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第15章 想世のルーグ・ルー
第355話:それぞれの再編成~五神同盟ならず
しおりを挟む――ツバサの内には何柱もの女神がいる。
かつて聖賢師ノラシンハにも指摘されたことだ。
以前は出会ったばかりのノラシンハの胡散臭さも手伝って、うっかり聞き流してしまったが、二度目ともなれば戯れ言と切り捨てるのは難しい。
創世神の末裔であるヌンの言となれば尚更だ。
実際、ツバサも気になってはいた。
昔からオカン系男子と揶揄されることはあったが、真なる世界で女神として転生してからというもの、羽鳥翼という男性の心に自分ではない女性的な精神が住み着いたような気がしてならなかった。
いや、彼女たちはずっと昔からいたのかも知れない。
ツバサは女神になったことで顕在化してきた母性本能だと勝手に捉えており、便宜上“神々の乳母”と呼んでいた。
女性的な情動――あるいは母親らしい愛情。
こういったものを感じる度、神々の乳母は自己主張をしてきた。
女神化したことで獲得した技能に“乳母神”とか“母性本能”とかあったので、その影響とも考えていたがどうも違うらしい。
ノラシンハの言葉を受け、ツバサは自らの内に眼を向けてみた。
異相での修行中、瞑想によって精神力の錬磨に努めてきた。精神鑑定や自己分析の技能も習得し、自らの心の在り方について思索した。
その結果、実感したことがある。
確かに――ツバサの内には女神の力が眠っていた。
紐解くきっかけとなったのは、魔法の女神という戦闘形態の礎となったククリの母親である。彼女の魂もまたツバサの意識に息づいていた。
生命と豊穣の女神――マムリ・オウセン。
還らずの都を守る巫女、ククリの実母でもある。
還らずの都を巡る大戦争の終結直前、ゆえあってツバサはマムリの魂を受け継ぐこととなり、劇的なパワーアップを果たすことができた。その代わりと言ってはなんだが、ククリの母親役も引き受けることとなったのだ。
(※『第201話:受け継がれる魂の想い』参照)
マムリはツバサの内からククリの成長を見守ることができる。
ツバサはマムリの力を借りて自身を強化することができる。
Win-Winの関係と言えるだろう。
おかげで魔法の女神という新しい変身モードを開発することもできたが、マムリはツバサの脳内に訴えてくることがあった。
彼女によって母性本能が焚きつけられることさえある。
そうしたマムリの魂を足掛かりとして、ツバサは自身の奥底にある深層を手繰るように覗いてみた。無意識や阿頼耶識と呼ばれる根源に近いところだ。
そこに――いくつもの女神の力が渦巻いていた。
中心にいるのは神々の乳母であり、周囲に殺戮の女神、魔法の女神といった女神の力が幾重にも取り巻いている感があった。数にして5から6、曖昧模糊としてよくわからない力の塊となっている女神もいた。
そのひとつがマムリの魂である。
マムリの魂はツバサの内に溶け込んでまだ間がないためか、はっきり確認することができた。他は神々の乳母と殺戮の女神の存在感が強いくらい。
彼女たちが顕在化している理由は察する。
女神となってしまったがツバサが、望むと望まないとに関わらず彼女たちの力を我が物として使えるようになったからに違いない。
だからこそ、はっきり自覚できるのだ。
自己分析をする中、ツバサが真っ先に考えた疑問はひとつ。
この女神たちの力は――どこから来た?
マムリはいい、ツバサが受け継ぐと認めたものだから。
しかし、他の女神の力には皆目見当がつかない。
ツバサはインチキ仙人(神と魔の間に生まれた灰色の御子らしい)に、超常的な武術こそ仕込まれたものの普通の人間だった。
父も母の家系も、神や魔の子孫だなんて聞いた覚えはない。
では――女神たちの力はどこからやってきた?
当初は内在異性具現者となった時に宿ったものかと考えた。
だとしたら順序がおかしい。内在異性具現化者は魂の強大さゆえに、現実世界の自分とは裏返るような肉体に変えられるという理屈だからだ。
つまり、ツバサの魂は最初から強大だったと認められたことになる。
その強大さは――女神たちの力ゆえではないか?
ゆえに内在異性具現化者として反転してしまい、内に眠る女神たちに影響を受けて女性になってしまったのではないか?
神々の乳母たちは――どこからやってきたのだ?
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女神の力、その出所についての推論は終わらない。
だが、激しく揺れ動く感情にツバサはそれどころではない。
羽鳥翼という男心が、本当に久し振りに「おまえは男だ」と認めてもらえたことに感激して、大爆発を起こしてかけいた。それは初対面でノラシンハに言われた時よりも荒々しく有頂天になりそうなほどである。
思い返せば、あの時はノラシンハを最大限に警戒していた。
今でこそ信頼はおけるとわかったが、警戒心が働いていたのもあってノラシンハに開口一番「兄ちゃん」と呼ばれても怪しむのが関の山だった。
だが、今回は不意打ちも甚だしい。
事前情報としてヌンが信に足る人物だと聞かされた上で、部下を想って嘆く姿を見せられ、一人の人間として共感を覚えたところに、「君は男だ」と同情するように認められたため、羽鳥翼という男心が大喜びしてしまった。
「あ、あ、あ……」
感動のあまり口元をわななかせて次の句が口から出ないツバサは、身体が独りでに動いており、ヌンへ向かってやや身を屈めていた。
ツバサは身長180㎝、ヌンは小柄なので背丈を合わせていく。
震える両手を持ち上げ、軽めに広げる。
「ありがとう、ございます……本当にありがとう……」
思わず感謝の言葉を呟きながら涙ぐむツバサは、ヌンを抱き締めていた。
それはもう――我ながら熱烈な抱擁だった。
ついにMカップに達した超爆乳が押し潰れるのも構わず、小さなカエルの王様を力いっぱい抱きすくめる。逃げ場が乳房の谷間しかなく、そこへ埋もれそうになるヌンは当惑のあまり蝦蟇みたいな悲鳴を上げた。
蛙の口をパカンと開けて、空に向かって轟き叫ぶ。
「ゲロォォォォォォォーーーッ!? いきなり熱烈な抱擁ーーーッ!?」
それは誰が聞いても歓喜の叫びだったが――。
曲がりなりにも一国の王同士の対面。その仲介役を買ってくれたレオナルドはハリネズミみたいな髪が一本残らず逆立つほど驚いていた。
