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第19章 神魔未踏のメガラニカ
第467話:獅子の女王は愛欲に餓える
しおりを挟む全界特急ラザフォードは無事に帰還することができた。
還らずの都の北の麓にあるルーグ・ルー輝神国を夜明け前に出立し、昼過ぎには現地に到着。用件を済ませて日が暮れて間もない頃に戻ってこれた。
道中、いくつかのアクシデントがあったのは否めない。
黄金の起源龍の墓参りに出向いたらその転生体の美少女を回収したり、帰路には祭司長の眷族に遭遇したりと、良いことも悪いこともあった。
まさに良い話と悪い話はセット割だ。
良い話ばかり舞い込んできてほしい今日この頃である。
ちなみに、悪夢の中で祭司長から忠告された件は明かしていない。
ミロは気付いていたが黙っているよう言い付けておいた。
状況証拠ばかりで確証が薄いからだ。
四神同盟で議題に挙げるにしても内容を吟味してからにしたい。できればクトルゥフ神話に詳しい有識者に相談してからだ。ツバサが悪夢のまにまにで得た情報と、どれほど合致するかを検証してみるべきだろう。
重なる部分が多ければ、蕃神=クトゥルフ邪神群という図式が成り立つ。
少なからず彼らの素性を暴けるかも知れない。
ただ、底無しの泥沼に踏み込んでいく懸念もある。
知れば知るほど宇宙的恐怖の深淵を覗いてしまい、狂気の領域に踏み込んで戻ってこれなくなる恐ろしさもあるが、逃げるわけには行かなかった。
そもそも――逃げ場なんて何処にもない。
蕃神の手は遍く宇宙の隅々にまで届き、多重次元のすべてを彼らは跳梁跋扈する。そんな人知の埒外にいるバケモノから逃れる術などないのだ。
立ち向かわなければ真なる世界は奪われてしまう。
たとえ拙くとも、蕃神と渡り合う方策を見つけ出さなければならない。
できれば後腐れなく完膚無きまでに滅ぼしたいところだが、それが叶うならば既に先駆者がいるはずだ。しかし、彼らがこれほどの幅を利かせているところを見るに、そんな簡単にいく話でもないのは間違いない。
撃退、追放、封印、弱体化、あるいは追い払う方法。
せめてこれくらいは目指したいところだ。
それはそれとして――ツバサにちょっとした問題が起きていた。
「う~ん……元に戻らないな」
困り顔のツバサは自身の長髪を手に取った。
常ならばそれは艶やかな黒髪のはずだが、ところどころ燃えるような赤髪に染まっている。ともすれば、瞬く間に赤一色に塗り変わりそうだった。
全体的に筋肉質であり、口元には犬歯より尖った牙が覗く。
――神々の乳母ではなく殺戮の女神でもない。
ツバサはどっちつかずの状態から戻れずにいた。ちょっと気が荒れただけでセクメトが優勢になるし、気を鎮めようとすればハトホルに戻りかける。
しかし、一向に安定しなかった。
ルーグ・ルー輝神国に降り立った一同。
ここが本拠地のジェイクたちとは拠点に帰ればいい。
ハトホル太母国からやってきたツバサたち四人は、転移装置の祠を使って本国へと帰る一手間があった。エルドラントの転生少女に掛かりっ切りのジェイクはレンたちに任せて、メイド長のマルミが祠まで見送ってくれた。
まだ未完成なルーグ・ルー輝神国を、マルミの先導で歩いていく。
ジョカはあれから眠りこけてしまい、起こすのも可哀想なのでセイメイがおんぶで運んでいた。対抗するようにミロはツバサに肩車を要求する。
「ねえツバサさん、まだ戻んないの?」
ミロは心配そうに上から顔を覗き込んできた。
上目遣いに見上げるツバサの瞳は真紅に燃えているだろう。
「ああ、どうもな……感情よりもっと深い部分、無意識下でコントロールが上手くいってないみたいでな。気を抜くと殺戮の女神になっちまう」
おかげでお口もやや悪い。
殺気立ってもいないのに、歩いているだけでも髪の赤味が増していく。バリバリと稲妻のような闘気が全身に帯電したりする。
所構わず滅火の紅炎を噴かないのが救いだった。
鉤爪になりそうな五指を広げて、電撃を帯びた掌を見つめる。
「精神的にアンバランスなのかもな……なんだか落ち着かない気分だ」
原因にはなんとなく心当たりがあった。
祭司長の精神攻撃――微睡に垣間見たあの悪夢だ。
想像を絶する莫大な情報量を強制的に流入させてくる祭司長との会話は、常人ならば一秒と保つまい。LV999の神族でもキツいくらいだった。
いや、ツバサはLV999の上限を既に越えている。
そのツバサでさえ精神的に摩耗したほどだから、LV999でも下位の者ならば心身に異常を来すほどの精神攻撃だったのだろう。
どうもこれが響いているらしい。
耐えたと思っていたが、精神面にダメージを受けていたようだ。
精神を壊されることなく発狂せずに済んだものの、意識と無意識を取り持つ理性的な部分が掻き乱されて、いつまでも落ち着きを取り戻せない。
おかげで変身能力にバグが生じているようだ。
悪夢の中、ツバサは狂気に呑まれまいと殺戮の女神に変身した。
これは一種の自己防衛本能である。
最も力強い自分で蕃神の脅威をはね除けようとした。
なんとか祭司長の悪夢を切り抜け、彼が毒電波の中継に使ってきた眷属の蕃神も撃破したのだか、掻き乱された無意識は落ち着いてくれない。
ツバサはそのように自己分析していた。
「肉体と精神の両方に安定させるよう技能をいくつも発動させているんだが……どうしても昂ぶりが収まらない。だから殺戮の女神が鎮まらないんだ」
「体温もスゴいよね。おまた熱っちい」
そういってミロは股間をツバサのうなじに押し付けてくる。
女の子なんだから恥じらいなさい! と小言で叱った拍子に殺戮の女神になりきってしまいそうなので、唇を牙で噛んで気持ちとともに飲み干した。
それでも小さな苛立ちは募ってしまい、髪を真紅に燃え上がらせていく。
「ちょ、ホント熱いんだけど? あっちゅあっちゅ!?」
熱気の上昇までは抑えられず、肩車のミロはツバサの頭上で煽られていた。
「……溜まってんじゃねえのか?」
ふと、ジョカを背負って後ろをついてきたセイメイが呟いた。
普段なら「どういう意味だ?」と聞き返すツバサだが、殺戮の女神が入り交じる今の状態では、喧嘩の売り文句にしか聞こえない。
「誰の乳にハトホルミルクが満載でパンパンに溜まってるって……ッ!?」
振り返る過程でツバサは殺戮の女神になっていた。
握った拳は万物を焼き滅ぼす終焉の炎で燃え上がる。
「ツバサちゃんタンマ! 言ってない! そこまで言ってないから! 嫁おんぶしてんのに殺戮の女神のギガトンパンチはなしよ!?」
いくらおれでも死んじゃう! とセイメイはガチ泣きだった。
蕃神をも一太刀で斬り滅ぼす大剣豪と呼ばれるに相応しい漢が、大粒の涙をスプリンクラーみたいに撒き散らすほど首をブンブン左右に振って、「そんな意味で言ったんじゃないよ!?」と否定した。これは信じてあげたくなる。
「溜まっているのは別のものじゃないかしら」
前を歩いていたマルミがフォローするように言った。
今度はポッチャリ体型のメイド長へと振り返る。こちらの視線に合わせるように、足を止めたマルミも振り向いてきた。
「疲れとかストレスとかフラストレーションとか……さしものツバサ君にもそいうのが溜まってきてるんじゃない、って言いたかったんでしょう?」
「そそそ! そうそうそれそれ! マルミさんナイス!」
セイメイは残像が見えるほど首を振って賛同した。
ふむ、とツバサは得心したように頷いた。この意見は一考に値すると感じたためか、燃えるような赤髪も少しだけ神々の乳母らしい黒髪に戻る。
我ながら行ったり来たりのシーソーバランスが目まぐるしかった。
「なるほど、疲労か……確かに溜まっているかもな」
