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第7章 還らずの都と灰色の乙女

第151話:世界を創り直す者たち

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 ミサキが覚醒した過大能力オーバードゥーイングは、予想通り3つだった。

 これはツバサが出会ってきたプレイヤーの中でも最多と言える数だ。多い例ではツバサ自身が2つ、ヴァナラの森に拠点を構えるアハウが2つ。

 そして、ミロとよく似た世界を創り直す・・・・能力。

 こうした複数の過大能力に目覚める者や、世界をも揺るがす能力に覚醒した者は、必ず2つの異なるさがを併せ持つ内在異性具現化者アニマ・アニムスであることが多い。

 魂が強すぎるゆえに裏返ってしまった者。

 ツバサは男性から女性に、アハウは人から獣に変わってしまった。

 それがおまえの本性だ──という仕打ちのように。

 対して、相反する2つのさがを受け入れ、どちらでもある存在になった者。

 両性具有者アンドロギュヌスと呼んでもいいかも知れない。

 恐らく、ミロやミサキは完成された内在異性具現化者なのだろう。

 世界を改変させる過大能力はその証であり、自分の意志で自由に性別を入れ替えることもできるようだ(羨ましい……)。

 そんな中でも、3つの能力に覚醒したミサキは群を抜いている。

 ひとつめ──【完璧に完オール・成された完全なパーフェクトる肉体】・ボディ

 肉体美、身体機能、運動能力……あらゆる面において完璧も完成も完全も超えたところにある、欠点のまったくない神体しんたいとなれる過大能力オーバードゥーイング

 怪力の神さえ屈服させる絶対的な膂力、瞬速の神をも追い抜く圧倒的な俊敏性、頑強で傷を負うことを忘れた肉体、あらゆる弱体化デバフをはね除ける不死身の生命力、老いも衰えも寄せつけない永遠の美貌……。

