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第17章 ローカ・パドマの咲く頃に
第423話:ケジメは付ける、しこりは残る
しおりを挟む「――剛ちゃんッ!」
愚弟の安否に心を逸らせる賢姉の悲鳴が聞こえる。
漢のプライドを懸けた素手喧嘩――その一対一勝負に決着がついた。
ミサキから激烈な二連撃を受けたアダマスは、不死身のタフネスを以てしても受け止めきれないダメージを負わされ撃沈。遙か上空から大地に向けて隕石のように墜落し、瓦礫の園に大きなクレーターを穿っていた。
その中央でアダマスは、心安らかな笑顔で大の字を描いている。
4mに巨大化していた肉体も、3m弱にまで戻っていた。
自慢のリーゼントは墜落時の衝撃によるものか、はたまた敗北を認めた影響なのか、形が崩れてザンバラ髪になっていた。
大砲と見紛うほど巨大なリーゼント。
(※前髪を大きく盛り上げるようにセットした髪型をよくリーゼントというが、これは和製英語。この髪型は正しくはポンパドールという。リーゼントは左右の側頭部にある髪を後ろへと撫でつけ、後頭部で一直線のラインにするもの。これも本来はダックテイルという。いわゆるヤンキースタイルなリーゼントは、このダックテイルとポンパドールのセットで、日本ではリーゼントの名前で定着した)
あれだけ見事なヘアスタイルを維持するには相当量の毛髪がいる。
ほどけた蓬髪は驚くほど長いロングヘアだった。
やりきった満足感に口の端は頬を破らんばかりに釣り上がり、大きく開いた鼻の穴からは全力を出し切った達成感の鼻息を吹き出している。
闇気の解放をまともに喰らった分厚い胸板。
二重螺旋の発勁を受け止めた六分割の腹筋。
どちらも度重なる爆撃を受けたように、煤けた爆心地よろしく重度の外傷を負っているが、鼻呼吸に合わせて浮き沈みしている。
気絶するほどのダメージではあるが、命に別状はないらしい。
倒せたことに安心するような、殺しきれない頑丈さに寒気を覚えるような……対戦相手を務めたミサキは複雑な気持ちだった。
「剛ちゃんッ! 大丈夫!? 生きてるッ!? 生きてるわよね!?」
エコー気味に聞こえるトワコの泣き声。
アダマスの気迫が招き寄せていた低気圧も、決着がつくと同時に天が割れて暗雲もかき消えている。おかげで彼女の泣き声もよく響いた。
喧嘩が終わると同時に、愛する弟の元へまっしぐらに駆けつけていく。
滝のようにこぼれ落ちる滂沱の涙。
アダマスへ走り寄るトワコの速力はすさまじく、滝のような涙が尾を引いて川と見間違えるほどだった。本当に弟が可愛くて仕方ないらしい。
当人からブラコンだとは明かされていたが、まさかここまでとは……。
トワコは倒れたアダマスの巨体に縋りつく。
「剛ちゃん平気ッ!? 大丈夫よねッ? ねッッッ!? お姉ちゃん置いて先に死んじゃったりしないわよね!? 待ってて今! えっと……」
トワコは抱えていた弦楽器をそこらに放り投げる。
空いた両手を自身の道具箱へ突っ込むと、回復用アイテムを取り出そうとするのだが、慌てているため目当てのものを見つけられずにいた。
そこら中に色んなアイテムを撒き散らす。
「万能薬万能薬万能薬! 回復薬でも可! 絆創膏に包帯に消毒液に傷薬にオ○ナイン軟膏……あああーもう! いっそお医者さぁぁぁーん!?」
医者はどこぉーッ!? とドスの利いた怒声を上げる。
普段の大人しい薄幸さは形を潜め、倒れた弟のために奮闘していた。
ここだけ切り抜けば、アダマスとの血縁だと頷ける猛々しさを感じ取ることができた。怒鳴り声など喧嘩番長の雄叫びとそっくりだ。
本当に姉弟なんだな――血の繋がりを感じてしまう。
「……落ち着けって姉ちゃん」
この程度じゃくたばらねえよ、とアダマスが嗄れた声で宥めた。
確かに卒倒させるほどの大打撃を与えたはずだが、そこは不死身のタフネスが売りの喧嘩番長。常軌を逸した自己回復能力を遺憾なく発揮して、この短時間で意識を取り戻したらしい。恐るべき肉体強度だ。
こういう類い希な身体能力を持つ人間は偶に現れる。
ミサキは師匠から教わっていた。
『よく話題に取り上げられる人物だと、日本陸軍の軍人だった舩坂弘氏かな。伝説的に扱われることが多いが、本人のみならず周辺からの証言も多いからまず事実と見て間違いなく、疑う余地はないだろう』
――満身創痍でも痛みに屈することなく戦い続ける鋼の肉体。
――死に瀕する重傷でも数日で動けるようになる超回復力。
――死亡したと判定される状態から蘇生して反転攻勢に出る精神力。
付いたあだ名は“不死身の分隊長”。
『舩坂氏に限らず、不死身という形容詞が相応しいだけの肉体を持つ人間は、時として現れる。そういう人間が武道を修めていたらと想像すると……』
背筋がゾクリとするね、と師匠は笑っていた。
血塗られた期待感に満ちあふれた、とても好戦的な笑みである。
クールを装っているがあの人も戦闘狂なので、そういう人物が目の前に現れたら即座に勝負を挑むだろう。弟子もその気性を受け継いでいる。
アダマスの場合、不死身のタフネスのみではない。
生まれついての怪力、見様見真似で武術を物にする格闘センス。
それら天性の才能を意識せずにまとめて使い熟す。
天賦の才とはこのことか――賞賛すべき漢だ。
そんなアダマスに勝てたことが、ミサキは胸を張るほど誇らしかった。
「……回復系なら少しは使えますよ」
ミサキも空から舞い降り、アダマスの元へ近寄っていく。
金色の戦女神から紫金の戦女神に戻ったため、身長やスリーサイズが大人の美女から美少女へサイズダウンしていた。あくまでも元に戻ったのだ。
ずっとあのままだったらどうしよう……。
見当違いな不安で内心ドキドキしていたのは内緒である。
ツバサさんも魔法の女神に変身した後、Mカップのブラジャーが必要になるほど胸が大きくなったり、お尻の更なる肥大化に嘆いていた。
『Mカップって何だよ……あれもう帽子だぞ』
『あるいはヘルメットですね』
テーブルの上にそのMカップ爆乳を乗せたツバサさんが、頭を抱えて苦悩しているところに出会したミサキは他人事ではなかった。
女神化は受け入れたが、これ以上の女性的成長は勘弁してほしい。
変身解除で元に戻れたことに胸を撫で下ろす。
トワコは大の字で寝るアダマスの右側で、まだ回復アイテムを探して道具箱を漁っている。動転した気が抑えられないらしい。
