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第15章 想世のルーグ・ルー

第366話:“銃神” ジェイク・ルーグー・ルー

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「派手にらかしたもんだ……おかげで発見できたんだが」

 立ち上る噴煙ふんえんを眺めるツバサは、呆れ気味にぼやいてしまった。

 ――黒曜石こくようせきの森が広がる荒れ果てた平原。

 何らかの事情で荒野となったものの、黒曜石が防護林の役目を果たしたのか、その足下には少しずつこけや草が生えて植生しょくせいを取り戻しつつあった。

 その上空を飛んでいた飛行母艦ハトホルフリート。

 同類ともいうべきVRMMORPGアルマゲドンプレイヤー、生き残った現地の神族や魔族、あるいは蕃神の魔の手から逃れて難民と化した現地種族……。

 協力を求められる仲間、救援や保護すべき人々。

 こうした人々を訪ねる空の旅の途中、視界のすみで大爆発が起きた。

 それも二度――どちらも天をく噴煙を上げている。

 現実世界なら戦術核兵器に勝るとも劣らない破壊力だろう。それが二回も続けば、現地で激しい戦闘が繰り広げられているはずだ。

 黒曜石の森は思った以上に広い。

 現場はハトホルフリートの浮かぶ場所から東寄り。さっそく急行してみれば案の定、プレイヤーと思しき神族が睨み合っていた。

 その前に――鋼鉄はがねの肉体を持つ機械生命体の一群に目が行く。

 周囲一帯の自然や生命体に働きかける過大能力オーバードゥーイングを持つツバサが調べれば、彼らの正体を知ることはできる。しかし、機械関係にうといツバサはいまいち自信が持てなかったので、そちら方面に強いダインに話を振ってみた。

「なあダイン。あれってもしかして……」

「そうじゃ母ちゃん、ありゃあ紛れもなく守護妖精スプリガン族ぜよ」

 操舵輪そうだりんを握るダインは、艦橋のメインモニターに目を見張っていた。

 中央に映し出されるのは2人の少女。

 風変わりな刀を武器にする小柄な少女が――レン。

 蛮族ばんぞくみたいに毛皮を着込む優しげな少女が――アンズ。

 少女の姿をした2人の神族が守るのは、列車というには規格外の大きさを誇るモンスター級の超巨大列車だ。

 一両が高さも幅も従来のものに比べて四倍はある。

 長さも倍とまでは行かないが、サイズに合わせて伸長しんちょうされていた。

 その列車を守るのは、神族の少女たちだけではない。

 超ロボット生命体としか言いようがない、大型ロボが護衛役を務めていた。

 全部で32……いや、33体。

 基本的には大型の車両が変形したボディを持ち、全長10m前後のロボットばかりだが、一体だけ破格の40m級を誇る巨大ロボがいた。

 先頭車両と第二車両が変形合体する――巨神きょじんみたいなロボットだ。

「おいロボ息子、おまえは共感できるんじゃないか?」

 どら息子のいんを踏んでロボ息子と呼ぶ。

 ツバサはまぶたをやや下げると歯を見せて微笑んだ。また素で「母ちゃん」呼ばわりされたので、ちょっと皮肉を効かせてやる。

 ダインは神族・機械デウス・仕掛けエクス・の神マキナ

 自身も巨大トレーラーから変形するロボットと合体して、巨神王ダイダラスという巨大ロボになる。様々なサポートメカと合体してバリエーションも豊富だし、フミカが協力すれば全長1㎞を超える超巨大ロボも操作できる。

 その他にも巨大ロボを建造して、最強ロボ軍団を造ろうとしていた。

 あんな列車ロボも造ってみたいリストにあるはずだ。

「そりゃあ大好物じゃからのぅ」

 共感どころじゃないぜよ、とロボ息子は褒められたようにはにかんだ。

 皮肉も通じていないダインは嬉々として語る。

「あの一等デカい列車ロボもいいが、周りにおる車と人型を行ったり来たりトランスフォームしよるロボたちもええなぁ……ああ、よう考えたら今度こそ本物のトランス○ォーマーに巡り会えたんか!? ほとんど車んなるからビークルモード主体……ちゅうことはオ○トボット! いや、サイバ○ロンがか!」

「ダイちゃん、目の輝きがえらいことに……」

 ロボットマニアな旦那ダインに、さしもの愛妻フミカも表情が渋くなる。

 本物のトラ○スフォーマーを目の当たりにしたダインは、当面ロボ造りの構想に取り憑かれることだろう。そうなるとフミカは構ってもらえない。

 ご機嫌斜めになるのも無理からぬことだ。

「でも、本当にあれスプリガン族なの?」

 だとしたらおかしくない? とミロが疑問を投げかけてきた。

 子供たちと一緒に座っても余裕がある艦長席にツバサは腰掛けているが、右側に座ったミロはこちらに抱きついて爆乳に頬ずりした。

 乳房の圧力でへちゃむくれのミロは、不思議に思うことを口にする。

「ガンザブロンのおっちゃんやブリカ&ディアのお姉ちゃんコンビが言ってたじゃん。スプリガン族の生き残りはもう自分たちしかいないって」

 守護妖精スプリガン族は分類上――亜神族デミゴッドとも呼ばれる。

 神族や魔族には今一歩及ばないものの、多の種族と比べたら圧倒的な能力を有するため、このような分類をされるのだ。

 それゆえに重要な役柄を任されることがある。

 スプリガン族は最後の世界樹を乗せた“天梯てんてい方舟はこぶね”を護衛するという任についていたのだが、これには一族総出で取り組んだという。

 世界樹を守るため、500年に渡る蕃神ばんしんの追撃に防戦をいられてきた。

 その過程で、多くの仲間を失ったと聞いている。

『スプリガン族は元々そこまで数ん多か種族じゃらせんやったで、生き残っちょるんなハトホル国にせきを置おかせていたでた我らだけんはず……他に組織や軍団があっちゅう話はとんち聞いたこっがあいもはん』

 ガンザブロンは悲しげに教えてくれた。

 その時、近くにいたミロも話を聞いていたらしい。

「だが、あれは間違いなくスプリガン族だ」

「そッスね。ウチが分析アナライズしてもスプリガン族って認識されるッス。人工知能を搭載されたロボとかじゃなく、彼らはスプリガン族という生命体ッス」

 大型ロボに変形したので全員男性のはずだ。

(※スプリガン族は“巨鎧甲殻”ギガノ・アムゥドという特殊な外骨格を持つ。男ならば巨大なロボに変形合体、女ならばパワードスーツ的な武装となる)

