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第14章 LV999 STAMPEDE
第347話:凶軍進行
しおりを挟む――アシュラ八部衆。
かつて真なる世界でも武闘派で知られた魔族の王であり、現実世界での伝承においては戦うことを至上とする阿修羅界を治める修羅道の主。
それが阿修羅――鬼神にして仏法の護法神。
この阿修羅を含む、仏法に帰依した八柱の様々な神を指して八部衆(あるいは更に拡大解釈して二十八部衆)という。ヌンは「アシュラには8人の優秀な部下がいたはず」というが、阿修羅の部下としての八部衆はいない。
阿修羅を含めて八部衆――という意味である。
アシュラ・ストリートの八部衆は、その由来から捩ったのだろう。
阿修羅の名を冠する、格闘を極めるために熾烈な戦いを繰り広げるVRゲームは大人気を博した。父から武道を教えられたエンオウも楽しんだものだ。
ある男が原因で終わりを迎えるまでは……。
ヌンがコンタクトを取りたいハトホルという地母神化したプレイヤーの陣営には、アシュラ八部衆でも常に1~4位を維持した猛者の姿があった。
ヨコヅナ――ドンカイ・ソウカイ。
天魔ノ王――セイメイ・テンマ。
アシュラでも世話になり、アルマゲドンでも再会したお二方だ。
アルマゲドンのアバターはほぼ強制的に現実の自分とそっくりなものを強制されるという、キャラクタークリエイトに情熱を燃やすゲーマーからは「クソ仕様」と叩かれていたが、実はアシュラにも似た傾向があった。
『格闘技経験者は自身の体格をモデリングすると有利に働くかも知れない』
『現実で身につけた運動能力がスムーズに反映されるからだ』
リリース一ヶ月前、アシュラ運営からの公式発表である。
このため自分の外見や体型をスキャンしてデータに取り込み、そこからアバターを作成することがアシュラ・ストリートでは流行した。
その際、大抵は「カッコ良くしよう!」とモデルを操作してアバターを美化したという。しかし、バトルの満喫を最優先とする者は別だった。
『外見をイジるなんて面倒臭い! そんなことよりさっさと戦ろうぜ!』
八部衆やベスト16に名を連ねたメンバーは全員これである。
特にセイメイやドンカイ、それにウィングは「そのまま」と聞いた。
外観を変えたと聞いたのはガンゴッド、獅子翁、その弟子の姫若子ミサキくらいではなかろうか? ガンゴッドや獅子翁は何をどう変えたのか知らないが、ミサキは「女キャラでやりたい」と堂々ネカマ宣言をした強者だった。
そんなわけでアバターの差異が少なかったのだ。
アルマゲドンではこれが幸いした。
エンオウがドンカイやセイメイと再会した際、おかげで一目見ただけでわかったくらいである。あちらもすぐにエンオウが誰かを思い出してくれた。
アシュラを介した縁――これが役に立ちそうだ。
~~~~~~~~~~~~
アシュラ八部衆になれない九部衆。
不名誉な異名がつけられた事情を、エンオウは恥じりながらも打ち明けた。この場で一番背が高いのに身が縮まる思いである。
すると、脇に控えていたモミジが「フン!」と鼻息を鳴らした。
何やら憤っているらしい。
「若旦那が八部衆になれなかった理由はあれです」
モミジは小さな鼻から更に息を吹き出し、ジト眼のまま眉を釣り上げてエンオウを指差す。そして、叱りつけるように言い放った。
「――優しすぎるからです!」
妹分からの指摘にエンオウは、喉を鳴らしてバツが悪そうに呻いた。
「優しいって……女性や子供に乱暴しないのは当然だろ」
「それは男のマナーでありエチケットです。でもVRゲーム、それも対戦相手にまで適用するのは気が知れないです」
「そう言ってもなぁ……年下はやりにくいんだよ」
言い訳になるがエンオウは短い髪を掻いてぼやいた。
アシュラ八部衆には幼いながら懸絶した才能の持ち主がいたものだ。
獅子翁の弟子――姫若子ミサキ。
奇抜な武器を愛用する――焔☆炎。
エンオウは今年で二十歳だが、アシュラ全盛期はまだ高校生。
姫若子ミサキと焔☆炎はまだ中学生だったはずだ。いや、焔☆炎なんて小学生だという噂があった。とにかく、どちらも幼かったはずである。
彼ら以外にも小中学生のプレイヤーはちらほらいた。そういった年下の対戦相手に当たったエンオウは、確実に負けてしまうのだ。
八部衆への昇格を目指す場合――彼女らとの激突は避けられない。
ミサキや焔がいかに幼き偉才といえども、さすがにドンカイやセイメイには勝ちを貰えず、あの子たちは6位から8位が定位置だった。
この2人を倒さねばアシュラ八部衆になれない。
ランキングを上げるには、最低でも3人の上位ランカーを倒して実力を示さねば繰り上がれない。アシュラ独自のシステムがエンオウを悩ませた。
実際のところ――D・T・Gやガンゴッドには勝利を収めている。
ドンカイや獅子翁には苦戦するも数回は勝っており、セイメイにも今一歩まで迫ったことがあった。八部衆相手にも好成績を収めているのだ。
しかし、ミサキや焔が相手だと必ず負けていた。
子供を相手にすると殴ることも蹴ることもできず、手も足も出ない。回避や防御に終始していれば一方的に追い込まればかり。
結果、判定負けに持ち込まれるのだ。
これを飽きるほど繰り返し、付いたあだ名が九部衆である。
バリーやジャガナートは「子供に手を挙げないおまえは立派だ」と褒めてくれたが、エンオウは己の情けなさを痛感するばかりだった。
非情になりきれない――冷酷に割り切れない。
武道のいろはを叩き込んでくれた父にも説教されたくらいである。
それでもエンオウは年下の子供を前にするとどうしても本気を出せず、されるがままに敗北してしまう。
さっきの鬼ごっこみたいなお遊戯が関の山だった。
モミジのお説教は止まらない。
「若旦那の優しさは度が過ぎてます!」
両手を振り回し、着物の袖をバサバサはためかせて喚いた。
「実戦ならともかくです、対戦ゲームでも子供や女性だからって戦えないなんておかしいです。せっかく勝負を挑んできた相手にも不敬ってものです! 『男はタフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない』って私立探偵のフィリップ・マーロウさんも仰ってますけど、優しさにも限度や分別ってもんがあります! 若旦那の優しさは分別がないんです!」
フィリップ・マーロウって誰だよ、とエンオウはツッコむ。
「わかってる、わかってはいるんだが……どうにもなぁ」
「わかってたら若旦那はとっくの昔に八部衆のトップクラスです!」
――あのウィング先輩と肩を並べてたはずです!
