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第16章 廻世と壊世の特異点
第390話:還らずの都防衛戦~三人一役、六人一役
しおりを挟む№12 爆滅のフラグ――タロウ・ボムバルカン。
№15 狂奔のフラグ――ゴーオン・トウコツ。
№16 旱照のフラグ――ジョージィ・ヴリトラ。
3枚のコインが盤面から消えた
――守護神と破壊神が向かい合う円卓。
円卓とは、上下関係でも遠慮せず話し合うためのもの。
そう考えれば、世界を維持しようと努める守護神と世界を打ち壊さんとする破壊神が忌憚ない意見をぶつけ合える場なのかも知れない。
もっとも、先刻からろくな会話をしてないが――。
テーブルの上に広げられた真なる世界中央大陸をボードゲームに見立てた盤上では、ロンドの配下であるバッドデッドエンズを表したコインと、ツバサの仲間たちの配置を示した駒が散りばめられていた。
獣王神アハウ、鉄拳児カズトラ、日之出一家のヒデヨシ、ネネコ、ランマル。
それぞれが勝利を収め、三人のバッドデッドエンズ撃破した。
3枚のコインの消失がその証拠である。
バッドデッドエンズのメンバーも対となるコインを所持しており、当人が敗北を認めたり死亡すると盤面のコインも消える仕組みらしい。
敵の主力を3人も倒せば大金星。
四神同盟からすれば、戦争において優勢に立ったとも言える。
だが、ツバサの表情は浮かなかった。
弱肉強食は世の常。相手が問答無用で殺しに来るというのに、座して死を受け入れるなど言語道断。牙を剥いてくるなら歯向かうまでだ。
だから、殺し合いを否定はしない。
命を賭して戦うのだから、殺す決意も殺される覚悟もできている。
それでも――罪悪感は拭いきれなかった。
いくら世界廃滅を夢見る愚か者であろうと、他者の命を奪うことに良心の呵責を持ち合わせない外道であろうと、殺人には躊躇を覚える。
自らの正義を問い続けるならば尚更だ。
この殺害は正しかったのか? その行為を何万遍と自問自答する。
ジョージィやゴーオンのように、バッドデッドエンズへと駆り立てた要因が人間にあった事情を知れば、彼らの死に様に悼むこともある。
彼らに破滅願望を芽生えさせたのは――他でもない人間なのだ。
すべての罪業を背負うような錯覚に悩まされる。
仲間が誰かを殺したことに連帯感から罪深さを覚えるのか? アハウたちに手を汚させたのが自分の指示のように感じるから苦しいのか? 人と人がわかりあえないのが悲しいのか? 彼らを改心させて助ける術はなかったのか?
ゴーオンなどカズトラと通じ合えたのに……ッ!
そんな複雑な思いが入り交じるのを、ロンドに見抜かれたらしい。
思い掛けず優しい声を投げ掛けられる。
「お優しいこったな、兄ちゃんは……辛ぇか?」
飲みかけのカフェカプチーノ、そのカップをロンドは円卓に置いた。
問い掛けてくる表情は茶化したものではなく、年相応の経験を積み重ねた年長者のものだった。破壊神でもなければ極悪オヤジでもない。
人生の先輩として案ずるような顔だ。
あちらが態度を改めるなら、こちらも正直に答えるべきだろう。
「辛くない……といえば嘘になる」
これまでも命を奪うという行為は重ねてきた。
ツバサ自身、何人かの命をこの手で奪ってきている。四神同盟の仲間も同じだ、殺らなければ殺られる事態は幾度となくあった。
悪人を誅殺して気が晴れた、そういった達成感も否定できない。
同時に――人殺しという重圧もあった。
「ゲームじゃねえんだ……死んだ奴はコンテニューで甦りはしない。何度も何度も最初に戻ってやり直しが利くなんて都合良くもない。死んだら生まれ変わり、よりよい異世界転生できるなんて保証もない……」
死んだら終わりなんだぞ――ツバサたちもロンドたちも。
「あの人たちはゲームの“駒”なんかじゃない……みんな、自分の人生を歩いてたんだ一個人なんだ……その終止符を打ったのが俺たちだと思えば」
やるせねえな、とツバサは苦悩する思いを吐露した。
不老不死であっても不朽不滅ではない。
それが神族や魔族の美点であり欠点だった。
殺そうと思えば死ぬのだ。滅びの時が来れば免れる術はない。
そこは人間と大して変わりなかった。
「自分が終わるのが真っ平御免なのは当たり前だが、他人の人生をこの手で終わらせることは……やっぱり重たいな」
殺し合いに達観できるほどツバサの人生経験は深くない。
二十歳そこらの若造に、重苦しい生死観を押し付けないでほしい。
だからこそ――ツバサは慎重になる。
味方を1人も欠けることなく守ることを徹底し、敵対する者に対しても説得することを忘れない。懐柔や譲歩できるなら血を見ない道を模索するのだ。
そのためなら手間を惜しまない、と心に誓っていた。
やるだけやって無駄に終わったとしても、仲間が欠けずにやり過ごせたのなら御の字だ。採算など度外視でいい。最良で最善で最高の結果を得られれば……。
だが、ついつい相手の犠牲まで勘定に入れてしまう。
ツバサが甘いのか? 冷酷になるべきか? 平和的に解決できなかったのか?
