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第6章 東の果てのイシュタル
第138話:ツバサとミサキの恋愛諸事情
しおりを挟むダインとフミカとクロコの紹介した後、ミサキたちを艦橋へ案内する。
このままハトホルフリートで彼らの村まで行くことになった。
彼らの前で艦長席(豪華ソファ)にふんぞり返るのも印象が悪かろうと、ツバサはミサキたちと並んで立ち、窓から眼下の風景を眺めていた。
もう少し東へ飛んだ先、大河の近くに彼らの村があるという。
ミロとマリナは「楽しみ~♪」と、窓に顔と手を張りつけて待っていた。
「でも大丈夫なのか? 現地種族たちが驚くだろうに……」
ハトホルフリートを出したまま村へ近付くのをツバサは懸念する。
それに対するミサキの回答はこうだ。
「問題ないと思います。さっき披露したオレの獅子龍もよく見てますから、“また神様がでっかいの出してる”くらいに思ってくれますよ」
神様と思われた方が都合いいですし、と小声で囁いた。
「──君たちも神様扱いされてるのか?」
その小声を揚げ足でも取るみたいに重ねて訊いた。
これにはミサキも少しだけ苦笑する。
「偉そうにするのは性に合わないんですけど……彼らはこの世界における人間的存在です。対して、オレたちはアルマゲドンの頃のまま技能が使えて神族となっているし、過大能力なんてふざけた力が使える……」
同列には扱ってくれません、とミサキは寂しげに首を振った。
すると、横にいたハルカも会話に入ってくる。
「それに、あの子たちと出会った時、ちょっとしたトラブルから助けたこともあるので、何かと神聖視されちゃってて……そしたら変態……いえ、ジン君が『俺ちゃんたちは神様です!』ってアピールするもんだから……」
「なし崩しに神様になってしまったわけか」
経緯はどうあれ悪くない、とツバサは心の中で頷いた。
ミサキたちが現地種族と一緒に暮らしている、とは聞いていた。
彼らの人柄からして手厚く保護しているのは予想通りだが、あまり肩入れするのは問題視するべきだと危惧していたのだ。
だが、自分たちを“神様”と弁えているなら問題ない。
ツバサが予見する「現地種族の文明が発展したら、神となった自分たちは距離を置くべきだ」という未来に、彼らも賛成してくれるかも知れない。
あれこれ言わなくても肌で感じているのだろう。
この子たちは優しくも賢い──それが自分のことのように嬉しい。
「あの……ツバサさん? これは……?」
「どうして、マリナちゃんにするみたいに私たちも……?」
気付けば、ツバサはミサキとハルカの頭を撫でていた。
凛々しい巨乳美少女の紫髪と、スマートボディが売りな貧乳美少女の若草色の髪を、子供にするみたいに撫で回していたのだ。
ほとんど無意識でやっていたらしい。
「あ、いや……すまん、ついな」
ツバサは慌てて手を離すと、照れ臭そうに愛想笑いで誤魔化した。
「ツバサさん……やっぱりお母さんらしさが増してますよね」
ミサキが深刻そうな顔でゴクリと固唾を飲んだ。
「ダインさんとフミカさん……アキさんの妹さんも、ツバサさんの長男と次女だって言い張るし、いつの間に産んだのかと驚きましたからね」
ハルカは2人の自己紹介を思い出したらしい。
「あいつらの自己紹介を真に受けるなよ。どう考えたって年齢があわないだろうが……俺まだ二十歳だぞ? いくつの時に産んだ子だよ?」
あの2人、よりにもよって自己紹介で「わしは長男ぜよ!」「ウチは次女ッス!」と猛烈にアピールし、ツバサを困らせて楽しんでいたのだ。
「アタシが長女でツバサさんの旦那サマだからね!?」
「ワタシは四女です! そして、センセイには五女と六女もいます!」
ここぞとばかりに、ミロとマリナも自己主張する。
窓に顔を張りつけていたミロは、おでこに後をつけたまま力説した。
「それに五女のジャジャちゃんに至っては、ツバサさんがお母さんでアタシがお父さん! そこにいるクロコさんのメイド人形をボディに代理出産させた、アタシらの血を分けた本当の娘だからね! おまけに元少年の転生幼女!」
