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第6章 東の果てのイシュタル
第137話:イシュタルとの再会 ☆
しおりを挟むそこから電光石火で話が進んだ。
翌日、ツバサたちはダインに飛行母艦ハトホルフリートを準備してもらい、それに飛び乗ると東の果てを目指して旅立った。
メンバーはツバサを含む初期メンバー5人(ツバサ、ミロ、マリナ、ダイン、フミカ)と、「是非とも同行させてください!」と土下座どころか五体投地してまで参加を請うたクロコの6人である。
ハトホルフリートの外観に変更点は見当たらない。
ダインが言うには、日々改良と改造を重ねているそうだ。
個人的に目を引かれるところがひとつ。
ツバサをモデルにした船首の女神像のバストサイズが、ツバサの胸の発育に合わせて大きくされたような……きっと気のせいだ。
推進力を司るメインエンジンや火器管制は刷新されており、艦橋もリニューアルされていた。特にツバサの座る艦長席は原形を留めていない。
「なあ……これ艦長席っていうより寝椅子じゃないか?」
ふかふかのソファになった艦長席に深く腰掛けたツバサは、組んだ足を少し揺らしながら誰に問うでもなく訊いてみた。
「寝椅子ってよりソファだよね。アタシらが座っても余裕だし」
艦長席の右横に座ったミロは、ツバサの胸を枕にするみたいにしなだれかかってきた。もはやツバサも慣れっこである。
「ワタシの特別席もなくなってるので、定位置はここになりました」
左横にはマリナが座っている。
彼女は上半身をツバサの太股の上に預けており、子猫が飼い主に甘えるみたいなポーズで寝転がっていた。
艦長席は──横に広がったソファになっていた。
中央にツバサが座り、両脇にミロやマリナが座っても余裕がある。
横になればベッドにもなるサイズだ。
「ミロ嬢ちゃんやマリナ嬢ちゃんに限らず、じゃりん子たちはみんなアニキの隣に座りたがるからのぅ。じゃったら、最初からこうするべきぜよ」
モデルチェンジした張本人、ダインはそう言った。
「ハトホルフリートの原動力であるバサ兄、艦の防衛機構を司るマリナちゃん……2人の余剰エネルギーを艦へと供給するシステムは、艦内のどこかにいれば自然と供給できるように改良してあるから無問題ッスよ」
操舵輪を握るダインの傍ら、艦内システムを一括管理するデスクについたフミカも改良した箇所について教えてくれた。
フミカはエジプシャンな踊り子衣装、ダインはバンカラサイボーグ。
どちらもアルマゲドン時代の戦闘用コスチュームだ。
2人に限った話ではない。
ツバサやミロにマリナもハルカが仕立ててくれたものを、ジンがアダマント繊維で強化加工してくれたジャケットやドレスを着ていた。
外見や着心地は衣服のままだが、性能はその比ではない。
伝説の鎧レベルの防御力を誇っている。各種耐性もバッチリだ。
余所行きというわけではなく戦闘があるとは思えないが、まあこれが正装みたいなものなので、みんなちゃんと着飾ってきた。
ツバサとミロとマリナは──もうひとつ理由があるのだが。
「でもまあ、本当にダインもジンも物作りの匠だな」
ツバサは有能な長男と、何かと世話になった青年を素直に褒めた。
ツバサはメインモニターを見遣る。
艦橋の正面に掲げられたモニターには、真なる世界の大体の地形を把握した地図が映し出されていた。
これが──ダインとジンの功績である。
ダインの人工衛星を介して、ジンの人工衛星と通信できた結果、ミサキやジン、それにレオナルドやアキ、他にも数人のプレイヤーが共に暮らしており、現地種族に文化技術を教えながら村を作っているという。
もっと通信で話したかったが、電波が遠すぎて通信が途切れがちになることがあったため、ツバサが「直に会いに行く」と提案したのだ。
「ぶっちゃけ、ミサキちゃんに会いたいだけでしょ~?」