自問自答する猛省は止め処なく込み上げてきた。
懊悩するツバサをロンドは笑顔で見つめている。
ニヤニヤしているわけではなく、揶揄っている様子でもない。
ただ穏やかに見守っているだけだ。
「いいねぇ、その青臭い悩み……兄ちゃんはまだ人間なんだな」
そういうの大好きだぜ、とロンドは慰めてくる。
「ま、しばらく大事にしとくんだな。これから神族やってくってんなら、人生ならぬ神生はとんでもなく長くなる。そういった誰かの生き死に思い悩む人間らしい青臭さも、そのうちきっと麻痺してくるぜ」
磨り減っていくといってもいい――そう教え諭してきた。
「敵の心情をも推し量れる共感性、大切にすることだ」
この男――本当に読めない。
本能的衝動に突き動かされて破壊の限りを尽くす暴君かと思えば、居酒屋で管を巻く馴れ馴れしい飲んだくれみたいな時もあり、人生の岐路に立つ者へ進むべき道を教える老賢者と見間違えることもある。
時と場合によって性格や態度が嘘みたいに豹変するのだ。
今は老賢者モードなので、思わず耳を貸しそうになる。
見る角度によっては、底無しのお人好しにも希代の大悪党にもなる百面相。
それは外面だけではなく、精神的な内面でも言えるようだ。
「……実体験に基づく教訓か?」
思わず絆されそうになるツバサは気に食わなそうに顔を顰める。だが、深く考えるまでもなく察してしまった。
灰色の御子であるロンドが言いたいことを――。
「現実世界の……いや、こっちの世界ももはや俺たちにしてみれば現実だ。あちらの……地球と言い直そうか。地球に渡って500年、アンタたち灰色の御子はあれやこれやと歴史の裏で暗躍してきたはずだ」
その500年、数え切れない人生に付き合ったことだろう。
「どれだけ人間の生き死に携わったんだ、アンタは?」
幾多の死に際に立ち会ったのは想像に難くない。
深い年輪が隠した漢の顔がやや俯いた。
「情けなんざ引きずるもんじゃねえよ。兄ちゃんの言う通り、重たくって適わねぇからな。オレなんざさっさと見切りをつけちまった」
ツバサからの問い掛けに、自身の意図したものが伝わったと手応えを感じたロンドは、「へん」と鼻を鳴らしてぶっきらぼうに言った。
そして、意味深長に人差し指を立てた。
「ひとつ、人生経験が豊富なオジさんからの有り難いアドバイスだ」
――死人に想いを寄せるなよ。
「敵であれ味方であれ、死んだ奴はそれまでだ。供養するのも懐かしがるのも罵倒するのも勝手だが、入れ込むのはやめておけ」
引っ張られるからな、とロンドは冷やかすように付け加えた。
この言い方はインチキ仙人を彷彿とさせる。
あの人もツバサを導いてくれた老賢者だ。ミロではないが、ツバサは年上男性に気を許しやすいところがあった。老け専や枯れ専でもあるまいに……。
「仲間が3人死んだのに……ドライだな、アンタは」
ツバサはこの場に相応しい、真っ当な疑問をぶつけてみた。この男に通じるかは怪しいが、尋ねずにはいられない流れである。
極悪親父は気にもせず、鉄面皮は涙の一粒すら零さない。
「こちとら破壊神だぜ? 終いの終いにゃあいつらも滅ぼす予定だったわけだし、遅いか早いかってだけ。言ったろ? 死人に想いを寄せるなって」
面白い連中だったけどな、とロンドちょっとだけ惜しそうだ。
そんな情を寄せるだけマシかも知れない。
「時間がありゃ香典持って線香のひとつも上げに行くくらいしてやっても良かったんだが……それが許されるような情勢じゃあねえだろ?」
「こんなところで牽制し合っている時点でな」
空中に浮かぶ円卓と、それを取り囲む円形の豪勢なソファ。
ツバサとロンドは円を半分にして弦を弾くような位置に腰を下ろすと、円卓の上に広げられた地図上で独りでに進む棋譜に注視していた。
双方の陣営の動向は――駒の動きにすべて反映される。
バッドデッドエンズの主力は20枚のコイン。
四神同盟の主戦力はそれぞれをシンボライズした駒。
地図をボードゲームの盤面に見立て、それぞれの駒が連動して動いている。おかげで離れていても戦況が手に取るようにわかった。
――守護神と破壊神のボードゲーム盤だ。
ロンドは「部下が世界を滅ぼしてくれるから楽チン♪」と傍観を決め込んでいるが、ツバサはそうはいかない。「ああ、大変そうだな……助けに行きたいな、援軍送りたいな、頑張れ負けるな頑張れ!」と心配性が加速していた。
誠に遺憾ながら大変もどかしい。
お母さんは心配性なのだ――誰がお母さんだ!?
脳内で一人ボケツッコミが捗るほど、気持ちは落ち着かない。
この場にいるのは守護神と破壊神だけではななかった。
互いに忠誠を誓うメイドを一人ずつ従えている。
ただし、双方とも忠誠の度合いは高いの低いのかわからない。
ツバサの後ろには整然とした佇まいでクラシカルなメイド服に身を包んだクロコが控えており、ロンドの背後にはエロティックなフレンチメイドで着飾ったミレンが澄まし顔で待機していた。
この2人――犬猿の仲らしい。
ツバサとロンドが談笑(ツバサは認めないが)に興じている最中、視線を合わせる度に「変態め」「痴女め」と角を突き合わせている。
囁くような小声による相手への罵倒が聞こえないかと思えば、あっかんべーをしていたり(byミレン)、公共放送ならモザイクを掛けられかねない中指を立てるジェスチャーをしていた(byクロコ)。
些か子供じみているが、本当に仲が悪いようだ。
いざとなればキャットファイトを始めかねない険悪さである。
だがしかし、この場には戦の気配が立ち込めない。いくらツバサが戦意を吹っ掛けても、ロンドは涼しい顔でいなしてしまう。
さっきから戦いを仕掛けたいのだが、開戦の兆が起こらないのだ。
本来、こんな睨めっこはツバサの性に合わない。
目の前に敵の本丸ともいうべき総大将がいるのだ。このまま殴りかかって倒した方が手っ取り早いのは、ツバサ自身が歯痒いほどわかっていた。
ただし、予測できない苦戦となるだろう。
ロンドはまだ何かを隠している。
そもそもこの男――内在異性具現化者だ。
ツバサたち同様、複数の過大能力を覚醒させていた。
本人は臭わせるどころかおくびにも出さないが、まず間違いない。何度も対面することで確信が持てた。先ほどからツバサの稲妻や熱線をまともに受けて平然としていられるのは、その能力で無効化しているのだ。
思い返せばこのオッサン、あの時も平気な顔をしていた。
ジェイクVSリードの激戦である。
(※第377話参照)
2人の内在異性具現化者が本気を出した攻撃を受けて、それも双方の最大威力が直撃したのに傷ひとつ負わなかったのだ。
恐らく、目立たないように二番目の過大能力で防いでいたのだろう。
少なくともふたつ以上、ロンドは過大能力を持っている。
他者の恐怖を具現化させて巨大な怪物に仕立て上げる、それも一瞬で世界を埋め尽くせるほど創れる能力だけでも破壊神と恐れるべきなのに、まだ過大能力を隠しているとは恐れ入った。
惚けているが、「能ある鷹は爪を隠す」というやつだ。
そのためツバサも迂闊には手を出せない。
ロンドが切り札として伏せている過大能力をオープンにした時のために、万能とも言える過大能力を持つミロがツバサにとっての切り札だった。
そのミロを――封じられてしまった。
しかも彼女の癇にさわる、最悪の手札を被せてきたのだ。
そちらも無視できないため、ロンドを後回しにしてミロと二人掛かりで早急に片付けようとしたら、「オレを無視したら何をするかわからないぞ?」と自分の無責任行動を手札にして、ツバサの動きまで封じてきた。
このため――ツバサも下手に動けない。
結果、ゲーム盤を挟んでの睨めっこという為体だ。
幸か不幸か、ロンドが率先して動かないのでツバサも見張るだけで済んでいた。ロンドとの小競り合いは、周囲への被害が予測できないので恐ろしい。
ロンドはツバサを封じたが、ツバサもロンドを抑えている。
そう自分を言い聞かせて、忍耐強く辛抱するしかない。
戦況は四神同盟がリードしつつある。
だが、戦争の主導権はロンドに握られているようで腹立たしい。
作戦通りなのか? しかし得意気ではない。
もしもロンドが演出家を気取っていたり、筋書き通りにシナリオが進んでいるとしたら、そういう芸術家特有の満足感を漂わせるはずだ。
なのに――この男にはそれがない。
すべて計算ずくめだとしたらとんでもない策士だが、このオッサンの場合「行き当たりばったりでやったら上手いことハマった」なんて雰囲気がある。
まさか……そういう過大能力なのか?
