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第16章 廻世と壊世の特異点
第379話:Last WeekⅠ~お母さんも癒やされたい
しおりを挟むはっきり言わせてもらえれば――疲れた。
それがツバサの本音である。
肉体的な疲労感はそこまででもないが、精神的な疲労……気疲れに近いのかもしれない。もっと率直に言えばストレスが溜まったのだろう。
原因はわかっている――ロンドとの交流だ。
キョウコウの時みたいに最初から互いを敵対者として認識し、それでも共感できる部分では戦いを通じて分かり合える仲ならば、根っからの武道家であるツバサにしてみれば付き合いやすい相手である。
だが、ロンドは異様なくらい馴れ馴れしい。
敵という意味ではキョウコウより危険なのにも関わらずだ。
ロンド本人は親密さをアピールして近付いてくるが、彼がこの世界の根絶を目指す破壊神だという事実を忘れてはいけない。
あいつは素で破滅のオーラを発散しているのだ。
ツバサならば至近距離で浴びても影響はない。平気の平左である。
しかし、周囲への被害は激甚災害級だった。
何もせずとも草木は枯れ、土は腐れ、空気は淀む。
生き物は毒気に害されるように病むだろう。
ロンドがそこにいるだけで、滅びを蔓延らせていくのだ。
そこでツバサはロンドのオーラを相殺する“気”を、覇気に乗せて総身から発していたのだ。これをしていなければロンドの現れた周辺地域は自然が枯渇し、仲間も継続ダメージを受けていたことだろう。
これが――気疲れの原因である。
何もしていないように見えるが地味に消耗するのだ。
イシュタルランドでの騒動、あの時の立ち話程度なら問題ない。だが今夜の呑み会では長時間、あのオッサンと対面していた。
その間、ずっとロンドの力を抑え込んでいたのだ。
破滅のオーラを打ち消していたストレスが臨界点を超えつつあった。
いくらツバサが我慢強いといっても限界はある。
その限界を超えるとどうなるか……。
「ちょ! ツ、ツバサさん、落ち着いて! どうしたっての!?」
ミロが滅多にないくらい狼狽えていた。
いきなりキングサイズのベッドへ押し倒されれば、しかもツバサからミロにのし掛かれば当惑するのも仕方あるまい。
いつもならミロがツバサに抱きついている時間帯だ。
呑み会から我が家へ帰ってきて、一緒にお風呂へ入って寝間着に着替えたミロは、珍しく「今日は疲れたからもう寝よ」と言い出した。
毎晩のようにツバサの女体を求めてくるミロが、隙さえあらばツバサの女神化した肢体をエロティックに味わい尽くそうとする、あのミロがだ。
本音を言えば――期待していた。
今日はミロと二人で寝る夫婦の日なので、子供たちはいない。
二人きりとなればミロは過大能力で男の娘となり、ツバサが泣いて謝るまで愛してくれる。男心は断末魔の絶叫を上げるまで女として抱くのだ。
本心ではいつも狂喜乱舞しているが……。
母性本能もまた、娘にして息子であるミロに愛されて歓喜に満たされる。
愛の営みでストレスを解消できる! と待ち侘びていた。
溜まりに溜まった鬱憤を性欲で吹っ飛ばそうというわけだ。男だった頃を思い出したツバサは、久し振りにムラムラした焦燥感を滾らせていた。
しかし、ミロもロンドとの宴会で疲れたらしい。
ツバサが守っていても至近距離でロンドのオーラを浴びていたのだ。そうでなければ今頃、いつものようにツバサへ悪戯している頃である。
なのに、疲れたから寝ると言い出した。
これにはツバサも黒目が点となり、四白眼になってしまった。
裏切られた気分である。
既にストレスは欲求不満の性欲へと変換されているので、胸の奥はざわつきっぱなしだし、お腹の奥は甘い疼きが熱を帯びている。
乳房は痛いくらい張り詰めているし、寝間着の赤襦袢にも形が浮かぶくらい乳首が乳輪ごと盛り上がっている。ミロへ詰めるため肉厚な太ももを動かす度に妖しい水音が鳴り止まない。
お腹の奥から愛欲が滴り落ちそうだった。
限界を超えて溜め込まれたストレスは捌け口を求めている。
だからツバサは――暴走した。
ベッドに押し倒されたミロは困惑しきりである。
「な、なんでそんな吐息が荒いの? ど、どうしてそんなホッペが燃えるみたいに真っ赤なの? な、な……なんで雌ライオンみたいに舌舐めずりするの?」
浅い呼吸を繰り返さないと、昂ぶった気持ちが抑えられない。
頬に限らず顔中が、いいや全身が熱い。
獲物を捕らえた雌獅子のように舌舐めずりすると、ミロのか細い両手首を右手で素早くひとまとめに掴み、万歳するように頭上へ持ち上げる。
抵抗する力を奪い――むしゃぶりつく。
「へっ? んむぅ……ッ! んんじゅんんむぅぬぅぅぅぷっ!?」
有無を言わさず唇を押し重ねていく。
彼女の可憐な口を塞ぐように、開いた唇で噛みつくようにミロの唇を貪る。されることはあってもすることはほとんどない、相手の口腔内に舌を差し入れて嬲り尽くすかのように、歯の一本から歯茎の隅々まで蹂躙する。
「むむむ~ッ!? ぶぅべぶぷぅむぅ~ッ!?」
なんとなく「情熱的~ッ!?」と言っているような気がした。
抵抗しようとするミロの小さな舌さえも捻じ伏せているのに、よくここまで声を出せるものだ。変なことに感心してしまう。
――窒息しそうなほどのキス。
後にミロが「唇や舌を噛み千切られるかと思った……」と述懐するほど荒々しいものだった。興奮のあまり加減ができなかったらしい。
口づけで満足できるはずもない。
互いに息苦しさを覚えるくらい唇を重ねたところで、未練がましく涎の橋を繋げたまま顔を離す。ツバサは唇にまとわりついたミロの唾液を舐め取りながら、寝間着代わりの赤襦袢を大きくはだけさせた。
こぼれ落ちる双球、特大Mカップのブラでようやく保持できる超爆乳。
片方だけでも子供なら抱えきれない大きさの乳房だ。
ポロンとかタプンでは物足りない。ドタプン! ともういべき重々しくも限りなく柔らかそうな擬音語を使うことで、その重量感を正しく伝えられる。
その乳首は溜まりに溜まったハトホルミルクを滲ませて硬く太く尖り、乳輪までもが痛そうに普段の何倍にも盛り上がっていた。
