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第16章 廻世と壊世の特異点
第399話:次元を撃ち抜く巨砲
しおりを挟む過酷だ――おまけにジリ貧になりつつある。
マルミ・ダヌアヌは苛立ちを募らせるものの、平静であろうと努めることで戦いに集中した。脳内ではマルチタスクで思考を走らせている。
現在の戦況を分析してみよう。
マルミが所属するルーグ・ルー陣営は現在、その麓に拠点を構えた還らずの都を守るため、都を破壊するために派遣された世界廃滅集団バッドデッドエンズの構成員と激しい戦闘を繰り広げていた。
構成員といったものの、実際には敵勢力の幹部と考えた方がいい。
最悪にして絶死をもたらす終焉――二十人の終焉者。
単独でも世界を滅ぼしうる力を持つ破壊神の眷族である。
こちらへ差し向けられたのは二人。
№09 凄鬱のフラグ――サバエ・サバエナス。
№10 暴食のフラグ――オセロット・ベヒモス。
世界を二回滅ぼしてもお釣りが来る戦力だ。
還らずの都はとてつもなく大きい。
山脈として仰ぎ見るべき規模だろう。現実世界ならばエベレストやチョモランマに比肩するどころか、あらゆるサイズ感でそれらを上回るはずだ。
ルーグ・ルー陣営の拠点は麓の北側にある。
陣営の代表は拳銃使い――ジェイク・ルーグ・ルー。
国家としての名前はルーグ・ルー輝神国。
ドラゴンの力を持つ人間体のドラゴノート族、人間に近い姿をしているが蜥蜴の性質を持つリザードマン族、大地の精霊としての能力を持つ小柄なノッカー族……ジェイクが保護したこれらの種族が暮らす国だ。
機械生命体な種族、スプリガン族も駐屯している。
軍属気質なスプリガン族は、総司令官と呼ばれる族長の元で部隊を編成するようにまとまり、ほとんどはハトホル陣営に帰属していた。
紆余曲折あってツバサくんが保護したという。
彼のお膝元、ハトホル太母国で国民を守る守護者の任に就いている。
ルーグ・ルー陣営にいるのはその部隊のひとつだ。
元を正せば500年前のこと――。
スプリガン族の一員ながら暴走しがちの愚連隊が、血の気が多いのをいいことに功を焦ってやらかして、本隊からはぐれた挙げ句に再起不能に陥り、地中に埋まって500年の長きに渡る休眠状態にあった。
それをジェイクたちが発見、修理して復活させたのだ。
恩義を感じたスプリガン愚連隊は護衛兵の役目を買って出た。
それ以来の付き合いである。
ツバサくんたちとの出会いを経て、スプリガン族の本隊と合流できた彼らだが、部隊全員たっての願いでルーグ・ルー陣営に残ることとなった。
『まだジェイク様たちに恩を返しておりません』
粗暴な者が多い愚連隊だが、義理人情に厚い者ばかりだった。
愚連隊を率いる部隊長ラザフォード・スピリットを筆頭に、32名のスプリガンがルーグ・ルー陣営と還らずの都を守るため警護の任に就いていた。
駐屯という言葉を選んだのはこのためである。
ルーグ・ルー陣営も国を構えるようになった。ツバサくんたちの結んだ四神同盟へ正式に加盟を果たしたのだ。
新たに加わった五番目の神ということで五神同盟に改名する予定だが、代表のジェイクは「戦争が終わるまで待って」ということで同盟加入こそしたものの、実質的には(仮)に近い。
……ケジメをつけて心の整理をしたいのだろう。
ジェイクは愛した人の仇を討つため、単身で出撃中である。
内在異性具現化者でもあるジェイクの補佐役を務めた元GMのマルミは、仲間とともに還らずの都の防衛を任されていた。
還らずの都を守ることは拠点を守ることに通じる。
引き受けないわけにはいかない。
マルミ率いるルーグ・ルー陣営が防衛を受け持つ北面。そこからから攻め込んできたバッドデッドエンズは、先に述べたサバエとオセロットの二人。
二人の会話を聞くと血の繋がった姉弟らしい。
たかが二人――されど二人。
同列のLV999といえど侮るなかれ。
LV999というのは、あくまでも強さの指標に過ぎない。
このLV999というカテゴリーの中でも、破格、別格、特級、最上級、上級、中級、下級、初心者、問題外……と明確な格差があるのだ。
最強という括りにもピンキリはある。
一騎当千という称号に見合った実力者もいれば、狭いジャンルにおいてのみ最強を名乗れる専門家もいるし、雑魚専で最強を気取る者も珍しくない。
(※雑魚専=弱者の撃破数だけを誇る偽りの王者)
単騎にて複数のLV999と渡り合える猛者はいる。
ツバサくんはその最たる例だろう。
彼だけではなく内在異性具現化者のミサキくん、アハウさん、クロウさん、それにレオくんやセイメイくんにドンカイさん……と四神同盟はずば抜けて戦闘能力が高い戦士に恵まれている。
無論、ここには我が陣営のジェイクも含まれていた。
だけど――それは味方だけに限った話ではない。
バッドデッドエンズにも錚々たる実力者がいておかしくないのだ。
このためマルミは陣営の仲間+αに「舐めてかかっちゃダメよ」と、キツく厳命しておいた。こういう心配性なところがお母さんと呼ばれるのだろう。
オカン力ならばツバサくんとタメを張れると思う。
厳命した仲間は+αを含めて四人。
工作者でお姉さま風な車掌――ソージ・スカーハ。
ジェイクが現実で面倒を見ていた、某高校eスポーツ部の部長。
長身の美少年だったが、VRMMORPGの動画配信で“映え”を狙い、キャラを女体化させたため、異世界転移で意図せず女神化してしまった。
今ではお姉さま系美少女となり、現在進行形で悩んでいる。
性同一性障害でもなければ、女性化願望もない。
普通の少年がゲーム感覚で女性キャラを選んだら、それが本当の自分に反映してしまった。やっぱり受け入れがたいのだろう。
それでもまあ、大分馴染んできたように見えるが……。
車掌服に身を包んだ前衛系戦闘職で、長い足を使った足技を槍のように扱うのを得意とする。そして、何でも作れる凄腕の工作者でもあった。
7つの力を使い分けるサムライ娘――レン・セヌナ。
ソージと同じeスポーツ部所属の女の子。
小柄で可愛らしいのだが、デフォルトな仏頂面と愛想の無さが玉にキズ。ちょっと毒舌なきらいはあるが、人との和を重んじるいい子だ。
女神になったソージには、何やら物申したいことがあるらしい。
レンにとってはソージは気になる異性だったようだ。
それが異世界転移のトラブルで女性になってしまったものだから、複雑な感情を抱くのは当然だろう。どうも素直になれないと見た。
甘酸っぱい青春を生暖かく見守っていこう。
和風サムライ娘といった雰囲気の外見と技能構成で、自分の身長と同じくらいの刃渡りがある大太刀を使う。これは彼女の過大能力の化身でもある。
ふんわりのんびり蛮族娘――アンズ・ドラステナ
レンの同級生で同じくeスポーツ部の一員。
身長も体格もスリーサイズも、年相応では収まらないほど発育した健康優良児。誰にでも愛想が良く、人見知りも物怖じもしない天然系。
物事を深く考えずに人生を満喫できるタイプ。