「別にガンさんの言葉を疑うわけじゃない。ただ、彼の知らないところで他のスプリガン族がいたとしても特別不思議じゃないさ」

 もしかしたら・・・・・・……と別の可能性もよぎる。

 いずれわかることなので黙っておこう。

「なんにせよ、あの神族の女の子たちと行動を共にして、あの列車を護衛しているのを見る限り、ガンさんたちと同じ守護者ガーディアン精神にあふれている」

 友好的に話し合える理性が感じられた。

 ……ちょっと粗暴感の目立つ血の気の多さは大目に見ておこう。

 そして彼女たちもまた、列車の乗客を守るため戦っていた。

 まだ詳細は不明だが、あの列車には少なくない数の現地種族が乗り込んでいるのを感知できる。彼らを守るため、少女たちは戦っているのだ。

 神族の少女2人――どちらもLV990以上。

 LV999スリーナインに到達していないのは残念だが、現場へ駆けつけてから拾えた声を聞いたところ、まっすぐな心根の持ち主だというのがわかる。

「どうやら平和的交渉が望めそうだな」

 ツバサの言葉から期待を感じたのか、ミロが勢いよく席を立った。

「じゃあ助けに行こうよ。この場合は加勢かな」

 ミロはメインモニターに映る1人の悪漢あっかんを指差した。

 ――胡散臭うさんくさい僧侶である。

 遠巻きながらも上空から俯瞰ふかんするように、ハトホルフリートは戦況に関する情報を集めていた。彼が今回の騒動の原因といっても過言ではない。

 僧侶の他にもう1人、神族の女性が隠れている。

 その女性に黒曜石オブシディアンゴーレムの大軍を作らせて、列車へ襲いかかるよう仕向けた謎の僧侶。妖しい笑みが仮面のように顔へと張り付いている。

 胡散臭くて――如何いかがわしい。

 ミロは僧侶と少女たちを順番に指し示した。

「あのニヤニヤ顔のお坊さんが悪者わるもんで、あっちのカワイイ女の子たちが愛と正義の味方! どう見たって一目瞭然じゃん。ささ、みんなで助けに行こ!」

 愛剣ミロスセイバー(二代目)を取り出したミロ。

 それを肩に背負って勢い勇んで艦橋かんきょうを飛び出そうとするが――。

「待ちたまえミロ君。我々が姿を見せるのはまだ早い」

 軍師レオナルドから「待った」が掛かった。

 気勢きせいがれたミロはつんのめるも、その場で立ち止まると「なんでどして!?」と不満げに振り返る。レオナルドは制した理由を明かす。

「彼女たちには悪いが――試させてもらう」

「試すって……あの坊さんとの戦いを観戦してろってこと!?」

 そうだ、とレオナルドは短く肯定した。

「彼女たちが属する陣営がどれほどの力を有するのか? 仮にもバッドデッドエンズを名乗る者とどこまで戦えるのか? その戦力を調査するにはまたとない場面なんだよ。このまま傍観ぼうかんさせてもらった方が都合がいい」

「そんであの娘たちが負けたらどーすんの!?」

 レオナルドの冷徹れいてつな考え方に、ミロは文句を叩きつける。

「あのニヤニヤ笑ってる坊主、LV999なんだよ? でも、あっちの2人の女の子はまだLV990ちょっと……2人がかりでも敵うわけないじゃん!」

「それでも――らなきゃいけない時もある」

 爆発寸前なミロをなだめるため、ツバサは柔らかく声をかけた。

「あちらさんもそのつもりみたいだしな」

 ツバサは艦長席で頬杖をついたままクイッとあごをしゃくる

 その先には――くだんの超巨大列車があった。

「俺とフミカが走査スキャン分析アナライズをした結果、あの列車には3人のLV999が搭乗とうじょうしているが……この局面でも姿を現そうとしない」

 1人は冬眠でもしているみたいに反応が薄いけど、他の2人はとっくの昔に状況を把握しているが動こうとする気配がない。

 ツバサは彼らの心算しんさんを推し量る。

「恐らく、あの子たちの成長を促すつもりなんだ」

 獅子は我が子を千尋せんじんの谷に落とし、這い上がった者のみを育てる。

「あの列車にいるLV999スリーナインも、似たような心境なんだろう。彼女たちに強敵と当たるよう仕向けている。負けてもいい、まずは立ち向かうこと」

 自身より格上の者と戦って得られる経験は得がたいものだ。

 それを実践かつ実戦で味わわせようとしている。

 ここでツバサたちが出しゃばれば、その機会を台無しにしてしまう。ちょっと心苦しいが、彼女たちの奮闘ぶりを見守るしかない。

「経験値が貯まる前に殺されちゃったらどーすんのよ!?」

 ミロの心配ももっともだ。ツバサとて危惧きぐしないわけではない。

 それも込みで保険もかけられている。

「LV990にもなれば滅多なことじゃ死なないし、そこまで追い詰められる前に彼らがしゃしゃり出てくるつもりさ」

 念のため、ツバサたちも用心は怠らない。

 レンやアンズに生命の危機が迫った場合、即座に助けるよう手筈てはずは整えておいた。具体的に言えばドンカイ、バリー、セイコには甲板かんぱんにスタンバイしてもらっており、万が一の際にはいつでも飛び出せるよう準備万端だ。

 無論、列車のLV999も待機中である。

「あちらもLV999が3人いて、内2人はちゃんと見守っている。その上であの胡散臭い坊主に、あの女の子たちをぶつけるつもりだ。残り1人は……なんだこれ熟睡してんのか? 反応がやたら薄いんだが」

「これは寝てるッスね……いや、寝かされてる・・・・・・のかな?」

「……自発的ではなく誰かに眠らされたのか?」

 探知系の能力にも秀でたフミカは、1人のLV999が深い休眠状態にあることを調べていた。無言でソッとツバサにデータを回してくる。

 寝ているLV999は深刻な疲労を負っていた。

 過労寸前といってもいい。神族なのにここまで疲弊ひへいするとは……。

 同等以上の敵と連戦でもしたのだろうか?

