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第18章 終わる世界と始まる想世
第437話:終始の揺籃は虚を抱く
しおりを挟む過大能力――【時空間を消却する空白の風穴】。
リードが破壊神より授けられた、第二の過大能力。
第一の過大能力【見渡す視野に滅び齎す眼球】も消滅を引き起こす力だが、あくまでも物質界に属するもの。形而下の存在のみを消し去るものだ。
しかし、こちらはより高次元からの消却をもたらす。
時間や空間といった制約を超えた場所。形而上とも呼ばれる領域。
時空間もその一部に過ぎない多重次元の外側から、すべてを空白へ落とす虚無を生み出す過大能力である。
結果として――すべてが無に帰す。
この空白に落とされたものは、時空間から完全に消えるのだ。
これまで積み重ねてきた過去という実在証明が消され、現在ここにある存在を成り立たせることができなくなり、未来永劫の虚無が蟠るばかり。
この世の始まりから――そこには何も無い。
輪廻転生するどころか、前世も前々世も前々前世も抹消される。
勿論、来世があるわけもない。
生命として死に、存在が無とされ、情報の断片さえ残されない。
すべてを完膚無きまでに白紙とされる。
いや情報を記されていた白紙さえ、その白紙が実在した証拠も残さずに消されてしまうのだ。その白紙を処分したという記録すら見当たるまい。
『――そこに何かが書かれていた白紙があった』
こうした痕跡さえ認められない。
力の加減を弱めて使えば、時間と空間を操ることさえ可能だ。
白紙に記された情報を修正液で訂正するように、時空間へ働きかけられる。
時間停止と錯覚するほどの時間遅延を引き起こしたり、過去と未来をグチャグチャにかき混ぜたり、時間を消し飛ばして数秒先の未来へ転移したり……。
応用の幅は広いが、所詮は小細工でしかない。
この過大能力の真髄は――空白。
消滅をも凌駕する、時空間に空白の欠落を生じさせる力。
破壊神をして「オレがくれてやれる最強能力のひとつ」とお墨付きだ。
本来ならば例えるのも不敬だが例えてみよう。
時空間とは――石碑みたいなもの。
滅多なことでは壊せない、頑丈な鉱石で作られた石碑だ。
この時空間という石碑には多くの情報が刻まれる。
時間を重ねれば重ねるほど、その刻まれた情報量は増えるだろう。
情報は年月の流れによって色褪せることもあるが、堅牢な鉱物である石碑は悠久の時を超えて、ただそこに在り続けるものだ。
時空間とはそういうものらしい。
消滅の過大能力――【見渡す視野に滅び齎す眼球】。
消滅の力で消せるのは、この石碑に刻まれた情報がいいところ。
空白の過大能力――【時空間を消却する空白の風穴】。
空白の力ならば、時空間という石碑ごと消すことができるのだ。
巨大なドリルで打ち砕くようなものである。
使用者であるリードの手応えとしては、時空間を消している感覚しかないのだが、本来の力の所有者であるロンドに言わせれば――。
『もっと上の次元から消してる。いや、塗り潰してるみたいなもんかな』
そういう桁外れな能力らしい。
まさしく異次元、あるいは別次元というより他あるまい。
それゆえ――使用者への反動も大きい。
時空間を空白へ落とすほど、リードもまた空白に蝕まれていくのだ。強く大きく解放するほど、猛毒のように心身が虚無へ融けるのを実感できた。
やがてリード自身が空白となる。
この世に空白を蔓延させるための触媒となるのだ。
この真なる世界に終止符を打つ瞬間。
その時、リードはこの過大能力を最大出力で解き放つだろう。
できれば真なる世界すべてを道連れにするつもりではいるが、最低でも四神同盟の活動エリアである中央大陸くらいは空白に沈められるはずだ。
そして、リードも空白に飲まれて消える。
もしも取りこぼしがあったとしても問題はない。
後始末はロンドがすべてをやってくれると信じていた。
生命も人類も世界も――完璧に滅ぼし尽くす。
それが破壊神ロンドがこの世に誕生した、唯一無二の理由なのだから。
しかし、意外にもロンドは万が一に備えた安全策も採る。
『リード、おまえは破壊神の“保険”だ』
この“保険”は最たるものだった。
破壊神の“保険”とは、リードにしてみれば過分な名誉である。矮小なこの身に余る責任を負わされた気分だ。
だが、その責任感が心地良くもあった。
誰しも尊敬する御方から信頼されれば胸が熱くなるというものだ。
リードがロンドへ捧げる敬愛はさておき――。
ロンドは無責任一代男とか極悪親父とか、後先考えずに動くチャランポランでやることなすこと適当で済ますオッサンと思われがちだが、大人の嗜みとしていくつもの“保険”をかけることを忘れない御仁でもあった。
やり過ぎでは? と疑う“保険”もある。
『負けた時のことも考えてツバサの兄ちゃんにも“保険”かけといた』
『立場ラスボスなのに許されるんですかそんなこと!?』
思わず身の程知らずにツッコミを入れたほど驚いてしまった。
もしも破壊神が守護神に敗北した場合――。
予定通り、地球の人類もこちらに集団転移してくる。彼らの中にはロンドが地球で縁を結んだ妻子や縁戚にある者も含まれていた。
彼らを破壊神の縁者として冷遇せず、普通の避難民として扱うこと。
これをツバサに約束させたという。
人間として暮らした性、一抹の憐憫がそんな約束をさせたらしい。
『そりゃあな、オレにだって破壊神の矜持があるわけよ』
何があろうと世界を滅ぼす――これは絶対だ。
『この世の終わりをお断りする三下どもに負けるつもりはねえさ。でもな、立場ラスボスの沽券に関わるから、負けを見越すのは御法度ってのもわかるんだが……長く生きてると威勢だけじゃやっていけんのよ』
もしも、特別、万が一、特例、もしかしたら、まさか……。
『破壊神が負ける、そんなネガティブな未来だって思い描いちまうのさ』
四神同盟の代表を務めるツバサ・ハトホル。
彼女も大層用心深い性格だと聞くが、ロンドも似て非なる慎重さを心のどこかに秘めていた。それを「大人の余裕だ」と彼は嘯いたものだ。
大人だから余裕ぶりたい、そのために保険の重要性を説いていた。
『何度でも言うが……リード、おまえは“保険”だ』
この役割はリードに限った話ではない。
『オレが能力を授けたバッドデッドエンズは、大なり小なり“保険”だ。リード、おまえも含めた連中は破壊神の血よりも濃い力を分け与えられた、眷族にして血族にして同胞だ。見方次第では分身といっても過言じゃねえ』
部下や家族という単語を使わない。
むしろ仲間意識や運命共同体といったものを強調する口振りだった。
『オレにもしもがあれば――おまえらが破壊神となる』
具体的に何が起きるのか? その内容をロンドは教えてくれた。
『アダマスみたいなとびきりの天然素材はさておいて……リードを初めとしたバッドデッドエンズの90%以上が、破壊神の力を宿している。その力は時間や空間を迂回したところで破壊神と繋がってんだよ』
ロンドに万が一が起きて、破壊神の役目を果たせなくなった場合。
『破壊神の力はバッドデッドエンズに譲られる』