マルミが見たところ恋愛などはまったく意識しておらず、「みんな仲良く!」を最高に楽しむことを信条としている。
空気は読めるけど察しが悪いアホの子という印象。
だが面倒見が良く生活力があるので、いいお母さんになれそうだ。
蛮族らしく水着みたいな軽装でナイスバディを晒しており、魔獣の毛皮をマントのように羽織っている野生児スタイルだ。
以上三名、ルーグ・ルー陣営の所属である。
真なる世界に転移してからこっち、マルミがお母さん代わりに世話を焼いている子供みたいなものだ。実際、みんなまだ高校生である。
それと、四神同盟から助っ人として派遣された戦力がもう一人。
穂村組の用心棒――“爆肉”のセイコ・マルゴゥ。
実戦第一主義の極道、穂村組でも精鋭トップ3に入る豪傑だ。
穂村組は系列的にハトホル陣営。つまりツバサくんのところにいるのだが、この大戦争では各陣営の予備戦力として配備されていた。
身長は3m近く、絵に描いたような筋肉モリモリのマッチョマン。
威圧感のある大男だが、蓬髪の下にあるのは愛嬌のいい童顔。おかげで初対面でもマイルドな印象を受けた。ギリシア風な空手着を身にまとっている。
――ソージたちは聞き分けが良い。
この一年、共に過ごしたのでマルミの教育の賜物か、生まれついての素直さなのか、正しく言い聞かせればちゃんとこちらの意を酌んでくれた。
意外なのは――セイコも素直だったこと。
用心棒として寄越された彼は、「好戦的なヤクザ」と聞かされていた先入観があったため、こちらの指示を無視して暴れ出すのではないかと心配したのだが、蓋を開けてみれば純朴でまっすぐな青年だった。
『ここじゃあマルミの姐さんがボスだ。言われた通りにするぜ』
雇用主の意向に沿って動き、身勝手なことはせず、言いつけはちゃんと守る。
『粗雑者だが、よろしく使ってやってくれ』
そういってセイコは朗らかに微笑んでくれた。
よくよく考えてみれば、この心構えがなければ用心棒は務まるまい。
ところで……男なのに“セイコ”って変わった名前よね?
ストレートに訊いてみたら、セイコは笑顔で明かしてくれた。
ありがちな“聖子”ではないらしい。
『ガキの頃もよくからかわれたもんさ。おれの名前は漢字で書くと静かなる虎と書いて“静虎”なんだよ。落ち着いた漢になってほしいってさ』
なるほど納得、確かにセイコは落ち着いている。
虎とは思えないくらい人懐っこいのも彼の美徳だと思う。
もう少し言葉遣いとか礼儀を叩き込めば、一流の営業にできそうな……いけないけない、マルミは教育係の習性が疼いてしまった。
そして――マルミ・ダヌアヌ。
陣営トップは、あくまでもジェイク・ルーグ・ルー。
内在異性具現化者としてふたつの過大能力に覚醒し、神族としての威光を示せるだけの格と力を有している彼こそが陣営の代表に相応しい。
だが、彼はポンコツなところが多々ある。
現実世界では雑誌のライター記者を生業とし、その傍らでは卒業した母校からの頼みでソージたちeスポーツ部の顧問も引き受けていたという。
仕事はできる。だが、生活能力はゼロだったそうだ。
『ゴミ屋敷だ! って遊びに来たレンちゃんたちに呆れられちゃったよ』
私生活や公的なことはグダグダだったらしい。
なので実務面に関しては、内政役であるマルミが請け負っていた。
ルーグ・ルー陣営の“肝っ玉母さん”が愛称だ。
マルミは未婚なのだが、醸し出す雰囲気にこれでもかというほどオカンの気配が含まれているらしい。ツバサくんとタメを張ると言われている。
四神陣営の二大オカンと呼ばれる始末だ。
『そんなこと言ったら……ツバサも未婚でしかも男なんですけど!?』
この評価にツバサくんは憤慨していた。
マルミは大して気にしていない。自分がオカン気質なのは高校生の頃に気付いていたし、オカンよろしく誰かの世話を焼くことも好きな性分なので、面と向かって言われようが陰で囁かれようがお構いなしだ。
ツバサくんもそういうところはあるのではなかろうか?
明らかに適正体重を越えている豊満なぽっちゃり体型の美女、とマルミ自身は思っている。デブという誹りも甘んじて受けよう。
ただし――命の保証はしない。
この体格でオカンらしい格好をすると、本気オカンになってしまう。
なので、VRMMORPG時代にゲームマスターを務めていた頃からメイド服をまとうようになっていた。若干、クロコに感化されたのもある。
以来、陰で「ロボコ」と呼ばれるようになった。
令和に活躍した可愛いヴァーチャル動画配信者に同じ名前の方がいたので気を良くしたマルミだが、後日こんな指摘された。
言いにくそうなレオナルドくんの顔は覚えている。
『その人は“ロボ子さん”、マルミ先輩のあだ名は“ロボコ”……』
別の人です、と苦虫を噛み潰した顔で教えてくれた。説明する間、レオナルドくんは決して目を合わそうとしなかった。
……どこが違うのか? 未だにマルミはわからない。
以上マルミを筆頭にこの5人がルーグ・ルー陣営として、その拠点と帰らずの都を守る防衛任務を任されている。
代表であるところのジェイクは絶賛不在中だ。
不在という表現は可哀想なので、この戦争に肖って出撃中と言い直そう。愛しい女を殺した仇敵を討つために敵討ちの真っ最中である。
マルミがまとめ役となり、ソージ、レン、アンズの高校生トリオを指揮しつつ、穂村組の用心棒セイコの手を借りて奮闘中。
この5人で、バッドデッドエンズの侵攻を食い止めていた。
しかし……かなり旗色が悪い。
バッドデッドエンズは二人、ルーグ・ルー陣営は五人。
双方ともに頭数に入っている者は総じてLV999。力量の差に歴然としたものはなく、言い方は悪いかも知れないがドングリの背比べといったところ。
2対5ならば、数でこちらが有利である。
ところが、これが7対5と形勢逆転されてしまったのだ。
原因はオセロットという少年にあった。
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№10 暴食のフラグ――オセロット・ベヒモス。
どう見ても痩せた中学生の少年だ。
同年代と比べれば明らかに痩せすぎである。こういう子を見るとマルミは必要以上に手料理を振る舞いたくなってしまう。いつも倦み疲れた表情をしているのも保護欲をそそられてしまう。
我ながら、やっぱりオカンなのかも知れない。
ちゃんと肉がついていれば美少年なのに……と他人事ながら残念でならない。
そんな痩身を隠すべく、ダブッとしたパーカーを羽織る。
このパーカーはあまり見ないデザインなのだが、至るところにジッパーがあしらわれている。どうやら彼の過大能力に関係したものらしい。
オセロットの過大能力――【万物を暴食する果無の胃袋】。
無機物や有機物を問わず、オセロットは万物を喰らい尽くす。
食べたものすべてを我が身の滋養にできる過大能力。パーカーのジッパーに見える部分、あれらはすべてオセロットの口である。
顔にある持ち前の口とは違う口……別口といっていいのか?