ミロが半眼でニヤニヤ笑っている。
「い、いや、別に、俺はそんなつもりは…………」
ある──愛弟子に一刻も早く会いたい。
あれからもっと強くなっているに違いない。ミサキの上達振りをこの身で味わいたいと、武道家としての本能が疼いて仕方なかった。
そんなわけで通信もそこそこに、ミサキに会いに行くことを決めた。
そこから──ダインとジンの動きは迅速だった。
それぞれの人工衛星の機能を連携させると、お互いの住んでいる地域のみならず、真なる世界の地形をおおよそ調べ上げたのだ。
これにより真なる世界の地図データ(仮)が組み上げられた。
ハトホル一家の住んでいる場所と、イシュタル一家の暮らしている場所。それも判明したので、こうして迷わず一直線に向かうことができるのだ。
「それにしても……でっかい大陸がドーン! とあるだけなんスね」
地図を見ながらフミカがしみじみ呟く。
まだ朧気ながらも、この世界の地理がなんとなく見えてきた。
フミカの言う通り──そこには超巨大な大陸が広がっていた。
全体的には上下を膨らんだ楕円形をしている。
天を衝くほどの山脈が聳えていたり、現実の地球にある河川の何十倍もある大河が流れていたり、琵琶湖が池に思える大きさの湖もあった。
だが、ダインとジンの人工衛星2つだけでは、この大陸の全容を解明しきれておらず、部分的に“UNKNOWN”となっていた。
特に北と南に広がる大陸はほぼ不明なままである。
しかし、判明した地形もまた多い。
インド大陸のように大きく突き出た土地や、アラビア半島のように入り組んだ湾に囲まれた場所もあり、海と見紛う巨大な湖に群島が浮かぶ地域もあった。ひとつの大陸と言えど、その規模や複雑さは地球の比ではない。
自然環境は多様性に優れているらしい。
「現実で6つの大陸に別れた世界地図を見てたわしらにゃ、こがいにどでかい大陸が1個だけドォーン! とあるんは違和感あるぜよ」
操舵輪を揺らすダインは、真なる世界の地図に独りごちた。
ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸、南極大陸。その6つに別れていた現実世界の地図。
世界地図にしろ地球儀にしろ、誰しも一度はお目に掛かっているはずだ。
しかし、地球の大陸も最初からあのような配置だったわけではない。
「そうは言うがなダイン、大昔の地球だってこの真なる世界みたいにひとつに繋がっていた時期があったんだぞ。3億年前から2億年前だったか……」
「そうなんか? そりゃ知らんかったぜよ」
物知りなフミカはすぐにピンと来たらしい。
「ウチ知ってるッスよ。超大陸パンゲアのことっすね」
「そう、それだ。三日月を太らせて曲げたような感じのな」
この大陸の岩盤も周期的に動くのであれば、プレートテクニクス理論が通じるかも知れない。いずれ過大能力で地盤を探ってみよう。
龍脈を操れるのだから、大陸プレートも動かせるはずだ。
とんでもない力を使い、ものすごく疲れそうだが……できると思う。
ツバサの膝の上にいたマリナが腕を持ち上げる。
「ワタシたちがいるのは、あの西の端っこですよね」
ツバサの膝の上にいるマリナが、大陸の最西端を指差した。
巨大な大陸の最西端にツバサたちの暮らすハトホルの谷がある。
「そんで、ミサキちゃんたちがいるのは東の端っこと……」
釣られるようにミロが大陸の最東端を指した。
大陸の最西端と最東端──これでは会うのも一苦労だ。
「ちくっと前、わしとフミでハトホルフリートを東へ飛ばして、あれこれ調べたが……あれでこん大陸の半分ぐらい横断しとったんじゃな」
「東へ東へ3万㎞強、もうちょいで会えたかも知れなかったんスね」
この2人は以前、調査に出掛けたことがある。
あの時に粘っていれば、ミサキたちと遭遇していた可能性もあったわけだ。
「なんにせよ、こうして互いの居場所が知れたんだ」
