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第7章 還らずの都と灰色の乙女
第156話:キョウコウ六歌仙
しおりを挟む「キョウコウさんか、とうとう出てきたな……」
バリーから聞いたGMの名を告げた途端、レオナルドは眉根を寄せた。
覚悟はあった──という面持ちに見える。
アハウたちとの会談が昨日のこと。今日のツバサたちは所変わってミサキたちの暮らすイシュタルランドにお邪魔していた。
かつて同盟を結んだ応接間。
またすぐここに集まるとは思いも寄らなかった。
テーブルを挟んだ向かい側にはレオナルドとミサキ、こちらにはツバサとミロ。二人の後ろには従者らしく澄まし顔のクロコが控えている。
マリナも連れてきたのだが、カミュラと一緒に遊んでいた。
ジンが面倒を見てくれているので大助かりだ。
「ハイヨー、シルバー! 走るのじゃ、ジン兄ー!」
「あの、これ、お馬さんごっこなんですか? なんか違いますよ!?」
「ブヒーッ! 俺ちゃんのことは豚と呼んでーッ!」
四つん這いになったジンにカミュラとマリナが跨り、お馬さんゴッコをしているのはいいのだが……馬役であるはずのジンは自らを豚と言い張る。
カミュラに乗馬鞭で尻を叩かれる度、良い声で鳴いていた。
その鳴き声にクロコはうっとり耳を澄ませている。
「あら、今日のジン様は良い声で鳴きますわね。そして、鳴かせるカミュラお嬢様の鞭捌きもなかなか……将来有望ですわね」
「その将来性は育つ前に摘んでやる」
ミサキ君の家の子まで、クロコの毒に染めるわけにはいかない。
あらまあ、とクロコは残念そうな声を漏らす。
「では……ジン様をもっと良い声で鳴かせる方向の将来性を伸ばすのは?」
「それは……まあ好きにしろ」
「ウチの変態をさらなるド変態に育成しないでください!?」
ツバサはぞんざいに了解を出したが、ミサキ君に却下されてしまった。
「残念、どちらも将来有望そうですのに……」
そのクロコだが、今日はいつものクラシカルなメイド服ではなく、やたらと露出度の高くてスカート丈も短い、ハレンチなメイド服を着ている。
明らかにレオナルドへのセックスアピールだ。
レオナルドは目にした途端、額に青筋を浮かべていたが『かまったら負けだ』と判断したのか、見事にスルーしていた。
何事もなければ、クロコの格好を話のタネにしてレオナルドを弄ってもいいのだが、今日は緊急性の高い相談のためツバサもスルーしておく。
謎のGM──キョウコウ・エンテイ。
その情報を入手するべく、自身も№07という上級GMであるレオナルドの意見を聞きに来たのだ。その名前にレオナルドは反応を示した。
「厄介な奴なのか?」
ツバサが促すと、レオナルドは逡巡した。
彼の顔には困惑が現れており、キョウコウに関しては『できることなら関わりたくない』と顔に書いてある。余程の相手らしい。
「厄介と言うより……そうだな、ひたすら暑苦しい。大言壮語を平然と吐いて、それを実行するだけの行動力と実力がある人だ」
「海賊王におれはなる! って言って本当になっちゃうタイプ?」
ミロの例えに「それだ」とレオは乗ってきた。
レオは両膝を両肘に乗せると、やや前屈みの姿勢で乗り出してきた。
それから解説的な口調でキョウコウについて語る。
「キョウコウ・エンテイ……中国の神話に登場する悪神・共工と、その先祖とされる天帝・炎帝から名を取ったとされるGM。№は俺のひとつ上で06だ」
大柄で巨躯──がっしりした壮年の男性だという。
アルマゲドンの上級GMというだけではなく、その運営会社ジェネシスの幹部でもあり、彼の派閥は一大グループになっているそうだ。
「イメージは……フィクションでイメージを盛られがちな、筋骨逞しい武田信玄といったところかな。貫禄ある武将のような人だ」
そんな人物像だからかカリスマもあり、彼の支配下にあるGMも多いらしい。
プレイヤーの中にまで信奉者がいるという。
「レオの上か、なら会議とかで顔を合わせたりしたんじゃないか?」
「それはもう会わせたさ。うんざりするくらいにね……」
レオは露骨なほど顔を歪ませ、目元を片手で覆おうとした。
見るに見かねて隣のミサキが心配する。
「レオさん……もしかして、その人に勧誘されたのでは?」
「わかるか、ミサキ君……その通りだよ、あの人は俺を誘ってきた」
レオナルドの才は参謀に向く──儂の右腕となれ。
他にも有能なGMには必ず声を掛けており、実際に彼のグループに属して、幹部のような顔をしているGMも少なくないという。
「……以前、君たちにも話したことがあるだろう。『異世界に渡ったら制覇して王となる』と公言しているGMがいると……まさに彼のことだよ」
そういう意味ではわかりやすい人だ、とレオナルドは付け加えた。
「他の上級GMの中には、真なる世界に飛ばされてからの目標を明かしていない者が多い。彼らが何を考えているかわからないのを未知数の脅威とするなら、キョウコウさんは自らの野望を公言している」
「この世界の王になる、か……それで軍事力が欲しいのか?」
真なる世界に眠る――“最高の軍事力”。
キョウコウはその存在を知っており、それを手に入れるため大々的に活動を始めたようだ。プレイヤーを集めたのは人手が足りないからか?
