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第10章 天梯の方舟と未完の巨神
第242話:遺跡を守る妖精
しおりを挟む──スプリガン。
イングランド南西部のコーンウォール州で言い伝えられる妖精の名前だ。
人間よりも小柄で、極めて醜い姿をしているという。
イングランドの妖精は悪戯好きで有名だがスプリガンもその例に漏れず、「自分の子供と人間の子供を取り替える」「焼けた石を投げつけてくる」「人間に関節炎を起こさせる」「嵐を起こして農作物を枯らす」等々、場合によっては被害甚大な災いをもたらすことさえある。
しかし、彼らは妖精の社会において頼もしい役目を担っていた。
スプリガンは環状列石や古代の砦、古代の遺跡に財宝の埋蔵地、そういった場所に棲み着き、これに近付こうとする人間を追い払おう。
または妖精たちの暮らす妖精郷の護衛人でもあり、妖精に危害を加えようとする人間を撃退する。二度と妖精たちに悪さをしないように、ちょっかいを出してきた者をこっぴどく酷い目に遭わせるという。
スプリガン特有の能力は身体の大きさを自由に変えることであり、小柄な姿から巨大化して見上げるほどの巨人になれるのだ。
これは怒りによって肉体を巨大化させるとも伝えられている。
彼らの守護る財宝を狙ったある人間は、雷鳴を轟かせる大嵐を起こした何百ものスプリガンが全員巨人となって襲いかかってきたので、二度とその場に近付くことができなくなってしまったという。
スプリガンとは──妖精たちの守護者でもあるのだ。
~~~~~~~~~~~~
「……スプリガンは水を嫌うため、もしも襲われたら海や川や湖に飛び込めば助かるかも知れない。もっとも、水中にも危険な妖精はたくさんいるが」
フミカから即興ながらも教えてもらったスプリガンについて知識を、ツバサは誰に聞かせるでもなく復唱した。
我らはスプリガン──ブリカと名乗る女性はそう言った。
聞いたことのある種族名だったので、フミカに問い合わせたらやはり妖精の名前だった。それから詳細を説明してもらったのである。
「うにぃ……メカっぽいから錆びちゃうのかな?」
ツバサもたれかかったミロが、気怠げにその独り言を拾う。
ミロの過大能力は万能といっても過言ではないが、その代償として極度の疲労を強いられる。以前に比べればマシになったとはいえ、次元の裂け目を塞いだのでお疲れモードなのだろう。
甲板に立っているツバサの胸に縋りつき……というか、おっぱいにしがみついて寝ぼけ眼でボーッとしていた。気を抜けばすぐにでも寝落ちしそうだ。
ツバサの乳房を揉んでいるのは無意識の成せる業か──。
「会ってみればわかるだろう」
日に日にテクニシャンになっていくミロの愛撫に、唇を噛めば我慢できるようになったツバサは、現れようとする方舟を見つめていた。
ミ=ゴの戦艦を追い返して──小1時間ほど。
カンナの情報処理技能による探索、ダインの飛行母艦のレーダー機能での索敵、レオナルドの過大能力を使った空間操作での調査、ツバサの過大能力で地域一帯の自然を掌握しての探知。
それらを駆使して、残敵がいないかを徹底的に調べた。
念のためバリー、カンナ、クロコの3人には周辺空域を巡回してもらい、ミ=ゴの艦載機の取りこぼしがないかを確認してもらった。
結果──残機はゼロ。
ツバサの創り出した極大の太陽球。
それをミロが覇唱剣を変型させた特大ゴールデンバットで打った、あの合わせ技は次元の裂け目を封じるだけではなく、ミ=ゴの差し向けてきた艦載機たちも1機残らず撃墜していたらしい。
そんな目論見もなくはなかったが、ちょっと高出力だったらしい。
残党の掃討を済ませるまでもなく安全は確保された。
それから方舟と通信を繋げたままの艦橋から、メインモニターをテレビカメラよろしく繋げてブリカを呼び出し、「出てきていい」という旨を伝えた。
その際──あちらのカメラを覗く者たちがいた。
年の頃ならツバサの娘たちと同い年。
ジャジャくらい幼い娘もいれば、フミカほど成長した女子高生っぽい少女も見受けられるが、どの娘もブリカのようにメカニカルな感じだった。
女性だけの種族なのか? しかも機械化している?
