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第16章 廻世と壊世の特異点

第377話:飲み会の予定は早く聞け

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 我ながら悪魔の如き容貌に変わる、とミサキは自覚していた。

 体格的な変化はほとんどない。

 しかし、絶大な力が湧き上がってくる。

 漲る力は過大能力オーバードゥーイングで呼び起こした、強大な“気”マナの流れである龍脈。それがミサキの血流や神経、あるいはチャクラと呼ばれる気の経絡けいらくに乗って体内の隅々まで行き渡るようにを激しく駆け巡っている。

 龍脈の力は、ミサキの全能力を爆発的に賦活化ふかつかさせていた。

 ――純粋な“気”マナというエネルギー。

 それが圧倒的な力となり、ミサキのポテンシャルを激増させていた。体内に収まりきらない“気”が異色のオーラとなって立ち上っている。

 ツバサさんの戦闘形態――殺戮の女神セクメトモード。

 かねてよりツバサさんの変身技に憧れていたミサキは、「カッコイイ! オレもやってみたい!」と少年ハートを燃やしていた。

 本心は「超サイヤ人みたいなパワーアップ技が欲しい!」である。

 ――変身してパワーアップ。

 このシチュエーションは、男の子の気持ちを熱くさせるものだ。

 ツバサさんに殺戮の女神セクメトのコツを聞いたところ、「2つの過大能力オーバードゥーイングを暴走気味に連動させればいい」とアドバイスをもらうことができた。

 ミサキの過大能力は3つある。

 最後の3つめはミロちゃんと同じ「次元を創り直す」という万能能力で、消耗も激しいため気軽に使えない。そこでツバサさんと同じように2つの過大能力を連動させることから初めてみた。

 自然界に流れる“気”の根源となれる【無限のインフィニット龍脈の・ドラゴン魂源】・ソウル

 肉体の全機能を万全にして強化もする【完璧に完オール・成された完全なパーフェクトる肉体】・ボディ

 奇しくも、ツバサさんの持つ2つの過大能力と似たものだ。

 この2つを――重ね合わせる。

 龍脈の力を暴走させるように圧をかけ、怒れる龍となるまで荒ぶらせながら自身の肉体に付与。それを肉体を完全に保つ過大能力に上掛けすることで一時的に肉体能力を何十倍にも跳ね上げることに成功した。

 原理的には、ツバサさんの殺戮の女神セクメトモードの模倣もほうだ。

 ほとんど真似なので、ちょっと気が引ける。

 真似ることは学ぶこと、と師匠レオさんも言っていたので、最初の形態くらいツバサさんのパクリでもいいんじゃないか、と自分に言い聞かせる。

 オマージュと言い張っておこう。

 今後、オリジナリティを編み出していけばいい。

 それに……ツバサさんの技を受け継いだ気もしないではないので、師匠や先生に強い思い入れを抱くミサキは悪い気もしなかった。

 しかし――悪魔的な外見に変わるものだ。

 ツバサさんの殺戮の女神セクメトも、「メスゴリラ」とか「メフレックス」とか「雌ライオン」とか、悪評が絶えない凶暴な見た目となる。

 先日お披露目された魔法の女神イシスモードでは女性的な魅力が増したそうだ。ブラのサイズがMカップになったと嘆いていた。魔力の劇的な増大に引っ張られたかのように、オカンパワーまで上がってしまったらしい。

 そして、ミサキの極戦態フォルムもなかなかの変貌振りだ。

 幸か不幸かツバサさんのように筋肉量が増えたり、美乳美尻のボディラインが劇的に変わることはない。体型は現状維持だ。

 まず全体的なイメージカラーが、紫から黒へと塗り変わる。

 高貴な紫金の色を帯びていた髪は漆黒に染まり、毛質がストレートになりながらも外連味けれんみが強くなるように増えるのだ。それも大量に……。

 さながら歌舞伎の連獅子れんじしである。

 顔に走るいくさ化粧げしょうのような紋様もんようも黒一色だった。

 両眼を縁取る隈取くまどりにも似たラインや、口紅を塗ったかのように唇を染める色までもが黒である。ヴィジュアル系バンドみたいなファッションだ。

 一度レオさんに見せたのだが、この隈取りを指して――。

長飛丸ながとびまる、いや字伏あざふせ? 銃夢がんむかモンハンのメイク……いやいや……お父さん目線だと大事な息子や娘が入れ墨しまくりで凄いショックだし……』

 なんだか思い出すものがいっぱいで困ったらしい。

 あと師匠目線じゃなくお父さん目線なんだ……とツッコみたかった。

 追加衣装と見間違うものまで現れていた。

 一見すれば、帯状に切り分けられたマントを羽織っているかのようだ。

 この帯は――ミサキの放つ龍脈の一端いったん

 これらの龍脈も真っ黒に染まり、それが太い帯となってミサキの周囲を取り巻いている。時折、帯の先端が龍となって鎌首をもたげながら吠えるのだが、それらは幾重にも折り重なってミサキを守っていた。

 帯のひとつさえもが圧縮された龍脈。

 身体能力を強化させている龍脈、その余剰分が具現化したものだ。

 マントで装った悪魔の大公爵――とも言うべき姿。

 この変身形態を編み出したミサキは、ツバサにあやかって独自のモード名を付けようとしたのだが、如何いかんせん学がないのでアキさんに相談した。

 自堕落ニートなアキさんだが、実は博識である。

 伊達に博物学娘と呼ばれるフミカさんの姉をやってはいない。

 ハトホルの別神格が殺戮の女神セクメト魔法の女神イシスであるように、イシュタルの別神格から相応しいモード名を見繕みつくろってもらった。

 イシュタルの別名でなんとなく悪魔っぽくて強そうなの。

 そんなアバウトな注文をしてみたのだが……。

『ちょうどいいのがあるッスよ、アスタロトとかどうッスか?』

 魔界の大公爵――アスタロト。

 キリスト教では魔界の支配階級にある大悪魔として恐れられたものの、その源流はアシュトレト(あるいはアシュタロト)と呼ばれる女神。

『更に遡ればイシュタルを起源としているそうッスよ。イシュタルの原型とされるシュメール神話の女神イナンナや、ローマのアフロディーテなんかも根っこは一緒で、中東近辺で祀られていた豊穣の女神が根源とされてるッス』

 悪魔としてのアスタロトは非常に地位が高い。

 一説に寄ればルシフェルやベルゼブブといった誰もが知っている大悪魔と肩を並べる三大魔王の一人として数えられたり、ルキフェル(またルシファー)、ベール(またはバアル)、ベールゼブブ(またはベルゼビュート)、彼らと同列に扱われる魔界の四大実力者に名を連ねている。