「「情報量が多すぎる!?」」
これを聞いたミサキとハルカは絶叫して絶句する。
早口で捲し立てた上に文脈的に意味不明なところがいっぱいあるが、まだ他にも子供がいて、そのうち1人とは血が繋がっていることに驚いていた。
ミロの口走ったことは本当なので、一言一句誤りもないから否定できない。
またジャジャの尊厳のためにも肯定せざるを得なかった。
2人は目を皿のように見開いたツバサに振り返る。
「…………ツバサさん、マジですか?」
「五女と六女って……つまり、三女もいるんですよね?」
「ひ、否定できないのが辛いな……」
ツバサは茹でたみたいに赤くなった顔を背けてしまった。
その後で──やり場のない思いを憤慨させる。
「仕方ないだろ! どいつもこいつも、俺のことお母さんお母さんって……しかも地母神になったら“乳母神”とか“母性本能”とか『アンタ今日からお母さんな?』みたいな特殊技能ばっか付加されるんだから!」
「あー……ちょっと心当たりありますね」
ツバサ同様、内在異性具現化者のミサキは同意してくれた。
無造作に自分の巨乳を持ち上げ、ミサキもしみじみと呟く。
「オレも異世界に来て完全に女性化しましたし、生き残るために死ににくい神族になりましたけど、オレの選んだ戦女神も“母性本能”なんかの技能が一緒にくっついてきましたから……女神系には付き物なのかも知れません」
「戦女神なんて好戦的な女神でもセットなのか」
地母神にしろ女神にしろ千差万別だ。
豊穣や慈愛といった母性的な権能を司るばかりではない。破壊、殺戮、疫病、死といった世界の暗黒面を請け負う女神だっていくらでもいる。だが、それもまた母性が秘める薄暗い部分を象徴するのだという。
母性とは分け隔てなく無償の愛を与えるばかりではない。
時として子供らを戦かせる脅威になり得るのだ。
「オカンは優しいけど厳しくて怖いみたいな?」
「当たらずとも遠からずだな」
ミロの感想が大体合っている気がする。
神々の乳母の側面ともいうべき殺戮の女神はその最たる例だろう。
また、女神系の神族には技能『母性本能』がオマケでついてくるようだ。おかげでミサキも現地種族の赤ん坊を子守できたらしい。
「つまり──お二人とも母として女としての才能があるということ」
黙っていたクロコが、唐突に口を挟んできた。
いつもの無表情にわずかな色をつけて、両手を広げて歓迎のポーズ。
「そして、お二方とも元男性とあって殿方と愛し合うことはできず、女性を愛するしかない……ようこそ、甘美なる百合とレズの世界へ!」
「「やめろ! 俺たちを誘惑するな!!」」
ツバサとミサキは声を揃えて抗った。
クロコは「あら意外」と言いたげに少しだけ眉を寄せた。
「ツバサ様とミロ様の仲は言わずもがな……まあ、最近はミロ様も男の娘になれるとのことですし、GLもNLもイケるようですけどね」
これを聞いたミサキとハルカは再び絶句。
今度は驚愕のままツバサとミロを交互に眺める。
「…………ツバサさん、マジですか?」
「ガールズラブはともかく……どうやってノーマルラブを?」
「おいやめろ、天丼になってるぞ!?」
ギャグ漫画じゃあるまいし──。
ツバサは顔を赤らめたまま、咳払いをして説明する。
「んんんっ! ま……まあ、現実でも俺とミロは一緒に暮らしてて、ミロの両親からも半ば内縁関係を認められたようなものだったからな……遅かれ早かれ籍は入れてたと思うし、こういう仲になるのも当然の流れで……」
「ま、ツバサさんがホンマモンのお母さんになって、アタシが長女と長男を行き来するリバーシブルな美少女で男の娘にクラスチェンジして、お母さんなツバサさんをベッドの上で鳴かせる日が来るとは夢にも……」
「ミロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーッ!?」
大声を上げたツバサは大急ぎでミロの口を塞いだ。
ズパァン! と景気のいい破裂音が響く掌底になったのは仕方ない。