その時点でバッドデッドエンズが何人生き残っているか定かではないが、その中で最も破壊神として素養のある者へ、更なる力送られるという。
志半ばで倒れたロンドの力を引き継ぐわけだ。
そして、新たなる破壊神となる。
『んで、思想的にも能力的にもオレの眼鏡に適うのは……』
リードだ、とロンドはまっすぐに指差した。
『そんなわけだから、オレはおまえを“保険”と公言してる。ああ見えて面倒見のいいアダマスやジンカイに『よろしくぅ♪』と託したわけだ』
つまんねえ死に方してくれるなよ? とロンドには念を押されていた。
手前勝手な父親から一方的な期待を押し付けられる。
そんな心境なのに、リードは歓喜にも似た衝動が湧いていた。
親兄弟や一族どころか集落のすべてから、怪物のように蔑ろにされてきたリードにとって、家族の恩情のように温かく染み入るものだった。
それとともに大きな責任感で身が引き締まる思いだ。
ロンドに緊急事態が起きた場合、その代行として破壊神を務める。
二度と世界が生まれてこぬように破壊し尽くす。
リードが成し遂げられずともロンドが世界を終わらせてくれると安易に考えてはいけない。共に世界廃滅へ向けて全力を尽くすという気構えを改めさせられた。
破壊神のために粉骨砕身で働く――これがリードの原動力だ。
実際、リードはロンドに大きな恩を抱いている。
無垢な自分を掃き溜めから救い出し、悍ましい村落に粛正を科した。
それだけでリードには大恩人なのだ。
まだ地球にいた当時、何かと世話を焼いてもらった時期もあったためか、リードはロンドに対して父性を見出していたのかも知れない。
上司として慕う以上の感情があったのは事実だ。
敬愛を捧げて親密感を求めていたことを自己分析するに、恋愛というよりも父性を求めていたと考えた方が自然だろう。
助けられた経緯がリードの心にそう働きかけていた。
しかし、リードはあくまでも破壊神の部下の一人に過ぎない。
頭脳役マッコウ、右腕アリガミ、秘書ミレン。
――言わずと知れた三幹部。
彼らはロンドとの家族同然な交流を許されていた。
真なる世界から地球へと渡った灰色の御子、三人はその末裔だ。それも破壊神に連なる系譜だというから、親近感もあったのだろう。
リードはその特異な出自から、面白半分で拾われただけなのだ。
それでも――リードは特別視されていた。
少なくとも、リード自身が信じるに足る自負がある。
複数の過大能力を宿せる、その希有な体質ゆえ重宝されたのは事実だ。
だが、それだけではない。
破壊神をして「最強能力のひとつだ」と認めるほどの過大能力を授けられ、108人もいたバッドデッドエンズの一番隊隊長に任命され、“保険”と称される特別待遇を受けることができた。
これも偏にリードが破壊神の思想に心酔したからだ。
――リードは憎んでいた。
自分を苦痛と苦悩と苦悶の底へと放り込んだ人々を……。
底へと沈んだ自分への更なる呵責を容認した世界を……。
何より、この腐れた世に生を受けた運命への怨みを孕んでいた。
毒々しい腐臭――嘔吐くしかない悪臭。
どちらも物心ついたリードが初めて認識したものだ。
人心はドロドロに腐れ果て、村の隅々にまで腐臭が蔓延する。
そんなところでリードは生を受けた。
生まれ落ちると同時に、人間性を奪われる呪いを受けてもいた。
リードは誕生した瞬間から絶望を刻まれたのだ。
そのため家族からは「出来損ない」と断じられ、誰にも合わせぬよう座敷牢へ閉じ込められた。その後、利用価値を見出されて散々に使い潰された。
そこに人権などありはしない。
個人としての尊厳は踏み躙られ、主張や発言を認められたことはない。
人間ではなく――徹底的に道具として扱われた。
ここでリードは人と世の腐敗を骨の髄まで味わわせられたのだ。
腐臭に満ちた牢の中、リードはいつも独白を呟いた。
『……腐れた人も世も……飽き飽きだ……』
『どちらでもない僕に……この腐臭は耐えがたい……』
『人間も世界も……そして僕も……すべて消えてしまえばいいのに……』
幼気な渇望に応えるべく、破壊神は手を差し伸べてくれた。
それは一陣の風としては凄まじかった。
故郷と呼ぶのも烏滸がましい、リードの生家がある村落。
一瞬でその地を壊滅させたのだから――。
監禁されていた座敷牢を壊して、リードを取り巻く劣悪な環境を丸ごと吹き飛ばすような嵐とともに、ロンドは傲然とした勢いで現れた。
威風堂々なんて四文字熟語がよく似合う。
その威風は、形あるものを壊すために吹き荒ぶ滅びの激風。
家屋も、畜生も、人間も、ひとつ残さず益体もないゴミ屑に変えてしまった。
ゴミ屑を残しておくのも鬱陶しいとばかりに、苛烈な炎が残骸となった村々を焼き尽くす。逃げ惑う村人たちも次から次へと絶叫を上げて炎の中に倒れていく。
燻る焦土を踏み拉いて――ロンドとその一行はやってきた。
まさしく破壊神に相応しい登場である。
こうして三幹部を引き連れた悪のカリスマはリードの前に現れたのだ。
『面白い小僧がいると風の噂で聞いてな、会いに来てやったぜ』
おまえがそうか? とロンドに問い掛けられた。
座敷牢どころか一族郎党の棲まう屋敷を吹き飛ばした魔人に、当時のリードは脅えながらも、わけもわからないまま頷くことしかできなかった。
『あら、この子……どちらでもないわよ?』
すると頭脳役マッコウが、一目でリードの正体を見抜いてきた。
『陰魂もなければ陽魄もない……持たざる者じゃないの』
『あ、内在異性具現化者の逆ってやつっすか?』
『まさにロンド様が探しておられた相反両義否定者でございますね』
右腕アリガミと秘書ミレンも少々驚いていた。
ロンドは幸運を引き当てたように、唇の端へ笑みを浮かべていた。
『ああ――こりゃアタリだな』
おもむろに踏み出したロンドはしゃがみ込むと、まだ小さくて幼いうえに腰を抜かしてへたり込んでいるリードへ視線を合わせてきた。
『そんな怖がるなよ坊主、仲良くしようぜ』
親しげな笑顔のまま、心中を見透かすように問い掛けてくる。
『なあ坊主、思い通りに腐ったもんを消せる力……欲しくないかい?』
欲しい! とリードは即答した。
考える余地もなく、即断即決で答えることができた。
狭くて暗くて臭い座敷牢の中、道具として成り立つよう最低限に与えられた知識で思い描いていたのは、人間も世界も自分さえも消し去る方法だった。
それをくれるというなら何者でも構わない。
悪魔に魂を売るのも辞さず、全身全霊を差し出せる覚悟はできていた。
『よーしよしよし、GOOD。とてもGOODだぞ、坊主』
ロンドは破顔すると、お姫様よろしく綺麗に整えられたリードの頭を無造作に、だけれどこの上なく優しく撫でてくれた。
この時、初めて親愛の情というものをリードは体験することができた。
褒めながら頭を撫でられたこと自体、初体験である。
リードを撫でながらロンドは愚痴るように喋り出す。
『おいちゃんもな、坊主と同じなんだよ。この世も人もなんもかんもいらねえから、消して壊して滅ぼしてぇんだ。でもな、世界ってのはオレらが想像するより遙かにでっけえ代物でな、おいちゃん一人じゃ全然おっつかねえんだわ』
腐ったこの世界を消すの――手伝ってくんないか?