乳首から滴る神聖な母乳の香りが立ち上る。
上から迫ってくる超爆乳に、さしものミロも気圧されているらしい。いつもなら一も二もなく吸いついてくるのに、今夜はたじろいでいた。
「ハ、ハハハ……ツバサさん、今日は大胆だねぇ」
そんな軽口を叩くのが精々のようだ。
気持ちを落ち着けたいのか、ミロは大きく口を開いて深呼吸をした。
その口に漏れたハトホルミルクの一滴が滴り落ちた瞬間、ツバサは躊躇うことなく右の乳房をミロの口に含ませ、無理やり吸うように仕向けた。
「んむうぅ!? んんん……んくぅ、んくぅ、んくぅ……」
ミロも慣れたものである。
ほぼ強制的手な授乳とはいえ、反射的に吸いついてきたのだ。
おかげで快感が一度に爆ぜた。
「……っ! はぁ、ああああ……いい、もっと、吸って……」
飾ることのない母性の本音まで漏れてしまう。
張り詰めた乳腺からハトホルミルクが吸い出される開放感と脱力感、数ある性感帯でも特に敏感になった乳房を刺激されて感じる女性の肉体での喜び、子供の授乳するという母性本能を満ち足りたものにする喜び。
多幸感を重ね掛けされたような快楽が背筋を何度も往復する。
「あっ、むぅ、んんっくぅ……こっちも……はぁぁ……」
開いている左手でミロが吸いついていない左の乳房を揉みほぐすと、右の乳房に負けじと大量のハトホルミルクを漏らす。
母乳がシーツを汚すことを気に留める余裕もない。
ただ乳房から生じる快感に酔い痴れた。
気持ちよすぎて腰が抜けそうになり、ミロの両腕を押さえていた右手を離して左手と一緒に自分の身体を支えるのが精一杯になる。仰向けに横たわるミロの上に、四つん這いで覆い被さっているような案配だ。
本当、ミロは心得たものである。
「ぷはぁ……んんっ、んくぅ、んくぅ、んくぅ……」
息継ぎするように右の乳房から口を離すと、反対側の左の乳房へ吸いついて授乳を求めつつ、自由になって両手で右の乳房を愛撫してくれた。
普段なら男心が騒いで「やめろ!」的な喘ぎ声を漏らすところだろう。
しかし、今夜のツバサはこれを待っていた。
「はぁ、んんっ、あぅ……もっと、吸って、ミロ……溜まってるの、全部吸い出して、搾り出して……あああっ! ううっ、くぅぅぅ……あっん!」
より一層の愛撫を求め、甘く切ない声で求めてしまう。
こうなってくれば、たとえ疲れていようとミロも乗ってくる。
「んぐ、んぐ……ぷはっ! いや、ホント溜まりすぎじゃない、ハトホルミルク? 飲んでも飲みきれないのはいつものことだけど、搾って搾ってもツバサさんのおっぱい、重く張り詰めてきて……うおっ、プレッシャーで潰されそう♪」
ツバサの女性としての性感帯はミロに開発されたもの。
特にMカップとなった超爆乳などは、乳首や乳輪など感度のいいところだけではなく、乳房全体が感じるようにされてしまったくらいだ。
スペンス乳腺――とかいうらしい。
そのおかげなのかせいなのか、ツバサの乳房は軽く触られただけでもじんわりとした気持ちよさが湧き上がる、性感帯の宝庫になってしまった。
「あっ、ミロ……胸ばっかり……んんっ、あ、はぁぁ……んっ!」
軽い絶頂に達した感覚に全身が痙攣した。
奥歯を噛み締め、ビクンビクンと女体を震わせて堪える。
乳房を弄くり回され、ハトホルミルクという母乳をミロの顔どころかベッドまでしとどに濡らすほど搾られ、女と母の快感に翻弄されていく。
「ツバサさん、おっぱいが一番いいんでしょー? さっきからちょっと揉むだけでハトホルミルクがシャワーみたいに出てくるもんね」
搾るまでもない、軽いタッチでダダ漏れだった。
蕩けそうな頭にミルクのあふれる音が聞こえそうなくらいだ。
「もうおっぱいだけでイケるもんねー? 見栄張んなくていいんだよ」
ほら、こっちも……とミロはしなやかな脚を動かす。
膝を折り曲げて引き寄せたかと思えば、足の指先をツバサの股間へと押し当ててきたのだ。赤襦袢越しに股間を指先で弄んでくる。
「まっ、待って……そっちは!? ま、まだ……くうっ!?」
下着は着けていないので防御力は薄い。
薄布の赤襦袢を指先でかき分け、スルッと忍び込んでくる。
既に濡れそぼっていたそこは、ミロの指先で粗雑に扱われただけで大きな臀部を持ち上げるほど腰を浮かせてしまった。気持ちよすぎて、ソフトタッチでもすぐにまた達してしまいそうだ。
ミロも腰を浮かせると股間を押しつけてくる。
そこには男の娘となったミロの男性器が固くそそり立っていた。
ミロは完全にやる気モードだ。
ツバサもまた「足の指なんかじゃなく、このミロの逞しいもので貫かれたい」と譫言のように口走りたくなってしまった。
しかし最後の男心が、直前でこの発言を差し止めた。遠からず貫かれる未来は変わらないのに、どうしても言葉にしたくなかった。
それでも女性化した肉体は最愛の男を求めて已まない。
ミロの逞しいものの熱を感じた瞬間、浮かせていた腰を下ろしてすり寄せてしまう。今すぐにでも奥の奥までかき回されたくて溜まらなくなる。
女性の本能に流されるも、当初の期待通りに事が運んだのは歓迎しよう。
だがひとつ、困ったことに思い至る。
誘っておきながら――ツバサはここから先へ進めなかった。
気疲れのストレスから男時代のようにムラムラして、それを性欲で解消しようとしたのは認めるが、ツバサは男をリードする術を知らない。
ツバサの女体はされるがままに愛されることしか知らないのだ。
女性の身体で男を気持ち良くさせる方法がわからない。
男の頃ならば女性をリードできたが、女性となった今は何をどうすればいいのか、未だによくわからない。毎晩のようにミロに愛されているので行為の最中に覚えればいいものを、気持ちよすぎてろくに集中できたことがなかった。
白熱忘我の中、いつもミロにされるがままだった。
いいかげん、女として男の喜ばせ方の十や二十は学ぶべきだと思うのだが、なけなしの男心がどうしてもそれを拒む。
いざ事に臨めば、女性の性感に屈してそれどころではない。
実際、今も主導権が逆転しつつある。
ツバサが押し倒して四つん這いになり、ミロの小さな身体を抑え込むようにしていたが、その状態でも攻め手はミロに奪われつつあった。
ここから巻き返すことなどできない。