ミサキは左側にしゃがみ、気功を練った手をアダマスに翳した。
「“気”を付与するものだから即効性があるはずです」
「はい、よろしくお願いします! 怪我させた張本人ですもんね!」
責任取ってください! みたいにトワコはズケズケ言う。
控え目でお淑やかな女性かと思えば、弟のことでは目の色が変わるタイプのようだ。ブラコン宣言をしたのは、この本性で驚かせないためかも知れない。
トワコもようやく万能薬を探り当てていた。
ミサキの気功と合わせて、アダマスに振りかけようとするのだが……。
「いらん――どっちも無しだ」
アダマスによって振り払われてしまった。
地面にめり込んでいた両腕を持ち上げたアダマスは、ぞんざいながらもどちらの手も傷付けないように気を遣い、柔らかな手付きで払い除けてきた。
まず涙が止まらないトワコへ言い聞かせる。
「言ったろ姉ちゃん……これくらいじゃ俺はくたばらねえって……」
俺の丈夫さを信じてくれ、とアダマスは回復を拒む。
しかし大怪我をした弟を前にしたお姉ちゃんは引き下がらない。
「だって剛ちゃん! こんな傷だらけのボロボロで……ッ!」
「それとな……剛ちゃんはいいかげんやめろ」
「怪我の心配より呼び方の訂正してる場合じゃないでしょ今ッ!?」
アダマスは困ったように瞼を閉じて眉間に皺を寄せており、ちゃん付けする姉の言葉に頬を赤らめていた。照れ臭そうに顔をそっぽに向けている。
スルーしていたが、実はそこそこ恥ずかしかったらしい。
苦笑しながら「勘弁してくれ」と訴える。
「友達の前で“ちゃん付け”はやめろって頼んだじゃねえか……」
「だけど剛ちゃん……あ、ごめん剛ちゃん!」
駄目だこれ、トワコさんの中では定着どころか固定されていて直しようがない。お母さんがいつまでも子供を「~~ちゃん」と呼ぶのと同じ現象だ。
ミサキの場合、祖母がこんなだったからよくわかる。
とにかく! とアダマスは語気を強めた。
「回復はしなくていい……兄弟、おまえもだ……手出し無用だぜ」
仮にもまだ――敵同士だろ。
律儀な建前を口にしたアダマスは、ミサキからの治療も拒んだ。
トワコは万能薬を掛けようと食い下がるが、アダマスはその細い手首を押さえ込んでおり、姉弟で奇妙なせめぎ合いを繰り広げていた。
「まだケジメが済んじゃいねえ……」
ようやく2人を払い除けたアダマスは、ズボンのポケットを弄った。
「回復してもらうとしても……それは、これが終わった後だ」
取り出したのは――1枚のコイン。
ミサキは見覚えこそないものの、アキさんの情報網から回ってきていたので予備知識はあった。当然、アダマスも所持しているとは思っていた。
最悪にして絶死をもたらす終焉――20人の終焉者。
選ばれた20人に破壊神が渡したとされる、終焉者の証たるコインだ。
ごつい指に挟まれたコインには亀裂が走っている。
このコインはロンドが持つ対のコインと連動しており、持ち主が戦死したり敗北を認めると、粉々に砕け散ってそれを知らせる効果があるらしい。
亀裂の場合、どう判断すればいいのだろうか?
少なくともアダマスは敗北を認めているので、それが現れているらしい。
だが生存しているため、亀裂のみに留まっているようだ。
コインを眼前に掲げたアダマスはしばらく呆然と見つめた後、眼を閉じて大きく深呼吸をすると、この場にいない雇い主へ呼び掛ける。
「ロンドさん……ほんの数年でしたが、お世話になりました」
騙され、担がれ、謀られ――裏切られた。
それでもアダマスは、世話になった恩人として礼を述べた。
「……これが俺なりのケジメです」
事ここに至り、ミサキはアダマスがやろうとしていることに気付いた。
「止せアダマス!」
ミサキが制止するも間に合わない。
開眼したアダマスは指に挟んだコインを一息に砕いた。
次の瞬間――その五体が爆ぜる。
不可視の拷問官が寄って集って責め立てるかの如きだった。
全身至る所の皮膚が鋭い刃物で乱切りにでもされたかのように切り裂かれて血が噴き出し、五体を支える太い骨の何本かが折れる音が鳴り響き、筋肉をひしゃげさせる殴打音とともに紫色に変じる打撲があちこち生じた。
断末魔を叫んでもおかしくない、死の淵へ追い詰める甚大な損傷だ。
「ぐっ……むぅぅぅぅぅ……ッ!!」
しかし、アダマスは痛みによる絶叫を噛み殺した。
人間は限界を超えた痛みを感じると気を失うものだが、アダマスは両眼を見開いて歯噛みして、意識を手放すことを拒んでいた。
地獄の呵責を甘んじて受けるように、この激痛へ身を委ねていた。
「いっ……いやああああああああああああああああああああああーーーッ!?」
代わりにトワコが断末魔みたいな悲鳴を上げた。
剛ちゃん剛ちゃん剛ちゃん!? と愛しい弟の本名を連呼するトワコは、両手の指に挟めるだけの万能薬の瓶を挟むと、既に開封済みのそれをありったけアダマスに降り注がせた。傷口は速効で塞がるのだが、回復が追いつかない。
謎の致命傷はまだ終わっていなかった。
トワコが回復に着手したと同時に、先ほどと同じくらいのダメージが追加でアダマスを襲っていた。桁違いに強力だが継続ダメージのようだ。
HPゲージの減り方が尋常ではない。
一回でレッドゾーンをぶち抜き、ゲージ残量0まで持っていくレベルだ。
ミサキも慌てて気功を練り、“気”を分け与えて回復を促す。
二人掛かりで回復することで、致死まで追い込む継続ダメージを相殺することができた。しかし、予断を許さない状況は続く。
追加ダメージは何度も訪れるが、その威力は少しずつ低下している。
これが落ち着くまで回復の手を休めることはできない。
「なんで……ッ! こんな、剛ちゃん、どうしていきなり……ッ!?」
正体不明の致命傷に納得いかないトワコは、万能薬の滴とともに大粒の涙をアダマスの傷口にこぼしていた。嗚咽の混じった声で嘆いている。
「確かに悪いことをしてたかも知れないけど……ミサキくんに負けて、あんな痛い目に遭って、大怪我もして……潔く負けだって認めたのに……ッ!」
どうして……トワコは泣き崩れそうになる。
「……恐らく、その一緒に悪いことをしていた連中の仕業です」
ミサキは重い口を開いた。
トワコが小さく「……え?」と反応したので、こちらの話に耳を貸す意識はあると判断したミサキは、あのコインから推察できたことを説明する。
「神族や魔族の約束は絶対……知ってますよね?」
トワコは泣き腫らした顔のまま頷いた。