だとしたら、とんでもないラッキーマンである。
疑心暗鬼に囚われるのツバサの前で、ロンドはソファに深々と身を預ける。再び手に取ったカップのカプチーノを綺麗に飲み干した。
「おかわりは如何なさいますか?」
そんな立て続けに飲むようなものではないが、ミレンはこの談笑が続くと想定して、追加の飲み物についてロンドにお伺いを立てていた。
「おう、新しいのくんな。今度はカフェラテね」
ミルクたっぷりで、とロンドはニヤニヤしながら補足する。
この追加オーダーにミレンはギョッとした。
そういえばこのオッサン、カフェカプチーノを愛飲していると報告書にあった気がする。どうでもいい情報だが記憶にあった。
「カフェラテ……カフェカプチーノではなく、ですか?」
聞き間違えたかと驚くミレンは、念のためにと丁寧に再確認する
カフェオレだ、とロンドはニンマリ笑う。
「兄ちゃんのボインを拝んでたら、濃い乳製品が欲しくなってな……だからカフェラテだ。カプチーノはエスプレッソとホットミルクと蒸気で泡立てたミルクが1対1対1だが、カフェラテは決まってないからな」
ミルク多めでな、とロンドは超爆乳を凝視して強調する。
反射的にツバサは両手で胸元を庇ってしまった。どうやっても手で隠せるサイズではないのだが、自然と身に付いた防御姿勢である。
我ながら女性らしい仕草で嫌になりそうだ。
「……このセクハラ親父が」
ツバサが軽蔑の眼差しを向けるも、ロンドに堪えた様子はない。
「オレはボインちゃんが大好きでな」
ツバサをこの場へ引き留めた時に使った、どこかで聞いたことのある迷セリフを繰り返す。そして、人差し指で超爆乳を指し示す。
「できれば、兄ちゃんのボインから搾り立てのミルクでカフェオレを味わってみたいところだが……さすがにドン引きされそうだからなぁ」
「現時点でドン引きだよ、おっぱい星人」
「ツバサ様、差し出がましいようですが進言させていただきます」
ロンドのエロ親父な物言いにツバサが呆れていると、後ろに控えていたクロコが身を乗り出して、耳元に息を吹きかけながら囁いてきた。
「なんだ、この親父をやり込める名案でも思いついたのか?」
ぞくり、と背中を振るわせながら聞き返す。
クロコは道具箱からツバサ愛用の機器を取り出してきた。
「いえ、平素でしたら搾乳のお時間の頃合いですので……ツバサ様さえお許しになるのであれば、搾り立てのミルクをご用意……ッ!?」
ありがとうございます! とマゾヒストは歓喜の悲鳴を上げる。
怒りの青筋で額を埋め尽くしたツバサが、手首のスナップを利かせた裏拳をクロコの顔面に叩き込み、エロメイドを強制的に黙らせた。
確かに乳腺がミルクで膨張して乳房が張っている感覚がするけども!
少なくとも今、勧めてくるべきではないだろう!?
顔面を*にしたクロコに、ツバサは振り向かず質問する。
「……クロコ、どっちの味方だ?」
「無論ツバサ様ですが……素敵なエロ展開を妄想するあまり、つい……」
ついじゃねえ! とツバサは駄メイドを叱りつけた。
「えー、噂のハトホルミルクお預けかよー?」
「アンタもカップ両手に持って子供みたいに待機してんじゃねえよ!? いい年こいたオッサンがそんなポーズしても可愛げどころか需要ゼロなんだよ!」
残念がるロンドも怒鳴りつけておいた。
茶番を楽しんだロンドはソファに寛ぐように座り直す。
「フフッ……まあそれくらい、オレはボインちゃんが大好きなんだよ」
「どんだけ好きなんだよ、そのフレーズ」
しつこく何遍も言うので、そんな気がしてならない。
そして、ロンドは否定せず肯定してきた。
「いやー、歴史に残すべき名台詞だとオレは思うんだけど……ダメかな? 次点で『ちち! しり! ふとももー!』とか大好きよ。他にも『オッパイに貴賤なし』とか『乳もぎ取るぞコラ!』とか『チチをもげ!』とか……」
「乳ばっかじゃねーか! だったらおっぱいに執着して世界を存続させろよ! おっぱいハーレムでも作ってどっぷり堕落してやがれ!」
そうすれば真なる世界も平和になりそうだ。
慣れてないが、誘惑しようと爆乳を思いっきり揺らしてサービスしてやる。これで戦争が終わるなら安いものである。
ミロはキレるかも知れないが、「ぱふぱふ」までなら容認しよう。
――それで本当に戦争が終わるならな!
ロンドは申し訳なさそうに肩をすくめてお手上げのポーズ。
「それとこれとは別腹なんだ、オジさんの中ではな」
「あーもう! このオヤジ面倒臭いッ!」
ちょっとキレそうになったツバサは、両手で髪をガシガシと掻きながら大口を開けて喚いてしまった。我ながら学生時代に戻った気分である。
こういう面倒臭い友人がツバサにはわんさかいた。
彼らがああだこうだ屁理屈を並べる度、ツバサはキレたものだ。
だからこそ対処法を心得ている。
こういう連中とはまともに付き合ってはいけない。
面倒臭い屁理屈は聞き流して、スルーしておくに限るのだ。
怒りのままに最終決戦へ持ち込みたいところだが、苛立ちを募らせても理性が鈍るだけ、いざ戦闘になっても技の精度も下がるばかりである。
最悪――ロンドの思う壺だ。
冷静さを失わないためにも、武道家らしく呼吸法で自らを落ち着ける。
「しっかしなー、第一局面でいきなり3人脱落かよー」
戦力大幅ダウンじゃねぇか、とロンドは毒突くようにぼやいた。
そこに戦死した者への哀れみはない。
話を最初に戻した形になるが、この極悪親父に情を求めるのはお門違いなのでとやかく言わない。感情的に訴えたところで無駄である。
だが、戦力ダウンとは聞き捨てならなかった。
「演技は三流だな。まだまだ余裕って顔に書いてあるじゃねえか」
コインを隠してるんだろ――出しな。
にべもないツバサの一言に、ロンドは「べえ♪」と舌を出した。
「…………あ、バレてた?」
「バレバレだぜ。どう考えたって数が合わないからな」
最悪にして絶死をもたらす終焉――20人の終焉者。
マッコウ、アリガミ、ミレン、三幹部を含めた20人の主力に絞った精鋭部隊を再構成した情報について、四神同盟はしっかり掴んでいた。
還らずの都防衛に成功した直後のことだ。
フミカの感知能力が、大爆発を起こしたロンドたちの拠点から20人の大きな力の持ち主が飛び立ったことを確認していた。
しかし、その20人に数えるべきミレンが此処にいる。
彼女はロンドに付き従い、飛び立った20人には含まれていない。
フミカはロンドの索敵には失敗しており、破壊神の傍らに侍っていたミレンに気付くこともできなかったのだ。ならば、飛び立った大きな力は19人じゃないと計算が合わない。
ミレンを含めれば21人――20人じゃない。
「どうせ遊び好きでイタズラ好きなアンタのことだ。ロストナンバーとかナンバリングから外した№0とか……そういう伏兵を仕込んでたんだろ?」
「あらやだ、オジさんの趣味バレバレじゃない」
悪の組織には付きもの――カウントされない最強の幹部。
ゲーム風に言えば隠しボス的存在だ。
「面白半分で結成した悪の組織の、遊び半分とはいえオレが選抜した連中だ。こんぐらい遊び心はやって然るべきだろ? 違うかい、兄ちゃん?」
「おかげで読みやすいから助かる」
ツバサの返事に片頬を釣り上げて笑ったロンドは、億劫そうに右手をジャケットの内ポケットへ差し込み、そこからコインを取り出した。
長い人差し指と中指に挟まれたコインは一枚。
刻まれた№は――“Ø”。
「やっぱり、ロストナンバーの類か」
ツバサが呆れ顔を隠すことなく悪態をつくも、ロンドは楽しそうな笑顔を崩すことなくコインを手に握り直すした。そして、無造作に親指で弾く。
