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第14章 LV999 STAMPEDE
第334話:いざ出撃の旅へ!
しおりを挟む真なる世界の大陸中央──タイザン平原。
かつては荒れ果てた大地が広がる不毛の原野だったが、今では青々とした柔らかい草が生い茂る、生命あふれる草原となっていた。
植生が甦ったことにより、生態系も復活しつつある。
小さな昆虫から始まり、草食性の動物たちが戻ってくると、それを追って肉食性の動物やモンスターも姿を現すようになった。
このタイザン平原で暮らすようになった鬼神のキサラギ族、人馬のセントール族、山羊人のサテュロス族の三種族も平穏な日々を送れるようになり、還らずの都の麓に街と呼べる大きな集落を作っていた。
冥府神クロウ・タイザン――彼の功績である。
強大な魂の持ち主である内在異性具現化者のクロウもまた、2つの過大能力に目覚めており、そのひとつの過大能力の効果だった。ツバサもそうだが内在異性具現化者は2つ以上の過大能力に覚醒するものらしい。
その1つは、世界へ働きかける傾向があった。
過大能力──【我こそが地獄であり地獄こそ我である】。
こちらはクロウの内面世界ともいうべき業火に滾る地獄の世界、それをあふれさせるもの。地獄の責め苦ですべてを蹂躙する過大能力だ。
ツバサ、ミサキ、アハウもだが、複数ある内のひとつは、攻撃力や肉体強化といった戦闘面で役に立つものになりやすい。
過大能力――【不浄は輪廻転生を経て浄化されよ】。
こちらがアハウのもう1つの過大能力、世界へ働きかけるもの。
この世を穢す不浄なるものを吸い込み、洗浄することで清らかな“気”へと変換し、それを遍く世界へ還元するというものだ。
浄化された“気”は、植物や生物の育成を促進させる効果を持つ。
先日──タイザン平原では大戦争が勃発した。
その機に乗じて大陸をも握り潰す超巨大蕃神が無数の眷族を率いて乱入してきたので、この平原はかつてない大混乱に陥った。
戦争終結後、蕃神は追い返せたが不浄の“気”はたっぷり残された。
この穢れた“気”を、クロウは過大能力で洗浄して賦活し、平原に命が戻るようにと願いを込めて振り撒いたのである。
おかげでタイザン平原は、こんなにも早く復興できたのだ。
~~~~~~~~~~~~
そのタイザン平原の真ん中に鎮座する──還らずの都。
雲を突き抜ける頂きは、天の彼方に届くまで積み上げられたアダマント鋼。現実世界ならばヒマラヤ山脈やアルプス山脈さえも凌駕する超弩級の巨大高層建築物であり、紺碧に染まった巨大なピラミッドのようにも見える。
事実、ここは死者のための都に他ならない。
真なる世界において一廉の成果を上げた者は英霊と認められ、死の直前に還らずの都から無意識下へある選択を求められる。
『死して尚、この世界で生きる子孫のために戦う遺志はあるか?』
これに承諾した英霊は、還らずの都に遺影を刻まれる。生前の姿形のみならず、その英霊に関する情報も余すことなく記される。
真なる世界に危機が迫った時──。
還らずの都はその内側に貯め込んだ莫大な“気”を解放。それを付与された遺影は情報を元に英霊を再構築し、仮初めだが最盛期の状態で復活させる。
一時的ながらも復活を果たした英霊は、その力を持って真なる世界に迫った危機へ立ち向かい、役目を終えれば“気”となって世界に還る。
その時が来るまで、本当の死は迎えられない。
いつ起こるかもわからない世界の危機に備え、英霊たちは死んでも世界へ還ることを許されず、死者の都で永い眠りにつくこととなる。
ゆえに──“還らずの都”と名付けられた。
「……ですが、その機能を一時的に停止いたします」
ククリは調整の手を休めずに言った。
還らずの都を奉る巫女──ククリ・オウセン。
死を司る魔族の王者を父とし、生を育む神族の女神を母に持ち、両者の力を併せ持つように受け継いだ灰色の御子の一人である。
灰色の御子は人間の力を借りるため、その多くが地球へ渡った。
ただし、全員ではない。
ククリのように真なる世界に残った者もいたのだ。
外見だけなら十代前半、まだ幼さの抜けきらない少女である。
灰色の髪を姫カットに揃えた、気品ある容貌。
十代の少女らしい華奢な体躯には、巫女服に十二単のような意匠を加えた重ね着する和装を身にまとっている。部分的にはスカートやブラウスにも見えた。
幾重にも複雑に絡んだ衣装──ということだ。