「それと……君たちが聞いた話では、キョウコウさんはその“最高の軍事力”とやらを見付けるために、プレイヤーを集めていたようだが?」
「ああ、俺たちもバリーとケイラさんからの又聞きだしな。正確なところは定かじゃないが、そう考えて当たらずも遠からずってとこなんじゃないか?」
ふむ、とレオナルドは顎に手を当てて考え込む。
「だとすると……そのプレイヤーたちの安否が心配だね」
「その男の傘下に加わっただけだろ? 取って食われるわけじゃ……」
違うんだ、とレオナルドはツバサの言葉を遮った。
「彼は……キョウコウさんは、軍事力とか兵力とか、そういったものにこだわる人でね。戦争は数でするものだと考えている。どんな敵が来ようと、物量で押し潰すことを最善とする人だ。彼にとって兵とは消耗品に過ぎない」
集めたプレイヤーを兵とするなら──彼らを平気で使い潰すだろう。
「アキ、いるか? ちょっと来てくれ」
どうせ近くに潜んでいるに違いないと踏んだのか、レオナルドは大声で部下とも言うべきアキを呼ばわった。案の定、彼女はすぐにやってきた。
「へいへーい。お呼びッスか、レオ先輩」
やって来たのはアキ・ビブリオマニア──フミカの実のお姉さんだ。
舎弟口調やナイスバディはよく似ているが、しっかり者のフミカと比べたらこの姉は大変だらしない。長い銀髪も梳らず、寝癖でボッサボサだ。
いつもはその豊満なボディを競泳水着風のボディースーツと羽衣みたいな布で覆っているのだが、今日は布面積が異様に少ない。
というか──ビキニだあれ。
しかも真っ白なビキニだから、空見すると裸と見紛うばかりだ。
フミカがこの場にいたら『何してんだこのバカ姉貴!』と激怒するだろう。
ツバサは冷めた半眼で『あんたもか』と内心ぼやいた。
大方、クロコ同様に愛しいレオ先輩へのセックスアピールなのだろうが、レオはこめかみを痙攣させた後、これも見事にスルーした。
クロコとアキは近寄り、楽しげに内緒話を始める。
「……効いてるッス効いてるッス♪ おっぱい星人のレオ先輩に、ウチらのセクシー連続攻撃は効果バツグンのはずッス」
「……ええ、効いてますね。私も先ほどガン見されましたわ」
ヒソヒソ話をしている間も、クロコとアキは隙あらばおっぱいを揺らして、レオを誘っている。並みの男の忍耐ならば、これであっさり陥落するだろう。
レオナルドは膝を掴んで堪え、けしらかん部下たちを睨みつける。
そして、とうとう堪忍袋は破裂した。
「いいかげんに……せんかこの色ボケ馬鹿どもがッ!」
沈着冷静がモットーな彼が珍しく、牙を剥くような大口で怒声を上げた。
激高するレオナルドにクロコとアキも脅えて肩をすくませる。威圧感とともに発せられた覇気は、隣にいるミサキの長い髪まではためかせた。
ツバサやミロも風圧を感じたほどだ。
離れたところで遊んでいるジンたちまで硬直させるほどだった。
名は体を表す獅子の咆哮のごとき大声で、色ボケした部下たちに命じていく。
「アキ……お色気サービスしている暇があったら仕事をしろッ!」
「は、はいッス!」
「クロコ、おまえもだ! メイドならお茶でも煎れてこい!」
「ッ! は、はい、ただいま!」
怒りを込めた上司からの叱責とあって、さすがの二人も効いたらしい。
背筋を正すと、それぞれの仕事に取り掛かった。
クロコは自分の【舞台裏】に潜り込み、本当にお茶の用意を始めた。
アキはレオナルドの横に座り、スクリーンを操作する。
「……現実にいた頃、こちらの世界に転移してから敵対しそうなGMの素行をアキにチェックさせていたのだが、それが役に立ちそうだよ」
キョウコウは──単身ではない。
才能豊かなGMを部下にしているはずだという。
「レオ先輩のご命令とあらば、どこのどいつの身辺調査でもネットとPC経由で調べ上げちゃうッスよ~……ホホイのホイとッ!」
アキはキーボード型のスクリーンをリズミカルに叩くと、最期にエンターキーらしき部分を“ターン!”と音を立てて叩いた。
拡大されたスクリーンに映るのは──6人のキャラクター。
現実世界での顔写真ではなく、アルマゲドンでのアバターだった。
「これがキョウコウさんに与していると思しき6人のGM、そのアバターッス。多分、真なる世界でもこの格好でいるじゃないスかね」
№21 ダオン・タオシー。
№33 エメス・サイギョウ。
№34 ネルネ・スプリングヘル。