 この疲れを癒やすため、仲間の手で無理やり寝かされた節があった。

 なんにせよ――会ってみればに落ちるものだ。

 ツバサは肘掛けに頬杖をつき、戦闘を捉えたメインモニターに注視する。

「高みの見物って性に合わないが、しばらく決め込ませてもらうか」
「実際、高いところから見物してるしねアタシら」

 彼女なりに納得してくれたのか、ミロは不承不承にミロスセイバーを道具箱インベントリへ仕舞うと、ツバサの隣ではなく膝の上に乗っかってきた。

 納得できない部分を、ツバサに甘えることで埋め合わせるつもりだ。

 爆乳の谷間に顔を埋めて不満げにプースープースーと深呼吸を繰り返すミロを、赤ん坊でもあやすかのように「よしよし」と撫でてやる。

「あの……いいんですか?」

 左隣に座っていたマリナが、不意に声を出した。

 恐る恐る、申し訳なさそうに尋ねてくる。

 自分みたいなお子様が意見するなんて良くない、という態度がいじましい。自重どころか空気さえ読まないどこかの長女ミロとは段違いの奥ゆかしさだ。

「いいんですか、って……助けに行かないことがか?」

 ツバサは膝の上のミロを片手であやしながら、左腕でマリナを抱き寄せると彼女が言いたそうなことを聞き返す。

「いえ、そうじゃなくてですね……」

 言い渋りながらも、マリナはスルーされている事実を指摘した。

「あのお坊さん、バッドデッドエンズ・・・・・・・・・って名乗ってましたよ?」

 マリナは懸命けんめいにお母さんへ言い募る。

「バッドデッドエンズはセンセイに戦線布告して、大きな戦争が始まるまで悪さをしないって約束したんですよね? でもあの人は……」

「うん、バッドデッドエンズと名乗って絶賛悪いことしてる最中だね」

 マリナの気持ちへ追い風を送るようにミロが言葉を添える。

 なるほど――これは申し訳ないことをした。

 艦橋にいるLV999スリーナインは察していたので、敢えて口に出さなかったが、マリナはまだLV920台。わかっていなかったらしい。

 破戒僧のかたりを――まだ見破ることができないのだ。

   ~~~~~~~~~~~~

 黒曜石の森に硬い風が吹き荒ぶ。

 風の中にも黒い粒子が紛れ込んでいる気がして、吹きつける風に硬いものを感じてしまう。きっと、視界に入る黒曜石による錯覚だろう。

 もうほとんど――砕け散ってしまったが。

 黒曜石ゴーレムを大量生産するため消費され、ゴーレムもラザフォードさんを初めとしたスプリガンたちに粉砕されてしまったためだ。

 今では黒曜石の森ではなく、黒曜石が散らばる荒野になっていた。

 その荒野で立ち止まる全界特急ラザフォード号。

 ラザフォード号とそこに乗車する現地種族を守るべく、レンとアンズはタッグを組んでかつてない強敵と対峙たいじさせられていた。

 怪僧かいそう――ソワカ・サテモソテモ。

 風体こそ胡散臭いが実力はLV999。

 まだその領域に達しておらず、LV995のレンとLV993のアンズには荷が勝ちすぎる相手だ。ぶっちゃけ勝てる気がしない。

 しかし、ソージ部長やマルミさんが出撃する気配はない。

 過労気味のジェイクさんも熟睡中なので起こすのは忍びなかった。

 ジェイクさんはともかく、ソージ部長とマルミさんがこの事態を知らないわけはない。あの人たちは傍観ぼうかんを決め込んでいるのだ。

『まずは君たちでやってみなさい――無理なら代わるから』

 異口同音を発する、彼と彼女の顔が目に浮かぶ。

 ――実戦に勝る経験はなし。

 両者とも身を以て味わっているからこそ、レンやアンズを平気で死地に放り込もうとする。ソージ部長もマルミさんも、徹底した実践主義なのだ。

 事実、レンとアンズも強くなれたのを実感している。

 それでも愚痴ぐちの多いお年頃のレンは文句の十や二十が出てしまうが、本当に急成長できたのだから感謝こそすれ非難できる身分ではない。

 しかし、これは実践主義というより……。

「実践主義ってより実戦主義だよね」
「……どうしてアンズおまえは人のセリフを先読みするんだ」

 また発言のお株を奪われてしまった。

 テヘヘ、とアンズは舌を出して自分の頭をコツンと叩いた。お茶目を装っているように見えるが、この娘は生粋きっすいの天然なので素でやってる。

 可愛い、とか思ったら負けだ。

 小さくため息をついたレンは愛剣ナナシチの柄を握り締めた。

「やれるとこまでやるしかないか……アンズ」

 私ができるだけ坊主を引きつける――その間に準備しろ。

 呼び掛けた一言にそこまでの意を含める。

 幼馴染みならではの以心伝心いしんでんしんで、アンズはアホの子でもちゃんと理解してくれるのだ。「うん!」と元気のいい返事が返ってきた。

 よし、と頷き返してレンは愛剣ナナシチの力を開放する。

 それ即ち――過大能力オーバードゥーイングの発動だ。

 レンとアンズが戦意を露わにすると、ソワカは「おやおや」とおやを連呼しながらゆっくり首を右斜め75度へと傾けていく。

「お嬢さんがた拙僧せっそうの相手を務めてくれるのですか?」

 桃色吐息がはかどりますねぇ、と三日月のような口元で笑う。

「強い方々が後ろに控えてらっしゃるようですが……入れ替わらずともよろしいのですか? 身の丈に合わぬことは控えるべきですぞ?」

 それを承知で煽ってくるソワカに、レンは不適な笑顔で答える。

「ご忠告どうも……でも、やってみろと言われてるんで」

 やるだけやってやる! とレンは吠えた。

 次の瞬間、愛剣ナナシチから絶大な力が噴き上がる。

 剣を芯として燃え上がる、世界を照らす巨大な蝋燭ろうそくのようだ。

 刀身の7つの結晶板も激しく明滅しており、上から順に『探』『剛』『炎』『氷』『震』『破』『転』の文字が浮かんでいた。それぞれの文字が表す力を極限まで引き出すと、7つの力を連結させて無限大の相乗効果を起こす。

 ズドン! と破壊的な推進力すいしんりょくが爆音を鳴らした。

 レンが大地を蹴った音である。

 限界を超える力を発揮したレンが、一気呵成いっきかせいにソワカへ斬り掛かったのだ。

 相変わらず、謎の防御能力で防ごうとするソワカ。

 限界以上のブーストをかけたレンは、その防御能力を力尽くで強引に打ち破り、ふところまで肉薄にくはくするとナナシチの刃でソワカの頸動脈けいどうみゃくを狙う。

「――なんとなんと!?」

 まさか突破されるとは思わなかったのだろう。

 すんでの所でかわしたソワカだが、今度は無傷で済まさない。剣風を浴びただけでも、ソワカの肌にかすり傷を負わせる一撃だった。

 空振りに近いが、格上のLV999スリーナインに傷を負わせたのは事実。

 速度が高すぎるあまり斬撃を浴びせながら通り過ぎてしまったが、地面が陥没する勢いで踏み止まる。それから愛剣ナナシチを構え直した。

 咄嗟とっさに身を翻したソワカは、反射的に左腕で防御姿勢を取っていた。

 その左手に刻まれた浅い刀傷。

 傷口が赤く滲んでプシッ! と小さな血飛沫ちしぶきが飛び散った。

「これはこれは……本気で避けねば命取りですな」

「……こっちは最初から本気の全力だ」

 ソワカは態度からして、レンやアンズを舐め腐っている。

 侮られているうちが華――その隙に全力を叩き込む。

 相手が本気を出す前にぶちのめしてやればいい。ジェイクさんやマルミさんに教えてもらった、戦いにおける勝利の方程式のひとつだ。

 だからこそ過大能力オーバードゥーイングを惜しみなく使う。



 レンの過大能力――【七つの宝玉にセブン・スロット・七つの神が宿る】セブン・ストック



 愛剣ナナシチに埋め込まれた七枚の結晶板。

 実はこれ、宝玉なのだ。

 レンが決めた七つの力を宝玉にストックすることで、七種類の奇跡を起こす過大能力である。レンは七つの力にそれぞれ漢字を一字ずつ当て、その漢字が意味する効果を発揮できるようにしていた。

 ひとつの漢字が持つ意味合いは様々だ。

 漢字の意味を拡大解釈することで複数の効果を引き出したり、他の漢字と結びつけて熟語(造語でも効果あり)にして威力を倍増させたりもできる。

 使い方は無限大、応用が利く能力だ。

 欠点があるとすれば――あくまでも力の貯蔵ちょぞうであること。