神族と魔族の血を引いているので実年齢は500歳というが、その大半を冬眠するように過ごしたためか、また幼くして父母と悲しい別れをしたためか、精神的にとても幼く、ネガティブなのが心配だった。
しかし先日の大戦争を経て、目覚ましい成長を遂げてくれた。
還らずの都の最深部にある──中央制御室。
野球なら10試合は同時に行える規模がある超巨大なドームのそこは、一面まぶしくない程度の光量に保たれており、宙には大小無数の龍宝石が立体的な天体図のように浮かんでいた。
還らずの都は地脈から少しずつ“気”を集めており、それを龍宝石に蓄えることで増幅させ、莫大な“気”を貯め込んでいる。
有事の際には、これを解放することで英霊の軍団を創り出す。
「かつての英霊たちは先の蕃神との戦争でみんな解放され、この世界に還ることができました。新たな英霊はまだ都に登録されていません」
龍宝石は地脈から“気”を吸い上げている。
「この“気”を使い、タイザン平原を守る防御結界を張り巡らせます」
ククリは制御盤を操作する。
それはいくつもの龍宝石で、大きいものは野球ボール大、小さいものだとビー玉くらいの大きさだ。それらの龍宝石は彼女の手元で規則正しく並んでおり、まるでキーボードのようにタッチタイピングしている。
その軽快な指使いからは、ポジティブさが感じられた。引っ込み思案で、いつもオドオドしていたククリからは想像もつかない。
龍宝石に蓄えられた“気”を、ククリは自分の目でチェックしている。
見上げる彼女の瞳にも力強い意志が宿っていた。
出会った頃のククリは、気弱な箱入り娘というイメージだったが、それを思えば見違えるほど大人びてきたと認められる。
孫娘を見守る祖父な心持ちのクロウは嬉しさが尽きない。
これも偏に――ツバサ君とミロ君のおかげだ。
「もしも、この真なる世界を憂う英雄が亡くなったとしても、その情報は還らずの都に送られてきますが保留にします。英霊として復活させる機能も働かせません。当面、この都と平原に暮らす皆さんを守る結界を優先させます」
セッティングを終えたククリは、こちらに振り向く。
以前は人の顔色ばかり気にする物憂げさと、この世のすべてを儚む薄幸さを漂わせていたが、そういったものは払拭されていた。
品のある面立ちはそのままに、明るく少女然とした笑顔である。
「これでクロウおじさまたちの負担を軽くできますよね」
クロウは──髑髏の顔に笑みを浮かべる。
「軽くどころか、大助かりですよ」
最近、骨格を動かして表情を作れるようになってきた。
スケルトンから冥府神という神族になったクロウは、血も肉もなければ皮さえない“死んで骨だけ”みたいな身体だった。
そんな人体骨格めいた体躯にダークスーツを着込み、裏地が真紅に染まったブラックマントを羽織っている。手にはステッキ、髑髏の頭にはシルクハット、英国的紳士を意識したコーディネイトで決めている。
骸骨紳士──という愛称がやっと板に付いてきた。
「ククリさんが帰らずの都とともに防衛の要を担ってくれれば、私たちはバッドデッドエンズとの戦いに専念できます。かつてない強敵からの襲撃を考えれば、余所へ力を回すことは控えたいですからね」
最悪にして絶死をもたらす終焉──その実力は未知数だ。
伝え聞く限りでは、そこに属する者すべてがLV999だという。それが事実ならば想像を絶する脅威となろう。
ツバサ君やマリナ君のように、自陣を結界で守ることが片手間程度にできる者がいればいいのだが、生憎とタイザンフクン陣営にはいない。還らずの都とタイザン平原を守る結界は、クロウが3割ほどの力を割いて張っていたのだ。
他にできる者がいるとすれば、ホクトくらい。
彼女もまた広範囲に結界を張れる技能を持っているが、隕石が100連続で落ちてきても耐えられる堅牢さを誇る反面、5割の力を費やしてしまう。
いつでも全力の彼女は手加減ができなかった。
世界廃滅集団との戦いでは、なるべく迎撃に注力したい。
だからこそ、還らずの都を操作できるようになったククリの申し出は何よりありがたいし、彼女の自信を育てるのに一役買っていた。
「クロウおじさまも、母様も、父様も……みんな頑張っているんです」
わたしも頑張らなきゃ……ククリは小さな掌を握り締める。
ククリの両親は、還らずの都と運命を共にした。
宙に浮かぶ無数の龍宝石の中で、一際巨大な黒と白の龍宝石。この2つは彼女の両親が帰らずの都を維持するために姿を変えたものである。