「翼先輩の名前は出すなよ……俺、本気で凹むぞ?」
尊敬する先輩を引き合いに出され、エンオウは右手で顔を掴むと項垂れた。
憂鬱のあまり物理的に重くなってきた気がする頭を支えたのだ。指の間からチラッと視線を覗かせればヌンと目が合った。
カエルの王様も得心がいった表情を浮かべている。
「なるほど……エンオウくん、君の優しさはちと問題があるようじゃな」
わしにも忖度したな? とヌンは訳知り顔でほくそ笑む。
「忖度……なんの話ですか?」
「この前、ここでエンオウくんとわしが試し仕合をしたじゃろ」
ライヤの問いにヌンは顎の白髭を梳く。
1週間ほど前――エンオウはヌンと仕合で戦った。
ヌンが「新しい神族の強さを知りたい」という老いてもやんちゃな動機から腕試しを所望してきたので、世話になっているエンオウは受けたのだ。
ヌンの孫たちは元より、養育院の生徒も観戦した。
名目は「強者の戦いから見て学ぶ」という授業の一環だった。
家臣たちに気付かれては困るため、必要以上に“気”を増大させず、大技も禁止するなどいくつかのルールを課した格闘戦で勝負をした。
エンオウとヌンの激戦は一時間に及んだ。
その一時間で広場は見る影もないほど破壊し尽くされ、広場を取り巻く校舎の壁は倒壊寸前の亀裂が走りまくり、窓のガラスは割れまくった。
芝生はほとんど吹き飛ぶように消えており、剥き出しになった土が何メートルもめくれ上がる。そのまま畑になりそうなくらい耕されていた
大技なし、“気”の増大もなし、魔法も不可――。
純粋な肉体能力に基づく体術のみというルールにも関わらずこれである。
勝敗は決まらず両者引き分けで終わった。
未だ壮健にして現役なヌンの強さを生徒は絶賛し、最強と信じられている陛下と引き分けに持ち込んだエンオウにも賞賛が送られた。
Win-Winで一挙両得だと思ったのだが……。
「あの時、本気を出せば君はわしを負かすことができたはずじゃな?」
ヌンは眼を眇めて問い詰めてくる。
「…………はい、30分くらいで勝てたと思います」
「嘘つけ、10分頃には勝負が付いてたはずじゃ」
君が本気であればな、とヌンはカエルの頬袋を膨らませてから一気にため息をついた。怒りにも近い呆れを深呼吸で抑えているらしい。
王の威厳ある眼差しにエンオウは屈した。
「…………敵いません。その通りです、ヌン陛下」
「お年寄りにも優しいのはいいですけど、ホント忖度ですよねこれ!?」
まさかヌン相手にも手を抜いていたとは思わなかったのか、モミジはデフォルトのジト眼を見開き、目が点になるくらい驚いていた。
「モミジちゃんではないが、優しさの分別がついておらんな」
やれやれ、と頬袋を膨らませてヌンは続ける。
「わしはあの『遠慮なく本気でやれ』と申したではないか……わしは君にド派手に負けて、『ぐえーッ! わしはもう年じゃー! これからは若者の時代じゃー!』とか喚きながら隠居する口実にしようと企んでおったのに……」
「なんですか、その聞き捨てならない企みは!?」
これを聞いたライヤが横で憤慨した。
「今陛下が隠居などされたら、厭戦派の家臣団がパニックを起こしますよ! この国を護る結界の心配するあまり、どんなことをするか予想もでき……」
「わかっとるわい、冗談じゃ冗談」
孫娘をなだめながらヌンはエンオウに説教してくる。
「とにかくじゃ……下手な優しさは時に相手を傷つける。女子供に年寄りを大切に思ってくれる君の心根は尊いものじゃが、真っ向から戦いを挑んでくる者にその振る舞いは無礼千万じゃ。そろそろ改めんといかんな」
厳しさの中にも優しさの成分が含まれる――指導的な言葉だった。
ぐうの音も出ないエンオウは頷くしかない。
「……はい、善処します」
「善処じゃダメです若旦那! 早急に改善を要求するです!」
妹分のモミジはですですうるさい。
反省を促してくるヌンには厳格だが温和だった父親を思い出させるが、やかましいモミジは別の人物のことをエンオウに想起させた。
――姫若子ミサキだ。
彼女……じゃない、彼のふて腐れた一言が脳内に甦る。
『エンオウさん本気でやってよ! オレ、ちゃんと戦闘りたいのに!』
半泣きで地団駄を踏まれた時の罪悪感は忘れられない。
年下の彼に本気を出したことは一度もなかった。
こうして叱られると、年少だという理由を言い訳にして彼らを侮っていただけかも知れないという後悔に囚われる。かといって、もしも再会した時には本気で戦えるかどうかわからず、得体の知れない不安に嘖まれる。
その時、ふと脳裏で2つの姿が重なった。
ミサキとイシュタル――2人の顔がピッタリ一致したのだ。
「モミジ、神族のリストをもう一度見せてくれ」
顔を跳ね上げたエンオウが凜とした声で命じてきたので、モミジはちょっと面食らいながらも「はいです」とタブレット型のスクリーンを用意した。
受け取って人差し指で忙しなくスワイプさせる。
イシュタルという神族の顔写真をマジマジ凝視してみた。
見れば見るほど、姫若子ミサキにそっくりである。
ここまで来ると他人のそら似ではない――紛れもなく本人だ。
「まさか見落としていたとは……」
あれほど顔を合わせていた友人の顔を見忘れるとは……本当、エンオウは年下が相手だと何事においても手を抜いてしまうらしい。
「いや、それにしたってミサキ君は……アルマゲドンでもアバターを女性化させてネカマをやっていたのか? こっちに来たら本当の女の子、それも女神になってしまうのに……いや、知らなかっただけか」
筋金入りのネカマというべきか? 違う気もする。
どちらにせよ、アバターの外見を変えるのも一苦労なアルマゲドンで、よくもまあ女性キャラになるまで魂の経験値を溜めたものである。
「なにブツブツ言ってるですか若旦那?」
「いや、こっちの話だ……俺の記憶力も信用ならんな、という話」
しかし、これは一概にエンオウのせいでもない。
アルマゲドンではアバター変更がしにくいのが常識だったので、もしミサキがいたとしても男の子だという先入観があったのだ。
それでもこみ上げる罪悪感から、エンオウはヌンに詫びた。