神族や魔族へ進化する際、基礎知識として脳内にこう刻まれる。
『――神と魔は契約を違えることはできない』
神話や伝承でもよく見られる光景だと思う。
神様や悪魔が約束を交わした場合、たとえ口約束だとしても絶対に守らなければならない。約束を破れば、その神格から威厳が失われるためだ。
それは神や魔としての失墜を意味し、自らの存在を否定されるに等しい。
ゆえに神話では約束に基づいて話が変転する。
インド神話における魔王などの敵役は、「普通の手段ではオレを倒せない」的な理不尽な契約を押し付けてくることが多い。そんな魔王を倒すために神々は、契約にない方法を編み出すことで一発逆転するのだ。
契約が破れないならば、契約にない手を使えばいい。
ここに神と魔が交わす契約の絶対性が窺える。
ケルト神話(特にアルスター神話)ではゲッシュというものがあった。
これは一種の制約であり、何らかの禁忌を強いるものだ。
(※ゲッシュは生来のものであったり、運命によって決められたり、神や王からの戒めであることもあれば、悪魔や敵対者から掛けられる呪いでもあったり、自らが誓いとして掲げることもある。時代が下るほど誓いの場合が多い)
このゲッシュは守るべき制約が厳しければ厳しいほど、その者に多大な祝福を与えるものだが、もしも破ればとてつもない災いが降りかかってくる。
それこそ身の破滅をもたらすだろう。
伝説的な英雄クー・フーリンは、このゲッシュに苦しめられた。
いくつものゲッシュを抱えていたクー・フーリンは、宿敵の女王メイブによってそれらを弱点のように突かれ、窮地に追い込まれていった。
また、悪魔の契約というものもある。
悪魔は人間の魂と引き換えに、3つの願いを叶えてくれるという。
この契約もまた絶対であり、悪魔は3つの願いを叶えたら人間の魂を奪っていくが、それまではどんな理不尽な願いでも聞き届けねばならない。
このように――神や魔は約束を破れないのだ。
真なる世界は神話の元ネタでもある世界。
こうした約束に関する逸話も引き継がれているのだろう。
神族や魔族として世界を塗り替えるほどのスーパーパワーを得た分、相応の不便なデメリットも背負わされたと思うしかない。
このため、真なる世界で取り交わされた契約は絶対である。
現代社会のように署名捺印した契約書ならば確実に効力を発揮し、何らかの物品に呪いをかけて契約を取り交わすこともままあった。
口約束ですら交わした時点で契約完了だ。
「アダマスは破壊神の部下、契約を交わしていたはずです」
最悪にして絶死をもたらす終焉――その一員として活動する約束だ。
「世界廃滅のためにこの世を滅ぼす先兵として、破壊と暴力の限りを尽くすという契約を……彼は今、それを自ら破ったんです」
あのコインは、20人の終焉者に渡された幹部としての証であろう。
それを自らの手で砕いたのは契約の破棄を意味する。
ありきたりな契約を破っても負担を被るもの。
最低限、何らかの信頼というものを損なうことになる。
そして契約は重くなればなるほど、罰則の規定も重くなるものだ。
「ヤクザだって組を抜けるなら、親分から受けた杯を返すなり小指を詰めるなり、それなりのペナルティが発生します……」
況してや相手は世界を滅ぼす悪の組織、ヤクザの比ではない。
「そんな連中から足を洗おうとすれば……」
――命を奪られることも有り得る。
そう言いかけてミサキは口を噤んだ。現状、冗談ではなく殺しに来ているレベルの制裁を喰らっているのだ。言葉にしたことが現実になりかねない。
ミサキとしてもアダマスを見殺しにしたくない。
また拳を交えたい、という思いから“気”による治療に集中した。
トワコも道具箱からありったけの万能薬を取り出し、回復に使えるアイテムならば何であろうと惜しみなく使っていた。
えぐえぐ、とトワコは泣きじゃくりながら困惑する。
「約束を破ったら大変なことになるのは知ってたけど……だからって、なんで……せめて傷を治してからコインを砕けばいいのに……ミサキくんと大喧嘩した後で、ろくに手当もしないで、こんなことを……」
「……いいんだよ、姉ちゃん」
喉も破れたか、血に濡れた咳をしてアダマスが声を出した。
「これで、いいんだ……ケジメは……つけんとな」
「ケジメって……ッ!?」
「俺は何人も殺してきた……この手で、この拳で……」
感情的になる姉の言葉を遮って、弟は犯してきた罪を懺悔する。
「俺自身……強くて怖い奴になって……俺と同じ奴を増やしてた……それが、どんだけ罪深いことかも考えずに……どれほどクソなのかもわからずに……」
目の前に掲げられた傷だらけの拳。
五本の指を震わせ、アダマスはようやく拳を開いた。
開いた掌にも縦横無尽に傷痕が走っている。歴戦を重ねた印だ。
それを見つめながらアダマスは本心を打ち明ける。
「姉ちゃんと母さんが生きてるってわかっただけで……この世界を壊そうって気が失せて……騙されたとはいえ恩人のロンドさんを裏切って……改心しようってんだから……これぐらいの罰は受けて当然だろ……」
なあ兄弟……? とアダマスはこちらに同意を求めてきた。
ミサキは喧嘩番長の真摯な心根を慮ってやる。
「……だから回復を断ったんだな」
ニヤリ、とアダマスは血で染まる口角を不器用に釣り上げた。
前述の通り、アダマスの回復力は超が付く。
現実世界にいた時も医者いらずと恐れられた回復力だったらしいが、それが神族になったことで生物の常識を覆す不死身を体現していた。
生まれついての頑丈さによる補正もあるだろう。
そんな彼が回復系技能を受ければ、即座に体調は万全へと立ち返る。
多分、契約破棄のペナルティも苦にならない。
ちょっと痛いかな? でしばらく我慢すれば終わってしまうはずだ。
――それでは罰にならない。
アダマスはケジメとして壮絶なペナルティを求めたため、ミサキにコテンパンにやられた直後、肉体の再生能力が機能不全を起こしている状態で、甘んじて受けるべきだと腹を括っていたのだ。
当て擦りも兼ねて、ミサキはわざとらしいため息をついた。
「ったく……バカ正直だなアンタは」
だが――嫌いじゃない。
論調としては悪態だが、ミサキは親愛の眼差しで見つめた。
やがて制裁も落ち着いてくる。
ミサキとの激闘直後に、不死身の肉体でも死んでもおかしくない拷問的ダメージを絶え間なく受け続けたアダマスは、さすがに息も絶え絶えだった。
度重なる重傷から回復を繰り返したため消耗も激しい。
