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第13章 終わりで始まりの卵
第304話:比翼連理は離れない
しおりを挟む「ミロは……羽鳥家で引き籠もるようになりました」
先述した通り、ミロはほとんど羽鳥家で寝起きしていたので彼女の部屋が当然のようにあり、そこへ閉じ籠もってしまったのだ。
ミロは飲まず食わずで布団に籠もり、部屋から出ようとしない。
ツバサだけは部屋への出入りを許されたものの、「君原ん家から来た奴は絶対に入れないで!」と繰り言のように頼まれた。
まるで自分の家族を憎き敵のように吐き捨てて……。
3日後の夜──やつれた美香子が訪ねてきた。
会長である重蔵を始め、君原グループの幹部ほとんどが入院する異常事態となってしまったため、まともに動ける役員は彼女しかいない。
会長たちの入院の手続き、グループ内の混乱の取りまとめ……。
この3日間、寝ずに忙殺されたしい。
疲労の色は濃かったが、ミロが心配なので顔を出してくれたのだ。
まず一昨日の件は“事故”として処理したという。
後日聞いたところによれば「君原のお屋敷が突然倒壊、集まっていた幹部たちがそれに巻き込まれた」という態にしたらしい。
まさか大の大人が何十人もいて、中学校を卒業したばかりの女の子1人に重傷を負わされたなどと口外できるわけもなく、彼女の暴れた原因が重蔵のワンマン経営な結果と、横暴すぎる後継者指名と知れれば体裁が悪い。
それでなくとも重蔵はやり過ぎていた。
経済界には君原グループの強引な手法を嫌った企業も多く、あくどい手で泣かされた者も少ない。これをチャンスと責め立てられる可能性もある。
なおかつ、重蔵を初めとした君原グループの幹部たちに大怪我を負わせたのが、その総帥の娘だと知られたら……。
どれかひとつが醜聞として広まっても致命的だ。
君原グループのためなら裏では汚いことも平気でやっていた重蔵だが、社会的にはクリーンなイメージで通していた。しかし、ミロの件がバレれば家庭を顧みず、子供の意志も尊重できないクソ親父だと芋づる式に知れ渡る。
事件の真相を表沙汰になれば、君原グループの尊厳が損なわれてしまう。
隠してきた非道な行いも明るみにされるかも知れない。
だから偶発的な事故として隠蔽した。
……というのは、重蔵たちを納得させるための建前である。
事故として処理したのは美香子の一存だった。
「美香子さんはミロを……娘を守りたかったんです」
事故のせいにして、ミロに罪が及ばないよう庇ったのである。
元はと言えば美香子が「やめましょう」と反対したのに、「あの子には統率者の資質がある」と重蔵が思い込みだけで決定し、ミロが「ヤダ!」と拒んだにも関わらず強行した結果だ。
これは美香子なりの罪滅ぼしだった。
『重蔵は……大切なことを忘れてしまったみたい』
あの子の想いを尊重すべきだったのに……美香子はさめざめと嘆いた。
嘆く母親の姿に、ツバサは胸を打たれたのを覚えている。
『グループを大きく、組織を強く、事業を拡大……そういった野望に囚われた重蔵は全部が全部、自分の手腕で取り回せると驕っていた……実の娘の気持ちさえ汲み取れないほど眼が曇ってしまってたんです』
息子もそうだが、取り巻きがイエスマンばかりなのも災いした。
上の息子たちがあまりにも従順だったから、末娘のミロも自分の言うことを素直に聞くはずだと手前勝手に信じていたのだ。
『ろくにかまってやったこともないくせに……美呂は自分の思い通りになると思い込んで……わたしは、あの子の奔放さをよく知ってたから……』
親子喧嘩になるのは想定の範囲内だったという。
『まさかあんな大災害になるなんて……』
想定外すぎて美香子も気持ちの整理が追いつかなかったそうだ。
美香子は部屋に引き籠もったミロの様子を見ようとしたが、「ツバサさん以外誰も入るな!」という娘の剣幕に、ただ従うしかできなかった。
ミロは君原家の人間を例外なく拒絶した。
唯一の味方だった美香子さえ拒むようになってしまったのだ。