丸くした眼から銀縁眼鏡が間抜けにズリ落ちる。
「ツ、ツバサ君!? 外交問題! 外交問題とか考えて!?」
ある意味、土下座よりいけないよそれは! とレオナルドはオロオロ慌てふためきながら、どうやって収めればいいのかと狼狽えている。
軍師殿の声にツバサは我を取り戻した。
いくら男心が暴走したとはいえ、出会い頭に抱擁はよろしくない。
よく国の代表同士が親密さをアピールするために会見の場で握手したり抱き合うパフォーマンスを見せるが、ツバサがやったことはほとんど色仕掛けに近い。
ダイレクトなハニートラップも同然だった。
男心が歓喜するあまり、こんな失態を犯すとは思わなかった。
ツバサは慌ててヌンを爆乳の抱擁から解放すると、最初の立ち位置まで戻って頭を下げた。たった今仕出かした失態への謝意を示すためだ。
「も、申し訳ありませんヌン殿! あの、俺……いえ、私はこうなって久しくて、男扱いされることもなかったから、嬉しさのあまりつい……」
ツバサは顔を真っ赤にして、しどろもどろに弁解する。
こういう立ち振る舞いは、まだまだ二十歳の小僧だと恥じてしまう。
「う、うむ、良い、良いぞ。気に病むでない」
こっちが礼を言いたいくらいじゃ――ヌンの表情は蕩けきっていた。
見た目こそカエルだが、その五体は小柄とはいえ人間に近いため、こういった色仕掛けも効いたらしい。おっぱい星人なら役得だろう。
男扱いされて男心が喜んだのに、女の武器を使ったようなものだ。
ヌンは小脇に杖を挟むと両手でパン! と音が鳴るほど顔を叩いてからムニムニと表情筋を解した。蕩けた表情を立て直したいらしい。
しばらくすると、カエルとしてはキリッとした表情に立ち戻る。
良かった。今のおっぱい抱擁は不問に……。
「して何が望みじゃ? それほどの乳を堪能させてもらったからには、相応の対価を支払わねばなるまい。ワシに……水聖国家にどれほどのものを望む?」
……ならなかった。ハニートラップ大成功だ。
土下座どころではない。外交上由々しき問題が発生寸前である。
「そういうの求めてませんから! 今のは偶発的な事故です!」
「さっき私にした土下座みたいに非公式のノーカンにしてください!」
ツバサとレオナルドは大わらわで撤回を求めた。
「わかっとる。冗談じゃわい」
ヌンは強かな笑みを浮かべ、長い舌でチロリと舌舐めずりした。
こういうところに老獪さを漂わせている。
杖を右手に持ち直したヌンは、興味深そうな眼差しでツバサを見つめる。
そして、不思議そうに見解を口にした。
「しかし、そこまでボインボインのドムンドムンなパイオツ……失敬、豊満な女神に転じてしまうと、身も心もそっちに引っ張られやせんか? まだ男の気持ちを残してるとなれば……君はとんでもなくタフじゃのう」
「おかげさまで、心身ともに極めてタフになるまで鍛えられました」
そういう意味ではインチキ仙人の指導様々である。
彼の心技体を極限まで鍛え上げる修行が、今日のツバサを作り上げたのは疑いようのない事実だ。おかげで、まだ男心を失わずに済んでいた。
すると――ミロがヒョコッと顔を出した。
「……そうか、ツバサさんがメス墜ちしないのはあのジジイのせいか」
「誰がメス墜ちするかコラ」
ツバサに背負われ、その長い髪の中に隠れん坊していたのだが、顔を出すと同時にこの場にいないインチキ仙人へ恨み節をかました。
「おお、カエサルトゥス殿も御一緒だったか。これはお見逸れしてしもうた」
ミロの姿を認めたヌンは一礼して愛想を振るう。
ツバサを知っているのだから、ミロも知っていておかしくない。
念入りに真なる世界を覗いていたようだ。
挨拶代わりに小さく「うん」と頷いたミロは小さな幼児のようだ。ツバサの両肩に両手を添えて顔を出したミロは、ヌンに遠慮なく質問する。
「ねえカエルの王様、ツバサさんのおっぱいどうだった?」
「無論――究極にして至高じゃった!」
ヌンは最大級の笑顔で即答し、水掻きのある親指を立てた。
「うん――なら良し!」
これにミロも最高の笑顔でグッドサインを返す。
「どうして出会って秒で意気投合してるかな、この二人は……」
十年来の親友みたいなやり取りしてるし。
年齢的にいえばお祖父ちゃんと孫かも知れない。ヌンが鷹揚で適応力が高いのと、ミロの何でもウェルカムな気前の良さがベストマッチしたようだ。
「しかしまあ、珍しくツバサさんがサービス満点だったね」
面白いモン見た、とミロは歯の隙間から空気を抜くようにシシシと笑う。
そこをほじくり返されるとツバサは恥ずかしくて仕方ない。
顔の火照りが抜けきらないので、顔を明後日の方へ向けてしまった。
「そういえば意外だね」
レオナルドはミロへ確認するように問う。
「相手が女性や身内の男の子ならばともかく、ツバサ君が他の男性に過剰なスキンシップを取ると、ミロ君は悋気を焼くと思ったんだが……」
「このカエルの王様ならいいよ。許してあげる」
コミカルな外見もあってヤキモチを焼かなかったらしい。
「これもあのインチキ仙人ジジイのせいかも知んないけど、ツバサさんはお祖父ちゃんっ子なところがあるからね。オリベのジイちゃんやクロウ先生もある程度までなら大目に見てあげる。ある程度……まではね」
ある程度、という部分をミロは念入りに強調した。
やや伏せた双眸は眼光も鋭く、口元の微笑みは残虐さを滲ませる。
レオナルドは一筋の冷や汗を垂らして固唾を飲む。
「大丈夫、俺がツバサ君にセクハラすることは絶対にないから」
「やったらミロより先に俺がぶちのめすわ」
ツバサはレオナルドに向けて握りしめた拳骨を突きつけた。
「てか獅子のお兄ちゃんはセクハラしたいならクロコさんたちに……」
「それは絶対にノーサンキュー」
ミロの提案を、レオナルドは両手で制するように拒否した。
この男、爆乳特戦隊へ手を出すつもりはないらしい。
爆乳美女たちが4人も揃ってハーレムを希望しているというのに、他人からすれば勿体ない話だ。ただし、美女たちはそれぞれ恐ろしい地雷持ちだが。
一方、ツバサは別の単語を拾った。
「お祖父ちゃんっ子か……そういわれると違和感がないな」
ツバサはほとんどインチキ仙人な師匠に育てられたようなものだ。
師匠は「爺さん」というには異様なくらい若々しい風体だったが、老人には変わりはない。実の祖父より長い付き合いだったのも事実である
だからなのか――ツバサは高齢男性に弱い。
弱い、だとちょっと変な意味になる。甘い、ともまた違う。
親近感を抱きやすい、と言うべきか?
