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第8章 想世のタイザンフクン

第198話:天を塞ぐ絶望

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 還らずの都が出現して尚──巨人たちの戦いは続いていた。

「ジンの兄弟ん他に、こがい凄腕すごうで工作者クラフターがいるたぁ思いも寄らんかった……いやはや、世間はまっこと広いもんぜよ」

 フォートレスダイダラスの操縦席でダインが感心する。

 それは外部スピーカーにより、フォートレスの口からも漏れた。

 エメスの工作者としての技量と、それにより建造された大極都神だいごくとしんという巨大メカへの感心だ。大っぴらには言わないが、心の中では賞賛しょうさんしきりだった。

「ダイちゃん、相手を褒めてる場合じゃないッスよ」

 前の操縦席に座るフミカが、心配する表情でこちらを振り向く。

 ダインの身を案じてくれているのだ。

 フミカのサポートを借りてフォートレスは万全な機動を成立させているが、実質的に操縦しているのはダインである。また、サイボーグ化したダインは機体に自分を組み込むことで、一心同体となって操縦するタイプ。

 このため──機体のダメージも大なり小なり負ってしまう。

 機体をスムーズに動かすために搭載したフィードバック機能が、損傷した情報までダインに送信することによる弊害へいがいだった。

 フォートレスダイダラスは──満身創痍まんしんそうい

 巨大ロボに使う言葉ではないかも知れないが、他に適切な表現が見当たらない。フミカが機体内に配備した小型修復ユニットで対処してくれているが、ちょっとやそっとの修理では追いつかないほどの大破になりかけていた。

 その痛みをダイン自身も我が事のように感じてしまう。

 機械化した全身を走る激痛は想像を絶する。だがダインは夢にまで見た巨大ロボ同士の戦いに歓喜と興奮を昂ぶらせ、痛覚を無理やり黙らせていた。

 アドレナリンが出過ぎて疲れや痛みが麻痺してしまっている。

 その男の子らしい無茶をフミカは心配しているのだ。

 ふと大極都神からもエメスの声が聞こえる。

「それはこちらも同感です……ロボット物がすたれて久しいこの時代に、これほどの熱を持った若人わこうどしのぎを削れるとは……長生きはするものですな……」

 エメスの操る大極都神も無残な姿を露わにしていた。

 キョウコウの混沌をモデリングすることで、変幻自在の稼働を見せていた機体は見る影もなく、巨体のあちこちが修復されぬままボロボロに崩れていた。

 もはや自動修復に回すエネルギーも危ういのが見て取れる。

 ダインだけではなく、エメスもまた限界なのだ。

 それでも人型を保っており、戦闘意欲は消えていない。

 フォートレスも大極都神も、持てる装備をほぼ使い果たしており、どちらの装甲も見る影もないくらい剥がされていた。

 そろそろ決着をつけねば──ダインとエメスに覚悟がぎる。

「フミィ! 最終兵器を使うぜよ!」
「最終兵器って……あれ・・、開発中で危なっかしいってダイちゃんが……」

 構わんきに! とダインは強行する。

「こん坊さんはあれ・・じゃなきゃ仕留めきれん! そういうトドメを待っちょる節さえある! こういうんは……巨大メカ戦の鉄板じゃからのぉ!」

「鉄板って……そりゃ決まり事・・・・みたいなもんッスけど……」

 えぇい仕方ない! とフミカも覚悟を決めた。

 フミカが尋常じゃない速さでキーボードを叩くと、7枚の透過スクリーンを展開させる。そこに無数のコードが流れた。

 7つのスクリーンは、7つのプログラムを解除していく。

『クニトコタチ──胎動』
『トヨグモヌ──起動』
『ウヒヂニ・スヒヂニ──始動』
『ツヌグイ・イクグイ──拍動』
『オオトノジ・オオトノベ──脈動』
『オモダル・アヤカシコネ──発動』