 七つの力はレンの好きなように選べ、時間に応じて力は充填じゅうてんされていく。使えば減るが、時間経過でちゃんと再充填される。

 今のように、7つの力を同時解放すれば凄まじい力を発揮する。

 瞬間的とはいえLV999に追いつけそうだ。

 ただし、チャージされた力は使った分だけ消費する。

 同時開放などすれば激しく目減りする。もしも使い果たせば、レンはおよそ数時間は過大能力を使えくなってしまう。

 使い方に節度せつどが求められる過大能力とも言えるだろう。

 ソワカのような難敵と遭遇した時は要注意だ。

 使い切った瞬間、無防備な自分を敵前に晒すことになるのだから……。

 力の解放を維持したまま、レンはソワカへ斬りかかる。

 今度は身体ごとぶつかるように突っ込んでいき、間合いへ入るとともにソワカを千切りにするつもりで連撃を浴びせていった。

 さっきの渾身の一撃から、ある程度は読まれているらしい。

 今度はかすりもさせてくれない。

 それでも反応が違う。のらりくらりとした挙動きょどうだったがソワカが、打って変わって俊敏しゅんびんな身のこなしで避けるようになった。

 明らかにレンの過大能力、ナナシチの攻撃力を警戒しているのだ。

 追い詰めたとは言い難いが、異なる対応を引き出せた。手応えを感じたレンは攻撃の手を緩めない。これで倒せるとは思っていないからだ。

 この猛攻は――あくまでも陽動。

 レンがソワカを引きつけている間、アンズは離れたところで準備をする。

 アンズは道具箱インベントリから三枚のメダルを取り出した。

 硬貨としては大きく厚みもあって使い勝手が悪そうだ。アンズは「コインだよ」と主張するが、レンは「メダルだろ」とツッコんでいた。

(※コインは通貨として使えるもの、メダルは使えないもの)

 それそれメダルにはうさぎらしき動物、モクモクとした正体不明の顔、細身のネコ科の生物らしきものがデザインチックに刻まれていた。

 それら三枚のメダルを――アンズは口の中へ放り込んだ。

 そのままコインチョコみたいに噛み砕き、ゴックンと飲み干してしまう。

「プハッ……よい子のみんなは真似しちゃダメだよ!」

「真似できるか!」

 戦闘中なのにレンはついツッコんでしまった。

 あのメダル、レンも噛んでみたがミスリル並の硬度がある。それを平然と噛み砕けるアンズの歯と顎の力がおかしいのだ。

「へんしーん! アニマルモード!」

 気の抜けた掛け声を上げてアンズは変身する。

 唱える言葉こそ迫力に欠けるが、彼女から膨れ上がる力は本物だ。

 目に映るほどの闘気オーラを発したアンズは、総身からザワザワと音をさせて獣のような姿へ変わっていく。平たく言えば獣人化していた。

 ピンク色の髪はたてがみのようにボリュームを増して長くなり、顔が獣毛に覆われながら兎のような面立ちになる。耳の位置も移動して兎にしか見えない。脚はスプリント能力に優れたネコ科の動物を連想させる形になる。

 多分、チーターなどの足が速い獣だ。

 両腕も獣毛が生えそろうと両手の爪が鉤爪かぎつめとなって尖っていくが、こちらは他の部位に比べて特徴がない。何故か雷鳴を放つ黒雲をまとっていた。

 三種の獣の能力を発露させたアンズ。

 変貌へんぼうもさることながら、その身に宿る力も見違えるほど増大していた。



 アンズの過大能力――【祖霊の獣は我デリシャスが血肉となれ】・アニミズム



 アンズの過大能力オーバードゥーイングは獣の能力を模倣もほうできる。

 獣に限らず、モンスターを初めとしたあらゆる生物が守備範囲だ。

 彼女が何らかの生物を仕留めると、道具箱インベントリにその生物の能力が込められたメダルがストックされる。これを体内に取り込んだアンズは、生物の能力を自らの肉体に再現させることができるのだ。

 先日グリフォンになっていたのは過大能力これである。

 一度に取り込めるのは3種類まで。取り込むのは動物の能力に限られるが、神族のポテンシャルで使えるのが最大の長所だろう。

 欠点というわけではないが――使えば肉体に獣の特徴が現れる。

 人間の体格のままでは最大限のパフォーマンスを発揮できないし、能力を使う上で獣をシンボリック的に表現せざるを得ないようだ。

 こうなると蛮神というより獣神である。

「よーい……どんッ!」

 子供っぽい合図でアンズは走り出した。

 初速度でレンを上回る速度を叩き出し、踏み出して数歩で音速の壁をぶち破る音がした。二本脚でドリフト走行を決めつつ、ソワカの側面へ回り込む。

 あれはマッハチーターというモンスターの能力だ。

 文字通り、音速で走るチーターに似たモンスターである。

その脚力を神族の肉体で再現すれば、トップスピードで音速を超えて超高速の高みへ突入するのも朝飯前だろう。

 頭部に現れた兎の形態変化にも意味があった。

 あれはただの兎ではない――ヴォーパルバニーだ。

 歴戦の勇士でさえ一撃でほふる魔性の兎。その能力の真髄しんずいは「攻撃対象の弱所じゃくしょを見抜いて致命攻撃を加える」という点にあった。

 ヴォーパルバニーの五感がソワカの弱点を見極める。

「ううぅ~ん……多分ここおッ!」

 それは不可視ふかしの防御術の弱いところであり、そこに辿り着いたアンズは黒雲を漂わせる腕を振り上げると、稲妻の拳を打ち込んでいく。

 腕に宿るのは――嵐雲獣ストーム・ビーストの力だ。

 この間の偵察でわざわざアンズに仕留めさせた甲斐かいがあった。

 アンズのパンチは、いかずちの爆発をまき散らす。

 至近距離で鼓膜を打ち振るわせる落雷の音に眉をしかめるのはレンだけではなく、直撃を食らったソワカも同じだった。

 しかし、残念ながらダメージはまったくない模様。

 それでも――ソワカを後退あとずさりさせた。

「まだまだー! ほら、ほらほら、ほらほらほらほらほらほらーッ!」

 アンズは掛け声とともに雷のパンチを連打する。

 それは広範囲に蜘蛛の巣状の雷撃をお見舞いすることとなったが、どうしてもソワカには届かない。彼の手前でシャットアウトされてる感じだ。

「さてもさても、なかなかパワフルなお嬢さんたちですな」

 涼しい顔でせせら笑う破戒僧にレンはいらつく。

「アンズ、そのまま続けろ! こいつの防御を見破るぞ!」
「うん! レンちゃんに合わせるから任せて!」

 アンズの後を追うように、レンもソワカへの攻撃を再開する。

 レンは愛剣ナナシチから高出力斬撃を繰り出し、アンズはマッハチーターのフットワークで翻弄しながら嵐の力を込めたパンチのラッシュを放つ。

 二人の連係攻撃を、ソワカはそつなく避けていく。

 一応、タイトでスタイリッシュとはいえ僧衣を翻して巧みに回避するので、そういう舞踊ぶようで舞っているように見えなくもない。

 どうしても避けきれないものは、不可視の防御で受け止めている。

 レンがナナシチを叩きつけた感触では、厚みがあるけど弾力性に富んだ得体の知れないもので防がれている手応えがあった。

 何らかの手段で攻撃を防いでいるのは確実だ。

 分析アナライズ走査スキャンをかけても引っ掛からないので技能スキルではない。いくら格上であろうとも、技能が働いているのであれば反応が読める。

 となれば――過大能力オーバードゥーイングに他ならない。

 見えないバリアを張り巡らせる能力か、透明の盾を何枚も自身の周囲に展開させる能力……いや、そんな単純なものではない気がする。

 なんにせよ、押し込める・・・・・感触はあった。

 裏を返せば、ソワカの防御力を崩すだけの攻撃を当てることができれば、不可視の防壁を乗り越えてダメージを与えられるはずだ。

「力こそパワー……防御それを突破する!」

 レンは愛剣ナナシチの力を使い分けるように解き放つ。

「――アンズ!」

 レンの呼び掛けに「うん!」と答えたアンズは、両腕を掲げると特大の稲妻を発生させて、ソワカではなくこちらへと飛ばしてきた。

 まず『氷』の力を応用して大量の水蒸気を発生させるとひとまとめに留め、アンズに打たせた雷を借りて『転』の力で電気分解を行うと、水を水素と酸素に変えて『炎』の力で点火して大爆発させる。

 そこに『剛』と『破』の力も加え、破壊力をかさ増しさせておく。