すべてが機械的というわけではなく、有機的で人間っぽい部分も目立つ。
敢えて例えるなら――人造人間に近いような気がする。
スプリガンのイメージが伝承とかなり異なる気もするが、ツバサが自分で言ったとおり「会えばわかる」はずだ。
こちらの了解を得たブリカは方舟の隠蔽モードを解除した。
ハトホルフリートの後方、青空の一部が歪む。
マリナが「シャボン玉みたい」と例え、ダインが「ダマスカス鋼のようじゃ」と評した、空間を滲ませる独特の歪みが浮かんでくる。
それはやがて方舟の形を取り、表面に浮かんだ歪みは船首から剥がれるように鏡めいた破片を撒き散らして次第に全貌を現す。
あの歪みは視覚化された結界──自己隠蔽能力に特化したものだ。
そして、装甲で鎧われた方舟が姿を現す。
スプリガンがいうには“環状列石”という名前らしい。
出現した方舟に合わせて、ハトホルフリートも回頭する。
180度反転した飛行母艦は、方舟とすれ違うように船体を並べていく。
程良いところで肩を並べて互いの船を停止させた。
ツバサたちは甲板で方舟側の客人を迎え入れる。
方舟に連絡したところ、ブリカから「新しい神族である貴君らを是非とも方舟に招待させていただきたい」という申し出があり、そのお招きを喜んで受けると使いを寄越してくれるとのことだった。
その使いを、こうして甲板で待っている。
方舟に出向くのはツバサ、ミロ、レオナルド。
ツバサとミロが代表なのは言うまでもない。
レオナルドは灰色の御子が現世で設立した結社であるジェネシスの一員として、是非とも同席させてほしいと願い出てきたからだ。
「すまないな、俺まで同席させてもらって」
謙遜した口振りのレオナルドに、ツバサはミロを構いながら答える。
「今更だな。灰色の御子との面会──おまえが今回の遠征に付いてきた理由はそれだろう。言い出さなくても同席してもらうつもりだったさ」
「だとしても、謝辞を述べておくのが社会人だよ」
さすが社会経験を積んだ大人の男である。
しかも、異世界転移の直前まで真っ当に会社勤めをして、二十代の若さで幹部級の重役に引き立てられた才人だ。もしスプリガンたちに厄介な交渉を持ち掛けられたりしたら、交渉役を頼めるかも知れない。
参謀にして軍師──自らが標榜する役所に相応しい男だ。
方舟に出向く面子はあと2人、工作者のダインとジンだ。
この2人が志願した理由は「方舟の被害状況を詳しく知りたい。許されるのなら即修理したい」という、工作者らしいものだった。
その情熱を買い、お供として付いてきてもらうことにした。
マスクの変態と蛮カラサイボーグは肩を並べて方舟を眺めており、気になるところを指差して修理の見積もりをしていた。
必要になりそうな工具を両手に構えてフライング気味だ。
「まず外装を引っ剥がすじゃろ? んで、可能なら新品の外装を用意して外装下の構造を把握しつつ、新しい外装を貼りつけて……いや、その前に船体の歪みを直す必要があるがか? 竜骨に相当する部分が無事ならええんじゃが……」
「乗ってる人のことを考えたら、内装も同時進行がいいんじゃない? モニターを見る限りじゃ艦橋もろくに整備されてなかったし。いっそのこと、新造するつもりで分解して一から造り直しちゃう?」
大規模な改装だろうと、サラッと言ってのける工作者2人。
目を離した隙に修理を始めていそうで怖い。
最悪の場合、原形を留めない新しい戦艦ができあがっているかも……。
人はそれを魔改造という。場合によっては傍迷惑極まりない。
スプリガンのありがた迷惑にならないことを祈るばかりだ。
他の者は母艦で待機、特に迎撃戦で活躍してくれたバリーやカンナには休息を取ってもらっている。警戒はフミカとマリナに一任してきた。
クロコは最後まで「私もお供します!」とツバサやレオナルドの足に縋りついてきたが、ミロに「お留守番だよ」と命じられて渋々だが居残った。思い人や主人と片時も離れたくないところは、見ようによっては乙女チックである。