少し頬が痩けたアダマスは、真面目な視線でこちらを見つめる。
「……姉ちゃんは、四神同盟の世話になってんだよな?」
ミサキは軽く頷いて首肯とした。
そうか……とアダマスも短く合点して当て所なく目を逸らした。
気まずそうな態度だが正々堂々と声を張る。
「降参だ、俺は兄弟に……ミサキに負けた。四神同盟へ投降する」
ほら――アレだアレ。
「煮るなり焼くなり好きに捌いてくれ」
いつもの口癖を唱えたアダマスは得意気にそう嘯いた。
ミサキは呆れた顔で苦笑するしかない。
「……もしかして、捌くと裁くを間違えてない?」
「上手いこと掛けたつもりだったんだが……上手くなかったか?」
20点かな、とミサキなりに採点した。
アダマスは照れ隠しなのか、大きな掌で顔を覆って含み笑いを漏らす。
「厳しいな、兄弟は……姉ちゃんやサバエより厳しい」
君のお姉さん駄々甘じゃん、とは空気を読んでツッコまないでおこう。
そのお姉さんは弟の胸板に縋りついて大泣きだった。
ひとまず制裁も終わったようなので、追加の回復せずとも自前のタフネスで復調しつつあるアダマスに寄り縋り、おいおい泣き喚いていた。
アダマスが破壊神ロンドと手を切り、その契約に背いてくれたこと。
悪事を認めて降伏を宣言し、素直に投降してくれたこと。
そして何より、契約破棄のペナルティに耐えて生き残ってくれたこと。
再開できた喜びも一入だろうが、誤解とはいえ自分のせいで道を誤ろうとしていた弟が改心してくれたことが、姉にとって何より嬉しいに違いない。
「剛ちゃんッ! 剛ちゃんッ……うぁぁぁん……ッ!」
弟に止められたのも忘れて、相変わらずちゃん付けで連呼していた。
合間合間には声にならない泣き声を上げている。
今日まで弟の境遇を案じて、物静かに耐え忍んできた感情が堰を切って溢れ出してしまったようだ。これは放出し終わるまで待つしかない。
アダマスの投降をミサキは認めるつもりだ。
静かにアダマスの傍らへ佇むミサキだが、頭の中ではアキさんの情報網を通じてツバサさんたち各国の代表と意見を交わしている。
それぞれ建国を果たしたので、陣営と呼ぶのはやめていた。
アダマスの投降については概ね容認された。
本来、最悪にして絶死をもたらす終焉に属する者は許されない。
基本的に抹殺あるいは抹消、百歩譲って半永久的に封印。
これが彼らへの断罪として決められていた。
極悪親父こと破壊神ロンドを筆頭に、徹頭徹尾「世界を完膚なきまでに滅ぼす」ことしか念頭にない連中だと思われていたからだ。
少しでも仏心を見せれば足下を掬われかねない恐れがあった。
だが、例外があることも判明した。
その例外こそが他でもない――アダマスである。
怪僧ソワカとともにトワコさんが四神同盟に協力を求めてきた際、彼女からの話でアダマスが姉や母の死を誤解して暴走している可能性があり、そこをロンドたちに付け込まれている可能性が掴めた。
だとすれば、情状酌量も見込めるかも知れない。
そこで一方的な処断は取り止められた。
場合によっては更生の余地を検討することにした。
事情を打ち明けたトワコからは「どうかお慈悲を……」と懇願されていた裏側もあるため、アダマスの投降は賛成意見に傾いたのだろう。
だが、決して全面的ではない。
四神同盟にはバッドデッドエンズの被害者もいるからだ。
カエルの王様ことヌン陛下の収める水聖国家オクトアードはマッコウ率いる凶軍に襲撃されて、国民と家臣団の多くに被害者が出ている。ヒデヨシさんが社長を務める日之出工務店は、芸術家を名乗る六番隊と激しく競り合った。
そして、バンダユウさんがまとめる穂村組。
アダマスは持ち前の闘争心から、「勝つまで戦る」と噂の穂村組を標的にして、組の構成員を何人かその手に掛けていた。
相手を倒した後、一握りのダイヤモンドになるまで圧殺しているのだ。
仲間を殺されて生き残った者も少なくない。
中には実兄を殺されて、遺恨を抱えている女性もいる。
アダマスはミサキに敗北を認めて投降、その際に最悪にして絶死をもたらす終焉との関係性を断ち切った。破壊神との契約も破棄している。
だが、個人の怨みは消えない。
死人に口なしだが、生き残った生者は忘れない。
仲間を、友人を、家族を……親しき者を殺されれば当たり前のことだ。
怨憎会苦は計り知れず、復讐の火花を散らすことも厭うまい。
ケジメは付いた――しこりは残る。
犯した罪にどう向き合うか? アダマスの侠気が試されるはずだ。
漢の矜持を重んじる喧嘩番長は責任感も強いから、穂村組の生き残りに責められるのも承知の上。それでも姉のために白旗を振ったに違いない。
散々迷惑を掛けた姉への謝罪も込めて――。
トワコもブラコンの姉だが、アダマスもシスコンである。
ミサキも弟子コンプレックスの師匠がいるので、ちょっと共感できた。
これから大変だな、とミサキは片目を閉じて嘆息した。
「投降は認めよう。ただ……覚悟してくれ」
「ああ、言わずもがなよ……四神同盟にゃ手品の上手いじいさん……いやさ、穂村組も庇を借りてんだろ? タダじゃ済まねえよなぁ……」
さぞかし怨まれてンだろうな、とアダマスは罪悪感を滲ませていた。
やりきれぬ後悔も垣間見える。
姉や母を殺したなんてとんでもない勘違いから自棄を起こしたとはいえ、これまでの行いは度が過ぎていたと今更ながら過ちに気付いたらしい。
反省の色が見えるだけ、他の終焉者より全然マシだ。
何はともあれ――勝負はついた。
ミサキは仕切り直す意味で、パンと軽く拍手のように手を叩いた。
「じゃあ、ひとまずアダマスはトワコさんと一緒にオレの国に来てくれるかな? ちょっと窮屈かも知れないが拘束はさせてもらう」
ミサキがそう促すと、アダマスは億劫そうに上半身を起こす。
もう立てるほど回復してきたらしい。やっぱりバケモノ級の回復力だ。多少足下が覚束ないが、すかさずトワコさんがその細身で支えている。
「当然だな……牢屋にでもぶち込んでくれ」
牢屋暮らしは慣れてる、とダーティな冗談で返してきた。
これにミサキは悪戯な笑みで答える。
「わかった、極上のスウィートルームを用意してやる」
工作の変態に頼めば5秒で一から建設してくれるはずだ。情報網で事前連絡しておき、ミサキはアダマスたちを連れてイシュタル女王国へと戻る。
守護神と破壊神の盤上――№07のコインが消える。
それは自爆したかのように、派手な音を立てて砕け散った。
~~~~~~~~~~~~