「……すいません、もう1人知り合いがいました」
しかも件のアシュラ八部衆である。
イシュタル陣営を率いる戦女神はミサキに間違いない。
「おおっ、まだ知己がおったのか! それも陣営代表とは幸先がいい!」
イシュタルはヌン一押しのハトホルが愛でている美少女だ。
弟子というか生徒というか、つきっきりで武術を教えたり、何かと世話を焼きたがっている様子を幾度となく捉えている。そんなミサキと知り合いであるエンオウならば、ハトホルに話を通してもらいやすい。
幹部2人に同盟の代表1人――これだけ知人がいれば用は足りる。
「もしかして……ハトホル様とも知り合いだったりして」
祖父が上機嫌なためか、珍しくライヤが冗談めかしたことを言った。
これにエンオウは苦味の効いた愛想笑いで答える。
「ハハハ、そうだったらヌン陛下の頼みもあっさりスムーズに事が運びそうなんですが、さすがの俺もあんな爆乳美女は知り合いにいなくて……」
「近い体型の知り合いならいっぱいいるんですけどね」
便乗してモミジもコロコロ笑う。
彼女の言う通り、エンオウの知り合いには巨乳美人が多かった。
父親に岡惚れしていた自称愛人とか、父親を弟扱いする近所の小母さんとか……主に父親関係である。当然、母親は渋い顔しかしないので怖い。
その時、2つの顔がエンオウの脳裏で再び重なった。
地母神ハトホル――尊敬する羽鳥翼先輩。
彼女と彼の顔が99.999%ガッチリ合致したのだった。
いやいや待て待て、と否定と落ち着きを促す言葉を連呼しながら、エンオウは手に持ったままのタブレット型スクリーンを壊れる勢いでスワイプする。
じっくり観察するのは地母神の顔写真だ。
あまりにも酷似している。
現実世界では高校の先輩であり、憧れるあまり同じ大学へ進学し、その武術の冴えをリスペクトしてきた至高の先輩。
ハトホルと翼先輩――2人の顔は本当によく似ていた。
本人としか思えず、控えめに言っても姉妹にしか見えない。
しかし「あり得ない」と断言できる。
何故なら翼先輩は母親に瓜二つだという、ハトホルそっくりの女顔が大のコンプレックスなのだ。エンオウは身を以て体験していた。
エンオウの父親と翼先輩の師匠は無二の親友。
その縁で引き合わされたのだが…………最悪の出会いだった。
初手でしくじったのはエンオウである。
初対面の翼先輩を「綺麗なお姉さん」と間違えたため、練習試合でフルボッコにされた挙げ句、ガチ泣きするまで叩きのめされたのだ。
この一件で身の程を知ったエンオウは、「翼先輩カッコいい! マジリスペクトッス!」なんて舎弟根性が身についたと言ってもいい。
両親に頼んで、遠くにある彼の高校へ進学したのは良い思い出だ。
(※偏差値ギリギリでヤバかったが……)
それくらい翼先輩は自身の女顔を嫌っていた。
女扱いされるなど以ての外である。
学祭で無理やり女装させられた日には、それを「似合う!」と褒めた男が何人も投げ飛ばされたくらいだ。あまりにもポンポン飛んだので「雨じゃなく人間が降る」と恐れられた逸話がある。
この時点で合気道の達人と世に知らしめていた。
また、姉妹あるいは母親という線もない。
翼先輩は不慮の事故でお母さんと妹さんを亡くしている。
となると……他人のそら似か?
ネカマ上等のミサキ君ならばともかく、あの女顔を認めたくない翼先輩が、こんなムチムチ爆乳ドスケベボディな美女になっているわけがない。
アシュラ・ストリートをも凌駕すると噂されたアルマゲドンは、躍動感あふれるリアルな格闘を楽しめるのが売りだった。ドンカイさんやセイメイさんに限らず、バリーさんやジャガナートさん、それにミサキ君もやっていた。
翼先輩もいておかしくないのだが、出会っていない。
また、現実世界でもやや疎遠になっていた。
大学も家庭の事情で何かあったのかやってこなくなり、参加しているゼミには籍こそ置いていたが顔を出さず……何があったのか心配だ。
しかし、奥手なエンオウは翼先輩の家を訪ねることもできず、大学構内をうろちょろ探し回るのがいいところだった。
「――内在異性具現化者」
唐突にモミジが何やら解説めいた喋り方をした。
「何らかの事情でアバターが真逆のものへと裏返る現象。原因はアルマゲドン運営もわからず詳細不明。判明している限りでは男女の性別が反転する者、人間から野生を取り戻した外観に変化する者、生者の肉体から命無き死体となる者、成体や老体から思春期や幼年期まで若返る者と様々……」
「……モミジ、どうした急に?」
翼先輩とハトホルの絡みで思考停止していたエンオウは、妹分がスラスラとわけのわからないことを語り始めたので困惑した。
「いや、なんとなく説明する義務感に駆られたです」
なんだそれは? とエンオウは太い首を傾げてしまう。
とにかく、翼先輩がこんな爆乳美女になっているわけがない。勝手な思い込みや勘違いを報告するわけにもいかないので黙っておいた。
エンオウはモミジにタブレット型スクリーンを返す。
そして、ヌンに向き直り話を進めた。
オクトアードを出奔してからの計画を再確認する。
「ではヌン陛下……俺たちはこの国から脱出させていただいた後、ドンカイさん、セイメイさん、バリーさん、それにミサキくんを頼ってハトホルさんという女性が率いるプレイヤーのパーティー……」
ここまで言いかけてエンオウは途中から言い直した。
「……神族のまとめる連合国に赴いて協力を求めればいいのですね?」
改めて口に出してみたが、ドンカイやセイメイを部下に従えるハトホルという女性は何者だろうか? ただ者ではないのは確かである。
剣豪と横綱は組織のトップをやりたがるタイプではない。
かといって、誰かの下へ無条件に従うようなお人好しでもない。
もしも従うとしたら――自分が認めた強者以外あり得ないはずだ。
ハトホルという女性はその強者に当たるらしい。
あの翼先輩を彷彿とさせる、重力や慣性も手玉に取るような合気術は達人の領域を超えており、素の戦闘能力も凄まじいの一言に尽きる。
まるで翼先輩が女神になったような……?