『イザナギ・イザナミ──承認』の文字が、7枚目のスクリーンに浮かぶ。

「ダイダノアメノヌボコ──封印状態スリープから待機状態スタンバイに移行完了ッス!」

 7枚目のスクリーンをフミカが殴るようにタッチすると、俄にフォートレスダイダラスの頭上が暗雲で覆われて雷鳴が轟いた。

「ダイダノアメノヌボコよ──我が許わがもとくだれッ!」

 ダインが、フォートレスダイダラスが両腕を広げて迎え入れるように叫ぶと、雲を破って光の柱が落ちてくる。それは大地に重々しく突き刺さった。

 現れたのは──巨神が振るうための槍。

 フォートレスダイダラス専用の大槍は天と地を繋ぐ長さを誇り、その先端は大陸を抉る巨大な螺旋らせん状に渦巻いていた。

 全長1㎞を越えるフォートレスをも上回るダイダノアメノヌボコ。

 巨神の身でも堪えるのか、やや姿勢を崩すような動きを見せながらも、フォートレスは大槍を両手に取って大上段に持ち上げてから構え直した。

 これを見たエメスは──破顔はがんする。

「巨大メカ戦の王道……トドメの大技を繰り出す必殺武器……ッ!」

 素晴らしいッ! とエメスは感無量の叫声を上げた。

 感激のあまり、エメスは滂沱ぼうだの如く感涙している。顔のデッサンが崩れた笑顔を、滝のような涙でしとどに濡らしていた。

 鬼気迫る笑みのエメスは僧侶らしく迅速に印を結ぶ。

 フォートレスの最終兵器に対抗するべく、あちらも鬼札ジョーカーを切るつもりだ。

「霊! 宿! 動! さあ大極都神よ! 絶望に抗うため、絶望に立ち向かうため、キョウコウ様より賜りし蕃神ばんしん威容いようを見せつける時です!」

 大極都神が大胆に姿を変える──これが最後の変形だ。

 それは人の形を捨てる大変形だった。

 大極都神の両腕両足が太さを増しながら伸びていき、段々と上半身へせり上がってくる。同時に頭部も長く太く、大きくなるように形を変えていく。

 やがて──巨大な手をかたどる。

 しかし、その手は5本指ではなく、新たな指が生えてくることで6本指の不思議な形をした手になった。構造的に親指の対となる指が1本増えていた。

「これぞ大極都神の最終形態! その名も“極天きょくてん蕃神掌ばんしんしょう”ッ!」

 巨大な異形の掌となった大極都神は宙に舞い、フォートレスを握り潰さんと掴みかかってくる。その掌の中央にフォートレスは大槍を突き込んだ。

「さあッ! 我が掌中しょうちゅうにてスクラップに成り果てなさいッ!」

「ガラクタんになるんは貴様きさんじゃ坊さんッ!」

 フォートレスが突き込むダイダノアメノヌボコに刺されながらも、掌と化した大極都神は6本の指を伸ばしてくる。それは比喩でも何でもなく、本当に6本の指が触手のように伸びてきて、フォートレスを引き寄せようとしているのだ。