『重蔵を止められなかった、母親も同罪なんです……』
美香子は悲しげに羽鳥家を後にした。
家族とともに崩壊してしまった君原家へと……。
1週間後――意識を取り戻した重蔵はある決定を下した。
『後継者は、太蔵……健蔵は、その補佐を務めよ……』
ミロに関しては完全ノータッチ。
まるで最初からいなかったもののように、一言も言及しなかったという。美香子が恐る恐るミロについて尋ねると、包帯だらけの頭から垣間見せる眼が見たこともない怪物に襲われたかのような恐怖に戦いていたという。
震えが止まらない舌の根でどうにか言葉を紡いだそうだ。
『あの娘は……バケモノだ……私の手に、負えない……』
これが事実上の勘当宣言だった。
以後、重蔵は決してミロに関する話題を口にしなくなった。美香子がミロについて匂わせると、押し黙るようになったという。
2人の兄も、ミロを話題にすると脅えるようになった。
自分たちが会長職を継ぎたくないばかりに、ミロをあそこまで怒らせてしまったと悔いながら、彼女に精神的な敗北を認めたらしい。
ミロの覇気に当てられたのだ。
「事件の後、俺は美香子さんに限らず、健蔵さんや太蔵さん、それに……重蔵さんともお見舞いに行って会いました。彼らは『すまない』と謝るばかりで……きっと俺にミロを押し付けたと思って悪びれていたんでしょう」
しかし、ツバサにしてみれば渡りに船。
ミロは死に瀕したツバサを救ってくれた天使である。
家族を失って生きる希望を見失ったツバサを「家族になる!」という力強い約束で絶望から救い上げ、未来へ進む力を与えてくれた愛しい伴侶。
そんな彼女を任されたのだ。
今までも両家公認の許嫁みたいなものだったが、この一件によって君原家の中では「美呂は翼くんに任せる」という暗黙の了解となったらしい。
ミロが心配で足繁く訪ねてくる美香子からも「ウチの子をお願いね……」と会う度に何度も頭を下げられた。
ミロのことを愛して愛して仕方ないツバサからすれば、本心から「はい喜んで!」と答えられるほどの幸せだった。
なにせ、ツバサにとって“たった1人の家族”なのだから……。
今にして思えば──ミロも同じ想いだったのだろう。
父親も兄弟も、そして母親までもが会社に夢中で自分を見てくれない。
ミロは「アタシは捨てられたんだ」とよく嘯いた。
だからこそミロは自分を見捨てた君原家の面々を見限り、実の兄弟よりも兄として慕い、1人の男性として愛したツバサが家族を失って打ちひしがれた時に「家族になる!」と約束してくれたのだ。
家族を失った青年と家族に見捨てられた少女。
元より相思相愛だった2人がより強い絆で結ばれたのは自然の流れであり、片時も離れられない比翼連理の仲になるのは当然の帰結である。
こうして――ツバサとミロの蜜月が始まった。
ミロは基本的に部屋に引き籠もってニート生活を堪能し、ツバサは普通に大学へ通っていた。現実にいた頃からオカン系男子だったツバサは、炊事に家事に洗濯を怠ることなく、甲斐甲斐しくミロの世話も焼いた。
朝晩はミロと一緒にバランスを重視した手料理を食べさせ、自分が大学に行ってて不在のお昼にはお弁当の用意も忘れない。
週三で部屋から連れ出し、運動不足にならぬよう心掛けもした。
(※インチキ仙人の練習を受けたのはこういう時)
ぶっちゃけ、世話ならミロが幼稚園に上がる前からやっていたのだ。
手のかかる可愛い妹なので苦にもならない。
ミロは引き籠もりニートとなって、部屋でゲームやアニメに耽ったり、漫画やラノベを読んだりと、日がな一日好き勝手に過ごしていた。
君原家の騒動で、ミロは心に深い傷を負っていた。
しばらくは療養と思って、好きにさせてやることにしたのだ。
(※生活費に関しては、ツバサ自身は皮肉なことに両親の保険金が大学卒業までやっていけるだけの額があり、ミロに関していえば美香子さんから毎月ミロの世話賃として少なくない額をいただいていた)
ただし――期限は1年。
その1年後にアルマゲドンが発売、異世界転移に巻き込まれる。
「どちらかといえばアウトドア派なミロが引き籠もりになったのは、君原家の人間に会うことを恐れたからでしょう。いや、彼らに会うというより……」