「うむ、渡りを付けてもらうのは先日お願いした通りじゃ」
ヌンの返事でエンオウは我に返る。
カエルの頭を頷かせた彼にこちらも頷いて返した。
しかし、ヌンの顔色は浮かないものだった。
「もうひとつ……面倒かも知れんが追加でお願いしたいことができた」
申し訳なさそうに呟いたヌンは振り向いた。
視線の先にいるのは孫娘で秘書官のライヤである。彼女を見つめる眼は祖父の愛情に満ちあふれたものであり、謝りたいような哀愁も込められていた。
彼女をひとしきり見つめた後、ヌンは追加の願いを口にする。
「このライヤを筆頭に――我が王家の者を共として連れて行ってほしい」
エンオウとモミジは呆気に取られた。
それ以上に驚愕していたのはライヤ本人だった。身がすくむほど硬直して言葉も出ない様子である。ライオンみたいなヘアが目を見張るほど盛り上がる。
緊張するあまり毛根から膨張しているのだ。
皆が絶句する中、ヌンはライヤの正面へ振り返った。
「すまんな、ライヤ……」
危険な任務になるが――外の世界へ旅立ってくれ。
謝罪の弁にも勝る口調で、ヌンは愛しい孫娘を送り出す理由を語る。
「渡りを付けるならエンオウくんたちで十分……しかし、それではハトホルが動いてくれない可能性もある。遣いを出すだけでは足らぬのじゃ……我々が国家として誠意を見せねば、あちらも国家として動いてはくれまい」
そこで「王族も派遣する」とヌンは決めた。
「王家の血を継ぐ者がいれば交渉での説得力も増すであろうし、こちらからの協力という態を取れば無下にできない縁も生じる……」
さすればハトホルも無視できまい、とヌンは老獪に微笑んだ。
彼女の優しさに付け込む希望的観測ではあるが、ヌンが渡してくれた情報を見る限り、ハトホルはそのような期待を抱かせる人格者でもあった。
「万が一わしが家臣団に食い止められ、この異相から出られんでも……おまえたちがハトホルに協力したという功績を治めることができれば……蕃神との戦いが終結した後、ハトホルはこの国を厚遇してくれるやも知れぬ」
国家として厚遇されることを何よりも望む。
それはオクトアードに暮らす国民が、新しい真なる世界へ受け入れられる条件でもあった。「おまえたちは何もしなかった」と国民が指を差されることのないよう、取り計らってもらいたい一心なのだ。
そのためにも王族を派遣しなければならない。
ライヤにはハトホルの元での実績が求められている。
娘を嫁として人質に差し出す、戦国時代の慣習に近い考え方でもあった。
一転、ヌン陛下は明るい声で告げる。
「なぁに、ひょっとしたらハトホルの治める国が居心地良すぎて、オクトアードに帰って来られなくなるやも知れんぞ? わしの見るところ、あそこの民草から笑顔が絶えたことはない。まっこと羨ましいわ」
国民は和を尊び向上心があり、ハトホルの臣下は分け隔てなく交流する。
王を演技で欺く――卑屈な家臣など1人もいない。
「……まっこと、羨ましいわ」
ヌン陛下は無意識に同じ言葉を繰り返して落胆した。
心の底から湧き上がった本心、それを隠せなかったのだろう。
祖父の呟きを耳にした直後――ライヤが頽れた。
「お祖父さまの心中……察して余りあります!」
彼女は口元を手で覆うと、声を上げて泣き崩れてしまった。
ハイエルフとしての美貌が台無しになるくらい眉根を寄せて、瞼の圧力で眼球を絞り出すように滝のような涙を流していた。
泣き声とともに祖父を思うライヤの言葉があふれてくる。
「本当ならお祖父さまがいの一番に……この異相から、自らを閉じ込めた結界から飛び出したいはずなのに……国民のためを思い、厭戦派などという臆病な家臣たちのせいで身動きが取れず……悔しい思いをなさっているのにッ!」
――この地に残らざるをえないなんて!
「誰よりも……ハトホル様と肩を並べて戦いたいと願ってるのにッッッ!」
「言うな、ライヤ……謝るのはわしの方じゃ」
愛して已まない孫娘を、艱難辛苦の旅へ送り出そうとしているのだ。
責められこそすれ、慮られるなどお門違いも甚だしい。
旅の助けになればと、信頼するに足りるエンオウやモミジにハトホルの許まで送ってもらうように依頼したのだ。
何もしてやれない祖父からの――せめてもの手向けである。
「……畏まりました、ヌン国王陛下」
泣くのを止めたライヤはしゃくり上げながらも、女々しく頽れていた姿勢から片膝をついた体勢に立ち直り、ヌン陛下に臣下として跪いた。
「ハトホル女王陛下への密使、エンオウ様並びにモミジ様とともに成し遂げて参ります。そして、必ずやこのオクトアードを異相から出してもらうように取り計らっていただきます! どうぞ吉報をお待ちください!」
次に会う時は――真なる世界のオクトアードです。
孫娘の頼もしい約束に、ヌンはカエルの顔をくしゃくしゃに歪ませると大粒の涙をこぼしそうになる。しかし、グッと口を食いしばって堪えていた。
それから会心の笑顔を力尽くで作り出す。
「おう、信じてるからこそ送り出すんじゃ! 頼んだぞ我が孫よ!」
「はい! ご期待くださいお祖父さま!」
ヌンはエンオウたちに振り返る。
途中、目にも止まらぬ速さでハンカチを取り出すと涙を拭いて顔を拭って、ついでに鼻もかんで面相を整えていた。早業ここに極まれり、である。
王としての体面を保つために必要な技能……らしい。
「そんなわけでじゃエンオウくん、モミジちゃん……ハトホルという女神さんへの渡りちゅうお遣いと、そこまでの道中における孫娘たちの護衛」
頼んでもよいかな? とヌンか依頼された。
「お任せくださいヌン陛下、世話になった礼としては安いくらいです」
「山峰家の人間は恩を忘れないです。絶対にやり遂げるです」
エンオウとモミジは一も二もなく引き受ける。
それだけの恩をヌン陛下に感じ、その恩に報いたいゆえだ。
不慮の事故から異相に潜り込み、そこに満ちる暴君の水から1週間も逃げ回りつつ戦い続けて限界寸前だったエンオウとモミジ。
ようやく発見したオクトアードの結界に破れかぶれで飛び込んだ。
精根尽き果てて神族ながら死ぬ寸前だったところを、結界の主であるヌンが最初に発見してくれて、内緒で養育院に匿ってくれた。
回復するまでの世話や衣食住……世話になりっぱなしである。
これまでの経緯を聞けば、乱入してきたエンオウたちを利用したいという思惑もあったのは事実だが、赤裸々に明かしてくれるので気持ちよかった。
だからこそ――この依頼は全うする。
エンオウは握った拳を分厚い胸板に叩きつけた。
「必ずライヤさんたちをハトホルさんの許へお連れします」
「……うん、よろしく頼むな」
満足げに頷くヌンは、肩の荷が下りた老爺のように穏やかだ。
「改めましてエンオウ様、モミジ様、道中よろしくお願いしいたします」
立ち上がったライヤは、エンオウたちに折り目正しくお辞儀をする。
その度にフサフサの金髪が連獅子のように大きくたなびいた。
とても良い香りがしたのは気のせいではない。
モミジは兄貴分のエンオウを真似して拳を作ると、その小さな身体には見合わない胸へ加減しながら叩きつけた。ポヨン、なんて音がしそうだ。
「オールOKです。タイタニック級の大船に乗ったつもりで任せるです」
沈むだろそれ、とエンオウはツッコんでおく。
「じゃあ……戦艦畝傍に乗ったつもりで任せてほしいです」
「それだと消息不明になるだろうが」
フランスで建造されて日本へ向かう途中、消息不明となった艦だ。
どうして不吉な艦船について詳しいんだ、この娘は?