その両親の魂は、故あってツバサ君とミロ君にそれぞれ継承された。
なのでツバサ君を母様、ミロ君を父様と慕っている。
きっと──2人に褒められたいのでしょう。
両親に報いたい。そのために健気に頑張るククリの姿を見ているだけで、髑髏となったアハウの眼窩から涙が滝のように流れ落ちる。
のみならず、青白い炎まで噴き上がっていた。
この炎はスケルトン属のエフェクト(課金でお値段1500円)だったのだが、感情が迸ると制御できなくなるのだ。
かつてはキサラギ族に護られるばかりの少女。
そんな彼女が、みんなを守れる能力を手に入れたのだ。
「苦難に遭おうとも、前を向く心を忘れず、皆のために頑張り、学びと努力を怠らない……教師生活25年、この感動は何度味わってもいいものです!」
「やだ、おじさまったら……感動しすぎですよね!?」
最初は照れ臭そうなククリだったが、本気で泣き叫ぶクロウを目の当たりにして驚きのあまりツッコミを入れていた。
クロウを中心に、号泣の滝と感激の炎が渦巻いている。
見るに見かねて──メイドたちがやってきた。
「あーあー、クロウ先生ってば生徒の成長に涙ビショビショなんだから」
「しょうがないです……先生、涙もろいですから」
右の幼女メイド──ウノン・アポロス、満11歳。
左の幼女メイド──サノン・アルミス、満11歳。
そっくりな顔立ちをした双子の幼い姉妹だ。
いわゆる“幼年組”で、マリナ君、カミュラ君、ミコ君らと同年代。「アルマゲドンで可愛くなろう!」系キャッチコピーに釣られた口である。
ウノンは活発な性格、赤みの強いウェービーヘアを右のサイドテールに結う。
サノンは冷静な性格、青みのあるストレートヘアを左のサイドテールに結う。
名前も性格も見た目も対照的な双子だった。
でも姉妹の仲は良く、息もピッタリ。バスタオルやモップを用意すると、クロウからダダ漏れの涙をせっせと拭き取ってくれた。
「これであたしたちの活躍まで見せたらどうなっちゃうんだろうねー?」
「感激の涙も涸れて……先生、干涸らびちゃいます」
「私――干涸らびるどころか骨だけなんですが」
もしも干涸らびたら、骨だけの状態よりちょっぴり回復したことになる。
「そうだった! 先生、もう干涸らびるとことがないんだった!」
「死んで骨だけ……先生の決まり文句です」
クロウが真顔でボケると、双子はケラケラ笑った。
ウノンとサノンは目配せすると、ククリが応じるように頷いた。
ククリは龍宝石の制御盤をタタン! と軽やかな指使いでタッチすると、ドームのあちこちにスクリーンが現れる。そこに外界の風景が映し出された。
場所は──還らずの都の上空。
そこにはいくつもの硬質な球体が浮かんでいた。
球体は大きいもので、直径はおよそ100m前後。戦艦なら駆逐艦くらいはすっぽり包み込める大型サイズだ。
あれは工作者たちの努力の結晶──。
ダイン君、ジン君、そしてヨイチ君たちが総力を結集して造った、自動式迎撃ドローンである。ドローンというにはあまりにも巨大だが……。
普段は人目につかない上空で待機している。
ひとたび敵が押し寄せれば舞い降りて、内蔵された様々な兵器で迎え撃つ。砲撃の発射や広範囲魔法の発動を感知すれば、局所的ながらも分厚い防御壁を展開して敵の攻撃を防ぐ能力も備えていた。
当初は各陣営を守るため、地面に埋没させる迎撃装置を計画したらしいが、自然環境に配慮した結果、空中に待機するドローンタイプになったそうだ。
埋設するタイプとは違い、ドローンなら自由も利く。
これらの迎撃ドローンは各陣営に100機配備されていた。
「LV999のバッドデッドエンズには、邪魔するくらいにしか通じないかも知れません。ですが、彼らの中には過大能力などで使い魔や従者を兵隊として使う者がいると聞きます。それを食い止めるのに役立つでしょう……」
「これ、あたしたちの過大能力も使われてるんだよねー♪」
「正しくは……弾丸になるものを供給した、です」
ウノンとサノンは息を揃えて、ピースサインでポーズを取った。
ウノンの過大能力──【軽くも重くも気分次第の粉砂糖】。
サノンの過大能力──【弾けて痺れる刺激的な香辛料】。
双子の姉妹は過大能力もよく似ており、性質こそ異なるが本質は彼女たちの気分次第で強化や弱体化に切り替えられる粉を散布するものだ。
まともに浴びればLV999でも効果はある。
「ヨイチに頼まれて、弱体化をキメに極めた粉をいっぱい作ったんだー!」
