城壁の骨組みにすると、新たな骨を喚び寄せる召喚システムを埋蔵させた。
ドロマンの過大能力──【狂乱の泥濘より生命は生ずる】。
生命を宿す泥を生み出して自在に操る自然操作系の過大能力。
ホネツギーの組み立てた骨組みに泥をまとわせて硬化することで、ドロマンは強化セラミックの城壁を完成させた。そしてホネツギー同様、内部に追加の泥をいくらでも湧かせる魔法の術式を組み込んでおく。
この骨と泥を材料にして高性能ゴーレム兵は造られているのだ。
最後の仕上げも忘れてはいけない。
マーナの過大能力――【視界を貪る邪視の女王】。
マーナも魔族だが外見にデメリットはない。
実は隠しているだけで本性を現すと、全身の無数の目が現れるという仕組みになっていた。百目や百々目鬼といった妖怪みたいな風貌になるのだ。
この百はありそうな眼に彼女は“気”を貯め込む。
いわゆるエネルギー貯蔵型の過大能力なのだが、その充電量が凄まじく大きいのが最大の武器だ。自他に振り分けて絶大なパワーアップを望める。
莫大な“気”を練り込んだ目玉。
それを城壁内に仕込んでおり、ゴーレム兵の“核”にする。
これにより性能を格段にランクアップさせることに成功し、ただの骨と泥でできたゴーレム兵を高性能ゴーレム兵として大量生産できるようになった。
「更に更に更に――今回は出血大サービスだよ!」
マーナは薄い胸を張って尊大に言った。
解説するようにドロマンとホネツギーがセリフを紡ぐ。
「地母神と戦女神から一本ずつオラたちに龍脈を回してもらったおかげで、骨も泥も“気”を込めた目玉も採算度外視で増産できるダス!」
「だからこそ実現できた巨人の進撃も止める50m城壁! そこから無限にビックリドッキリ出撃させられるサンアック特製の高性能ゴーレム兵団よぉん!」
二柱の女神から龍脈を伝って供給される無尽蔵の“気”。
これによりサンアックは地下都市を守る城壁を強固に保ちつつ、そこから機動力に優れたゴーレム兵を際限なく造り出すことができるわけだ。
高性能ゴーレム兵はあっという間に大軍となる。
その総数は深きものどもに追いつけ追い越せで増えていた。
どのゴーレム兵も武装は充実しており、強化セラミック製の剣や槍といった近接武器は勿論、ホネツギーの小細工で重火器まで装備していた。
城壁から無限に生まれてくる大量の兵士たち。
出撃するかの如く現れる彼らは取り決められたように迅速かつ正確に部隊を編成すると、手近にいる深きものどもへ勇ましく吶喊する。
城壁周辺はすぐさま大混戦に陥った。
高性能ゴーレム兵の平均LVは900前後。深きものどもや生体兵器のLVはあまり均一化されていないが、LV900を超える者はあまりいない。
つまり実力伯仲――そして兵力的にもほぼ同等。
ひっきりなしに増援が追加されるところまでお互い様だった。
「深きものどもさぁ……人海戦術が得意なんだろう?」
睥睨するマーナは悪役らしくほくそ笑む。
「もしも自分たちが人海戦術をやられたら……どんな顔をするんだい?」
さあ! とマーナは鉄火肌な威勢で呼び掛ける。
反応するのはゴーレム兵の軍隊。彼らの胸の中には“核”となったマーナの眼球が鼓動しているから、母親の声に耳を傾けるも同然だった。
マーナは意気揚々と女ボスらしく号令を下す。
「おまえたち――やぁ~っておしまい!」
『『『『『――ウイッサァーァァアアアアアアアアーーーッッッ!!』』』』』
ゴーレム兵団はヘルメットの隙間から電光に彩られた眼光を輝かせると、機械音声ながらも鬨の声を上げてマーナの号令に応えた。
かくして――カスタヨルズの戦いは混迷を極めつつあった。
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青いウーパーと山椒魚
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加藤あいは高校2年生。
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普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
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いやちょっとまてよ?
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僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
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世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
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『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
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レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
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ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
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