だが、ミサキもハルカも恐ろしく勘の良い子だ。ベラベラ喋ったミロの無駄口から、おおよそ理解してしまったらしい。
どちらも顔を赤らめて、ツバサから眼を逸らしている。
やがて困惑の笑みを浮かべたまま、力ない拍手を始めた。
「えっと、あの……ツバサさん、ミロちゃん、ご結婚おめでとうございます?」
「ミサキ君、何故に疑問系なの!?」
「あの……結納とかどれくらい包めばいいんでしょうか」
「ハルカ、そんな心配しなくていいよ!?」
「とまあ──ツバサ様をオモチャにして愉しんだところでございますが」
「主人を弄んでんじゃねえよ、この駄メイド!」
ツバサが後頭部を引っぱたいても、クロコはビクとも揺らがない。
叩かれて揺れる頭、その視線をツバサから横へとずらす。
今度の標的はミサキとハルカのようだ。
「ミサキ様とハルカ様も──お交際されておりますよね?」
巨乳美少女(♂)と貧乳美少女(♀)は息を詰まらせる。
ほんのり頬を赤らめて恥じらう姿は、どこか似ているものがあった。
そして、いつの間にか互いの手を恋人握りで結んでいる。
ツバサも勘付いていたが、やはり二人は交際中のようだ。
こちらの「わかってたよ?」という視線を察したのか、誤魔化しても意味がないと判断したミサキは、大きく深呼吸すると告白した。
「…………ええ、オレとハルカは交際ってます」
ミサキが白状すると、ハルカが彼の腕にしがみついた。構図的に「当ててんのよ」みたいに胸を押し当てているが、悲しいかな彼女はまな板だ。
そのままハルカは顔を真っ赤にして告白する。
「わ、私的には! 結婚を前提にと……本気で交際してるんです!」
「素晴らしい──コングラッチレーション!」
クロコが歓声を上げると同時に、2人の頭上で祝福のくす玉が開いた。
どうやら舞台裏の能力で仕掛けたらしい。
手の込んだ祝福をしたクロコは、感激の涙を流して拍手している。
「ツバサ様とミロ様に引き続き、ここにまた尊い百合カップルが誕生したわけですね……嗚呼、素晴らしきかな真なる世界! こうして続々と性を超越した恋愛事情を成就させる素敵なカップリングが増えていくと思うと!」
クロコはそれだけで──胸が一杯です!
とか何とか叫びながら、感涙するクロコはバレリーナよろしく爪先立ちでダンスして、全身全霊で喜びを表現していた。
駄メイドの奇態を遠巻きに見つめていたミサキが提言してくる。
「……ツバサさん、こう言っちゃなんですが、雇うメイドは選ぶべきです」
「……言うなミサキ君。こいつは勝手に居着いたんだから」
それに──君んとこのレオナルドさんの子飼いだぞ、クロコ。
これを指摘すると、ツバサとハルカは半眼になった。
「あー……そういえばレオさんが言ってましたね。ジェネシスでは、アキさん以外の問題児の調教も任されてたって……」
指導という単語を使わないところに察してしまう。
「本人も教育を諦めてるみたいだな」
レオナルド氏も、彼女たちを動物のつもりで調教していたらしい。
クロコが目に余る変態なのは言わずもがな、フミカによれば姉のアキも「ウチの両親が匙を投げたダメ人間ッス」とのことだ。
「レオナルドさん、その話する度に額を気にしてましたけど……」
「神族になってるだろうに不憫な……」
異世界に来ても生え際の後退は心配らしい──南無三。
そして、クロコはレオナルドの名前が出るなり乙女の顔になった。
「ああ、そうでした。これから向かうミサキ様たちの集落にはレオ様がいらっしゃるんでしたわね……レオ様レオ様レオ様レオ様レオ様レオ様…………」
「本当にご執心だな、レオナルドさんとやらに」
ツバサが呆れてため息をつくと、クロコは力強く断言する。
「はい、私の処女膜はレオ様に捧げるため大切に護ってきましたので!」
「そんなことカミングアウトせんでいい」
「我が胎内に隙間がなくなるほど胤を注入してもらうのが夢なのです!」
「だから……赤裸々に告白すんな!」
「ゆくゆくは──その時の胤で産まれた娘と共にレオ様へ母娘丼を!」