まるでお使いでも頼むような言い方だった。
『そのための力もくれてやるし、おいちゃんのために働いてくれるってなら面倒も見てやろう。ウチは衣食住、福利厚生が充実してっぞ』
ロンドは自慢げだが、後ろの三人は不満げだった。
『それを充実させるため苦労させられてるのはアタシらなんだけどね……』
『ま、部下の面倒を見るのも中間管理職の仕事っすからね~』
『部下だけではなく主人の世話も焼かされているのですけれどね』
三幹部から三者三様の苦言が飛び交う。
そんなもの何処吹く風、ロンドは懐柔の弁舌を軽やかに振るう。
『坊主……自分が尋常じゃねえとわかってるよな?』
それくらいの分別はついていた。
リードはどちらでもない。ゆえに「出来損ない」とされた。
――それが目当てだ。
ロンドたちも言葉の端々から匂わせてきた。
『どっちつかずのおまえだからこそ、オレはこんな提案をしてるんだ……どちらでも何者でもねえからこそ、おまえはどちらでも何者にもなれる』
新たな両義性を得ることができるという。
陰魂と陽魄――両義を超越した力も夢ではない。
幼いリードにもわかりやすく、破壊神は諭してくれたものだ。
『それがすべてを消し去る力の源となる……どうだ? 欲しいだろ?』
魅惑的すぎる誘惑だった。
草木も眠る丑三つ時の来訪。一瞬で村落を滅亡へと追い遣る大破壊。突拍子もない出来事が立て続けに起きたが、リードは確信していた。
ロンドの言葉に嘘偽りはない――すべて本当だ。
座敷牢のあった生家は全壊。
そこに暮らしていた血の繋がりしかない一族、生存者は一人として残ってはいないはずだ。視線を泳がせても人体のパーツが散乱するばかり。
集落の家々も軒並みがないくらい消されていた。
ある家は奈落に堕とされ、ある家は次元の狭間へと斬り飛ばされ……。
一軒家ごと皆殺しの憂き目に遭ったようだ。
そして、放たれた野火がすべて舐め尽くすべく念入りに闇を焙っていた。
破滅が散りばめられたこの風景こそが証拠だった。
この人たちなら――腐った世界を消してくれるかも知れない。
途方もない説得力を叩きつけられた気分である。
人と世を滅ぼすための協力なら惜しまないし、すべてを消滅させる力を与えてくれるならば、自ら率先して人間も世界も消し去りたいと願い続けてきた。
『その力を……ください』
リードは躊躇なくロンドに土下座した。
『そして、どうか……僕を、け、家来に……部下にしてください!』
――きっと貴方のお役に立ってみせます。
拙いなりにも臣従の意を示したのだ。
『ハハハッ! いい子だ! GOODBOYってやつだな! こんな座敷牢に閉じ込められてたのに、そこらの餓鬼より処世術ってもんを知ってやがる!』
ロンドは上機嫌でリードの頭を撫で回した。
そのまま両手をリードの脇へ差し入れると、立ち上がりながら高い高いするように持ち上げてから、そっと床に立つよう降ろしてくれた。
まるで父親が我が子をあやすように――。
『坊主、おまえ名前は? あってもオレ好みに改名させっけどな』
名前など名付けられた覚えはない。
リードはこの家において「出来損ない」の「道具」であり、使う者たちが好き勝手に呼んでいたので、固有の名前などないに等しかった。
何故か無性に悲しくて、リードはくしゃくしゃと顔を顰めて泣いた。
『な、ないです……名前、ないんです、僕……ッ!』
状況から推察したのか、ロンドも三幹部も何も言わない。
『そうか、そいつは好都合だな』
素っ気なく呟いたロンドは、ボリボリと頭を掻きながら辺りを見渡した。すると座敷牢のあちこちに積み上げられた書籍の山に気付いたらしい。
リードにとって最大の娯楽――それは読書だ。
たとえ「出来損ない」であろうと、この家の役に立つ「道具」。
それも他人に使わせる「道具」だったため、最低限の人間らしい応対ができるようにと知識だけは与えられた。読書から知識によって常識を学ばせることで、リードが人間らしい反応をできるよう仕向けていたのだ。
羞恥心や屈辱で嘆くように――他者の加虐心を掻き立てるために。
それでも、読書はリードにとって唯一の楽しみだった。
本から知識を得ることで喜怒哀楽を知ることができたし、人間と世界へ憎しみを芽生えさせ、自らの不遇な肉体を呪うこともできた。
読み古された一冊を手に取り、鼻を鳴らしたロンドが尋ねてくる。
『ふぅん……本を読むのが好きなのかい?』
ちゃんとリードが頷いたのを確かめてから、ロンドは指差してきた。
『じゃあREADだ。おまえは今日からリードと名乗れ』
思い掛けず英語圏の名前を授かった。
『こんな日本の悪いとこを代表するような山奥の土地に縛られてだ、日本人らしい陰湿な因習と腐臭まみれの欲望に壊されかけてた坊主にしてみゃ、いかにも日本人らしい漢字まみれの名前なんて辟易すんだろ?』
なら横文字のがいい、と即興で名付けてくれたのだ。
『姓名は追々考えてやる。くれてやる能力に因んだものがいいな』
リードの名字を考えながらロンドは踵を返した。
そのまま屋敷の残骸を踏み砕き、殺戮した人々の肉片を踏み潰し、破壊の余韻を楽しむすように歩き出す。三幹部も自由に発言しながら続いた。
――ついてきな。
ロンドの大きな背中が口ほどに物語っていた。
涙に濡れそぼる目元を拭い、慌ててリードは追いかけていく。
世間を知らない幼児が初めて外の世界に触れ、不安に押し潰されないよう父親の庇護を求める。そうやってロンドの背中を一生懸命に追いかけた。
追い縋る最中――夜明けが近付いてくる。
ロンドたちの行く先、山間から暁の光が差し込んできた。
やがてリードの視界は白光に埋め尽くされる。
暗い座敷牢から解き放たれ、初めて見た朝日の光に涙が止まらなかった。
いつの日か、すべてをこの純白のように染め上げる。
リードを迫害してきた人間と世界を消し尽くして、真っ白な空白のみが支配する何もない虚無へ落とし込んでやろう。
怨讐に塗れた覚悟を胸に秘め、リードはロンドの背中を追いかける。
生まれて初めて――父性を教えてくれた恩人。
その恩へ報いるため、リードは世界廃滅へと邁進してきたのだ。
~~~~~~~~~~~~
「なのに……だというのにッ!」
道半ばで潰えそうな自身の不甲斐なさに腹が立つ!