なんにせよじゃ、とヌンは話を切り替えた。
「引き受けてもらったところで、出立の日取りを決めておこうかのう」
了解が得られたヌンはエンオウに確認を求めてくる。
「ライヤ以外にも我が王族から数人……君たちも知ってるわしの孫を数人連れて行ってもらうつもりなので、その選抜と準備に3日ほど貰おうかの。最終調整や家臣たちの目をくらますための細工をするとして……」
五日後にするか、とヌンは片手を開いて五本の指を立てた。
カエルの指は3本か4本のはずだが、ヌンは人間のように五本あった。両生類のカエルと神族のカエルを同列に扱ってはいけない。
妙なことに感心していたエンオウに――戦慄が走る。
痛みを覚えるくらいの怖気が、足下から脳天まで一気に駆け上った。
異変を察知したのはエンオウだけではない。
「感じたかエンオウくん……どうやら君たちのお仲間のようじゃぞ」
同じ怖気を感じたヌンは、年寄りらしく曲げていた腰をしゃんと伸ばして背筋を正していた。杖を持つ手も武器を構えるかの如くだった。
反射的にエンオウも警戒のために身構えた。
モミジとライヤを庇うため、無意識に身体が前へと出る。
「俺たちの同類……新しい神族ですか?」
暴れ狂う生きた水の異相を超え、水聖国家の結界を破り、エンオウたちのようにこの結界内の隠れ里へ流れ着いた者がいるというのか?
エンオウたちの場合は完全に事故である。
果たして、この闖入者も偶発的な事故の末にやってきたのだろうか?
「ちょっと前に真なる世界を覗いた時にな――」
結界を超えようとする強大な力の持ち主へ注意を払いながら、ヌンは今朝の朝食を思い出すような口振りで話し出した。
「ハトホルんところに懐かしい顔がいたんじゃよ」
聖賢師――ノラシンハ・マハーバリ。
三世を見通す眼を持つ遊行僧。ヌンの古き良き悪友だ。
「ノラちゃん……ノラシンハのやつがな、ハトホルと真剣に話し込んでおったんじゃ。わしの能力だと視えるだけで声までは聞き取れないが、唇の動きから『異相に落ち延びた連中を探す方法』を検討していたみたいなんじゃ」
「ノラ小父様が…ハトホル様と一緒に私たちを探しているのですか?」
ライヤもノラシンハとは面識があった。
いいかげんでちゃらんぽらんでお調子者の遊び人だが、仁義に厚い彼の性格を知っており、問い掛ける声は希望を帯びていた。
「憶測じゃけどな。はっきりした確証は得られんかった」
だが、希望を抱く価値はある。
ヌンとノラシンハは若い頃から、善いことも悪いことも一緒につるんでやってきた無二の親友。ヌンが蕃神に子供たちを殺されて仇討ちしたがっていることを誰よりも知っているはずだという。
彼がハトホルの許にいるなら――ヌンを好意的に紹介してくれる。
もしもハトホルとノラシンハが手を組み、異相への亡命者を探知する術で訪ねてきてくれたのなら、ヌンは感涙を流して歓迎するだろう。
慌てふためく家臣団を尻目に、ハトホルとの協定を結ぶはずだ。
結界を超えてくるのは――何者なのか?
その正体がわかるまで気を緩めることができなかった。
~~~~~~~~~~~~
ここで――時間は遡る。
ノラシンハから「異相に亡命した連中がバッドデッドエンズの別働隊に襲われてるみたいやねん……どないしよ兄ちゃん」と相談を受けたツバサは、レオナルドとの密談を終えるとすぐに緊急会議を招集した。
緊急なので人数は少なく、秘密裏に行われたものだ。
参加したのは各陣営の代表と補佐官のみである。
(※ハトホル陣営のみ、ミロが共同代表として参加した)
議題は――異相の亡命者が襲撃されている件について。
案の定、ミロとミサキは「戦うことをせず逃げた臆病者とはいえ見捨ててはおけない。助けに行こう……いや、行きたいです」と提案をしてきた。
言葉尻が弱かったのは意外である。
だが無理もない。この2人も承知しているのだ。
異相がままならない空間であることを体験済みなのである。
ミロとミサキの過大能力は『次元を創り直す』ものであり、その万能性は他の追随を許すことはない。それほど希有にして無比の過大能力だった。
そこで――ツバサはふと思い付いた。
『おまえたちの過大能力なら異相も扱えるんじゃないか?』
異相のめくり方をレクチャーしつつ試してみてもらったのが、ミロが5分、ミサキが10分で音を上げた。
『これ無理……しんどい……次元の壁をぶち破る方が全然楽ちん……求められる繊細な作業と、そこに使うパワーが半端ない……ひたすら疲れる……』
『アダマント製の玉ネギを壊さないように延々剥かされてる感じ……』
――以上がミロの感想である。
『無限に層となった空間があるのはわかるんですが……無限すぎて認識するのがつらいです。視覚を使ってるわけじゃないのに眼がチカチカしてきます』
『例えるなら、オリハルコン製のラップを無限にめくらされているみたいな?』
――こちらはミサキの感想だ。
万能能力を持つこの2人ですら「異相はめんどい」と認識しており、そこに隠れている亡命者を発見するのは至難の業だと思い知らされていた。
アハウとクロウも「助けに行きたい」という旨をそれとなく言葉に含ませてくるのだが、そこは酸いも甘いも噛み分けた大人なので躊躇してくれた。
『異相の襲撃者を無視することはできませんが……』
『あちらに注視するあまり、こちらが疎かになる恐れも……』
異相に気を取られるあまり、自国領の防衛に手が回らなくなる。
それこそ最悪にして絶死をもたらす終焉の策略かもと危惧すれば、無計画に着手するのは早計である。
落ち延びた臆病者とはいえ――見殺しにするのは忍びない。
然りとて亡命先は異相――おいそれと行ける場所ではない。
打つ手なしか、と誰もが諦念を抱いたたところでレオナルドが手を挙げた。
『――私に良い考えがあります』
ミロに「失敗フラグじゃんそれ」と半笑いでツッコミを入れられても何のその、レオナルドはこの混迷する議題への解決策を提示した。
『要するに――襲撃者を止めればいいのです』
異相の亡命者をバッドデッドエンズの刺客が殺して回っているなら、その刺客を1人残らず始末してしまえばいい。
後のことは知りません、とレオナルドは素っ気なく付け加えた。