「あのドローンの中……どれもあたしたちの粉で満杯です」
襲ってくる敵に散布することで、勢いを削ぐことが期待できるはずだ。
ウノンもサノンも、幼すぎて戦闘は無理。
LV999の悪意の前に立たせるわけにはいかない。
本人たちは気にする素振りを見せないが、やはり手伝いたいと心のどこかで願っていたに違いない。だからこそ、ヨイチの頼みに応じて過大能力を使い、弱体化の粉をありったけ提供してくれたのだ。
全400機のドローンへ積み込むほど大量に──。
「教師生活25年……教師生活25……うぉぉぉんおんおんぉぉぉーッ!」
少女たちの健気さに感動した瞬間、クロウは爆発した。
「せ、先生ーッ!? クロウ先生から水柱と炎柱がああああーッ!?」
「感動しすぎて……涙と炎がオーバーフローしたです!」
「クロウおじさま落ち着いて! 涙で溺れちゃいますよーッ!?」
ククリたちは慌ててクロウへ群がってきた。
喜びと嬉しさで暴走しかける先生を宥めるのに必死である。
──見守ってきた生徒たちの確かな成長。
教職を辞して久しいクロウだが、根っこは未だに教師だったらしい。
~~~~~~~~~~~~
制御室での作業を終えて、クロウたちは還らずの都を出た。
都の麓ともいうべき場所にはキサラギ族、セントール族、サテュロス族が暮らす街が設けられており、そこにクロウたちの拠点となる洋館もあった。
洋館前でクロウたちを出迎えてくれた人物。
彼は門番のように佇み、いくつもの技能で周囲一帯を警戒していた。
クロウたちの姿を見つけると、爽やかな笑顔で挨拶してくる。
「お帰りなさい。無事、結界を張れたようでござるな」
彼は──イケメンの侍だった。
爽やかな空色を基調とした着物や袴、バリッと糊の利いた立派な陣羽織に袖を通しており、背中には身の丈を超える長刀を背負っていた。
ややキザっぽいが、目鼻立ちのしっかりした美青年である。
癖のないストレートな長髪は、後頭部で髷のように高々と結っていた。
伝説の剣豪、“佐々木小次郎”を思い出させる容姿だ。
ガンリュウ・コジロウ──穂村組の剣客である。
助っ人としてクロウ陣営にやってきたLV999の1人だ。
この度――穂村組は四神同盟へと加入した。
組長のホムラは行方不明のままだが、代行を務めるバンダユウが「ホムラも承知してたし同盟入りしていいだろ」と決定を下したらしい。若頭補佐のマリや番頭のレイジも賛成していたので大丈夫……だとは思う。
四神同盟としても異論はなく、正式に加入を認めることにした。
おかげで戦力補充という点では捗った。
顧問バンダユウ・モモチ。
彼は元からLV999だったそうだが、他の組員も同盟入りした後にツバサ君の異相空間に誘われ、死と隣り合わせの荒行をさせられたらしい。
若頭補佐マリ・ベアトリーチェ。
番頭レイジ・アリギエーリ。
爆肉セイコ・マルゴゥ。
爽剣コジロウ・ガンリュウ。
駆掌ダテマル・サガミ。
この5人が猛特訓をやり遂げ、LV999になっていた。
穂村組はその腕前を活かして用心棒を務めてきた。
そこでLV999になった者は、各陣営の用心棒として配備されたのだ。昔取った杵柄、なんて言葉があるが似たようなものだ。
タイザンフクン陣営の用心棒はコジロウ――ともう1人。
「ガンリュウ君、ダテマル君はどちらに?」
ダテマルもまた、タイザンフクン陣営の用心棒である。
「カンナ殿とともにパトロールに出掛けてもらいました。彼の脚ならばバイクにも引けを取りませんからね。見廻り役にはうってつけでござるよ」
コジロウは会釈し、丁寧な口調で説明してくれた。
正直、極道と聞いて警戒したことは否めないが……会ってみると生真面目な青年でビックリさせられた。ちゃんと礼儀も弁えている。
ダテマルはワイルドな野生児といった感じの少年だったが、こちらも話してみると気のいい性格で、心根がまっすぐな男の子だった。
『――地力でLV999になれる者は真っ当なモンが多いで』
ノラシンハ翁の言葉に、クロウも賛同を覚える。
彼らが来てくれたおかげで、LV999の配置換えも行われた。
今まではハトホル陣営からセイメイが派遣されていたが、コジロウやダテマルと入れ替わる形でツバサに呼び戻されていた。
出撃の旅へ参戦するために――。
酒好きのダメ人間だが、不思議と憎めない剣豪の顔を思い出す。
「今頃、ツバサ君たちと一緒に空の上でしょうかね……」
クロウはシルクハットの鍔を摘まんで持ち上げると、長い帯のような雲に霞む東の空を見上げた。その視線に気付き、コジロウも同じ方向を見遣る。