彼らに出会した後――暴走する自分を恐れた。
前回は重傷を負わせるに留まったが、再び重蔵や兄弟たちの顔を見たら、今度こそ息の根を止めてしまう……ミロが恐れたのは最悪の結末だった。
理性では「いけない!」とわかっている。
だか、積年の寂しさを裏切られ、そこから芽吹いた激怒の大輪がまだミロの心中に咲き誇っていた。怒りの徒花は未だに枯れてない。
クソ父親に会ったらコロス、バカ兄貴たちに会ったら生かして帰さない。
美香子ママ……だけは見逃してあげる。
感情のない顔でミロはそう言ったものだ。
理屈ではわかっていても、気持ちが抑えられないのだろう。
その惨劇を回避するため、自ら引き籠もっているようにも思えた。
さもなければ、一時たりともジッとしていられる性分でない、鉄砲玉みたいな娘が部屋に閉じこもるわけがない。
「ミロはずっと……心の片隅で期待していたんです」
「……………………」
いつか君原家のみんなと仲良くできる日を――。
ミロは「アタシは捨てられた」と自嘲するものの、まだ重蔵や2人の兄、そして忙しいながらも気にかけてくれる美香子に一縷の望みを託していた。
その希望は──踏み躙られた。
ようやくミロに振り向いてくれたかと思えば、家族の一員として見られたわけではなく、会社を盛り立てるための神輿としての価値しか見出さない。どれだけ自分の意見で抵抗しても、こちらの話にはまったく耳を貸さない。
「君原家の人間は……ミロを家族として見てくれなかった」
ツバサの胸の谷間、そこに埋もれたミロが呻いた。
「あたしの家族はツバサさんだけ……そして、ハトホル一家だけ……」
君原なんて知らない、とミロは黙ってしまった。
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「……これが、ミロの引き籠もった理由です」
クロウやアハウといった年長者も真剣に耳を傾けていたので、ツバサは敬語を交えた解説をようやく語り終えた。
気づけば――ミロの周囲に子供が集まっていた。
ジャジャ、マリナ、イヒコ、トモエといったツバサの娘たちを始め、ミサキの妹分であるカミュラ、アハウが面倒を見ているミコ、クロウの元にいる双子のサノンとウノン、それに灰色の御子でミロを父親と慕うククリ。
ちなみに――ヴァトは不参加。
男の子ならではの照れがあるようで控えていたのだが、フミカとプトラのお節介なお姉ちゃんコンビが「行くッス!」「混ざるし!」と背中を押すが、ヴァトは「遠慮しておきます!」と断固拒否していた。
家族に見捨てられ蔑ろにされ、なのに使い道があるとわかれば当人の意思が無視されて嫌なことを強要されて……。
そんなミロの境遇に子供たちは共感してくれたのだ。
寄り添う子供たちに、ミロも大分癒やされたようである。
子供たちの優しさにツバサも感謝する。
ツバサに抱きついたままだんまりを決め込むミロに声をかけることもできないので、自然と彼女の近くに寄り添うことで慰めようとしていた。
四神同盟の子供たちが、ツバサとミロの許へ集結している。
そのことにツバサの内にある“神々の乳母”という名の母性本能が、快感にも似た多幸感に酔い痴れるが、表情だけは凜と張り詰めさせる。
一段落したところで、ミロの頭を撫でた。
今日まで隠していたこと。腹の奥底に仕舞い込んでいた鬱屈したものが吐き出された気分なのか、肩の力が抜けていた。
ミロなりに緊張していたのかも知れない。
「突発的な事故と聞いていたが……まさかミロ君の仕業だったとは……」
レオナルドが感想の口火を切った。
詮索癖も満たされたのか得心した様子である。
「ミロ君のお母様……役員である美香子さんは無事で、一時は彼女が君原グループを切り盛りしていたくらいだからね。会長以下主要な重役が全員、全治2ヶ月以上の重傷によって入院してしまったのだから……」
「……おれは詳しくないのだが」
その方面に詳しそうなレオナルドに、アハウが意見を求めた。