恐らく、亡命者たちは襲撃者に気付いていない。
『気付いていれば異相にいられるわけもなく、早々に真なる世界へと舞い戻ってきてなければおかしいからね。そして、この世界の大きな勢力となりつつ我々に援護を取り付けなければ、枕を高くして眠れないだろう……』
蕃神は恐ろしいからね、と意地の悪い笑みを浮かべた。
しかし――そういった気配は一切ない。
『だから、彼らの命を助けたいのであれば、それを襲う刺客の集団を倒すより他にない。それで亡命者が我々に感謝することはないだろうがね』
レオナルドは皮肉たっぷりに肩をすくめた。
刺客を倒すことで襲撃事件を食い止めることができれば、異相に暮らす亡命者を救え、結果としてバッドデッドエンズの出鼻も挫くことができる。
『なんか釈然としないけど……無駄死にが減らせるならいっか』
『レオさんがそういうなら……理不尽な人死にが嫌ってだけなので……』
レオナルドの説得に、ミロとミサキは納得してくれた。
感情的になりやすいミロとミサキを、なんだかんだで言いくるめてくれたレオナルドの話術には感謝しておきたい。
気取りと侮っていたが中々どうして――立派な軍師様である。
『しかし……肝心なことを忘れてるぞ』
ここでツバサが指摘するように合いの手を入れる。
ノラシンハも交えた三者密談での打ち合わせ通りに言の葉を紡いだ。
『大前提となる問題は、異相を調べるのは難しいってことだ。探るにしろ調べるにしろ一筋縄ではいかない……打開策はあるのか?』
抜かりはない、とレオナルドは自信満々で口の端を釣り上げた。
白い歯を輝かせてニヒルに微笑むところは男前である。
『安心したまえ――そのための策は練っておいた』
~~~~~~~~~~~~
日之出工務店の四神同盟加入に関する四神同盟会議。
本来ならハトホル陣営からは、長男と次女も参加する予定だった。
少し前の会議から、この夫婦には「もしもツバサやミロに何かあればハトホル陣営の代表はおまえたちだから」と言い含めたからだ。
(※第323話参照)
しかし、生憎だがこの会議では欠席である。
レオナルドの策に必要なもの。その製作指揮はダインとフミカに執ってもらわねばならなかったため、そちらの作業を優先してもらった。
――異相に逃れた亡命者が身を守るために展開する結界。
この結界を発見するためのシステムである。
四神同盟会議が終わって、街で騒ぎを起こしていたランマルを引っ捕まえて捕縛して話を聞き、ようやく応接間が落ち着いた頃――。
ダインとフミカが、完成したシステムを持ってやってきた。
フミカはおくるみのような布包みを抱いている。
それがどうやら結界探知システムらしいのだが……赤ん坊でもあるまいし、どうしておくるみに包んでいるのだろうか? ツバサは訝しむ。
フミカは満面の笑みでおくるみを渡してきた。
あからさまな悪戯心を隠していない。
「はい、バサママ。抱っこして上げてくださいッス」
「誰がバサママだ。それに抱っこって……おい、なんだこれは!?」
渡されたおくるみを覗き込んだ瞬間――ツバサは戸惑った。
それはどう見ても3才くらいの幼女だった。
クリーム色の長い髪にやや褐色を帯びているが幼子特有のもっちりした肌。手も足もまだ発育途上にあり、人間というにはあまりにも頼りなく、まるで人形のような愛らしさを感じさせる天使のような造形美。
顔の造作は誰にも似ていない。初めて見る愛らしい顔立ちだ。
長い髪は邪魔にならない程度に頭の後ろで束ねられており、そこにリボンが結ばれていた。フミカが施したものだろう。
幼女は親指を加えたまま、穏やかな寝息を立てていた。
母性本能がヤバい――内なる神々の乳母が暴れようとしていた。
こんな衆人環視にも負けず劣らない、仲間が集まっている応接間の真ん中で母親として暴走するツバサの醜態など見せられない。そんなことをした日には、ツバサの男心は玉砕しかねないからだ。
引き締めていた凜々しい表情が、幼女の寝顔で蕩けそうになる。
耐えろ、耐えるんだ羽鳥翼……なけなしの理性が男心を叱咤し、血が出るくらい唇を噛み締めると、だらしなくにやけそうな顔を食い止めた。
その時――幼女が目を覚ます。
うっすら瞼を開けると、蒼く澄んだ瞳が瞬いた。
幼女はコシコシと小さな手で目元を拭うとツバサを見上げ、もう一方の手をおくるみから伸ばすと、無造作にツバサの乳房を掴んできた。
「――まま、おっぱい」
瞬間、ツバサの堪えていた母性が物理的にあふれ出した。
表情や姿勢こそ緩みそうになったものの、なんとか持ちこたえてくれたが、爆乳の中で渦巻いていたハトホルミルクだけは我慢できなかった。
ママと呼ばれただけで母性本能がクリティカルなダメージを受けてしまい、すっかり地母神として出来上がった肉体が子供に乳を授けるため、何もせずとも豊穣のハトホルミルクをドブドブ噴き出しているのだ。
……もはや母乳パッドは欠かせない。
数枚重ねているのだが、あっという間に吸収率の上限に達しそうだ。
このまま誰の目もお構いなしで胸元をおもむろにはだけると、授乳したい欲求に駆られたが、さすがに理性が瀬戸際で押し止めてくれた。
戦闘もしてないのに呼吸が荒くなって困る。
おっぱいに甘えてくる幼女に罪はないので、「よしよし」と普段のツバサらしく表情を崩さずにあやしながら、フミカとダインに首だけで振り向いた。
「……随分と挑戦的なものを作りやがったな?」
これが完成したシステムか? とツバサは憤怒の笑みで凄む。
一般人ならこの笑顔で殺せる自信があった。
ダインは棒立ちになって震え上がり、フミカはその背に逃げ込む。
夫婦は震える声で必死に弁明してきた。
「母ちゃん勘弁! わしはその子をそがな風に作っちょらんきに!?」
「ウチも【魔導書】を用意しただけで、他は何にもいじくってないッス!?」
「なんだと! じゃあ誰がこんな……」
ダインとフミカの視線が泳ぎ出す。
目指す先に立っていたのは――ハトホル一家きっての問題児。
「そうです、私が仕込みました」
注目のスポットライトが当たったクロコは、無表情のままバンザイするように両手を挙げた妙ちきりんなポーズを取った。