 それらを約束する常時発動型の過大能力だ。

 ツバサの【万能にしてオールマイ全能なる玉体ティ・ボディ】との共通点が多いものの、ツバサのように肉体を変化させること(髪や爪の武器化など)は不得手らしい。

 ふたつめ──【無限のインフィニット龍脈の・ドラゴン魂源】・ソウル

 地脈、霊脈、龍脈……自然界にある巨大な気の流れ。その龍脈を生み出す根源になれる能力だという。早い話、気の無限増殖炉になれるわけだ。

 大地の龍脈を操るだけではなく、龍脈を莫大な気の流れとして放つこともできるそうだ。ミサキが両手から出す巨龍はこの能力の賜物である。

 この過大能力もツバサの【偉大なるグランド・大自然ネイチャの太母ー・マザー】とよく似ている。

 ツバサも地母神として自然界の根源となることができ、大自然のエネルギー増殖炉として、森羅万象に働きかけることができる。

 ミサキは龍脈を従えることで、自然に干渉することが可能だ。

 対してツバサは龍脈を従えるなど容易であり、同時に自然を意のままに操ることさえ朝飯前だった。ここに2人の明確な能力差が現れている。

 ミサキの持つ2つの過大能力は──ツバサの廉価版れんかばんとも言えるものだ。

 同じタイプの能力を持つツバサと比べた場合、どうしても見劣りしてしまう。

 ただし、ミサキにはそれを補って余りある、場合によってはツバサをも凌駕するであろう3つめの過大能力が備わっていた。

   ~~~~~~~~~~~~

「……それが【次元の創ユニバース・造主たる者】クリエイターか」

 ツバサたちの我が家に戻ってきた一行。

 気絶から回復したミサキを居間のソファで休ませて、彼の覚醒した過大能力について説明を受けていた。

 倒れた事情を訊いていたら、ミサキが語り始めたのだ。

 いくらツバサたちが旧知の間柄だとはいえ、こうもポンポン自分の能力について明かすのは良くないのだが……信頼されている証だと思っておこう。

 ツバサにとってミサキは可愛い“生徒”。

 ミサキは“先生”であるツバサを信じてくれているのだ。

 ならば──生徒からの信頼に先生は答えよう。

 後ほどミサキには「自分の能力をベラベラ喋るな」と指導して、ツバサの過大能力についても教えておこう。でないとフェアじゃない。

 まだ表情に疲労の色が見えるが、ミサキはほぼ回復している。

「だから、もう看病とかいらないんだけど……」

 ミサキは眉根を寄せ、過保護な仲間たちに辟易へきえきしていた。

 看病などせずとも、ミサキには【無限の龍脈の魂源】があるので、自己回復できると思うのだが……あと、なんて格好しているんだ君たち・・・は。

「でも、ミサキ君が倒れるなんて滅多にないから……心配になるわよ」
「そうじゃぞ、ミサ兄が気絶するなんて前代未聞じゃ」

 雰囲気を出すために看護師(古い言葉でナース服)のコスプレをした、ハルカとカミュラがつきっきりで看病していた。

「そーよそーよ! ここはナースな俺ちゃんたちに身を委ねて!」
「「なんでアンタも着てんのよッ!?」」

 同じくナースのコスプレをしたジンは、ハルカとカミュラのツッコミで張り倒され、ミサキの足下に這いつくばる。これを待っていたらしい。

「おぉん♪ 戦女神ミサキちゃんの足に踏まれる……この、カ・イ・カ・ン♪」

 ジンを足蹴あしげにして、ミサキは第3の過大能力オーバードゥーイングについて話す。

「この過大能力はなんて言えばいいのか……俗な言い方で好きじゃないんですが、“世界を思い通りにできる”んです。オレの思ったままに……」

 不遜ふそんな物言いになってしまい──申し訳ない。

 ミサキの顔にそう書いてある。

 そんなドラゴン○ールや聖杯みたいな“何でもアリ”の能力を手に入れたなら、もっと調子に乗っても良いものだが……真面目な子だ。

 先生に気を使ったのかも知れないが──本当、殊勝しゅしょうな性格である。

 どこぞのアホ娘なんぞ大威張りで自慢したものだが……。

「なーんだ、やっぱミサキちゃんもアタシと同じなんじゃん」

 両手を頭の後ろに組んで、ミロはのほほんと言う。

 その言葉にミサキは眼を白黒させる。

「アタシと同じって……ミロちゃんもオレと同じタイプの!?」