 諸説あるが大魔王に数えられる悪魔の一角だという。

 これだ! とミサキがガッツポーズを取ったのは言うまでもない。

 極戦態フォルム――アスタロト大公爵グランデューク

 ちょっと中二病入ってるかも知れないが、ミサキなりに試行錯誤した結果、ようやく名付けたモード名である。割かし気に入っていた。

「ふぉるむ……あすたろと・ぐらんでゅーく……?」

 ミサキの名乗ったモード名を、アダマスはひらがなでオウム返しに繰り返す。筋肉に鎧われた首を左右に一度ずつかしげた。

 まっすぐに戻ったアダマスの顔が、ジワジワと破顔していく。

「なんだそれ……すっげえエキサイトじゃねえか!」

 まさかの大絶賛だった。

 大砲みたいなリーゼントを逆立てて大興奮だ。

「パワーが桁違いに上がってやがる! そして名前がイカス!」

 ミサキの力が大幅に強化されたことも感知しており、そこに一番の喜びを見出しているようだ。ついでに技名も高評価されていた。

 ……案外、感性が近そうだ。

 たられば・・・・を言えばキリがないが、バッドデッドエンズ加入前に出会えていたら、気の合う友達になれたのかも知れない。

 辛抱堪らん! と代弁するようにアダマスの筋肉が唸る。

「ほら、アレだ、御託ごたく講釈こうしゃくは小難しい連中に任せるとして、俺たちはやっぱアレだよなぁ? 拳と拳で殴り合った方がわかりあえるよなぁ!?」

 喋ってる途中で殴りかかってきた。

 先ほどの挙動が読めるテレフォンパンチとは違う。

 真正面からのストレートには違いないが、初動のきざしが読めなかった。今まで以上の速さというのもあるが、拳打を極めた技術の粋が垣間見えた。

 あれ――ちゃんと武道やってる!?

 瞬きよりも短い時間でミサキがいぶかしむと、鉄球みたいな豪拳がミサキの顔面にお見舞いされる。鼻っ面をへし折るようにど真ん中を狙ってきた。

 インパクトの瞬間、大気が爆ぜる。

 衝撃波が球状に広がり、雲海も晴れるが如く散っていく。

 もしも地上であれば衝撃波だけで建物は根刮ぎ吹き飛ばされ、地表は削り取られて大規模なクレーターを生じさせる威力だ。

 その爆心地――豪拳をまともに食らえば一溜まりもない。

 だが、ミサキはびくともしない。

 わずかに姿勢を整え、アダマスの拳を額で受け止めた。

 関節や体勢を柔軟に使うことで、打撃力を無効化する受け方をツバサさんに習っていたのだが、アダマスの侠気おとこぎに小細工なしで応じた。

 頭突きで返したも同然、それゆえ強烈な衝撃波が発生したのだ。

 アダマスの豪腕に電流が通ったかのような痙攣けいれんが走る。

 ミサキには痺れどころか痛みもない。

 全身に漲らせる莫大な龍脈が、外部から加えられたダメージの一切を弾いているのだ。龍脈から溢れた“気”マナもミサキの表面を覆っており、あらゆる攻撃を遮断する防御フィールドとなっていた。

 規格外の才能を有するアダマス――その天性の肉体。

 天然といわれても信じられない筋肉量と筋密度、丈夫という言葉では片付けられない耐久力と骨密度、技に頼ることを必要としない敏捷性と反射速度、プラナリアも白旗を振るであろう快復力と再生力。

 人間だった頃からバケモノ扱いされたことだろう。

 それらが神族となって輪を掛けるように強化されたアダマスだが、アスタロトモードのミサキはその超絶的な身体能力と対等に渡り合えた。

「……殴り合いガチンコがお望みだったな」

 ミサキは握った拳をアッパー気味に振り上げる。

 これをアダマスは避けない。

 殴り合いの根性比べをしているつもりに近い。

 太古のオリンピックで行われたボクシングでは決着が付かない場合、交互に殴り合って音を上げた方が負けというルールがあったそうだ。

 これを“クリマコス”というらしい。

 ミサキとアダマスは、暗黙の内にこのルールを採用していた。

 だからこそ打撃系で鍛え上げたミサキの、それも帯状の黒い龍脈が何重にも絡ませた破壊力満点のアッパーをアダマスは防ごうとすらしない。

 甘んじて、その腹筋で味わってくれる。

 ズドン! と重低音が響いてアダマスの体躯が“く”の字に折れた。

 もう少しで横に倒した“し”の字になりそうだ。

 ミサキの拳は六つ割れシックスパックの腹筋に手首まで埋まっていた。アダマスは前屈みになりながら大きく口を開いて胃液を吐いている。

「……おっ、ごぉ!?」

 白目を剥いたアダマスは、言葉にならない喘ぎを漏らす。

 猫背のように丸めた背中からは、今にもミサキの拳が突き出しそうだ。

 こういう時は打ち込んだ龍脈がアダマスの背中から飛び出して、その威力を物語るものだが、ミサキはそんな勿体ないことはしない。

 叩き込んだ龍脈は全部――アダマスの体内で爆裂させた。

 師匠レオさんから教わった“内に置く打撃”で、余す所なくぶち込んである。
(※第301話参照)

 これはさすがに効いたはずだ。

 3秒過ぎてもアダマスが回復する様子はない。5秒……8秒……これは仕留められたのではないか? 思わず「やったか!?」と叫びたくなる。

 フラグとなる禁句は口にしない。

 それに油断は禁物、アダマスの肌からは濃い蒸気が揺らいでいた。

 瞬間湯沸かし器みたいな湯気の量だ。

 龍脈によって焼き尽くされた体内を急速に回復させているのか? 凄まじい速度で細胞を活性化させているがゆえに生じた湯気らしい。

「…………んんんーッッッ、はぁいッ♪」

 ジャスト9秒、テンカウント寸前で復活しやがった。

 腰を前に突き出しながら腹筋に力を込めると、ミサキの拳を押し出すように弾いてきた。弾かれるままミサキも飛び退いて距離を取る。

「いいぜぇ……ビリビリ来るじゃねぇか!」

 少女漫画のヒロインよりときめいた瞳をキラキラさせて、真っ白い歯をニカッと剥いて快心の笑みを浮かべている。

 アダマスは拳の痕がついた腹筋をポンと叩く。

「ほら、アレだ……ハリハラ? ハタハタ? 内臓のことを……ほら」

「もしかしてはらわた?」
「そうそう、それだそれ。はらわたな」

 サンキュウ、とアダマスは片手で拝んでくる。友達か。

「はらわたまで焼けるようなパンチなんて久し振りだぜ。アレか、ほら、手品のじいさんも使ってたが、発勁はっけいとか合気あいきってやつか? すげえな!」

 本当に焼いたんだけど、とツッコミたい。

「……アンタも使えるじゃないか」

 先ほどのパンチ、少なからず発勁が盛り込まれていた。

 まだ初歩レベルだが、アダマスみたいな尋常ならざる腕力の神族が使えば、山や島くらい軽々と消し飛ばせるはずだ。

 アスタロトモードのミサキには効かないが――。

「俺のは見様見真似だからな。もっと食らって覚えなきゃ様にならねぇ」

 経験は味わってナンボだろ? とアダマスは男臭い顔で笑う。

 その笑顔が他人とは思えず、ミサキは好感が持てた。

 だからクイッと顎でしゃくる。

 打ってこい、と“クリマコス”の続きを誘ったのだ。

 誘いに乗ってきたアダマスは、無防備にさらけ出していたミサキの右頬へ左フックというには大振りすぎる拳を打ち込んでくる。あまりにも無造作な殴り方だったの、さっきの拳打はまぐれなのかと疑ってしまう。

 アダマスからの二撃目、アスタロトモードのミサキにダメージはない。

 だが、ほんの少し防御が崩れかけた。

 パンチの威力も段違いに上がっているが、初歩だったはずの発勁が確実に熟練度を上げていた。これはもう物にしたレベルだろう。

 ミサキの発勁を食らって覚えたのか!?