「おまえいいかげんにしろよッッッ!?」
暴走気味のクロコを本気で引っ叩いた。
ツッコミというには過剰だが、これくらいやらないと止まらない。叩かれて冷静さを取り戻したのか、たんこぶのできた頭をさげるクロコ。
「失礼いたしました。私としたことが……少々興奮気味だったようです」
「いや、良くも悪くも少々どころか、いつも通りだったぞ?」
ねえねえ、とミロがクロコの袖を引っ張る。
「産まれた子が男の子だったらどーすんの? 母娘丼にならないじゃん」
「ミロ、おまえは話を蒸し返……」
「勿論、男の娘として育て上げ、やっぱりレオ様に母娘丼を──」
「クロコも真面目に切り返すなよ!?」
本当にいいかげんにしろ! とツバサは大激怒した。
さすがに懲りたのか、クロコとミロはどちらも自粛して大人しくなる。
その怒りの余波はミサキやハルカもビビらせたのか、2人は互いをかばい合うように抱き合いながらどん引きしていた。
ミサキまで女の子みたいだ。
ツバサはまたしても咳払いで誤魔化す羽目になる。
「まあ、なんだな……愛弟子みたいに思っているミサキ君と、何かと世話になったり世話をしたハルカが交際ってめでたくゴールイン、というのは俺にとっても喜ばしいわけで……なんか、こう、こういう気持ちはなんだろうな……?」
ツバサが言葉に詰まっているとミロが割り込んでくる。
「母親として見守りたい,的な?」
「そうそう、母親な気持ちで…………誰が母親だ!?」
忘れかけた決め台詞が、今日はよく出てくる。
久々にミサキたちと会えたので、ツバサも浮かれ気味なのだろうか?
やや調子が狂うも、ツバサはある疑問を口にした。
「…………しかし、君たちはその……今は女の子同士なわけだろ? 交際っていると言っても、その……どうするんだ? 色々とホラ……」
やはり百合というかGLというかレズビアンというか──。
女性同士の恋愛になってしまうのだろうか?
ツバサとミロの恋愛事情も似たようなものなので、他人のことをとやかく言えた義理はないのだが、どうしても母親の気持ちで心配してしまう。
ミサキとハルカは恥ずかしがるも、懺悔みたいに打ち明けてくれた。
「いや、あの……まあ、ハルカとはその……女の子同士ですることみたいなこともしてるんですけど……オレ、一時的に男に戻れますし……」
「ツバサさんとミロちゃんみたいに……GLでNLですね……」
はあっ!? とツバサは間の抜けた声を上げて驚いた。
ミサキの両肩を掴むと真顔で問い詰めた。
「一時的でも男に戻れるのか!?」
「はい、オレの過大能力の応用なんですけど……ツ、ツバサさん?」
ツバサはジト目になると血涙を流す勢いで嫉妬した。嫉妬のあまり我を忘れて、ミサキの肩を全力で握ってしまう。
メキメキと骨を軋ませるほど握力を込めてだ。
「…………何それ妬ましくて羨ましい」
「あの、ツバサさん? 痛い痛い痛い! 指、指食い込んでる!?」
「ツバサさん落ち着いて!? ミサキ君に乱暴しないで!?」
数分後──我に戻ったツバサは深々と頭を下げて謝る。
「す、すまない……羨ましさのあまり、つい……」
「いえ、まあ、オレも女神になりましたから、ツバサさんの気持ちはよくわかりますけど……ツバサさんは、過大能力とかで戻れないんですか?」
「うん、俺は無理みたいなんだ。代わりと言ってはなんだが……」
「アタシが男の娘になれるようになったけどねー♪」
すかさずミロがピースサインで割り込んできた。なんか腹立つ。
ミサキの過大能力がどのようなものかはまだ明かされてないが、どのように応用して男に戻れたのだろうか? 後で詳細を聞いておきたいところだ。
ひとまず、この話題を深掘りするのは止めよう。
またミサキに嫉妬しそうで怖い。
「ところで──あのお祭り男が大人しいな」
「そういえば……ひとり賑やかしのウチの変態が静かですね」
ツバサの意見にハルカが同調すると、ミサキは苦笑いを浮かべた。
「ジンならあっちですよ。話の合う仲間ができて喜んでるみたいです」
ジンは──艦橋のメインモニター前に立っていた。