女神化したツバサの肉体は欲望と快感に突き動かされており、最愛の伴侶にして娘であり息子でもあるミロに揉みくちゃされたかった。
ミロの言う通り、見栄を張る余裕などない。
潤む瞳を前髪で隠したツバサは、戦慄く口から震える声を絞り出す。
できるだけ、可愛らしい声で――。
「ミ、ミロ……お、願い……無茶苦茶に…………愛して」
か細い声で縋るように頼むのが精一杯だった。
ミロは一瞬だが愛撫の手を止めると、キョトンとした表情になった。だが、すぐに満面の笑みを浮かべると、ツバサの願いを快く聞き届けてくれた。
「オッケー♪ 任せて!」
~~~~~~~~~~~~
「……なんて安請け合いしたのが命取りでした」
翌日、ミロは衰弱死しかけていた。
顔は精気を失ったように痩せこけて、目元は何重にも隈が重なって落ちくぼみ、手足も心なしか細くなっている。いつもきっちりまとめられた(セットしているのはツバサだが)シニョンの髪型も、ありえないほど型崩れしていた。
全体的に色素も抜けており、燃え尽きた灰のように真っ白だ。愛用のチューブトップブラやショートパンツの部屋着もブカブカである。
痩せ細ったミロは、リビングのソファで腹ばいに寝転がっていた。
「んな、ミロ珍しくお疲れな」
ソファの向こう側からヒョコッと顔を出したのはトモエだった。
――トモエ・バンガク。
ハトホル一家の四女にして腹筋系アイドル。神族としては蛮神で知能に弱体化を受ける分、肉体能力や運動神経が爆上げされる特徴を持つ。
そのため少々舌足らずな話し方をする。
少女らしい上背、発育も程良いものだが蛮神の恩恵に受けているため年頃の娘にしては筋肉質なのが目立つ。腹筋など見事に割れている。
ついたあだ名が腹筋系アイドルだ。
いつの頃からか日常では体操着を愛用するようになっていた。ブルマなんて今や絶滅して久しい衣装を普段着にしているのは彼女くらいのものである。
ソファにもたれかかり、干からびたミロの頬を突っついた。
「ベタを塗り忘れた線画みたいになってるな」
ベタとは漫画用語でイラストの黒い部分を塗ること。例えば髪や影、黒い服などがそれである。陰影のコントラストをはっきりさせるものだ。
トモエは漫画やイラストを描くので、こういう単語はよく知っている。
「ベタだけじゃ嫌~……トーンもしこたま貼ってぇ……」
「んな、それは漫画家さん次第な」
バランスが大切な、とトモエは絵描きらしいことを口にする。
ミロは気怠そうに顔をトモエへと振り向かせた。
「……あ、トモちゃん久し振りぃ~……何ヶ月ぶりだろ?」
「昨日も一昨日も毎日会ってるのな!?」
心外な!? とトモエはショックを受けた
あぁー……と呻きながらミロはゴロンと寝返りを打つ。
「ごめん、ボケちった……なんかトモちゃんと共演するのすっごい久し振りの気がしたもんで……毎日顔を合わせてるのにねぇ」
「んな、メタ発言いくない」
そだねぇ……とやる気のない相槌を打ちながらミロは寝返りを打つ。
「それでな――なんでお疲れモードな?」
「あぁぁ……これ、ツバサさんと愛し合った結果なの……」
「んなぁ、にしても珍しいのな。二人きりの夜は毎日毎晩エッチなことヤッてるって知ってるのな。でも、そんな疲れたミロはお初なのな」
「昨日はねー……なんか特別だったのよー……」
普段ならツバサからミロを押し倒すなんて有り得ない驚愕のシチュエーションから始まり、熱烈なディープキスや母乳で溺れそうな授乳を経て、ついにツバサから「滅茶苦茶にして!」と懇願してくるという怒濤の展開だった。
疲れていたミロも頑張ったのだが……。
「21回目から記憶がないの……抜かずに五発とか、『やめて! もう無理! もう出ない! 助けて!』と泣き喚いてから何回も……ううっ!」
ミロは両手で顔を覆ってさめざめと泣き始めた。
「……聞いてるだけで壮絶なのな」
「うん、壮絶かつ凄絶に、全部吸い取られた感じ……」
半眼のトモエは青い顔で精根尽き果てたミロに同情した。それから視線を横へ流していくと、ソファの向かい側の光景を指摘するように言った。
「じゃあ、あれも無関係じゃないのな?」
「多分……アタシが搾り取られたのと関係アリアリだと思う……」
ミロが寝転がるロングソファの向かい側。
反対側のロングソファにはツバサが腰掛けていた。
全面戦争まで――残り一週間。
それでも今日だけは休みをもらい、身も心も寛がせてもらった。
無地のワイシャツにゆったりしたスラックスで過ごしている。スカートを普段着として着ることはまだ慣れていない。
ツバサは――精気に満ちあふれていた。
いつも以上に肌がツヤツヤでモチモチプリプリになっており、異常なくらい血色がいい。ミロから吸い尽くしたといっても過言ではない精気のおかげで、後光が差して見えるくらい肌の艶が輝いていた。
表情は満ち足りた慈愛の微笑みを讃えている。
「うなっ! 後光が眩しいのな……まるで観音様なのな」
「観音様って男なのか女なのかよくわかんないよね……どっち?」
トモエの率直な感想に、ミロは本当によくわからない返事を返していた。どちらかといえばフミカに質問するべき疑問である。
簡潔に言えば――観世音菩薩は男でも女でもない。
修行によって性別を超越した存在であり、どちらでもなければどちらでもある。時に無性にして時に両性具有、なので女性的な姿を取ることもあれば、髭が生えた男性の姿で絵姿や仏像に表されることもある。
性欲が臨界突破した仏僧の煩悩を解消するために女性の姿で現れた、なんて説話もあるくらいだ。また女性の局部を“観音様”と呼ぶ隠語もある。
ゆえに女性的イメージが強い仏様というのもまた事実。
『仏教の神仏って中央アジアの神々や悪魔を取り込んできた経緯もあるんで、観音様はいくつかの女神をモティーフにしたって説もあるッスよ』
フミカが教えてくれたことを思い出す。
観音菩薩にたとえられるほど、今のツバサは穏やかに見えるらしい。
実際、満ち足りているから落ち着いている。
昨晩は途中から再び攻守逆転するほど、女となったツバサが男の娘となったミロの肉体を貪ることでムラムラ性欲を発散することができた。
おかげでストレスも綺麗さっぱり吹っ飛んだ。