「ウチのセイコも同行しているはずです」
迷惑かけてなければよいのですが、とコジロウは皮肉な笑みを浮かべる。
それは世話の掛かる兄弟を案じる笑みだった。
~~~~~~~~~~~~
準備を整えるのに2週間もかかってしまった。
結界の強化、迎撃システムとして高性能ドローン完備、プレイヤーの過大能力や技能を各種防衛に転用、国民の避難訓練、避難地の選定、食料の確保……。
そして、“器”が出来上がった者をLV999に成長させる。
穂村組が加わったことで新たに6人のLV999を仲間にすることができ、四神同盟でも異相空間を使うことにより、こちらも新たに7人のLV999を育成することに成功していた。
博覧強記娘――フミカ・ライブラトート
腹筋系アイドル――トモエ・バンガク。
剛宝の鉄拳児――カズトラ・グンシーン
気まぐれ拳銃使い――バリー・ポイント。
緑春の服飾師――ハルカ・ハルニルバル。
白銀の女騎士――カンナ・ブラダマンテ。
剛直メイド長――ホクト・ゴックイーン。
それぞれ戦闘能力だけではなく、様々な面でスキルアップも果たしており、場合によっては過大能力をさらに向上させた者までいる。
総勢13人の新たなLV999――。
これで各陣営の最高戦力として、常に3人以上のLV999を待機させることが可能になった。と同時に、最高戦力にわずかながら余裕もできた。
当初の予定通り――「打って出る!」ための切り込み部隊。
そのための人員を捻出できるようになったのだ。
今回ばかりは守りに徹するわけにはいかない。会議でも話題になったが、援軍の望めない籠城戦など死あるのみだ。殺られる前に殺るという、物騒な文言を罷り通すしかない。こちらから先手を打ってやるのだ。
出撃の旅とは以下の通り――。
ツバサを筆頭にLV999のパーティーが旅に出る。
乗り込む艦は飛行戦艦ハトホルフリート。
その大きさゆえに目を惹くからだ。
バッドデッドエンズという敵にしろ、まだ出会っておらず味方になるかも知れない誰かにしろ、こちらの存在にも気付いてもらう必要がある。
なので、ハトホルフリートは看板代わりだ。
いつもなら艦全体に何らかのステルス機能を働かせている。
今回は看板でもあるため姿を隠さず、船影を露わにして航行していた。
道中、感知や探知といった技能を最大限に働かせ、同盟に属さないLV999の発見に努める。発見次第、逃がさず捕らえて相手が何者かを確かめる。
それがバッドデッドエンズなら有無を言わさず無力化させる。
(※降伏や投降は受け入れる)
バッドデッドエンズではないLV999を見つけた場合、交渉して協力を求めるか、あるいは同盟への参加を勧める。無理強いはしない。
また、バッドデッドエンズの被害者がいれば救助する。
そうして旅をしていれば、味方を増やすこともできるし、バッドデッドエンズの戦力を削ぐこともできる。ひょっとしたらまだ助けられていない現地種族の難民も救うことができる可能性さえある。
やがて――ロンドにもこちらの活動が伝わるだろう。
打って出た四神同盟にロンドがどう動くか?
そこまではまだ読み切れないが、ロンドも行動を起こすはずだ。
ハトホルフリートへ直接仕掛けてくるかも知れないし、四神同盟それぞれの陣営を攻め立ててくるかも知れない。なんにせよ、こちらに対して報復めいた攻撃をやり返してくるに違いない。
ロンドがどう動いても――対策はできている。
今回の旅は出撃であると同時に、ロンドの尻に火をつける目的もあった。
「……概要はこんなところかな?」
ツバサはソファみたいな艦長席で頬杖をついていた。
頬杖をついてむっちりした女神の太ももで足を組んで……我ながら偉そうにふんぞり返っているが、内心そんなつもりは毛頭ない。
なんとなく、この姿勢が楽でこうなってしまうのだ。
愛用している深紅のロングジャケットと黒のストレートパンツ。どちらも戦闘用に調整された、アルマゲドン時代からのコスチュームだ。LVアップしたハルカが縫製をやり直してくれたので、耐久力や防御力は段違いになっているが。
飛行戦艦にして母艦――ハトホルフリート。
既に本艦はハトホル国から出撃しており、タイザン平原を通り過ぎて還らずの都を横に見ながら、北東へ向かって航路を進めていた。
前述の通り、この旅は出撃の旅路でもある。
敵にしろ味方にしろ、興味を持った奴はどんどん突っ掛かってきてもらいたいので、隠蔽や隠密といった技能を使わず堂々と飛んでいる。