過大能力や技能で肉体的な疲労感は補えているが、精神的な疲れは生中に取れるものではない。先の戦争の規模を考えれば、一ヶ月以上の長期療養を取ってもおかしくないレベルだが、そんな余裕もないのは御存知の通りだ。
癒やしが足りないのかも知れない。
せめて早寝して遅起きで睡眠時間は長めに確保しているのだが……。
(※家事はメイド長とメイド人形部隊が賄ってくれる)
「その程度じゃ気休めにしかなってないんでしょうね」
マルミにも説教っぽく言われてしまう。
「もっと本格的に静養しろってことですね……わかります、わかってますけど」
悠長にまったりのんびり休んでいる余裕がないのも事実だ。
実際、疲労感はそれほどでもない。
どちらかといえばマルミの指摘にもあるストレスやフラストレーション、これらの蓄積がツバサの許容量を超えてしまったのだろう。
端的にいえば欲求不満なのかも知れない。
そこに祭司長の精神攻撃でダイレクトアタックを受けてしまった。
致命傷こそ免れたものの、その後遺症が些細なことでも殺戮の女神になってしまうなんて暴走的なバグとなって表れたらしい。
「じゃあ、ガス抜きでもすりゃいいんじゃねえの?」
セイメイは何気なく解決策を述べた。
フラストレーションが溜まっているならば、スカッとすることをして解消すればいいという話だ。単純だけど一番効果的なのは間違いない。
「それくらいしか手がないか……んじゃセイメイ」
殺戮の女神になったツバサは、再び滅日の紅炎が宿った拳を握り締める。
「そこに棒立ちで突っ立っててくれ。大丈夫、10分くらいで終わるから」
「用心棒の仕事にサンドバッグは含まれませんことよ!?」
セイメイは逆ギレみたいな悲鳴で抗議した。
「棒立ちは悪かった。多少なりとも抵抗してくれ、スパーリングだ」
「手加減一発大陸を砕く破壊神ねーちゃんと乱取りなんてしたくねぇよ!?」
絶対お断り! とセイメイに断固拒否されてしまった。
ツバサは髪を真紅に染めたまま「えー?」と残念がる。
「セイメイ以外でフルボッコOKって限られんだけど……えーと、軍師気取りとか工作の変態とか駄メイドとか従順な後輩とか……あと誰かいたっけかな?」
「……そこにセイメイも登録されてんのな」
ちょっとショック、とセイメイは渋い顔をした。ヒエラルキーというよりツバサの全力を受け止められる耐久力で選んでいるのだが。
そういう意味ではミサキ、ドンカイ、アハウ、ホクトも該当する。
ただし遠慮なく殴れるという点では先の四人を真っ先に思い浮かべてしまうので、セイメイの苦言通り相手を選んでいるのかも知れない。
多分「ある程度の迷惑を掛けさせられたんだから、こっちから不条理な目に遭わせてもいいよね?」という選考基準が働いていると思う。
軍師気取り→消息不明で各方面に迷惑かけたよな?
工作の変態→出会い頭にセクハラかましまくりだよな?
駄メイド→日々これセクハラな毎日に今さら説明いらんよな?
従順な後輩→初対面で女扱いしたの忘れてないからな?
酔いどれ剣豪→生活態度を正す気ないし禁酒もろくにしないよな?
選考基準はこんなところだろう。
我ながら相手への思慮に欠ける、暴君のような選び方だ。
普段のツバサならここまで乱暴な考え方はしないはずだが、殺戮の女神になりかけている影響か、だんだん思考回路まで粗暴になってきた。
やはり早めに変身バグを修正しないと危なそうだ。
「なんにせよ、暴力はいけないと思うわ」
年長者らしくマルミが提言すると、セイメイもこれに乗ってくる。
「そーだそーだ、暴力はんたーい!」
セイメイの茶化すような揶揄が殺戮の女神の琴線を弾く。
カチッ! と怒りのスイッチを入れられた気分だ。
「暴力の権化みたいな人斬り用心棒のおまえには言われたかないわ!」
「殺戮の権現なセクメトモードのツバサちゃんにも言われたくないよ!?」
噛みつきそうな殺戮の女神の怒号に、鼻先が触れる距離まで近付いてきて負けじと怒鳴り返すセイメイ。これに怯まない胆力はさすがである。
「……争いは同じレベルの者同士でしか発生しない!」
肩車されたままのミロが遠い目で呟く。
「LV999の神族同士、恐ろしくハイレベルで高次元な争いだけどね」
罵り合う内容は低レベルなので釣り合いは取れていた。
「暴力以外で発散できないの? モフモフしたもの可愛がるとか、趣味や好きなことに没頭して精神的な疲れをほぐすとか……」
マルミから代替案を提示されるもツバサは難色を示す。
「う~ん……殺戮の女神は攻撃性の化身みたいなもんですからねぇ」
解消するなら暴力に訴えるのが一番早い。
「……やっぱ殺戮か破壊の限りを尽くすくらいしか思い付かなくて。国の三つや五つも滅ぼせば収まると思います」
「いけない、発想まで極悪親父並みに物騒だわ」
殺戮の女神に汚染されてない? とマルミも不安げだった。
いや、他の対処方法も思い付きはするのだ。
たとえば娘たちを愛でることで母性本能を活性化させて、神々の乳母を優位にして精神を安定させる。そんな手も考えたのだが、ミロを筆頭に生意気な娘が結構いるので、彼女たちの些細な言動にもキレる可能性があった。
不安定なこの状態なら、不用意な一言で大噴火間違いなしだ。いつ殺戮の女神が暴発するかわかったものじゃない。
威圧感のみで子供たちを危ない目に遭わせる可能性も否めない。
そんな危惧を抱くほど、この変身バグは不安定だった。
……やっぱり祭司長の毒気に当てられて発狂しかけているのか?
「ガス抜きってそんな大惨事になるものだっけ?」
うっかり発言したセイメイは困惑すること頻りである。
おんぶした嫁の位置調整をしながらぼやく。
「もっとこう単純にさ……ブワァーと金使って、前からしたかったことやりたかったことしてみたり、欲しくても買い控えていたもの思いきって買ってみたり、ありえないくらい暴飲暴食のやけ食いで憂さ晴らしてみたり、男だったらキャバクラとかでドンチャン騒ぎとか、風俗や泡風呂で性的な意味のガス抜き……」
「――セイメイッ!」
ツバサの叱りつけるような怒声にセイメイは首をすくめた。ガス抜きのレパートリーの中に際どい発言があったのは、当人も気付いていたはずだ。
「うわッ勘弁! セクハラ発言NGだった?」
「いや、そうじゃない……」
完全に殺戮の女神となったツバサは、セイメイの首筋へ齧りつくように牙を剥いた笑顔を寄せると、その耳元へ息を吹きかけるような一言を囁く。
「……それだ!」
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「というわけで――エッチなことするぞ」
「……へ?」
ミロはありえない事態に首を傾げていた。
それは自分の台詞では? なんて表情を浮かべている。
前者の公の場では口に出せない発言はツバサのもの、後者のいつになく間の抜けた声はミロが発したものだった。まさかの逆転現象にミロはついてこれず、頭上に?マークを浮かべて硬直してしまっていた。
ハトホル太母国・拠点・我が家――ツバサの部屋。
室内にいるのはツバサとミロのふたりっきり。
帰宅したツバサたちは風呂と夕食を済ませて食後の団欒を終え、三々五々に散らばった。ツバサとミロは早々に部屋へと引き上げていた。
理由は簡単――殺戮の女神である。
神々の乳母と殺戮の女神を行き来する不安定状態は、帰ってきても食事で和んでも娘たちとお風呂へ入っても収まることはなく、むしろ殺戮の女神モードで安定化してきたので、子供たちも大層ビビってしまったのだ。
――お願いだから早く治してください!
子供たち一同から半泣きで懇願されたほどである。
タフな息子たちですら土下座で頼んできたくらいだ。
そんなにおっかないのか、殺戮の女神?