「……あれで変態でさえなければな」
「そこは上司のおまえでも矯正できなかったのか……俺も匙を投げた」
レオナルドの嘆息にツバサもため息で付き合った。
しばらく甲板で風を浴びていると、方舟から動きがあった。
チラリと横目をやれば、あちらの甲板からこちらへと飛来するいくつかの影が眼に入る。スプリガンは空を飛ぶ能力もある種族のようだ。
最初に姿を現したのは──あどけない少女たち。
年の頃なら中学生、最年長でも高校生くらいの少女だ。
艦橋のモニター越しで垣間見た、幼女に相当する子は見当たらない。
スポーティーなボディースーツという身体のラインがはっきりしたボーイッシュな娘もいれば、女子校の制服めいた衣装をギャル風に着飾らせた派手めの娘もいるし、軍服のようなコスチュームで性格も堅そうな娘もいる。
十人十色──各々の趣味が反映されたスタイルだ。
ただし、規格というわけではないのだが、彼女たちスプリガンという種族を象徴するであろう外見的な特徴はなんとはなしに把握できた。
全員──機械的な武装で身を固めているのだ。
そもそも、両腕や両脚が生身ではない。
頭部や胴体こそ見掛けは人間のものと変わらない。
だが腕は二の腕、足は太股──そこから先が機械になっているのだ。
ダインのようなサイボーグの手足に似通っている。
彼女たちもまたサイボーグなのだろうか?
同類かも知れないダインは、スプリガンの少女たちに魅入っていた。
工作者の視点から機械的な彼女たちを観察する。
「わしと同じサイボーグ? いや、違う……あの子らは頭のてっぺんから足の爪先までメカじゃ……人間に酷似した人造人間に近い……んか?」
地母神の能力を介したツバサの眼にはまた違って見える。
ダインが見抜いた通り、彼女たちは全身が機械的な構造で成り立っていた。人間っぽい顔や肌は生物らしくあるものの、そこも無機質な素材でできていた。
だが──胸の奥に強い生命力を感じられる。
ロボットなのに生命体? 超ロボット生命体というやつか?
ダインが愛して止まないトラン○フォーマーのキャッチフレーズ的なものを連想したが、これ以上しっくり来るものがない。
彼女たちは機械であるとともに歴とした生命体なのだ。
そのことにダインも気付いたのか、耳や鼻から蒸気を噴き出した興奮状態である。珍しくボケ役のジンが「落ち着いてブラザー!」と宥めていた。
機械的なのは手足だけではない。
彼女たちは全身を兵器で武装しているのだ。
重武装といっても過言ではないほど──。
手にする銃火器はどれも大口径、物によっては大砲のようだ。それらを帯びるに留まらず、重々しい機械類を装備している。
腰回りをグルリと囲むようなデザインや、背中にバックパックのように背負って両手両脚の装備と連結させたもの。あるいは砲塔やミサイル発射管を備えた兵器をサーフボードのように乗りこなすもの、はたまた鋼鉄の翼やジェットエンジンを備えた機器を扱うもの……。
彼女たちを見ていたミロの素朴な一言。
「アニメやゲームに出てくる兵器の擬人化みたいな子たちだね」
この感想は的を射ていた。
ツバサたちより前の世代の流行──。
戦艦や戦車や戦闘機。そういった兵器を擬人化させた登場人物が活躍するゲームやアニメが流行ったらしいが、彼女たちの雰囲気はそれに近い。
機械の翼やジェットは戦闘機を模したもの。背負ったバックパックからいくつも掲げる砲塔は戦車を模したもの、ミサイルというより魚雷や機関銃で武装したもの戦艦を模したもの……という印象を受ける。
スプリガンは妖精──イメージが崩れかけていた。
しかし、守護者という意味では頼り甲斐がありそうだ。
やがて彼女たちに次いで、大きな影がこちらにやってくる。
実際、見上げるほどの巨大だった。