 抜山ばつざん蓋世がいせいと名付けたくなる威力の大爆発を、ソワカにお見舞いしてやった。

 だというのに――。

「ン~フフフ、女の子の火遊びは感心しませんな」

 おねしょしますぞ、とソワカは平然とからかってきた。

 大爆発を真正面から浴びてもケロリとしている。局所的だが、破壊力ならさっきのラザフォードの主砲を上回る威力を込めたはずなのに……。

 だが、ソワカの謎が透けて見えてきた。

「ねえレンちゃん……さっきからなんかバチバチ当たるよね?」

 高速戦闘をしていたアンズはそんなことを訴えてくる。

 レンは声量の低い声を更に小声にして返す。

「ああ、ひょうが降ってる外を走ってる気分だったよ……」

 それだけじゃない。

 疲れ目に生じる、目の中のゴミが視界に映る飛蚊症ひぶんしょうのような……透明だけど視界を遮るものが目についた。

 目に止まらない、小さな羽虫のみたいなものが飛び交っている。

 レンはナナシチを構えると、ソワカに向けて突き出す。その際、『震』の力に他の6つの力を連動させて、強力な震動波をお見舞いしてやる。

 すかさずアンズも雷を最大出力で叩きつけた。

 バチバチバチッ! と小さい何かが爆ぜる音が鳴り響いた。

 震動波と雷撃を浴びて砕け散ったのは小さな玉みたいなものだった。それもひとつやふたつではない。雲霞うんかの如く数え切れないほど宙を舞っている。

 これが――ソワカの防御術の正体。

「ンンーフフフ、お見事お美事……お気づきになられましたか?」

 ソワカはやる気のない拍手を送ってくる。

 そして、見えなかった防御術をゆっくり可視化かしかさせた。

 現れたのは――無数の玉。

 大きさはまちまちで最小だとビーズ玉、中間でもBB弾、一番多いのは数珠玉くらいのサイズ、それより大きくても片手で包める大きさしかない。

 ただし、総数は数え切れない。

 さきほど雲霞に例えたが、まるで霧のように周囲一帯を覆い尽くしていた。レンやアンズの周りにも当然のように漂っている。

 小さな玉は“気”マナを凝縮させたもの。

 この無数の玉を操ることで、レンたちの攻撃をしのいでいたのだ。

「そこな侍お嬢さん――私たちの出会いは合縁奇縁あいえんきえんですな」

 貴方と拙僧の過大能力は似ております。

 ソワカは虫唾むしずが走るようなことを口走ると、何千という玉を自身の前に張り巡らせて、その玉に浮かぶ文字をレンへと見せつけてきた。

「さあご覧なさい――拙僧の念珠ねんじゅに浮かぶ物を」

 念珠と呼ばれる玉には、『防』『守』『壁』『妨』『避』『躱』『逃』などの攻撃をやり過ごすための文字が書かれている。

 レンは思わず、手にした愛剣ナナシチに目を落とした。

 7つの結晶板に浮かぶ、奇跡を起こすための文字とよく似ている。

 ソワカの過大能力はレンのそれと同じように、選んだ文字の力を念珠に宿すことで自由自在に発現できるものなのか?



 過大能力――【我が意をサウザンズ・叶えよ万感のエモーション如意宝珠】・チンターマニ



 分析アナライズすると、念珠ひとつひとつの効果は弱い。

 レンの愛剣ナナシチに宿る結晶板と比べたら、万分の一もないだろう。しかし、数さえ揃えば天井知らずで強力となる。ソワカの使い方はそれだ。

 ふとアンズがポムン、と手を打った。

「そっか、さっきからあのお坊さんを殴る度、ビーズクッションを殴ってるみたいな感じで邪魔されるなーって思ったら……」

「あの念珠とやらを寄せ集めて防いでたんだろうな」

 見えなかったのも念珠の力に違いない。

 数の多さは応用力に通じる。威力面において上回られるのは仕方ないが、応用性でもソワカに軍配が上がりそうなのがレンは悔しかった。

 ソワカは念珠を集めて何重もの数珠じゅずを作る。

 それを僧侶らしく身に帯びると、説教めいたことを告げてきた。

「侍お嬢さん、あなたの力はまだ融通の利かないところがあります。それは能力の質ではなく、精進不足ゆえの未熟さということもありましょう」

 愚僧ぐそうも怠け者ですが――これくらいはできますぞ。

 ソワカが片手で印のようなものを組むと、念珠の群れは流れを作るように動いて指向性を持つ。それは一端ソワカの背後に集まって広がると、浮かんでいた防御系の文字が攻撃的な文字へと切り替わっていく。

『攻』『撃』『突』『破』『打』『責』『斬』『裂』『壊』『衝』……。

 レンは――戦慄せんりつした。

 この坊主、まだ一度も反撃していない。

 威圧感こそ振りまいてLV999スリーナインであることを殊更ことさらに見せびらかしていたものの、まったくと言っていいほど攻撃してきていない。

 のらりくらりと身をひるがえすばかりで、戦おうとしなかったのだ。

「アンズ、攻撃の手をゆるめるな!」

 あいつに何もさせちゃいけない! と焦って声を荒らげる。

 え? と戸惑うアンズに構う暇もなく、レンは愛剣ナナシチを担ぐように振り上げてソワカへ突撃していく。アンズも慌てて追ってきた。

 守りに入ったら負ける――攻勢が一転して押し切られかねない。

 ンフフ、とソワカは含み笑いながら念珠を操る。

煩悩ぼんのうの大河に溺れてみるのは如何いかがですか?」

 羽虫の群れのように群体となった念珠は、ソワカの舞い踊るような手さばきに従って頭上に渦巻くと、濁流だくりゅうとなって押し寄せてきた。

 濁流の先端とぶつかったレンは、ナナシチを振るって反撃を試みる。

「……一瞬でッ!?」

 濁流と接触した瞬間、ナナシチに貯め込んでいたパワーが半分以上持って行かれたことにレンは寒気を覚える。歴然とした力の差を思い知らされた。

 押し流される――敗北の味がこみ上げた瞬間。

「うわあああああああああああああああああああああああああああっ!」

 女の子らしい悲鳴でアンズが飛び出した。

 レンの前に出たアンズは両手を前に突き出したまま、ソワカを目指して駆け出していくが、念珠の濁流に阻まれる。それを嵐雲獣の力でありったけの雷の嵐をまき散らすことで相殺させていた。

 恐らく、5秒……10も保たないだろう。

 エネルギーの物量戦では、どうしてもソワカに軍配が上がる。

 それでもアンズの意を酌んだレンは力を温存、必死でソワカへの間合いを詰めようとするアンズの丸いお尻を追いかけ、乾坤一擲けんこんいってきの時まで待ち構える。

 どれだけ壊しても追加補充される念珠の濁流。

「レンちゃん、ごめん……ッ!」

 競り負けたアンズは、とうとう念珠の濁流に吹き飛ばされてしまう。

 だが敢闘賞だ――ここまで接近できれば十分。

 レンは7つの力の1つ『転』を使って小規模な空間転移を起こすと、アンズが見つけてくれたソワカの死角、左斜めの背後へと回り込んだ。

 そして、残った力をナナシチに注ぎ込んで逆袈裟に斬り上げる。

 渾身の斬撃は空まで届き、大きな雲を真っ二つにした。

 でも――ソワカには届かない。

 まるでレンが空間転移するのを読んでいたかのように、ソワカは余裕たっぷりの仕種でゆらりとかわした。だが、レンは諦めずに食い下がった。

 小柄な体躯たいくを限界まで伸ばして、ナナシチの柄をてのひらの中で滑らせる。

 そうすることでわずかながらリーチを伸ばす。

 ソワカの涼しい顔に切っ先を届かせ、その頬に切り傷を負わせた。

「ンフフ……我武者羅がむしゃらな乙女は美しいですな」

 桃色吐息が冷めやりませんぞ、とソワカは口の端を不気味に釣り上げる。そこから人間離れした長い舌を伸ばして傷口の血を舐めた。

 圧倒的なLV差にも怯まず――ソワカに二度も傷を与えた。

 その事実をソワカなりに賞賛したらしい。

 体勢を崩してまで斬りかかったのでレンは無様に転げてしまったが、すぐに片手をついて立ち直るも、既に立ち向かう力は残っていない。

 愛剣ナナシチに溜めた力をほとんど使い切ってしまった。

 もはやここまでだ。

 もうひとつ、奥の手はあるのだが……使いたくない。

 ソワカはまだ全然本気を出していない。

 この奥の手は頼るべき者が近くにいない時、たった1人で危機に追い込まれた時のためのとっておきだ。できれば温存しておきたい。

 それに「ここは使う場面じゃない」とレンの勘が囁いていた。