この変身バグともいうべき状態異常を一刻も早く治すためにも、ミロを自室へと連れ込んだツバサは先の発言に打って出たところだった。
「……へ?」
ミロは右へ傾げた首を左へと傾げる。
ツバサの口から出た言葉を信じられずに呆けているのだ。
既に風呂を済ませたツバサは寝間着代わりに遊女がまとうような、セクシー極まりない赤襦袢に着替えていた。プライベートなので着物の合わせ目は緩めており、乳房の下で腕を込めば深い谷間が露骨に強調されていた。
この赤襦袢、奇妙なくらい肌へまとわりつく。
おかげでグラマラスなラインがくっきり浮かび上がってしまう。
天才服飾師たちの逸品ゆえの性能なのかも知れない。
いつもなら「こんな機能いらん」と切り捨てるツバサだが、今日は果敢に着こなすことができた。しかし、残念ながら女らしいしなを作ることはできない。
腕を組んで仁王立ちするツバサは――完全に殺戮の女神だ。
荒ぶる気ゆえか神々の乳母に戻らなくなっていた。
闘気に揺らめく赤髪にギラつく赤い瞳、血の気が多くなってくると紋様のように浮かび上がる赤いライン。そんな肢体に赤襦袢を帯びていた。
長い髪の真っ赤に染まり、まるで歌舞伎の連獅子のようだ。
赤尽くしのツバサは猛々しい笑みを浮かべる。
この変身モードだと気持ちも豪放磊落になるので、先の発言も物怖じせず言えたのだが、それでも恥ずかしさから頬はほんのり赤く染まっていた。
ツバサの部屋に据えられた大型ベッド。
子供たち全員で同衾を求めてきても定員オーバーにならない、クイーンサイズもキングサイズも越えたベッドの上に、ミロがちょこんと座っていた。
チューブトップのブラにホットパンツ(今日はデニム生地)。
相変わらず部屋着は無防備の一言に尽きるが、そんな格好でベッドでゴロゴロしていたミロは、白目を皿のように見開いて黒目を点にしていた。
未だにツバサの発言が信じられないらしい。
仕方ないのでツバサは意気揚々と同じ台詞を繰り返した。
「というわけで――エッチなことするぞ」
「大事なことだから二回言いました!?」
ようやくリアクションを返してきたミロは、滅多に見せない晴天の霹靂な驚きを露わにして、ベッドの上を這い這いしながら近寄ってきた。
その途中、よく回る舌でしつこく訊いてくる。
「ど、どうしちゃったのツバサさん!? そりゃ時たまツバサさんからエッチなお誘いしてくることはあったけど、恥ずかしがり屋さんだからもっと静かにソフトに内緒話みたいに言ってくるのに、そんな正々堂々と……」
てか殺戮の女神のままで? とミロは重要な部分を問い質してきた。
ツバサは首を縦に振って首肯する。
「そうだ。おまえ前から言ってただろ、『別の女神さまに変身したツバサさんともエッチなことしてみたい』って……その願い、叶えてやるよ」
既に言質は取っているようなものだ。
以前から閨でのピロートークで、いくつかあるツバサの変身形態のままで情事に耽りたいみたいなことをミロは口にしていた。
まあ、彼女にすればコスプレの延長みたいな感覚なのだろう。
ツバサとしては強敵と戦うために編み出した必殺技の一種なので、私生活で使うのは気が引けていた。況してや愛の営みでわざわざ変身するなど、自身の常識に照らし合わせると自粛すべきムードまで漂っていた。
しかし、そこは発想の転換である。
「ちょっとした拍子でも殺戮の女神になって元に戻らないのなら、いっそこのままミロと愛し合って性的な意味で満足感を得ようと思ってな」
性行為も欲求不満を打ち消す、手っ取り早い対処法のひとつだ。
マルミとの話を聞いてたミロも察したらしい。
「つまり……エッチなことでフラストレーションを解消しようってこと?」
そういうことだ、とツバサはにやりとほくそ笑む。
「おまえのお願いはあくまでもついでだが……こんな珍事でもない限り、変身形態を私的に使うことはないからな。お願いを採用させてもらったわけだ」
腕をほどいたツバサは誇らしげに右手を胸へ押し当てた。
左手は誘うように愛しい伴侶へと差し伸べる。
好きにしろと合図を送ったつもりだが、ミロの反応はいまいちだった。
抱き枕を盾にするみたいに構えており、這い這いでツバサに近付こうとベッドの際まで寄っていたのに、何故かジリジリと後退っている。
明後日の方向へ視線をズラしてボソリと一言。
「えーっと……チェンジで」
「どこで覚えたのそんなハレンチワード!?」
お母さんマジで怒るぞ! とツバサは普通に叱りつけた。
マンガやアニメにラノベで使われてそうな気もするが、それは所謂デリバリーヘルスという風俗とかで招いたコンパニオンさんが「なんか違う……」と思った時に、別の人をお願いする時の合い言葉みたいなものである。
割と侮蔑的な意味合いが強いのではなかろうか?
「いや~、確かに色んなツバサさんとエッチしたい! 的なことは言った覚えがあるんだけど……最初にセクメトはハードルが高いっていうか……」
ツバサの怒鳴り声にビビるもミロは言い訳をした。
「最初は優しそうな変身モードがいいなぁって……ほら、イシスとか」
「そりゃあ魔法の女神は母性本能MAXだからな」
変身形態のベースに灰色の巫女ことククリのお母さん、マムリ・オウセンの魂が組み込まれていた。あの女神は母性の権化みたいな性分なのだ。
多分、赤ちゃんプレイとか素でやってくれる。
息子同然に可愛がっているミロならば尚更のことだ。
ミロは抱き枕を幣のように振り回して、ツバサに拝み倒してきた。
(※幣=神社の神主さんが神事で振る紙飾りのついた棒)
「せめて天空の女神! できれば魔法の女神が希望です! 最初から筋肉マシマシのメフレックスな殺戮の女神はハードモードだってばさ!」
「誰が筋肉ムキムキマッチョの変態だ!?」
駄々を捏ねるミロに一喝したツバサは、こちらから身を乗り出した。
前屈みになると赤襦袢から超爆乳がボロンとこぼれ落ちそうになり、ミロがそれに気を取られた瞬間、おもむろに伸ばした手で彼女の頭へ手を回す。
逃がさぬように掴み――力任せに抱き寄せる。
狙った唇を逃すことなく捕らえると、噛みつくように唇を重ねていた。
「んん、むぅ……んんくぅぅっ!?」
女性らしさを増してぷっくりとしたツバサの唇に封じられ、ミロは人語を発することもできず呻いているが、それも致し方あるまい。
彼女は今、口腔内を蹂躙されているのだ。
これまではミロの好きなようにされていたが、お返しとばかりに今夜はツバサから侵略してやろう。そんな気概を胸にディープなキスから始める。
「じゅじゅぅ……ふふぅ、ちゅるるぅ……むじゅぅ……ッ」
長い舌を伸ばして口の中を弄るなど小手調べ。
ツバサの舌でミロの舌を絡め取り、こちらの土俵ともいうべき口の中へ引きずり込んでいく。途中、牙のような歯で舌を擦るように甘噛みして、痒みにも似たこそばゆい感覚を味あわせ、それを慰めるべく丹念に舐る。
「ちょ……待っ……むふぅじゅう……ッ!?」
何を言っているのかわからない。ただ、気持ち良くはあるのだろう。
抱き寄せた彼女の身体が定期的に震え上がる。
ビクンビクン! とまるで痙攣だった。
舌と唇と牙のような歯を駆使して、徹底的にミロの唇を攻め立てた。感覚的には痛覚を介して性感帯を刺激する気分だった。
鼻息が強くなってきたところで、小休止を挟むように唇を離してやる。
「んご……るぅれろ……息! ぷはぁ……ッ!」
よほど息苦しかったのか、ミロは荒い呼吸で息継ぎをした。
初手のキスでいくらか感じてくれたのか、困惑する瞳は細めるも潤んでおり、頬も桃色に紅潮させている。いつも可愛い愛娘だが、今日は極上に愛らしい。