コインは小気味いい音を立てて宙を舞う。
狙ったように円卓の上に敷かれた地図に乗った。
場所は還らずの都とイシュタルランドを直線で結んだ中間辺り。
そこにロストナンバー扱いされるほどの実力を持った伏兵が潜んでいるらしい。何者で誰が対戦するかわからないが手を焼きそうだ。
その時――ツバサは目を見張った。
「おい……なんでコインが増えてるんだ?」
追加されたのは“Ø”の一枚だけではない。
明らかに複数のコインが加わり、盤上を賑やかにしていた。
新たな№が増えたわけではない。どういう理屈かは知らないが、2つのナンバーを記したコインが、複製でも作ったかのように増えているのだ。
神族の視界、動体視力でも増えた瞬間を見逃した。
最初から盤上に出揃っていたのか? と錯覚しそうになる。
「おまえ……どんだけ手下を増やしてんだよ」
――バッドデッドエンズ・トゥエンティじゃねえのか!?
ツバサが糾弾してもロンドは素知らぬ顔だ。
「増やしてなんかないよー? むしろ人員削減したくらいなんだしー」
ねえミレンちゃん? とロンドは部下に同意を求める。
「はい、ロンド様の仰る通りでごさいます」
ミレンは軽い会釈をすると、足りない主人の言葉を補った。
「当初は作戦参謀のマッコウ様より、『いい加減なロンドのこと、幹部の数を増やすと管理するのが面倒になるに決まってる。程々にしときなさい』とご忠告されたにも関わらず、得意のワンマン振りを発揮してインパクト重視で108人も選んだら案の定、扱いきれなかったために先日20人までに選定した次第です」
「ミレンちゃん! 長文でオレの醜態バラすの止めて!?」
しかも淀みなく聞きやすい口調で言い切った。
ミレンは包み隠さずロンドの無責任っぷりを暴露してくれた。主人であるロンドがみっともなく制止をかけても表情ひとつ崩さない。
クロコのセクハラも問題だが、ミレンもなかなか酷いメイドである。
まあ、ロンドは破壊神のくせして女の子限定でマゾになる気質らしいので、こうした言葉責めみたいな逆パワハラを喜んでる節があった。
しかし、バッドデッドエンズの思い掛けない真相が明るみに出た。
「……インパクト重視で108人も揃えてたのか」
「煩悩の数と同じですからね。その線は多分にありました」
ツバサは呆れるも得心し、クロコはそんな主人の意見に賛同しつつも、108という数字の意味について言及してくれた。
その108人から20人まで人員削減したのはいい。
これまでの戦いでツバサたち四神同盟の面々、ジェイク率いるルーグ・ルー陣営や日之出一家が倒した分も換算されているのかも知れない。
「減らしたものを……なんで最終決戦でまたぞろ増やしてんだよ?」
しかも前触れもなく唐突にだ。
「一人や二人はロストナンバーとかナンバーゼロとかこじつけて見逃してやってもいいけどな……どうして2つの№のコインが一気に増えてんだ?」
片方が3枚――もう片方は6枚。
両方とも元の1枚を差し引けば、都合7枚増えた計算だ。それは取りも直さず、バッドデッドエンズが7人増えたことを意味する。
「27人なら27人と最初に言っときやがれ!」
ゲームでイカサマを発見した時みたいな勢いでツバサは抗議する。思わず生来の江戸っ子らしいべらんめぇ口調になるのはご愛敬だ。
いやいや、とロンドは降参するみたいに両手を挙げて弁明する。
「別に申告制ってわけじゃないし、イカサマ目的で隠してたズルってわけでもねーんだけどな。兄ちゃん世代にわかる単語だと……特殊効果発動?」
「カードゲームじゃあるまいし!?」
しかもトレーディングカードを集めて自分好みのデッキを組み、「決闘!」するタイプのカードゲームだ。ツバサもいくつか遊んだことはある。
その設定を踏まえた上でロンドは続けた。
「場に出てから条件が揃うと発動するものってあるだろ? あれと大差ねぇよ。数が増えた連中はそうだな……兼ね役といってもいい」
違う逆か――ロンドは最後の部分を訂正した。
「兼ね役? 一人で何役もこなすことか」
「神話なんかだとよくあるだろ? あの神さんの正体はこいつだーとか、この悪魔はあの神さんの変化系だーとか……そんな感じさ」
兄ちゃんも似たようなことやってるじゃん、とロンドに指摘される。
「俺が……もしかして戦闘形態?」
――殺戮の女神、魔法の女神、天空の女神。
基本となる神々の乳母から、ツバサは3つの変身モードを戦闘に応じて使い分けるようになっていた。それぞれ物理力、魔法力、技術力に優れている。
実際のエジプト神話においても「習合」といい、これらの女神は他の女神の側面を司っていたり、同一存在として崇められていたりするのだ。
そういう意味では兼ね役と言えなくもない。
ツバサの視線がそこを認めると、ロンドは揚々と語り出す。
「そうそう、一人で三役も兼ねてやがるじゃねえか。だが、こいつらは逆だ。三人で一役やってたり、六人で一役やってただけ。わかるかい? 人数が目減りしたから増やしました、ってのとはわけが違う」
条件が揃ったから――元の人数に戻ったに過ぎない。
「こいつらにはな、予め役目を振っておいた」
増えた7枚のコインは、ある場所に集中していた。
真なる世界中央大陸の中心――還らずの都。
今度こそロンドは得意気な笑みで煽ってくる。
「最初の一撃を凌いだからって安心してなかったか? オレぁ言ったよな、“還らずの都”は邪魔だって……邪魔なら早めに潰すのが鉄則だろ」
還らずの都には5枚のコインが集まっていたのだが、そこに7枚のコインも参加していた。12枚のコインが都を取り囲んでいる。
ロンドはこの5人(+7人)の部下に命じていたらしい。
「目障りな“還らずの都”は消しとけ――数を頼みにな」
これは意図した作戦なのだろう。
大成功! と万歳しそうなくらいロンドは喜んでいた。
明かされていた最初の三手のひとつ。還らずの都防衛に成功するのを見越して、わずかでも気が緩んだところに大目の戦力投入。
多勢で押し切るように都を破壊するつもりらしい。
勝ち誇るロンドの胡散臭い笑顔を、ツバサは不敵な笑みで睨みつける。
「やってみせろよ。還らずの都の防衛は完璧だぜ」
「完璧なんざこの世にゃにねぇよ。必ずどっかしら抜けてるもんさ」
こればかりは結果次第、現場の担当者を信じるしかない。
ツバサであれば還らずの都を防衛するため尽力している仲間たちを、ロンドであれば指示を出した世界崩壊を目指す部下たちに任せるばかりだ。
「ところでよ、そっちこそなんかズルしてねぇか?」
ツバサの眼力をいなすように、ロンドは訝しげに訊いてくる。
「なんでバッドデッドエンズが20人って知ってんだよ。数は減らすし厳選するとは言ったけれど、上限人数まで教えてやった覚えはねぇぞ?」
そう来たか、今度はこちらの不正を追及してきた。
「大体、さっきの戦いも不自然なことばっかりだったぜ?」
ククルカン森王国での攻防戦のことだ。
ジョージィにアハウが当たり、ゴーオンにカズトラが挑む。適材適所と言わんばかりの、実力伯仲な戦力が対戦相手を務めていた。
必要な戦力のみを迎撃要員として出撃させ、もしもの事態に備えてバリーやダテマル三兄弟を予備選力として温存できたのも大きい。
だからこそ、巨獣の第二陣以降も適切に処理できたわけだ。
戦力の振り分け方が絶妙とも言えよう。
迫り来る敵の内訳、それを知らなければ難しい采配でもあった。
「何よりだ、ウチのタロウ先生を日之出一家とかいう土建屋ファミリーがコテンパンにのしたこと。こいつぁ一等おかしいだろ?」
何故――タロウが出向いていることを知っていた?