「ハハハッ! そんな槍では拙僧を止められませんぞぉ!」

「フン! 必殺武器がただデカいだけなんてあるわけねぇぜよ! こいの本領発揮はこっからじゃあッ! ダイダノアメノヌボコ、廻天かいてんせぇーーーッ!」

 大極都神の中央に突き立った大槍の穂先ほさき

 巨大な円錐形でもある螺旋が急回転を始め、大極都神を深々と抉っていく。のみならず、ドリルに巻き込まれた物質が光の粒子となって舞い散った。

「なっ、これは……変えられてる!? “気”マナに!?」

 驚愕するエメスにダインは種明かしをする。

 バラしたところでこの槍の効果は防ぎようがない。

「その通りじゃ! 分解、破壊、崩壊、腐食、腐敗、風化……そうゆう過程をすっ飛ばして、ぶっ刺したもんを原初の“気”に戻す究極兵器!」

 想世武装そうせいぶそう──ダイダノアメノヌボコ。

 ツバサとミロ、2人の想世神の力を宿した巨神の槍だ。 

 穂先のドリルが急速に回転速度を上げ、大極都神を巻き込んでいく。

 異形の掌が中央から渦巻くようにねじれ、ダイダノアメノヌボコで貫かれた箇所から大量の“気”を噴出させる。

 “気”が噴き上がる度、大極都神の質量が目に見えて減っていった。

「「始原しげんかえれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーッ!!」」

 この日のために2人で考えた決め台詞だ。

 ダインとフミカの気合いが重なり、ダイダノアメノヌボコの出力も上がる。

 あらゆる存在を“気”へと還す力は余波となり、フォートレスダイダラスの装甲さえ徐々にだが溶かすように光の粒子へ変えていく。

 この自身にも及ぶ余波を完全に防げていないため、ダイダノアメノヌボコは製作者ダイン自ら「開発中で危なっかしい」と言わしめる原因となっていた。

 掌部分が光の粒子に変わり、残る6本の指も根元から消えていく。

 親指の根元辺りに操縦席を移動させていたエメスは敗北をきっしながらも、どこか清々しく穏やかな顔で、ゆっくり手を合わせて合掌がっしょうした。

 そして、無念をにじませて詫びる。

「キョウコウ様、面目次第もない…………緊急離脱ッ!」

 エメスの操縦席は一人乗りの脱出ポッドに変形し、光の粒子となって散っていく大極都神から脱出した。それは還らずの都に向かって飛んでいく。

 やがて大きな“気”マナの柱が空と大地を繋いだ。

 大極都神を完全に“気”マナへと変換したフォートレスは、ダイダノアメノヌボコを殺陣たてのように見得みえを切って振り回し、最後の光をまき散らす大極都神に背を向けて、巨人の大槍の石突いしづきにて大地を踏み鳴らした。