野火が燃え広がるかの如き音が鳴り止まない。
実際、そのドス黒い炎は野火に似ている。あるいは、野火よりも厄介で凶悪な代物かも知れない。凶悪さについては破壊神のお墨付きだ。
ロンドから破滅の闘気が溢れていた。
大陸中央――還らずの都を臨める数千mの上空。
そこに浮かんだ円卓と、それを取り囲む豪華な円形ソファ。
最悪にして絶死をもたらす終焉と四神同盟が戦争を始めて以来、双方のトップともいうべきツバサとロンドは、この円卓で睨み合いを続けていた。
適度な弾力と心地いい反発力のあるソファ。
そこにツバサは地母神になったがために、超巨大な安産型となった女性らしい尻を埋めていた。我ながら大きすぎて持て余す毎日である。
歩くだけで揺れる巨尻を支えるムッチリした太ももから伸びた長い足。
女性的な脚線美に恵まれた脚を絡ませるように組む。
左右に広げた両腕はソファの背もたれに引っ掛けており、お母さんのMカップとなってしまった超爆乳な胸を誇示するように張っている。
長い黒髪は赤味を帯びており、殺戮の女神に変身しかかっていた。
少々お行儀の悪い――不貞不貞しい態度だ。
絶対にミロたち子供の前ではやらない、不良みたいな座り方である。
どちらかと言えば素の羽鳥翼、男としての地が出ていた。
気に入らない奴には好戦的な態度を取り、「やんのかコラ?」といつでも喧嘩を売ってもらうため、わざとらしく挑発的な行為を取る。
今がまさにそれだった。
本音を言えば、今すぐにでもロンドを殴り飛ばしたい。
さっさと決着をつけたいのだ。
いっそ殴りかかってきてほしい、そんな気持ちの表れである。
戦争開始時からそう主張しているのだが、対するロンドはのらりくらりとツバサの戦意を躱しており、決戦を先延ばしにしていた。
『ラスボス同士が最初っから一騎打ちなんて情緒に欠けるだろ?』
これがロンドの主張である。
まずは双方の仲間や幹部で鎬を削る前哨戦を一通り終えた後、満を持して大将格であるツバサとロンドが激突するという展開にしたいらしい。
バトル系の漫画やアニメでよく見る王道の流れだ。
ストーリー的なセオリーとしては正しいかも知れないが、武道家の血が騒ぐツバサとしては、目の前にいる大将を真っ先に潰したくて堪らなかった。戦争における兵法でもその点は代わらないはずだ。
指令を下す総大将を落とせば、残りは烏合の衆となる。
戦争も大規模戦闘から残党狩りとなり、様々な被害を減らせるはずだ。
なのに――この極悪親父は動かない。
ツバサがいくら挑発しても煽られることなく、泰然自若におちゃらけたマイペースを崩さない。こちらが焦らされて暴発しそうだった。
この戦争では、誰もが命懸けで戦っている。
そんな時に何もせずにいられるほど、ツバサは王様気質ではない。みんなが一生懸命に動いていると「自分も何かしなければ……」なんて強迫観念が働いてしまい、率先して仕事をしないと気後れしてしまう貧乏性なのだ。
ツバサも最前線で戦働きをしたい。
そこで破壊神が動かないなら、他の幹部を倒しに行こうとも考えた。
そうでなくともミロが手を焼かされている案件へ加勢しようと思ったのだが、こうしたツバサの行動力をロンドは封じてきた。
『一緒に茶でもしばきながら子分どもの試合観戦しようぜ?』
『ツバサが相手してくれねえと、オレは何をしでかすかわかんねえぞ?』
無軌道かつ無節操でろくに考えることなく動くくせに、その一挙手一投足が遊び半分でも大陸を消し去る力を持つ破壊神に脅迫されてしまった。
文言的には脅迫とは思えないが――。
一方、ロンドから目を離せないのもまた事実だ。
このちゃらんぽらんな極悪親父を放置すれば、世界規模で神々の大戦争が起きている最中に、どんな天変地異を起こされるか知れたものではない。
言動も行動もいいかげんなテキトー親父。
この戦争の行方を左右する最大戦力にもかかわらず、どんな大惨事をどこで起こすかまったく読めず、予測不可能なことを平然とやりかねない。
本人の言う通り、何をしでかすかわからないのだ。
世界を滅ぼす無差別テロを予告されたのも同然である。しかも予告されているのに、場所や時間は指定されていない業腹ものである。
ツバサに積極的に動かれてはロンドも困るのだろう。
そうした魂胆も透けて見える。
ツバサもまたロンドを監視しつつ抑制しなければならない。
ブチ切れる寸前の激怒という名の軍隊を、理性という交渉役によって宥め賺したツバサは、ロンドのお茶会にお呼ばれするしか選択肢がない。
設けられた一席が、この空中円卓である。
朝8時に開戦した戦争は3時間が経過しようとしていた。
ロンドは宣言した通り、両陣営の主力勢による戦いに目処が付くまで自身が世界廃滅のために行動を起こすつもりはないらしい。
それまでは試合観戦に徹する。
四神同盟と最悪にして絶死をもたらす終焉。
お互いの陣営でも主力として戦える人員を“駒”に見立てたロンドは、円卓の上に敷いた中央大陸の地図上にそれらを配置した。
四神同盟は、ツバサが即興で作ったオリジナルのチェスピース。
工作者たちから手慰みに教わった工作系技能で、ピースに対応した人物の個性をデザインに取り入れたものだ。
最悪にして絶死をもたらす終焉は、終焉者が対を持つ№入りのコイン。
このコインは所持者のコインと様々な意味で連動しており、ロンドにはコインを介して彼らの状況が伝わってくるらしい。
戦闘の内容なども手に取るようにわかるそうだ。
ツバサはアキとククリの情報網を頼りに各地の戦況分析をしているが、ロンドはコインから伝達される情報から把握しているのだろう。
おかげで、各人の戦いにおける話題に齟齬はなかった。
そして、どちらの“駒”にも共通する点がある。
該当する人物が戦死した場合――その“駒”は破壊されるのだ。
四神同盟の“駒”はまだ1つも破壊されていない。
幸いにも、と前置きしたい気持ちで胸がいっぱいだった。
だが最悪にして絶死をもたらす終焉の“駒”であるコインは、既に11枚が砕けていた。そして今、12枚目のコインも打ち砕かれる。
しかも12枚目は、当事者が自らの意志で砕いたものだった。
――面白くないに違いない。
外見こそ夜の六本木をブラついていそうなチョイ悪親父。
中年の割に頭身も高ければスタイルも良く、イケメン親父で通じるだろう。身に付けるものも洒落た高級品ばかりと来ていて気前も良さそうだ。
だが、その本質は骨の髄まで破壊神。