 全力は尽くした――後は任せるべきだ。



「うん、レンもアンズも健闘賞かな」



 そんな声がしたかと思えば、ソワカが無様に蹴り飛ばされた・・・・・・・

「なななななッ! なんとなんとぉっ!?」

 レンとアンズのツープラトン攻撃でも蹌踉よろけさえしなかった男が、全身をくの字に曲げながら吹き飛ばされていく。

 慌てて受け身を取り、脇腹を押さえながら呻いている。

 かなりの激痛だったのか肋骨にヒビでも入れられたのか、脂汗あぶらあせを垂れ流してはいるが、その顔から胡散臭い笑みは消えなかった。

 生まれ付きこういう顔なのか? とレンは考え直す。

 ソワカは自分の脇腹を蹴り飛ばした張本人を真正面に見据みすえる。

 現れたのは――車掌服しゃしょうふくを着た女性だった。

 女性とはいったものの、レンたちと年の差はほとんどない。

 精々1歳半くらいの年上だ。レンたちが高校一年生……時期的には二年生になっているが、その頃に高校三年生だったのだから。

 実年齢は18か19歳。まだ少女と言えなくもない。

 しかし、レンやアンズとは比較にならないほど大人びていた。

 身長が170㎝を超えているからか? 全体的にスラッとしてて小顔で股下またしたも足も長いからか? 胸やお尻の発育が平均越えでふくよかだからか?

 ちんちくりんなレンにしてみれば羨望せんぼうの的である。

 なのに、本人は女性としてまったく着飾らない。

 デザインこそ高級品だがダブルのスーツとして洗練された車掌服か、武器や兵器を開発するために作業着でいるところしか見たことがない。

 一言でまとめればボーイッシュな美人。

 切れ長な瞳、やや高めだけど控えめな小鼻、ナチュラルに整った眉毛、カールされた濃い睫毛まつげ、小さいけど肉感的な唇……どれをとっても魅惑的な女性らしさを醸し出しているのに、どことなく朗らかで朴訥ぼくとつな印象がある。

 髪型もショートカット、それも適当に切り揃えた無造作ヘア。

 もしも女子校ならば王子様と持て囃されそうな面立ち。

 そこに女性らしからぬ凜々しさを感じさせる。

 要約すると――美女ではあるけれどフェミニンではないのだ。

 この人の場合、事情を鑑みれば当然なのだが……。

「あああーッ! やっと来てくれたーッ!」

 蛮神の売りは怪力と底無しのスタミナ。そして不死身のタフネス。

 持ち前の快復力で持ち直したアンズは、突如として現れた男装の麗人を不躾ぶしつけに指差すと、これでもかと不満をぶつける。

「ソージ部長おそーい! もしもレンちゃんやあたしが死んだらどうするつもりだったんですかー! もっと早く助けに来てよねー!」

 彼こそが・・・・ソージ部長――ソージ・スカーハ。

 だがしかし、ソージはアンズの文句など何処吹く風で言い返す。

「本当のピンチを味わわなきゃ強くなれない、ってマルミさんに口が酸っぱくなるまでいわれてるだろう? 僕だって結構な目に遭ってようやくLV999スリーナインになれたんだ。君たちも追いついてくれなきゃ困る」

 レンはホッと一息つくも、アンズへ続くように毒突く。

「わかっているけど……腹が立つ」

「ちゃんと助けに来たんだから勘弁してよ」

 外見に即した女の子らしくない口調でソージ部長はびた。

 そのうえで説教じみた言い聞かせを始める。

「LV900を超えると1レベルの差が決定的な差となってくる。これはLVが700を超えた辺りからレベルアップに要求される魂の経験値ソウル・ポイントが段階的に積み重ねる量が増えるのではなく、指数関数的に増えるからだと思われる」

 ソージは指折り数えて具体例を挙げる。

「2の二乗が4、2の3乗が8、2の4乗が16、2の5乗が32、2の6乗が64、2の7乗が128、2の8乗が256、2の9乗が512、2の10乗が1024……2の20乗ともなれば1048576だ」

 天井知らずで求められる魂の経験値ソウル・ポイント

 天文学的な経験値を修めた者のみ、LV999スリーナインへの扉は開かれる。

「成長過程の君たちが、LV999へ一矢報いたのは確認させてもらった。そこまで頑張れば魂の経験値ソウル・ポイントもかなり稼げたことだろう」

「……そのために私たちを放置したんかい」

 レンの恨み節にソージ部長は悪戯っぽく微笑んだ。

「でも、未だかつてないほど魂の経験値ソウル・ポイントが稼げたんじゃない」

 本当のことなので否定できない。

 レンは苦虫を噛み潰したような顔で不承不承ふしょうぶしょううつむいた。

「むぅ……稼げました」

 なら結果オーライだよ、とソージはレンたちとの会話を切り上げた。

 柔和な笑顔から苛烈な表情へと切り替える。

「おやおや……勇ましい男装束のお嬢さん」

 今度のお相手は貴方様あなたさまですかな? とソワカは首を傾げる。

 その胡散臭い笑顔にソージは眼力を叩きつけた。

「さてと、遠巻きにやり取りを見物させてもらってたけれど……あんた、ソワカさんだっけ? そのチーム名を僕たちの前で名乗る意味わかってる?」

「その名前……バッドデッドエンズですかな?」

 ソワカは首を反対側へと傾げた。

 押さえていた脇腹から手を離す。痛みが治まったらしい。

 バッド、デッド、エンズ、とソージは一区切りごとに言いながら、その度に指を鳴らして、最後にソワカへ人差し指を突きつける。

「あんたたちが僕らにしたこと……僕らがあんたたちに仕返ししてること……知らないとは言わせないよ? 知らないとしたら報連相ほうれんそうがなってないな」

「さてもさても、反論できませぬな」

 ソワカはその辺りの事情をおおっぴらにつまびらかにする。

「所属する組織名として名乗りはしたものの、所詮しょせんは無法者の集まりですからな。数名のグループに分かれて風の向くまま気の向くまま、破壊と殺戮を愉しむよう仰せつかっただけのこと……はてもさても、その論調から察するに……」

 我らの何某なにがしかが――やらかしましたかな?

 胡散臭い笑顔に、粘り気のある陰湿いんしつな微笑みが上掛けされる。

「仰るとおり、我らが組織は報連相もままならぬ粗忽者そこつものどもの集まり。あなた様方についてはとんと伝え聞いておりませぬな。でもまあ、やらかす連中はいくらでもおりましょう。弱者を標的になぶることを趣向とするやからもおりますれば……」

 酷く――怨まれてますねぇ。

 愉悦ゆえつを隠すことなくソワカは、見た目だけの長い袖で口元を隠した。

 愉快愉快、と口に出して笑いたいようだ。

 あまりに露骨な笑みは、作り物のようにいびつで見苦しい。

「ハイエルフの隠れ里を焼き尽くした件ですかな? ドワーフが地底に設けた地下帝国を壊滅させた件ですかな? はたまた天部族という亜神族デミゴッドが治める天空の島を堕とした件ですかな? それとも……」

 最強プレイヤー衆の一角――八天峰角エイト・ホーンを全滅させた件ですかな?

「ンフフ、心当たりがありすぎなのも困りますねぇ」

 自らの所業しょぎょうを自慢げに語るソワカに、ソージは頬を歪めて歯噛みする。

 もう黙れ、とソージはぴしゃりと言った。

「弱者かどうか試してみろよ、生臭坊主なまぐさぼうず

 ソージは出し惜しみせず、最初から過大能力オーバードゥーイングを発動させた。



 過大能力――【壊れた荒野ジャンク・より英雄はヒーロー・立ち上がるリバイバル】。



 現れたのは無数の球体だった。

 ソワカの念珠と異なり、金属的な光沢を帯びている。

 空気中の“気”マナから作り出しているソワカとは違い、ソージの球体は彼の道具箱インベントリからゾロゾロ排出はいしゅつされてくる。まるで大量のパチンコ玉だ。

 球体はソージの意のままに宙を飛び交っている。

 その総量はあっという間にソワカの念珠に追いつくほどだった。

「よもやよもや! 拙僧と同等の能力……いや」

 真似されましたかな? とソワカは面食らうも面白そうだった。

「どれどれ、ものは試しといいます。拙僧の念珠を猿真似したものか。はたまた同等以上の力を発揮するものか……味見させていただきましょう!」

 言うが早いか、ソワカは念珠を叩きつけてきた。

 さっきの濁流とは違い、粒のままバラバラとぶつけてくる。いや、イメージ的には散弾銃、破壊力満点のショットガンを発射されたみたいだ。