悔しさに呻くリードは、恐ろしいほどの脱力感に見舞われていた。
奥の手である第二の過大能力。
――【時空間を消却する空白の風穴】。
形而上から時空間にまつわるすべてを空白で塗り潰す力だ。
本来ならば第一の過大能力によって真なる世界を物質的に消滅させた後、二度と世界が再生しないよう時空間から消去するための切り札である。
最終局面で開示するべき真のJOKERだ。
「なのに……なのになのになのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」
くだらない戦闘の最中、つまらない敵を倒すために切らされるなんて!
「し、しかも……打ち破られるだなんてッ!?」
破壊神も認める最強能力の一角。
すべてを空白へ染める、時空間も形而上も消し去る力。
それが銃神によって無力化されてしまった。
ジェイクとその協力者の力でだ。
信じられないし、信じたくもない光景だった。
時空間をも消し去る空白の力は何者にも止められない。防御は不可能で回避するより他に選択肢がなく、絶対無敵の攻撃力を誇るもののはず。
なのに――打ち破られた。
正しくは光の弾丸に撃ち破られてしまったのだ。
想定外の事態が起きたのは業腹極まりがないが、それでも諦めずに対応していかなければならない。ロンドの描く世界廃滅という大業を成し遂げるためにも、こんなところで足踏みしている暇はなかった。
――銃神が撃つ光の弾丸。
あれは厄介だ。あらゆる状況下に対応できる武器となる。
形而下でも形而上でも問わず素材にすることができ、素材の効力を活かすどころか増幅することも可能。魔法の弾丸として拳銃に装填できるらしい。
……そもそも装填しなくていいのでは?
銃神の力ならば、手で投げても十分な効力を発揮するだろう。
過大能力とは往々にして行き過ぎた力だ。
ジェイクの過大能力はそうしたものなのだろう。わざわざ薬莢に収めた銃弾にすることで、拳銃から撃ち出すのは趣味という他あるまい。
あるいは――銃神ゆえの最適化か。
いずれにせよ、彼の過大能力を侮るべきではなかった。
内在異性具現化者であるジェイクは、2つの過大能力を持っている。
その2つを巧みに組み合わせていた。
本来ならばリードの専売特許である“消滅”と“時間操作”。
ジェイクは2つの過大能力をその想像力によって拡大解釈させることで、リードしか扱えないはずの“消滅”と“時間操作”に物にしたのだ。
これで使える武器は対等になってしまった。
消滅は消滅で相殺し、時間の超越や停滞さえも意に介さない。
甚だ不本意だが、手加減して勝てる敵ではなかった。
ゆえにリードは温存していた切り札である第二の過大能力、時空間を空白で削る力を解放せざるを得なくなるも、ジェイクを敗北寸前にまで追い詰めた。
消滅の力で包囲し、空白の力を叩き込んでやったのだ。
「勝利は……目前だったのにぃぃぃぃッ!」
返す返すも恨めしいのは、あの突然現れた黄金の角である。
起源龍――重き彼方のエルドラント。
かつてリードが始末したはずの、真なる世界を創世した神の一柱。
ジェイクの想い人だという彼女。
その本性たる巨大な龍からこぼれ落ちた角を、ジェイクは未練がましく後生大事に道具箱へ隠していたらしい。それが独りでに動いて彼を守ったのだ。
リードが空白を砲撃として放った瞬間。
逃げ場を塞がれたジェイクは戸惑い、反射的な対応に遅れていた。
殺った! とリードは確信したほどだ。
しかし、突如として黄金の角が現れたかと思えば、ジェイクの身代わりとなるべく立ちはだかったばかりではなく、空白の力にも耐えていた。
真なる世界の創世記から生きる原初の龍。
その身に蓄えた時空間における存在力は計り知れない。
LV999の神族が操る時空間ごと虚無に落とす攻撃とはいえ、百年の歴史も積んでいない若造の攻撃には毛ほどの痛痒も感じない。
そう言いたいとばかりに、愛するジェイクの盾になってみせた。
エルドラントの援護はそれだけに留まらない。
ジェイクの過大能力を熟知するであろう彼女は、自らの遺骨ならぬ遺角を銃弾にさせることで、リードの空白を打破するための武器を与えたのだ。
時空間を消す空白にも耐える――起源龍の重み。
それが攻撃力に転化された場合、どれほどの破壊力をもたらすのか? 概算するのも恐ろしく、絶対に発砲させてはならないと危機管理能力が警鐘を鳴らす。
その力を宿した弾丸を撃たせる前に消し去ればいい。
一撃で大陸をも消滅させる――空白の砲撃。
リードはすぐさま空白を乱射したが、すべて迎撃されるかの如く撃ち抜かれてしまった。まるで龍に噛み砕かれるかのようにだ。
光の弾丸は迎え撃つに留まらない。
激昂したジェイクの過大能力により、執拗なまでに威力を底上げされているであろう起源龍の弾丸は、えげつないほどのパワーアップが施されていた。
空白を撃破したのに威力が低下しない。
むしろ加速度を増して、リードへ襲いかかってきたのだ。
リードの肉体――各部位を撃ち抜いた弾丸は五発。
両腕を根刮ぎ奪うように2発、上半身と下半身を切り離すように1発。
この3発は大して痛くもない。
空白の力を本格的に使った時点で、リードの身体は何もない空白の虚無へと融けかかっていた。おかげで痛覚も鈍っているからショックも少ない。
下半身に至っては、重荷を取り外された気分だった。
そこにリードが“呪い”と偏見を抱く要因があったからだ。
だが、残り2発の弾丸に撃ち抜かれた箇所は許せない。
右眼があった部分に浮かぶ赫の光球と、かつて撃ち抜かれた心臓の代わりを務めるように現れた、薄い胸板に浮かぶ荘厳な時計盤。
どちらもリードの過大能力、その中心点というべき象徴する部分だ。
それは核に近く、能力のエネルギーが集中的に集まっている。
そんな大事な部分を撃ち抜かれたのだから堪らない。
手足や腹を裂くように撃たれたことよりも、重要な臓器を破壊されて全身の力が抜けるような脱力感に見舞われるのも致し方ないことだ。
「だが……まだだっ、まだ……負けてないッ!」
終わってなんかいない! とリードは己に厳しく叱咤した。
過大能力の集まる場所を射貫かれたが、力そのものを奪われたわけではない。五体はバラバラにされて四肢も失いかけている。
それでなくとも空白に融けた手足には力が入らないが、その空白を操る力を駆使することで、バラけそうな身体を無理やり保持させていた。
銃撃のストッピングパワーで吹き飛びそうになる。
消えそうな肉体に鞭打ち、飛行系技能で何とか宙に踏み止まった。