隣にはダインがおり、メインモニターに映し出された飛行母艦ハトホルフリートの設計図らしきものを指差して、あれこれ解説しているようだ。
「なるほどなるほど、巨大龍宝石3つをメインエンジン兼燃料タンクとして代わりばんこに使うことで、永久機関モデルを実現させてるわけだ」
「注ぎ込まれたエネルギーの貯蓄と増幅ができる龍宝石が、半ば半永久機関みたいなもんじゃしのう。巨大龍宝石に溜め込まれたエネルギーも滅多なことじゃ尽きやせぬが、ツバサさんの桁外れな過大能力も常時供給されとるぜよ」
「この船体の外装はアダマント鋼のパネル? 一工夫加えてない?」
「お目が高いぜよ、マスクの人。アダマント鋼は強固じゃが靱性がいまひとつじゃからな。オリハルコン鋼をほんの少し混ぜた合金にしちょる」
「お、やっぱり俺ちゃんと同じアイデアに辿り着く人いたじゃーん♪ 合金の比率は何割? 俺ちゃんのオススメはアダ7に対してオリ3」
「武具とか身につけるもんならそれで良かろうが、こういう乗り物は強度重視じゃ思うてな。わしゃアダ8.5でオリ1.5にしちょるきに」
「なるへそ、乗員の安全第一ってわけね。メモメモっと……」
物作りの匠が2人──意気投合していた。
ハトホルフリートの構造や、船体を構成する建材について和気藹々と語り合っているダインとジン。生産系を極めた者同士、話が合うようだ。
いつものピエロみたいなハジケた道化っぷりもせず、真面目にダインと生産系な議論を交わすジンに、違和感を覚えなくもない。
男同士の職人談義に混ざれず、フミカが寂しげにポツンとしていた。
「いいんス……ダイちゃんが楽しそうなら、ウチは我慢するッス」
貞淑な妻として! とフミカは自重を主張した。
「そんな悠長なことを仰っててよろしいんですかフミカ様?」
「な、なんスかクロコさんいきなり!?」
そんなフミカの背後にクロコは忍び寄ると、彼女の耳元に唇を寄せて悪魔の誘惑めいたことを囁き始めた。
「気性が似ている男と男が出会い、互いの実力を認めて友情を交わし、親睦を深めていき、徐々にその距離が近付いていくと、ついには愛が芽生え始めて、男と男のボーイズラブでアーッ(♂)!なハッテン場に……」
「ダイちゃん! ウチもお話に混ぜてッス!」
クロコに煽られたフミカは、いきり立ってダインの片腕に抱きつき、ジンを牽制するように2人の間へと割り込んだ。
そんなフミカを見送り──クロコはほくそ笑んでいた。
「色恋沙汰ほど見ていて愉快なものはございませんね……」
「おまえ、結構えげつないよな……」
悪い奴ではないのだが、クロコは他人を煽って遊ぶ傾向があるのだ。
クロコは悪びれず、スカートの裾を摘まんで礼をする。
「申し訳ありません。そんなつもりはないのですが、私には“トリックスター”という場を乱さずにはいられない特殊技能が備わっておりまして……」
「封印しとけ、そんな傍迷惑な技能!」
ツバサがクロコを叱りつけた直後──マリナが大声を出した。
「あっ! センセイ、見えてきました! ねえねえミサキさん、あれが皆さんの村ですよね? ふわぁ……すっごく大きくて街みたいです!」
窓から見えるミサキたちの村を指差して、マリナは大興奮だった。
確かに──あれは街と呼べる規模だ。
西洋風の神殿を彷彿とさせる巨大な宮殿を中心に、扇状に広がっている。
道も整えられており、区画整備までされていた。
村ひとつの大きさは、ハトホルの谷にあるどの種族の村よりも大きい。
村の外周には畑らしきものまで広がっていた。
マリナに促されたツバサは見下ろしながら訊いてみた。
「今、あそこにはどれくらい住んでいるんだい?」
「なんだかんだで4種族、500人前後くらいだと思います……あ、あそこ以外にも川沿いにもうひとつ、水辺に住む種族の村があります」
そちらは村だろうが──こちらは完全に街だった。
ミサキはちょっと誇らしげに、自分たちの守る街を見つめていた。
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