思わず捕食者の笑みで口角を釣り上げてしまった。
「い、いきなり、どしたのツバサさん? 今日はスッゴいハード……」
ミロは吐息の混ざる声で途切れ途切れに訴えてきた。
フフフ、とツバサは不敵な含み笑いを返す。
「おまえがワガママ言うから力尽くで捻じ伏せただけだよ……いいか、今日は変身してヤルだけじゃない。もっと特別なことをしてやる」
ツバサから攻めてやる――そう断言した。
「えっ……ツバサさんから!?」
これにはミロも目を丸くして驚愕せざるを得ないはずだ。
ミロが過大能力で男の娘化して母親のような肉体となったツバサを犯す。あるいはミロも女の子のまま百合の花が咲き乱れるような女性同士で愛し合うとしても、その主導権は終始ミロが握ってきた。
たとえツバサから誘ったとしてもそれは変わらない。
女神の身体に不慣れなツバサは、基本的にされるがままで通してきた。
男だった心が強すぎる女性的な性感に翻弄されるばかりで、こちらからアクションを取る余裕はなく、いつも受け身に回らされていたのだ。
しかし、それも今日までである。
殺戮の女神は獅子の頭を持つ好戦的な女神だとされていた。
「この姿で性欲を昂ぶらせると……おまえを無茶苦茶にしたくなってな」
間違いなく殺戮の女神による影響だ。
性的嗜好までもが攻撃的になると判明しつつあった。
何も知らない若獅子を組み伏せた雌獅子の如く、ツバサは嗜虐的に眼を弓なりに曲げ、牙が生え揃った歯列を磨くように舌舐めずりをする。
「……ミロ、今日はされるがままでいろ」
完全に命令として言い聞かせた。
「いいかげん、おまえにされるがままってのもワンパターンだと思ってたところだ。おまえもそうだろう? だから……今日は俺から嬲ってやる」
過激なご奉仕と諦め――甘んじて受けるがいい。
「こ、こんな展開……想像もしてなかったんですけど!?」
獅子の女王の迫力に、さすがのミロも表情が引き攣っていた。しかし、新鮮味はあるのか好奇心を隠せない笑みが垣間見える。
「でもちょっと待って! やっぱりいきなり過ぎて心の準備が!」
しかし、まだ困惑を拭えないのかミロは戸惑っていた。
「殺戮の女神に犯されるってもう喰われるみたいで……むぅぅぅッ!?」
お望み通り――齧り付いてやる。
騒ぐことをやめない可憐な唇を丸ごといただくようなキスをすると、今度は彼女の口内へと攻め込んでいき、気功術の応用で硬軟自在とした舌先で弱そうなところを余す所なく責め立てる。
歯茎の隙間とか舌の裏とか上顎の際とか……。
敏感そうなところを硬くした舌先で甚振って弱らせ、それから柔らかくした舌の腹で慰撫するように舐め潰してやる。
「むぢゅ、ちゅぷ……はぁんっ、ぷふぅ……ッ!」
口の中を荒らされたミロは、奇妙な声とともに涎を零す。
その涎も漏らすことなく舐め取るツバサは、親猫が仔猫の毛づくろいでもするかのように、口元をこれでもかというくらい舐ってやる。
右手はミロを逃がさぬように、彼女の後頭部を鷲掴みにしたまま。
開いている左手はミロの胸やお腹に這わせていた。
当たり前のような手付きでチューブトップのブラを剥ぐと、ミロの身体にも変化が現れていた。混乱するもこの流れに合わせるつもりだ。
ミロの肉体はもう男の娘化していた。
万能の過大能力により、一時的に肉体を男性化させる。
……と当人は思っているようだが、実際にはミロも内在異性具現化者。それも男女両性を併せ持つ、両性具有者に近いものらしい。
教えると調子に乗りそうなので、まだ真実は伝えていない。
やはり彼女はあれこれ特別なようだ。
全体的に見れば、まだ美少女で通用する体付きではある。
ただバストサイズが明らかに目減りしており、通常ならばDカップはあるはずの胸が初々しいBカップくらいまで小さくなっていた。
体型も女性的な皮下脂肪が目立つものの、その下にやや角張った健康的な少年の筋肉美を思わせる硬さが潜んでいた。
骨盤は女の子のままなのか、横にもワイドで女性っぽいお尻だった。
女の子にしか見えない男の娘といった案配だ。
そして、デニムのホットパンツでは股間がキツそうである。
かく言うツバサも前戯にも満たないディープキスに興奮してしまったのか、股の奥から熱いぬめりが滴るのを感じていた。
乳房も張り詰め、ハトホルミルクが漏れ始めている。
「フフッ、ちょっと待ってと言いながら……準備できてるじゃないか」
糸を引く涎を舌先で手繰り寄せるツバサは、からかう口調でミロに話し掛けると、熱を帯びてきた赤い頬を削るように舐めてやる。
殺戮の女神の舌はネコ科の動物みたいにざらついていた。
場合によっては鑢よりも荒々しい。
「だ、だって……怖くはあるけど、ちょっと興味ある……しぃっ!?」
返事を遮ったのは愛撫するツバサの指先だ。
経産婦や乳牛などと酷い言われようなツバサの乳房とは異なり、すべてが桜色に染まるミロの胸を強めに揉みほぐしていく。
尖ってきた頂点に指先を忍ばせると、悪戯するように摘まむ。
いや、悪戯みたいな行為はこれからやるところだ。
ツバサが赤襦袢をはだければ、大地母神に相応しい乳房が転び出る。
性的な興奮により活発になった女性ホルモンの影響か、乳腺は張り詰めて肥大化した乳首や乳輪を濡らすほどハトホルミルクを滴らせていた。
ポタポタ、と音を立てて零れ落ちる女神の白い母乳。
ベッドに座るミロの膝を濡らすほど量だ。
もう逃げる気配はなくなったミロの頭から手を離すと、両手で乳房を持ち上げてミロの胸へ押し当てる。お互いの乳首と乳首が重なるようにだ。
んっ……とツバサも嬌声を抑えるため唸ってしまう。
異常なくらい感度の高い乳首を擦り合わせる。
ミロも少なからず敏感だが、ツバサは乳房が性感帯の塊みたいになってしまったため比べるべくもない。それでも声が上擦るほど感じているようだ。
「うあぁ、アタシのおっぱいがツバサさんのデカ乳に食べられるぅ……」
ミロの呻きはあながち間違いでもなかった。
柔軟性に優れるツバサの乳房が、思春期の弾力に恵まれたミロの胸を丸呑みにしたかのようだった。男の娘化したことでサイズ感が減って硬さが増した分、こちらの超爆乳という肉の洪水に為す術なく呑み込まれていった。
のみならず、ツバサは搾るように揉みほぐす。
濁音が強めの水音がすると、二人の乳房の間から母乳が流れ落ちた。
ツバサがそっと超爆乳を離せば、乳首からは湧き水のようにハトホルミルクがあふれており、重なっていたミロの胸まで母乳に濡れていた。
頬を舐めて、首に甘噛みしつつ、ツバサの口元は降りていく。
やがてミロの胸元へ辿り着き、その胸へ舌を這わせると、ピチャピチャ音をさせて獣が舌で水を掬うように胸を濡らす母乳を舐め取る。
そして、まだ未熟なミロの乳首へと吸いついた。
「ひぅ! ツ、ツバサさん……これいつもと逆じゃ……ぅあッ!?」
「最初から全部逆だろ……俺が攻めるのも、おまえの胸に吸いつくのも」
授乳を請う赤子のように唇を窄めて吸う。
自分でハトホルミルクの甘露を味わっているだけだが、ミロの乳房に吸いつくことで、なんとも倒錯した感情を抱くことができた。
皮肉な笑みを浮かべるツバサは粘着質な笑い声を上げる。
「なんとも変な気持ちだな……男の娘になったミロの胸から授乳してるみたいだ。男は母乳なんか出すはずないのに……フフフッ」
「ツバサさん、そ、それ盛大に自爆……噛んだら痛いッ!?」
小生意気なミロのツッコミは、乳輪に甘噛みすることで黙らせた。
そのまま本当に乳を出させる勢いで吸いついてやる。
……言ってる途中で気付いたのは確かだ。