 巨大ロボの勝利シーンを意識した──バンクにも似た光景。

 周辺に浮かべておいたドローンでフォートレスの勇姿を録画していたダインは、撮影した映像を見て感動の涙をボロボロ零していた。

「まっこと……これぞおとこ浪漫ろまんぜよ…………ッ!」
「……いやー、男の子の・・・・ロマンじゃないッスかね」

 ここら辺はついていけないッス、とフミカは申し訳なさそうに愚痴ぐちった。

 偵察ドローンを周囲一帯に拡散させていたダインは、フミカにそれらの情報処理を任せて、仲間たちの戦況も確認していた。

 トモエ、カズトラ、クロウ陣営のカンナとホクト。

 彼ら彼女らの勝利は確認済みだ。

 つい先刻、ドンカイが名状しがたい異形を撃破したところも映像が撮れた。

「後は我らがオカン、バサ兄が勝利してくれれば、ほぼウチらの白星でこの戦争は幕を閉じる……ってことでいいんスかね?」

 仲間たちの勝利シーンをキャプチャーして、フミカが問うてきた。

「いやー、どうなんじゃろうな。ツバサのアニキが勝つのは当たり前として、もう一波乱ありそうな気がするんじゃが…………ッ!?」

 ダインも疑問視したその時──還らずの都が噴火した。

 山じゃないので噴火というのは間違っているのだが、鳴動した後に頂上付近から炎を噴き出したので、ダインもフミカも噴火と見て取ったのだ。

「「な……なんじゃあれぇぇぇーーーッ!?」」

 夫婦同士は似てくるのか、ダインとフミカは異口同音に叫んだ。

 還らずの都から噴き上げたのは噴火の炎ではなく、巨大な太陽だと気付いた時、2人は我らがオカンの勝利を確信して頬をほころばせた。

 なのに、その太陽を飲み込むほどの闇が空を覆い尽くした。

 それは前触れもなく、一瞬で見渡す限りの大空を闇色に染め上げる。わずかな星の光もまたたかない、“虚無”を体現したかのような闇だ。

 ダインは最初──空が破けたのかと思った。

 フミカは当初──天の底が抜けたと思った。

「「な、ななななな…………なんじゃこりゃああああああーーーッ!?」」

 異常すぎる非常事態に、ダインとフミカは立て続けに驚愕させられる。

   ~~~~~~~~~~~~

 還らずの都最深部──龍宝石ドラゴンティアの舞う間。

 ドームの天井を突き破る太陽球を打ち上げて、混沌を焼き尽くすまでの大打撃を与えることで、ツバサはついにキョウコウを打ち破った。

「──って、みやこもぶっ壊しとるがな!?」

 至極正論なツッコミを入れてくるミロに、激戦によって狂乱していたツバサは我に返った。理性を取り戻すと「やっちまった」という後悔がつのってくる。

「だ、大丈夫です! 英霊の鋼板こうばんは頑丈ですから無事です! 多分きっと!」

 すかさず大好きな母親をフォローすべくククリが声を上げた。

「あの……アダマント製の外壁がいへきも溶けてませんか?」

 クロウは額に手を当ててこちらを見上げ、呆れ気味にぼやいた。

 殺戮の女神セクメトに変身しても理性を保てるようにはなったが、破壊衝動のままに暴れてしまう気質はまだ改善されてないらしい。

 還らずの都を壊すつもりは毛頭なかったのだが、あんまりにもキョウコウがしぶといものだから、つい本気を越えた全力全開パワーでぶちのめしてしまった。

 その結果が──最深部から最上階までを貫通させた太陽球だ。

 ごめんやりすぎた、なんて謝罪では済まされない。

 クロウではないが英霊の鋼板も壊してそうだ。

 とりあえず、ククリの目の前へスタイリッシュに土下座で着地しながら謝るため、ツバサは殺戮の女神セクメトから神々の乳母ハトホルへ戻って降りていく。

 途中、ダオンとネルネとすれ違った。

「ダオ君早く早く! キョウちゃんのところへ急いで!」
「言われずとも急いでおります。主の危急に駆けつけるのは執事の務めゆえ」

 ネルネをおんぶしたダオンが高速飛行で上昇していく。

 彼女たちの処遇しょぐうをどうするか逡巡しゅんじゅんしたツバサだが、こちらに手を出さず素通りしていったので、結果的には見逃すことになった。

 キョウコウを倒した今、彼女たちの脅威度は低い。

 ネルネやダオンが自身の野望で動いておらず、キョウコウに属することで活動していたから尚更だ。

 すれ違い様、ネルネは「あっかんべー」をして去っていく。

 子供みたいな怒り方にツバサは苦笑してしまった。

「本日はこれにて──またお目に掛かりましょう、ツバサさん」

 ダオンは律儀に一礼してから飛び去った。

 ダオンはネルネを背負ったまま、ツバサがぶち抜いた穴を通ってキョウコウの後を追っていく。途中、溶けた影のようになってダオンは消えた。

 転移系技能スキルでも使ったのか? それとも過大能力オーバードゥーイングか?

「そういえばダオンあいつ……この戦いでは前に出なかったな」