仲間内では2m75㎝あるドンカイ、過大能力により5mの巨体になれるアハウがいても、これからやってくる彼を見上げたことだろう。
優に15mを越える巨人である。
先に表れた少女たちは外見的にも人間に近いのでアンドロイドと呼べるが、彼に関しては通用しない。完全にロボットと呼ぶべき外見をしていた。
巨大な人型ロボット──。
全身を分厚い装甲で固めており、両肩のアーマーと両腕のシールドは一際大きく堅牢。動く城塞のような印象を受ける。重装歩兵という言葉がピッタリだ。
掌はちゃんと五本の指を備えたマニピュレーターになっており、全身の形状も鎧を着込んだ重装の騎士を意識したデザインだった。防御力に重点を置いているのか、あまり火器の類を装備していない。
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ツバサにもわかる──彼は単なるロボットではない。
少女たち同様、肉体は一分の隙もなく機械的なもので構成されているが、その奥に力強い生命力を感じるのだ。生物としての強さは、今まで出会った現地種族の中でも段違いに強いだろう。
還らずの都を守る鬼神──キサラギ族に匹敵する。
彼らもまた、神族に準ずる力を持った亜神の一種なのだ。
重装騎士のロボットは、背中や両脚に取り付けたバーニアスラスタを噴射させて姿勢調整すると、こちらの甲板に傷つけぬよう着地した。
「──失礼しもす」
苦み走った声に独特な訛りで、重装の騎士は断りを入れてくる。
次の瞬間──彼は変型した。
有り体に言えば「トラン○フォーム!」したのだ。
「サイバ○ロン!? デ○トロン!? オ○トボット!? ディセプ○ィコン!? 所属なんざどこでもええ! モノホンの“ギゴガゴゴ!”じゃあ!」
「落ち着いてダインくん! 初めてのお客さんに無礼千万!?」
その変型する過程にダインは大興奮で奇声を上げて近寄り、もっと間近で見ようとしたのだが、ジンが腰に抱きついて押し止めていた。
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しかし、ダインが夢中になるのもわかる。
彼が変型する様は、紛れもなくトラン○フォーマーだ。
男の子なら、一度は合体変形するロボットに心を奪われるもの。それを目の前で見せつけられたら感嘆のひとつやふたつ漏らすだろう。
しかし、これは変型というよりも、着込んでいた大型のパワードスーツを脱いでいく作業に見えた。内部から操縦者と思しき人影が現れたからだ。
脱いだ15m強のパワードスーツは跡形もなく消えていく。
彼に習うように少女たちも武装を解除する。
少女たちの装備もまた、外すと同時に煙のように消えてしまった。
どうやらスプリガンという種族は、神族のように亜空間に道具箱のようなものを持っており、そこへ装備を格納することができるようだ。
生命力の強さもそうだが、こうした能力も他の種族と一線を画している。
重装の騎士鎧を脱いで現れたのは、それでも2mを越える巨漢。
逆三角形の体系が際立つ、男性的なデザインのロボットだった。彼が従えている少女たちと比べたらメカニカルで非人間的なフォルムだ。
なのに、一見してオッサンだとわかった。
目鼻口を備えているが、いかにもロボットらしい顔立ち。それでも表情は人間のように豊かで、歯が覗く口元で「ニカッ」と親父っぽく笑う。
愛想を振りまいてから巨漢ロボのオッサンは平伏してきた。
少女たちは巨漢の後ろに整列すると、同じように跪いてこちらに礼をする。
個性はバラバラだが、規律は取れているらしい。
お初にお目に掛かりもうす──巨漢が挨拶の口上を述べてきた。
「おいはスプリガンのガンザブロンちいいもす。方舟“クロムレック”の防衛隊長ば任ぜられとりもす。新しい神族にお目にかかれて、誠に恐悦至極……」
「丁寧な挨拶痛み入る──ツバサ・ハトホルだ」
ツバサの挨拶を皮切りに、甲板にいた面々も順序よく名乗る。