いざとなれば無数の口を一斉に開いて、触手のように伸びながら噛みついてくる。戦闘と捕食が一体となった様は野獣の如しだ。
この過大能力とは別に、オセロットには特異な点があった。
彼の中には――5人の別人がいる。
クロウが戦ったベリルという毒蛇龍とは異なるケースだ。
ベリルは少年期のいじめが原因で精神が歪み、人格が分裂して多重人格となったようだが、オセロットは本当に別の人間を宿していた。
何らかの方法で、五人の少年を体内に住まわせていたらしい。
オセロットは食べに食べて栄養を蓄えてきた。
これを血肉に変えて体内の5人に分け与えることで、全長1㎞に達する5体の巨大な獣を生み出し、還らずの都を壊すべく嗾けてきたのだ。
俊敏に動く巨大な質量はそれだけで凶器となる。
ひとつの山や島に匹敵する量感があれば尚更、移動するだけで兵器だ。
彼らの一歩は悪意がなくとも世界を蹂躙する。
あの想定外の巨体を前にすれば、あらゆる防備が紙の盾に等しい。
いかに防御結界が堅牢でも役に立つまい。
マルミはざっと概算したが、彼らの運動エネルギーで突撃されれば防御結界はぶち破られ、そのまま勢いに乗って還らずの都も押し潰されるだろう。
牛の角と特徴を備えた肉食獣――ベヘモット・ベヒモス。
鰐や山椒魚に見える爬虫類――ベヘモド・ベヒモス。
象やマンモスに似た体格を持つ――ベヘーモス・ベヒモス。
空を飛ぶ勇壮なドラゴン――バハムート・ベヒモス。
天を舞う白鯨にしか見えない――ルティーヤー・ベヒモス。
ベヒモス五兄弟とでも茶化せばいいのか?
オセロットを長男に数えれば六兄弟になるのか?
六兄弟と言えば松の字で揃うポンコツ兄弟を思い出すのはマルミだけか?
とてもじゃないが笑える状況ではない。全長1㎞を越える怪物が五体も押し寄せる光景は天変地異どころではなく、激甚災害を越えた超絶災害である。
五匹の巨大な獣が思い思い進撃してくる。
巨人どころの話ではない。
厄介なことにこの巨大獣たち、すべてLV999なのだ。
1000mの規格外な巨体が闊歩するだけで。激甚災害を引き起こす生きた天変地異。おまけに一体一体がこちらの主戦力とタメを張る。
食い止めるだけで精一杯だった。
「やっと、抑え込めた……この時を待ってたんだッ!」
巨大な象のような巨大獣ベヘモドと戦っていたソージは、両脚の装甲パーツがボロボロになるまで蹴り込み、ようやく相手の動きを封じていた。
ベヘモドが前脚を崩した瞬間、空へ駆け上がっていく。
その途中、道具箱からガチャガチャと様々なパーツを呼び寄せる。
ソージの過大能力――【壊れた荒野より英雄は立ち上がる】。
周囲のガラクタから高性能な兵装を造れる工作系の能力だ。
その力で両脚にキックを加速させる装置や、蹴ったインパクトの瞬間に爆発を起こす武装を身に付ける戦闘スタイルを得意としていた。
ベヘモドの頭上に飛んだソージは、両脚を揃えて追加装甲をまとう。
それは小山のような鉄槌だった。
先端の尖った四角錐、逆ピラミッドのような形を取る。
鋼鉄を折り重ねた漆黒の鉄槌が、ベヘモドの頭へと落ちていく。
「――ダンスカー・プレッシャーッ!」
ソージが自己流の技名を叫ぶとと、突き落とされた鉄槌はベヘモドの頭どころか上半身まで吹き飛ばし、地面を抉った直後に大爆発を起こした。
残されたベヘモドの下半身も爆発で吹き飛ぶ。
1000㎞の肉体を滅ぼす爆発は、燃えるキノコ雲となって空を焼いた。
その大爆発からソージが戻ってくる。
両脚を上半身へ折り畳んで両腕で組む、水泳高飛び込みさながらのポーズで回転しながら戻ってきたソージは、空中で油断なく体勢を立て直す。
五匹の巨大獣――その一角を見事に落とした。
「……クソッ、結局これの繰り返しか!」
しかしソージの表情は冴えず、爆発の向こうに悪態をついていた。
御覧の通り、本気を出せば巨大獣は倒せる。
ただし、そのためには全力全開の超必殺技を繰り出す必要があり、それを発動させるための隙をこじ開けねばならず、体力が目減りするのを覚悟して全身全霊を賭した一撃を叩き込まねばならない。
そこまでせねば全長1㎞のバケモノは仕留められなかった。
そして最悪なことに――仕留めきれない。
爆発の奥、煙の彼方に垣間見えるのは巨大すぎる肉塊。
肉塊の山脈と呼ぶしかない代物だ。
その全貌は計り知れず、大きさの概算も計りたくない。なんとなくわかるのは、五匹の巨大獣を掛け合わせた総重量よりも目方があるだろうということ。
絶えず蠢く肉塊は、様々な生物を形作るため胎動する。
それらの生物は――五匹の巨大獣だ。
「また……僕の友達を……殺し、たな……?」
肉塊の山脈、その山頂にはオセロットが埋もれていた。
上半身は彼のままだが、下半身が異様というしかないほど膨張を繰り返し、五匹の巨大獣をいつでも生み出せる準備を整えていた。
「いくら、殺したって無駄……だ、よ、僕の友達は……不滅、なんだから」
巨大獣たちにとって、オセロットの肉塊は揺りかごだ。
「殺られても殺られても……僕の友達は何度だって立ち上がる……!」
最初に巨大獣が出現した時も、この途方もない肉塊が現れた。
あれもオセロットが変化したもの。食べに食べた森羅万象を血肉へと変換することで巨大獣を孕む、とてつもなく巨大な胎内だったらしい。
再び巨大な肉塊と化したオセロット・ベヒモス。
巨大獣は倒せるが、すぐに肉塊からおかわりが追加される。
このため倒しても倒してもキリがないのだ。
おまけに――肉塊と化したオセロットまで進撃を始めていた。
肉塊の形を調整しており、五匹の巨大獣を融合させた合成獣のように形態を変えていた。何本もの脚でこちらに踏み出してくる。
肉塊からは巨大獣たちの頭が生えている。
それぞれ首を伸ばして大地へ齧りつき、栄養補給を欠かさない。
還らずの都を崩すべく、更なる肥大化を遂げながら躙り寄っていた。