「こんなことがあると、その企業の株に影響が出るのではないかな? 会長が倒れただけで株価が下がったなんて話も聞いたが……」
「勿論、この事件が広まると同時に大暴落が起こりました」
急転直下の右肩下がり、折れ線グラフは奈落の底へ落ちた。
君原グループもこれまで──そう囁かれたものである。
しかし、半月もせず緩やかに復調。
2ヶ月後には以前より低いものの、水準に近い株価まで持ち直したという。
本当、そういうことは無駄に知っている男だ。
「会長の奥様である美香子さんが各方面へ誠心誠意、真心を持って働きかけたのと、それを助けるべく準幹部たちが東奔西走したため、辛うじてこの危機を乗り切ったと聞いています」
「美香子さん……」
これを聞いたツバサはホロリと涙をこぼしてしまう。
ミロの身を案ずるだけではなく、君原グループとそこに属する社員やその家族を路頭に迷わせないため、一生懸命だったのが伝わってくる。
彼女もまた――母親なのだ。
「しっかし……ミロちゃん、素で強かったんだな」
素質はあったわけだ、とセイメイはミロの実力を感心した。
この酔っ払いが杯を煽る手を休めるくらいだから余程であろう。
ミロの強さに関してはツバサが補足する。
「インチキ仙人……いや、セイメイは知ってるんだよな。斗来坊の師匠が一目見るなり『こいつは面白い』と褒めちぎったからな。俺を鍛える傍ら、遊び半分であれこれ仕込んだんだが、ミロはあまり物にできなくてな」
才能を見出した斗来坊も「あっれぇ~?」と首を傾げたくらいだ。
しばらく経って斗来坊はツバサに耳打ちした。
ミロのいないところで――。
『ツバサよ、あの子に本気を出させるな。ずっとアホでいさせてやれ』
やっとわかったよ、と師匠は警告する。
『あの子の才能は眠らせておくべきもの。本気になったら本人にも周りにも不幸でしかない。あの子は無意識に“アタシはアホです”と封じてるんだ』
あの子はアホのままが幸せだ、と斗来坊は結んでいた。
このことはツバサと師匠の内緒話。
だから、この場でも回想に留めて口にするのは控えておいた。
「それにしても――横暴なお父上様ですわね」
ホクトが腕を組み、片手を頬に添えてアンニュイに嘆息した。
199X年に世紀末を迎えた世界で救世主になれそうな雄々しいマスクとマッチョボディだが、姫カットの似合う漢女……乙女である。
「子供の気持ちなど微塵も考えず、私が絶対に正しいのだと言わんばかりに未来を押しつけてくる……まるで絵に描いたような悪い父親ですわ」
ホクトも他人事ではないのだろう。
かつてホクトは進学校に在籍しながらファッションの道を志したため、進路にまつわるすべてを教師たちに冷遇されたという。
彼女に道を拓いたのが――骸骨紳士ことクロウ・タイザン。
現実世界では名教師だったクロウは職員室の反対を自らの実績で黙らせ、ホクトが望むとおりの進路を示してあげたのだ。その後、ホクトは新進気鋭のファッションデザイナーとして大成する。
その縁から彼女は恩師に奉公するメイドとなった……らしい。
「進路かぁ……オレたちも無理強いされたなぁ」
「ああ、あったねぇ……詳しくは文庫本参照、みたいな?」
ミサキとジンの凸凹コンビも感ずるところがあるらしい。
いつも素直なミサキらしくない意地悪な笑みを浮かべ、チラリと横目をある方向へ向ける。息を合わせるようにジンもマスクの白い目を弓なりに曲げて、ミサキと同じ方向へ向けている。
その先にいるのは――。
「うううっ……ごめんなさい、あの時は本当にごめんなさい……」
ハルカが頭を抱えて縮こまり、謝罪を繰り返していた。
ミサキとジンとハルカ、この3人は現実だと同じ高校の同級生だ。ハルカは学級委員を務めていたそうだから、何かあったのだろう。
「話を聞いてみると、ちょいと行き過ぎた親子喧嘩じゃったな」
話をまとめるべくドンカイが口を開いた。
「そこまでミロ君を大激怒させたんは親父さんたちに責任がある。全治半年以上というのは同情せんでもないが……ミロ君のお母さんも切り捨てた通り、自業自得というのが否めんな。それにしても……」
ミロ君――君原グループとほぼ無縁じゃな?