いつも好き勝手に乳を吸われている意趣返しにと、ミロの胸をハトホルミルクで濡らして悪戯する前戯を思い付いたのはいいが、今の発言は「男なのに女神化して乳牛よりも搾乳している」ツバサに見事ブーメランとして刺さった。
足下もろくに確認できないほど張り出した超爆乳。
先ほど軽く搾っただけで、床がしとどに濡れるほど乳を漏らしていた。
羞恥心が騒ぐのに、快感神経も痺れている。
自分で自分に言葉責めをして、それをミロに指摘されたことで被虐的な喜びが満たされたとでもいうのか? それこそマゾじゃないか。
そんなことも忘れるくらい、段々と熱に浮かされていく。
激戦や死闘を繰り広げる過程で至る白熱した忘我の境地とは異なり、混沌忘我といったすべての感情がごちゃ混ぜになったような感覚だった。
夢中でミロの胸をむしゃぶり尽くす。
彼女の母乳をじっくり味わう錯覚を楽しむようにだ。
「そんな吸っちゃダメ……やぁ! おっぱい変になっちゃうからぁ! つぅ! 牙も歯も立てちゃ……あっ、ふぅ……んんっ! ダメだってばぁ!」
ミロに可愛らしい悲鳴を上げさせるべく、ザラつく舌や牙みたいな歯を駆使して疼痛を感じるくらい細やかな刺激でいじめてやった。
彼女の胸を濡らすハトホルミルクを漏らさず舐める
そうしている間にもツバサはミロの足下へとしゃがんでいき、空いた手で自らの乳房を揉みほぐして溜まりに溜まった母乳をあふれるように噴き出させたり、愛液で濡れそぼる股間を慰めたりしていた。
そろそろか……とツバサはおもむろに右手を動かす。
ミロがはいたホットパンツに手を掛けると、小さな布地の中に押し込まれていた彼女の男性化した部分が射出されるみたいに飛び出してきた。
少女にしか見えない下半身には不釣り合いな大きさだ。
それでも凶悪と恐れるほどのレベルではなく、逞しいという程度に収まっていた。均整と取れたデザインだとツバサは思う。
……そんな大勢と見比べたわけではないから断言はできないが。
少なくとも現実世界で男性だったツバサのものより大きいことは、悔しいが認めなければならない。しっかり剥けて大人らしさも象徴していた。
その下にある精子を作る器官の大きさは控えめ。
股間の陰りとなる体毛もミロは薄いので、見苦しさはなく若い男性の裸像を象ったかのような神々しさを讃えていた。
これまでのツバサの手管で感じてくれたのだろう。
男の娘としてのミロの逸物は、天を指し示すようにそそり立っていた。
しゃがんでいたツバサは思わず顔を仰け反らせてしまう。
鼻先を掠めるものは独特な体臭を漂わせ、それを吸い込むと鼻孔の粘膜がツンとするも、快楽に酔い痴れた五感をざわめかせる効果があった。
ツバサはしゃがんだまま姿勢を立て直す。
腫れ物へ触れるような繊細な手付きで撫でると、ミロの股間からそそり立つものはビクンビクンと暴発を堪えるように不規則な脈動をした。
その震えを抑えるように、もっと暴れるように指先で仕向ける。
こんな時、女神らしいほっそりした指は役に立つ
手に入れた美術品を愛でるように撫でたツバサは、後れ髪を掻き上げながらその先端に開いた口を近付け、吐息を吹きかけつつ頬張っていく。
雌獅子が獲物へ食らいつくかのように――。
「ツバサさん、それフェラ……チョォォォォォォォーッ!?」
今までとは比にならない衝撃。
それを体感したであろうミロは素っ頓狂な声を張り上げると、下半身と言わず上半身まで激しく痙攣させた。ツバサの口内でも暴れている。
ミロの股間から生えた男の器官を、ツバサは口いっぱいに頬張る。
女性が男性と愛し合う時にやるポピュラーな性技だ。
これまで二人の営みでも何度かやったことはあるのだが、ほとんど場合ツバサが女性の快感に飲まれて茫然自失となっていたので、曖昧になった意識のままミロにせがまれて朦朧とやっただけに過ぎない。
はっきりと本人の意志で、本番前に前戯の一環として行う。
そういう意味では今回が初である。
ツバサ自身、これまでの経験はほとんど記憶にない。
自発的にやるのは初めてだが、身体がコツを覚えてしまったのか、下手に小細工をせずとも口や舌が勝手に動いてくれる。
ミロの男らしい突起の形や癖も、ツバサの口は覚えていた。
何かへ吹きかけるように口元を窄めてミロの男性化した部分にフィットさせると、涎を潤滑剤にしながら唇の筋肉で圧力を加える。
顔を前後に動かすことで、長く太い棒状のものを扱いていくのだ。
未知の生臭さ――生物由来の塩辛さ。
形容しがたい味が口に含んだミロのものの先端、その割れ目から止め処なく溢れてくる。大きい男性器は喉の奥、気管支の手前まで届きそうなので口内に留め置くわけにも行かず、あふれ出る涎とともに飲み干すしかない。
それが不思議とツバサの興奮を煽ってきた。
ジュッポジュッポジュッポ……粘着質な音が規則的に響く。
口中では猫のように逆立った舌が、突っ張る表皮を撫で回したり、我慢により汁を分泌する先端の割れ目を舐めたりと忙しなく動いていた。
殺戮の女神の牙みたいな歯も、刺激を与えるアクセントに使う。
ミロの股間から飛び出したものはますます大きく固くなっていき、ツバサの口内どころか喉さえ貫きかねない勢いだった。
されるがままのミロは、ツバサの奉仕に身を任せている。
ベッドに腰掛けたまま両脚を開いて、彼女の股間へ顔を寄せて一心不乱にしゃぶりつくツバサを受け入れる体勢を取っていた。
ミロも男の娘の快感に慣れてきているはずだ。
それでもツバサからされるという事態は初めてなので、新鮮な喜びに感動しているのかブルブルと震えていた。我慢するように瞳を閉じており、ツバサが前後へと顔を揺り動かす度、その唇からは小さな喘ぎ声を漏らす。
ほんのり目を開けたミロが、可笑しそうにこちらを見つめる。
「ウフッ……ツバサさん、なんか変な顔してる……なんだっけ、あれ?」
「……んぶぅ、びょぼごばう゛ぇぶぶばびだろう」
……多分、ひょっとこって言いたいんだろう。
そう発言したつもりだが、口を窄めたままミロのものをくわえているので、まともな言葉として聞こえなかった。でも通じたらしい。
そうそれそれ! とミロは喘ぎながら喜んだ。
「みんなのオカン系女神になっても……あっ! 誰よりも強くて凜々しくてカッコいいツバサさんが、くぅ……ひょっとこみたいな顔で一生懸命……んんっ! アタシの……ふあっ! オトコノコに吸い付いてるなんてさぁ……ッ!」
ちょっと面白いよね、と彼女は愉悦に浸っていた。
見下されるような視線を受けたツバサは、背筋を駆け抜ける冷たさに得も言われぬ気持ち良さを感じてしまう。悪寒なのに中毒性があるのだ。
……やっぱり自分はマゾなのかも知れない。
いつぞやのミロの指摘を否定できなくなってきていた。
反論できないツバサは屹立する男の証を口に含んだまま、こちらを嘲りを含んだ瞳で見下ろしてくるミロを、恨みがましい視線で睨め上げる。
『ツバサがこんなになったのはミロのせいだろ!』
目は口ほどにものを言う。この視線がミロのどういう感性に触れたのかわからないが、男性化した彼女の性器がツバサの喉を破る勢いで膨張した。
違う――これはもう発射寸前の反応だ。
「あああっ……ツバサさん、出ちゃう! もう出ちゃうよぉッッ!」
切ない声を上げたミロは両手でツバサの頭を抱えた。
「むむぐっ!? うっ、くぅん、んぐぅ……ッ!?」
喉の奥に突っ込まれたまま固定されたツバサはむせるものの、抵抗する間もなくミロは男の娘らしい生理現象として精液を解き放った。
有無を言わさず食道へと注ぎ込まれる。
「……んっ、んんっ、んんぅ……ッ!」