会いに行けばいい、とツバサは頬杖を突いた。
双胴飛行母艦ハトホルフリートは現在、飛行船にあるまじき速度で東に向けて直進していた。宇宙戦艦もかくやという外観は伊達ではない。ダイン曰く、成層圏を音速で飛ぶこともできるとか何とか……もう飛行船じゃない。
予定通りならば、もうじき目的地のはずだ。
日が昇る前にハトホルの谷を出て、そろそろお昼過ぎになる。
このペースなら午後にはミサキたちと再会できるだろう。
ミサキに会える、そう思うと柄にもなく気持ちが逸る。
ドレスの件でハルカに懐いていたマリナも待ち遠しそうだが、ミロまで鼻唄を奏でながら期待している素振りを見せるのには違和感があった。
ツバサは前もって注意しておくことにした。
「ミロ、わかってると思うが……」
「わーかってるよ、ミサキちゃんにイジワルしないってばさ」
以前ミサキたちと一緒にいた時──ミロは終始不機嫌だった。
表面上はいつものミロなのだが、ツバサがミサキに武術の指導をしていると奇声を上げて割り込んできたり、過剰なくらいスキンシップを求めてきた。
今にしても思えば、弟妹の生まれた子供が『お母さんの愛情を横取りされる!』と思い込んで癇癪を起こすのに似た行為だったのだろう。
こう見えてミロは独占欲が強い。
ミロは鼻唄を鳴らしたままツバサの胸に抱きついてきた。
「もうミサキちゃんにヤキモチ焼いたりしないモン♪」
ドンカイのオッチャンにも言われたからね、とミロは得意げに語る。
「ツバサさんが相撲部屋の親方なら、アタシは女将さんで、ミサキちゃんは期待の新弟子なんだよね? つまり、ミサキちゃんはツバサさんとアタシの娘も同然ってわけだから、新しい娘が増えるようなモンだしね!」
「なんだ、その解釈の仕方は……」
大体合っているので訂正しにくいし、ミロの機嫌も上々なので良しとしよう。ドンカイには後でお礼を言っておかなくては──。
さすが家族の最年長、年の功で言いくるめてくれたらしい。
自分がツバサの嫁(本人は旦那のつもり)! というツバサに対する心理的有利を自覚できたため、ヤキモチを焼くことない心の余裕ができたのだ。
「……ったく、いつまで経っても子供だな」
そんなミロが愛おしい──掛け値無しの一番でだ。
ツバサは苦笑すると自らミロを抱き寄せる。勿論、マリナも分け隔てなく愛情を込めて抱き上げる。ある意味、これがツバサにとってのハーレムなのだ。
ハーレムの相手は全員──愛娘になるわけだが。
「アニキー、そろそろミサキくんいうんの住んでるところぜよ」
「そうか、もう着くんだな」
ダインの言葉で我に返ったツバサは、娘たちから手を離して立ち上がる。
メインモニターが上へとスライドして天井に格納され、艦橋正面の窓に広がるのは真なる世界東部の風景だ。
この辺りもハトホルの谷がある地域に負けず劣らず、自然の豊かな風景が広がっていた。ミサキやジンが過大能力などで回復させたのか?
それとも──東部には手つかずの自然が残されていたのかも知れない。
ミサキたちと再会できたら、別次元の侵略者の有無なども話さなくてはならないだろう。喜んでばかりはいられない。
風景を眺めながら、ツバサは周囲を注意深く見渡す。
「近くまで来たら合図を送る、とミサキ君は言っていたが……」
フミカも索敵系技能で調べ始めてくれる。
「ハトホルフリートはこの図体ですし、フォルムに関する情報もあっちに送付済みッスからね。ここまで近付けばわかると思うんスけど……」
その時──前方に巨大な光の柱が立ち上った。
いきなり空中に閃光が瞬いたと思えば、その光の中から空に向かって光の帯が立ち上り、それは大きな龍を形作っていった。
ただし、その龍はたてがみを蓄えた獅子の顔をしている。
獅子龍とでも呼ぶべきその龍は気の力で象られたものだが、どうやら龍脈を具現化したものらしい。もしかしたらミサキの能力だろうか?