もはや全長5㎞でも収まらない図体。重々しい山脈が動いているようなもので、地面がそちらに傾いている錯覚を覚えてしまう。
反面フットワークは重く、ズリズリと重石を引き摺るような歩みだ。
何であれ脅威なのは間違いない。
あんな巨大獣とは比較にもならない大重量で突っ込んでこられたら、いくら強力な防御結界であっても一溜まりもない。
絶対阻止すべきなのだが――現状ままならない。
五匹の巨大獣、その進撃は辛うじて食い止められてはいる。
食い止めるのが精一杯であり、ジリジリと圧されている不利な状況は認めざるを得ない。「優勢です!」なんて見栄を張る余裕はなかった。
前述の通り、巨大獣の数は五匹。
それを食い止めるのは四名、ソージ、レン、アンズ、セイコ。
LV999のパワーを発揮し、島や山に等しい大質量を持ちながら、野獣の俊敏性を損なわない巨大獣は、LV999の実力者でなければ倒せない。
一人で二匹を相手取るのは難しい。
保って数分、それ以上は確実に押し負ける。
巨大獣の相手を務める戦力が、どうしても一人足りないのだ。
「――流れろ七星!」
サムライ娘のレンが愛刀ナナシチに呼び掛ける。
小柄な彼女を越える長さの大太刀は、普通の刀と比べたら何倍もある幅広な刀身を持っており、そこに七つの宝玉がはめ込まれていた。
レンの過大能力――【七つの宝玉に七つの神が宿る】。
七つの宝玉には七つの力が宿っている。
宝玉は少しずつ“気”を集め、宝玉に宿した七つの奇跡を思い通りに引き起こすことができる。そして、宝玉に宿る七つの力はレンの自由に決められるという、多様な使い方が望める過大能力だ。
七つの奇跡を同時発動させれば、瞬間的に爆発的なエネルギーとなる。
愛刀ナナシチから迸るエネルギーの奔流。
それは凝縮された“気”であり、長大にして強靱な刃となった。
「てぇりゃあああああああああああーッ!」
示現流の「チェストォーッ!」という掛け声の方が似合いそうな、大上段からのまっすぐな振り下ろし。輝く“気”の刃が空を走る。
その先にいるのは巨大獣の一匹、ルティーヤー・ベヒモス。
雲海を泳ぐ白鯨とでもいうべき空飛ぶ巨大魚だ。
レンの真っ向唐竹割りな斬撃に怯む様子もなく、ルティーヤーは真正面から突っ込んでくる。レンも臆することなく、大太刀を振るったまま突き進む。
愛刀ナナシチの刃がルティーヤーを断ち切る。
正中線から、魚を左右の半身へ切り分けるようにだ。
愛刀ナナシチから“気”の刃をフルパワーで放出し続け、ルティーヤーを真っ二つに斬り裂いていき、頭から尾までをスッパリ半分にする。
しっかり者のレンは置き土産を忘れない。
ルティーヤーの肉や骨を断つ際、愛刀ナナシチから奇跡の力を付与することで、数秒後に爆発するよう仕掛けておいたのだ。
レンが離れた瞬間、巨大魚ルティーヤーは爆発四散した。
「倒せることは倒せるけど……」
レンは勝利を喜べず、悔しげに爆発を睨みつける。
今の一撃で愛刀ナナシチに溜めた“気”を著しく消費してしまった。彼女の過大能力は多彩に使える分、充電が必要という難点もあるのだ。
木っ端微塵に吹き飛んだ巨大魚。
すると、オセロットの肉塊が増殖分裂する。
そこから現れたのは、新しいルティーヤーだった。かれこれ何匹目になるかわからないが、レンたちが倒した巨大魚はもう二桁は数えたはずだ。
「……これじゃあキリがない! 無間地獄だ!」
苛立ちも露わにレンは怒鳴るも、それを上回る叫びが轟いた。
「――レンちゃん危ない!」
叫んだのは友達思いのアンズだった。
彼女自身も鰐のような巨大獣ベヘモド・ベヘモスとの一騎打ちに臨んでいるが、野生児ならではの勘が働いて警告を寄越したらしい。
親友の声にレンも反射的に身構える。
大太刀を握り直すと、我が身の盾にするべく正眼に構えた。
そこに――ドラゴンが突っ込んでくる。
ルティーヤーの爆発を突き破ってレンに襲い掛かったのは、巨大な西洋龍の姿をした巨大獣バハムート・ベヒモスだった。
山の峰のような角を突き込まれるも、レンはすんでの所で防いだ。
龍の角と大太刀が鎬を削り、火花が飛び散る。
「今度はこいつがフリーか……補欠がいるのが厄介だ!」
小学生と間違われかねない小柄な美少女と、山を見紛うほどの巨体を持つ空飛ぶドラゴンの鍔迫り合いは、絵空事のようにしか見えなかった。
だが、レンはバハムートに一歩も引けを取らない。
ルティーヤーを倒した直後、息の乱れを整えながら立ち向かう。
こちらの四名が、あちらの四匹と一対一で戦う。
すると巨大獣が一匹余るため、これがフリーとなって還らずの都を破壊しようと戦線を押し上げてくる。ソージたちはその進軍を押し止めるため、自分の戦っている相手を大急ぎで撃破して対処しようとする。
ここで四対四の構図になるのだが、オセロットがすぐさま巨大獣の追加を寄越すので、あちらにはフリーの戦力が必ず一匹いるのだ。
今し方、レンは巨大魚を打ち倒した。
すると間髪入れず、フリーだったバハムートがレンに戦いを挑む。
この隙にオセロットはルティーヤーを新たに生み出し、こいつをフリーにすることで還らずの都へ近付かせようとする。
――さっきから延々とこんなことを繰り返していた。
イタチごっこにも程がある。
オセロットが繰り出してくる巨大獣が数の上で優勢なのもあるが、問題なのはいくら倒しても終わりが見えないこと。こちらは激しい戦闘を休みなく強いられ心身ともに消耗が激しく、疲れが着実に響いてきていた。
唯一の救いは――五匹から増えないこと。
オセロットなりのマイルールか、あるいは独自の制限なのだろう。
必ず五種類で五匹、それ以上は登板させなかった。
もしも同種の獣を何匹も生み出すことができ、この地を巨大獣で埋め尽くすような真似をされていたら、マルミたちは即効アウトだったはずだ。
かといって状況がよろしいわけではない。
侵攻は食い止めているが、徐々に圧されている事実を認めねばならない。
……え? マルミは巨大獣と戦わないのかって?