 執事の格好らしく裏方に徹していたが、ああ見えてGMとしての№は若く、実力もあるので強いはずだ。なのに、前線に出るどころか一度も戦っていない。

 何かあるのか──ツバサは少しだけ勘繰かんぐる。

 最上階まで繋がった太陽球の通った道。ダオンとネルネを見送るように見上げていると、穴の向こうに広がる空がいきなり暗くなったことに眉をしかめた。

 曇ったというには暗すぎるし、日が暮れるにしても早すぎる。

 暗いのではなくくらいという漢字がよく似合う不気味な闇を目にした途端、ツバサは言い知れない吐き気を覚えて、背筋を這い上がる悪寒おかんに耐えきれなかった。

 このおぞましい感覚は味わったばかりだ。

 世界を四度鳴らした鐘の音──あの怖気おぞけが蘇ってくる。

「ツバサさん! なんか来る! でっかくて怖くて……最悪なもの・・・・・が来る!」

 直観と直感、特異な技能を持つ彼女が大声でツバサを呼んだ。

「あれはもしや、シュウの言っていた……」

 ククリも恐怖に震えるが、勇気を振り絞って堪えていた。

 意を決したククリが両手を頭上に掲げると、ドーム内に浮かぶ白と黒の超巨大な龍宝石ドラゴンティアが反応した。そこから小さな龍宝石が飛び出してくる。

 白と黒の小さい龍宝石は、それぞれククリの両手に収まった。

 キーボードでも叩くみたいにククリが細い指でカタカタと龍宝石を叩けば、呼応するかのように天体を形作っていた龍宝石の群れも動き出す。

 それだけではない──ドームにも変化があった。

 全面真っ白だった壁面がテレビのスクリーンのように変わり、還らずの都周辺の風景を映し出したのだ。半円形のドーム内の壁面を利用して、パノラマ状に風景を展開させている。端から順々に映像が浮かび上がってきた。

「ククリさん、こんなことができたのですか?」

 意外な特技を披露されたようにクロウが問い掛ける。

「はい、父様と母様が教えてくれるんです。この龍宝石ドラゴンティアを通じて……」

 手元の龍宝石を操作して、ドーム全面に外の様子を映し出す。

 おかげで最深部にいても外の状況が手に取るように把握できた。

 だからこそ──最悪の光景に直面してしまった。

 真なる世界ファンタジアの空が真っ暗闇に閉ざされていたのだ。

 水面にドボドボとすみを落としたかのように、星の光も瞬かない漆黒の闇がどこまでも広がっている。これは暗雲が空を覆っているとか、星の自転を操作することで強制的に夜にしたとか、そういう次元の話ではない。

「あれは…………裂け目だ・・・・……」

 映し出された映像を見て、ツバサは我知らずに固唾かたずを呑んでいた。

 冷や汗が頬を伝うほど戦慄するなんて何年ぶりかわからない。

 空を覆う闇を観察すれば、地平線に届きそうなギリギリのラインに“際”きわがあった。つまり、まったく光を通さない暗闇が円状に広がっている。

 円状に広がる暗闇の規模は計り知れない。

 それは夜でも闇でも黒でもない──次元の裂け目だった。

 天をふさぐほど巨大な次元の裂け目がそこにあった。

 天蓋てんがいという言葉はあるが、あれは仏教用語だ。比喩ひゆ誇張こちょうではなく、物理的な意味で天にふたをするほどの闇が存在するとは想像も及ばなかった。

「キョウコウの言っていた、絶望とはこれ・・のことか……」

 ツバサだけではない。

 ミロやククリにクロウ、その他のこの地に集った者たちは誰もが納得している頃だろう。現実として突きつけられれば、目の背けようがない。

 今までツバサやミロが戦ってきた蕃神の王たちは、大型戦艦でも出入りできそうな大きな裂け目を空間に作り、そこを乗り越えて真なる世界に侵入を目論んできたのだが、これはもう裂け目なんてレベルを遙かに超越している。

 蕃神ばんしんの王どころの話ではなかった。

 あの裂け目なら、その王が大軍で乗り込んできてもおかしくはない。

 下手をすれば、このままあちら側に真なる世界ファンタジアが飲み込まれそうな恐怖さえこみ上げてくる。スクリーン越しに見ていても引きずり込まれそうな闇だ。

 その闇の向こうに──おどろおどろしい6つの凶星きょうせいが燃える。

 一対の凶星は血肉が腐る寸前のようなどす黒さを帯びた橙色だいだいいろに輝いており、ゆっくりと明滅する。それがまばたきだとわかるのに時間はかからなかった。

 あれは眼──別次元に潜む途轍とてつもなく大きな眼だ。

 左右に3つずつ、それで両眼となっているらしい。

 眼の大きさから全体像を思い描いただけで心が折れそうになる。今まで遭遇してきた蕃神の王など比較にならない。どいつもこいつもあの眼の中に飛び込んでも、目脂めやに程度の大きさだ。瞬きひとつで潰されて終了である。