そう、レオナルドが懸念した部分はまったく心配ない。
ミロもまた君原グループに振り回された被害者。もしもグループに私怨がある者が現れたら、喜んで意気投合するはずだ。
何より、現実世界が滅んだ今となっては今更である。
君原グループを始め、多くの企業が潰れているのだから……。
「ホムラがミロを目の敵にしていたのは、君原グループという肩書きが原因かも知れないが……あのやりとりを見るに反りが合わなかっただけだろう」
ツバサは嫌味を帯びた眼差しでレオナルドを見据える。
「おまえは大義名分を振りかざして正当化しようとした詮索癖は、蓋を開けてみればミロのプレイバシーを侵害して終わったわけだ」
「うっ、む……その点については、誠に申し訳ない……」
重く受け止めたレオナルドは、誠意を込めて深く頭を垂れてきた。
ちゃんと反省する、この男の美徳である。
「そんなわけで――君原グループ絡みでトラブルが起きることはない」
君原の名に怒りを覚える者があれば、ミロはそいつを「ナカーマ♪」と歓迎するはずだ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと重蔵の娘であるミロを恨むなら、ツバサが完膚なきまでに叩き潰してやる。
君原の名に媚びを売る輩ならば、ミロが不機嫌になって潰すのみ。
どう転ぼうとも、君原とは無関係で押し通すだけである。
「ホムラとの件は……ミロ、おまえが何とかしろよ」
ツバサは縋り付くミロの背中をポン、と叩いた。
ビクリ、とミロの小さな体が震える。まるで怯えているみたいだ。
こればっかりは当事者同士で確執を解きほぐしてもらうしかない。
穂村組との協力体制を敷いていくならば尚更だ。
ミロの過去話に終始して、仮初めの祝勝会はしんみり幕を閉じた。
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結局、後片付けまでクロコたちに任せてしまった。
ジンやホクトが手伝ってくれたから助かった。
オカン系男子の性、こういった宴会の後始末は自ら率先してやりたくなるツバサなのだが、今日はいつもに増してミロがしがみついて離れない。
ミロの引き籠もった経緯を知った面々は、ミロの思い出したくない記憶を掘り返した詫びも込めて「いーからいーから」とツバサに家事をさせず、ミロをひたすら甘やかすように勧めてきた。
その申し出に甘んじたのだが……。
「ミロ、いいかげんにしろ。そろそろ離れなさい」
ツバサが自分の部屋に戻ってきても、ミロは離れようとしなかった。
両手は爆乳にしがみつき、両足はカニ挟みの要領で細い腰をくわえ込み、ツバサの身体にしっかと抱きついている。
「……………………」
ミロは返事をしない。
普段の饒舌な彼女からすれば、信じられない黙りだ。
ホムラとの喧嘩が尾を引いているのか、君原家の因縁話が堪えているのか、あるいは両方という線もある。こんなミロはなかなかお目に掛かれない。
引き籠もりになった頃を思い出すな、とツバサは苦笑する。
大きな赤ん坊を世話するつもりでやろう、と今日ばかりは諦めた。
「……はぁ、わかったよ。今日はとことん甘やかしてやるから、機嫌を直すんだぞ。おまえが静かだと家の中まで火が消えたみたいになるんだからな」
良くも悪くもムードメイカーなのだ。
「さて、寝る前にお風呂くらいは済ませないと……」
「…………お風呂」
風呂と聞いたミロがピクリと反応した。
ツバサが「お?」と思っていれば、腰をつかんでいた両足をほどいてこちらの前に立つ。両手も胸から離れたがジャケットの胸元は掴んだままだ。
いきなり――その胸元がはだけられた。
ジャケットを破る勢いで開かれると、特大のLカップブラジャーが力任せに引き千切られる。まろびでるのは神々の乳母の爆乳、ダプン! とかドムン! などと重そうなオノマトペが似合う重々しさで揺れている。
弾んで踊る爆乳、そこへかかる重力にツバサは息を呑む。
「な……ッッ!?」
いくら密室で2人っきりだろうとも、突然こんなことをされれば困惑するよりも赤面してしまう。次いでミロを叱りつける怒鳴り声が迸る。