「そうそう、アタシのはどっちかってーと“世界を好きなように書き換える”能力って感じだけどね。理屈と結果は同じだと思うよ」

 すっごい疲れるしね、とミロは疲れ果てたミサキに同情した。

 これにミサキは疲れた顔のまま半笑いになる。

「ハハハハ……普段はそんなに疲れないんだけどね。だけど、今回は魂の経験値ソウル・ポイントを100兆近く持って行かれたから……なんか、気が抜けちゃって……」

 ミサキの一言にミロは首を傾げた。

 ミロだけではない。ツバサも習うように同じ角度で首を傾げる。

 ──SPソウル・ポイントを持って行かれる?

「どーしてSPが出てくんの?」

 ツバサが問い質すよりも先にミロが疑問を呈した。

 ミロに問われたミサキは、不思議そうに返してくる。

「え? だって……この手の“世界を変える能力”って、SPを消費することで可能になるものじゃないの? オレはそうなんだけど……?」

 ミロは惚けた顔で自分を指差した。

「アタシ、SP減らないよ──使うとメチャクチャ疲れるけど」

 この一言にミサキは今度こそ驚いていた。

「ええっ!? オレはそんなに疲れないよ? 今回は使ったSPが異常に多かったから、貧血みたいになったけど、普段は全然疲れない……」

 んんんッ!? とミサキとミロは、同時に首を同じ方向に傾げた。

 ミロは世界を書き換えると、異様に体力や精神力を消耗する。

 ただし、SPの消費というデメリットはない。

 ミサキは世界を創り直しても体調に影響はない(度を超せば別)。

 ただし、効果に応じたSPが減ってしまう。

 よく似た能力ではあるものの、比較してみるとこうした違いがあるようだ。

「一長一短──と言ったところだな」

 ミサキが腰掛けるソファの後ろには、レオナルドが立っていた。

 主君の片腕として近くに控える腹心のようだ。

 レオナルドの言葉にミサキは振り向いて──困惑する。

「レオさ、いえ、師匠……ええっと、どっちで呼んだ方がいいですかね?」
「困るのはそこか……好きなように呼べばいいよ」

 既にレオナルドは「自分が獅子翁ししおうだ」と自爆気味にバラしており、ミサキはそれに大喜びで、今まであざむいていたことさえ許していた。

 ツバサがミサキの立場なら、奥歯がガタガタになるまで往復ビンタをかましているところだ。もしインチキ仙人に会えたらそうしてやる。

 あの因業ジジイがくたばるわけがない。

 師匠として尊敬はするも、再会を願うほど慕ってはいなかった。

 出会い頭に往復ビンタをかます心境から察してほしい。

 だが、ミサキは恋しかったのだろう──父親代わりの師匠が。

 ミサキの仲間たちも驚きはしたものの、「ミサキが怒らないなら、特に言うことはないかも……」ということで黙認していた。

「レオさんがミサキ君の言ってたお師匠さんなわけね……なんか納得」
「ま、ミサキちゃんがいいってゆーなら俺ちゃんもOKなわけで」
わらわはよくわからんのだが……つまり、レオ兄がミサ兄の生き別れた師匠で、正体を隠して、陰ながらミサ兄を見守ってきたみたい展開じゃな?」

 何気にカミュラが一番正しく理解していた。

 時として、幼子ほどシンプルに物事を理解する者はいない。

 仲間からの評価を背中に受けたレオナルドは目を閉じて眉をしかめる。

「今まで通りレオでもいい。こんな俺をまだ師匠と呼んでくれるなら、それでも構わない……俺はミサキ君の部下として終生仕えることを誓った身だ」

 好きに扱ってくれ、とレオナルドはすまなそうに告げた。

 ミサキは俯き加減で考え込んでから、名案を思いついたように顔を跳ね上げるとはにかんだ笑顔でレオナルドに提案する。

「じゃ、じゃあ……レオ師匠、とかどうですか?」

 まさかの合わせ技できた。むしろ合体してパワーアップした感じ?

 これはレオナルドもこそばゆいのか、ガラにもなく固そうな顔を染めると右の頬は緩めつつ、左の頬は引きつるという左右非対称な顔になった。

「そうだな……やはり、できれば今まで通りレオで頼む」

 レオ師匠は破壊力がありすぎる……レオナルドは両手で顔を覆った。

 こんな風体ふうていのくせして恥ずかしがり屋らしい。

「それで、一長一短ってのはどういうことだよ」