 モンスターの攻撃を受けてその戦闘手段を会得する体感学習ラーニングという技能スキルがあるにはあるが、アダマスのこれは肉体と同じく天性のものだった。

 これで武道の心得がないなんて宝の持ち腐れだ。

 頬でパンチを受け止めたまま、ミサキはアダマスを睨みつける。

「本当、おまえは俺をエキサイトさせてくれるなぁ……」

 ギアを上げても――壊れねぇ!

 ギアという表現を使ったところから、アダマスはまだ全力には程遠いということが読めた。戦っている最中にテンションを上げていき、最高潮まで持っていかないと最高のパフォーマンスを発揮できないタイプなのだろう。

 ある種のスロースターターである。

 ミサキもアスタロトモード全開ではないのでお互い様だ。

「まだ全力でも本気でもねぇだろ? ほら、アレだ、もっと打ってこいよ」

 ほら! とアダマスは両手で手招きする。

 プロレスラーが相手を挑発するような仕種だ。ミサキはお返しとばかりに左のフックでアダマスの顔を吹っ飛ばすつもりで殴りつける。

 今度は8秒ほど意識を飛ばせたが、やはりすぐ復活してきた。

「んんん~~~……はぁいッ!」

 意識を取り戻すと同時に豪腕を振り上げたアダマスは、身長差を利用してミサキの脳天へハンマーみたいに拳を振り下ろしてきた。

 アスタロトモードでも痛みを感じる拳骨。

 反射的に奥歯を噛んで堪えたミサキは、殴られて俯きそうになった顔を持ち上げると、こちらも倍以上ある身長差を活かしていく。

 膝をたわめてバネにすると、垂直跳びのアッパーカットをお見舞いした。

 当然、龍脈の力を込めた内に置く打撃でだ。

 アダマスは欧米人みたいな太い顎をかち上げられ、口中を切ったのか血を噴きながら天を仰いでいた。これなら脳震盪のうしんとうも起こしたはずだ。

「んんっ~~~……プハハッ、鉄の味は久々だぜ!」

 だというのに――即座に回復した。

 唇を汚した血を舌で舐め取ると、首を左右にバキボキ鳴らしている。

「……少しは気絶しろよ。さもなきゃ蹌踉よろめけってんだ」

 ミサキは嬉しそうに微笑みながら悪態をついた。

 今回は意識も飛ばせなかったらしい。殴られているうちに耐性が上がるタイプなのか? 唇の端を血化粧で汚したアダマスは微笑む。

「悪いが俺の頭ん中は空っぽでな。夢しか詰まってねえのよ」
「そんなロマンティックな理由で脳震盪起こさないってある!?」

 ミサキはツッコミで叫んでいた。

 ジンという親友のせいで、すっかりツッコミ役が板についてしまった。

「ま、夢っつっても強い奴と喧嘩することばっかだけどな」
「どこのヤンキー漫画の主人公だアンタは!?」

 リーゼントがいい味を出しているため違和感がない。

 戦闘中毒バトルジャンキーなミサキも言えた義理ではないが、脳内分布図はアダマスよりマシなはずだ。恋人のハルカのことや、他にも色んなものが詰まっている。

 だが、顎へのアッパーカットは効いたようだ。

 アダマスは顎をさすりながら、先ほどバキボキ鳴らした首も撫でている。あの極太な首の筋肉で、脳震盪が起こらないようにダメージを凌いだらしい。

「今は……おまえに夢中だから安心しろぃ!」

 ズゴン! と擬音だけで空が割れそうなアダマスの拳骨で殴られる。

「そりゃどうも! ありがた迷惑で涙が出るよ!」

 ズドン! とミサキもお返しとばかりに鉄拳を食らわせた。

 暗黙の“クリマコス”ルールは終わらない。

 交互に行われる殴り合いはどちらも一撃滅殺だというのに、アダマスとミサキは双方とも決して怯むことはない。

 殴り合いは加速し、拳以外も使っていく。

 殴る、蹴る、どつく、肘打ち、膝蹴り、頭突き……五体で攻撃に使える部位ならばどこでも構わない。喧嘩そのものである。

 むしろ世界が「もう勘弁してくれ!」と悲鳴を上げていた。

 かつてツバサさんとミサキが腕試しの試合をした際、2人が本気で激突したために空間を壊して、異次元への裂け目を作ってしまったことがあった。
(※第147話から第149話参照)

 その二の舞となりかねない状況である。

 それ以前の問題として、2人のパンチが発する衝撃波が上空の大気を激しく鳴動させており、近隣に超大型台風を越える嵐を巻き起こしていた。

 これ――オレの国イシュタルランドが大変なことになってるよね?

 神王であるミサキは冷や汗ダラダラだ。

 こっそり千里眼の技能スキルで覗いてみたが、ミロちゃんたち留守居組が守ってくれているので一安心。だが、後ろめたさは尽きない。

 お手数掛けて申し訳ない! って気分でいっぱいだ。

 それでも――ミサキは“クリマコス”を止めることができなかった。

 アダマスとの喧嘩が楽しいからだ。

 師匠レオさん先生ツバサさんとともに武道の研鑽けんさんをするのも楽しいが、ミサキもやっぱり男の子。こうした単純明快な力比べにはついムキになってしまう。

 また直接打撃フルコンタクトによって拳を交え、肌で感じることで相手の気持ちを理解できることもあった。文字通り『言いたいことは拳で語れ』状態である。

 アダマスの拳から感じるのは――途方もない喜びと楽しさ。

 彼にとって喧嘩とは、不器用な自己表現なのだ。

 創作家と呼ばれる人々が、形で、音で、図で、文で、絵で、自分というものを表現するように、アダマスは闘争という手段で自己を表現していた。

 ――喧嘩屋という名のアーティスト。

 世間的には絶対に認められない芸術家の一人であろう。

 アダマスの場合、ルールに縛られたスポーツや格闘技では満足できないはずだ。生死を賭けるような瀬戸際ギリギリの戦いでしか満たされないに違いない。

 しかし、気になる感情が見え隠れする。

 これは……恐れ? あるいは罪悪感だろうか?