息を吸うように世界を滅ぼすことを責務と信じる狂神だった。
本来ならば独力で真なる世界を破壊できる力を持つという自負があり、世界廃滅の志を持つ部下を募って悪の秘密結社を起ち上げたことも「暇潰し」みたいに吹聴している男だが、面構えに不愉快さは露わにしていた。
目に掛けた終焉者が――次から次へと敗北の憂き目に遭っている。
おかげで苛立ちを隠せていない。
イシュタル女王国で電撃戦が繰り広げられてからのことだ。
まず鏖殺師クロウがエンオウに敗北した。
最初こそいつものヘラヘラした笑顔を崩さなかったロンドだが、口角が明らかに下がり、左右の眉が交互にピクピク震えてムカつきを滲ませていた。
次に魔女医ネムレスもモミジに敗れた。
この頃から笑顔ではなくなり、不満げな渋面で両眼を眇めていた。
更に頭脳役マッコウもヌン陛下に倒された。
最高幹部の一人に先立たれたショック、その損失は大きかったらしい。
「……………………」
やかましいくらいの饒舌さはどこへやら――。
奈落の神の末裔だというマッコウの消滅を、砕けたコインから感じ取ったロンドは、険しい仏頂面となって口を利かなくなってしまったのだ。
仏頂面といっても菩薩のように穏やかではない。
不動明王の如く荒々しい、怒りを蓄える猛然とした面構えである。
その頃から破滅の闘気を制御できなくなっていた。
決定的なのはアダマスの敗戦だ。
眼に入れても痛くないほど可愛いツバサの愛弟子であるミサキ君が、天賦の才に恵まれた喧嘩番長アダマスに、研鑽を重ねた武術の冴えを見せつけて、見事に勝利をもぎ取った。この時ばかりは心の中で拍手喝采させてもらった。
負けを認めて投降したアダマスは自らコインを砕いた。
連動して盤上のコインが砕けた途端、破滅の闘気が溢れたのだ。
まるでドス黒い野火である。
この宙に浮かぶ円卓やそれを取り囲むソファはロンドが用意したものなので、彼が常時振りまいている破壊神の気迫(耐性がなければ触れただけで塵と化す)でも傷まないように、特殊なコーティングが施されていた。
しかし、もはや意味を成さない。
すべてを滅ぼす野火はロンドを中心にメラメラと燃え広がり、徐々にではあるがソファを焦がしていた。そろそろ円卓にも燃え移りそうだ。
最悪なのは当人が気付いていない点だった。
無自覚にストレスを感じ、無意識に闘気を漏らしているのだ。
従者としてロンドに側仕えする女中ミレンも、黒い炎に煽られている。
なのに、彼女は何故か恍惚としていた。
ああ見えて破滅主義者の一人、痛くて苦しいのがお好きらしい。
エロいフレンチメイドが炎に煽られて「ああん……♡」と淫欲に身悶えるシーンはどこに需要があるのだろうか? 危険な匂いしかしない。
あのまま火中へ身を投げそうで怖い。
ツバサなら破滅の闘気を浴びても平気だが、他の者は耐えられそうにない。そのためこちらの女中にも避難するように指示しておく。
エロでマゾでサドで変態と手に負えないが、忠誠を誓ってくれる眷族だ。
念のため、ロンドに悟られぬよう小声で伝える。
「クロコ、そろそろ退避しろ」
「何を仰いますツバサ様……このクロコ、最期までお供させていただきます」
この変態メイド、忠誠心だけは人一倍だった。
爆乳特戦隊の一員に相応しいJカップの胸元に手を添えると、楚々とした仕草で一礼してきた。そして、主人に殉じる気構えを告白する。
「たとえ火の中、水の中、パンツの中……そして共に同じ棺の中へ!」
「パンツは巫山戯んな。棺は絶対に断る」
同じ棺へ入るのを許すとしたら伴侶であるミロだけだ。
譲歩して子供たちである。いくら忠誠心のメーターが振り切れているとしても、部下に殉葬なんてさせたくはない。あるいは追い腹か?
(※殉葬=死んだ王とともに家来が墓へ葬られること。死後の王を世話するため、生きたまま埋葬される。そのほとんどが奴隷)
(※追い腹=亡くなった主君の後を追うべくする切腹のこと)
その忠誠心だけは褒めて遣わそう。
だが、クロコはめげずに言い募ってくる。
「では特大ブラジャーの中までお供させていただきます! お墓への同居が認めていただけないのなら、墓前に立てた木に樹木葬で……」
「もうツッコまんからな、状況を考えろ」
非常事態だぞ、とツバサは冗談交じりの密談を打ち切った。
改めて真面目な指示を伝える。
「これから何が起きるかは俺にも予測できない」
破壊神の対戦相手はツバサと決まっている、これは譲れない。できれば余人を交えず戦いたいので、後方支援やサポートは求めていなかった。
はっきり言って足手まといである。
周りに気を遣えば、ツバサも気兼ねなく全力を出せなくなってしまう。
やはりロンドとの決戦は一対一が最適解だ。
なのでクロコには、臨機応変に動いてもらいたい。
変態思考のクロコだが、真面目にやらせればハトホル一家でも随一の働きを見せるのだ。この戦況下でも適切な判断を下せると見込んでいる。
差し当たって――彼女の抑えを任せたい。
「俺がロンドと激突する寸前にこの場を離れろ。そこから先どうするかは、クロコへ一任する。あるいは……」
ツバサは気取られないようにある人物へと目線を移した。
わずかな仕草からこちらの意図を読み取るクロコは、後を追うように彼女を一瞥すると、澄まし顔で目を閉じて静かに黙礼する。
「――かしこまりました、ツバサ様」
ロンドの身の回りの世話しかしてないイメージのためか、幹部として名を連ねながらも彼女の存在感はやや薄い。然りとて、捨て置けるものではない。
浅からぬ因縁もあるそうなのでクロコに任せよう。
――破壊神との決戦が間近に迫っている。
その予感を肌で感じたツバサは、念押しの指令を伝えておいた。
内緒話も終わったのでロンドに話し掛けてみる。
「……そろそろ始めようか?」
ツバサは「待ちかねてんだぞオイ?」と喧嘩腰に水を向けた。
こちらの口調から喧嘩を吹っ掛けられていると察したロンドは、ようやく苛立ちのあまり破滅の闘気がダダ漏れなことに気付いたらしい。
「おっと、いけねぇいけねぇ」
凡ミスを指摘されたみたいに、ロンドはドス黒い野火を消した。
まるで寝タバコでカーペットを焦がしてるのに気付いた昼下がりの親父のような姿で、パンパンと野火を叩いては消している。本人だからこそできる芸当であって、他の者がやれば叩いた手の方が消失するだろう。
一通り野火を消すと、その掌で顔を無造作にゴシゴシと拭いていた。
凶猛な殺気を拭い去り、気の抜けた昼行燈の表情を取り繕う。