爺や気分で接してくるオリベなど最たる例なのだが、小煩いことを言ってくるのに嫌いになれず、その積み重ねてきた年月の経験値に見合った敬意を払い、彼らの意見に「善処しなければ」と思ってしまうのだ。
やっぱりお祖父ちゃんっ子という表現がしっくり来る。
すると、ヌンがこちらを見上げてきた。
カエルなりにハンサムな表情を作っているつもりなのか、瞳の黒目をキラキラ輝かせて睫毛も筆みたいにバッサバッサにして、渋い声で勧めてくる。
「ヌンおじいさま、でもワシゃ一向に構わんぞ?」
「いきなり近所の顔馴染みみたいな距離感を求めてこないでください」
一転、ヌンは愛嬌と剽軽を売りに可愛く小首を傾げる。
「……ヌンおじいちゃん、でもいいんじゃよ?」
「食い下がってどうするんですか。より距離感縮めてるし」
ツバサは呆れ気味に返す。
どうやら気兼ねなく交際できる御仁のようだ。
挨拶を終えて、ヌンとこれからのことについて軽い打ち合わせを始めようとした矢先、この議会の間に近付いてくる大きな気配が二つあった。
「――ヌン陛下! ご無事ですか!」
飛び込んできたのは誰あろう、エンオウとモミジだった。
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会話に参加していないので静かだが、剣豪セイメイも一緒である。
ロンドの置き土産となった玉虫色のアメーバ状蕃神。
それを退治するために駆けつけてくれたセイメイも、レオナルドの案内でオクトアード王城へ向かうツバサたちに付いてきた。
道すがら、レオナルドの説明が終わった頃を見計らい、セイメイも自分の見聞きしたものを話してくれた。剣術ならば剛柔を併せ持ち、大胆さと繊細さを兼ね備えている男だが、それ以外のことはざっくばらんでアバウト極まりない。
話す内容も大まかだが、要点さえわかれば十分だ。
エンオウやモミジと再会した――ツバサにはそれで伝わる。
レオナルドもアシュラ時代には獅子翁のハンドルネームで面識があるので、エンオウの登場には驚くも、彼の温厚な性格は知っているので歓迎した。
味方になる、という強い確信もあったからだ。
許嫁のモミジに関しては説明を要した。
現実でも交流のあったツバサやセイメイはともかく、モミジはあまりゲームをやらなかったので、レオナルドは彼女の存在をまったく知らなかった。
『それとな……グレンの野郎がいやがったぜ』
この報告を聞いた瞬間、ツバサとレオナルドは激変した。
キャラ崩壊と言われかねない怒りを滾らせた鬼の形相となり、周囲の生態系を滅ぼしかねない攻撃力のある殺気を発散させてしまう。
殺し屋・虞錬――アシュラを終わらせた男。
アシュラ・ストリートを愛したツバサたちのようなゲーマーたちから、蛇蝎よりも毛嫌いされた男だ。理由はそのあだ名に集約されている。
――ロンドが叫んでいた名前。
あれはよくありそうなグレンという名前でも、ツバサの聞き違いでもなく、正真正銘、アシュラを終わらせた男であるグレンを指していたのだ。
グレンを思い出しただけで腸が煮えくり返る。
それは横にいるレオナルドもだ。同意を求めるまでもない。
しかし、セイメイは無頓着だった。
グレンに対して不満はあるようだが、ツバサたちほど怒りや憎しみを抱え込んではいない。その点において淡泊とも言える。
セイメイ自身「弱ぇ奴は負けて死ぬ。勝った奴が正義だろ」という、グレンと似通った精神構造のためか、アシュラが不条理に終わらせられたことにも恨み節を抱くことはないらしい。あるいは、面倒臭いだけかも知れない。
怒るのも怨むのも憎むのも面倒臭いのだ。ある意味、潔い性分である。
その割には亡くした無二の親友には未練タラタラなところもあるのだが……。
それでもグレンの話題になると眉間に皺を寄せた。
『なんでもかんでもブッ殺すの大好きなあの野郎にゃあ、お誂え向きのチームだったんだろうぜ。バッドデッドエンズに仲間入りしてやがった』
『ああ、ロンドが名前を呼んでたからな』
名前の似た赤の他人かと思ったが、まさか当人だったとは……。
セイメイは納得が行かなそうに話を続ける。
『でもよ、あの野郎は“英霊への道”をこさえたせいで、刑務所にぶち込まれたはずだろ? 四十路ぐらいまでムショ暮らし確定じゃなかったか?』
『刑務所がアルマゲドンで遊ばせてくれるわけないよな』
アルマゲドンをプレイしてなければ、この真なる世界という異世界へ転移することはできない。他に方法がないとも限らないが知る由はない。
ツバサとセイメイは同時にレオナルドの顔色を窺う。
我らが軍師殿の顔には「言っただろう?」と書いてあった。
『GMとしてのロンドは人材選出を担当していた。その中には刑務所暮らしの罪人も含まれていたんだよ。グレンが真なる世界にいるのならば……』
『恐らく、ロンドが手引きしたんだろうな』
ツバサが仮定した結論に、レオナルドは苦い顔で頷いた。
最悪にして絶死をもたらす終焉――凶軍。
ロンド直属として厄介の裏の仕事を引き受けるエリート部隊。その1人に数えられるほど重用されているのだ。まず間違いあるまい。
グレンに遭遇したことで、確信を持つこともできた。
ロンドは現実世界にいた頃から、バッドデッドエンズに加わえるべき人材をかき集めていたのだ。そいつが刑務所暮らしだろうとお構いなし、世界的協定機関の権限を用いて、真なる世界へと転移させていたようだ。
でなければ――グレンが真なる世界にいる理由が成り立たない。
グレン以外にも厄介な人材を抱えている。
そんな懸念にまで確信が及び、気が滅入りそうだった。
ひょっとすると、ずっと以前からグレンとロンドは繋がっていた可能性もありそうだが、ここから先は憶測に頼る部分が多いので割愛する。
『どっちみち、敵に回ったんならぶっ斬るまでさ』
難しく考えることはねぇよ、とセイメイは一言で切り捨てた。
『おれたち縁のある者がぶち当たったら、アシュラ・ストリートを終わらせられた怒りと憎しみを込めてぶっ殺してやりゃあいい。な? 簡単だろ』
『君の考えは簡略化が過ぎるよ、セイメイ』
レオナルドに窘められてもセイメイは何処吹く風である。
『難しいことは考えるのは総大将や軍師の仕事だろ? 用心棒の仕事は向かってくる敵をぶった斬るだけさ。グレンが歯向かってきたら殺しとくぜ』
文句ねぇよな? とセイメイはせせら笑う。
聞けばエンオウと戦っている最中だというのに、現れたセイメイにも躊躇うことなく喧嘩を売り、ツバサや獅子翁がいると聞けばそちらにもまとめて喧嘩を売ろうとしたらしい。LV999を4人同時に相手取るつもりだったとか。
『4人同時プレイか……さすがに欲張りセットじゃないか?』
『いやだから、意味が違うだろそれ』