日之出一家はタロウを確実に追い詰め、ストレート勝ちを収めた。
タロウの接近を知らなければ対処できない的確さだ。
大きな力を持つ神族の接近こそ勘付けるだろうが、それが何者かを判別するには恐ろしいほど広範囲を念入りに索敵できる感知能力が必要である。
その手の専門家がいなければ話にならない。
「四神同盟にはいるのか――リアルタイムで戦場すべてを見渡せる奴が?」
ロンドは一発でこちらの隠し球を見抜いた。
驚きはしない。むしろ組織の長として看破して当然だろう。
参ったなー、とロンドは悔しそうに頭を掻いた。
「ウチもさ、アリガミの野郎がフットワーク軽いのと、諜報活動に使えそうな使い魔を操れるのが何人かいるから、そいつらに兄ちゃんたちの身辺を探らせたりはしたが……こういう芸当できる奴はおらんくてな」
各地の状況を現在進行で把握し、情報を統制して各員に伝達する。
情報処理に秀でた管理官ポジションの人員だ。
四神同盟に所属するメンバーは全員、彼女の精神念波を拾えるようにチャンネルを統一しているので、迅速な情報交換を可能としていた。
この戦争では大いに役立っている。
物理的な戦闘力こそない彼女だが、情報戦では向かうところ敵なし。
普段は引き籠もりニートを気取っているので、こんな時くらいは超過労働でもしてもらおう。それで釣り合いが取れるはずだ。
「よう兄ちゃん、一体どんなカラクリなんだ? 教えてくれよ」
真っ先に潰すからさ、とロンドは脅すように嘯く。
ツバサは少女みたいな微笑を戯けてやる。立てた人差し指を唇に押し当てる、リップサービス付きでだ。
「ひ・み・つ♪ 教えてほしかったら『戦争やめます!』って約束しな」
「おいおいハニー、そいつは無理な相談だぜ」
肩をすくめたロンドは演技過剰なお手上げのポーズで戯けている。
誰がハニーだ、とツバサは気怠げに頬杖をついてふて腐れた。
不本意ながら――この睨み合いはまだ続くらしい。
~~~~~~~~~~~~
話題の“還らずの都”は、堅牢なる防御結界によって護られていた。
世界危機の際――都に名前が刻まれた英霊を召喚する。
英霊の軍団を呼び出し、世界を守るために戦ってもらうのだ。
そのために還らずの都は、大陸の底を縦横無尽に走る龍脈から万物のエネルギー源である“気”を吸い上げて貯蓄する機能を有していた。本来なら、この“気”は延々と貯め続けられるだけの代物である。
その貯蓄された“気”を、すべて結界を張るために費やしていた。
還らずの都を管理する灰色の御子、ククリの仕事である。
超巨大蕃神“祭司長”との戦いの最中、ククリは還らずの都から許可を得て、都の全機能を操作することができるようになっていた。
この結界の強度は生半可ではない。
還らずの都のみならず、その麓に位置するタイザン府君国とルーグ・ルー輝神国までも守備圏内に収め、鉄壁の護りを固めていた。
そして、都の上空には大型の戦闘ドローンも巡回している。
(※この戦闘ドローンは全陣営にも配備済みである。目下のところ巨獣の迎撃をメインに絶賛稼働中なのだが、巨獣のデカさと数の多さが規格外にふざけているため焼け石に水状態だった)
これを指してツバサは「都の防衛は完璧」と発言していた。
だが、完璧という言葉を過信するわけにもいかない。
その防御結界に今――大量の蟲が集っていた。
雲霞の如くというが、まさに雲や霞と見間違えるほど大量に湧いた蟲の群れが還らずの都を護る結界に取りついている。夏の野原でよく見掛ける蚊柱を、天災規模にまで酷くしたような有り様だった。
知識のある者ならば蝗害に例えるかも知れない。
日本でも時たまニュースに取り上げられるが、実害を受けた経験がほとんどないので実感の湧きにくい、巨大バッタの大群が発生する事例だ。
餓えたバッタの群れは、喰えるものすべてを貪る。
彼らが通った後には枯れ草さえ残らない暴食っぷりだ。
しかし、還らずの都を取り巻く虫は蝗害の巨大バッタの比ではない。
最小でも人間――最大ならば戦闘機。
どう見てもモンスター級の害虫が勢揃いしていた。
その種類も豊富の一言に尽きる。
基本的には蝗害を起こす大型バッタの姿をした蟲が多いようだが、甲虫、蟷螂、蜻蛉、蝶といった比較的人気のありそうなものから、蠅、虻、蛾、蚊、蜘蛛、百足、蠍、油虫……という生理的嫌悪を催すものまで様々だ。
どれもフォルムは凶悪、その脅威度を外観に打ち出している。
特に蝗害の代名詞である大型バッタ(トノサマバッタ、トビバッタ、ワタリバッタと呼ばれる種類)の凶悪さは尋常ではない。
鋼鉄をも噛み砕く獣の牙を備え、蠍も顔負けの大きな毒針の尾を持つ。