 心の底から喧嘩を楽しむアダマスの大きな感情の陰に隠れて、何かに怯えるようなくらい部分を垣間見ることができた。

 ミサキは距離を取って喧嘩を一時中断し、問い掛けてみる。

「なあ、アンタ……アダマスさん、だっけ?」

 喧嘩は楽しいかい? とストレートな質問をぶつけてみた。

 アダマスは当然のように満面の笑顔で答える。

「ああ、楽しいね! 漢として生まれたからにゃあ、これ以上のレク……レクリクラ……レクチャー? レクリエー……と? レク、レク……」

「もしかしてレクリエーション?」

「そう、それだ! サンキュウ! これ以上のレクリエーションはねぇだろ? 拳と拳で語り合う! どっちが強いかがわかる最高のゲームじゃねえか!」

「なら、どうして――相手を殺す?」

 この一言は少なからず彼の琴線に触れたらしい。

 波が引くように、アダマスの表情から傲岸不遜な笑みが消えていった。

 手応えを感じたミサキは問いを重ねていく。

「喧嘩好きなら、戦った相手を仕留めるまではしないはずだ。次に戦う時、相手が強くなっているかも知れない。勿論、自分も強くなっている。そうすれば、新しい喧嘩を楽しむことができる……なのに、アンタは相手を必ず殺すと聞く」

 極限まで圧殺して、金剛石ダイヤモンドに変えてしまう。

 二度と戦わないため徹底的に抹殺しているのだ。

「それじゃあ喧嘩好きとは言えない。相手が強くなって戻ってくるのを恐れているから、勝てるうちにトドメを刺していると捉えられてもおかしくはない」

 再戦を恐れているのか? 復讐に脅えているのか?

「何故、戦った相手を殺す? どうして世界を滅ぼす側へ加担する?」

 この二つは根元で繋がっている、とミサキは推察した。

 アダマスの顔から笑みが失せた。

 無表情ではない真顔、頭空っぽと自認するのに考え込んでいる。

「……好敵手おまえになら話してもいいか」

 アダマスはミサキの人格を認めるように語り出した。嘘や演技ができない漢なのは一目でわかる。つまり、これはアダマス本心からの吐露だ。



「俺は強い奴が恐ぇ――そして大っ嫌いだ」



 俺自身も・・・・含めてな、とアダマスは寂しそうに結んだ。

「喧嘩は好きだけど……強い奴が怖くて嫌い?」

 一見すると矛盾した意見だが、アダマスの心理ではしっかりした理由付けが成されているのだろう。おかげでいくらか答え合わせができた。

 喧嘩は大好きだから戦闘という行為を好む。

 強者は怖くて嫌いだから必ず殺すことで結果を得る。

 戦闘と勝利の欲張りセットを欲しがるわけだ。

 そして、「俺自身も含めて強い奴が怖くて嫌い」だからこそ、この世界を滅ぼすことで強者をも滅ぼそうと考えているらしい。

 なんとなく――アダマスに相通ずるものをミサキは感じた。

 アダマスは神妙な面持ちでミサキを指差す。

「おまえは俺の認めた“漢”おとこだ。俺じゃあ上手いこと説明できねぇことも、真剣に打ち明けりゃあわかってくれると思った……だから話した」

 強ぇ奴はいらねぇ――アダマスおれミサキおまえもだ。

「ハトホルの兄ちゃんも、ロンドさんも……強ぇ奴はみんな死ねばいい。この世から消えるべきなんだ……俺がロンドさんに味方する理由はそこにある」

 あの人ロンドもまた――自らを不要と断じていた。

 世界廃滅を義務とし、そこに自分自身も含めているからだ。

 一転、アダマスは両腕を広げて笑い飛ばす。

「この世の最後に強ぇ奴がパァーッと喧嘩祭をやって、最後の一人も残さずに殺し合う……神々の黄昏ラグナロクとかいったか? そういうのがやりてぇんだよ。ロンドさんがその主催をしてくれるって約束してくれたからな」