レオナルドの選んだ言葉に、珍しくセイメイがツッコんでいた。
『強い奴を殺そうとする性分は相変わらずだな……』
三つ子の魂百までか、とツバサは変わりないグレンに嘆息した。
グレンの話はここまで――強制的に切り上げる。
八部衆と謳われるまでのめり込んだツバサたちにしてみれば、アシュラ・ストリートの話題は尽きない。それを終わらせたグレンの話ともなれば、悪口がいくらでも湧いてくる。徹夜で語り明かしても足りないくらいだ。
ぶっちゃけ、切りがない。
王城が目の前に迫ったところで会話を打ち止めにした。
議会の間に到着後のセイメイは、ホクトたちを手伝い負傷者の手当てをやってくれていた。といっても、用心棒に回復系は期待できない。
セイメイは腰の瓢箪を手にすると、怪我人の傷口に酒を注いでいく。
アルコールで消毒というわけではない。
――“永劫の極酒瓶”。
起源龍ジョカフギスが持っていた、神酒を無限に湧かせる神器だ。
その神酒はいくら呑んでも悪酔いや二日酔いはせず、飲んだ者のストレスを跡形もなく解消し、多少の病気や怪我ならば癒す治癒力もある。
飲むだけではなく、浴びせても効果を発揮する。
傷口を綺麗に洗い流して殺菌するのは勿論、傷跡も残さず癒着する効果があり、少なからず自己回復に強化がかかる。そして、回復中に発生する痛みや苦しみを紛らわすように麻痺させてくれる。
怪我人の精神的苦痛を緩和する、という麻酔効果が望めるのだ。
回復や治癒に関してはホクト、カズトラ、セイコたちが手を尽くしているので、セイメイはこの麻酔効果を付与して回っているのだ。
役に立ってはいるのだが……。
「……怪我人に頭から酒ぶっかけてるようにしか見えないんだがな」
「……しかも、途中でガブガブ飲んでるから印象最悪だね」
効果覿面なのは疑いようもないのだが、セイメイのやっている行為のビジュアル面が最悪なので、ツバサとレオナルドは渋い顔になってしまう。
完全にタチの悪い酔っ払いである。
「あれは……もしや古神代の神酒か? 飲んでも浴びても人を癒やす絶大な効果があるというが、とんでもなく希少なはず……それを惜しみなく怪我人たちのために浴びせてくれるとは……ハトホル殿のところは用心棒も気前がいいんじゃな」
ヌンの理解と感謝を得られていることが救いだ。
そうこうしている内に、議会の間へと強い気配が2つ近付いてくる。
警戒はしない。その2人は誰かわかっていた。
「――ヌン陛下! ご無事ですか!?」
議会の間へ駆けつけたのは他でもない、エンオウとモミジだった。
現実で最後に会った時より大きくなった気がする。
身長180㎝あるツバサが見上げるのだから、もう2m近い長身だろう。短めに刈り込んだ頭髪に、甘さが抜けきらない善人面の男前。体格に適したボリュームの筋骨も成長するに合わせて盛り上がったようだ。
鍛錬も忘れてない――弟分の成長にツバサは感心した。
ラフなティーシャツにカーゴパンツ。そしてファーが多めのジャケットは、現実にいた頃からエンオウが愛用して已まないファッションである。
エンオウの隣にはモミジがくっついていた。
くっついていた、と表現するのに申し分ない距離感である。
年齢は確かミロと同じくらいのはずだ。それにしては小柄なのだが、相反するようにスリーサイズの発育にメリハリが効いている。こういう体型はトランジスタグラマーというが、彼女はロリ巨乳というべきかも知れない。
和風を意識するも露出度は高めでややエロティックな衣装に、魔女アピールなのかそれっぽいつば広の帽子をかぶっている。
現実寄りなエンオウと比べれば、余っ程ゲーム的ファッションだ。
やや寝ぼけ眼な円らな瞳に丸眼鏡をかけた愛らしい顔立ちは、現実でよく遊びに来ていた頃と変わらない。ツバサは安堵を覚えてしまう。
「おう、来たかエンオウにモミジちゃん」
セイメイが怪我人に頭から酒をかけつつ声をかける。
エンオウとモミジはそちらに振り向き、軽く会釈をした。
王城へ来る途中にセイメイから聞いた話――。
グレンはロンドの「家に帰るぞ」宣言を聞いても最初は無視して、エンオウとの戦いを続けようとしたが、二度目の一喝は聞き流せなかったらしく、不承不承に撤退していったそうだ。
『じゃあなエンオウ――また遊ぼうぜ親友!』
エンオウに捨て台詞を残して、結界を破って逃げたらしい。
アシュラ時代から八部衆に歯向かうのみならず、九部衆と呼ばれたエンオウによく絡んでいたが、その因縁はまだ続いているようだ。
その直後、蕃神が出現する気配を感じたセイメイは、用心棒としての責務を果たすためにツバサたちの許へ馳せ参じてくれた。
一方のエンオウは「モミジが心配です」とセイメイに別れを告げ、全速力で離島へと向かったという。
許嫁の身を案じたのだ。そういう優しいところは変わっていない。
「エンオウ君、モミジちゃん! 2人も無事じゃったか!」
良かった良かった、とヌンは我が孫の無事を喜ぶかのように2人が大した怪我もなく戻ってきたことを歓迎した。
それからツバサの横に並び、こちらを紹介してくれる。
ひとまずツバサは流れに身を任せた。
「なんとも奇妙な縁もあるものじゃな……おまえさんたちに遣いを頼もうとしていたハトホル殿がほれ、こうしてわざわざお越しくださったのじゃ。それも危機に瀕した水聖国家を救うようにのう……おかげで九死に一生を得たわい」
こちらを見つめるエンオウとツバサは視線を合わせる。
顔の造作は変わってないので、ハトホルの表情にツバサの面影を見出してしまうのだろう。気後れするような他人行儀さが垣間見えた。
初対面と思い込んだエンオウは、礼儀正しくお辞儀をする。
「あなたがハトホル殿……はじめまして、俺は……」
「――久し振りだな、エンオウ」
え!? とエンオウは驚愕の声で顔を跳ね上げる。
再びツバサを見つめるエンオウの眼は皿のように見開かれ、黒目はごま粒のような点となっている。冷や汗と脂汗がドッとあふれた。
その反応が面白かったツバサ意地悪な笑みを浮かべてしまう。
だが、昔の調子で話し掛けた。
「またデカくなったのか。体格の良さは親父さん譲りだな。そろそろ追い越すんじゃないか? 秘伝の九天法はちゃんと会得できたのか?」
身内しか知りようのない情報も交えておく。
声質こそ男性から女性に変わっているが、口調に織り込まれた特徴から尊敬する先輩のものだと気付いたらしい。
「ま、ま、まさか…………つ、翼……先輩?」
ガタガタ震えるエンオウ。ツバサは意地悪な笑顔のままほくそ笑む。
そこへツバサの背後からヒョコッとミロが顔を出す。
「やあエンオウ、久し振りー♪ モミジちゃんも元気してた?」
「あ、やっぱりミロちゃんもいるですね」