 ソージはこれに応戦する。

 拳舞けんぶめいた構えで手足を動かすと、球体が呼応して動き出す。

 迫り来るソワカの念珠に、ソージの球体がぶつかる。すると誘爆を引き起こすようにして互いを対消滅させることで相殺させた。

 どちらも消費するが、念珠も球体も次から次へと追加されていく。

 お互いに尽きる様子がない。

 膠着状態に陥るが、ソワカもソージも楽しそうに笑っている。

 対等に張り合える敵が現れたため、互いの闘争心に火がいたようだ。

 しかしこの対決――騒々しい。

 念珠と球体が相打ちで爆発する度、けたたましい音がするのだ。それも数が数だから鳴り止まない。神族であっても鼓膜が破れそうになる。

「ジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ……うるさいなぁ」

 レンは両手で耳を塞いで眉根を寄せた。

 耳がいいアンズも迷惑そうに眉を八の字にしている。

「うぅ~ん……パチンコ屋さんの前を通った時、不意に自動ドアが開いたりすると聞こえる爆音みたいで耳が痛いよぉ……」

 レンやアンズもそうだが、ソージだってパチンコには縁がない。

「パチンコ対決か……僕、まだ未成年なんですけどね」

「ンフフフ、軍艦マーチでも流しましょうか?」

 ソワカの周辺に浮かんだ玉が『音』『奏』『響』という文字を浮かべ、やたらと景気のいい音楽を奏でる。しかし、レンたちはピンとこない。

 理解を示さない若者たちに、破戒僧はショックを受けていた。

「御存知でない、軍艦マーチ? ンフフ……若者とオヤジという年代の差に打ちのめされそうですぞ。これがジェネレーションギャップというやつですな」

 アホな話題で一息つくも、念珠VS球体の激突は止まらない。

 しばらく拮抗きっこうが続くと――ソージが動いた。

 鉄球に紛れ込ませて道具箱インベントリから何枚もの装甲板を呼び出すと、それを両脚にまとわりつかせて金属製のブーツに仕立て上げた。

 装甲ブーツといった案配だ。複数の機甲も組み込んである。

 踏み出せば爆発的な脚力で走り出し、一足飛びでソワカに詰め寄った。

 ただでさえ足技が得意なソージが蹴りを繰り出せば、モーゼの十戒じっかいよろしく大海も割れるというのに、ブーツのかかとから高圧ジェットまで噴き出す。

 それがキックに超ブーストを掛ける。

 ソワカは右手でソージのキックを受け止める。

 ただし素手ではない。

 ソージの蹴りを受けたソワカの右手には、掌で掴めるぐらいの念珠が円盤状になっている。それを堅牢けんろうな盾にしてソージの蹴りを防いだのだ。

 今までの念珠とは段違いの力が込められている。

 ただし、衝撃までは殺せない。

 海をも割るキックの余波がソニックウェーブの輪となって広がる。

 ソージとソワカはビクともしないが、疲れ切っていたレンとアンズは風圧に負けて転げてしまう。神族の戦闘はこれだから……。

 波及はきゅうだけでも傍迷惑はためいわくである。

 強力な念珠を使わされたソワカは、笑顔に悔しさを滲ませていた。

「ンフフフ……まさか隠し球・・・を使わされるとは」

「そんなもんじゃないでしょう? まだ隠してますよね……」

 すべて吐き出させてやる! とソージは攻め掛かる。

 逆立ちするように地面に手をついて両脚を振り上げたソージは、天地を逆にしたまま両脚を軽やかに振り回して連続キックを打ち込んでいく。

 決して手や腕を使わず、ソージは徹底して足技だ。

 彼は工作者クラフターとしての誇りから「僕の腕は物を作るためにある。戦いには使わない」という信念のため、腕や手を使って攻撃することはない。

 このため、必然的に戦闘手段は足技に限定される。

「どこかの海のコックさんみたいだよねー」
「本人も参考にしたとか言ってたし……インスパイアだね」

 遠心力を乗せた回し蹴りを放つソージは、さながら竜巻のようにソワカを攻め立てていく。これには堪らないと大きく飛び退いた破戒僧。

「ンフフフ、竜巻には百足むかでで対抗してみましょう!」

 ソワカは念珠を連ねて長い数珠にしていく。

 先ほどの強力で大きな念珠を繋げて長い身体を形作ると、小さな念珠で細部のディテールにこだわり、何十匹もの大百足をかたどった。

 これがまた生理的嫌悪をもよおすすほどリアルにうごめく。

 数匹は螺旋状にして自身を取り巻く防御壁にする。

 残りはすべて攻撃に回して、ソージを狙うように殺到さっとうさせてきた。

 変幻自在な大百足の群れだ。

 しかし、ソージが怯むことはない。

 大百足の群れを潜り抜け、真正面から突っ込んでくる大顎をスレスレで避け、大地をえぐ横薙よこなぎを飛び越えると、ソワカの頭上へ跳び上がってく。

 途中――装甲ブーツが赤熱化していく。

 宙に飛びあったソージは左の利き足を振り上げて独楽のように高速回転し、ありったけの力を爪先に込めて一撃必殺の蹴りを叩き込む。

「――ゲイボルグ・ストライク!」

 一方、ソワカはこれを無策で受けようとはしない。

 ソージの蹴りが飛んでくる方向に強力な念珠を並べると、そこに一文字ずつ違う字を表記させた。それを最初から最後まで言霊を注いで読み上げる。

金剛阿吽こんごうあうん絶壁仁王ぜっぺきにおう顕現けんげん!」

 召喚されるように現れたのは、二体の屈強くっきょうな仁王像。

 絶壁の言葉が示すとおり、あらゆる攻撃からソワカを守る壁となってソージの必殺技をその身で受け止めた瞬間、大爆発を引き起こした。

 周囲にもたらす悪影響は、ラザフォードの主砲の比ではない。

 レンがなけなしの簡易結界を重ね掛けしなければ、ラザフォード号と客車にまで被害が及ぶところだった。それさえも間一髪である。

「……これだからLV999スリーナインは」

 じゃれ合うだけでも周辺地域へ災害をもたらしかねない。

 濛々もうもうと舞い上がる爆煙、そこから飛び出してきたのは無傷のソージ部長だ。ただし、装甲ブーツは粉々に砕けている。

 ブーツの破片をまき散らしながら、リンたちの前に着地する。

「いやはや――痛み分けですかな?」

 最初のように爆煙を一瞬でかき消すと、ソワカが無事な姿を見せた。
(※このトリックも念珠を使っていたらしい)

 痛み分けというだけあって、まったくの無事ではない。

 飛び跳ねる銀髪の毛先がチリチリと焦げていたり、ケホッと咳き込む度にすすけた息を吐くのを見たところ、そこそこのダメージは受けたようだ。

 ソージの装甲ブーツも砕けたので痛み分け――と言いたいらしい。

「痛み分け? なんのとこやら」

 ソージは茶化すように口笛を吹き、トントンと足を踏み鳴らした。

「ですが、被害はそちらも……おやおや~?」

 ソワカは目を丸くして驚いた。

 ソージが足を踏み鳴らした直後、あちこちから壊れた破片が飛んでくると、壊れた装甲ブーツに張り付いて瞬く間に復元していく。

 それどころか以前よりも装甲が厚くなっており、機動力を上げるための推進機関も増えている。機甲は更にパワーアップを果たしていた。

 丸くした眼を細めてソワカは感心する。

「なるほど……そう来ましたか」

 眼光をきらめかせたソワカは洞察力を働かせた。

「拙僧に張り合うため用意し球体も、よく見れば鉄や鋼をより合わせた機械的なもの……そういったものを思いのままに短時間で構築できる能力ですかな?」

 この発言にソージは小さく舌打ちした。

「一目で見破りますか、これだからLV999は……」

 面白いしり甲斐がある、とソージ部長もなかなか好戦的だった。

 もう一度、2人が激突しようとした矢先――。



「――うるさい」



 その一言で宙に浮かぶ玉がひとつ残らず消えた。

 ソワカの念珠もソージの鉄球も――すべて撃ち抜かれた・・・・・・のだ。

 完全に同時、一瞬より短い時間でだ。

 撃ち抜いた当人がラザフォード号の客車から降りてくる。

「マルミちゃんの子守歌でやっと眠れたってのに……また俺の知覚領域でドンパチやりやがって……安眠妨害にも程があるぞ」

 その長身痩躯の男は、睡眠不足でとてもイライラしていた。

   ~~~~~~~~~~~~