――はずだった。
虚を突かれたツバサは、ミロに先手を打たれてしまった。
ミロは左乳房に顔を押しつけて、その先端にある敏感な部分を絶妙な痛さで甘噛みしつつバキュームのように吸い上げる。左の乳房はミロの右手で掴まれ、まるで牛の乳でも搾るかのように激しく揉みしだかれる。
胸は蜜より甘い快楽を湧かせ、背筋を痺れさせる快感が這い上がってきた。
「ミ、ミロ! こ……らぁ! んんっ、ダメ、待っ……くふぅ!?」
大きな胸は感じにくい、と誰が言ったのだろう。
少なくとも、大地母神となってしまったツバサの爆乳は感度抜群であり、こうして吸われたり揉まれたりすれば、腰が砕けそうな快感に襲われる。
ほんのちょっと刺激されただけだ。
なのに、女神の乳房は子供に請われたら断れないかのように、ハトホルミルクを止め処なく噴き出した。唇を添えてミルクを啜られると、新たな気持ち良さに全身が震え上がる。足腰を支えることさえ難しくなってきた。
それを察したミロは押し倒してくる。
抵抗できないツバサは、後ろにあった子供たちと同衾できるキングサイズのベッドへ寝転がる。ミロは乳房にむしゃぶりついたまま覆い被さってきた。
「な、なんでいきなり、こんな……ミロ、お……うぅん!」
雰囲気も情緒もない――唐突すぎる欲情的な行為。
さしものツバサも理解が追いつかず、もうすぐ女神の身体になって一年経つというのに、未だに女性の快感の凄まじさに男心が翻弄されるばかり。
甘やかすと言ったから、甘えているだけか?
赤ん坊みたいにおっぱいにむしゃぶりついているだけだ。
そう思おうとしたが無理な話だった。
右乳房に吸い付いた唇の強弱、歯を使った甘噛み、テクニカルな舌の動き。左の乳房からハトホルミルクを噴水のように搾る牛の乳搾りみたいな手付き。
明らかにツバサを性的に昂ぶらせようとしている。
「ミロ待て! やめ、な……ひぅぅぅぅ、んんんっ……っは!」
更なる追い打ちが掛けられた。
ミロは片膝を上げ、仰向けに倒れ込んだツバサの股間に押し当てる。
その膝を絶妙なバイブレーションで震動させてきた。
ズボンやショーツ越しだろうとお構いなし、その震動はまだ女性としての経験が浅いツバサには到底耐えられないものだ。
ツバサは反射的にベッドのシーツを握り締める。
「はぁ、んんっ…………あっ、くぅぅぅぅぅ……ぁぁぁ、んくぅんッ!!」
軽い絶頂感が背筋を走り抜け、女の嬌声がツバサの喉から漏れる。
ブシッ! と粘り気のある飛沫が噴く音も聞こえた。それは両方の乳房から噴いたハトホルミルクか、もっと下からあふれたものか……。
この女神の身体になって――もう1年になる。
ミロから女性同士の愛し合い方を仕込まれただけでも恥ずかしいのに、過大能力で少年になれるようになったミロによって、愛しい男に抱かれる女の快感まで教え込まれたのだ。
それでも――この猛毒のような快楽には馴染めない。
きっと口元の緩みきった、だらしない顔をさらしているはずだ。
軽く達しただけだというのに、表情筋はおろか全身に力が入らないほどの幸せな脱力感に見舞われる。こうなるとミロにされるがままだ。
悪夢から覚めた後みたいな浅い呼吸を繰り返す。
我を取り戻そうとするのだが、そんな猶予は与えられない。
「ッッ!? ちょ、ま……休ませ……うああっ! はぁ、んんッ!?」
今度は両方の乳房を荒っぽい手付きで揉まれる。
今ので固くそそり立ってしまった乳房の突端を執拗に揉まれ、ハトホルミルクがいやらしい音を立てながらあふれている。ツバサの胸といわずお腹や顔まで真っ白に濡らすほどだ。
乳房の肉も徹底的に揉みしだかれ、皮下脂肪の奥にある乳腺を刺激される。
そんなことをされたら――。
「ダメッ、それ以上やっ……ミルク、止まらなくなるぅ!?」
真っ白い乳の噴水が幾度となく噴き上がる。
ミロはこぼれたハトホルミルクを舐めながら動き出す。
胸から腹、下腹部へ流れるように舌を這わせていくのだが……。
「おまっ……ッ! う、うそ……はぁぁ……んんっ!?」