 天を塞ぐほどの次元の裂け目、その奥に瞬く絶大なる眼光。

 それらに戦慄せんりつして身動みじろぎできずにいるツバサたちに、決定的な終止符を突きつけるものが降臨してきた。

 それは手──6本の指を持つ異形の手だった。

 空を覆う次元の裂け目から現れたのは、途方もないくらい大きな手。

 ぬめる光沢を帯びた不浄ふじょうの粘液で覆われ、薄汚れた青にも緑にも見える暗い色に染まった触手。それをより合わせることで6本の指を形作り、それぞれの先端からは不規則な伸び方をしたいびつ鉤爪かぎつめが生えている。

 指や掌はところどころ不格好ぶかっこうな甲殻に覆われ、脈動する触手の筋肉を抑え込んでいるように見えた。その甲殻さえも不定形に形を変えていく。

 6本の指を開いて、真なる世界ファンタジアの大陸に掴みかからんとする形で降ろしてくる。空気摩擦により生じた雲を棚引たなびかせて、その巨大さゆえに気圧さえも激変させて、こちらの世界を押し潰しかねないほどだった。

 動いただけでこの圧力、還らずの都がビリビリと震える。

 概算がいさんだが──あの巨大な手が人間の手だとしよう。

 こちらで比較対象になるのは還らずの都ぐらいしかなく、出現した当初は超巨大だと思っていたこの都でさえ、あの手に掛かれば硬貨程度の大きさしかない。

 それも1円玉や1セント硬貨、一番小さな小銭ぐらいだ。

 固唾かたずを何度飲んだかわからないツバサは、それでも渇いた声で呻く。

「確かに…………これは絶望だ……」

 キョウコウが恐れていたものをようやく理解することができた。

 この絶対的な恐怖を払拭ふっしょくするため、彼は執拗しつようなまでに力を求めたのだ。

 500年前の大戦で、キョウコウはこれ・・遭遇そうぐうしたに違いない。

 こんな次元の違うバケモノを目の当たりにすれば、人生観も一変するのは間違いないし、強さだけに執着するのも頷ける。

 むしろキョウコウの精神的タフさを褒めるべきだ。

 普通、あれ・・に立ち向かおうと考える者はいない。

 戦うとか立ち向かうことも疑わしい、外界からおとなう超常的な天災だ。

 かといって、やり過ごすこともできなければ逃げる場所もない。

 大概たいがいは“諦める”という道を選ぶはずだ。

 その結果、現実逃避の末に発狂するか、狂えずに自死を選ぶしかない。

 別次元からの侵略者──蕃神ばんしん

 その最強クラスは、ツバサやミロが倒してきた“王”が良いところだと思い込んでいた過去の浅はかな自分を説教してやりたい。

 上には上がいる──この言葉を忘れていた。

 同時に弱い心がキョウコウに口論を仕掛けたくなる。

『何故、あんなメチャクチャ巨大な蕃神がいると教えなかった!? もし話してくれていたなら、協力の仕方もあったのに……』

『話したところで信じるか? あそこまで現実離れした存在を──』

 脳内のキョウコウが冷笑とともに返してきた。

 あの鎧武者がこの場にいて、ツバサがやけっぱちになじれば、きっとこう答えていただろう。容易に想像することができた。

 弁明、申し開き、釈明、言い逃れ、弁解、逃げ口上……。

 あの絶望に対しては、どのような自己弁護も許されるはずだ。

 なのにキョウコウは言い訳を一切せず、口数少ない有言で黙々と実行に移した。その遣り方は褒められないが、賞賛すべきかも知れない。

 ツバサも、ミロも、クロウも──天を塞ぐ絶望から目が離せない。

 巨大な6本の指がこちらに迫ってきているのに対処することもできず、ただ呆然と見上げるばかりだ。圧巻を通り越して、唖然とするしかない驚異の接近に、目どころか心まで奪われていたのかも知れない。

「──ツバサ様! ミロ様! クロウおじさま!」

 その時、叱咤しったする乙女の声が耳朶じだを打った。

 自分を見失いかけていたツバサたちは、ククリの声で我に返った。

 ククリは白と黒の小さな龍宝石ドラゴンティアをキーボード代わりにして、懸命に還らずの都を起動させようとしている。これは彼女にしかできないことだ。

「申し訳ありません、お力添えをお願いします……! 時間が……時間が足りないんです! 還らずの都の起動が間に合いませんッ!」

 ツバサたちが天を塞ぐ絶望に正気を失いかけている最中、彼女は必死であの巨大な6本指に対抗するべく還らずの都に働きかけていたらしい。

 あの頼りなげだった気弱な少女が、誰よりも頼もしく見える。

 それはクロウも感じ入るところらしい。

 親代わりの心境なのか、彼女の後ろで気付かれぬように涙ぐんでは鼻を啜っていた。まあ、涙を流す涙腺るいせんも鼻水が出る鼻もないのだが……。

 ツバサはすぐさま降りていく。

 ククリの前で土下座するつもりだったが、もはやそれどころではない。床に降り立ったツバサは、ミロを連れてククリの元へ駆け寄った。