№45 ニャル・ウーイェン。
№52 ミラ・セッシュウ。
№61 ドンジューロウ・ロックルック。
「この六人は、キョウコウさんがジェネシス内で抱えていた派閥とは別の、アルマゲドン内における幹部ッスね……今でもあの人にくっついてんでしょ」
いつの頃からか、誰が読んだのか、こう呼ばれているらしい。
──キョウコウ六歌仙。
~~~~~~~~~~~~
真なる世界の超巨大大陸──その中央に広がる広大な原野。
どこまでも続く平原に、ポツンと城が建っていた。
平原が途方もなく広すぎるため、遠くから見ると寂しくポツンと建っているだけだが、間近まで来ればその巨大さに感嘆の声を上げるだろう。
その建築様式は──はっきり言って滅茶苦茶だった。
天に牙を剥くようにいくつもそそり立つ尖塔は西洋風かと思えば、和風の五重塔らしき部分もあり、その横にはインド風やアラビア風の先の丸い塔があり、その中に中華風の楼閣もちらほら見える。
城の先端を成している尖塔からして統一感がないのだ。
当然、城の各部もあらゆる文化圏の建物をごっちゃごっちゃに混ぜたような節操のない作りになっている。
有り体に言い表すなら──あらゆる建物をごちゃ混ぜにした城だ。
なので、遠くから見るといびつな蟻塚に見えなくもない。
それでいて、奇妙な造形美を漂わせている。
しかも、この城──未だ建築途中なのだ。
大小様々な形をしたゴーレムやホムンクルスが働き続け、城のあちこちに新しい建造物を建て増ししていく。そこに法則性は見られず、気分次第で作っているようにしか見えなかった。
このホムンクルスやゴーレムたちを操り、城を造り続ける者がいる。
ゲームマスター№33──エメス・サイギョウ。
キョウコウと最も付き合いが長く、信を置かれているGMだ。
キョウコウのために建てたこの城を、彼は『極都』と名付けていた。
あらゆる都を圧縮してひとまとめにしたもの、あらゆる人間の業を建物に込めて圧縮した極めつけのような都。だから極都と名付けたという。
その極都内部──玉座の間。
革靴の足音を響かせて、燕尾服を着た肥満体の執事が歩いている。
背も高くなく、馬子にも衣装というには程遠い。
いつでも自信たっぷりで不敵な笑みを浮かべた下ぶくれの顔、シャツもスーツも破りそうなでっぷりとした腹、不似合いなワンレンの長髪。
どう見ても人好きそうな風体をしていない。
なのに不思議な味があり、得体の知れない愛嬌があった。
ゲームマスター№21──ダオン・タオシー。
運営の命で一般プレイヤーのフリをしてPKを好むプレイヤーを集めて、ある実験を行っていた男だ。その時は吸血鬼のフリをしていた。
その他、名を馳せたプレイヤーの調査も行っていた。
ツバサやミロ、ミサキ、セイメイ、ドンカイ……。
アルマゲドンで活躍する名プレイヤーたちの動向も監視していたのだ。
「──キョウコウ様、エメス様、こちらにおいでですか?」
ダオンは上司たちの名を呼ばわった。
返事はない──代わりに間延びした女の子の声が返ってくる。
「キョウちゃんもエメッさんもいないよ~。キョウちゃんの食休みに付き合って、どっかで将棋でも指してんじゃないの~…………zzz」
返事が終わると、寝息が聞こえてくる。
普段、キョウコウが腰を掛けている玉座に彼女は寝ていた。
目にきついくらいのショッキングピンク。
そんな色に染まった長い髪を適当に2つに分けて結った、寝ぼけ眼の少女。
華奢で細い身体には、ネグリジェと見紛う露出度の高い薄布を身に付けているが、その上にはドテラみたいに分厚いコートを羽織っていた。
実際、あれはドテラというか布団代わりだ。
いつもならキョウコウが座っている大きな玉座の中央で、彼女はそのドテラにくるまって猫のように丸まり、グースカピーと眠りこけている。
ゲームマスター№34──ネルネ・スプリングヘル。
キョウコウの寵愛を受けている女性だ。
GMなのでジェネシスの正社員でもあり、少なくとも成人しているはずなのだが……少女みたいな若々しい外見をしている。
趣味は寝ること──好きな言葉は快眠。
暇さえあれば、いつでもどこでも惰眠を貪っている。
「この“眠る”という行為が、ネルネさんの過大能力に通じているとキョウコウ様は仰っておられましたが……なんとも信じがたいですね」
そこへ玉座の間に新たな人物が入ってくる。