あまりに大量なので飲み下すのが間に合わない分は、逆流するように口の中へ溜まっていくが、ツバサは反射的にゴクゴクと飲み干していった。
栗の花に形容される香りと、表現するのに困る味わい。
妙に弾力のあるゼリーのような食感と、いつまでも喉の内壁にまとわりつくような喉越しは、未だに慣れることはない。
いくら最愛のミロが出したものとはいえ――男の精液だ。
まだ男のつもりでいて性癖もノーマルなツバサにしてみれば、他人の精液など飲むどころか触れることさえお断りである。
しかし、女神となったこの肉体では話が違う。
ミロの精液を美味しく感じるようになってしまった。
妹として娘として伴侶として愛して已まない彼女だから特別かも知れないが、上の口にしろ下の口にしろ、体内へ取り込めば体の芯が熱くなる。
そして、新たな活力が漲ってくるのだ。
どうやら女神として男神の精を啜っているらしい。
当初は「サキュバスじゃあるまいし」と嫌悪感があったものの、ミロに女として抱かれて精を注がれる度、女神の力が増大するのを感じたので抵抗することを諦め、むしろ好意的に受け入れる方向へ舵を切った。
『気持ちいいことをして強くなれるなら最高じゃないか!』
自らにそう言い聞かせ、泣き言を喚く男心を無理やり黙らせた。
それからは“カーマスートラ”や“房中術”などの性愛系技能を習得し、ミロとの性交による“気”の充填法も体得していった。
いつも男の娘になったミロにやられっぱなしだったわけではない。
ミロとの性行為に及ぶ度、女体の快楽に負けてされるがままばかりではなかったのだ。努力家のツバサは性的な面でも密かに精進を重ねていた。
その結果が――このご奉仕に繋がっている。
唇から零れる精液を、取りこぼすことなく舌舐めずりで回収する。
英雄神の精を啜った殺戮の女神は会心の笑みを綻ばせ、戦闘でしか解消されないはずのフラストレーションが和らいできた。
この結果にツバサはご満悦である。
一方、ミロは一回目の絶頂を終えてやや放心していた。
いわゆる賢者タイムというやつだろう。
臍に届かんばかりの勢いで反り返っていた逸物も大人しくなっていたが、まだ硬さは衰えておらず、半勃ちほどの状態を維持している。
それを見つめていると、殺戮の女神の攻撃的な悪戯心に火が付いた。
「そういや……これもご希望だったよな?」
牙だらけの歯を剥いてニヤニヤと笑うツバサは、しゃがんだ体勢から膝立ちになると背を伸ばした。左手は次第に落ち着いてきた男性器を握る。
手で扱いてやり、勃起するように導いていく。
「ちょ、ツバサさん!? 出したばっかりですぐってのは……うあっ!?」
立ち上がるそれに母乳の飛沫をたっぷり浴びせる。
右手で乳房の片方を持ち上げたツバサは、おもいっきり搾乳してびしょびしょになるくらいハトホルミルクをぶっかけてやった。
万能霊薬に匹敵する効果を持つ神々の乳母のミルク。
経口摂取、粘膜吸収、皮膚塗布……どんな形であれ体内に取り込めば、死の淵にあろうと回復させる効果がある。疲労回復など言わずもがなだ。
「ううっ……そ、そんなことしたらすぐ……ほらぁ!?」
どうなるかを察知してミロも、苦笑いで変な大声を出していた。
精を吐き出して萎えかけていたミロの男性器が、ハトホルミルクの回復力によって見る見るうちに元気を取り戻す。最初よりも元気なくらいである。
ビンビン! なんて効果音が聞こえてきそうだ。
はち切れんばかりの膨張にツバサも満足げに微笑んだ。
「これもやってほしいって言ってただろ、ミロ……」
ミロに吹きかけるばかりではなく、ツバサは片手で滴る母乳を受け止めて交互に搾乳すると、掌に溜めたハトホルミルクを胸の谷間へと注いだ。
神族の力で調整した――とろみの増した母乳。
ローションとするにはもってこいだろう。
ミルクローションでヌルヌルにした乳房の谷間を開くと、今にも爆発しそうなほど回復したミロの男らしい部分を挟み込む。片手では扱いきれない超爆乳を鉤爪が食い込むほど掴んで握り、握力に任せて力任せに操る。
乳房の谷間で男性器を抱き込み、肉の圧力で扱いていく。
ダプンダプン! と豊満な乳房の肉が波打つ。
乳腺を包むとてつもない量の脂肪が、津波のようにミロの男らしさの象徴を乳の海へと沈めるように飲み込んでいる。
男の娘となったミロの性器は大きい部類だ。
それでもツバサの超爆乳に挟めば丸ごと埋もれてしまう。
「パイ、ヅリ……アタシのが……埋もれちゃうッ!」
これもよく知られる性技のひとつであり、おっぱい星人ならば夢にまで見る乳房によるプレイだが、その効果については賛否両論かも知れない。
実際に体験すると「そんに気持ち良くない」なんて意見も少なくない。
ツバサもそこはかとなく同感だった。
まだ男性だった頃、ミロが成長過程の胸で一生懸命やってくれたから、そのシチュエーションに萌えはしたものの感じ方は今ひとつだったし……。
頑張ってくれた本人には口が裂けても言えないが!
あくまでもおっぱいマニアがヴィジュアルと雰囲気で興奮するもの。
この性技に関してはそんな印象を持っていた。
(※あくまでもツバサ個人の感想です)
ツバサとしてもシチュエーションとしては好物である。
しかし、まさか自分が日本人離れした超爆乳となって、男の娘になったミロへする側に回るとは夢にも思わなかった。だが、する側される側が反転してもおっぱい星人の血が騒ぐのか、得も言われぬ昂ぶりに胸が躍った。
本当に巨大な胸が躍っているのだが……。
「これもやってほしいってよくぼやいてただろ……お望み通りだ!」
ドムンドムン! とドラムを鳴らすような振動音が響く。
前述した通り、力任せな荒技なのでツバサ自身への反動も強い。おかげで感じやすい乳房だけで達してしまいそうだった。
おまけに――ハトホルミルクがだだ漏れである。
乱暴に扱うものだから、乳房が跳ねる度に乳房ごと乳腺が圧迫されて、ブビュ! とかドピュ! と淫靡な音を立てて噴き出してしまっていた。
ちょっと気を抜けば女の快楽に屈してしまう。
それではいつも通り、ミロに良いように弄ばれるだけだ。
だが殺戮の女神ゆえに我の強さか、それとも負けん気の強さによる耐性が働いているのか、女体の快感よりも目の前の雄を屈服させたい支配欲にも似た感情が叫んでおり、気持ち良さに負けそうな自我を奮い立たせていた。
このため女体を楽しみながらもミロを嬲ることができていた。
今もただ乳房で挟んでいるだけではない。
ツバサは過大能力によって肉体を様々な形で調整できる。
こっそり能力を使って乳房の柔軟性や弾力性に変化を付けると、ミロの男性化して勃起した性器にあらゆる刺激を与えているのだ。
緩急を自在とする圧迫感、男性器の穴の奥まで吸い上げる吸引力、乳房の中に堅めの異物を仕込んで弱いところを指圧するような感覚……。
高性能マッサージ機顔負けの多機能っぷりだ。
隙あらばハトホルミルクも追加し、母乳に溺れる気持ちも体験させる。
「ああああっ……うあぁっ! ダ、ダダ、ダメだってツバサさん!」
ミロはあまり聞いたことがない弱腰な声で訴えてくる。
「さっきイッたばかりなのに……またすぐ出ちゃう! こんな、ふっ、あっ……イン、ターバル置かずにすぐなんて……やっ、はぁ……アタシも……」
「ま、男だとちょっとキツいよな……わかるよ」
連発もできなくはないが、間を置かずには辛いものがある。
元男なツバサは共感できた。
だからこそ――殺戮の女神の嗜虐心がそそられる。
ツバサは乳房の位置をずらすと、ミロの男性としての逸物が見えるように調整してやる。先っちょだけ、亀の頭のように顔を覗かせる程度だ。