テテーン♪ と間抜けなBGMが鳴り響く。これまた腹が立つ。
「せっかく『可愛いお人形さんを作れ』というレオ様のお達しでしたので、ツバサ様の育児練習の一助になればと、幼児らしい動作を組み込みました」
「クロコさん……グッジョブ!」
クロコの自白を聞いたミロは、親指を立てて絶賛する。
これに駄メイドは「感謝の極み」と、親指を立てて応えた。
「どうしてそう無意味な機能を……この子はアレだろ? 異相に隠れた結界を発見するためのシステムのはずだろ!? それを、こんな情の移りやすそうな可愛らしい幼女の形にするなんて……レオナルドッ!」
「え、俺!? いや、俺はクロコに『適当な人形を用意してくれ』と命じただけで、そこまでしろといった覚えはないんだが……」
「やかましい! 監督不行き届きでおまえが悪い!」
「そんな無茶苦茶な!? 大体、君だってそんなに可愛がって……ッ!」
「まあまあ、そこら辺にしとき――ええがなええがな」
ダインやフミカに続くように応接間へ入ってきたのは、白髪をまとめて長い白髭を垂らす痩せた老人。これが和風だったり中華風なら仙人なのだが、彼の出で立ちはインド風であった。
聖賢師――ノラシンハ・マハーバリである。
「感情を持たせた人形をこさえるんは正直どうかと思ったが……これはこれで悪くないやん。そない複雑なもんは積んどらへんしな」
ノラシンハの登場を助け船と受け取ったのか、レオナルドは銀縁眼鏡の位置を直しながら冷静に弁明する。
「機能補助のための人工知能しか積んでないはずなんだが……」
「それだと面白くなかったので、二~三歳児のような愛らしい行動が取れ、ツバサ様に母親として甘える知能を追加しておきました」
「「――おまえええ加減にせぇよ!?」」
ツバサとレオナルドは声を揃えて大阪弁でツッコんでしまった。
ええがな、とノラシンハはこれを好意的に捉える。
「余計な知能かも知らへんが、おかげでこん子の性能はぐんと上がったみたいやからな。俺や獅子の兄ちゃんが想定してたんより高性能に仕上がっとるで」
この幼女型人形が――本当に結界探知システムなのか?
そこについてレオナルドは解説する。
「では、俺の考えた策を説明させていただきましょう」
この場にいる全員に説明しているので、言葉遣いが丁寧だった。
「今回、要となったのはフミカ君の過大能力です」
フミカの過大能力──【智慧を蓄えし999の魔導書】。
彼女が一度でも見聞きした情報はなんであれ、能力で精製される【魔導書】に書き込まれていく。そして、それが物体や現象、あるいは魔法だった場合、情報通りに再現することが可能というものだ。
「フミカ君がLV999に成長してくれたおかげで、この計画が思い付いたといっても過言ではありません。さもなくば、この作戦は頓挫していたでしょう」
実姉であるアキが懸想する想い人――レオナルド・ワイズマン。
フミカは彼自身には悪い感情を抱いておらず、むしろ実姉より敬意を払って接している。ダメな姉貴を面倒見てくれた恩義があるようだ。
その恩人に褒められたので照れ臭そうだった。
「彼女がLV999になったことによって、他の神族や魔族が保有する過大能力や技能を複製して使えるようになったことが最大のポイントです」
フミカの【魔導書】に仲間の過大能力をコピーして使う。
ただし過大能力は神の異能だからなのか、100%の再現は望めなかった。当人よりは劣ってしまい、最大でも85%の出力しか出せなのだ
まずは聖賢師――ノラシンハの“三世を見通す眼”。
最悪にして絶死をもたらす終焉が、異相への亡命者たちを虐殺しているのに気付けたのは、偏にこの遠隔視があったればこそである。
次に妖人衆の巫女姫――イヨ・ヤマタイの“万里眼”。
ツバサの眷族として神族に昇格した彼女の能力もまた、ノラシンハのそれと似て非なるところがあった。千里眼を超える遠隔視のため万里眼という。
そしてフミカの姉――アキ・ビブリオマニアの過大能力。
正しくは【真実を暴露する者】というのだが、これも望んだ情報を得るためならば、どこまでも探索のための視覚という枝葉を伸ばせる優れ物だ。現実世界でハッカーを生業にしていた彼女らしい能力と言える。
この3人の能力を――【魔導書】に複製させてもらう。
当初レオナルドはノラシンハたち遠隔視系能力者を総動員して、24時間体制で見晴らせることを考えたそうだが、彼らを酷使して使い潰したりしたら元も子もないため、代役を造るという方式に切り替えたらしい。
この3つの【魔導書】を連動させる。
これにより各々性能は80%前後にデチューンされたものの、相互作用することで遠隔視としての力を強化させることに成功した。
更に――索敵能力を向上させる機器をダインに用意してもらった。
3つの【魔道書】を機器に組み込めば性能強化が見込める。
これらの【魔道書】に宿るのは元を正せば神族の能力であるため、十全に発揮するためには人型のマシンがいいだろうと、レオナルドはクロコに適当な自動人形を作れと発注し、ダインたちに渡すよう言い付けておいた。
結果――完成したのがこの幼女である。
このため、自動人形というよりアンドロイドに近いという。
「ちなみに外見については、探索機能のメインを司るノラシンハ翁の御要望に添いまして、『もしも翁に可愛らしい女の子のお孫さんがいたら』というコンセプトを踏まえて制作させていただきました」
「へへっ、小憎らしいサービスしてくれるやないの……」
クロコのいらん説明に、ノラシンハはホロリと泣かされる演技をした。
人差し指で鼻の下をこする仕種も忘れない。
こいつら小芝居大好きだな、と呆れながらもツバサは理解した。
この幼女は――探知特化のアンドロイドだ。
今回は異相に隠れる亡命者の結界を探ることに先鋭化されているが、今後は別のものを探すことにも使えるはずだ。設計したダインやフミカなら、システムの構築を切り替えるくらいの応用は利かせられる。
そう考えれば、今度も役立ってくれることは間違いない。
「――まま、おっぱい。ぱいぱい」
パンパン、と小さな手が容赦なくツバサの爆乳を叩いている。
これさえなければ最高傑作なのに……ッ!