「もっと全力で……もう一度! 空白をッッッ!」
散らばりかけたエネルギーを再び集束させ、空白を生じさせる過大能力を今度こそ完全開放させる。いや、一切の制御をすることなく解き放つ。
いくら銃神とて対処できない規模でだ。
暴走しても構わない。そこまでしなければ勝算の目処が立たなかった。
しかし、能力の中心点を撃たれたことで力が上手く練れない。
まごついている刹那――ジェイクの声がする。
「エルドラント、ありがとう……全部、君のおかげだ……ッ!」
カチリ、と撃鉄が跳ね上がった。
引き金には既にしなやかな指が掛かっており、十字架をモデルにしたとしか思えない、刃で飾られた長銃の銃口はリードに照準を合わせていた。
ふと、こちらを見据えるジェイクの眼光と目が合う。
「君を愛せて――最高に幸せだった」
しかし彼の視線はリードなど眼中にない。
ジェイクが見つめているのは、かつて愛した女性。創世神にして始まりの龍であるエルドラント、彼女の幻影を遙か遠くに見つめているのだろう。
だが、リードから目を逸らしているわけではない。
殺したくて殺したくて仕方ない、仇から目を離せるわけがなかった。
憎悪と激怒を弾き飛ばす――狂喜の雄叫びが銃声となる。
「――オレたちの勝ちだあああぁッッッ!!」
その瞬間、ジェイクの構える長銃が爆ぜた。
自滅か!? とリードはほくそ笑むも、それは淡い期待に終わる。
暴発としか思えない現象だが、その爆発点から黄金に輝く尾を引いて彗星が飛び出すのを目の当たりにすると、気を引き締めるどころではなかった。
想像を絶する脅威――心胆を寒しめる怖気に震え上がる。
自身を貫いた五つの弾丸など前座に過ぎない。
この金色の彗星こそが本命、リードに終止符を打つための一撃だ。
もはや弾丸どころか砲弾も及ばぬサイズ
まさに彗星のような規格外の大きさを誇っていた。
これまでの弾丸も過大能力による強化が乗っており、流れ星みたいな大きさで飛来してきたが、この一撃は今までの比ではない。あるいはジェイクが乗り込んでいたという超巨大列車を連想させる。
巨大な彗星と見紛う――黄金に光り輝く弾丸
それは突き進むに連れ、龍を象った闘気をまとっていく。
起源龍エルドラントの力が極限を超えて発露され、ジェイクの過大能力によって絶大な破壊力を生み出すように強化を加えられているのだ。
リードは黄金の彗星が進む先、光り輝く弾丸の斜線上にいる。
この一撃には――もうひとつの役目があった。
「この弾丸ッ……“終わりで始まりの卵”を狙って……ッ!?」
リードにトドメを刺すための銃撃であるとともに、孵化に備えて着々と成長しつつある“終わりで始まりの卵”をも撃ち砕くつもりなのだ。
迷っている時間はない。リードは即座に行動へ移る。
力が練れなくても構うことなく、空白の砲撃を撃ち出していく。
それはもう撃ちまくりだ。威力が低下した分、数の多さでカバーするしかないので弾幕を張るために速射砲とした。
第一の過大能力、消滅を司る力でも援護射撃を行う。
こちらも過大能力の核を撃ち抜かれたため弱体化を余儀なくされているが、何もしないよりはマシだ。溜め時間する間も惜しいので、とにかく連射する。
すべて――焼け石に水だった。
黄金の龍と化した弾丸は、その咆哮でこちらの弾幕を撃ち破る。
気付いた時には、リードの鼻先まで迫っていた。
巨大戦艦に正面衝突されたも同然だ。常軌を逸した衝撃は重圧となってリードへのし掛かり、バラバラになりかけた肉体を木っ端微塵にせんとする。
しかし、リードは耐えた。
物理的に繋がってない手足や下半身に過大能力を通わせ、人体の形を保つことに集中、金色の彗星から黄金の龍に進化した弾丸を全身で受け止めた。
「ここは……絶対に通しません!」
我が身に代えても“終わりで始まりの卵”は死守する。
たとえこの身が砕け散ろうとも、死力を尽くして護衛の任を果たす。
それが尊敬する破壊神より下された命令だからだ。
心のどこかで父親のように慕ってきた恩人へ報いるために……。
「……ううっ、ああああ……っあああああああああああッ!」
柄にもなく大声で叫んだリードは、ジェイクの弾丸を押し返そうと全力を振り絞った。消滅の力も空白の力も正しく練れないままでもいいから、ひたすら至近距離から撃つことで黄金の弾丸の推進力を減衰させようとする。
時間にして一秒も経過していまい。
リードの体感では数時間が経過したように感じられた。
トン、と背中を押されたような気がする。
やがてそれは背中どころか背面すべてを圧迫する感覚に変わった。
まさか!? と目を剥いたリードは肩越しに振り返る。
「……“終わりで始まりの卵”ッ!」
どうやらリードの健闘は空しいものだったようだ。
ジェイクの弾丸は“終わりで始まりの卵”へ既に到達しており、卵と弾丸の間に挟まれたリードにはこの苦境を打開すべき策がない。
往生際悪く過大能力を連発しても徒労にしかならなった。
「くぅ、うぅぅぅ……ロンドさん、も、もう……申し訳ありませんッ!」
ごめんなさい――お父さん。
心の果てで謝った瞬間、リードは本当の脱力感を迎えた。
撃ち出された光の弾丸は起源龍を再現した黄金の龍と化し、天地創造の際に轟かせたであろう咆哮とともに宇宙卵へ挑んでいく。
『バァァァオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーッッッ!』
牙を剥き、爪を立て、その巨体にて卵殻を叩き割らんとする。
宇宙卵を破壊するための暴力が猛威を振るう。
ついに卵の殻へ亀裂が走ると、世界大蓮を通じて集められた莫大な“気”が激しい閃光となって漏れ出す。それは破滅の轟音を響かせる先駆けだった。
目映い“気”が大爆発を起こす寸前、リードは彼女の声を聞いた。
『この現世は終わらんよ……想世の神々が居る限りな!』
それは紛れもなく、かつて自分が手に掛けた起源龍の声だった。
黄金の龍と化した光の弾丸は――“終わりで始まりの卵”を撃ち抜いた。
破砕する音ではなく破裂音に似た爆音。
常人なら鼓膜が破けるどころか頭蓋骨までパンクさせかねない、それほどの衝撃的な大音量を響かせて、孵化を待つ宇宙卵は砕けてしまった。
卵の殻が全方位へ飛び散り、内部に蓄えられた“気”も散っていく。
破裂の衝撃に巻き込まれたリードは垣間見る。
「世界卵、宇宙卵……“終わりで始まりの卵”……なのに、これは……」
――卵として成り立たない。
朦朧とした意識の中、漠然とリードは悟った。