ミロの男としての精力をツバサが女として吸い上げることで、活力が満ち満ちているのも大きい。おかげで心身ともに溌剌である。
だが――まだ足りない。
今度は癒やされたくなってしまった。
ここ最近、最悪にして絶死をもたらす終焉絡みでバタバタしていたせいか、精神的疲労が澱むように溜まっていたらしい。ミロのおかげで発散できたものの、今度は疲れた心が癒やしを求めてきたのだ。
そこで愛すべき子供たちに協力を仰ぐことにした。
お母さんに相応しい巨尻を深々とソファに沈め、背もたれに身を預けるツバサの周りには小さな子供たちがこれでもかと群がっていた。
五女 マリナ・マルガリーテ。
六女 イヒコ・シストラム。
七女 ジャジャ・マル。
末娘 起源龍ジョカフギス。
いつもなら還らずの都を管理している灰色の巫女ククリも、「母様の一大事と聞きまして!」と馳せ参じてくれた。ククリの母親の魂を受け継いだツバサは、彼女から実母同然に慕われていた。
そして次男――ヴァト・アヌビス。
ヴァトはククリと対照的に「ぼくは男なので……あの、そういうの無理です!」と逃げ出したが、ツバサが強引に引き留めた。
娘ばかりも悪くないが、数少ない息子にも甘えられたい。
ツバサの中の神々の乳母が囁き、気付けばヴァトの首根っこを掴んでいた。
ツバサは娘たちを抱き寄せ、娘たちはツバサに甘えてくる。
それだけで――癒やされた。
神々の乳母が満足するのは勿論、オカン系男子も満更ではない。
ハーレム(子供)気分に浸ることができた。
ツバサは思い出したように手を持ち上げると、甘えてくる娘を抱き寄せて頬ずりしたり、子供特有のいい匂いがする頭髪に鼻を埋めてクンクン嗅いだり、その柔らかい頬に小さなキスを連続でしたり……。
とにかく、愛でに愛でて愛でまくらせてもらった。
子供たちもまた、ツバサの母なる女体に遠慮なく甘えてくる。
マリナは王女様を意識し、イヒコは指揮者をイメージしたファッション。それが戦闘などでも身に付けるフォーマルな衣装なのだが、今日はどちらも10歳の少女に相応しい部屋着で過ごしていた。
「センセイ、センセイ、センセイ……お母さん、ママぁ……」
「ツバサさん、ツバサさん、ツバサさん……お母さん、お母さん……」
二人とも夢見心地で呟いている。
マリナは右側から、イヒコは左側から、ツバサに抱きついている。
それぞれ片方の腕をツバサの超爆乳の下に回して持ち上げ、もう片方の手で胸にしがみつき、乳房に顔をおもいっきり埋めてくる。
乳房に顔型がつきそうな勢いでだ。
ツバサの胸に抱かれているのは、ジャジャとククリの二人。
元少年ながら紆余曲折を経て七歳の幼女に生まれ変わったジャジャは、幼児向けのフード付きつなぎを着せられていた。
「母上……母上……くぅ、くぅ……スヤスヤ……」
ツバサの胸の谷間に埋まり、安心した寝息を立てている。
現実では母親と辛い別れを経験しているようで、母性に求めるところは大きい。幼女化してからはそれが顕著になっていた。
……そろそろ男だった過去を忘れてるんじゃないか?
そんな心配をしてしまうほど幼女っぷりが板についてきた。
胸の谷間に埋もれているジャジャだが、寝ぼけながらツバサの乳房に吸いついているくらいだ。夢の中で授乳されてる気分なのだろう。
そんなジャジャを抱きしめ、ククリもツバサの胸に収まっていた。
「ああぁ、母様……ククリは幸せ者です……またこうして母様のお胸に抱かれて、甘えることを許されるなんて……母様、母様、母様、母様母様母様……」
若干メンヘラっぽくて怖いものを感じる。
巫女服を現代風にアレンジした可愛い服に身を包んだククリは、ジャジャを妹のように可愛がりながら、ツバサの胸に全身を預けてご満悦だ。
マリナたちもそうだが彼女も重度のマザコン。
ジャジャとは毛色が異なるが、ククリもまた母親との別れで悲しみに暮れた過去があるので、やっぱり母親の温もりに飢えているのだ。
ヴァトは――ツバサの肩に引っ付いていた。
特等席であるおっぱいは満席なので「ぼくの居場所はないですね!」と逃げようとしたのだが、ツバサは過大能力で長い髪を操るとヴァトを拘束してイヒコの隣に引き寄せ、肩へと抱きつくように縛り付けたのだ。
純真な少年はこれでも恐れ多いらしい。
顔を真っ赤にして心臓がパンクしそうなほど鼓動を高めており、ブツブツと経文を唱えるように何事かを呟いていた。
「心頭滅却すれば火もまた涼し、心頭滅却すれば火もまた涼し……ッ!」
お母さんに寄り添うのは修行か!? とツッコみたい。
どうもヴァトは女性に肉体に対してエッチな気持ちになるのはいけないことだ、と自省している節がある。いやらしさへの拒否反応が強い。
この年頃の男の子にはよくあることだ。
ツバサを母親のように慕うも、それさえ恥ずかしいのか尊敬を込めて「師匠」としか呼んでくれなかった。まれに「お母さん」と誤爆するが。
愛い奴よ……と母性本能が擽られてしまう。
「心頭滅却すれば火もまた涼し、心頭め、め、め……ヴァプン!?」
遊び心で顔を近づけて頬と頬を擦り合わせてやると、派手な音をさせて鼻血を噴きながら白目を剥いてしまった。
この次男、女性に対して免疫がなさ過ぎる。
仕方ないのでお母さんが慣れさせてあげよう、と心に誓っておいた。
最後に――起源龍ジョカフギス。
真なる世界を創り上げた創世神の一柱でありながら精神性は幼く、ツバサを慕うあまり人間体に化身してツバサの娘となった原初の龍だ。
どれだけ子供が増えても、自分が末っ子だと言い張っている。
『だって僕、人間としての年齢が一番下だもん』
そのように言い張って、ずっと末娘でいたいというのだ。ツバサが子供に迎えた中では最年少のジャジャより序列は下である。
しかし、人間化したジョカはとても末娘には見えなかった。
身の丈2m10㎝もある巨女ながら、絶世の美少女という逸材なのだ。スリーサイズもツバサに負けず劣らずのグラマラススタイルである。
元が龍なので窮屈な服は好まず、浴衣みたいな衣で過ごしていた。
龍である彼女は人間体になっても宙にプカプカと浮かんでいることが多く、今もツバサの頭上に浮いていた。その状態でこちらの頭に抱きついている。身体の方はもう定員オーバーなので、空いているところがそこしかないのだ。