「いっそバッカドッカエードへ殴り込みできりゃ良かったのにね」
ツバサの横にいるミロが気怠げに言った。
「最悪にして絶死をもたらす終焉な」
お約束として言い間違えたので、ツバサが訂正しておく。
彼女の過大能力はツバサたちにとっての切り札。今回も一緒に来てもらったが、何より誰よりミロがツバサの傍を離れるわけがない。
綺麗に編み込んだシニョンと、白と青で彩られたお姫様ドレス。
これもアルマゲドン時代からミロが好んで愛用する、ハルカ謹製の特注ドレスである。生地からしてアダマント繊維で織られた戦闘向けなので、バトルドレスなんて名称を付けられていた。
大きなソファの右側に小さなお尻を座らせたミロ。
ツバサの細い腰に抱きつき、こちらに右乳房に顔を埋めたり頬ずりしながら半分微睡んだかのようにトロンとした目つきでぼやいていた。
「せっかくノラシンハのじいちゃんが仲間になって、過去現在未来のあちこち覗けるっていうチート能力持ってるから、その中二病ネーム全開な奴らのアジトへ直接ツッコめれば楽だったのにね」
ミロは同じ内容の言葉を繰り返した。
その点はツバサだって同意見だ。しかし、無理と判明したのだからグチグチごねても今更である。ミロの頭をポンポンと撫でてやった。
「仕方ないだろ。奴らも馬鹿じゃない」
ちゃんと対策を講じていたのだ。
~~~~~~~~~~~~
ノラシンハが過去現在未来を自由に覗けると聞いて、ツバサは「じゃあロンドやバッドデッドエンズがどこにいるか調べてくれ」と請うた。
ノラシンハは「ええがな」と二つ返事で応じてくれたのだが……。
『アカン、やっぱ手を打たれてもうてるわ』
『探知系にバレないよう対策でも施してたか?』
ツバサが訊くと、ノラシンハは真っ白な眉を寄せて解説してくれた。
『いや、そこらへんはかーなーり無頓着やな。おれん眼なら覗ける。今どこにいるかもわかるんやけど……履歴調べたらえらいことなってんねん』
『履歴って……ブラウザでも見てるのか?』
ちょいと似てるで、とノラシンハは得意気に髭を扱いた。
『兄ちゃんたちの世界のブラウザにゃあ、よく検索エンジンちゅうんがくっついとったやろ? おれの眼はその検索エンジンみたいな真似もできるんよ』
調べたい対象がわかれば検索できるそうだ。
それこそ――真なる世界のどこにいても追いかけられる。
『検索エンジンっていうよりグ○グルアース……いや、調べられるものに制限がないのなら、それはもう神懸かりレベルのスパイ機能じゃないか?』
007やキングスマンも道を譲る諜報能力だ。
いやさ、天才ハッカーというべきか?
『ま、おれは清く正しい聖賢師やからな。そない悪用はせぇへんで』
ふむふむ、とノラシンハは目を眇める。
遠く彼方にあるバッドデッドエンズの拠点を探しているらしい。
『LカップからMカップか……兄ちゃんも大変やな』
『なに俺の個人情報探ってんだ!? さっさとテキパキ真面目にやれ!』
悪用してんじゃねえか! とツッコミで張り倒した。
『やっとるがなやっとるがな。連中のアジトらしき宙に浮いとる浮島はちょうど今、こっからずっと南方、空も海も荒れ狂っとる海域に浮かんどるわ』
しかし、そこに現れたのは30分前だという。
『そん前は北の果て、ろくに生き物も住んでおらん極寒地帯。その奥にある凍りついた山々のそのまた奥にある氷原の上に浮かんどったわ。さらに2時間前は東南東の彼方にある、これまた人跡未踏のジャングルの奥……』
『感心するほど落ち着きがない移動っぷりだな』
ノラシンハが調べたところ、ロンドのアジトは空間転移を繰り返しており、同じ場所に2時間以上いた例しがないという。
『数時間ごとにランダムな転移を繰り返しているのか?』
『せやな。1箇所に留まる時間は最短で5分、最長でも1時間半くらい。転移する先は世界の果てから果てまで、それも高位な神族や魔族でもおいそれと近付けんような、危ないところばかり選んどるみたいやな』
なるほど──連中も馬鹿ではない。
本拠地へ攻め込まれることへの対策、その一環だろう。
ツバサがジョカから貰った“空を飛ぶ浮島”みたいなものを持っているらしい。短時間で空間転移を繰り返せるのは、その浮島に備わった機能と見ていい。神族や魔族、その個人の力ではそこまでの現象を起こせない。
空間転移は──最高難易度を誇る。
四神同盟でも「一度行った場所なら、どんなに遠くても一瞬で転移できる」魔法を習得しているのは、ツバサとフミカのたった2人。