「……わかった。それで、俺たちはどうすればいい?」

「アタシたちで手伝えることなら何でもするよ! あのバカでかい手をぶった斬ってくりゃいいの? てか、それぐらいしかできなくない?」

「いえ、ツバサ様とミロ様にはみやこの起動を手伝っていただきたいのです」

 ククリは手元の龍宝石を操作させ、ドーム内のすべての龍宝石に働きかけているが、その動きはどことなく緩慢かんまんで、急いでいるようには見受けられない。

 操作しているククリ自身、もどかしげで苛立いらだっている。

「ここには何世紀にも渡って溜め込んできた膨大な“気”マナがありますが……溜めた“気”が暴走しないように圧縮に圧縮を重ねて、安定するように設定されていたんですが……その圧縮をほどくのに、時間が掛かってしまってるんです」

 圧縮された“気”は解かなければ使えないという。

「……あー、圧縮ファイルは解凍しなきゃ使えないもんね」

 ミロはパソコンの知識に例えた。

「ファイル? 解凍? えっと……よ、よくわかりませんが、あんな大きな蕃神が現れてしまった以上、もう時間が全然ないんです! 急いで圧縮された“気”を解かないと……なので、お二人の力をお貸しくださいッ!」

 ククリは自分の頭上に移動してきた、2つの龍宝石を見上げる。

 黒と白の──超巨大な龍宝石ドラゴンティアだ。

「ツバサ様が母様……白い龍宝石へ、ミロ様が父様……黒い龍宝石へ御自身の力を注ぎ込んであげてください! それで圧縮された“気”を解く速さが一気に上がるはずです! お二人の力は父様と母様に呼応していますから!」

 ツバサが母親の方へ──その指示に躊躇ためらってしまう。

 だが、ミロが険しい目付きで「嫌がってる場合じゃないっしょ!?」と睨んできたので、口から出掛けた文句をツバサは飲み込んだ。

 そうだ、ワガママを言っている場合ではない。それに、どうせツバサが父親役の龍宝石へ働きかけたところで、大した効果は望めないだろう。

 もうツバサは地母神であり──母性を司る女神なのだから。

「ううっ…………よし、行くぞミロ!」

「合点承知の助! アタシがお父さんでツバサさんがお母さんね! ツバサさんがママンでオカンで母親でマミーでマザーで……マムンッ!?」

 しつこく言い募るミロに拳骨げんこつを落としてやる。

「そこまで念を押さんでいい!」

 ミロに愛の拳骨をくれてやってから、ツバサは自分に割り振られた白い龍宝石に向かって飛び上がる。その上に立つと地母神としての力を解放した。

 この白い龍宝石に宿る力は、紛れもなくククリの母のものだった。

 命を司る女神の力が、ツバサの地母神としての力に呼応している。ツバサが神族の力を解き放てば、すぐに呼応して内に溜め込んだ莫大な“気”も動き出す。

 反対側では──ミロが黒い龍宝石の上に立っていた。

 神剣と聖剣を合体させた大振りの剣を、足下の龍宝石に軽く突き立てて、彼女も力を解放している。いや、“彼”として力を発揮しているはずだ。

 今やミロは男性性も兼ね備えた英雄神なのだから──。

 ツバサとミロが白と黒の龍宝石に働きかけると、それだけでドーム内に浮かぶ龍宝石の群れが見違えるくらい活性化を始めた。ククリも手応えを感じているのか、焦燥感に汗ばんでいた表情にわずかな微笑みが浮かんでいる。

「よし、これなら行けます! でも…………」

 ブラインドタッチで手元の龍宝石を弾きつつ、ククリは悔しそうにドーム内に広がるパノラマスクリーンを見遣みやる。

 天を塞ぐ絶望から降りてきた手──その爪先がもう地表に届きそうだ。

 あの6本指が大地を一掴みしただけで、還らずの都は簡単に握り潰されてしまうだろう。そうなれば、反撃する手段もタイミングも失ってしまう。

「もう少し、あと少し、時間があれば…………ッ!」

「その時間──私が作りましょう」

 クロウは愛用のシルクハットをククリの頭に乗せると、しゃれこうべな顔をぎこちない笑顔のような形に曲げてから、マントをひるがえして背を向けた。

「あれほど強大な存在に、私一人の力ではどこまで通用するか見当もつきませんが……死力を尽くせば・・・・・・・数分ぐらい稼げることでしょう」

「クロウおじさま! そんなことしたら……ッ!?」

 ダメ、と言いかけたククリの小さな唇を、クロウの指先が抑える。

 革手袋をはめた手は、きっと優しくふれたことだろう。

 ククリの唇を人差し指で封じたクロウは、胸に秘めた想いを伝えていく。

「こんなことを言うと、厚かましく思われるかも知れませんが……」

 あなたと過ごした一時は──孫を持った祖父の心持ちでした。

「とても……とてもね、嬉しくて、楽しい日々でしたよ」

 それからクロウは後ろを振り返ることなく高速で飛翔し、ツバサが貫通させた道を通って都の外へ出ようとする。