いつも空中にいるジョカにすれば定位置である。
ツバサの疲れを慰撫するため、抱きついた頭を「よしよし……」と撫でてくれていた。元男であるツバサも悪い気はしない。
しかもこの体勢、ジョカの爆乳がおもいっきり頭に乗るのだ。
自前でMカップの爆乳を抱える女神になろうとも、かつてツバサはレオナルドと至高の巨乳について激論を交わすほどのおっぱい星人である。
こんなの――ご褒美にしかならない。
「よーしよし……どうツバサさん? セイメイもこうすると喜ぶんだよ」
「あの野郎、毎晩こんな極上体験してるのか……」
イラッとしたツバサは、思わず額に青筋を浮かべてしまった。
殺意すら覚えそうだ。
ハトホル一家の穀潰し用心棒――セイメイ・テンマ。
剣術の腕前ならツバサも認める達人。今や剣豪や剣聖を通り越して剣神の域に達しているが、やっとう以外は何にもできない男である。
今度の全面戦争では、その剣の冴えを存分に振るってもらうつもりだ。
彼はひょんなことからジョカを妻として娶っていた。
そうすると系図的にはジョカはツバサの娘になるので、セイメイは娘婿ということになるのだが……わざと直視せずにいた。
悪友ではあるものの、あのろくでなしを義理の息子と認めたくない。
時たまセイメイがおふざけで「お義母さん♪」と呼んでくる時があるけど、全身全霊の拒絶を込めて張り倒している。当人もツッコミ待ちなので許されるはずだ。
なんによせ――大分癒やされてきた。
認めたくないが、ツバサもかなり母親が板についてきたらしい。
子供たちとスキンシップをすると癒やされるのだから、母性本能に毒されてきた証である。男心は決して認めないが、やめられない止まらない。
もう少しでやる気も回復してきそうだ。
子供たちの奉仕に感謝していると、目の前に影が立った。
「――水臭いですよ、ツバサ様!」
ハトホル一家 メイド長 クロコ・バックマウンド。
クラシカルなメイド服を身にまとう、無表情がデフォルトの爆乳美女。
その正体はSとMを使い分ける、様々な性癖に造詣の深い変態だ。多少の好き嫌いはあるが、変態性癖は一通り嗜んでいると豪語する紛うことなき変態だ。子供の情操教育に悪いので解雇したい人材№.1である。
「いいえツバサ様、私は変態ではありません……」
クロコは表情は据え置きで、登場からのポージングを大袈裟に変えた。
表情に乏しい分、ボディーランゲージは豊富な女である。
「……ド変態ですッ!」
「訂正を求める方向がおまえらしいな」
冷めたツッコミを入れるのも野暮だが、こうして蔑んだ視線で指摘すると喜ぶのだから手に負えない。息みながら小さくビクンビクン震えている。
「ふぅ、さすがツバサ様……今の一瞥で軽くイキました」
「そんな軽々しく絶頂しないでくれ……本当、命令しにくくなるんだから」
仕事をやらせれば超有能なのだが、これが困りものだ。
おまけにクロコは神族・御先神。
特定の主人を自ら選んで服従を誓うことでボーナスが発生するのだが、逆にいえば主人に反抗したり裏切ればペナルティが発生する。
もしも解雇しようものなら最悪、絶命する可能性さえあるのだ。
おかげで見捨てるわけにもいかず、ツバサはクロコを雇い続けている。
「それはそうと……水臭いですツバサ様!」
登場時の文言を繰り返したクロコは、右足の爪先のみで立つとバレリーナのように手足を伸ばしてその場でクルクルと回転するように踊り出した。
無表情ながら感情たっぷりに訴えてくる。
「ミロ様が枯れ果てるほど激しい夜の営みを繰り広げ、それでも満足できずお子様たちと過剰にふれ合うことで得られる多大な癒やしをお求めになるほどお疲れだというのなら……何故このクロコに相談してくれなかったのです!?」
「いや、相談したところで……どうするの?」
クロコの過大能力は回復系ではない。
回復系技能も習得しているが、ストレスを癒やしてくれるものはない。そんな都合のいいものがあれば、ツバサが自分自身に施している。
愚問です! とクロコは天を仰いだ。
「このクロコの全身全霊全魂全神経を捧げまして、ツバサ様を慰労させていただく所存にございます! 今からでも遅くありません!」
言うが早いかクロコは――素っ裸になった。
彼女のメイド服がどのような構造になっているのか知らないが、肩に手をかけて頭上に振り上げたかと思えば、スポーンと一気に脱げたのだ。
いつの間にか、床には大きな皿が置かれている。
生まれたままの姿になったクロコは(メイドカチューシャは付けたまま)、その皿の上に横たわると、両腕を胸の前で交差させて胎児のように丸まる。
瞳を閉じて澄まし顔になると、恥ずかしそうに呟いた。
「さあ、ご遠慮なさらずに……どうぞ」
せっかくの申し出なので遠慮なく――轟雷を叩き落とした。
人差し指をクン! と下に落としただけだ。
轟雷は劈く激音を鳴り響かせ、幾度となくクロコに降り注いだ。
間髪入れずに地獄の底から焦熱のマグマを召喚すると、火柱のように噴き上げさせて、その柱の真ん中にクロコを放り込んだ。
火柱が消えると、今度は極寒地獄の分厚い氷へ閉じ込める。
その氷を破砕するほどの衝撃波を与えた後、召喚したままの地獄の穴を床に広げると、そこへクロコを叩き落としてやった。
なんとなくムカついたので全力攻撃した――反省はしない。
「ツバサ様ぁぁぁ~……最高のご褒美ですぅ……恐悦至極に存じますぅ……ッ!」
案の定、重症マゾのクロコはこの地獄の責め苦を悦んでいた。
「あぁぁぁ……ドップラァァァ効果ァァァ……ッ!」
「いや、そんな速さで落ちてねえだろ」
床に空いた奈落の底から聞こえてくるクロコ渾身のボケに、ついツッコミを入れてしまった。本当、彼女と付き合っているとツッコミばかり上手くなる。
あのド変態のこと、3分と待たずに戻ってくる。
ちょうどいい憂さ晴らしもできたので、感謝してもいいかも知れない。
「……もしかして、狙ってやったのか?」
あんな変態行為を子供たちの前ですれば、ツバサの逆鱗に触れるのは必定。全力のお仕置きをさせるのは予測可能回避不可能のはずである。
それを承知でクロコは、塞ぎ込んでいたツバサを元気づけてくれたのか?