「ふぃー……柄にもなくヒートアップするとこだったぜ」
大将戦をおっぱじめるにゃまだ早い。
そうした発言を口からこぼす代わりに、普段のちゃらんぽらんな態度を露骨に見せてきた極悪親父は、愛想だけはいい笑顔を振る舞ってきた。
それから眉尻を下げて悔しげに苦笑する。
「やっぱ人間の振りしてた時代が長すぎたかなー。愛も罪も夢も闇も……何でもかんでも背負ってきたから、この程度で心が千々と乱れちまう」
長年連れ添った仲間が死んだくらいでよー、と寂しげに独りごちた。
右腕のアリガミが戦死した時もそうだ。
ロンドは破壊神の怒りを吹き荒れさせて、この場を滅ぼしかけた。
今回は頭脳役マッコウの死が引き金になったらしい。
小さな涙の粒がロンドの目尻にあった。
当人はすぐ拭ったつもりだろうが、ツバサは見逃さない。
「あのオネ……いや、マッコウという人も灰色の御子だったのか?」
弔辞の代わりにマッコウの人物像を尋ねてみた。
「いいんだぜ、ストレートにオネエって呼んで。本人もオカマだデブだと自覚した上で、あの体型とキャラを一本気に貫いてたんだからな」
ロンドはマッコウについて語り出す。
それは無二の親友を誇らしげに語るような口調だった。
「そうだよ。あの人も灰色の御子さ。俺と違って人間として何回か転生した組なんだが、あらゆるものを奈落に落として取り込むっていう神性のおかげなのか、あんまりパワーダウンせずに済んだんだが……」
「他の灰色の御子からは毛嫌いされたみたいだな」
「そこはそれ、破壊神もそうだが邪神ってのは評判悪くてね」
本来――邪神という神はいない。
人間の観点から見て「人類が平穏に暮らす世界に害を及ぼす神性」を持つがゆえに、邪神というレッテルを貼られるのだ。
だからなのか、同じ神族同士でも排斥されやすいらしい。
ロンドはうんざりした眼で虚空を見上げる。
「この世の汚濁や禍事を引き受ける神族ってぇのもわんさかいんのよ。これぞ本当の必要悪ってやつ? なのに腫れ物みたいに嫌われてなぁ……同族だってのに毛嫌いされて追い出されて……ま、ひねくれて当然だわな」
世界がそう仕向けてきたんだから――。
嫌って拒んで避けて憎んで遠ざけようとする。
「ならば、そうあれかしとなるしかない」
奈落の神らしく、すべてを深淵へ叩き落とす役を果たす。
マッコウ・モートはその宿命に邁進したという。
「だから文句は言わせねぇよ? オレたちは己が神性を全うするまでだ」
ロンドの掌にはまだドス黒い野火が残っている。
それを一息にギュッと握り潰した。
奈落神ならば――この世のすべてを奈落へ突き落とす。
破壊神ならば――この世のすべてへ破壊の限りを尽くす。
「道半ばで蛙の王様にしてやられちまった奈落神は不甲斐ねえが、弱い奴から負けて死ぬのが世の習いだ。後始末は破壊神がしてやりゃあいい」
――この世のすべてを滅ぼすまでだ。
亡き戦友へ誓いを立てるように、ロンドは拳を握り締めた。
仲間が死んでも平気! というスタンスを打ち出しているロンドだが、大なり小なり思い入れはあるようだ。そこは人間と大差なく、長い付き合いのある古参ほど贔屓目になるところもあるのだろう。
クロウがエンオウに倒された時も盛大な舌打ちを耳にした。
わざわざスカウトに出向いて手塩に掛けた部下が負けるのは、やはり気に食わないらしい。当人へ負けた理由も追求したそうである。
「アダマスの件はどうなんだ?」
ミサキ君が倒した喧嘩番長についても訊いてみる。
不死身のタフネスのみならず、天性の格闘センスの持ち主。
一騎当千が比喩ではない戦闘能力と、広範囲を壊滅に追い込む破壊力から推察するに、バッドデッドエンズの中でも五指に入る実力者だろう。本来ならば一番隊の隊長を務めていたはずと聞くから、ロンドの信任も厚いと見ていい。
彼はミサキ君に敗北したことを認めた。
その後、素直に降参宣言すると四神同盟へ投降している。
この一連の行動には、姉であるトワコさんの存在が関わっていた。
アダマスは彼女が死んだと思い込んでいたのだ。
様々な行き違いから姉と母を殺したと勘違いしたからこそ、アダマスは強者を殺しながら世界を滅ぼす破滅主義者へと転落してしまった。
もしもお姉さんやお母さんが生きていたら、道を踏み外すまい。
良くも悪くも実直な漢と聞くから尚更だ。
そのお姉さんが現れて、アダマスが勘違いしていた真相をネタバレしたら、もはやバッドデッドエンズに属する意味もなくなる。
最期にミサキ君と熱闘を繰り広げて満足したらしい。
その後、ロンドから与えられた終焉者の証でもあるコインを砕き、バッドデッドエンズからの脱退を表明。ペナルティの制裁も済んでいる。
この件について思うところがあるのなら、是非とも窺いたい。
ロンドは両腕を組むと悩ましげに身を捩る。
「あー……あれはなぁ。オレにも多少なりとも非はあるからなぁ」
「オッサン、非しかないだろ」
非の総合総社じゃねーか、とツバサは藪睨みでツッコんだ。
こちらの悪口を聞き流して極悪親父は言い訳をする。
「いや、アダマスに関しちゃマジで非なんだよ。ちくっとポンコツなことをやらかしちまってな。アリガミやマッコウさんの手も煩わせちまった」
なんともバツが悪そうだ。何らかのミスをしたらしい。
「ポンコツ? あ、まさか……!?」
訝しげな視線を送った後、ツバサはなんとなく察した。
「……ロンドもアダマスの姉や母が生きていることを知らなかった?」
「……言わないでツバサちゃん、オジさん恥ずかしいッ!」
誰がツバサちゃんじゃあッ!? と語尾が広島弁になってしまった。
ソファの上で縮こまるロンドにツバサは怒鳴りつける。
「オッサンが両手で顔を覆ってモジモジすんな見苦しい! そりゃポンコツだよな!? 本人に面会する前に下調べしただろうにその様じゃあな!」
ここぞとばかりに罵詈雑言で浴びせてやる。
いつまで経っても諸悪の根源である破壊神を殴れないので、ツバサのストレスも限界値ギリギリなのだ。フラストレーションも溜まりに溜まっている。
これくらいのストレス解消は許してもらおう。
「悪かったってーッ! 本当、アダマスには悪いことしたってーッ!」
懲りないめげない諦めない――でも、ちょっと反省してる。
そんな素振りでロンドはみっともない釈明を続けた。
「本来ならバッドデッドエンズを裏切ったら死あるのみ! の契約だったけど、アダマスに関しちゃ大目に見たんだよー! だからアイツ死んでないじゃん!」