今にも精液を吐き出しそうに膨れ上がる、割れ目の目立つ先端部分。
乳房で挟み込んだまま、そこに舌先を這わせていく。
我慢するなよ、と急かすように雌獅子のざらつく舌で誘ってやった。
「さあ遠慮するな……逝け」
「あぐっ……もう、無理ぃ……いくぅうッッッ!」
せっかく男の娘になったというのに、ミロは女の子みたいな嬌声を上げて二度目の射精をしてしまう。放たれたものはツバサの顔面に吹き掛かる。
すかさず大きく口を開いて飲み干した。
血の一滴すら逃さぬよう啜る雌獅子の心持ちだ。
愛欲が満たされるとともに――殺戮の女神も鎮まってくる。
どうやら目論み通り、変身バグも治せそうだ。
しかし、ミロをやり込める機会など早々ないので、今日はいい機会だから徹底的にやらせてもらおうと思っていた。
色々と考えながらも、舌先はミロの精を啜ることに集中する。
顔に掛かったものも舌を伸ばして舐め取り、胸に降りかかったものもハトホルミルクと混ぜるようにして舐める。ちょっと持ち上げただけで、簡単に乳房を舐められるほどの超爆乳になってしまった。
遊び半分で自らの乳首に吸いつき、セルフ授乳とかもしてみる。
「んっ! くぅ……んくぅ、んくぅ、んんっ……くぅ……」
これは――意外と癖になるかも知れない。
自他関係なくお乳を搾られたり、ミロを始めとした子供たちに授乳されたり、クロコの開発した搾乳機で搾られたり……。
異常な性感帯となったツバサの乳房は、どれでも快感に身悶える。
セルフ授乳でもそれは同じだが、自分でコントロールしやすいので制御できる気楽さがあった。ついでにハトホルミルクで体力も回復できる。
万能霊薬をも上回る回復力を持つようになったミルク。
飲んだ感想は誰に聞いても「美味い!」に尽きるが、自分が飲んでも美味しいので納得するしかない。
ツバサの男心は果てしなく傷付き、心中とても複雑なのだが……。
「んくぅ……はぁ、ったく……変な気分だな」
セルフ授乳から一息ついたツバサは、誰に聞かせるでもなく独りごちた。
「女役に徹してるっていうのに……まったく苦にならねぇ」
あれほど嫌がっていた女神の肉体を使い倒している。
女性の役目に徹しているといえど、雌獅子の女王と恐れられる殺戮の女神モードなので、やることなすこと攻撃的なのは見逃してほしい。
だが、男の娘のミロが悲鳴を上げるほど悦んでいるのは間違いない。
「慣れか適応か……あるいは殺戮の女神のアバウトさか?」
普段のツバサではここまで積極的にはなれない。
ハトホルミルクを飲むことも忌避していたのに、ローションの代用にするは自分でゴクゴク飲んで堪能するは、すっかり女体を使い熟していた。
「……ま、どっちでもいいか」
逡巡するように思案したものの、ツバサは五秒で考えを放棄した。
殺戮の女神は短絡的かつ刹那的でもあった。
こんな時、女体化して困り果てるツバサの様子をニマニマした笑顔で見守りながら、ミロはねちっこい言葉の鞭でイジメてくるものだった。
しかし、今日は合いの手どころか相槌も入れてこない。
――それどころじゃないからだ。
「はぁ、はぁ、もぉ無理……立て続けに連続は無理ぃ……」
ミロは大型ベッドの上で大の字を書いていた。
ただ愛の営みを交わすだけならば体力の消耗だけで済む。それだけならばハトホルミルクで如何様にも回復できるだろう。
しかし、吐き出した精は違う。
あれは自らの生命力を削って解き放つもの。
女の卵子と融合して次世代を担う生命を生み出す貴重なものだ。
ツバサは女神としての権能と性愛系技能を織り交ぜて、ミロから啜った精を“気”へと変換。滋養や活力として吸収しているも同然。
一方のミロはひたすら生命力を搾取されているようなものだ。
いくら若い神族の男性とて苦しいに違いない。
体力や気力の消耗ではなく――魂魄に程近い生命力の消費なのだから。
(※殺戮の女神の常時発動型技能として必要以上に生命力を吸い取る効果が発動しており、尚且つカーマスートラや房中術などの性愛系技能が余計に精を吸い上げているので、ミロの負担はいつもの情事より数倍キツい)
「なんだ、だらしない。いつも元気はどうした?」
ツバサははだけていた赤襦袢を脱ぎ捨てながら言った。
ハトホルミルクに塗れた乳房のみならず、これまでの行為でツバサも淫らな気持ちに昂ぶっており、股間は水浸しと見間違うほど濡れていた。
むっちりした太ももから足まで、零したように愛液が伝っている。
ミロは天井を見上げたままか細い声で答えた。
「だってぇ……休憩なしはキツいよぉ……男の娘のイクって、出した後の脱力感がスゴいから、ちょっと息を整える時間がないと……はぁはぁはぁ!」
これ見よがしに息を荒げて疲労をアピールする。
普段の情事では男として数回の絶頂を迎えても平気なミロだが、さすがに時間差を置いてのものだ。こんな短時間で連続射精したことはない。
ここで――間髪入れずにトドメを刺す。
全裸になったツバサはベッドに乗るとミロへ近付いていく。
四つん這いで肉食獣のしなを作りながら這い寄る姿は、牝牛と揶揄されるハトホルのものではなく、獅子の女王と呼ばれるセクメトそのものだった。
大の字で寝るミロへとツバサは覆い被さる。
超爆乳は重力に従って垂れ下がり、乳首がミロの肌へと触れそうだ。
――獲物を弱らせて存分に弄ぶ肉食獣。
そんな陰惨極まりない笑みを浮かべた殺戮の女神は、片手をベットについたまま四つん這いの身体を支えると、もう片方の手で母乳を搾り出した。
「うわっぷッ!? ツバサさん、もういい……もういいって!」
ノーサンキュー! とミロが喚いても搾乳は止まらない。
顔といわず全身に万遍なくミルクのシャワーを降り注がせると、二度の射精により力を失いかけていた男性器にもたっぷり掛けてやる。
実はこれ、普段のハトホルミルクと一味違う。
乳腺に働きかけて催淫成分を含ませたので、媚薬の効果があるのだ。
そんなものを浴びせかけられたら、当人の意思を無視してでも肉体は性欲の赴くままに反応すること請け合いだ。
萎えかけていたミロのオトコノコは三度、天へと屹立する。
この後に起きることを直感&直観という固有技能を持つミロは機微に察し、絶望を目の当たりにしたかのように顔を青ざめさせた。
ツバサは身体を持ち上げ、ミロへ跨がるような姿勢を取る。
相撲の四股にも似たポーズでがに股になると、見せつけるように巨尻の肉を揺らしながら、すっかり準備の整った股間の花弁を押し開いた。
ミロの男性器を受け入れる――女神と化したツバサの女性器。
ご奉仕と称してミロに施した性的な行為は、ツバサの興奮も十二分に高めてくれていた。前戯などせずとも胎内へと続く道を潤すための愛液は止め処なく湧いてきており、暗く狭い穴の入り口は待ち兼ねたように蠕動する。
お腹の奥にある女性的な器官が降りてくような錯覚さえ覚えた。
「まさか……すぐに三発目をッ!?」
ミロの絶叫混じりの質問に、殺戮の女神は無慈悲な返答をする。
「いいや……三発目からは抜かずに連続だ」
死刑宣告を受けたような悲鳴が上がるよりも早く、ツバサは巨尻の重さに耐えかねるように腰を落とし、ミロの硬く太いもので身体の真芯を貫いた。
「………………ッッッぁ、かはッ!」
瞬間、凄まじい女の絶頂にツバサの脳内は真っ白になった。
お預けが過ぎたのか、ミロの男性化した部分を「待ってました!」とばかりに食らいついたツバサの女として成熟した部分は、歓喜のあまり比べ物にならない快感を一気に迸らせてきたのだ。
これにはツバサの意識も飛びかけるところだった。