戦況分析に頭を悩ませているばかりではない。マルミも死闘の直中にあり、巨大獣まで手が回らないのは面目ないところだ。
№09 凄鬱のフラグ――サバエ・サバエナス。
彼女を抑える役目は、マルミを置いて他にいない。
弟であるオセロットも痩せているが、姉のサバエは輪をかけて病的に痩せている。ふくよかなマルミの手足と比べたら、鶏ガラみたいな細さだった。
身を装うのはゴシック調のドレス。
ドレスと言っても葬祭へ参加するための喪服調だ。長い髪は綺麗にまとめて、ドレスに合わせた葬礼用の帽子に収めている。
帽子からは黒いヴェールを垂らして、顔を隠していた。
闇色のヴェールがはためいて細い鼻が露わになる。
それほどの大音声を張り上げるサバエは、呪いの歌声を迸らせていた。
サバエの過大能力――【我が囁きにて心奥の劇毒よ沸き立て】。
聞いた者の気持ちを陰鬱にさせる声の能力だ。
単純に気落ちするだけなら、ちょっとした弱体化を誘うに過ぎない。
しかしサバエの声は――度が過ぎる。
細胞の一片までもが生きる気力をなくし、遺伝子さえも明日を迎える意欲を失い、聞いた者が精神的かつ肉体的にも自ら死を選ばざるを得ないほど追い込みをかけるという、常軌を逸した耐え難い鬱をもたらす声だった。
そんな声で歌われたら殺戮兵器となる。
弱体化をとことん突き詰めた、究極の呪殺系魔法みたいなものだ。
たとえ鼓膜を破って耳が聞こえなくても関係ない。
すべてを呪い殺さんとする彼女の声は、あらゆるものに浸透する。骨伝導どころの話ではなかった。無理やり皮膚から吸収させられるような感じである。
意識にも、肉体にも、精神にも、血肉にも……。
魂魄さえも逃れることはできず、耐性を上げて抵抗するしか防御策はない。
それでも防げるのは同格のLV999のみ。
これより下位の者はサバエのささやかな呟きを耳にしただけで、この世のすべてに絶望した鬱へと陥り、干涸らびながら死に崩れることだろう。
そんなサバエが魂を込めた――絶唱。
肉塊山脈となったオセロットの頭上に浮かび、最愛の弟を守るため外敵をことごとく呪い殺すための歌声を、喉が張り裂けるまで張り上げていた。
彼女の歌声には指向性がある。
弟のオセロットや、五匹の巨大獣には影響を与えていない。
それ以外には容赦なく呪いの声が届くように、自らの歌唱力で調整していた。声に指向性を持たせるなど、神族だからこそできる神業だ。
ソージたちは巨大獣との乱闘でてんてこ舞い。
ただでさえ疲労感増し増しなところに、サバエから呪いを浴びて抵抗に失敗しようものなら、身動きひとつ取れないネガティヴ状態なりかねない。
一人倒れれば二人、二人倒れれば……あっという間に雪だるま式だ。
そうなれば大惨事となってしまう。
これを未然に防ぐため、マルミも懸命に頑張っていた。
マルミの過大能力――【幸福と祝福の恩寵は賛美歌とともに】。
幸福と祝福を与える歌声を発する過大能力だ。
マルミの声には素のままで人を元気づける強化効果があり、その声で賛美歌を唱えれば聞いた者に多大な加護を授けることができる。
ゲームに例えるなら全能力強化。
精神と肉体、その両方を鼓舞して自身の限界を超えたパフォーマンスが発揮できるように後押しできる。後方支援に秀でた補助系能力である。
サバエの歌声が陰ならば――マルミの歌声は陽。
呪殺の歌声がすべての要素をマイナスへ陥れるのならば、祝福の歌声はあらゆるものをプラスへと導いていく。
能力系統こそまったく同じものだが、その効果は正反対の極みだ。
片や聞いた者を呪い殺し、最悪の絶死のもたらす歌声。
片や聞いた者を祝い励まし、最高の恩寵をもたらす歌声。
だからこそ――相殺できる。
マイナスにプラスをぶつけてゼロにするようなもの。
ソージたちに絶望を知らしめることで心を折ろうとするサバエの呪殺歌を、マルミの賛美歌で打ち消すことができるのだ。
しかし誠に遺憾ながら、中和するのがやっとである。
悔しいが、過大能力のパワーではサバエに軍配が上がっていた。
マルミの賛美歌で巨大獣たちと戦うセイコたちを守ることはできるが、サバエの歌を跳ね返す、あるいは押し返すことはできないのだ。
ちょっとでも気を緩めれば、力負けしてマルミが呪い殺されかねない。
さっきから歌声の力比べが続いている。
そのせいか、ほんの少しだけサバエについてわかったことがあった。
彼女はすべての能力を声に集約している。
またゲームに例えてしまうが、もしも各種能力のパラメーター数値を自由に決められるとしたら、サバエはそのほとんどを声に費やしていた。
裏を返せば、歌声以外はすべて低レベル。
技能や性能がLV999の最低水準を満たしていないのだ。
そこでマルミは歌ではないものでも勝負を挑む。
こう見えてマルミは、現実でも健康のために太極拳を習っていた。真なる世界に来てからは、達人級になるまで修練も重ねてきている。ツバサやレオナルドに一歩劣るも、一流の武道家として戦うことができるのだ。
マルミはサバエへ接近戦を仕掛けていく。
賛美歌を歌いながら飛行系技能で高速飛行すると、サバエの呪殺歌を打ち消しながら間合いを詰める。肉弾戦ならばマルミに分がある。
一度手合わせしたサバエだが、肉体的な戦闘能力は皆無に等しい。
その鶏ガラみたいな身体をバラバラにして、呪いを撒き散らす喉と肺を潰してでも負けを認めさせてやる! とマルミは意気込む。
だがしかし――邪魔が入るのだ。
「……お姉ちゃんに……手出しは、させない……よッ!」
マルミの前にオセロットが立ちはだかる。
還らずの都へ突き進む肉塊山脈はそのままに、山頂から生えている上半身をろくろ首のように伸ばしてくると、マルミに襲い掛かってきた。
この攻防も飽きるほど繰り返してきた。
『退きなさい!』
賛美歌を止めれば呪殺歌がアンズたちに降りかかる。喋るわけにいかないマルミは眼力でそう訴えた。オセロットはこの目配せを読み解く。
「退かない……お姉ちゃんに、酷いこと、するな!」
うがあっ! とオセロットは子供らしい気合いで吠えた。
彼のパーカーのジッパーが開き、様々な獣の顎へと変わる。獣の顎は触手のように伸びて、マルミの豊満な肉に噛みついてきた。
噛まれては適わないマルミは、迫ってくる顎を横からビンタを食らわせたり、顎をかち上げるように蹴り上げていくつもの口を追い払う。
先にオセロットを倒そうとするも――。
『ウチの弟に手を上げないでくださるかしら!?』
過保護な姉の眼光が口ほどに物を言う、いいや絶叫を上げていた。
サバエは肉塊の山頂から一歩も動こうとしないが、般若の形相で音量のボルテージを上げると、呪詛を煮詰めた調べを叩きつけてくる。
サバエの発する言霊は呪言ともいうべきもの。
すべてを呪い殺す魔性の音色だ。
呪いの言葉を極限まで圧縮、高出力で吐き出したのである。
ソージたちに聞かせている呪殺歌とは比べ物にならない威力で、ドス黒く染まった極太のレーザービームにしか見えない。
全力で打ち消さねば、マルミの心から希望の二文字が消えてしまう。
サバエの呪詛に対抗するため、賛美歌の出力を上げて防ぐことに注力する。こうなるとマルミに牙を剥いてくるオセロットの口に対応できなくなり、彼の間合いから大きく飛び下がることを余儀なくされる。
サバエもオセロットも倒せず、牽制することさえままはならない。
結局、呪殺歌を防ぐのが関の山だった。
形勢を変えるため、レンたちに加勢をして巨大獣と五対五のバトルを挑んだりもしたのだが、あちらの姉弟に阻まれてしまった。
マルミはサバエとオセロットを一人で引き受けている。
仲間たちに累を及ばせないためにだ。
一方、あちらもマルミを「厄介な女」と認識したのか、姉弟二人掛かりでこちらの行動を抑制している節が見受けられた。