もし守れたとしても、この卵からは新たな破壊神は生まれないはずだ。どれほど“気”を吸い上げ溜め込んでも、この卵は孵らなかったに違いない。
何故なら――この卵には黄身がない。
世界中から集められた“気”は白身に相当する。
それは受精した黄身が成長するための養分となるもの。
しかし、肝心の黄身が受精できていない無精卵であるならば、それはいくら温めても孵ることはない。どんなに白身である“気”を集めても意味はない。孵そうとする努力は無駄で終わり、ただただ待ちぼうけを食わされるばかり。
宇宙卵は無精卵でさえなかった。
受精を待つ黄身すら持たない、白身ばかりの空っぽの卵。
新世界の揺籃たる“終わりで始まりの卵”は、破壊と創造を司る者の揺り籠となるどころか、意味もなく“気”を集める虚でしかなかったのだ。
「…………ハハッ」
思わずリードの唇から渇いた笑いが漏れた。
ロンドに騙された? いいや、そうは思わない。
確かに“終わりで始まりの卵”についての詳細はぼやかされてきた。それは事実なので否めないが、今回はちゃんと任務として指示されていた。
宇宙卵から別の破壊神が生まれるまで守れ――と。
敵を騙すにはまず味方からという方便もある。
四神同盟を謀るためにリードに敢えて裏を教えず利用した、なんて推測もできるが、それならば無知のまま行動する指令の一部なので容認できる。たとえ使い潰されたとしても、大恩あるロンドのためならばリードは厭わない。
しかし、今回は雰囲気が異なる。
恐らく――この事態はロンドにも予想外のはずだ。
ようやく出現した宇宙卵が、まさか空っぽだったとは思うまい。
あれだけ大量の“気”をのべつ幕なしに集めたのだから、いずれそれを糧に破壊神となる怪物が生まれると誰だって想像するはずだ。
何らかの不備があったのでは? そう考えた方が腑に落ちる。
リードが失笑した理由は別にあった。
「そうか、宇宙卵も……出来損ない……だったのか」
生まれるべきではないものか、とリードは同情の念を寄せた。
決して孵ることのない受胎していない卵。
永遠にどちらでもなくどちらにもなれない両義性を否定した自分を、いつまでも孵化することのない無精卵に重ねてしまう。
悲しい共通点を見出してしまっただけだ。
「宇宙卵も……僕も……何者にもなれない……無意味なもの……」
――何も遺せずに消えるのがお似合いか。
渇いた笑いに自嘲を含ませたリードは、黄金の爆流に飲み込まれていく。
それは爆発した宇宙卵の余波が引き起こしたもの。
更にはジェイクの弾丸が、起源龍の力が吹き荒れている証だった。
2つの力が相撃つことで起きた相爆。
物質的な威力を持つほど暴れる“気”の流れに、何者でもないリードは1枚の木の葉よろしく、唯々諾々と翻弄されるしかなかった。
どこまでも、いつまでも、果てしなく、終わりなく……。
~~~~~~~~~~~~
ジェイクは大地を踏み締め、標的を目指して歩いていた。
宇宙卵を砕いたことで溢れた大量の“気”と、ジェイクが撃った起源龍の力を宿した弾丸。両者の鬩ぎ合いによって辺り一帯は壊滅していた。
人家はおろか町や村、都市などもない荒野だったのが幸いである。
あったのは“終わりで始まりの卵”。
別の破壊神となるらしい卵は既に破壊済みである。
四神同盟に参入した新陣営の代表。その役目を果たすべく気張って壊すことができたのはいいもの、いくつか納得のいかない点があった。
あの卵――中身は空っぽだった。
ひたすら“気”を溜めていたが、肝心の黄身がなかった。
とても新しい破壊神を生み出す代物とは思えない。
もっともジェイクの学識や分析能力は高が知れているので、そういう専門的なことは考えるのは知識人に丸投げするつもりだった。
ひとまず、卵は破壊できたので任務達成だ。
そして、卵を孵化させる装置だと思われる“世界大蓮”と呼ばれる、蓮の花にも似た巨大建造物。こちらも再起動する様子はない。
あの大爆発に巻き込まれてもビクともしなかった。
また宇宙卵とやら産むつもりならば、この蓮モドキも壊すまでだ。
しかし、待てど暮らせど動き出す気配はない。
ならばジェイクは個人的な私用を優先的に果たさせてもらおう。
荒れ果てた大地にて足早に歩を進めていく。
裾のあちこちが不揃いに削られたロングコートを翻すも、その削られた部分は時空間から情報ごと消されてしまったので、最初から存在していない。
地面を噛むブーツも、所々のパーツが消失していた。
時空間を虚無へ落とし込む空白を生む――リードの過大能力。
恐ろしい力だった。
まともに浴びていたらジェイクもこの世から消されていただろう。
始原の時より生き存えてきた起源龍の存在力だからこそ、あの空白に屈することなく耐えることができ、また撃ち破ることができたのだ。
エルドラントには感謝の言葉もない。
彼女の仇討ちのつもりが、結局は彼女に助けられてしまった。
「全部終わったら、墓参りにでも行きたいな……」
エルドラントが設けた安全地帯、あの隠れ里があった場所は忘れない。
旅立つ際、あそこは静謐な墓所へと様変わりしていた。
工作者ソージと守護妖精たちの仕事である。
塵となってしまったエルドラントの遺灰。
残されたのは左眼と一振りの角のみ。
その角を形見として貰い、左眼は遺灰とともに埋葬した。
彼女が永久に眠る地を守るため、ソージはできるだけ荒らされないようにと厳重な結界を恒久的に張り巡らせた。そして誰が見ても神聖な墓所だと一目でわかるように、とても立派な霊廟まで建設してくれたのだ。
リードの攻撃で満身創痍にされた起源龍。
この決戦で奴が惜しげもなく使った、“消滅”や“空白”の力。あれらの直撃を食らったのは容易に想像できる。
それゆえに絶命へと追い込まれてしまったのだ。
リードとの戦いで彼女は、隠れ里の住人を守るため防衛に徹した。
しかし今回、彼女の力はリードの“空白”に打ち勝った。
つまりエルドラントが本気ならば善戦できたはずなのだ。起源龍がその身に蓄えてきた歴史の重みは、“空白”に引けを取らない力だったのだ。
重き彼方の――この二つ名は伊達ではない。
だが、彼女は我が子にも等しい里の人々を守るため、リードの喧嘩を決して買おうとはしなかった。ひたすら守ることに専念した。
大人の選択として、未来ある子供たちの命を守ったのだ。
その身を呈して、“消滅”と“空白”から民を守り通したのである。
エルドラントの選択をジェイクは誇りに思う。