 ツバサもレオナルド=獅子翁だとバレたので、もはや演技をする必要もない。アシュラ時代のノリでぶっきらぼうに問い質した。

「そのままの意味さ」

 ミロはSPを消費しないが、体力や精神力を消耗する。これは連続で使うのが難しいことを意味し、戦況を見誤ると痛い目に遭う。

 ミサキはSPを消費するが、極端に疲弊することはない。これは上手く立ち回れば連続で使用が可能であり、場合によっては利点が大きい。

「……こんな具合になるかな。ミロ君の欠点は疲労感が大きすぎることだ。克服するには自身の力量を底上げしていくしかあるまい。ミサキ君はSPの消耗が激しすぎること。これはSPを獲得することで補うしかない」

 レオナルドの意見は『精進あるのみ』の一言に尽きる。

 短所を完全に直すのは、恐らく不可能だ。

 その短所を長所にも勝るように活かす手段を模索していくしかない。

「詰まるところ──短所は補っていくしかない」

 ツバサはレオナルドの言いたいことを一言にまとめてみた。

 ミサキはやる気スイッチを押されたような顔で「はい、頑張ります!」と素直に応えるのだが、ミロはめんどくさそうにソファへ転がった。

「えぇ~? 使えるんだからそれでいいじゃ~ん。そんなホイホイ使えるようになってもいい能力じゃないしさぁ~……このまんまじゃダメ?」

 ミロは上目遣いでおねだりしてくる。

 思わず現実リアルの頃みたいに甘やかしてしまいそうになるが、さすがのツバサもここは心を鬼にする。

 ミサキだけではない──ミロも鍛え上げねばならないのだ。

「ダメだな。おまえには強くなってもらう必要がある」
「ダメだね。今後の展望を考えると、君たちの力は不可欠となる」

 ツバサとレオナルドの意見が一致した。

 今度はレオナルドが、ツバサの気持ちを見透かしたように語り出す。

「先ほどの蕃神ばんしんたちが攻めてくる次元の裂け目……空間に穿たれたあの大穴。それを塞ぐことができるのは、君たちの過大能力だけだからな」

 それが最たる理由だが、他にもまだある。

「君たちは──俺たちにとって究極の切り札でもあるんだ」

 この世界に甚大な被害が及ぶような出来事があったり、もしくはファミリーやパーティーの誰がが命を落としたりした時、ミサキとミロの過大能力オーバードゥーイングがそれをくつがえしてくれる可能性があるからだ。

「ミロ……こいつ・・・を忘れたとは言わせんぞ」

 ツバサは太股にしがみついていた幼女──ジャジャ・マルを持ち上げると、母親が幼い娘をそうするように抱き上げた。

「ミロさ……ママ上……」

 ジャジャは切ない瞳でミロを見つめている。

 これにはさすがのアホ娘も心の琴線きんせんを弾かれたらしい。

 ミロは──情の深い女だ。

 友達であるジャジャが殺された時は修羅の如く猛り狂い、彼を助けられなかった時はその身が枯れ果てそうになるほど泣き喚いた。

「もう、あんな思いは真っ平御免だろう?」

 なら強くなれ、とツバサはジャジャを抱き上げたまま命じた。

 いくら天下のアホ娘でも、あれだけ怒って悲しんだことは忘れまい。

 奇跡と偶然が重なったとはいえ、ツバサとミロの過大能力が不思議な効果を発揮して、ジャジャを復活させた時の喜びだって覚えているはずだ。

 あの復活の力を──完全に自分の物としてもらう。

 もしもそれが叶うなら、ツバサたちは誰も失うことはなくなるのだ。

 ミロはジャジャの顔を食い入るように見つめると、ギュッと拳を握り締めて表情を引き締めた。ミロはやればできる子なのだ、お母さんは信じている。

「そう、だね……あんな目に遭うのは、もうたくさんだよ」

 やる気を出しただけで、ミロの威圧感がバカみたいに跳ね上がる。

 いつぞやドンカイも気圧けおされた──あの覇気だ。

 過大能力【真なる世界にファンタジア覇を唱える大君・オーバーロード】からして、この子は覇王の風格を持つからこそ、こういった能力に目覚めたのかも知れない。

 だからこそ、ミロの父親・・・・・は彼女を恐れて遠ざけ──すがりついた。

 そのことがミロと父親の関係を徹底的にこじらせたのだが、それはもう終わった話でしかない。現実に置いてきた人間関係のもつれだ。