ミロの登場にエンオウはギョッとするが、モミジはまったく動じていない。小さく手を振るミロに手を振り返すだけだ。
ミロと一緒にいる、これが決め手となったらしい。
何度か家に遊びに来ているエンオウはミロとも面識があり、ツバサにとって唯一無二の家族だということを思い知らされている。
そのミロが懐いている翼そっくりの顔をした女神となれば……。
「翼、先輩……なん、で、女…………はぅ!?」
エンオウは卒倒した。
開いた口は塞がらず白目を剥き、両手で心臓辺りを押さえたまま。
仰向けにバターンと倒れたエンオウを心配するでもなく、動向反応と脈を確認したモミジは、どうして若旦那が気絶したかを診断する。
「誰よりも女顔なことを気にしていた尊敬する先輩が、再会したらムチムチ爆乳ケツデカドスケベ女神になっていた……絶対にありえない現実を目の当たりにしたことに理解が及ばず、思考回路も許容できなくてオーバーフローしたです」
「他人事みたいに分析するんだな、モミジちゃん」
若旦那と慕う兄貴分で許嫁なのに――。
さりげなくツバサのグラマラス体型もディスられた気がする。
「……というか、君は驚かないんだな俺のこと」
「なんとなく勘付いてたですから」
モミジはエンオウの顔を撫でて白目や口を閉じさせると、道具箱から毛布を取り出してかけてやる。一応、介抱しているらしい。
彼女は「ハトホル=翼先輩」と察していたという。
「ヌン陛下が集めた情報は渡されていたです。それを見て、完全に同じ顔だったからピンと来てたです。なんとなく推理もしていたです」
ですです言いながら、モミジはエンオウを寝かしつける。
作業の手を止めずに推理とやらを語り出した。
「女顔を気にして、かつてそれを勘違いした若旦那の性根をフルボッコで叩き直した翼先輩が、自ら女の子になるような真似をするわけないです。なので、もしかしたら噂に聞いた内在異性具現化者ではと予想してたですが……」
「概ね合ってる――というかドンピシャだな」
「それを若旦那に教えてあげても、『またまたご冗談を』と返されるのがオチだと思ったですから、敢えて何も言わなかったです」
進言しても信じてもらえない、とモミジは判断したわけだ。
エンオウは頑固なところがあるので納得である。
ここでミロがもっともな疑問を呈した。
「あれ、でも爆乳女神になってもツバサさんの顔に見覚えはなかったの? 情報が渡ってならアタシの顔バレもしてたんでしょ? セットで考えなかったの?」
ツバサの肩で小首を傾げるミロに、モミジはその理由を示す。
「多分、女神になったツバサさんを翼先輩じゃないと決めつけた時点で、若旦那の眼はミロちゃんに気付けなかったのです。若旦那は思い込みが激しいところあるですから……一緒に遊んだミサキ君に気付いたのもずっと後です」
「そういや、ミサキ殿が旧知だと聞いたのはついさっきじゃな」
ヌンの証言がエンオウのポンコツ具合を補強する。
本当、このダメ後輩は……ツバサは爆乳を支えるように腕を組んで呆れた。
「きっと今のツバサさんが目の前に現れて話し掛けるまで、どうやっても信じてくれないと思ったので黙っといたです。たとえ信じてくれたとしても……」
こうなることは読めてましたし、とモミジは半笑いで介抱を終えた。
エンオウを寝かし終えたモミジは立ち上がる。
「お久し振りです――翼さん、美呂ちゃん」
両手を前で合わせて、改めてモミジは嫋やかに挨拶してくる。
エンオウのサポート役だが、よくできた娘さんだ。
現実にいた頃の話――。
許嫁のエンオウが先輩のツバサに執拗につきまとえば、その性癖を疑いそうなものだが、それが純粋を通り越して狂信的な尊敬に寄るものだと理解したモミジは、2人の関係性を全肯定してくれた。
その上で、エンオウの許嫁であることを全力アピールした。
具体的に言えば婚前交渉があることを、エンオウや自身の友達の前で堂々と語ったりした。エンオウが恥ずかしがっても止めなかったくらいだ。
この結果、エンオウの男色疑惑は払拭された。
なかなかどうしてこの娘――肝が据わっているのだ。
ようやく過大能力を使った反動から回復したミロは、ツバサの背中から飛び降りると小走りで駆け寄り、モミジはそれを迎える体勢を取る。
「モミジちゃんヤッホー♪ 真なる世界来ても元気してたー?」
「ミロちゃんイエーイ♪ そっちこそ元気そうで何よりです」
2人は嬉しそうな笑顔で両手ハイタッチをする。
この2人、ひょっとするとツバサとエンオウより仲良しだ。SNSなどで交流を深めていた。ITに疎いエンオウにはできない芸当である。
エンオウはこのご時世だというのに、スマホも満足に使えないのだ。
ミロと久々の親睦を交わすモミジ。
それが一段落すると、ツバサやヌンに申し出てくる。
「積もる話は尽きませんが、この場は全部後回しです」
まずは王城を初めとした国内の負傷者の治療、今回の襲撃によって被災した人々の安否確認、そういった国民の安全を第一に行動しようと提案される。
「ツバサさんたちが来てくれたのは渡りに船です」
ご協力お願いします、とモミジから深々と頭を下げて頼まれた。
本当、エンオウには勿体ないくらいの嫁だ。
言われるまでもない、と手分けして早速取り掛かることにした。
~~~~~~~~~~~~
あれから5日後――時間軸を現在に戻す。
異相から結界ごと脱出させた水聖国家オクトアード。
500年前は大陸と地続きの半島だったという島国を、かつてと同じように繋ぎ合わせる作業は恙なく完了することができた。
二隻の飛行艦は上空に待機しており、超巨大ロボは長男ダインの過大能力内にある工場へと収納され、作業に携わってくれた仲間たちも戻ってくる。
ツバサとミロが並んで立ち、その後ろにダイン、フミカ、ドンカイ、トモエ、それにホクトやカズトラが居並ぶ。
ヌンは孫娘にして秘書官であるライヤを連れている。2人から少し離れたところには、エンオウとモミジが控えていた。
まだ水聖国家の客分という扱いだから、そちら側にいるようだ。
ヌンの前に立つのは――ミサキだった。
彼の後ろにはオクトアードの復旧作業に尽力したジンが立っている。過大能力の使いすぎで疲れているはずだが、そんな様子はおくびにも出さない。
中央大陸の半島として復活を果たした水聖国家。
すぐ近くにあるのはイシュタルランド。
今後の関係性を鑑みると、四神同盟で最もオクトアードと密接に関わっていくのはイシュタル陣営だ。それをミサキもヌンも心得ていた。
当面の間、イシュタルランドがオクトアードの支援も担当する。
これらの理由から友好関係は欠かせない。
「これからはご近所さんじゃな。よろしく頼むぞミサキ君」
「こちらこそです。若輩者ですがよろしくお願いしますヌンさん」