それから単刀直入に方舟を探していた理由を明かした。
「還らずの都についてはご存知かな?」
これは「還らずの都を知っているな?」という質問だが、「そこで起きた先日の大戦争は把握しているのか?」という意味を含ませておいた。
察したガンザブロンは両方を交えて回答する。
「はい、先日の外来者たちの大侵攻は、おいたちも把握しちょりました。しかし、天梯を守るちゅう任のため、迂闊に馳せ参じるわけにも行かず……」
この世界の危機だというのに参戦できなかった。
そのことを責められているのだと自責の念に駆られつつ、何もできなかった我が身の不甲斐なさを食い入るような声だった。
ガンザブロンは口調もあって、この場で切腹しそうな悲痛さに聞こえる。
しかし、方舟の使命を考えれば責められようはずもない。
ツバサは女神らしく優しい声で告げる。
「責めているわけじゃありません。あなたたちも苦汁の決断だったのはわかる……天梯を護る、という任務を優先するのは当然のことだ」
「じゃっどん、おいたちは……」
言い募ろうとするガンザブロンをミロが落ち着いた声で制した。
「戦争はアタシらが勝ったし、みんなの言う外来者たちをコテンパンにして追い返した……だから、そんな気に病まなくていいんだよ」
耳にするだけで落ち着く、許された心地になる王者の声色。
「みんな、頑張ったね──あとはアタシたちに任せて」
顔を上げたガンザブロンはロボットの瞳からボロボロと涙をこぼした。
涙腺に等しい器官があるようだ。
それは後ろに控える少女たちも同様だった。
良かった、助かった……口々に安堵の声を漏らしては涙ぐんでいた。
幾星霜──天梯を載せた方舟を守護ってきたのだろう。
種族として背負った使命を果たした達成感と、長年の重責から解放されて喜び。それらが彼らの鋼鉄の胸を湧かせているようだ。
彼らの心をミロの明るい声が解きほぐしていく。
「還らずの都はちょーっと壊れちゃったけど、ウチの工作者たちが直してくれたから心配なし。そっちの方舟も言ってくれればすぐ直してくれるよ」
任せんかい! とアピールする工作者たち。
ボディビルディングばりのポージングを取って自己主張すると、スプリガンたちから「おお……っ!」と希望の歓声が上がる。
ミロの「方舟も直してくれる」に反応したらしい。
工作者を連れてきて正解か? ツバサはそちら方面で話を進めてみる。
「還らずの都を守る灰色の御子、ククリちゃ……ククリさんから、君たちのことを聞いてね。助けに向かってほしいと頼まれたので、こうして工作系に強い神族を連れて尋ねてきた次第だ」
これを聞いたスプリガンの少女たちは喝采の声を上げた。
「お船が直してもらえる! これでちゃんと航行できるよ!」
「船が直れば速度も上がるはず! 見廻りも捗るね!」
「もうわたしらの応急修理じゃ保たなかっし……助かったぁー♪」
「艦橋に食堂に休憩室に貯蔵庫……私たちの部屋も直してもらえるかな?」
「おバカ! 天梯の保管室を直してもらうのが最初だよ!」
予想以上の好感触にツバサも少々ビックリだ。
方舟“クロムレック”──本当に壊れる寸前だったらしい。
ガンザブロンはショートするのではないかと心配になるほど大量の涙をゴボゴボ流していた。あれは冷却水みたいなものなのだろうか?
「優しき心遣い、感謝の言葉もないでごわす……」
ガンザはバスタオルみたいなサイズのハンカチを取り出すと、顔面を拭く勢いで涙をぬぐい取り、最後に鼻を「チーン!」とかんで表情を取り繕った。
そして、傅いたまま申し出てくる。
「ツバサ様──どうか、おいたちの若大将に会ってくいやんせ。おいたちの若大将こそが、方舟クロムレックを任されちょう灰色の御子でごわんど」
スプリガンの若大将──ダグ様に。
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