「あのライオンみたいな龍さん……お辞儀してませんか?」
マリナの感想が正解だった。
「てか、素敵な笑顔で手をブンブン振ってない?」
ミロの感想がこれまた正解だった。
獅子龍はハトホルフリートを全力で歓迎していた。
「──あれが合図だ」
~~~~~~~~~~~~
クロコに艦橋で留守番をさせて、ツバサたちは甲板へと出た。
そう──あの駄メイドも一緒に来ているのだ。
しかし、今日は大人しい。
だかといって清楚ではなく、黙ってツバサの後ろに控えているかと思えば、可聴領域ギリギリの囁き声で延々と「レオ様レオ様レオ様レオ様レオ様レオ様……」と繰り返していた。
百合でレズ寄りのバイセクシャル──それがクロコという女。
そんな彼女のハートを射止めたのは、一体どんな男なのやら……。
彼女はさておき、ツバサたちは甲板で彼らが来るのを待っている。
「…………来たッ!」
眼のいいミロが真っ先に気付いた。
飛行系技能で空を飛んでやって来たのは──ミサキである。
やはりツバサ同様、アルマゲドン時代のアバターの姿をしており、本当は17歳の少年だというのにグラマラスな美少女のままだった。
前に見た時も露出度高めのボディスーツだったが、より洗練されたデザインのものになっており、その瑞々しい媚態を惜しげもなく晒していた。
長い紫色の髪をなびかせて、優雅に甲板へ舞い降りる。
少女の姿をしているのに、少年の精悍さを感じさせる佇まい。
物腰もさることながら気力も充実しているのがわかる。ちゃんと怠らずに鍛錬を続けてきたらしい。これは武道家として期待できそうだ。
ツバサの胸の奥から期待が込み上げてくる。
何より──彼の無事な姿を見られただけでも嬉しかった。
「ツバサさん、ミロちゃん、それにマリナちゃんも……」
お久し振りです、とミサキは相変わらず律儀に挨拶から初めてきた。
「ああ、久し振りだなミサキ君。それに……」
そんなミサキに──寄り添う小柄な人影が1つ。
彼女にもツバサたちは見覚えがあったし、大層世話になったものだ。
「──ツバサさん! みんな!」
感極まった彼女は、ツバサの名を呼んで駆け込んでくる。
若草色の髪を2つに結って胸へと流して、桜色のロングカーディガンを羽織った華奢な少女。その笑顔は春に咲き誇る花々のように華やいでいる。
ハルカ・ハルニルバル──ツバサたちの衣装を作ってくれた少女だ。
人工衛星の通信で「ツバサたちと一緒にいる」ということは聞かされていたが、こうして面と向かって再会すれば感動も倍加させられる。
「ハルカ、君も元気そうで何よりだ」
駆け寄ってくるハルカを、ツバサは両腕を広げて抱き留める。
そのままおもいっきり抱き締めると、ハルカは潤ませた瞳をギュと閉じて涙の粒をこぼしていた。ツバサはより一層の愛しさを込めていく。
そこへミサキも歩み寄ってくる。
ツバサは片手を広げて「ん!」と顎を手前にしゃくった。
──まだツバサの胸には余裕があるからミサキも来い。
言葉ではなく態度で示したのだが、元少年であるミサキは照れ臭いのか頬を赤らめてたじろいでいた。それをツバサは母の眼差しで見据える。
「す、すいません、じゃあ、失礼します……」
根負けしたミサキは、ツバサの胸にゆっくり入ってくる。
それを全力で抱き締めると、ハルカと一緒に抱擁してやった。ミサキとハルカ、両方の頭をグシャグシャと掻き混ぜるように撫でてやった。
嬉しさのあまり、ツバサもはっちゃけ気味である。
「あの、ツバサさん……ちょっと変わりました? 前よりもお母さん度がパワーアップしてるような気がするんですけど?」
「誰がお母さんだ」
恥ずかしがるミサキ相手に、久々の決め台詞を言えた。
「お母さん度も増してるけど……ツバサさん、バスト大きくなってますよね? ウエストは据え置きだけどヒップも……そのせいじゃないかしら?」
「おまえはよくわかるな、ハルカ」
さすが服飾師の技能をMAXまで極めた仕立屋娘だ。
「このスーツもまた仕立て直さなくちゃいけませんね」