固い握手を交わすミサキとヌン。
ジンが真っ先に拍手すると、ツバサたちも遅れまいと続いた。
細やかな式典みたいなものである。
本来ならもっと盛大にやるべきなのだが、オクトアードは先日の襲撃からまだ傷も癒えていないし、四神同盟も蕃神やらバッドデッドエンズやらの脅威がいつ襲ってくるかも知れたものではない。
式典をやるとしたら、せめてバッドデッドエンズの騒動が終わってからだ。
ロンドとの約束? 頭から信じられるわけがない。
犯罪者が法の網を潜り抜けてグレーゾーンギリギリを狙うように、先に取り付けた約束を守った範囲でちょっかいを掛けてくる可能性もある。
何らかの手段で反故にしないとも限らない。警戒は怠れなかった。
まだ打ち合わせの域を出ていないが、ヌンは四神同盟への参加を申し出ており、ツバサたち各陣営の代表はこれを快く受諾した。
数日中には四神同盟会議において採決する運びだ。
起源龍ジョカフギスのように、創世に関わった神獣の末裔であるヌンが率いるオクトアードならば、5番目の陣営として名乗る資格を持っている。
ついに五神同盟と改名する時が来た。
――と思いきや。
「ただ、各陣営と肩を並べるつもりはない」
君らと比べれば我が国は小国じゃからな、とヌンは辞退してきた。
「ワシらの他にもおるんじゃろ? 四神同盟に所属するも五神や六神と数えられることはなく、一組織に留まっている……そうした扱いのが気楽じゃわい」
穂村組や日之出工務店――。
扱い的には彼らと同じ待遇を望むという。同盟に加わるも代表格とならず、協力体制を結ぶ一国という立場に落ち着かせたいらしい。
「戦う気力はまだあるが、王様稼業はもう疲れたわい」
わしは隠居したいんじゃ、とヌンはため息交じりに嘯いた。
「――こ、困ります陛下!」
異議ありとばかりに大声を出したのはライヤだった。
モサモサの金髪を揺らして祖父に縋る。
「我がオクトアードには現状、陛下の後任が務められる後継者がいないんですよ!? 私たちの父母兄弟……そういった方々がなられるはずでしたが、先の蕃神による戦争でみんな亡くなっておりますし……」
「ぬぅ、言ってくれるなライヤ……わかっとるわい」
弱点を突かれたようにヌンは顔を顰めた。
ヌンが蕃神との再戦を望む最大の理由は、その大戦争で命を落とした息子や娘の仇討ちだと聞いている。
後継者不在、先立った子供の無念――生き残った父の懊悩。
そういった慚愧の念がヌンには堪えるようだ。
「今残っとる我が王族は、ライヤを初めとして孫たちばかり……みんな灰色の御子として優秀なんじゃが、いかんせん経験不足は否めんしな」
「挙げ句、兄様や姉様は王権を放棄してますし……」
ハァ、と祖父と孫娘は似たようなため息を漏らす。
「王権を放棄? ヌンさんの後を継いで王様になるつもりはないと?」
ツバサが疑問を呈すると、ヌンは困ったように頷いた。
そして愚痴るように訴えてくる。
「そうなんじゃよ、聞いてくれツバサ君。ウチの孫どもと来たら、どいつもこいつも一廉以上の才覚を持っているというのに、『王様にはならない』の一点張りなんじゃ……政務に携わってくれるのもこのライヤぐらいのものじゃ」
「兄様や姉様は、王の仕事を『堅苦しい』と思っておりまして……」
名前を呼ばれたライヤは会釈してから口を開いた。それから政務に携わらない兄弟たちを弁解するような言葉を並べていく。
「でも、決して王族の地位に寄り掛かって遊んでいるわけではありません。養育院で教職を務めたり、荒れ地を開拓する農耕作業に精を出したり、閉鎖的生態系だったオクトアードでの食物増産に取り組んだりと……」
何らかの専門職に就いているそうだ。
「揃いも揃って働き者なのがせめてもの救いじゃな」
王政に関わろうとしない孫たちだが、ヌンもその点は評価した。
だが、不満はあるのか半眼で荒っぽい鼻息を吹かす。
「良いんだか悪いんだか……ウチの血筋はそんなんばっかじゃよ」
「富と権力にあぐらをかくボンボンよりマシじゃないですか」
後継者にゃ恵まれんけどな、とヌンはぼやいた。
心機一転させるように、ヌンは景気よくライヤの背中を叩いた。
パシィーン! といい音がする。
「そんな中ようやくワシの後を継いでくれる気になったのが、他ならぬこのライヤじゃ。真なる世界が平和になったらライヤへ王位を譲る」
「はひっ!? は、初耳なんですけどそれ!?」
いきなり後継者に指名されたライヤは声が裏返っていた。
ヌンは以前から腹を決めていたようだが、引き継ぐべきライヤは寝耳に水だったらしい。というか、ヌンはこの時を狙っていた節がある。
ツバサやミサキ――四神同盟の代表がいる場での発言だ。
これは公式発表に等しく、覆すことは難しい。
予め公言しておくことでライヤに国を背負って立つことへの責任感や覚悟を促しておき、その時が来たら速やかに王位を譲るという心配りでもある。
いきなり王位継承されたライヤには重責だが……。
それは取りも直さず、ヌンがライヤの才能を認めた証でもあった。
「四神同盟においてオクトアードの発言力を増し、五神同盟としたければライヤよ、そなたが率いる次世代が気張っていくしかないのう」
「責任が重すぎて吐きそうです、お祖父様……」
ヌンは発破をかけるが、ライヤは青白い顔で口を押さえた。
ライヤが次期オクトアードの女王になることはほぼ内定した。彼女にしてみれば重圧を丸投げされたようなものだが、健闘を祈るしかない。
それに――明日からというわけではない。
真なる世界が安定を取り戻すまでは、これまで通りにヌンが王様として取り仕切るわけだから、彼女にはまだ勉強する時間が与えられていた。
「もうひとつ、五神同盟になる遠慮する理由がある」
ヌンは一組織に甘んじる理由を説いた。
「君たちのいうLV999なる境地に達した者の人数じゃ。これはそのまま戦力差となる。オクトアードにはワシしかおらんでな」
孫たちの成長に期待じゃ、とそこも後裔に丸投げした。
聞けばライヤ以外の孫も王位を継ぐ気はないだけで、オクトアードのためならば一働きでも二働きでも厭わないやる気はあるという。戦闘能力に秀でた者も少なくないので、戦力として希望が持てる。
それでも――他陣営と比べれば力不足は否めない。
「ヌンさん、その件なのですが……ひとつご相談があります」
ここでツバサはある提案を出した。
エンオウ! と厳しく躾けてきた後輩の名を呼ばわる。
「は、はい! な、なんでしょうかツバサ先輩!」
ヌンの後ろに控えていたエンオウは、名前を呼ばれるとビシッと音がするほど背筋を正すのだが、その動きや言葉遣いはとてもギクシャクしていた。
――爆乳女神となったツバサ先輩の御姿に慣れません!