「それが……最悪にしてバッド・絶死をもたらデッド・す終焉エンズに与する理由か」

 清々しいくらいの破滅願望である。

 元よりバッドデッドエンズに属する者は説得不可能と聞いていたが、直接会話して思い知らされた。彼らにはちゃんと理由がある。

 世界を滅ぼしたいという願望――明確な意志があるのだ。

 一瞬でもわかり合えそう、とか期待したミサキが幼稚だったらしい。

 全面戦争はまだ始まっていないが、手を尽くしてでもこの場で仕留めておくべき漢だと再確認させられた。同情など命取りにしかならない。

 アスタロトモードの出力を上げる、とミサキが覚悟を決めた瞬間だった。



『そんな恐ろしいことやめなさい――たけしちゃんッ!!』



 青天を震わせる悲しげな絶叫が響き渡った。

 聞き惚れそうな耳に心地いい女性の声だが、そこに塗り込められた悲哀の情はあまりにも重苦しく切実だ。ミサキも首をすくめてしまった。

 アダマスの反応はそれ以上だが――。

 黒目を点にして眼球を見開き、喉仏を隆起させて固唾かたずを飲んでいる。

 この声――加工されたものだ。

 高性能かつ高品質な最高級スピーカーから最大音量で発せられたように聞こえたが、どうやら自然界の精霊を媒介にして紡がれた声のようだ。

 どうやらアダマスには聞き覚えがある声らしい。

「…………ね、姉ちゃん?」

 どうして……とアダマスが呻いた瞬間、次の異変が畳み掛けられた。

 この異変には両者ともそちらへ振り返る。

 ツバサたちが他のバッドデッドエンズと交渉を行っているであろう地点で、世界に穴を開けかねない壊滅的なエネルギーが解放されたのだ。

 これにもアダマスは心当たりがあるらしい。

「……チッ、リードの大バカ野郎が! ろくすっぽ調整もせずに全力出しやがったのか!? 保険・・のテメェが一番冷静でなくてどうするよ!」

 おいオマエ、とアダマスが呼び掛けてくる。

「まだ名前聞いてなかったな。俺は名乗ったからいいだろ?」

 教えてくれよ、とミサキに自己紹介を求めてくる。

「ミサキ――ミサキ・イシュタルだ」

「……ミサキだな。おまえのこと、ちゃんと覚えたぜ」

 アダマスはきびすを返し、地表に向けて降下を始める。去り際にミサキを見つめながら伝えたいことを連ねていく。

「悪いが急用ができた。今回はここまでだ」

 次は全面戦争でろうぜ、と約束を持ちかけてくる。

「俺は美味しいものをいの一番に食うタイプだ。全面戦争が始まったら、真っ先におまえんとこ来て、この喧嘩の続きをするぞ。そこんとこよろしく!」

 あばよ! とアダマスは一気に速度を上げた。

 呼び止める暇もない。まあ、呼び止める義理もないのだが。

 それに、アダマスの向かった現場にはミサキも用がある。その近くにツバサたちもいるわけだし、イシュタルランドの近くなのだ。

 何かあれば一大事、ミサキもアダマスを追うように降りていく。

   ~~~~~~~~~~~~

 大横綱ドンカイ・ソウカイVS猛悪母神ジンカイ・ティアマトゥ。

 イシュタルランドより数十㎞――山間の盆地。

 奇しくも円形状のそこを土俵に見立てて、元横綱と元大関の兄弟弟子は天地を揺るがすぶつかり稽古げいこを繰り広げていた。

 少なくとも、ドンカイは稽古をつけているつもりだ。

 ジンカイはあの事件以来、鬱屈うっくつした感情をこじらせていたようだ。現役時代一度も土をつけられなかったドンカイを撃破することで、溜まりに溜まった鬱憤うっぷんを少しでも晴らそうとしているのが窺える。

 できれば・・・・の話だが――。

 ジンカイは、怒り肩で息をするほど呼吸を乱していた。

 下半身は神話級の大蛇と化し、そこから無数の生物の脚が生えている。鳥や獣の翼を何対も背負い、いくつもの生物の角や触覚を何重にも掲げていた。

 上半身は緑色の蓬髪ほうはつをなびかせた巨大な女神。

 その両腕もひじから先が魔獣の如き巨大なものとなっていた。

 元大関まで登り詰めた漢の面影はどこにもない。角界一かくかいいちの甘いマスクとうたわれた美男子の顔立ちも、すっかり女性的なものになっていた。

 図体がデカければ、比例して乳房もデカい。

 ツバサ君やジョカ君を上回る(サイズ的にはやや下だが)乳房には、飾り気のない乳当てで押さえていた。その大きな胸が忙しなく上下していた。

 神族となっても過剰かじょうな運動をすれば息も切れる。

「なんで、なんでだぁ……なんで、ドンカイあんたに……勝てないッ!?」

 ジンカイは泣きそうな声で呻いた。

「自分本来の過大能力をなげうって……女になろうが女神なろうがどうでもいいと……男であることを捨ててまで得た、この魔王の力が……どんな奴でも一発でのしてきた力が……どうしてドンカイあんたに通じないんだッ!?」

 その声もハスキーではあるが、すっかり女性らしいものになっていた。漢の頃の名残はあるが、女々しく嘆けばまるっきり別人である。

 ドンカイは答えない。

 マントのように羽織っていた単衣ひとえを脱ぎ捨て、浴衣もはだけると上半身の諸肌をさらしたドンカイは、土俵を踏み鳴らすかの如く四股しこを踏んだ。

 右足で大地を踏み締め、左足で天空を突き上げる。

 左右の脚が垂直になるほど芸術的な四股だ。

 打ち下ろした左足は地面にめり込むことはなく、なのに震動は地の奥底から大地を揺らがせる。怪獣王の足踏みさえも凌駕する激震となった。

 今度は反対側、右足で四股を踏む。

 そうしてドンカイは再び“はっけよい”の構えを取った。

「稽古に勝ち負けなんぞあるかい」

 吐き捨てるように言うと、短く「来い」とジンカイに命じた。

 ジンカイは無理やり息を整え、全身を鳴動させて身体中から生えた生物の部位を肥大化させる。そこから次々と怪物を産み出していった。

 過大能力――【我が身裂かれてもブレイクダウン生まれ出ずる命】・バースディ

 切り分けた自身の血肉から怪物を創造する能力。

 ジンカイは先刻から飽きることなくこの能力を使い、怪物どもにドンカイを襲わせながら、イシュタルランドも強襲しようと軍勢を操っていた。

 怪物の軍団を創り上げたジンカイ。

 先陣を切ってドンカイに飛びかかり、怪物たちにも襲うように命ずる。

「うっ……おおおおおおおおおおおおおおっぶあっ!?」

 雄叫びを上げて突っ込むジンカイに、ドンカイは強烈な張り手でカウンターを食らわせた。綺麗な顔がひしゃげようと容赦なしだ。

 その張り手は天地を上下にして、同心円状の衝撃波を発生させる。

 怪物軍団はそこに突っ込むと一匹残らず弾け飛んだ。

 この張り手でジンカイは完封されていた。

 どれだけ怪物をけしかけても、張り手一発で台無しにされている。ジンカイも幾度となく顔面を叩かれており、苛立ちが募るばかりだろう。

「おぶっ……お、おのれぇ! ぐあっはっ!?」

「脇が甘い!」

 苦悶の叫びを上げた時には鈍痛が走っていた。

 ジンカイの右頬に張り手を打ち込んだドンカイは地を這う八艘はっそう飛びで右手に回り、隙のあった脇を掬い上げるように手を叩き込んでいた。

「腰が高い! それでも元大関か貴様!」

 ジンカイが体勢を左側へ傾けると、蛇体の下半身をたぐる。

「せっかく地を這う蛇の身体を得たというのに、そんな重心が高くてどうする! 新たな持ち味を手に入れたのなら、それを活かさんかい!」

 ドンカイは叱責とともに猛攻で攻め立てる。

 一時たりとも手を休めず、ジンカイの弱所を見極めると間髪入れずに連続攻撃を加えていく。そのすべてが相撲の決まり事にのっとったものだ。

 盆地は土俵――この闘いは稽古。

 ジンカイは殺し合いのつもりで死合を挑んでいるのかも知れないが、ドンカイはあくまでも不肖ふしょうの弟弟子に稽古をつけているだけだった。

「くそぉ……馬鹿にしやがって! 兄弟子、あんたはいつもいつも……ッ!」

 ぐあっ!? とジンカイは女神となった顔に苦悶を浮かべる。

 上半身と下半身の境目、蛇体の縁に生えた異形の脚。

 その何本かをドンカイは無造作に掴んでいた。感覚的には相撲の廻しを掴んでいるのと変わらない。体勢的にはこのまま上手投げを決められる。

 そのままドンカイは跳躍ちょうやくした。

 ジンカイを捉えたまま、数百mは跳び上がっただろう。