同時に、愛した者として「逃げてほしかった!」「抵抗することで生き残ってほしかった!」と泣き言に明け暮れる、弱い自分がいることも認めていた。
いくら泣き喚こうとも、彼女が帰ってくることはない。
ジェイクが前に進むためには、この通過儀礼は避けて通れない道だった。
憎悪と激怒に駆られた心を鎮める唯一の方法。
慰撫されることはなく、単なる自己満足に過ぎない決着。
復讐――仇敵を追い詰めて怨敵として抹殺する。
満たされることのない仇討ち、それを果たす瞬間はすぐそこに迫っていた。
荒し尽くされた荒野をどれほど歩いただろう。
――まだリードには息がある。
確実なトドメを刺すため、こうして歩を進めていた。
息があるといってもさすがに虫の息のようだ。
今にも吹き消されそうな、残り火のように弱々しい生命力。そんなか細い気配を丹念に辿ることでリードの居場所を探り当てることができた。
奴は起源龍の弾丸を正面から受けた。
おまけに“終わりで始まりの卵”の破裂によって引き越された大爆発に巻き込まれたにも関わらず、ちゃっかり生き延びていたのだ。
命冥加というべきか、憎まれっ子世にはばかるというか……。
どちらにせよ見逃すつもりはない。
大爆発に荒らされた地の果て、世界大蓮から離れた何もない場所。
――そこが目的地だった。
かつてリード・K・バロールと呼ばれた破壊神の眷族。
その成れの果てが転がっている。
見る影もないとは、まさにこのような状態を指すのだろう。地面へ無造作に散らばっているのは、残骸という他には言葉が見当たらないものだった。
右上部が半欠けになった頭部。
首と胴体は辛うじて繋がっているが、薄っぺらな胸板にはジェイクが二度も撃ち抜いた風穴が空いており、そこを覗けば地面を見ることができた。
撃ち抜いた両腕も見当たらない。
人間の原形を留めていた右腕も、時計盤だらけになっていた左腕もだ。
ジェイクの弾丸は彼の腹部も撃ち抜いている。
そのため腹から上半身と下半身が別れており、下半身は胴体と接しそうな位置に落ちているが、両足は爆発に巻き込まれたのか失われていた。
あの爆発は想像以上の威力があったと窺える。
残骸となったリードの胴体は、一糸まとわぬ裸体だった。
装備すべてが耐えられずに吹き飛んだのだろう。残された身体の各部位も酷いところは焼け爛れており、とても痛々しいものだった。
手足を失った胴体、しかも腰から下は腹部から外されている。
何も知らなければマネキンのパーツと見間違えそうだ。
そう思わせるほど人間味が損なわれていた。実際にバラバラの死体を目撃したりすると、初見では勘違いする人もいると聞いた覚えがある。
ただし、リードの場合は見間違えを引き起こす要因があった。
――丸裸にされた彼の下半身。
そこに隠された真実を目撃したジェイクは瞠目せざるを得なかった。
言葉にすることすら躊躇いを覚えてしまう。
「…………何も、ない?」
文字通りの意味だ、リードの局部には何もない。
男性器どころか女性器すら見当たらず、無毛でツルリとしている。それこそマネキンか人形の股間のように、なんの飾り気もないすっきりしたものだった。
微かに排泄のための穴らしきものがあるのみ。
苦しげに咳き込んだ後、頭を仰け反らせたリードが含み笑いを漏らした。
「せっ……無性別の人間を……見るのは、初めてですか?」
たっぷりの自嘲が添えられた微笑みにジェイクは両眼を眇める。
彼のような症例は無縁ではないからだ。
「半陰陽か……」
「御存知でしたか……大抵の方には縁遠い、未知の領域でしょうに……」
同意するようにリードは短く呟いた。
半陰陽――医学的には性分化疾患と呼ばれる症例である。
事細かに突き詰めていくとセンシティブ極まりない次元の話になるため、ざっくり説明すれば、生まれた時から体質的に性別が曖昧となるものだ。
大きく分けると2つの症例に分類される。
しかし、ジェイクは4つに分けられると考えていた。
まず第1に――真性半陰陽。
これは生物学的に男女両性の特徴を持っている人を指す。
よく18禁の漫画などで好んで題材とされる“フタナリ”などの両性具有を想像するかも知れないが、実際の真性半陰陽はもっと複雑なものだ。当人たちの負担も生半可なものではないため、軽々に扱っていいものではない。
真性半陰陽は男でもあり女でもある。
これは性染色体のXXとXYを同時に持っているとか、精巣と卵巣をどちらも備えているというだけだ。両方とも満足に機能を果たすとは限らない。
個人差もあるが――どちらも正しく使えない場合だってある。
エロ漫画みたいなフタナリなどまず存在しない。
そこは現実と絵空事だ。安易に履き違えてはいけない。
生まれ持った体質。他人がおいそれと口出しできる領分ではない。
ただ、そういう人々もいることを弁えておくべきだろう。
そして第2に――仮性半陰陽。
こちらは男性型女性化半陰陽と、女性型男性化半陰陽に2つに大別できる。そう考えると、それぞれ第2第3と区分するべきかも知れない。
男性型女性化半陰陽は、基本的に男性である。
性染色体はXYで精巣を持つものの、外見的にはどう見ても女性なのだ。第二次成長期を迎えても女性らしく成長する場合も多く、かなり年齢を重ねてから発覚する例も少なくないという。
ホラー映画の悪霊として一躍有名となった貞子。
彼女も原作ではこの男性型女性化半陰陽だったはずだが、メディアミックスが進むにつれてこの設定が忘れられたように思う。
また、三十代で体調不良をきっかけに自身が半陰陽だったことを知り、カミングアウトして男性となった元女性の作家さんもいるくらいだ。
女性型男性化半陰陽は、基本的に女性である。
性染色体はXXで卵巣を持つものの、外見的には男性にしか見えない。こちらも第二次成長期を過ぎてもわからない場合が多々ある。逆に成長期のホルモンバランスで肉体が女性化することで判明するケースもあるらしい。
自分は男だと思っていたら、ある日「おまえは女だ」と突きつけられる。
そういう願望を持っていれば話は別だが、健全な男子として精神を育んできた人にとっては受け入れがたい現実となること請け合いだ。
そして第4――性腺無形成。
これは性別を決定する女性器や男性器、延いては性ホルモンを分泌させる性腺の器官がない症例のことをいう。
大抵の場合、外見的には女性らしくなる。
生物学的には子供を産める♀の方が生命体として完成しているらしい。そのため性腺がなくても身体は自然と女性的になっていくそうだ。
しかし、男性でなければ女性でもない。