「センセイ、それは考えすぎです」
「クロコさん、筋金入りの変態だからね。ナイナイ♪」
ツバサが否定するより早く、マリナとイヒコが辛辣に全否定した。
二人を抱き寄せながらため息をつく。
「ま、鬱憤が晴れたのは本当だしな……一応、感謝しとくか」
「――でしたら幸甚の至りにございます」
いつの間にか、ツバサたちの背後に無傷のクロコが佇んでいた。
ちゃんとメイド服を着直しており、エプロンドレスを盛り上げる胸元に手を添えて一礼している。まるで何事もなかったかのようだ。
この神出鬼没ッぷりには、さすがのツバサたちも後退ってしまった。
~~~~~~~~~~~~
最後の一週間――全面戦争まで残り6日。
昨日は丸一日子供たちと触れ合うことで心身ともに癒やされたので、リフレッシュすることができた。そうでなくとも神族の回復力は素晴らしく早い。
回復したツバサは朝から方々を回っていた。
四神同盟の各所では、開戦に向けて最後の追い込みを掛けている。
それら作業の進展を視察して回るつもりだ。
最初に訪れたのはハトホル国の我が家にある執務室。
――の隣に急遽設けられた作業室。
町中にある小さな工場くらいのスペースには作業台が並べられており、そこで数人の神族が作業に従事していた。机に向かって熱心に作業する彼らが作ったものは、次から次へと大きめの箱に収められていく。
その梱包作業は――妖人衆の女房が務めている。
妖人衆は元人間。様々な時代から神隠しによって真なる世界へと飛ばされ、妖怪のような外見と能力になってしまった人々だ。
これは地球よりも濃厚な“気”で満たされている真なる世界の影響で、妖人衆は特にその“気”が淀んでいる場所に隠れ住んでいたためだった。
働いている女房たちは、すっかり人の姿を取り戻している。
ハトホル国は大地母神であるツバサが“気”を安定させているため、ゆっくりとだが彼らは人間らしい外見に戻りつつあった。
ただ、能力的なものは残るので完全な人間には戻れない。個人差はあるが、変化が定着してしまった者も少なくない。
一見すると人間なのだが、細部には異質さが残っていた。
耳先が獣っぽく尖っていたり、両眼が複眼だったり、舌が異様に長かったり……人間らしさを取り戻したものの、妖怪だった頃の名残があるのだ。
このため“妖人衆”という独自の括りで呼ばれていた。
彼女たちが工場アルバイトのように働いているのには理由がある。
妖人衆のまとめ役がここで働いているからだ。
妖人衆の象徴的存在にして巫女姫、イヨ・ヤマタイ。
並びに妖人宗を実務的にまとめる乙将、オリベ・ソウオク。
ツバサの眷族として神族化した彼らがある魔法道具を作るために駆り出されているので、そのお手伝いをしてくれているのだ。
この作業室で働いている神族は――全部で四人。
イヨとオリベの他には、ヨイチとプトラが物作りに没頭している。
タイザンフクン陣営 執事 ヨイチ・クリケット。
ハトホル陣営 三女 道具作成師 プトラ・チャンドゥーラ。
プトラはコギャル風女子高生である。
ヴァトやイヒコとともにハトホル一家に仲間入りすると、自分もツバサの娘になると言い出して三女の序列についた。コギャルなのに薄化粧が似合う、いいや化粧などせずとも十二分な美少女だ。
ファッションセンスは紛うことなきコギャルだが――。
ツバサに比べれば全然だが、スタイル的には標準を越えている。普通に巨乳美尻と持て囃されるナイスバディだろう。
彼女は自他共に認める、一人では何もできないダメ人間だ。
しかし――道具作りの才能がズバ抜けていた。
水筒を作らせれば無限に水が湧き、ライターを作らせれば樹海を灰にする。
プトラの作る道具は、いつだってオーバースペックだった。
そんな彼女には手作業でしか作れない、特殊な魔法道具の大量生産を頼んでいたのだが、しばらくすると泣きつかれてしまった。
『アタイ一人じゃ手ぇ回らないし! 有能な助手プリーズ!』
……さすがに一人で100万個近くの魔法道具を、しかも工場での量産ではなく家内制手工業的に作ってほしいという注文は無茶だったらしい。
そこで工作系技能を持つ者に何人か当たってみた。
物作りといっても分野によって得手不得手がある。ダインとジンはその恒例なのだが極端な話、ダインは機械系が得意だが料理は不得意だし、ジンは料理系はプロ級の腕前だが機械系はイマイチだった。
やがて白羽の矢が立ったのが――ヨイチである。
先日のロンドとの宴席では給仕役も引き受けてくれた紅顔の美少年は、工作者としては道具作成師の適性があった。
そこでプトラのお手伝いを頼んだ次第である
ツバサが頼んだ「面倒な仕事」とはこれを指していた。
作業机に並んで座るプトラをヨイチは、彫刻刀を手にしていた。
それで彫るのは、ダインとフミカが量産体制を整えることで安定供給が可能となった人工龍宝石。大きさは胡桃くらいのサイズ感はある。
それに彫刻刀で魔法の刻印を彫り込む。
龍宝石とは――謂わば究極のブースターツールだ。
様々なエネルギーを注げば、それを内部に溜め込んで限界まで増幅させる。それを消費したとしても時間経過で回復、再びフル充電まで持って行く。
蓄電器と自家発電機の機能を併せ持っているのだ。
この龍宝石、使い方は無限大である。
そこでプトラのオーバースペックな技術で加工してもらい、全面戦争のある局面で役立ちそうな秘密のアイテムを作ってもらっていた。
まず、プトラとヨイチが龍宝石に魔法の刻印を彫り込む。
一秒間に三個のペースで彫っていた。
これにより刻印を刻まれた龍宝石は、ある機構の心臓部として働くようになり、溜め込んだエネルギーをそのためだけに行使するようになる。
刻印された龍宝石は次の工程に回される。
2~300個まとまったらお盆のような板に乗せられ、イヨの待つテーブル運ばれていく。たくさんの龍宝石にイヨは手をかざした。
巫女姫イヨ――またの名を万里眼のイヨ。