なのに人間に似た顔をして、頭から髪のような体毛を生やしていた。金色の王冠めいた触覚を生やし、蜻蛉に勝る飛行能力を持つ翅を広げている。
黙示録に登場する5番目の天使――アバドン。
彼が率いるという人類に苦しみをもたらす蝗に酷似していた。
防御結界を破壊することに蟲は従事する。
牙を持つ者は噛みつき、角や針を持つ者は刺し、特殊な鱗粉や毒を分泌する者はそれらを吹きかけ、防御結界を消耗させることに励んでいた。
戦闘ドローンも例外ではない。
敵勢力を排除しようと作動するドローンへ無数の蟲が取りつき、小さな蟲が機械内部へと侵入、回線や基板を噛んで故障を引き起こす。
この戦法により、大半のドローンを機能不全に陥れていた。
蟲の大群を指揮するのは彼らの女帝。
最悪にして絶死をもたらす終焉――20人の終焉者の1人。
「さあ、私の愛し子たち……お仕事の時間よ」
大百足を羽衣代わりまとわせた、気の強そうな美少女は囁いた。
数多の害虫に囲まれても物怖じせず、むしろ彼らを「愛し子」と寵愛して近くに侍らせることに悠然とした恍惚に浸っていた。
蟲を愛でる彼女の横顔は、至福の幸せに満ちている。
「世界が危機を迎えた時に起動するという死者の都……欠片ひとつ残すことなく打ち砕いてきなさいとあの御方……破壊神様がご命令なの」
やっちゃいなさい、と彼女は指示を飛ばす。
蟲の大群が湧き上がり、還らずの都を覆い尽くさんとしていた。
彩色豊かなゴシック衣装の蟲愛づる姫はほくそ笑む。
蟲を愛でて蟲を愛する彼女に相応しく、ゴシック調のドレスは玉虫色にサイケデリックな輝きを放ち、衣装を凝らした蟲の細工を煌めかせている。
№14 蟲襲のフラグ――メヅル・アバドン。
ロンドより直々に還らずの都破壊を命じられた終焉者の一人。
彼女は単身でも防御結界を崩せる勢力を率いていた。
――数え切れない害虫の大軍勢。
群がる節足動物が還らずの都を守る結界を食い破りつつあった。
防御結界には反撃作用が働いている。
害虫は結界に触れると、害虫避けの電撃殺虫器へ飛び込んだように焼き切れるのだが、後から後から蟲が集ってくれば反撃も薄まらざるを得ない。
数と種の多さを誇るからこそできる人海戦術だ。
これらの蟲はメヅルが生み出したもの。
愛し子と呼んで可愛がるのも当然、本当に我が子なのだ。
彼女のゴシックドレスの内側から、小さな羽虫の群れが湧いてきたかと思うと、見る見るうちに肥大化して害虫へ成長していく。
注目すべきは、彼女の背後に浮かぶ2つの大きな異形の卵嚢。
いびつな蜂の巣、あるいは蟷螂の卵に見える。
どちらにせよ昆虫に縁のあるもの。2つの卵嚢からはメヅルに匹敵する勢いで蟲が這い出してきていた。
数多の蟲を生み出す能力、卵嚢がそれを倍加させている。
1人で3人分働いているも同然だった。
過大能力――【大地を覆うは痛恨を植え往く蝗雲】。
能力から生まれてくる蟲たちに、メヅルは優雅な口調で命ずる。
「さあ愛し子たち……存在するものすべてに世紀末の痛みを配りなさい……有機物も無機物も関係ない、何もかも壊してしまう痛みを……」
蟲の勢いは留まるところを知らず、防御結界も弱まり始めている。
だが決定打へ欠けることにメヅルは気付いていた。
メヅルの過大能力は数の暴力で攻められる利点を持つ反面、昆虫ゆえの悲しさか質量がやや軽いのだ。攻撃に重みが足りないと言ってもいい。
「もう一押しないと結界を破れそうにないわね……」
ベリル! とメヅルは相方の名を呼ばわった。
「あなたの毒でもう一押しして……なにしてんのよコラ!?」
メヅルは振り返ると同時にズッコケた。
一緒に還らずの都破壊を命じられた相棒が寝ていたからだ。
しかも道具箱から出したのか、ご丁寧に布団一式を取り出して中空に敷き、それに包まっている。あれは鬱を拗らせた不貞寝に違いない。
「んあぁ……メヅルちゃん、なに?」
「なに、じゃないわよ! 完全に寝起きの対応じゃないそれ!? 私と愛し子たちが労働に勤しんでる間、眠りこけてたわけ!?」
なに不貞寝決め込んでんのよ! とメヅルは激昂した。
生欠伸をしながらベリルは寝返りを打つ。
トレードマークの長い髪もダラリと萎れている。
「だってぇ……ボク、こういうの苦手なんだよぉ……無抵抗な建物と、それを守る結界を壊すだけなんて……誰も反撃してくれない、仕返ししてくれない……ボクに痛みをくれないじゃないかぁ……そりゃあ不貞寝するよ」
おやすみぃ……ベリルは掛け布団を引き寄せ、二度寝しようとする。
メヅルの額では青筋張った血管がはち切れかけていた。
「ったく、ウチの隊長はどうしょもないマゾで困るわ……ッ!」
おいで――エンペラドル・スコルピオン!