互いに相手の動きを封じているつもりなのだ。
この苦境を打破できず、マルミはやきもきしっぱなしだった。
過酷だ――おまけにジリ貧になりつつある。
一見すると膠着状態のようだが、頭数で勝っているサバエとオセロット姉弟の方が優勢だった。ジリジリとマルミたちを土俵際へ追いやっている。
オセロットの巨大な肉塊山脈。
それは徐々にだが、確実に還らずの都への距離を詰めていた。
マルミたちの防衛ラインが後退させられている。
手が足りない――切実な問題だった。
せめて後二人、LV999の戦力がいれば数の上では対等だ。
一人がフリーの巨大獣を引きつけ、もう一人がオセロットを抑えててくれれば、マルミは一気呵成にサバエを倒して状況を逆転できる。
ダメ元でツバサくんに打診してみよう。
マルミは不肖の教え子な情報官を通じて、援軍要請に踏み切った。
この刹那が――油断となったらしい。
『何か企んでいるようだけど……させるわけないでしょう?』
「お姉ちゃん……僕も、一緒に殺るよ!」
サバエとオセロット、姉弟がツープラトン攻撃を仕掛けてきた。
無限大とも思える呪詛をこれでもかと凝らした超特大の球体。油を混ぜた墨汁のような表面には、怨嗟の唱える亡者たちの面影が浮かんでは消える。
元気玉? とマルミは首を傾げてしまった。
だとしたら、これはあらゆる負の感情をかきあつめたものだろうから、元気ならぬ減気、減気玉とでも名付けるべきものだろう。
ありったけの呪詛を塗り込めた爆弾だ。
あんなものが炸裂したら神族でも塵しか残るまい。
是が非でも防がないと! とマルミが身構えたその時である。
あらぬ方向からオセロットの伸ばした獣の顎が現れ、マルミを拘束するかのように全身に絡みつき、牙を剥いて噛みついてきた。
油断した……勝手に「そうだ」と思い込まされていた。
オセロットの触手のように伸びる口。
てっきりパーカーのジッパーになった部分だけが伸びるのかと、そちらばかりを警戒していたら、肉塊から何本も伸びてきたのだ。
あの肉塊だってオセロットの一部、何もおかしくはない。
そう勘違いしていたマルミが愚かなだけだ。
咄嗟に肉体を硬化させる気功系技能“硬気功”を使う。
肉を噛み千切られることは阻止できたが、触手のように伸びた部分がマルミの手足を縛り上げようとウニョウニョ蠢いていた。
まだ振りほどけるが、オセロットに構っている暇はない。
それよりもサバエへの対応が先決だ。
あんな呪詛の爆弾、放置したらマルミたちは全滅である。
なんとしてでも爆発するのを阻止しなければならないのだが、オセロットに拘束されつつある今、迅速に対尾することは難しそうだ。
かといって――相殺できるのアレ?
命懸けで挑んだとしても怪しい難易度、と直感が囁いている。
どうする? なんて迷っている暇はない!
太っ腹な腹を括ったマルミは、たとえ寿命が残り一年になろうとも、全身全霊全精力を使い果たしてでも、あの呪詛爆弾を無効化する覚悟を決めた。
深呼吸をして、肺活量の最大まで空気を吸い込む。
最大出力を超えた賛美歌で、呪詛爆弾を迎え撃つつもりだった。
マルミが覚悟を決めた――その時である。
盛大なファンファーレが健闘を称えるように鳴り響いた。
ソージたちどころか巨大獣も呆気に取られ、サバエも自らの歌声をかき消されたことに驚愕し、オセロットもマルミの拘束を緩めるほど唖然とした。
万人の注意を引くだけの何かがあった。
そちらに注目せずにはいられない、神懸かり的な魔力のようなものだ。
唯一、マルミだけがこの機会を逃さなかった。
ファンファーレから壮大な交響曲が始まり、世界へ響き渡る。
この音楽はマルミの声と同じ、命ある者に前へと進む活力を与える強化効果が秘められていた。聞いた者の心に働きかけ、気力を賦活化させるのだ。
どこからともなく聞こえてくる交響曲。
演奏はマルミが歌う賛美歌に調子を合わせてくれていた。
交響曲がマルミの賛美歌の効力を倍加させる。
演奏付きの賛美歌は、呪詛爆弾をいとも容易く消し去った。
「…………なんですって!?」
今度こそマルミを完膚なきまでに抹殺するため用意した、とっておきの呪詛を目の前で消されたサバエは歌を忘れて呻いている。
自信を打ち砕かれたようなショックを受けたらしい。
その間にも交響曲は奏でられ、マルミは賛美歌を歌い続ける。
これまでは呪殺歌を相殺するのが精一杯だった。
しかしサバエが歌うのを止めた上、マルミの賛美歌をパワーアップさせる交響曲の効果により、ソージたちに強化が行き渡った。
マルミの過大能力は本来こう使われるべきなのだ。
ここぞとばかりに美声で応じるマルミは賛美歌に効果を上乗せする。
ソージ、レン、アンズ、セイコの全能力を上昇させるだけではなく、疲れ切った身体を癒やす回復効果も付与したのだ。
これによりルーグ・ルー陣営は息を吹き返した。
マルミは賛美歌を歌ったまま、ソッと背後を振り返ってみる。
そこにいたのは――無人の楽団を率いる一人の指揮者。
まだ幼気な少女である。
人懐っこい笑みを浮かべた少女は、指揮者の正装をちょっとメルヘンにしたコスチュームで装い、右手に持った指揮棒を情熱的に操っていた。
長い金髪は二つに結われ、指揮棒を振るうとともに暴れている。
ハトホル一家の六女――イヒコ・シストラム。
彼女の指揮に従うのは、奏者のいない無人の楽団だ。
オーケストラを開催するために必要な楽器が取り揃えられており、イヒコを中心に円陣を組むよう取り囲んで、独りでに演奏していた。
イヒコの過大能力――【一柱が奏でる音霊の交響曲】。
マルミの過大能力と似た、音を操る系統の能力だという。
イヒコの指揮通りに演奏してくれる楽器の精霊を召喚し、強化や弱体化を付与したり、自然や世界に働きかける魔法の音楽を奏でるらしい。
神々の恩寵をもたらすマルミの声とは相性抜群である。
彼女のサポートがあればサバエにも引けを取らない。
両眼を閉じて指揮棒を振るうイヒコが、マルミの視線に気付いたのかうっすら目を開けた。小さなウィンクでアイコンタクトを伝えてくる。
『ツバサさんに言われて応援に来ました! 弱っちいけど頑張ります!』
『弱っちいなんてとんでもない……』
大助かりよ! とマルミは親指を立てて感謝を示した。
突然現れたイヒコによってマルミの歌声の力が増幅したことにより、サバエとオセロットに少なくない動揺を誘うこともできた。
「音系の過大能力……どう見ても幼女だけで油断禁物ということかしら」
サバエはイヒコの愛らしい容姿に惑わされない。
冷静に受け止め、警戒心を強めていた。
「お姉ちゃん、大丈夫……だよ、あっちも二人……こっちも、二人だ」
対等になっただけ、とオセロットは励ますように言った。
次の瞬間――鮮烈な爆発音が劈いた。
「ッ!? ルティーヤー……どうして、また死んでるの!?」
オセロットは悲しげな声で呟いた。
彼が音のする方へ振り向けば、巨大魚が破裂していた。
先ほどレンが愛刀ナナシチで斬り捨てたが、オセロットの肉塊から復活して宙を泳いでいた。レンはルティーヤーを倒した直後、バハムートに挑まれていたので、今はあの巨大魚がフリーだったらしい。
その巨大魚が、膨らみすぎた風船よろしく弾け飛んだ。
爆発する寸前を垣間見たが、鯨の面影がないくらいパンパンでまん丸に膨れ上がっており、そこから跡形もなく爆発四散していた。
身体の内側に膨大なエネルギーを叩き込まれたのだろう。
逃げ場のない破壊エネルギーが巨大魚の体内で爆発的に膨張し、球体になるまで膨らむも耐えきれず、弾け飛んでしまったようだ。
内に置く打撃――卓越した武道家のみが使える打撃の極意だ。
レオナルドから教えられたのでマルミも使える。
誰かがそれを使ったらしい。セイコやソージだろうか?