十歳くらいの銀髪美少女にしか見えない彼女だが、地球から飛ばされてきた時は既に40歳近く、こちらの世界では100年以上生きている。
名実ともに立派なロリババアだ。
(※口が裂けても当人の前で言うわけがない)
彼女の妖人衆としての異能力は万里眼。千里眼を越えた遠隔視能力である。それは空間はおろか次元や時間さえも飛び越える超視覚だ。
イヨの額に――大きな宝石の如き第三の眼が開眼する。
これこそが万里眼。この瞳を通して、遙か遠くの物事を見聞きするのだ。
かざした彼女の掌に様々な情景が浮かぶ。
絶えず聞こえてくるのは戦争の最中にあるような鬨の声。刀や槍が打ち合う音、火薬の爆ぜる音、騎馬が駆ける音……猛々しい音が響いてくる。
イヨの万里眼が見通す、どこかの戦乱の風景。
その熱気がスルスルと龍宝石へ吸い込まれていった。内部で強烈なエネルギーへと変換されていき、激しい明滅を繰り返している。
――それだけではない。
もっと多くの人々の想いが、龍宝石に注入されていた。
理想、尊敬、夢想、憧憬、渇望……時代を経ても人々が思い描く強者への憧れとでも言えばいいのか、それをイヨはかき集めてくれていた。
余す所なく――龍宝石に収められていく。
明滅が落ち着いたところで、最後の工程へ回される。
担当するのは乙将オリベだ。
お洒落好きな武家のご隠居といった風体の彼は、かつて古田織部という茶道日本一まで登り詰めた茶人にして武将にして大名だった……らしい。
状況証拠はあるのだが、未だに本人が認めないのだ。
イヨとともに神族化した今では、妖人衆をまとめる奉行のようなことをしながら、ハトホル国の政治を取り仕切るツバサの補佐をしてくれていた。
ツバサは彼のことを「爺や」と思っている。
オリベは自分の元に数百個の龍宝石が回されてくると、イヨと同じように手をかざした。その手から流動性の高い粘度のようなものが溢れ出す。
――碧覚練土。
オリベの獲得した異能力で、変幻自在の粘土を操るものだ。
この粘土はスライムのように形を変えるも、彼が命じれば一瞬で硬化して強化セラミックの如き陶器に早変わりする。オリベが神族化した今、その硬度はオリハルコン以上アダマント未満まで高められていた。
それを止め処なく無数の龍宝石に浴びせていく。
龍宝石はこの粘土もスポンジが水を吸い込むように吸収していった。
これでひとまず完成――である。
完成したものを妖人衆の女房たちが引き取り、100個ずつ小分けにして小箱に収めていき、それを大きな箱にまとめて梱包していく。
部屋の開いた空間に、箱詰めされた加工済み龍宝石が積まれていく。
作業は順調に進んでいるようだ。
部屋の外から少し様子見をしていたツバサは、手荷物を片手に作業室へと入っていった。真っ先にオリベが気付くと、起立して頭を下げてきた。
「これはツバサ殿、陣中見舞いでござるかな?」
目聡いオリベはツバサの手荷物に勘づき、そう冷やかしてきた。
全員の手が止まって挨拶される。
イヨも起立して頭を下げ、習うようにヨイチも立ち上がって頭を下げてくる。妖人衆の女房たちも立ち止まり、深々と頭を下げてきた。
「オカンさん、チィース」
座りながら片手を上げたのはプトラだけだ。この娘らしいといえばらしいが、やっぱりコギャルである。今後、もっと礼儀作法を躾けるべきだろう。
まあ家族という気安さもあるかも知れないが……。
ツバサは軽い会釈で応じると、手にした紙袋を見えるように掲げた。
「ああ、お疲れ様。みんなちょっと休憩にするといい」
中身は作業室で働く全員分のシュークリームだ。勿論、お手伝いしてくれる妖人衆の女房たちの分もだ。道具箱に紅茶を煎れたポットも用意してある。
紅茶とお菓子をみんなに配っていく。
シュークリームを頬張るプトラは、床を蹴ってキャスター付きの椅子を転がすとヨイチの隣にぴったりくっついた。
「ヨイチンお疲れー♪ いやー、優秀な助手が来てくれて大助かりだしー♪」
「あ、あははは……どうもです」
馴れ馴れしく肩に手を回し、実の弟のように可愛がっている。
肩に回した手を引き寄せて、頬と頬がくっつくほどすり寄せていく。馴れ馴れしいを通り越して、熱烈な愛情表現を露わにしていた。
あまりに密着して、プトラの胸がヨイチに押し当てられている。
「プ、プトラさん! 当たってる! 当たってます!?」
「いや、当ててんだし」
澄ました顔で肯定しやがったぞ、このダメ人間娘。
「おいプトラ、あんまりヨイチ君を揶揄うな。クロウさんに怒られるぞ」
ツバサが咎めると、プトラはもっとヨイチを抱き寄せる。
「揶揄ってなんかないし。割とマジで色仕掛けで誑し込もうとしてるんだし。今のうちからツバつけておかないと……なんだっけ、青草狩り?」
「多分、青田刈りと仰りたいのでしょうな」
シュークリームを食べ終えたオリベが正しい言葉を挙げた。
青田刈り――戦術のひとつである。
敵地に侵攻した際、いずれ兵糧となる稲を青いうちに刈ってしまい、米ができなくなるようにするものだ。田が青いうちに刈るから青田刈りである。
食糧の生産性を落とす嫌がらせ、一種の兵糧攻めである。
転じて、まだ色事もわからない子供に目をつけて、年頃になったら自分の恋人にしようとする策略をいう。別名、光源氏計画。
(※こちらは将来性を見込むため先物買いに似た意味で、稲が実る前の青々とした状態から買っておく“青田買い”とも呼ばれる。近年では就職採用の場で使われる)
そういえばプトラ、年下好きだったか……だがしかし。
「おまえ、ヴァトに目をつけてたんじゃないのか?」
そう思っていたツバサが問い掛けると、プトラは首を左右に振る。
「ヴァトは弟だし。どんなに可愛いショタっ子でも、いくらでも可愛がれる男の子でも、さすがに弟には手ぇ出さないし。そこは弁えてるし」
わかるようなわからないような理屈である。
確かにヴァトもプトラもツバサの子供となり、血は繋がらずとも義兄弟になったわけだが、そこまで線引きしなくてもいいと思うのだが?