口と歯と舌で器用にツバサのズボンはおろかショーツまでずり下げ、もう濡れそぼっている秘所を露わにしたのだ。
ツバサは赤面した顔を重ねて真っ赤にするくらいの羞恥に囚われる。
いつものミロならば乙女のように恥じらうツバサの表情を盗み見てから言葉責めの10や20を繰りつつ、もうできあがった秘所を責めてくるはず。
「………………………………」
だが、ここでもミロは無言を貫いた。
乳房からハトホルミルクを搾り出す愛撫の手を休めず、舌の先を尖らせて長く伸ばしてくると暖かい湿潤。そこを念入りに舐め回す。
ミロは遠慮することなく奥の奥まで舌を届かせてきた。
時間にして1分か、それとも5分か10分か。
まだ慣れない女の快感のせいで時間感覚が狂ったツバサには、どれくらい堪えられたかわからない。だが、2度目の絶頂はすぐに訪れた。
「あああ、やだ、そんな奥まで……ふぁ……くぅぅぅぅぅぅッ!」
女らしい声を上げたくなくて、必死で苦悶の声にする。
それさえも可愛げに聞こえてしまう。自分の声なのに他人みたいだ。
シーツは最初に達した時から掴みっぱなし。浮かせた腰をビクンビクンと痙攣させて、またしても飛沫をまき散らす音を響かせた。
ハトホルミルクも秘所を濡らす愛液も、酷いことになっている。
男と違って女性は何回もイケるという……これも個人差があるのだろうが、ツバサの場合は連続して達すると快感が何乗倍にもなっていく気がする。
とてつもない幸福感で思考力もガタ落ちだ。
何をされても無抵抗、ミロにとって最高の玩具である。
「…………あっ、はぁ、んんっ、くあ……んは、くくっ、んんんっ……」
知らず知らず、リズミカルな喘ぎ声を刻んでいた。
いつの間にか裸に剥かれたツバサは、ベッドをギシギシと軋ませながら揺れ動いていた。波打つ自分の爆乳がおぼろげな視界に映っている。
快感に酔った視線をずらせば、裸のミロを認めることができた。
ミロは裸にしたツバサの左足を大きく開いて爪先が天井を指すように持ち上げると、自分も全裸となってしがみついていた。鍛え上げた筋肉と、女性の皮下脂肪によって太くなってしまった太股にだ。
ツバサの開かれた股間に、ミロの秘所が滑り込んでくる。
小さな身体をめいっぱい動かして、お互いの敏感な部分を一心不乱に重ね合わせている。それがリズミカルな喘ぎと快感を引き起こしていた。
こういう体位は“松葉崩し”というんだったけ……。
神族でも脳内麻薬といわれるエンドルフィンを分泌するのだろうか? だとしたら過剰摂取もいいところの快楽漬けな脳みそでぼんやり思い出す。
「…………ッッッあ! はあああああっんんんんっ!!」
「………………っんんんあっ!」
不意打ちみたいな3度目の絶頂を迎え、ツバサは絶叫めいた声を上げた。
同時に、ミロも達したような声を漏らす。
解放された左足を下ろして仰向けになるツバサ。
その上に、ミロが乳房を枕にするようにして倒れ込んできた。
「…………んだ」
ツバサが快感を打ち消そうと頼りない理性に言い聞かせて深呼吸を繰り返していると、ミロも荒い呼吸をしながら何事かを呟いていた。
「……シんだ……タシのだ……アタシのだ……ツバサさんは……」
――ツバサさんはアタシのものだ。
ミロの繰り返す文言が聞こえた瞬間、ツバサは我に返って理解する。
かつてないくらいミロが不機嫌な理由――。
悪友であるホムラとの再会ではない、ホムラが君原の名を何度も口にしたからでもない。君原家で起きたことを明かしたからでもない。
ミロは――ホムラの視線に怒っていたのだ。
ホムラがツバサを見る眼。
あれは慕情では片付けられない想いが込められていた。
ツバサもそこまで鈍感ではない。
ホムラが自分を見つめる瞳に思いの丈を乗せていたことには気付いていた。思い返せば、アシュラ時代から妙に懐かれていたように感じる。それは慕うというより恋する乙女のような……。
あれ? おかしくないか?
アシュラ時代、ツバサはれっきとした男性で通していた。
ホムラは外見こそ少女然としていたが、本人はあの頃から美少年というか男の娘を気取っていたのだろう。
そんなホムラが――ツバサを恋する瞳で見つめていた?