メヅルの怒声で呼び出されたのは、蜻蛉のような羽を持つ大型の蠍だった。黒紫に輝くメタリックな甲殻が美しく、尾の毒針はもはや兵器である。
大きさは戦闘機サイズなので最大級だ。
「このマゾ野郎にとびっきりの痛みをプレゼントしてやりなさい!」
巨大な蠍の毒針が、布団越しにベリルへ突き込まれる。
「あはぁ……ほぉん♪ キタキタキタぁん……んんんんーんっっ!」
体内に一滴入っただけでも人間なら骨まで溶ける猛毒だというのに、ベリルはそれをガロン単位で注ぎ込まれて快感に喘いでいた。
気持ち良さのあまり、ビクンビクンと派手に痙攣している。
体型の許容量を超える猛毒を注入された頃――。
「キタキタキタァァァァーッ! 痛みこそボクが生きている証ッッッ!」
布団をはね除けてベリルは飛び起きた。
巨大蠍から大量の毒を注がれたにも関わらず、外見的な異変は起きてないどころか肌の色艶は健康的になっており、表情も晴れて活き活きと輝いている。
しなだれていた髪も、箒を逆さにしたように逆立っていた。
「はぁ、まったくもう……どうしてこんな変人に育ったのかしら?」
メヅルは嘆息せずにはいられなかった
№13 侵毒のフラグ――ベリル・アジダハーカ。
元最悪にして絶死をもたらす終焉7番隊の隊長、副隊長を務めていたメヅルにしてみれば上司であり、現実世界では幼馴染みの腐れ縁でもあった。
中世貴族の三男坊みたいな出で立ち。
それも親の金で放蕩三昧を楽しむドラ息子だ。
着込むコートやパンツにブーツ、スカーフに至るまで時代がかっている。どれもが贅を尽くした華美なる品々。元隊長ゆえ箔をつけさせておいた。
コーディネイトはメヅル担当である。
ただし、独特な伸ばし方をした髪型はベリル独自のものだ。
この長い髪はベリルの気分と連動しており、鬱になれば萎れて垂れ下がるし、テンションが上がれば上がるほど逆立っていく仕様になっていた。
天を衝くように逆立てば最高潮である。
「痛みがボクを駆け抜けていく! ボクにもっと輝けと轟き叫ぶ! あああっ、もっと痛みを! ボクの中のオレたちが覚醒するほどの激痛と鈍痛を!」
痛覚を刺激される喜びにベリルは打ち震えていた。
戦慄く両手をクロスさせ、自らの爪を二の腕に立てていく。
一気に手の甲まで引き裂くと、コートの袖を破るどころか自分の皮膚や肉まで裂いており、ドス黒い血飛沫を撒き散らした。
「痛い……でも足りない! もっと刺激的な痛みをくださぁーい!」
狂気の笑みを色濃くさせ、ベリルは血潮を撒き散らす。
出血多量で死ぬ量の血液を噴いても、ベリルは平然としている。
それどころか噴水よろしく出血量が加速するばかりだ。
ベリルの傷口から溢れでた血液は、まるで意思を持った雲のように空中へ舞い上がっていくと、還らずの都上空でひとつの大きな塊になっていく。
瞬く間に湖ほどの血液が渦巻いていた。
ベリルの血液は赤黒い、毒々しい黒味を帯びた深紅である。
事実――あれらの血液は毒だった。
毒に関してはメヅルの従える害虫など足下にも及ばない。
この世のすべてを蝕む劇毒の中の猛毒なのだ。
防御結界でもドロドロに爛れさせるだろう。
そのおどろおどろしい毒を含んだ血がたっぷり溜まったところで、ベリルは自らを掻き毟っていた両手を広げ、上空に蟠った血液に檄を飛ばす。
「――ベノム・ハードレインッ!」
空に揺蕩う毒血の塊が、針を刺された風船のように破裂した。
それはすぐさま猛毒の村雨へと変わり、還らずの都を守る防御結界に情け容赦なく降り注ぐ。メヅルの愛し子である蟲も巻き込まれるが大目に見よう。
この程度の損害で都を落とせるなら安いものだ。
「火遊びは感心しませんね――この場合、お薬遊びでしょうか」
落ち着いた壮年男性の声がした。
キュボッ! と大きな浴槽の栓を抜いたような音が聞こえたかと思えば、ベリルの振り撒いた猛毒の雨がおかしなことになっていた。
まっすぐ落ちる軌道から逸れ、どこかへ吸い寄せられていく。
還らずの都はおろか、防御結界にすら一滴も届かない。
猛毒の雨が集まる先にあるのは――髑髏。
顎が外れそうなほど口を開いた髑髏が、不可思議な吸引力で毒の雨だけを口の中へと吸い込んでいた。大量の毒液が渦潮となるほどだ。
髑髏はあっさり猛毒の雨を飲み干してしまう。
いや、単なる髑髏ではない。ちゃんと五体も備わっていた。
髑髏にはシルクハットを被り、2m近い長身には英国紳士風のスーツを身にまとっていた。その上に漆黒のマントを羽織り、ステッキを携えている。
骸骨紳士――クロウ・タイザンフクン。
四神同盟をまとめる四人の代表、その中でも最年長だと聞いている。
還らずの都の足下にタイザン府君国という国家を打ち立てたそうなので、攻め込めばやってくるのでは? と予想していたら本当に現れた。
あらゆる不浄を浄化する過大能力の持ち主、と情報にもあった。
それでベリルの猛毒を無効化したらしい。
だとしたら、ありきたりな毒では通用しない。
ベリルには本気を出すことも覚悟してもらわねばならない。
クロウはステッキを持った手でマントを翻した。
「他人様の敷地に土足で踏み込み、勝手に荒らして悦に入るとは……いくら戦争という建前があるとはいえ、人としてどうなのでしょうね?」
静かながら語気が強い。学校の先生に叱責されている気分だ。
「教師生活25年、あなた方のような悪童に手を焼いてきた経験はあります。彼らはいくら口を酸っぱくしても、聞く耳を持たなかったものです」
空いている片手を掲げると、そこに仄暗い炎が灯った。
普通の炎とは異なる色合い。揺らめく様も粘り気を持っている。
「説教も何処吹く風、話し合いの余地もない……」
クロウの手に灯った炎は火柱となるほど燃え盛り、炎の内側からは焼けた銅の柱が何本も突き出し、焦熱を帯びた鋼の大車輪が回転していた。
それらは地獄の拷問道具にしか見えない。
「ならば最初から鉄拳制裁――キツめのお仕置きをしてあげましょう」
「いきなり暴力的指導!? 教育委員会に訴えられるわよ!」
反射的にメヅルは見当違いな言い返しをしてしまう。ベリルとの長い付き合いで、ツッコミ役が板についてしまった。ちょっと泣きたい。
「異世界に教育委員会はありませんし、あなた方は私の生徒ではない」
問答無用でお仕置きです、とクロウは冷徹に言い放つ。
過大能力――【我こそが地獄であり地獄こそ我である】。
地獄の業火をまとう刑具が吹き荒れる。
鋼鉄の棘で武装した茨が生い茂り、煉獄の釜が溶岩を溢れさせ、灼熱をまとう銅や鉄の柱が林立し、人間を轢き潰す爆炎の大車輪が走る。
物質的な質量さえ持った地獄の炎がメヅルに襲いかかった。
「火遊びしてんのそっちじゃん!?」
反論するみたいにツッコミを入れている場合ではない。地獄の業火はその火力も然る事ながら、迫り来る速度も凄まじい。
蟲による防御も間に合わなかった。
「メヅルちゃん! 危な……ギャアアアアアアアアアアアアアアアス!?」
そこへベリルが颯爽と立ちはだかる。
メヅルを庇うとともに、地獄の炎をまともに被っていた。
「ベリル、アンタ……わざとでしょそれ!?」
助けてくれたことは感謝するけど! と一応メヅルは礼を述べた。
クロウはメヅルもまとめて狙ったつもりだろうが、ベリルが1人で地獄を全部引き受けてくれたので助かった。広範囲を焼き尽くすマップ攻撃な地獄の炎だが、ベリルが毒の壁を展開させることで一身に浴びてくれたのだ。
半眼のメヅルはベリルに尋ねてみる。
「……単に地獄の拷問を体験してみたかっただけよね?」
「うん! 生きたまま地獄の責め苦を味わえるなんて……こんなチャンス滅多に来ないよ! 受けるなら今でしょぉぉああああっ!」
キタキタキタキタキタキタァァァ――珠玉の痛みぃぃぃぃぃーッ!