そのフミカもLV999になってやっとである。
(※中距離の瞬間移動ができる過大能力はいくつかある)
たった一度の転移でも“気”の消費は莫大だ。ましてや島ほどの質量を転移させるとなれば、あっという間に精根尽き果ててしまう。
どんな能力者であろうと、数時間置きにできる芸当ではない。
だから、浮島に備わった機能と推測できるのだ。
『場所がわかっても、現地に向かうまでの間に空間転移されたら逃げられたも同然だ。しかも、逃げた先が大陸の反対側にでもなれば……』
『──追っかける気にもならんやろ?』
ノラシンハの言った通り、手は打たれていた。
空間転移の履歴から、次に転移する先に目星をつけることも難しい。一度転移したところは避けているらしく、規則性がまったくない。
敵の本拠地を強襲するという作戦は、立案さえままならなかった。
~~~~~~~~~~~~
「──ロンドさんの仕事じゃないかもな」
レオナルドがポツリと呟いた。
「彼は仕事のできる男だが、変なところでポカをしたり肝心な点が抜けてることがある。意外と脇が甘いところがあるんだ」
そんなロンドにしては対策が万全。
レオナルドは変なところを訝しんでいた。
「その脇をカバーする有能な部下でもいるのか?」
レオナルドには爆乳特戦隊がいるように──。
キョウコウにはキョウコウ六歌仙がいるように──。
ロンドもまた№9という上級GM。
下位のGMを仲間に引き込んでいてもおかしくはない。
「何人か心当たりはあるが……断定するのはちょっと難しいかもな。なにせ人脈だけならジェネシス随一のネットワークを持っていた男だ」
レオナルドは指で顎先をつまんで思案した。
艦長席の左斜め前、副官が立ちそうなポジションに、いつも通りの軍服姿で控えていた。本当、№2の立ち位置が好きな男である。
レオナルド・ワイズマン──出撃の旅に同行してくれた1人だ。
今回は制圧するにしろ殲滅するにしろ、高い攻撃力と情に流されない冷徹さを備えた戦士が求められる。その点、レオほど相応しい者はおるまい。
可愛くてしょうがない愛弟子と彼の仲間のためならば、それ以外は平然と排除できる非情さ持っている。人のいい小心者だが、割り切れる男なのだ。
参謀としても役立ってもらう。
この出撃の旅に参加するのは──総勢9名。
酔いどれ用心棒──セイメイ・テンマ。
剛宝の鉄拳児──カズトラ・グンシーン。
セイメイはレオナルド同様、大切なものを守るなら一切を躊躇わない性格。そして比類なき戦闘能力と、鏖殺に適した過大能力持ちだ。タイザンフクン陣営に穂村組の用心棒を回せるようになったので、この旅のために呼び戻した。
カズトラはツバサから指名した。
異相空間での修行で、一二を争う成長力を示したのを買っての抜擢だ。彼もまた戦闘能力に特化しているので、この旅には打って付けである。自らの過大能力に幅を持たせることにも成功したので、そこも期待している。
それともう1人──穂村組“爆肉”セイコ・マルゴゥ。
蓬髪で丸顔の童顔ながら、岩山のように隆々とした巨漢の持ち主。
バッドデッドエンズに襲われながらも生き残り、命冥加にも生還を果たした猛者である。先日、彼も異相空間でツバサやバンダユウに稽古を付けられ、見事にLV999へ昇格した。
彼はバンダユウからの推薦だった。
『大恩ある四神同盟の用心棒、穂村組として喜んで引き受けよう……だが、やられっぱなしってのは性に合わねえ。連中とやり合うのが目的の旅ってんなら、ウチからも1人でいいから連れてってくれねぇか?』
必ず役に立つはずだ、と推されたのがセイコである。
ツバサも異相空間での修行で1年近く付き合ってみたが、裏表のない好青年だとわかったので快く了承した。無論、その比類なき戦闘能力と、戦いにおいては私情を挟まない性格を見定めた上である。
そして――セイコは肉弾戦ならば穂村組最強。
そこも判断材料のひとつだった。
この3人は艦橋の隅にある休憩用スペースのソファへ好き勝手に座り、メイドが用意したお茶菓子を飲み食いしながら寛いでいるのだが……。
「なあセイコの兄貴。『未知の探求者ダンピア』トリプってんだろ? オレっちのダブってる『最強生物の後継ジンガ』と交換してくれよ。ダンピアの強化効果があれば、デッキを新しく組み直せるんだ」
「おう、いいぜ。じゃあセイメイの旦那、『地獄の管理者ホーズキ』と『楽園の名医ハクタク』セットで、そっちの『日輪の剣豪タンジロウ』のトレードな」