ちゃんと考えれば危ない正解を導き出せたが、駆けつけ三杯のようにミロから愛されて快感の渦に溺れた今のツバサには難しかった。
だが、ミロの不機嫌な理由をわかってやれた。
『――他の奴がツバサさんに色目を使った!』
『――よりにもよってホムラが! 散々アタシをイジメてきた奴が!』
『――ツバサさんもあいつを知ってた! しかも何だか仲がいい!』
ホムラへの嫉妬とツバサへの独占欲。
これがミロを押し黙らせるほどご機嫌斜めにした要因だった。
「ミロ……おいで……」
快楽の熱に浮かされたまま、ツバサはミロを抱き寄せる。
そして、慈母の微笑みでそっとミロに囁いた。
「大、丈夫……俺は……ミロの、ものだから…………」
愛しい家族が増えようとも、守るべき庇護者が増えようとも――。
「俺の……最愛の伴侶はミロ……おまえだけなんだから……」
嘘偽りのない心からの本音だった。
雌雄のつがいが一体となって空を飛ぶという鳥――比翼。
根元は別々だが幹や枝が仲睦まじく絡み合う樹――連理。
ツバサとミロは比翼連理――決して離れない。
「俺が家族を失った時はおまえが……おまえが家族を見限った時は俺が……互いに誓い合っただろ……俺たちは比翼連理だと……」
こくん、とミロが頷いた。
ミロは先ほどまでのように、またツバサの胸の谷間に顔を埋めていた。
グスッ、と鼻をすする音がする。きっと涙目なのだろう。
「わかっている……でも……ホムラが!」
「君原が絡んでたからな……おまえがムキになるのもわかるよ……」
大丈夫、とミロの背中をポンポンと叩いてやる。
「俺がミロじゃない奴に靡くことなんてないから……」
「うん、わかってる……ツバサさんがアタシを一番に愛してくれることも……他の男の子や女の子には目もくれないことも……」
ミサキちゃんは怪しいけど……と恨み節を忘れない。
あれは愛弟子にしたいのであって他意はない――他意はない、決して。
「わかっているけど……わかっていても、止まらないの」
もっとツバサさんを――確実にミロだけのものにしたい。
じゃないと安心できない、とミロは言う。
「だから、アタシから絶対に離れられないようにしてあげる……アタシとの愛の証ができれば……ツバサさんはもーっとアタシを愛してくれるよね?」
アタシから離れられないよね? とミロはしたり顔だ。
嫌な予感に寒気を覚えるまでもなく、ミロは過大能力を使っていた。
過大能力――【真なる世界に覇を唱える大君】
意のままに次元を創り変える――万能に等しき能力。
その能力で一時的に自分の性別を、正確には性器のみを作り替えたのだ。ツバサの秘所に押し当てられたミロの股間が、力強く盛り上がってくる。
この時点でミロの意図がわかった。
駆けつけ三杯な百合行為は前戯に過ぎない。
――本番はこれからだ。
「え? ミロ、ちょっと待って! もう3回もイッて……ひっ!?」
「あんなの、女の子同士のお遊びでしょ?」
ミロとツバサの夜はこれからだよ♪ とミロは満面の笑顔で告げた。
彼女の股間からそそり立つものは、ツバサが男だった頃よりも明らかに大きいが、不思議と少年に見立てたミロに不釣り合いではなかった。
狼狽えるツバサを余所に、ミロは嬉々として準備する。
筋力まで男勝りに上がったミロは、ツバサの両足を掴むと無抵抗なのをいいことに左右に広げながら持ち上げ、M字開脚させていく。
濡れた秘所どころか、愛液の滴る股間の下、お尻の穴まで覗けそう。
この体位は“まんぐり返し”だったか……。
現実逃避したいのに、自分の情けないポーズが嫌でも眼に入る。
初夜を迎える花嫁にように羞恥心が振り切れたツバサの戸惑う表情を、ミロは舌舐めずりで見惚れている。まるっきりエロ親父だ。
無防備にさらされたツバサの秘所に、ミロのそそり立つ先端が宛がわれる。
「今日こそ……ツバサさんの胎内に赤ちゃんをッッッ!!」
「い、いやだ! まだ心の準備が……いやあああああああああああああああっ!」
夜が明けるまで、ツバサの嬌声が鳴り止むことはなかった。
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