エンオウの眼は口ほどに物申していた。
ツバサはこれ見よがしにため息をつくと、爆乳が重々しく揺れた。
乳房を誇示するように胸を張りながら言い付ける。
「まだ俺がこの身体になったことに慣れないのか? いいかげん慣れろ」
「そうだそうだー。ツバサさんのビッグバンバディに慣れろー」
ミロはツバサの背後に回ると、両手を前に回してツバサの爆乳をダプンダプンと大きくバウンドさせた。エンオウは直視できずに目を背ける。
「無理です! 慣れません! 俺には……刺激が強すぎますッッッ!」
「……おまえは本当にまっすぐな男だな」
顔を真っ赤にして目を伏せたエンオウは苦しそうに言った。
嘘をつくことができず方便も使えない。それがエンオウの良さであり、不器用で使えないところでもあった。
チラッ、とツバサを盗み見ながら本音を語り出す。
「一人の男として、そして一人の武道家として、いつか打ち勝つことを目標とした憧れのツバサ先輩が、その、あの……そんな、ムチムチ……えーっと」
口ごもるエンオウに、モミジが背伸びしてそっと囁く。
「ムチムチ爆乳ケツデカドスケベ女神、です」
「ムチムチ爆乳ケツデカドスケベ女神になって、ミロちゃんや色んな子供たちのお母さんになってるなんて……妄想が捗っておかしくなりそうです!」
「今んとこカンペいるか!? あと、包み隠さず本音を打ち明けなくていいんだよ! なんだ妄想が捗るって!? このムッツリスケベめ!」
恐縮するくせに歯に衣着せぬ言い方の後輩を叱り飛ばした。
あらゆることに正直すぎるのも考え物だ。
「すいません! 俺もおっぱい星人なので先輩の爆乳から眼が離せません!」
「やかましい! せめて方便くらい身につけろおまえは!」
「まあまあ、先輩後輩で言い争うのはよくないです」
大声で説教と謝罪を飛び交わすツバサとエンオウの間に、モミジは割って入ってきた。両方に手を向けて「どうどう」と制してくる。
「若旦那……というより山峰一族の男は大きなおっぱいとお尻が大好きですが、私みたいな背の低いトランジスタグラマーじゃないと勃たないので、ツバサ先輩に変なことをする心配はないからご安心くださいです」
「うん、そう聞いてたからアタシも全然安心してたんだ」
モミジの宣言を聞いてミロも得心するように頷いた。
「押忍! 概ねモミジの言ってることに間違いはありません!」
「そこは振りでも否定しておけよ! 世間体的に!」
どこまで素直なんだ、この脳筋バカ後輩は!?
そういえばエンオウの母親もモミジとよく似た、眼鏡の似合う小柄だけど豊満な体型のトランジスタグラマーだったな、と余計なことを回想する。
まあいい、とツバサは話を切り替えた。
エンオウの困惑はさておき、ツバサは改めて提案する。
「エンオウ、おまえとモミジちゃんさえ良ければ、そしてヌンさんの了解を得られればなんだが……オクトアードに留まってくれないか?」
「俺たちが……水聖国家に留まる?」
「それってつまり……今まで通りってことですか?」
「ああ、釣り合いが取れるからな」
穂村組や日之出工務店も一組織として属しているが、LV999が最低でも3人以上は所属している。しかし、水聖国家はヌン1人しかいない。
後継者たちがその領域に届くまで時間もかかるだろう。
だから、それまでの補充戦力が必要なのだ。
「今後、バッドデッドエンズとの戦いでオクトアードが巻き込まれる可能性はいくらでもある。蕃神の襲撃も想定しなければならない。そう考えると人員を割かねばならないが、おまえたちが逗留してくれば話は別だ」
既にエンオウたちは水聖国家と深い縁を結びつつある。
改めて戦力を割く必要もないので、手間も省けるというものだ。
ツバサは優しい流し目で後輩に言い聞かせる。
「イシュタルランドの圏内だからな、空間転移装置でいつでも会える。応援にしろ救援にしろ、神族となった俺たちなら手の届く範囲だ」
いつでも遊びに来い――稽古もつけてやる。
この一言でエンオウは瞳を潤ませ、深々と頭を下げてきた。
「……あ、ありがとうございます先輩! お言い付け通りにします!」
ヌン陛下! とエンオウは頭を下げたまま願い出る。
「これまで通り、自分とモミジを……オクトアードに置いてもらってもよろしいでしょうか? 無論、客分としてちゃんと働かせていただきます!」
「肉体労働は若旦那に任せて、頭脳労働は私が引き受けるです」
不束者ですがお願いします、とモミジも一緒に頭を下げる。
本当、エンオウには勿体ないくらいの嫁だ。
これをヌンは満面の笑顔で受け入れた。
「おお、おおお……願ったり叶ったりじゃわい! 君らが我がオクトアードに力を貸してくれるというなら、心強いことこの上なしじゃ! こっちから伏してお願いしたいくらいじゃ!」
そこでライヤは2人の待遇について申し出る。
「ではエンオウ様とモミジ様を改めて我が国家へ迎えるに当たり、これまでの客分ではなく正式な客将としてお迎えいたしましょう」
「うむ、妙案じゃなライヤ。将として迎え入れることを約束しよう」
聞けば厭戦派な家臣団とのトラブルを避けるため、オクトアードに漂着したエンオウとモミジの滞在は秘匿されていたらしい。
兎にも角にも、これで2人は晴れて水聖国家の一員となれたわけだ。
今後は大手を振ってオクトアードを出歩けることだろう。
「それとエンオウ、ひとつ注意しておくことがある」
グレンのことだ――話を切り出すとエンオウの顔付きが引き締まる。
臨戦態勢となった野獣の相貌だ。
戦闘に対する貪欲なポテンシャルは頼もしいと太鼓判が押せた。
……他のことはポンコツでダメダメだが。
「わかっています……次こそ決着をつけてやります」
多くを語らずともエンオウはグレンの始末を引き受けてくれた。
ツバサは2人の因縁を踏まえた上で頷いた。
「グレンは俺たち八部衆を目の敵にしていたが、それ以上におまえを好敵手と認めて、執拗なまでにつきまとっていたからな」
先日の一件で、エンオウが四神同盟に参加したと予測するはず。
ならばグレンの性格上、いの一番に殺すのはエンオウと決めただろう。全面戦争の日を迎えれば、真っ先にエンオウを殺しに来るに違いない。
「はい――今度現れたら遠慮なく仕留めてやります」
殺気を隠すことなくエンオウは宣言した。
誰に対しても優しくするあまり、本気で戦えないから「弱い」と誤認されがちのエンオウだが、その実力はアシュラ八部衆の上位陣にも引けを取らない。
そのエンオウから優しさを奪い、本気の殺意を引き出すのだから、グレンの忌ま忌ましさは真性のものと言っていいだろう。
優しさというブレーキの壊れたエンオウがどんな戦いを繰り広げるか?