あいつ・・・は…………ッ!?」

「ここでが出てくるのか……ッ!」

 艦橋のモニターで一部始終を見届けていたツバサとレオナルドは、その男を視界へ収めるなり驚きの声を上げ、それから喜びの言葉を漏らしてしまった。

「セイメイが『こっちに来てるぜ』とは言ってたが……」

「ああ、ようやく再会できたな」

 伝説的格闘VRヴァーチャルゲーム――アシュラ・ストリート。

 そこで無敵の強さを誇った上位8名のランカーは常にベスト8を保持したため、他のプレイヤーから畏敬の念を込めてこう尊称された。

 ――アシュラ八部衆。

 ツバサ、レオナルド、ドンカイはその八部衆の一員だった。
(※バリーもベスト16の上位ランカー)

 現れた男もその1人――ハンドルネームは“ガンゴッド”。

 拳銃を中距離武器としてではなく、あくまでも近接武器として扱う。近接きんせつ銃闘術じゅうとうじゅつという独自の戦闘理論を編み出した風変わりな拳銃使いである。

「仲間内ではガン=カタとかガンフーと呼ばれていたな」

「拳銃は最大効率のダメージを与える武器として使い、それ以外にも手技足技投げ技に武器術を取り入れ、巧みに洗練させた総合格闘技って感じだけどな」

 銃の神と書いてガンゴッド――それが彼のハンドルネーム。

 今ではVRMMORPGアルマゲドンを経由して、新しい名前を名乗っているはずだ。

「確か、その名前もセイメイから聞いたんだが……」

「ジェイク・ルーグ・ルー……だったかな?」



 銃神ガンゴッド――ジェイク・ルーグ・ルー。



 7人目のアシュラ八部衆との再会である。


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