性染色体はどちらかだとしても、生殖活動を決定付ける精巣や卵巣といった性腺器官を持たないため、無性という扱いになってしまうのだ。
リードが該当するのは、この性腺無形成だろう。
男でもなければ女でもない。
陰陽たる両義を否定するが如く持たない者。
これが――相反両義否定者の正体だ。
「おまえがバッドデッドエンズになった理由はそれか……?」
問答を交わすつもりなど毛頭なかった。
ジェイクの右手には装填済みの回転輪動式拳銃は握られている。リードを見つけ次第、問答無用で全弾ぶち込み肉片すら残さないつもりだった。
話し掛けたのは――完全に興味本位である。
ジェイクも他人事ではないからだ。
女性として生を受けたにも関わらず、その自覚はまったくの皆無。
かといって男性になりたい願望を抱くわけでもなく、女性の肉体を疎むわけでもなく、性意識はないに等しく性衝動さえも淡泊そのもの。
そんなジェイクはジェンダーXと呼ばれるそうだ。
肉体的な性別はともかく、その性別としての意識がない。
性の欲動とは無縁な人種とされている。
肉体的な無性別ではなく、精神的な無性別と言えるかも知れない。
周囲の理解を得られなければ変人扱いされただろう。
幸いにも友人の代表格であるバリーを筆頭に、ジェイクは環境的に恵まれていたため、差別や迫害などのイジメ行為を受けたことはなかった。
だが、こうしたLGBTの問題は後を立たない。
どれだけ少数派を許容する社会を作ろうとしても、一定の層からは偏見の眼で見られることは多々ある。逆に少数派であることをある種のお墨付きにすることで傲慢な意見を押し通そうとする勘違い野郎も横行した。
正論を振り翳せば、誰を殴っても正義なので許される?
多様性を掲げれば、どんな横暴を行っても正当化される?
美徳のためと称して、自分の気に入らないものを消してもいい?
どれも大間違いだ――大バカ野郎どもめ。
昨今では、このようなポリコレ云々による無駄な闘争が繰り返されてきた。ジェイクも社会に出てからは、LGBT関連で嫌な目に遭ってきた。
女らしくないというだけで、あれこれ指摘されたものだ。
些細なことでも揉め事にして騒ぎ立てる。
必要以上に騒ぐ輩の気が知れない。タチの悪い煽動者と一緒だった。
ジェイクの意見としてはこうだ。
仏ほっとけ神かまうな――これに尽きる。
少数派なのは声高に主張することでもない。後ろ指を指されるような悪事を働いているわけではないのだから、多数派も必要以上に刺激しなければいい。
お互い最低限の礼儀を欠かさずに接すればいいだけのこと。
必要以上にほじくり返さなければいいのだ。
それができないのが人間の卑しさであり、不完全な精神性の表れなのだろう。
性にまつわるエトセトラにはジェイクも一家言あった。
少なからず当事者でもあるからだ。
自分の性認識を不思議に思い、性にまつわるあれこれを独学で調べているうちに、半陰陽についての知識も学んだのである。
だから、殺すべき仇でも最後に少しだけ話す気になれた。
「フフッ……他に、何があるとお思いですか?」
欠けた頭を傾げたリードは残された左眼でこちらを見上げる。目元の隈は血で滲んでおり、白く濁ってきた眼球も涙で溺れそうになる。
「長男と期待された子供が……これですからね……」
山奥で名家という称号に頼ってきた一族。
リードはそんな一族の長の子供として生を受けたらしい。
「男として嫁を貰って家を継ぐことができず……女として他家に嫁いで血筋の脈を広げることもできない……出来損ないと蔑まれて当然でしょう?」
それでも子供を殺したくはない。
幸か不幸か、冷や飯を食わせるくらいの財力はある。
しかし、不出来な子を世間に知られたくなかったリードの父親は、彼を一族の者しか立ち入ることのできない奥座敷へ幽閉したという。
そこはいつしか座敷牢と呼ばれていた。
「だが、あの男は……成長した僕に使い道を見出してしまった……ッ!」
最悪の使い道を! とリードは目の色に憤怒を露わにした。
恨み骨髄に徹する扱いを受けたのだ。
性別こそないものの、人形のように見目麗しい容姿をした若者。
「物好きな連中……好事家という奴らには大層受けが良かったですよ……僕みたいな、出来損ないで、どちらでもない……この半端な肉体はね」
好事家というのは、概して金銭や権力を持て余している。
リードの父親は彼らに取り入り、その経済力やコネクションを得ることで家名と財力を底上げしようと目論み、リードに饗応役をやらせたのだ。
金と力がある悪趣味な金持ちの性欲処理をさせた。
早い話――そういうことである。
「娼婦……あるいは男妾か? だけど、その身体では……」
ジェイクの疑問をリードは遮った。
「知ってますか? ああいう奴らはね……見目が良くて、身体の何処かに穴が開いれば、それだけで満足してくれるんですよ……クフフッ……」
なんとも――浅ましいじゃありませんか。
「本来ならば次の世代の子を産むための行為を……自らの欲求を満たすがためだけに、こんな出来損ないの肉体にあらん限りぶつける……」
嗚呼――思い返しても反吐が出る!
最大級の侮蔑を込めた声で、リードは汚物を吐き出すように言った。
屋敷の奥――日の光が差すことのない座敷牢。
リードは来る日も来る日も、性の饗応を務めさせられたという。
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その頭部にジェイクは歩み寄り、立ち尽くしたまま銃口を差し向けた。
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「オレはただ――愛した女の仇を討ちたいだけなんだよ」
話し掛けた理由は、ただの興味本位に過ぎない。
そう前置きしたはずだ。
性への興味を持てずにいた自分に、生まれて初めて異性を愛する喜びを教えてくれた人。彼女のためならばすべてを擲てると誓わせてくれた女。
その仇を討つためだけに此処までやってきた。
撃鉄をゆっくり起こし、引き金にかける人差し指も勿体ぶる。
最後の一撃は何も言わずに撃ち放つ。
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女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
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