「死でもおかしくない崖っぷちまで追い込まれてたけどな」
不死身のタフネスあればこそ、瀬戸際でなんとか踏み止まれたのだ。
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「いやー、兄ちゃんも気付いていると思うが、アイツぁ人間だった頃からズバ抜けて飛び抜けた戦いの申し子でな。世が世なら呂布や本多忠勝と並び称される猛将として歴史に名を刻んだろうぜ。いや、素質ならそれ以上かも……」
「それだけ褒めちぎる逸材だから、是が非でも欲しかったと?」
その通ーり! と戯けるロンドは全肯定した。
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戦場で一度も傷を負わなかった戦国最強――本多忠勝。
彼らを上回るかも知れない天賦の才、それも戦いの才能を秘めた漢だ。破壊神となれば世界を滅ぼすとともに、それを阻む者を一蹴する強者となろう。
騙してでも臣下に加えたい気持ちは理解できなくもない。
それゆえに気が急いて、凡ミスしてたらどうしょもないが……。
「アダマスのピカピカに原石みたいな才能ばっかに目が行っちまって、憎んでた父親のみならず、間違えて母親や姉貴も殺したことを悔いてるような話を聞いてたから、それを鵜呑みにスカウトへ行ったんだけど……」
無事に勧誘できた直後、資料を読み直して気付いたという。
「あれ? これお袋さんとお姉ちゃん生きてんじゃね……ってなもんよ」
「ってなもんよ、じゃねーよ無責任男!」
ミサキの叱責にロンドは「てへぺろ♪」とぶりっ子で誤魔化す。
この腹立つ笑顔、頭蓋骨粉砕するまで殴りたい……ッ!
「ま、そんなわけでオレのミスを誤魔化すために、アリガミやマッコウさんがあっちこっちそっちこっち裏工作してくれたわけよ。アダマスが世界を滅ぼしたくなるモチベーションを失わないようにな」
具体的には――母や姉の死を偽装した。
忘れられがちだが父親も死んでいない。そこも偽装したようだ。母や姉と一緒にまとめて殺した、と勘違いさせた方が都合が良かったらしい。
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ミサキやトワコから情報網へ随時上げられてくる話にも、「トワコやお母さんが剛ちゃんの面会に行ったら断られた」という、関連性のありそうな情報がいくつかあるので、裏が取れたことになるのだろう。
こちらも検討しておくべきだった、とツバサも反省する。
アダマスへの迎撃要員としてトワコの重要性がそこまで高いとは思えず、「できれば説得してください」ぐらいにしか取り合ってなかったのだ。
上手に立ち回っていれば――アダマス戦は回避できた。
不必要に戦場を拡大させてしまったことに、後悔の念が湧いてくる。
しかし、ミサキ君が満足そうなので良しとしておこう。
雑談はこれくらいにして――本題へ立ち返る。
「じゃあ……そろそろ始めるか?」
ツバサはこの下りで始めた最初の問いかけを繰り返した。
ロンドが破壊神としての闘気をまき散らしたのに対抗すべく、女神ながらも闘争に秀でた殺戮の女神の覇気をこれでもかと発散する。
物理的な威力のある、津波のように攻撃的な“気”による波動だ。
ここぞとばかりの挑発である。
いくら破壊神でものらりくらりと無視できまい。
ビリビリと肌を震わせるものの、ロンドは身動ぎひとつしなかった。
素知らぬ顔に不敵な笑みを添えて聞き返してくる。
「始めるって何をだい、兄ちゃん?」
「惚けるなよ極悪親父、俺たちの本戦に決まってるだろうが」
守護神VS破壊神――両陣営による大将戦だ。
その大将戦を始める契機とすべき事実をツバサは突きつける。
「虎の子の幹部を12人もやられてるんだぞ?」
「まだ12人しかやられてねぇの間違いだろ?」
「残っているのは8人……ここらがボスとしての潮時じゃないのか?」
「8人いるなら8試合も残ってると言わせてもらいたいね」
前哨戦の本番はこれからさ、とロンドは腰を上げる様子を見せない。
「……ああ言えばこう言うの見本市みたいだな」
ツバサは苦虫を噛み潰した顔で嫌悪感を前面に出した。
小僧を手玉に取って極悪親父は嬉々としている。
「逆説を唱えてりゃそれなりに格好がつくもんだ。オレほどに貫禄がありゃあ反論も許さねえから言いたい放題さ。偉いってだけで説得力に箔が乗るのよ」
それでなんだ? と徐にロンドは右手を持ち上げた。
「終焉者を12人も負かしたから四神同盟が有利とでも言いたいのか?」
持ち上げた手の五指をロンドは空に向けて開く。
「こっちは戦力が目減りしたから敗北宣言でもしてほしいのかい?」
ええ兄ちゃん? とロンドは首を傾げた。
開いている左手で頬杖を突くが、広げた右手は微動だにしない。
「お生憎様だな。最初の方に言っただろ、バッドデッドエンズなんざ余興に過ぎねえ。破壊神ではなく人間だった頃のオレのお遊び企画さ」
世界を滅ぼす手勢など不要――壊すとなれば破壊神で事足りる。
掲げられた右手から、再びドス黒い野火が立ち上る。
ただし、先ほどより色彩が濃い。
粘り気のある黒炎が燃え盛りながら渦を巻いていた。
「わかるかい兄ちゃん? 20人の終焉者がコールド負けしたところで、人間としてのオレは心揺さぶられるかもだけど、破壊神としてのオレは『あ、そう』で終わっちまうのよ。たったそれだけのことなのさ」
思わずツバサは固唾を飲んだ。
危機管理能力が最悪の予感を訴えてきたからだ。
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「雑兵はいくらでも都合が付く。だが、兵隊にもランクがあるだろ? 三等兵から一等兵、近衛部隊に親衛隊……昔の大名は使える腕利き連中を“馬廻り”って傍に置いてたもんさ。要するに、いざって時の頼れるエリート部隊よ」
いつしか火柱となるまで大きくなった黒炎。
黒炎の上昇気流に乗り、数え切れない巨獣の卵が空へと舞い上がる。
「そういう強兵はな、ここぞって時に出し惜しみせず使うもんだ」
そして、世界中に散布されようとしていた。
ツバサを睨みつけたロンドは、禍々しくも破顔一笑する。
「戦力に差がついたってんなら、巨大獣らで埋め合わせてやるよ」
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