 すれ違い様、クロウはツバサに向かってこう言い残した。

「後を頼みます──あの子ククリをどうか、よろしくお願いします」

 勝ち目どころか生き残れる保証もないとわかっている。

 あの6本の指に立ち向かえば、逃れられない死が待っているのを承知の上で、ほんの数分の時間を稼ぐためだけに、クロウは死地へと赴いたのだ。

「クロウ……おじさま……」

 ククリは涙を零して顔をクシャクシャにすると、項垂れてしまった。

 それでも龍宝石を操る手は止めない。止められないのだ。

 ここで泣き喚いたら──命を賭けたクロウに申し訳が立たなくなる。

 彼の覚悟が無駄になってしまう。

 ククリは涙を流したまま歯を食いしばり、吐き出しそうな嗚咽を無理やりにでも飲み込んで作業を続行する。その指の動きは激しくなったほどだ。

「ククリちゃん、骨のオッチャン……ねえツバサさん!」
 なんとかならないの!? とミロは悲痛な声で訴えてきた。

「なんとかするもしないも……俺だってもどかしいんだ! しかし……」
 現状、ツバサたちには打てる手がない。

 ツバサとミロはククリと共に還らずの都起動のため、この場から動けない。

 ドンカイやトモエたちはキョウコウ一派との戦いで疲れているはずだから、あの6本指を迎え撃たせるなど酷である。

 万全な状態だったとしても、あれが相手では身の安全を保証できない。

 あの6本指を相手に戦うことができる実力者は現状、類い希な過大能力オーバードゥーイングを持っている内在異性具現化者アニマ・アニムスぐらいのものだ。

「クロウさんだけじゃなく、せめて俺かミロが一緒に行ければ……」
 ツバサが口惜しさに歯噛みした時だった。



 ──ひゅぅるぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁ……ッ!!



 彼方かなたから──雄々しい獣の遠吠えが響いてきた。

 この哀切を込めた咆哮を忘れるわけがない。

 遠吠えと共に現れたのは、背に大きな翼を広げた羽毛ある蛇ケツアルコアトル

 還らずの都を一周できるほど長大な身体を持つ大蛇だが、天を塞ぐ6本指と比べたら糸蚯蚓いとみみずみたいな大きさでしかない。

 だが、羽毛ある蛇は臆することなく、6本指に食らいついた。

 指の1本に噛みつくと、羽毛ある蛇が触れたところから指の肉が消失していく。すると次元の裂け目の奥から、あの世界を揺るがす鐘の音が鳴り響いた。

 6本指を備えた手が震え、少しだけ引いていく。

「出ろ──獅子龍ミトゥム! 七支龍シタ!」

 次に現れたのは──2頭の巨大な龍だった。

 片や獅子の頭を持った巨龍、もう片方は7つの頭を持った龍だ。

 彼らもまた羽毛ある蛇に続くように、6本指の巨大さに怯むことなく牙を剥いて襲いかかる。触手の肉を食い千切り、掌を穿ほじくるようにえぐっていく。

 あれほどの大きさを誇る存在でも痛覚はあるらしい。

 3頭の巨龍に噛みつかれた6本指は大地に掴みかかるのをやめて、少しだけだが次元の裂け目へ逃げるように手を引き戻した。

 これで時間が稼げる! と内心ガッツポーズを決めたツバサは、それ以上に彼らが応援に駆けつけてくれたことに喜びを禁じ得なかった。

「ツバサさん! あれってもしかして……」

 さすがのアホミロでも、あれらの大蛇や巨龍を忘れていなかったらしい。

 ククリは驚きながらも龍宝石を操り、今の攻撃を発した人物を探し出し、ドーム内のパノラマスクリーンに映し出す。

 そこに現れたのは、ツバサたちが予想した通りの2人だった。

 長い紫髪しはつを振り乱した、凜々しい少年の面立ちを持つ若き女神。

 地母神ツバサには劣るものの、女神らしく豊潤ほうじゅんに発育した肢体のラインを惜しげもなく誇示こじするボディースーツに身を包んでいる。

 3mを越える巨体。王冠の如く雄壮ゆうそうな角を生やした獣の王。

 たくましい背中には何枚もの大きな翼をはためかせ、厚い毛皮に覆われた豪腕はあらゆる獣の膂力りょりょくを上回り、ドラゴンにも匹敵する尾を打ち振るう。

 戦女神──ミサキ・イシュタル。
 獣王神──アハウ・ククルカン。

 翼を羽ばたかせて飛行形態になったアハウが風を切って飛び、その背中にミサキが乗っている。2人はこちらへ亜音速で飛行しつつ、自分たちの持てる最大攻撃を放ってくれたのだろう。

 その時、ツバサの豊満な胸の谷間でモゾモゾと動く者がいた。



「んんんッ~~……プハァッ! 間に合いましたよ、ツバサさん!!」



 乳房から現れたのはハルカの人形たちレギオンズだった。


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