 跳躍の限界地点まで達すると、そこから上手投げを決めるべくジンカイの頭を地表へと振り下ろした。自身の体重と膂力、それに重力も加算させる。

 これぞ伝説の大横綱である千代の富士が得意とした上手投げ、ウルフスペシャルにあやかってドンカイが編み出した必勝の秘技。

超角力ちょうかくりき――フェンリルスペシャル!」

「そのダサい技名、まだ使って……うああああああああああっ!?」

 ジンカイが何か喚いたが気にしない。

 数百mの高度から墜落させる上手投げ。土俵だった盆地は陥没して大穴とも言うべき深さになり、周囲の山肌が崩れて山雪崩を起こす。それほどの激震を起こしてしまったことにドンカイは遅れて後悔する。

 これ――ミサキくんの国イシュタルランドにも大地震を起こしとるよな?

 きっと留守居組ミロちゃんたちが防いでくれたはず!

 そんな希望的観測をすることで目の前の戦いに集中にした。

 大穴の中心、そこにジンカイがめり込んでいる。

 人型の上半身は完全に埋没していた。

 大蛇のような下半身だけが力なく横たわっている。蛇の身体だが腰からすぐ下は人間らしさを留めており、鱗に覆われるも女性的な臀部でんぶになっていた。

 悪くない……と横目で見てしまう。

 女体化した弟弟子の尻に見蕩れるなど複雑極まりないのじゃが!?

 いかんいかん、とドンカイはかぶりを振った。

 稽古という名の戦闘が始まってからというもの、ドンカイが終始圧倒しているのだが、諦めの悪いジンカイはしつこく食い下がってきた。

「相変わらず……尻に目がないんですね」

 ククク、と喉を鳴らしてジンカイは地中から出てくる。

 ドンカイの視線に気付いていたようだ。わざとらしく妖艶に尻をくねらせたのはサービスのつもりか? 小賢しい真似をしおってからに……。

 身体の土汚れを振り払うジンカイ。

「あんたがおっぱいフェチなら……このデカい胸を揺らして油断を誘えることもできたが……いや、そんなつまらないフェイントはしたくないな」

 ジンカイはこれ見よがしに乳房を揺さぶる。

 セイメイ辺りは喜んで釣られそうなダイナミックさがそこにあった。尻マニアのドンカイだが、乳に無関心というわけではない。そそられるものを覚えないではないが、かつての弟弟子が脳裏を過るので耐えることができた。

 目を掛けた自慢の弟弟子――それがジンカイだった。

「その程度のフェイントで溝は埋まらんぞ」

 ドンカイとジンカイの間に刻まれた、深く幅の広い溝だ。

総括そうかつしよう――精進しょうじんが足らん」

 修行不足の弟弟子に、兄弟子として至らぬ点を教えてやる。

「怪物の群れとともに陣を組んでワシに総当たりすれば潰せると思うとらんか? さっきからそればかりで、御主の体捌たいさばきにはまったくキレがない」

 怠けとったな――バカタレが。

 日々の稽古で培った妙技は完全に廃れていた。

 多少なりとも身体は覚えているようだが、ドンカイの動きに即応しようとしても怪物と化した体格では、全盛期の動きを再現することはできまい。

 そのため、大横綱ドンカイには児戯じぎに等しかった。

「今の御主はただデカいだけの女怪にょかいじゃ……ワシにしてみればな」

 説教なら間に合ってます、とジンカイはにべもない。

「今さら鍛え直したところで……土俵に戻れやしませんからね。百歩譲って女相撲がいいところだ。性転換した選手として鳴り物入りでもしますか?」

 どこかのスポーツでもありましたよね、と減らず口を叩く。

 ジンカイは口に入った土をペッと吐き捨てた。

「技など通じないほどの力があれば、修行なんて面倒なことしなくていい……兵隊っていう数の力を揃えられれば、鍛錬なんて努力はしなくてもいい……結局、最後にものをいうのは力なんですよ、兄弟子……」

 その言葉尻は追い縋るように聞こえた。

 未練というか後悔というか、視線はドンカイと見合わせたままだ。

「だけど、兄弟子をるんだった真っ向勝負……」

 ジンカイの肉体には変化が生じる。

「圧倒的な力で叩き潰さないと……俺の気が済まんッ!」

 パキペキと小気味よい音がするかと思えば、魔獣のような腕が少しずつ肥大化してきており、ひじから先の二の腕まで侵食してきた。

 大蛇の身体もそうだ。

 蛇の鱗が胸下まで迫り上がろうとしている。

 鱗は首回りや耳元にも現れており、両眼も蛇のそれと似た爬虫類はちゅうるい瞳孔どうこうとなりつつあった。怪物化が進行しているように見て取れた。

 様相が変わるにつれて、ジンカイの“気”マナたかぶっている。

 鳥肌が立つほど彼女の力が増大していくのを感じ取れた。端から見ている分には、異形の度合いが増すに従って強力になっていくかのようだ。

 人間性を代償に――魔性の力を得ている。

 人間らしさが失われていくことに、ドンカイは不吉なものを覚えた。

「ジンカイ、それ・・をやめんか!?」

「嫌だね、断る……大横綱の命令でも、兄弟子の頼みでもだ!」

 ドンカイの言葉を拒絶したジンカイは、もっと力を引き出そうとしているのか、肉体の変異を早める。反比例して異形化も進んでいた。

 声のトーンまで人間のものから、獣へと変わろうとしている。

「どいつもこいつも……何の力もないくせして、俺に罵声を浴びせて悦に浸ってきたクズどもを! 世界諸共滅ぼせるなら怪物で構わない! いいや、むしろ怪物でありたいよ! あの民衆って正義の味方気取りを皆殺しにできるならな!」

 そして兄弟子――アンタに一度でも勝てるなら!

「俺は喜んで怪物になろう!」

 女神だった部分、即ち人間性を表していた部位が薄れていく。それとともに外見の凶暴性と異形さが増していき、ジンカイの“気”マナが膨れ上がっていた。

 これは……力が増しているのではない。

 どちらかといえば、意図的に暴走させているのだ。

 やがてジンカイという個性は死に絶え、理性を失った怪物の女王が誕生することだろう。彼女は凶暴な子供を産み増やして、世界を滅ぼすために進撃を始めるに違いない。そういう具合にプログラムされているらしい。

 ジンカイを蝕む力は、そのようなものだと見当が付いた。

 馬鹿な弟弟子は自暴自棄になるあまり、そんなもの・・・・・を受け入れたのだ。

 ドンカイは掌の皮が破けるほど拳を握り締めた。

「本当に……貴様は愚弟ぐていじゃ!」

 牙で噛みつくような怒号を上げ、ドンカイは動き出していた。

 ジンカイが完全な変貌を遂げる前に制する。

 たとえ息の根を止めることになろうとも……瞬時のその決意を固めたドンカイは、はっけよいの構えからぶちかましを敢行かんこうする。

 まだ変身途中だが、ジンカイも身構えてこれを迎え撃とうとした。

 両者の動きが――途中で中断される。

 動きかけていた身体を強制的に止めて、互いに目を離さずにいた視線を明後日の方向へずらす。その先で問題が起きていたからだ。

 世界を滅ぼしかねない絶対的な力が胎動を始めていた。

 ツバサやミサキたちの仕業ではない。

 この感覚、ジンカイの仲間であるリードという青年のものだ。

 暴走による変身を取り止めたジンカイは、蛇女のような姿に戻りながら振り向いた先を見つめていた。その神妙な面持ちには焦燥感が滲んでいる。

「リード……おまえは保険・・だぞ」

 おまえが切り札・・・を切ってどうする? と呟く声には焦りがあった。

「兄弟子、悪いがこの勝負は水入りだ」

 ジンカイは蛇の身体を翻すと、何枚もの翼をはためかせて飛び上がる。

 そのままリードの元へ駆けつけるのかと思いきや、肩越しに目線だけ振り向かせてドンカイを見据えていた。瞳の奥にはまだ闘志が燃えている。

「続きは全面戦争で……楽しみにしてますよ」

 そう捨て台詞を残すと、大きな鳥のように飛び去っていった。

「ったく……それまでにちっとは精進しとくんじゃぞ」

 ジンカイの後ろ姿に悪態をついたドンカイ。

 浴衣を着直してマント代わりの単衣を回収すると、その後を追うように現場へ急ぐことにする。どうしても不安が過る。

 ジンカイはリードを「保険」や「切り札」と評した。

 その意味するところを想像すると、どうにも胸騒ぎが止まないのだ。

   ~~~~~~~~~~~~