いや、どうやら違う。
爆発した巨大魚の向こう側に見慣れぬ影が見えた。
現れたのは――小柄な少年だった。
イヒコより年上、中学生くらいの身の丈である。
愚直ながら獰猛そうな面立ちは、若い狼を連想させる。荒々しい髪型も狼の冬毛、あるいはたてがみのようだ。シャツ、パンツ、ジャケット、ブーツ……どれもアーミー系で揃えており、格闘家らしい雰囲気を漂わせていた。
握った拳はまだ小さいが鍛えられており、白い蒸気を立ち上らせている。
彼の拳が巨大魚ルティーヤーを屠ったのだ。
ハトホル一家の次男――ヴァト・アヌビス。
ツバサくんが息子として可愛がっている少年である。
顔見せで会った時はイヒコと同い年、まだ10歳くらいの小学生だったはずだが、今の彼は明らかに中学生くらいまで成長していた。
発する気配も子供のものではなく、LV999に負けず劣らない強さだ。
ヴァトの過大能力――【顕現せよ清然たる精霊の巨神】。
濃密な“気”で構成された、強力な白亜の巨神を自由自在に操る過大能力だと聞いているが、それを自身へ取り込んだように見える。
これにより一時的な肉体の超強化をできるのかも知れない。
まだ未成熟な子供たちはLV999になれない。
ヴァトはそこを「無理を通して道理を引っ込める」を地で行く、力任せかつ強引な方法で瞬間的にLV999の壁を突破していた。
「――ギガスACT.2」
ヴァトがそんな風に囁く声が辛うじて耳に届いた。
まだ未熟な子供たち――彼らは幼年組と呼ばれている。
みんな神族でLV900越えを果たしている子もいるが、「この大戦争では前線に立たせない」という見解で統一されていた。
これは各陣営の代表のみならず、大人たちの総意である。
ウチの子に危ないことさせられるか! という保護者目線からだ。
マルミだって同感である。
ソージやレンにアンズが、もっと幼かったら同じ方針を選んだだろう。
だが――何事にも例外はある。
幼年組の手を借りる可能性さえ無きにしも非ず、という窮地に立たされる懸念もあった。猫の手も借りたい危機が迫るかも知れない。
彼らも立派に過大能力に覚醒している。
幼年組の能力が戦局を左右することもあり得るだろう。
現にククルカン陣営で行われた戦いでは、本人が望むと望むまいとに関わらず、ミコちゃんという幼年組が最前線に出てしまったらしい。
そのおかげでカズトラくんは勝利したという。
(※第387~388話参照)
ツバサくんやジェイクを始めとした各陣営の代表やGMも、明言こそしないものの子供たちを参戦させるのは「極力避ける」という暗黙の了解だった。
非常事態となれば致し方ない、と諦念も含まれていた。
だが、おかげでマルミたちは命拾いした気分だ。
『マルミさん、聞こえますか?』
情報官アキを介して、ツバサくんからの通信も届いてくる。
『ツバサくん? 援軍ありがとう!』
無理を言ってごめんね! と開口一番マルミは謝った。
幼年組の出撃には躊躇したはずだ。母性本能フルドライブなオカン系男子の彼にしてみれば、苦汁の決断だったのは想像に難くない。
そんな気持ちを圧して、ツバサくんは子供たちを寄越してくれた。
感謝しない方がどうかしている。
辛そうなツバサの声が通信越しでも伝わってくる。
『……いえ、背に腹は変えられません。イヒコはマルミさんの過大能力をサポートできます。できるだけ後衛に回してやってください。ヴァトは3分間という制限付きですが、一時的にLV999になることができます』
イヒコの護衛役も兼ねている、とツバサくんに暗に仄めかされた。
『OK、3分以内に決着をつけるから』
なるべく子供たちを危険な目に遭わせたくない。
通信の端々からツバサの心配性がヒシヒシと伝わってきたので、マルミは迅速に片付けることを約束した。
我が身に代えてもイヒコとヴァトを守る、という意志も付け加える。
『……ウチの子たちをよろしくお願いします』
『こちらこそ……ありがとう、本当に助かったわ』
これで勝算の目処が立った。
まずイヒコの演奏サポートを受けたマルミが、賛美歌でサバエの呪殺歌を圧倒しつつ、ぶん殴って張り倒してでも彼女を戦闘不能に追い込む。
その間、五匹の巨大獣を始末してもらう。
あちらにはヴァトが加わったことで、五対五で数字的にも対等だ。ヴァトの強さも折り紙付き、既に巨大獣を一度は撃破している。
ただし3分間の限定付きだけど……。
サバエを倒し、巨大獣を片付ければ、残るはオセロットを残すのみ。
限界知らずで巨大獣を次から次へと生み出す、あの肉塊の山脈を完全破壊するのは骨が折れそうな仕事だ。しかし、マルミたち7人が総掛かりで最大攻撃を叩き込めば、何とかなりそうな気がしないでもない。
恐らく――オセロットは尋常じゃない再生能力を持っている。
際限なく巨大獣を生めるのは、能力の一端なのだろう。 肉片を少しでも残せば、そこから無限に増殖を繰り返して復活すると見た。
それを考慮すると、一撃であの肉塊山脈を消し去りたいのが本音だ。
……あのボリュームの肉塊を一撃で?