単にショタ好み、というだけかも知れない。
「ねえねえ、年上のお姉さんとかどうだし? 結構アタイも乳あるよ?」
「あ、あの、年下の女の子かお姉さんかと言われれば、僕は断然お姉さん派で……い、いけません! 胸が、おっぱいが……ああ、柔らかいぃぃぃ」
アカン、ヨイチ君も落ちそうだ。押しに弱いな。
プトラはお構いなしにヨイチを陥落しようと、女の色香で迫っていく。
「アッアッアッ、若いとは良いものですな」
オリベはツバサが遊女みたいに描かれた煽情的な扇を取り出すと、パタパタ仰ぎながら大人の余裕で見守っていた。あの扇は没収したい。
「――上手く行くとよろしいですね」
ふと、イヨが呟いた。
その言葉には、この策が成功することへの願いが込められている。
イヨは手元にある龍宝石をひとつ摘まんだ。
「これで世界廃滅を食い止められればいいのですが……」
想いを封じた龍宝石を覗くように見つめている。
「ええ、バッドデッドエンズがどれほどの規模で繰り出してくるかわかりませんので、あくまでも対応策に過ぎないのですが……功を奏してほしいものです」
ツバサも切実に願うところだ。
ロンドは全面戦争を機に、世界廃滅へも同時に動き出す。
この行動は読めていた。そのためロンドは過大能力で創り出せる怪物を大量投入してくるに違いない。先日の宴会で明かされた三手でも、「怪物軍団を世界中にバラまいて世界を滅ぼす」と明かしている。
この怪物軍団への対処も迫られているのだ。
ツバサたち神族化したプレイヤーのほとんどが、バッドデッドエンズとの戦いに集中しなければならない。このため、そちらに回せる戦力はない。
かといって、現地種族の国民に任せるわけにも行かない。
強力なスプリガン族でも論外だ。
ロンドの怪物は強さだけならLV999、生半可な戦力では足止めにもなりはしない。可能であれば、怪物軍団を倒しきれる戦力が欲しかった。
しかし、さすがに即興では用意できない。
ダイン、フミカ、ジン、ソージを組ませて、巨大ロボの量産機を何万体も製造することで対抗しようという計画もあった。
ところが、ダインとジンからは反対意見が上げられたのだ。
『ぶっちゃけ鉱物資源の無駄遣いぜよ。この短期間で、中身がないとはいえLV999の怪獣と渡り合えるロボをぎょーさん作るがは不可能じゃ』
時と物が足りん、とダインは現実的だった。
『俺ちゃんもダイン君に一票。仮に不眠不休で取り組んで完成させたとしても、戦争の後のことを考えると、壊れたマシンが世界中に散らばっちゃいます』
後始末が大変、とジンは未来を見据えて提言した。
物作り大好きのこの二人なら「巨大メカを大量生産しろ」と命じれば「はい喜んでー♪」と引き受けるかと思えば、まさかの堅実的な意見が返ってきた。
後も先も考える大人になってきてくれたようだ。
お母さんは嬉しい――誰がお母さんだ。
とにかく、これにより作戦変更を余儀なくされた。
そこからフミカに相談すると、「プトちゃんやイヨさん、それにオリベさんの力を借りたらどうッスかね?」という案を振られ、現在に至るわけだ。
この計画自体、フミカの考案である。
そして――何気にオリベがLV999になったのが大きい。
妖人衆で神族化したのは五人。
巫女姫イヨと乙将オリベのツートップ。
そして妙剣将ウネメ、鍛鉄将オサフネ、覇脚将ケハヤの三将。
ツバサが魂の経験値を分け与えることでその眷族となり、晴れて神族となった者はこの五人だが、彼らにも例の異相で修練を積んでもらっていた。
こちらの一日が一年に相当する異相空間だ。
そこで修行を積んでもらっていたのだが……まさか伸びしろのある三将を差し置いて、オリベが真っ先にLV999になるとは予想外だった。
三将はLV970前後、イヨもLV920くらい。
神族化したおかげで肉体的に多少なりとも若返ったとはいえ、実年齢ならば70歳近いオリベがここまで成長を遂げるとは思わなかった。
「老骨に鞭打った甲斐がありましたな」
アッアッアッ、とオリベは快活に笑い声を上げた。
「戦国乱世を生き延びた経験則ですかね」
「左様、あの激動の世で過ごした年月が我が魂を錬磨してくれたようですな」
ツバサの感心をオリベは大仰に受け入れた。
事実、オリベは戦国時代の生き証人。それも戦国乱世真っ只中な織田、豊臣、徳川という過酷極まりない三つの時代を駆け抜けた戦国武将である。
武勇こそ鳴り響かせていないが、生き残っただけでも十分だ。
オリベは紅茶を啜りながら半生を振り返る。
「我らの時代、武家に生まれたならば武芸の鍛錬は必須でしたからな。それがしも朝に夕なにやらされたもの……それが至極当然な世相だったのです」
刀や槍が日常に溶け込み、殺人が当たり前だった時代。
オリベの生きた世界はそれほど凄絶だった。
そうした経験がオリベをLV999に押し上げたのかも知れない。
いやいや、とオリベは素早く手を振る。
「神族にしていただいたおかげで心身ともに若返った心地でしてな。若い頃を思い出して修練に励んでみれば、結果を出せただけのこと」
大したことではございませぬ、とオリベは謙遜した。
だとしても四神同盟には有り難い話だ。
いやいやいや、とこちらからも手を振って応じる。
「オリベさんがLV999になったからこそ、今回の戦力増強計画を実行に移すことができた……ありがとうございます」
「なんのなんの、臣下たれば主の命に忠するのが定めですぞ」
礼などおよしくだされ、とオリベは片手で制してきた。
それでもツバサは頭を下げる。
この計画が実を結べば、ロンドが解き放つ怪物軍団の脅威を抑え込み、なるべくこの真なる世界を破壊されずに済むからだ。
プトラとヨイチが加工してくれた――特別な龍宝石。
そこにイヨが万里眼で次元を越えて集めてくれた、人々が時代を超えて思い描いてきた想念をエネルギーとして注ぎ込む。
最後にオリベの異能力である変幻自在の粘土を足せば……。
「仕上げはとくとご覧じろ――だな」
ツバサは龍宝石をひとつ摘まみ、祈るように胸元へ押し抱いた。
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