「なぁに大声出してぇだい、デブ。廊下にまで聞こえてんよぉ」
入ってきたのは花魁みたいな格好をした女性だった。
黒地に派手な模様をあしらった振り袖を乱暴に着こなし、長い髪も結っているのかかきあげているのか、めちゃくちゃにまとめて櫛や簪を適当に刺している。
小柄ながらもメリハリの利いたボディ。
トランジスタグラマーな胸元を惜しげもなく晒している。
「この時間ならキョウコウさんは食休みだろぉい? そんぐれえ把握しとけってんだ、このデブ執事。燕尾服が泣いてるぜ、こん畜生め」
気っ風の良い喋り方だが、いかんせん口が悪い。
本人に悪気はないらしいが、罵詈雑言にしか聞こえなかった。
ゲームマスター№52──ミラ・セッシュウ。
GMの仕事もしているが、本来はアルマゲドンのキャラクターデザインに関わっていたイラストレーターである。キョウコウが抜擢したのだ。
そのミラの背後に、背の高い男が付いてくる。
「あらぁん、でも今日はこの後、会議じゃなかったかしらん」
女性的な口調だが、声質は太くて低い男のものだ。
恐らくはこの中で一番の長身、2m近い。
その長身を足下まで覆う真っ白いマントのような、でも袖も見えるのでブカブカの着物のようなものを羽織っている。
着物みたいな純白のマント、その表面には無数の仮面で飾られている。
ひとつとして同じものはなく、世界中のあらゆる文化圏から収拾してきたのか多彩な仮面が揃っていた。縁日のお面屋より品数豊富である。
だが当の本人の顔はつるん、としたのっぺらぼうだ。
多分、そういうマスクなのだろうが、まるでデッサン人形のように目鼻口耳髪といったパーツがない。でも、太い男の声がオネエ口調で喋っている。
ゲームマスター№45──ニャル・ウーイェン。
こののっぺらぼうもミラ同様、デザイン部門からキョウコウに引き抜かれた一人だ。かつての同僚でもあるミラとよく一緒にいる。
「だからあたしもミラちゃんもこうして来たんだけど……そういえば、ドンちゃんもいないわねぇん。あの子、いるだけで目立つから」
「ドンジューロウはうるせぇだけよ。やかましいったらありゃしねえ……しかし、そういや今日は朝から静かだよなぁ……ずっといねえのかぃ?」
もう1人の幹部の姿が見えないことを2人は不思議がっていた。
ゲームマスター№61──ドンジューロウ・ロックルック。
64人のGM。№が若いほど優秀。
61番という時点で実力は推して知るべしだが、戦闘能力だけは高い。
その一点をキョウコウに見出されて採用された男だ。
「あらやだ、ドンちゃんったらもしかして……」
ニャルが何もない顔の頬に手を当てて心当たりがある素振りを見せると、ダオンがすかさず問い質した。
「ニャルさん、ドンジューロウくんの行き先に心当たりが?」
「ちょっとだけねぇん……ほら、あの子、キョウコウ様のために手柄を上げたいって騒いでたでしょん? だから、どこかで現地種族を大量に捕まえてきて、キョウコウ様に差し上げれば喜んでもらえるって……」
「この近辺の種族は狩り尽くしたはずですね……他に生息地が?」
ダオンの問い掛けに、ニャルが身体を揺さぶった。
すると、ニャルの全身を覆うマントから3枚の仮面が落ちる。
その3枚を拾い、ニャルはこちらに見せてきた。
「あたし考案の仮面占いよぉん。ほら、何度やってもこの3枚だけが、同じ方角に落ちるのよ。だからぁ、この先に現地種族がいるかもって……」
「そんな世迷い言を真に受けたのかい、あのサムライバカはッ!? カーッ、バカだねぇ、ホント、度し難いバカだよ、あいつぁ……」
同じ幹部として、ドンジューロウの愚行にミラは頭を抱えている。
いや、これは──本心では仲間を心配しているのか?
ダオンはニャルが掲げた3枚の仮面を見つめる。
1枚は猫を模した仮面、2枚目はアザラシのような海獣を思わせる仮面、3枚目は嘴があるので鳥を象った仮面だろうか?
もしニャルの占いが当たっているなら、ドンジューロウが向かった先には、この3枚の仮面が象徴するような現地種族でもいるのだろうか?
3種族も捕まえられれば成果は大きい──キョウコウ様もお喜びだ。
「そして、方角は……ここより南西ですか」
そこに地母神の加護を受けた谷があることを──彼らは知る由もない。
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