しかし、ここでも殺戮の女神の耐久力が活きたのか、すんでの所で堪えることに成功したため、快感に打ちのめされるも自我を保つことができた。
ただし、少々情けない格好でだ。
ダプン! と超爆乳や巨尻をはしたなく揺らしたツバサは、首を仰け反らせて天を仰ぐような姿勢で二秒ほど硬直してしまった。
「……っお…………ほぉ……へぇ……ッ!?」
その顔は俗にいう“アヘ顔”みたいにだらしなかったに違いない。
ミロの位置から表情は窺えないのが幸いした。
間抜けな喘ぎ声もできうる限り押し殺したので聞かれてないはずだ。
ミロもツバサの様子を気にしている余裕はない。
「くぅあっ! こっ……こんなすぐ三回目はいけないってばぁ!?」
タイムを要求しまーす! と泣きついてきており、絶好のチャンスだというのにツバサへ腰を打ち付けるような真似をする素振りもなかった。
この体勢、いわゆる騎乗位と呼ばれるもの。
ツバサの方が体格がいいため、はね除ける余力がないのかも知れない。
フーッ! フーッ! フーッ! と限界ギリギリの身体に鞭打つような断末魔の吐息を漏らして絶頂をやり過ごしたツバサは表情を取り繕う。
殺戮の女神らしい不敵な笑顔。
今度はツバサが余裕のないミロを見下してやる番だった。
「う、動かなくていいぞミロ……今日は全部、俺がやってやるから……」
そのままマグロみたいに寝転がってろ、と言い付けた。
ミロの男性器を秘所の穴にくわえたまま、再び射精を促すように巧みな加圧を加えつつ、ゆっくり超安産型の尻ごと腰を持ち上げていく。
手頃なところまで上がると、一気に腰を下ろした。
ズン! と互いに下半身に衝撃が走るほどの落下である。
そしてまた巨尻ごと腰を持ち上げ……この上下運動の繰り返しだ。
「あっ……はっ……んっ……ふぅっ……おっ!」
リズミカルに弾む巨尻に合わせて、掛け声みたいな喘ぎが出てしまう。
乳房やお尻の肉が弾む音に、それそれの大切な部分がぶつかることで滴る体液の飛び散る水音。、そしてツバサがミロを押し潰すように腰を打ち下ろす音が三重奏になって奏でられている。
「ほぁっ! あっ、やっ、ぐっ……ツバ、さん……待っ……やめ……って!?」
「すまんミロ……やめられそうにない」
この時ばかりはツバサも素直に謝った。
快感を楽しむあまり、腰の動きを止めることができなかった。
恋人繋ぎというには乱暴が過ぎる、鉤爪の目立つ指でミロの手を掴むと、決して離さないと言わんばかりに爪を食い込ませた。
猛毒のような女性的快楽にはまだ違和感を覚える。
それでも都合一年余りもミロに女として犯され、持ち前の努力家精神から性的な意味でも鍛練を重ねてきたツバサは、次第に付き合い方を学んでしまった。
秘所に開いた花弁にも似た亀裂にも――。
そこから胎内へと通ずる蠢く穴にも――。
穴の奥にある卵を産み宿す胎内にも――。
それらすべてが渾然一体と発する感覚に抵抗感が薄らいできたのだ。
でなければ、いくら殺戮の女神になって気が大きくなったとしても、ミロを相手にこんな大胆に振る舞えなかっただろう。
獅子の女王はあくまでも切っ掛けに過ぎない。
ツバサは今――女神として更に一皮剥けようとしていた。
重々しい上下運動が30回か40回を超えた頃。
ツバサはさっき迎えたばかりだというのに、もう二度目の絶頂が近付いているのを感じた。女性の身体は連続して絶頂できるのは本当のようだ。
かつて前戯だけで何度も達したのはいい経験である。
「ツバサさん……ホント、マジ無理……また、イッちゃうからぁ……ッ!」
ミロもまた三度目の射精が迫っているらしい。
ここまで追い詰めて、ようやくわかったこともある。
ツバサが女性化をまだ受け入れていないように、ミロも男の娘化した肉体に適応し切れていない。どうしても不慣れなところがあるのだ。
いつもはやられっぱなしなので気付けなかったが、攻守逆転した今では彼女の拙さが手に取るようにわかる。彼女はまだ男性としては、女体にがっつくだけの生意気な小僧くらいの経験値しかない。
ツバサが女性としてまだまだ未熟なのと同じだった。
だから、こうして一方的に攻められると弱い。
確かな手応えを感じた殺戮の女神は、勝利を確信した笑みで牙を剥いた。
片目を瞑って気持ちよさを堪えながらツバサは告げる。
「我慢するなよ……逝け、逝ってしまえ……今度は、俺も一緒だから……」
自分も限界が近いことを教えると、ミロはせめてものガッツは見せようとしたのか、最後の力を振り絞って向こうから腰を打ち付けてきた。
「い、一緒……うっ、あぁぁッ……ツバサさぁぁぁぁん……ッッッ!」
「ミロ、来て……一緒に、逝くぅ……ぅぅぅぅぅぅぅぅんんんッ!」
上手いことタイミングを合わせられたらしい。
お腹の奥に熱い液体が注がれる感覚。じんわりと広がっていく熱と、下腹部が少し膨らみくらいの量の多さを感じることができた。
この精も技能“房中術”でありがたく“気”として頂戴する。
「…………ふぅ」
人心地ついたように息をついたツバサは、ミロのものを下の口にくわえ込んで彼女に乗ったまま、ペタンと女の子座りで腰を下ろす。
のし掛かられたミロは重そうだし、死に体で虫の息だった。
「もー無理! マジで無理! これ以上は神族でも腎虚で死んじゃう!」
「……どこでそういう単語を拾ってくるんだ耳年増め」
嗄れた声で騒ぐミロにツバサは静かにツッコミを入れた。
(※腎虚=正しくは漢方医学における“腎”の不調から来る体調不良全般。いわゆる腎臓とは異なり、漢方医学では膀胱、耳、骨の不調に当たる。その症状のひとつに精力減退や泌尿器の機能低下がある。これと関連するのか、かつて男の精液は腎臓で作られていると信じられており、性行為をやりすぎると腎臓が衰弱、度が過ぎれば死に至ると考えられた。ゆえに男性が過度の性行為で死ぬことを腎虚と呼び、艶っぽい古典フィクションでよく言い回しに用いられた)
「腹上死は男のロマンじゃなかったのか?」
以前どこかでそんなふざけた台詞を口走っていたはずだ。
「アタシ……一応、女の子だし……」
都合良く性別を使い分けるな、と叱りつけてやる。
「せめて、小休止タイムを……取らないと……本当無理だから」
ジタバタ動く力も残ってないが、さすがにこれでお終いだろうと思い込むミロはモタモタした動きで跨がっているツバサから逃れようと藻掻く。
しかし、ツバサの秘所はミロのものをくわえ込んだまま。
離すどころか万力みたいに締め付けるので、ミロは顔面蒼白だった。
「え……嘘でしょ? まさかそんな……わあっぷぷぷッ!?」
ツバサは両手で超爆乳を抱えるように持ち上げると、まだまだ在庫がだぶついているハトホルミルクのシャワーをお見舞いしてやる。
これで否応なしにミロは回復する――精力的な意味でもだ。
「言っただろう? 抜かずに連続だ……ってな」
破壊神も裸足で逃げ出す、清々しい狂気も露わにツバサは破顔した。
見たこともない殺戮の女神のオリジナル笑顔を目の当たりにしたミロは、黒目を点にして見開いたままハラハラと涙を流していた。
波線で囲ったように戦慄く口元は反論の句も呟けない。
ただ、無力な乙女のように「イヤイヤ」と首を左右に振るばかりだった。
ズイッと身を乗り出したツバサは宣告する。
これまでミロに味わわされた、女体化した肉体を玩具にされてきた恥辱。男心を蔑ろにされてきた鬱憤を払うように、その声は復讐の喜びに満ちていた。
「佳い声で哭けよ――夜が明けるまでな」
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