ベリルは地獄の炎に包まれる。一分の隙もなく満遍にだ。
炎の中では地獄の拷問器具に攻め立てられているようだが、悦楽の境地にあるような歓喜の悲鳴しか聞こえていくない。時折、炎の奥にベリルの影が見えることもあるが、頭を抱えているも嬉しそうに腰をくねらせている。
極めつけのマゾっぷりには感服するしかない。
「地獄の責め苦を喜ぶなど……被虐癖にも程があるでしょう!?」
そして、クロウは困惑しきりだった。
メヅルもほとほと呆れるが、現実だから受け止めるしかない。
「神族になったらマゾ気質に磨きが掛かっちゃったみたいでね。生半可な責めじゃあ満足できなくなっちゃったのよ……でも、おかげで助かったわ」
どうしようか悩んでいたところなの、とメヅルは打ち明ける。
「助かった……どういう意味ですか?」
含みのあるメヅルの言葉を聞き咎め、クロウは骸骨の眼窩を歪めた。恐らく眉を曲げたのだろう。発言の意図を問い質してきた。
隠すこともないので、メヅルは親切心から教えてあげる。
「あなたが燃やした奴にはね、ちょっと厄介な縛りがかけてあったのよ」
これは破壊神に施された、ある種の封印だ。
とある条件下で開放され、ベリルは真の力を解放することができるのだが、その条件が意外と面倒臭いのでメヅルを困らせていた。
「その条件ってのがね……痛みなの」
究極のマゾとなったベリルが満足する――途方もない激痛。
常人どころか普通の神族でもショック死しかねない、想像を絶する痛みを与えることでベリルを快感の絶頂に導かねばならない。
それがベリルを覚醒させる条件だった。
「幼馴染みの長い付き合いでさ。昔からベリルを鞭で引っ叩いたり、尻を蹴っ飛ばしたり、最近だと毒虫で責め立てたりしてたんだけど……すっかり耐性がついちゃったみたいでね、もう私の責めじゃイケないんだって」
ありがとう――ガイコツさん。
メヅルは底意地悪い微笑みで感謝を述べる。
「地獄の拷問なんていう最高の苦痛……ベリルに与えてくれて」
「キィィィ……タキタキタキタキタキタキタキタキタキタキタぁぁぁーッ!」
業火の奥から悦びの絶叫が迸る。
「この世で生きたまま味わうことの適わない地獄の刑罰! 煉獄よりも熱い大焦熱地獄の猛火! 骨の髄まで焦がす熱量を浴びて! 激痛に鈍痛を上掛けしたかの如き耐えがたい痛みと苦しみの中…………ボクは今、目覚めるッ!」
炎の向こうで嫌な音がする。
「ザッハークッッッ……アジダハァァァーカァァァーーーッ!!」
不思議な掛け声とともに、ベリルがまた身体に爪を立てて引き裂いた音だ。皮や肉が破れて血が噴き出す音が止まらない。
それも一度や二度ではなかった。
全身の至る所を掻き毟るように、ベリルは自身を引き裂いているのだ。
地獄の業火で血肉の焼ける匂いがする。
ただでさえ八大地獄の責めを味わっているというのに、自ら苦痛のおかわりを求めていくベリルのスタイルに、常識人のクロウは戦慄しているようだ。
やがて地獄の炎を突き破り、巨大な何かが飛び出してくる。
それは――巨大なドラゴンの頭だった。
起源龍ほどではないが古代龍を凌駕する大きさだ。長い首で鎌首をもたげており、牙の間から濛々と濃い紫色の吐息を漏らしている。
「「「極上の痛みを得て……ボクの中のオレたちが今、目覚めた!」」」
ドラゴンの頭はひとつで終わらない。
「「「狂乱! 狂騒! そして狂暴! ボクの中の3つのオレ!」」」
ドラゴンの頭は全部で3つ。
それぞれの頭が口にした通り、様々な狂気を凝らしたベリルの性格を宿している。3つに分裂してしまったベリルの人格を象徴しているのだ。
解離性同一性障害――あるいは多重人格。
その残酷な半生によってベリルが背負った謂われのない苦しみ。
その苦しみから精神を守るため、自分自身の人格を保つため、マゾヒストという性癖に目覚めながらも培ってきたベリルを守護する攻撃的人格。
それが――三つ首の邪龍アジダハーカと呼応した。
破壊神様はこうも仰っていた。
『ベリルはマゾになっちまった本来の性格の他に、3つの人格を持っている。これがアジダハーカって邪龍にぴったりマッチするんだが……揃いも揃って“狂”の字を宿してるもんだから、平素は扱いにくくってしょうがねぇ』
だから封印する、とロンドはベリルに制限をかけた。
『この3つの人格は歪んでこそいるが、強大無比な精神力を持っている』
ベリルだけで神族3人分の働きができるほどに――。
『普段は1人、いざとなれば3人。三人一役ってもんかな』
その3人はそれぞれLV999に値する。
『世界を滅ぼす段階ともなれば、ベリルを痛みでイカせられる猛者も現れる。そいつの本気の攻撃を受けた時、アジダハーカは真の覚醒を迎える……』
見物だぜ、とロンドは青写真を引いて笑った。
『マゾ野郎が一転、3倍以上の力を発揮するバケモノになるんだからよ』
彼の描いた未来予想図が現実のものとなった。
三つ首の龍が長い首をパンパンになるまで膨らませ、そこに濃密な毒液をこれでもかと溜め込んでいた。触れただけで金属をも溶解させ、生身に触れようものなら細胞の一片まで染み渡って腐敗させる代物だ。
「「「んんんっぶぅぅぅ……ベノムぅぅぅ・ストームブレぇぇぇぇースッ!」」」
三つ首の龍は口を開き、毒の嵐となる吐息を噴き出した。
狙いは勿論、地獄という最高の痛みを与えてくれたクロウである。
クロウはベリルのパワーアップに一目置いたものの、押し寄せる毒の嵐に慌てるどころか怯む気配も見せず、真っ向から迎え撃ってきた。
「出でよ――八大地獄!」
先ほどよりも攻撃的な刑具とともに、地獄の業火を吹き荒れさせる。
沸き立つ毒と燃え盛る炎が鬩ぎ合う。
次の瞬間――防御結界が揺らぐ大爆発を巻き起こした。
ベリルの毒は強烈な可燃性もあるのだ。
「アハハハハッ! キタキタキターッ! もっと痛みをちょーだぁいッ!」
「ド派手な苦痛を寄越せやゴラぁ! 痛みでオレをのたうちまわせろゴラァ!」
「地獄の痛みをくれぇー! オレがオレを見失うまで狂乱させろぉーッ!」
爆発の向こう側から声がする。
3つに分かれたベリルの首が口々に喚いているのだ。
「これは……問題児のベクトルが明後日の方向に向いてますね」
続いてクロウの厳しい声が聞こえた。
「教育的指導のやり甲斐があるというか……年甲斐もなく燃えますよ!」
再び爆発が巻き起こり、地獄の火柱が立ち上る。
毒味の強い爆発の煙を突き破り、新しい地獄の刑具が突き上がってきたかと思えば、ベリルの変身したドラゴンの首が踊り狂う。
毒煙の真っ只中、クロウとベリルの死闘が演じているのだ。
還らずの都防衛戦は、この爆発により火蓋を切った。
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赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
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