「『日輪の剣豪タンジロウ』はSSレアだから、もうちっとトレードのタマがほしいが……2枚あるからいいか。おっ、『龍女中トォール』持ってんのか? それ付けてくれねえか? もう1枚『不死身の兵スギモト』つけるからよ」
……トレーディングカードの交換会を始めていた。
現実世界で根強い人気があった『遊覇王トレーディングカード』。
アルマゲドン時代にコラボしており、仮想空間内のあちこちで入手できたのだが、こちらの世界に来ると実体化して道具箱に収まっていた。
カズトラとヨイチが熱心に集めているのは知っていたが、何気にセイメイも集めており、セイコもバインダーにファイルするほどの蒐集家だった。
仲良くやっているなら結構──。
ハトホルフリートはゆったりした速度で空を征く。
操舵輪を握るのはハトホル一家の長男、ダイン・ダイダボット。
長男を補佐するのは次女にして彼の嫁、フミカ・ライブラトート。
ダインは愛妻の助言でコートこそ綺麗に仕立て直したが、相変わらずの蛮カラサイボーグといった出で立ちだ。サイボーグ部分は見た目こそあまり変わらないが、内蔵された兵器や駆動系は大胆なチューンナップをしたらしい。
フミカもエジプシャンな踊り子風衣装だが、以前よりも被覆率というか布面積が増えた、やや大人しめのものになっていた。それでも十二分にセクシーだが……仲良くなったハルカに仕立て直してもらったのだろう。
もう、意中の彼を振り向かせる必要はないから──。
ハトホルフリートを出す以上、この旅にダインの参加は決まっていた。
『ダイちゃんが行くならウチも着いていくッス!』
だからフミカは異相空間での修行を自ら志願して、ダインと同じLV999までのし上がったのだ。見上げた内助の功である。
ダインは操船と艦内システムのチェックに集中していた。
いつもなら艦内システムの管理はフミカの仕事なのだが、フミカは探知系や感知系の技能を総動員させ、周辺の地理状況をモニタリング中だった。
──LV999が隠れていても見逃さない。
こういった作業においてはフミカ&アキの分析系姉妹に勝る者はいないので、やっぱり彼女にはLV999になってもらって正解だった。
仕事に専念するダインとフミカに、メイドさんがお茶を運んでくる。
「お、すまんのぅクロコさ……おっと、違ったんじゃったな」
「あ、ありがとうッスクロコさ……あっ! ごめんなさいッス!」
「いえ、よろしいんですよ」
クロコ様の代理ですから、とホクトは気を悪くすることなく微笑んだ。
剛直メイド──ホクト・ゴックイーン。
筋肉美女には違いないが、あまりにも雄々しい。誰もが「北斗○拳のケ○シロウが姫カットのカツラを被ってメイド服で女装してるとしか思えない」と評する外見をしているが、彼女はまぎれもなく女性だ。
タイザンフクン陣営にて瀟洒なメイド長を立派に務めている。
この出撃の旅は、LV999に達しているのが参加条件だ。
クロコも(レオナルドがいるので)参加したがったが、彼女はまだLV980台なので渋々と断念。代わりにホクトが加わった。
……あまり修行させてないのに、素でLV上げてるんだクロコ。
レオナルドの言う通り、何をやらせても有能らしい。
メイド業務での有能さにおいては、ホクトも勝るとも劣らない。
現にこうして仲間たちの世話を焼いてくれている。無駄にセクハラや下ネタ発言をしない分、ホクトの方が有能に見えるのはツバサの贔屓目か?
……まあ、存在感は半端ないのだが。
生物学的に間違いなく女性だというのに、2m近い長身で徹底的にバルクアップしているのだ。存在感というより威圧感を放っていた。
幸か不幸か、ドンカイ並の巨体を誇るキン肉マンなセイコがいるため、まだスマートに見えるが……筋肉量ならこの中で2番手である。
見掛け通り肉弾盾な彼女には、攻守ともに活躍を期待できそうだ。
しかし、エロメイドの代理は筋肉メイドか……。
まともなメイドはいないの!? と心の中でツッコんでおこう。
この9人で、しばらく旅をする。
ハトホル国を出て数時間、まだバッドデッドエンズの影はおろか、他のプレイヤーや未知の現地種族にも出会していない。
初日は空振りに終わるかな──と思っていた矢先のこと。
フミカの制御盤から警報音が鳴り響いた。
「4時の方角に高エネルギー反応確認ッス! これは……ッ!?」
フミカが大声を上げた瞬間──艦は炎に包まれた。
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