よしよし、と幼女をあやしてやる。乳房を含ませるわけにはいかないが、ミルクの香りが漂ってきた胸に埋めるように抱いてやる。
幼女は胸に顔をすり寄せると、ようやく大人しくなった。
ハトホルミルクの濃厚な香りで満足してくれたようなので安堵する。
苛立ちのため額の青筋は消せないが、ツバサは話を進めた。
「それで……この娘がどうやって異相内の結界を見付けてくれるんだ?」
「なんでんかんでん全部みっけてくれるわけやないんよ」
ここから先はノラシンハが語ってくれた。
その口調は力不足を痛感した弱々しさが混ざり込んでいる。
「正直な話、異相ん中に隠れた亡命者たちの結界を見付けるんは不可能や。大砂漠にばらまかれた少量の砂金を拾い上げるよりしんどい」
だが、ひとつだけ発見する手立てがあるという
そういってノラシンハは人差し指を立てた。
「異相に逃げた亡命者は例外なく、安全のために結界を張って、そん中で暮らしとるはずや。こん結界はな、絶対に真なる世界と接しとる」
異相とは――生物が生きるのに適さない環境だ。
その過酷な世界では何が起きてもおかしくはない。そのために亡命者は保険として、いつでも真なる世界へ帰れる用心を怠らない。
だから――結界の一端を真なる世界へ繋げている。
「もしも一大事が起きたら、即こっちへ戻ってこれるようにな」
例えばの話や、とノラシンハは前置きする。
「……LV999の集団にでも襲われでもしたら、結界ん中の連中は応戦するなりトンズラこくなり反応するはずや。そのせいで結界は大いに乱れる」
すると、真なる世界との接点にも変化が起きるはずだ。
「俺ん眼ならその瞬間を捉えて、見知った亡命者の結界なら見付けることも叶うやろう……同じように、その娘も感じ取ることができるはずや」
なるほど――そういう理屈か。
つまり最悪にして絶死をもたらす終焉が、異相のどこかに漂う結界内の亡命国家を襲った瞬間――。
「この幼女が探知システムとして、それを感知するわけだな」
「異相の中を自由に覗けるわけじゃないんだね」
ちょっとがっかり、とミロは期待外れだと訴えた。
堪忍な、とノラシンハ申し訳なさそうに謝る。
「そない都合いいもんやあらへんのや。危機に陥った亡命者をいち早く発見できるちゅうだけや。急いで駆けつけて不埒者どもをやっつけてもらうしかない」
ここまで聞いたツバサは疑問を呈する。
幼女を抱き直しながら、そこをレオナルドに質問してみた
「この娘がいればノラシンハの爺さんに代わって、異相内の結界に何かが起きたことに気付いてくれるだろう。それはいいんだが……」
問題は――その場所である。
異相に逃げ込んだ亡命者の結界がどこから飛び出してくるのか? 真なる世界のどこへ出現するのか? これがわからない。
「それがとんでもなく遠方だった場合……急いで駆けつけたとして間に合うのか? その対策もできているんだよな?」
ツバサの質問に「もっともだ」とノラシンハも頷いた。
2人の視線はレオナルドに注がれる。
軍師気取りの愛弟子大好き人間は、愛用の銀縁眼鏡がずり落ちるほどの間抜け面をさらし、「あ……」と口を開けていた。
「てめぇ、一番大事なそこんとこノープランだったな!?」
ツバサは抱いていた幼女をフミカに任せると、烈火の如く怒りを露わにしてレオナルドに詰め寄り、まさかの失念を糾弾した。
「だ、大丈夫安心してくれたまえ! 今! 妙案を閃いたから!」
「やっぱりノープランだったんじゃねえかこの野郎!?」
「軍師だって失敗するものだ! 探偵だって見落としはあるものだ!」
レオナルドはみっともなく言い訳に終始する。
「あの万能すぎる杉下○京警部だって、『僕としたことが!』といいながらミスを認めることが多々あるじゃないか!」
「○京さんとおまえを同列で語るな烏滸がましい!」
おまえなんか軍師気取りで十分だ! とツバサはレオナルドに怒鳴った。
異相に逃れた亡命者の結界――。
その救援に向かうミッションは前途多難のようである。
~~~~~~~~~~~~
水聖国家オクトアード――国土を取り巻く護国結界。
その結界にスゥ……と音もなく切れ込みが走った。
鋭い刃物で切り裂いたような裂け目からは、結界の外で荒れ狂う異相の水が獲物を嗅ぎつけた獣の群れのように雪崩れ込んできた。
オクトアードの結界が漂う異相は、暴君の水が支配する異空間だ。
荒れ狂う暴君の水は――液体状の生物といってもいい。
自分以外の生物に限らず物質を見付けると、融かして栄養分として吸収するのか、あらゆるものを水に変えて取り込む性質があった。
そんな暴君の水が、結界内に浸入してくる。
裂け目は一カ所だけではなく、あちらこちらにひとつ、またひとつ、今度はふたつみっつよっつ……といった具合で悪戯のように増えていく。
結界内の頂点――ヌンの王城の真上。
そこを突き破って、結界の内側に歪な刃が差し込まれてきた。
一言で言い表すなら、それは禍々しい七支刀だった。
七支刀とは古代日本で儀礼に使われたとされる、長い剣身の左右から三対六本の刃が鈎状にせり出した、独特な形をした長剣である。
実際に武器として使われた形跡はない。
そもそも、こんな刃ではまともに戦うことができないはずだ。
しかし、結界に突き立てられた邪悪な七支刀は使い込まれた形跡があり、武器としての需要を満たしていることが窺える。
王城へ突き立てるように向けられた挑発的な切っ先。
七支刀が海を泳ぐサメの背びれのように結界を容易く切り裂き、そこに今までとは比べものにならない大きな裂け目が開かれた。
「あー、鬱陶しい雨だこと。傘でも持ってくりゃ良かったかなー」
ビショビショだよホント、とその青年は愚痴った。
文句を垂れるが、まったく濡れた様子はない。
銀髪のオールバックに、濃いサングラスで決めた青年だ。
チャラいけどサラリーマンのようなスーツ姿。だがジャケットには袖を通さず、肩に羽織っていた。ワイシャツは肘まで腕まくりをして、その腕にはスーツ姿にそぐわない凶悪でごつい造形の籠手をはめている。
凶悪な籠手が、邪悪極まりない七支刀を握っていた。
青年は気さくに敬礼めいた挨拶をする。
挨拶する相手は、眼下に覗ける水聖国家オクトアードすべてだ。
「どうもー、どこの誰だか知らないけれど、真なる世界で暮らすことも守ることも戦うことも放棄して、こんな厄介な異空間に逃げ込んだ卑怯者の皆さん!」
世界を滅ぼす集団――最悪にして絶死をもたらす終焉。
その幹部を務める“右腕” アリガミ・スサノオ。
アリガミは平和そうな世界を見下ろして残虐な笑みをこぼす。
「さて、ちゃっちゃと滅んでいただきましょうか」
片手間に終わらせよう――きっとすぐ終わる。
これから始まる大虐殺も、アリガミにとってはその程度の些事だった。
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