「……わかってくれたなら、それでいい」

 ツバサはジャジャに頬ずりしながら頷いた。

 隙あらば子供を愛でてしまうのは、神々の乳母ハトホルさがである。

 これでミロも、少しは向上心を焚きつけてくれるだろう。

「ミロだけじゃないぞ。ミサキ君にも強くなってもらう。なんなら、俺と獅子翁……ああもう面倒だな、俺もおまえのことレオって呼ぶぞ?」

 好きにしたまえ、とレオの了解を得る。

「よし、じゃあ……レオ師匠♪」

「どうしてツバサ君きみが言うんだね!? しかもだ、ここぞとばかりに女性的は声色で媚びを売るみたいに!? 普通にレオでいいから!」

 サービスしたつもりが怒鳴られてしまった。

 ツバサは半眼の冷めた顔であっかんべーをしながらそっぽを向く。

 レオに嫌がらせをしてから話を仕切り直した。

「ミサキ君にも強くなってもらう。なんなら、ツバサおれとレオで、君とミロにマンツーマンの指導をしてもいい。とっておきの修行場所もあるからな」

「ああ、あの精神と時の部屋みたいな空間だね?」

 修行場所と聞いてレオが閃いたらしい。

 あの位相をズラした空間は、時の流れが異なっている。

 あそこで1週間以上過ごしても、こちらでは数秒も経っていない。短期間で集中的にLVを上げたり、SPを入手するにはもってこいだ。

 これを聞いたミサキは──光り輝くように明るい表情を浮かべた。

「ツ、ツバサさんとレオさんに、2人がかりで稽古付けてもらえるんですか!? なんですかその、夢にまで見た特訓メニューは!?」

 歓喜するその顔は戦女神イシュタルに不釣り合いな少年のものだった。

 しかし、強くなるための稽古けいこをここまで喜んでもらえるとは先生冥利に尽きるが……普通の感性からしたら、相当変わった子である。

 修行やトレーニングが大好き──まるっきり少年漫画の主人公だ。

 このように修行で自分を追い込んで強くなることを臨むタイプは、祖父の世代なら「おまえは孫悟空か」とツッコまれたらしい。

 なんにせよ、奇特なタイプである。

「ま、今後のことについては、やるべきことも考えることも山積みだな」

 ツバサは同意を求めるようにレオに振り向いた。

「そうだな……だが、2つの陣営がこうして手を組むことができれば、やれることは格段に増えていくし、更に陣営が増えれば……という希望もある」

 やっていくしかあるまい──レオは話を結んだ。

「はてさて、さてはて、難しい話は一通り終わったところでしょーか?」

 ミサキに踏まれて悶えていたジンが、やおら立ち上がる。

 いつの間にかコック服に着替えており、コック帽までかぶっている。

 フライ返しとフライパンを手にして踊り出した。

「それじゃあ今日のところはツバサお姉さまの一家と、ウチのミサキちゃん軍団が仲良くなったことを記念して、パァーッとパーティーしちゃいましょうよ!」

 忘れていた──宴会をしようと話していたのだ。

 それをツバサがミサキと勝負をしたいばっかりに、あんな大騒動を引き起こしてしまったのだ。干上がった海もそのままだし……ちょっと反省。

 ジンに続いて、メイドのクロコが厨房から出てくる。

 珍しくレオに構っていないと思いきや、自然な歩き方でさりげなくレオに接近していく、スススッ……と忍び寄り、その爆乳を押し当てようとしていた。

 それをつれなく躱すレオ。だが、クロコはめげない。

「パーティー用のありふれた料理やオードブルにおつまみ、それらの下拵えは済ませておきました。他にあればご指示をお願いいたします」

 そう主人であるツバサに報告しながら、クロコはレオナルドにおっぱいアタックを続けるが、ことごとく空振りに終わった。

 2人のやり取りは、そういうサイレントな漫才に見えてきた。

 そこにアキも加わるのだから収拾が付かなくなる。

 その3人は放っておいて、ツバサはジャケットを腕まくりすると道具箱インベントリから愛用のエプロンを取り出し、自らキッチンに立った。

「そうだな……積もる話はさておいて、飯にするか」



 今日くらい──ちょっと浮かれてもバチは当たらないだろう。


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