見物だな――と心の片隅で待ち遠しさを感じる。
さて、これで新勢力が3つも参戦してくれることになった。
ハトホル国には――傭兵集団・穂村組。
組長代理バンダユウを筆頭に、番頭レイジ、若頭補佐マリ、セイコ、ガンリュウ、ダテマル……6人のLV999を抱えている。
他にも高LVの組員が控え、戦力として頼りになる者ばかりだ。
ククルカンの森には――工作者集団・日之出工務店。
棟梁ヒデヨシを頭に、その妻であるネネコと愚弟ランマルの3人がLV999であり、所属する10人の工作者も軒並みLV900越えの猛者揃い。
工作者ではあるが、非常時の戦力として十分なくらいだ。
イシュタルランドには――水聖国家・オクトアード。
国王陛下ヌンを筆頭に、仙道師エンオウと魔女モミジがLV999。秘書官にして孫娘であるライヤを初め、LV900越えの王族や家臣が揃っている。
3つの陣営に、それぞれ新勢力が1つずつ。
今後は主戦力となるLV999勢が増えたことにより、各陣営の編成も多方面に見直すことができる。後は還らずの都を中心とするタイザン平原にも強力な助っ人組織が加わってくれれば完璧なのだが、今後に期待するしかない。
先日、ミロはこんな予言を口にした。
『バッドデッドエンズに怒りを燃やしている何者かがいる』
『その誰かは四神同盟の力になってくれるはずだ』
力になるからには、その何者かもLV999なのだろう。神族か魔族まではわからないが、協力体制を敷けるならタイザン平原に居を構えてほしい。
もしかすると――今度こそ五神同盟になるかも知れない。
組織の再編成に思いを巡らせるツバサは、ふと空を見上げて呟いた。
「あのオッサンも今頃、部隊を組み替えているかもな……」
――最悪にして絶死をもたらす終焉。
その一番隊は穂村組のバンダユウによって半数以上を失い、アーティスト集団を気取っていた六番隊は日之出工務店のヒデヨシによって壊滅させられた。
あと一歩のところで凶軍も壊滅させられたのだ。
これらはバッドデッドエンズにとっても痛手だったに違いない。
各部隊が維持できなくなるほど兵員を大幅に削られたのだから、再編成を余儀なくされていることだろう。ロンドも頭を悩ませているに違いない。
あの極悪親父が顰めっ面で再編成している。
その苦悩する様を思い描いたツバサは、ちょっとだけ胸が空いた。
~~~~~~~~~~~~
最悪にして絶死をもたらす終焉・本拠地――混沌を撹拌せし玉卵。
絶えず空間転移を繰り返す移動要塞でもある。
――その最奥にある大広間。
中央に据えられた重厚なソファで囲まれた円卓こそがロンドにとっての玉座であり、構成員と対等な立場で顔を合わせるための謁見の間でもあった。
ソファの背もたれに両腕を広げ、円卓に両足を投げ出すロンド。
だらしないこと最上級のふざけた座り方だが、この場で彼を咎める者は誰1人としていない。彼が暴君に他ならないことを熟知しているからだ。
円卓には現在、5人の凶軍が腰掛けている。
参謀役マッコウはロンドの左側に座り、右腕と称されるアリガミは右側に座っているが、オクトアードでの失態が響いているのか所在なげだ。
せっかく再生してもらった肉体も、肩身が狭そうに縮めている。
魔女医ランダも、巨漢メイドに壊された左腕は元通りになっていた。その隣には暴食童子のオセロットが座り、円卓に並んだ軽食を次から次へと頬張っている。
グレンは空いてるソファを贅沢に使い、寝そべっていた。
ダルい、と小声で独りごちながらあくびをしている。
「……ミレンちゃん、もう一回言ってくれる?」
ワンモア、とロンドは既に受けた報告を繰り返すよう求めた。
普通に聞き返しただけなのだが、ロンドの発した声にその場の誰もがゾクリと震えるほどの悪寒を覚えた。マッコウは肉塊のような肩を震わせ、アリガミは腰が引けるようにロンドから距離を置こうとする。
ランダやオセロットも身を竦め、グレンもあくびを噛み殺すほどだ。
それほどの怖気を漂わせている。
ロンドは不機嫌になると、無意識に滅びをまき散らす。
言葉だけで存在を消し去ることもあるくらいだ。
それはバッドデッドエンズに属する者であっても、世界の滅びを願う者であっても、生きている限りは脅かされてしまう脅威となる。
何の力の波動も感じないロンドの声なのに、「殺すぞ」と囁かれただけで心臓が止まりそうな威力を秘めていると感じてしまうのだ。
迂闊な発言ひとつで命取りになりかねない。
ミレンの報告が繰り返されるまでの間、その場の全員が固唾を飲んだ。
そのミレンだが――恍惚の表情を浮かべている。
まるでロンドからの叱責を待っているかのように、あらん限りの責め苦を待ち侘びるかのように、頬を桃色にして吐息を弾ませていた。
淫靡なフレンチメイド服を越しに、そっと腹部を弄っている。
ちょうど子宮のある上を――。
「畏まりました。繰り返させていただきます」
バッドデッドエンズ、三番隊、五番隊、八番隊。
「それぞれの部隊とは音信不通、生命反応なし、生体反応も感知できず、バッドデッドエンズに属すると約束した際に発生した“契約”も消失しております」
間違いありません、とミレンは二度目の断言をする。
「――これらの部隊は全滅いたしました」
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