 ドンカイの胸騒ぎは正鵠せいこくを射ていたと言っていい。

 リードもまた暴走を引き起こしていた。

「うぅおああああああああああああぁぁっあああああああーーーッッッ!」

 言語化できない感情を咆哮ほうこうに乗せたリードは、いつ果てることも知らずに雄叫びを上げると、その身を蝕む力の猛毒を暴走させていた。

 だたし、ジンカイの比ではない。

 彼は新たな過大能力オーバードゥーイングとなる力を二つも宿しており、それを別個に暴走させながらも所々で相乗シナジー効果が働くように仕向けていた。

 右半分を失った顔で支える――独眼どくがんのようなあかの光玉。

 当初はボーリング球くらいだったそれは次第に膨れ上がり、今では特大ビーチボール大にまで大きくなっていた。サイズアップに比例して、消滅の力も格段に跳ね上がっている。

 まき散らす消滅弾の威力、速度、射程、効果範囲……。

「……溜め時間まで短くなってやがるぜ」

 バンダユウは自らが見抜いたリードの弱点が、次第に克服されつつあることで舌を巻いていた。あの消滅弾を連射されたら手に負えなくなる。

 事実、ジェイクの処理能力を上回りつつあった。

 弾幕よろしく拡散される無数の消滅弾。

 これまではジェイクの二丁拳銃がひとつ残らず撃ち抜いていたのだが、徐々に取りこぼしが増えてきて、ツバサたちへ届くようになっていた。

 当たり前だが――防御させてもらう。

 バンダユウは幻を現実にする過大能力オーバードゥーイングを持っている。

 その能力で達磨や招き猫に木彫りの熊など、思いついた置物を片っ端から巨大に具現化させることで消滅弾を相殺させる防壁にしていた。

 なんとなくツバサはジト目で尋ねる。

「バンダユウさん……それ、真面目にやってますよね?」

「消えてもあんまり罪悪感なくて、すぐに思いつけて、そんで見栄えの悪くねぇもんをチョイスしてたらこうなったんだよ」

 そんなキツい目で見ないでくれ――ゾクゾクすんだろうが。

 変態紳士に喜ばれてしまった。

 アハウは噛んだものを虚無へと還す過大能力で消滅弾を打ち消し、レオナルドも気の杭パイルを乱射することで撃墜している。勿論、ツバサもありったけの雷を振りまくことで、迫ってくる消滅弾を処理していた。

 この程度ならまだ許容範囲である。

 これがツバサたちまで対処できない物量になると厄介だ。

 それは取りも直さず、イシュタルランドまで届くことを意味する。スプリガン族や留守居組に更なる負担を強いてしまう。

「おまけに……気付いているか、ツバサ君?」

「ああ、わかってる……時間まで乱れてきてやがるな」

 レオナルドの問い掛けにツバサは危惧を募らせていく。

 リードを蝕んでいるのは、右眼に宿る消滅の力だけではない。

 彼はもうひとつ、左眼に時間を操る力を秘めていた。その力も暴走傾向をいや増すばかりで、辺り一帯の時間の流れが狂わされてきている。

 たとえば、消滅弾の速度に緩急がついていた。

 リードに接近してトドメを刺そうとしているジェイクなど、時間停止の直撃でも受けているのか、ちょくちょくストップモーションみたいな動きになっており、消滅弾をギリギリで避ける場面が頻繁ひんぱんになっていた。

 暴走の度合いは、リードの変化で推し量ることができる。

 右眼の中には時計盤のような紋様が浮かぶ。

 歪んだまま治った左腕は太さを増しながら伸び、その表面に無数の時計盤が浮かび、長針と短針をカチコチと廻している。

 時間を操る能力――それが象徴的に現れていた。

 リードの腕に現れたいくつもの時計盤を目にしたツバサは、それらが鳴らす時計の音を聞いているうちにある連想を結んでしまう。

 ――消滅の力と時間の力。

 この世のすべてを消滅させることで世界を滅ぼした後、時間を操る力を使って時を停止させてしまえば、一体この世はどうなってしまうのか?

 すべてが滅んだ世界で、時間が停まれば――。

『――来世つぎがあると思うなよ?』

 バンダユウから聞かされた、ロンドの決め台詞が脳内で再現される。

 戦慄せんりつしたツバサは、心臓の鼓動を耳の奥で聞いた。

「あの男、まさか……ッ!?」

 最悪の想像に辿り着いた瞬間、ツバサは声を上げた。

 同様に「リードッ!」と青年の名を呼ばわる者が降ってくる。

 ――アダマスとジンカイだ。

 ミサキやドンカイと戦っていたはずの二人が、血相を変えて戻ってきた。仲間である彼らも下手に近寄れない状況だが、できる限りリードの傍まで近付くと、あらん限りの大声で叱りつけていた。