マルミたちの総攻撃ではちょっと怪しいかも知れない。内在異性具現化者が五人掛かりならあるいは……と危ぶむレベルである。
そこへ――爆撃が投下された。
これにはマルミも不意打ち過ぎて面食らってしまう。
爆撃を受けたのはオセロットの肉塊である。
マルミたちの背後、還らずの都の方角から雨霰のように火力が飛んでくる。大型の砲塔による砲撃、発射式の榴弾、大型ミサイル、ロケットランチャー、大型機関銃による弾幕……戦艦並みの火砲が鳴り止まない。
怒濤の攻撃だが、残念ながら山脈のような肉塊には焼け石に水だ。
オセロットにほんのちょっと「痛っ」と顔をしかめさせた程度である。多分、軽めに小突かれたくらいのダメージも与えていない。
一体誰が? とそちらに振り向いたマルミは顔面蒼白となった。
高らかな汽笛の音が聞こえてくる。
還らずの都から――巨大列車が走ってきた。
従来の電車と比べたら、あらゆる意味で四倍以上の規格を持つ大型車両。その先頭車両(客車を牽引できる機動車両)と連結する第二車両だ。
十両以上ある客車は牽引されていない。
先頭及び第二の車両は、超弩級戦艦並みの兵装で身を固めていた。
猛然とした勢いでこちらに激走しながら、砲撃を繰り返しているのだ。
全界特急――ラザフォード号。
ルーグ・ルー陣営に駐屯してくれているスプリガン部隊、その部隊長を務めるラザフォード・スピリットの“巨鎧甲殻”である。
スプリガン族は機械生命体。
彼らは“巨鎧甲殻”と呼ばれる特殊な外骨格を備えており、有事の際にはそれを身にまとうことで従来の数倍から数十倍の力を発揮できるのだ。女性はパワードスーツタイプが多く、男性は巨大ロボに合体変形できるという。
あの巨大列車こそ、ラザフォードの“巨鎧甲殻”に当たるものだ。
元々他のスプリガン族より大柄な“巨鎧甲殻”を有していたラザフォードだが、復活した後にソージの手で改造を施されていた。
二両の列車に変形、大容量化と大出力、新武装を追加……。
完成したのが全界特急ラザフォード号だ。
とある安全地帯に定住していたルーグ・ルー陣営と多くの現地種族は、ある事件でその地を失い、新天地を求めて旅に出るしかなかった。
その旅を支えてくれたのが、他でもないラザフォード号である。
現地種族が生活できる客車と、ルーグ・ルー陣営の拠点設備も兼ねた車両を牽引し、どこまでも走り続けてくれた。彼のおかげで多くの現地種族を連れたまま、キャラバンのような長旅をすることができた。
現地種族を1人も欠けることなく。四神同盟に合流できたのだ。
ラザフォードの功績は計り知れない。
そんな彼が“巨鎧甲殻”を駆って参戦してきたのである
「――戻りなさい! ラザフォードくんッ!」
マルミも歌うのを忘れ、真に迫る絶叫でラザフォードを諫めた。
交通量の激しい道路に飛び出そうとする子供を叱りつけた気分だ。発声に自信のあるマルミだが、予想外の出来事に思わず声が裏返る。
そこから力尽くでドスを利かせたのだ。
自殺行為だ! と無謀すぎるラザフォードへの叱責も兼ねていた。
スプリガン族は亜神族。
神族や魔族に準ずる力を持つ種族で、真なる世界に数多いる現地種族でも頭2つか3つは図抜けている。ぶっちゃけ戦闘能力は高めだろう。
だが、LV999の神族には遠く及ばない。
ラザフォードも“巨鎧甲殻”と合体して巨大ロボに変身できるが、その状態でも強さの指数はLV800半ばくらいだ。サバエやオセロットには到底適わず、マルミたちの援護さえ務まらない。
巨大ロボになったとしても的が大きくなるだけ。
正直、マルミたちも庇ってあげられる余裕なんてない。
無駄死ににしかならないので、「戻りなさい!」と絶叫したのだ。
しかし、ラザフォードは方向転換をしない。
まっしぐらにこちらへと突き進み、砲撃用の兵装を仕舞い込むと先頭車両と第二車両が連結を切り離し、ほんの少し宙へと浮いた。
――合体変形を始めるつもりだ。
鋼鉄の巨神になってもラザフォードに勝ち目はない。
その厳然たる事実を、喉が張り裂けるまで大声で説教してやろうとしたマルミだったが、ラザフォードの変形を目の当たりにして言葉を飲んでしまう。
「……巨大ロボじゃ……ない?」
こんなラザフォードの変形合体は初めて見た。
二両の巨大列車は形を組み替えると、巨大な大砲に変わったのだ。
~~~~~~~~~~~~
数日前のこと――四神同盟の工作者軍団が集まった。
何故か、ツバサの前にである。
呼んだわけではない。彼らが示し合わせるように訪ねてきたのだ。
ハトホル一家 長男 ダイン・ダイダボット。
ミサキの親友 工作の変態、ジン・グランドラック。
クロウの生徒 少年執事 ヨイチ・クリケット。
日之出組社長 大棟梁 ヒデヨシ・ライジングサン。
そして、新規参入のルーグ・ルー陣営からソージ・スカーハ。
あと、穂村組の三悪トリオから、ホネツギー・セッコツインとドロマン・ドロターボも加わっていた。彼らも超一流の工作者には違いない。
他に工作者でないものが二名。
ハトホル一家 次女 ダインの嫁 フミカ・ライブラトート。
ハトホル一家 三女 天災道具作成師 プトラ・チャンドゥーラ。
彼らはツバサの前に座ると、一斉に頭を垂れた。
「…………アニキ、済まん」
重苦しい謝罪を切り出したのはダインだった。
ハトホル一家の長男としての責任感が出てきたダインだが、家族として慣れ親しんできたせいか、最近ではツバサのことをよく「お袋」と呼ぶ。
冗談半分とウケを狙ってのことだ。
出会った頃さながらにツバサを「アニキ」と呼ぶ。
「何事だ? 何か……しでかしたのか?」
真剣な話だと察したツバサは、居住まいを正してダインの懺悔に耳を貸す。
ダインは頭を下げたまま、罪を告白するように説明する。
「ワシら工作者一同……とんでんねえもんぅ造っちしもうたんじゃ」
聞けば――秘密兵器を造っていたのだという。
最悪にして絶死をもたらす終焉に対抗するためだけではなく、いつ襲ってくるかわからない蕃神に立ち向かうための兵器開発である。
神族や魔族ではなく、いざという時には現地種族も使えるタイプ。
研究に研究を重ねていき、工作者の数も増えてきて発想や閃き、良いアイデアもどんどん湧いてきて、フミカの知識やプトラの悪魔的な発明力も借りて、兵器開発はトントン拍子に進んでいったそうな。
「だが、ワシらはやり過ぎた……」
ダインは恐るべき究極兵器を造り出してしまったと後悔する。
世界を抉り――空間を穿ち――次元をも貫く。
森羅万象どころかその基底、あるいは外側にあるものさえ滅却する
「根源をも撃ち抜き、虚無という概念さえも覆す……」
それは多次元宇宙の理をも貫く巨砲の姿をしているという。
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