「ああ、お手柔らかに頼む……」
露出は控え目にしてね、とツバサは小声で頼んでおいた。
「ツバサさん、1人だけズルーい! アタシもアタシも!」
「センセイ、ワタシたちも忘れちゃイヤです!」
ミサキとハルカは、ミロとマリナにも抱きつかれて揉みくちゃにされた。
再会を祝してのことだが、どちらも苦笑している。
特にミロからの風当たりがきついとの自覚があったミサキは、ミロの親密さが良くなっていることにちょっと困惑気味だ。
「でも良かった、ツバサさんたちも無事で……」
ホッとしました、とハルカは顔を上げて目元の涙を拭う。
「それは俺の台詞だよ。まあ、ミサキ君やジンはタフだから無事だと信じていたが、ハルカ、君はあまり戦闘系じゃなかったから……」
まさかミサキ君と一緒にいるとは──安心することこの上ない。
それについてハルカは少し触れる。
「ええ、こっちの世界に飛ばされた時、運良く近くにミサキ君たちがいてくれたんです。おかげで助かりました……色々と危機一髪でしたからね」
「ついでに言うとオレとハルカ──現実でも知り合いでした」
「「そーなの!?」」
ミサキの補足に、ミロとマリナが驚きの声を上げる。
聞けば2人は(ジンも含む)同じ高校の、それも同じクラスの同級生だとのことだ。そして、ハルカにいたっては学級委員長だったという。
「でも、ウチの学校は進学校でしたから……その、学級委員長がゲームで遊んでいるのは体裁が悪いと思ったもので、だから、つい……」
「あ、それが挙動不審だった理由だな?」
ツバサはハルカの辿々しい言動から全てを察した。
アルマゲドン時代のハルカは、人見知りというか現実での知り合いと出会うことを極端に恐れていた節がある。つまり、身バレを恐れていたのだ。
学級委員長という立場ゆえ──だったのだろう。
「まあ、もう全部ミサキ君たちにバレちゃいましたから今更ですけどね」
そう言ってハルカは屈託なく笑い、ミサキの横に並んだ。
ミサキも似たような笑顔で頷いている。
おや、もしかして──この2人は?
「ところで……あの愛すべき馬鹿は来てないの?」
ミロは額に手を当て、わざとらしくキョロキョロと見回した。
「愛すべき馬鹿? ああ、ウチの変態なら……」
ミサキが説明するよりも早く、遙か上空でキラーン! と何かが光る。
「お姉ぇぇぇええええええぇぇぇさまぁぁぁああああああぁぁぁーーーッ!」
絶叫と共に急降下してきたのは──赤いマスクの変態だった。
アメコミヒーローを意識したマスクをかぶり、機械系エンジニアを意識した格好に工具を詰め込んだカバンやベルトを帯びた長身の青年。
ミサキと同い年のはずだが、背が高いため少年らしくない。
そんな感じのデカいマスクマンが降ってくる。
「ツバサお姉さまミロちゃんマリナちゃんお久しぶりぶりーッ! さあ、空から急転直下してくる俺ちゃんを抱き留めて抱き締めてホールドミィーッ!!」
空から落ちてくるマスクの変態を──ツバサたちは避けた。
「華麗にスルーどべぎゃらぐわぽじひでぶあべしげべれれれれッ!?」
よりにもよって顔面から着地し、落下してきた勢いのまま甲板を摩擦で火が起きそうな勢いで滑っていくと、50mぐらい後方でようやく止まった。
尻を突き上げたへなちょこなポーズで、身動ぎひとつしない。
しばらく死ぬ寸前のゴキブリみたいにピクピクしていたが、やがて生まれたての子鹿よりも頼りない腰つきで立ち上がり、こちらに振り向いた。
よろけながらも片手、片足、膝を甲板についた“三点着地”のポーズを決めて、マスク越しでもわかるほどの作り笑いを浮かべる。
「お、俺ちゃん……スーパーヒーロー着地でステキに参上……ッ!!」
「それ、膝悪くするってデッ○プールが言ってたよ」
ミロにツッコまれた瞬間、限界が来たのか崩れ落ちた。
物作りの変態──ジン・グランドラック。
こちらの世界に来ても平常運転なので、とりあえず安心した。
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