「リードぉ! おまえバカ! ロンドさんがやるべき仕事をおまえが先取りしてどうすんだよ!? おまえはいざって時の保険だろうがぁ!?」

「落ち着けリード! おまえのそれ・・はロンドさんに万が一があった時の切り札! こんな小競り合いで使うものじゃないぞ!」

「うううぅぅ……おぉぉあああああああああああああーーーッッッ!」

 仲間の声ですらリードの耳には届いていない。

 暴走する力に理性まで蝕まれたであろうリードは、消滅と時間の力を滾らせて吠えるが、正気を失った視線はジェイク唯一人に注がれたままである。

 対峙たいじするジェイクも、リードから目を逸らさない。

 ジェイクは先程から二丁拳銃の内、自動装填式オートマティックのみで応戦しており、回転輪胴式リボルバーは一度も使われていない。だから迎撃が追いついていないのだ。

 その回転輪胴式リボルバーに、凄まじい“気”マナが注がれていた。

 リードを完膚なきまでに抹殺するため、六発の弾丸にとてつもない魔力を封じ込めていたのだ。一発一発が核弾頭レベルの破壊力を誇るだろう。

 必殺の銃撃を叩き込むためジェイクは突き進む。

 消滅弾が頬を掠めようと気にせず、我が身を省みない特攻である。

「リードォォォォォォォォォォォォーーーッッッ!」

 対するリードも限界まで消滅の力を引き絞る。

 ジェイクを抹消するため、とっておきの一発を溜め込んでいた。

白いホワイト・拳銃使いガンスリンガーァァァァァァァァァァァーーーッ!」

 決着がつくやも知れぬ――誰もが息を呑む瞬間。



「は~い、そこまで。ストップよストッ~プ」



 両者の間に降って沸いたのは、まったく緊張感のない声だった。

 突如、ロンドが現れたのだ。

 部下の能力を借りて空間転移したらしい。

 それも今まさに激突せんとする、両者の間に割って入っていた。だがしかし、頭に血の上った若者たちはオッサンなど眼中にない。

 ジェイクは必殺の弾丸、リードは特大の消滅玉、それぞれを撃ち放つ。

「――ギャアアアアアアアアアース!?」

 二人の間に出現したロンドは、その二つをまともに浴びた。

 悲鳴こそ聞こえるものの、ロンドは五体どころか声帯もちりと消えるほどの攻撃をまともに食らっていた。しかも形式的に挟み撃ちだ。

 ジェイクとリードの攻撃が交わるところは、極点きょくてんと化してしまった。

 あらゆるものを溶かして消し去る太陽の如き溶鉱炉とでも言おうか、このまま地上に恒星こうせいコアが誕生しそうな熱量である。

 同時に――次元に穴を開けかねない凄絶なエネルギー。

 輻射熱ふくしゃねつの圧力でさえツバサたちを後退あとずさりさせるほどだ。

 そんなものの中心に放り込まれれば、いくら極悪親父ロンドであろうと跡形もなく消え去るだろう。ツバサは反射的に大声を上げてしまった。

最悪にしてバッド・絶死をもたらデッド・す終焉エンズ編――完ッ!」

「こんな終わり方でいいのかね!?」

 レオナルド的には不本意なのか、眼鏡をズラす勢いでツッコまれた。ツバサ的にはこんな終幕もアリだが、納得しない者も多いだろう。

 そもそも――あの極悪親父がそんなあっさり死んでくれるか?

「おいおいおい……痛ぇだろうがよ!?」

 ロンドの声が聞こえたかと思えば、極点が破裂した。

 その中心から形を保たない百鬼夜行が二列、攻撃的なエネルギー波となって飛び出してくる。それぞれ、ジェイクとリードをしたたかに打ちのめした。

 ジェイクはアハウが獣王の巨体で抱き留める。

 リードはジンカイの大きな胸に受け止められていた。

「うおっ、やっぱりアレ羨ましい!」

「バンダユウさんステイ! 余所よそのおっぱいに目移りしない!」

 ジンカイの人間離れした爆乳の谷間に埋もれるリードを見て、バンダユウが子供みたいにわめいたので、ツバサは遠慮せずその頭を引っ叩いた。

 ……若頭補佐マリさんが怒るわけだ。

 ジェイクとリードは――気を失っていた。

 直接的な原因はロンドの叩き込んだ一撃に違いないが、それ以前に限界を超えて力を使い続けた反動だろう。ジェイクに至ってはこれまでの蓄積した疲労も手伝っているのか、神族なのに虫の息みたいな衰弱ぶりだ。

 よくもここまで暴れられたものである。いっそ褒めてやりたい。

「……ったくよー、何してんだいこの子は」

 極点を片付けたロンドは、何事もなかったようにそこに立っていた。

 かすり傷ひとつ負わず、着衣に乱れすらない。

 スタスタと歩く先にはジンカイに介抱され、気を失ったリードがいる。欠けた顔に浮かんでいたあかの光玉は消えていた。

 それと、変形した左腕に浮かんでいた時計盤も消えている。

 残った左眼で白目を剥くリードの頭を、ロンドは気軽にペシンと叩いた。

 大して力の込められていない平手打ちである。

ドリル姫ネリエルたちを穏便に連れ帰ってきて、ツバサの兄ちゃんに詫び入れてこいって言ったのに……おまえらが率先して暴れるってどういうことよ?」

 お得意様に迷惑かけんじゃねえ! ともうひとつ叩く。

「おまえらもだ、アダマス、ジンカイ」

 ペシンペシン、と筋肉リーゼントと異形の地母神の頭も同じように引っ叩く。彼らも心得たもので、ロンドに身長に合わせて頭を下ろしていた。

「すまねぇ、ロンドさん……出来心なんだ、勘弁してくれ」
「申し訳ありません、ロンドさん……つい、熱くなってしまいました」

 どちらも申し開きはせず、平身低頭とまでは言わないまでもペコペコと頭を下げていた。どちらも感情の赴くままに命令違反をするような暴れん坊だが、謝罪するくらいの分は弁えてはいるらしい。

 そして、ロンドもそれを許すだけの度量を備えていた。

 ……単なる放任主義かも知れないが。

 リードたちを適当に叱りつけたロンドは、こちらに振り返る。真っ先に目線を合わせてきたのはツバサだが、その眉は情けない八の字になっていた。

「悪かったな兄ちゃん、ウチの若い衆が迷惑をかけちまって」

 ロンドもまたこちらへの謝罪から入ってきた。

 部下も部下なら、上司も詫びを心得ているらしい。

「……その前に、相手先へ迷惑をかけないのが大前提なんだけどね」
「……まあ、そうなんだけどな」

 小声で耳打ちしてくるレオナルドに同意してしまった。

 ロンドはバツが悪そうにボリボリ頭を掻いている。

「ウチのはねっ返りなお転婆娘がちょっかい掛けに行ったと聞いたから、若い衆を使いに出して止めようと思ったら……そいつらまで暴れちまうんだもんなぁ。社員の教育が行き届いてねぇ! とガミガミ言われても仕方ねぇやな」

 面目ねえ! とロンドは大真面目に謝った。

 両手を合わせて拝み倒すように、深々と頭まで下げてきた。世界廃滅を目指す秘密結社のボスとは思えない有り様に唖然とさせられる。

「あ、ところで兄ちゃん、明後日あさって明明後日しあさってって開いてるかい?」

 一転、両手を合わせたまま上目遣いで尋ねてくる

 謝罪会見は終わり、とばかりにロンドは上半身を起こした。そこから右手を持ち上げると、親指と人差し指を丸めてクイッとお猪口ちょこを煽る仕草をする。

 一杯ろうぜ、というお誘いの合図だった。

「おい、確かに酒を飲む約束をするにはしたが……」

 あんなもの、冗談半分のジョークとして聞き流していた。

「冗談が半分なら、もう半分は本気だと受け取ってくれなくちゃな」

 クイクイ、とロンドはしつこくお猪口を呑むジェスチャーを送ってくる。最後には天を仰ぐように飲み干す真似までやってのけた。

 プハッ、と息をついてロンドは一言添える。



「ついでだからよ――りながら開戦の日取り決めようぜ」


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