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第3章 彼方に消えしは幽冥街
第54話:男らしい“格好”できる? ☆
しおりを挟む「んじゃ、もう一度ルールを確認するよー」
既に勝ったつもりでいるのか、ミロは得意気にルールの説明を始める。
「ツバサさんが男らしい格好をできればツバサさんの勝ち」
男装が似合っていればOK。ツバサが自分で見てもミロから見ても、男らしく見えること、両者が合意できなければダメ。
ツバサが勝利したら、今夜はミロは何もしないで添い寝するだけ。
「逆に、ちょっとでも女の子っぽさが目立ったらツバサさんの負けだからね」
どこからどう見ても男性には見えず、少しでも女性らしさを醸し出すような雰囲気があればツバサの負け。こちらも両者の合意が必要。
ツバサが負けたら、今夜一晩はミロにされるがままにすること。
「……いい? 勝者の権限は絶対! 敗者には言い訳も許されないし、土下座でもう1回ワンチャンも無しだからね?」
男性向け衣装のデータを率いて、ミロはほくそ笑む。
「ああ、当たり前だ……男に二言はない」
ツバサは重い胸の下で腕を組み、真っ向から迎え撃つ。
着替えやすいようにとツバサは寝間着を脱いで、素肌にブカブカのシャツワンピースを着ていた。その下にはインナーどころか何もつけていない。
すぐに着替えられるようにだ。
「じゃあ手始めに──下着から試してみる?」
ミロは男性向け下着のデータをいくつか実体化させた。
ツバサは最近にしては珍しくトランクス派だ。高校時代はボクサーパンツが主流だったので、「顔は女っぽいのにオヤジ臭い」とよく言われたものだ。
その度に「誰が女っぽいだ!」と怒鳴ったのは言うまでもない。
ミロもそれは熟知しているので、用意するのはトランクスばかり。ご丁寧に現実でのツバサのサイズだ。
ツバサは適当に選んで穿いてみる。
「これぐらい楽勝に決まっ……て…………ッ!?」
──はけない!?
太ももまでは上がるのだが、大きすぎる尻がつっかえてトランクスが上がらないのだ。ウェストとヒップの差が男の時とはまるで違う。
無理やり上げようとしても、トランクスの生地にそこまでの融通性はない。これがボクサーブリーフならまだ何とかなるのだが……。
無理やり引き上げようとしても、むっちりした太ももで詰まってしまう。
デカすぎる巨尻を支えるのだから、太ももも当然のように極太になっていた。武道家として鍛えた足腰の筋肉に、女性としての皮下脂肪が追加されているのだから更に倍である。太もも×ぶっとい=ぶっとももというやつだ。
このぶっとももが女性らしい下半身のシルエットを強調していた。
「あれあれー? どうしたのかなー、ツバサさーん?」
ミロはムカつく笑顔で、楽しそうに狼狽えるツバサを見ている。
まるでこうなることがわかっていたかのように──。
いや、これはツバサが浅はかだった。
男だった頃とまるで体型が違うのだ。特にバスト、ウェスト、ヒップなどのスリーサイズは激変しているから、男物なんて着られるわけがない。
自分は男だ──という強靱な意志がツバサにはある。
それが自らの女性化した肉体を直視させず、「このグラマラスな体型では男物など着られない」という正常な判断能力を奪っていたのだろう。
正直「頑張ればまだ着られる、男装できる」と思い込んでいた。
いや、思い込みたかったのかも知れない。
過信めいた思い違いを自覚したツバサは、とてつもない焦燥感に焙られる。
この勝負──最初からツバサに勝ち目などなかったのだ。
初手のパンツでもう詰んでいる。
「くっ、この! 上がれ、ほら! これぐらい、はけ……たッ!」
おもいっきりトランクスを引っ張り上げ、お尻の肉を力尽くで詰め込み、どうにかウェストまで届いたと思った矢先、ビリッ! と嫌な音がした。
トランクスのお尻部分──その布地が破けたのだ。
ツバサは口を半開きにして目尻に涙を溜めたまま、顔を真っ赤にしてプルプル震えることしかできなかった。ただ、ひたすらに恥ずかしい。
何も言えないし、リアクションさえ取れない。
「負けを認めますかー? それとも続けますかー?」
ミロは勝ち誇った笑みで尋ねてくる。
「……うっ、く、くそぉ……次! もっとサイズの大きいのくれ!」
この時点で気付くべきだったのだろう。
今のツバサの下半身では、男物のパンツやズボンは絶望的に似合わない。
大きいサイズなら着られるが、問題はそこじゃない。
穿けたとしても──見苦しいのだ。
そもそも、ツバサみたいに下半身が豊かな女性が男物をはこうとすれば、ウェストに合わせるとヒップや太ももで詰まってしまう。
逆にヒップに合わせればいいと思うだろうが、そうするとウェストがブカブカでやっぱり支障が出てくるのだ。
現に今も──。
「うわぁ……これは……ないわぁ……」
ミロが用意した大きな姿見鏡の前で、ようやくはけたトランクスを映してみると、あまりの変わりように情けなくなってきた。
大きいサイズのトランクス。ウエストがゆるゆるで安定感がなく、全然落ち着かなかった。おまけにヒップ周りはまだきつい。
ブカブカなのでゴム部分を持ち上げようとすると、布地が股間に食い込んできて、そこには“何もない”ことを余計に強調してしまう。
スススッ、とミロが忍び寄ってくる。
自分の情けない姿に動揺しているツバサに寄り添うと、物悲しいほどスッキリしている股間にそっと細い指を這わせてきた。
愛撫のような指使いではない。優しくタッチしてきただけだ。
しかし、敏感になったそこを警戒したツバサは反射的に腰を引いてしまう。
「あっ……こ、こらっ!」
思わず声が出るツバサをミロはクスクスと笑っていた。
ミロはトランクスの両端を持ってグイッ! と引き上げた。するとパンツがツバサの下半身に食い込み、股間に男らしい膨らみがないことを露わにする。
生地越しに女性的な股間を浮かび上がらせるくらいに……。
「やっとはけたみたいだけどさ、これじゃあ『わたしはオンナノコです』って主張してるようなもんじゃない? だって、ツバサさんのここ……」
男の印がないじゃん──甘い声で囁かれる。
しかも耳元で、息を吹きかけるように、艶っぽく──。
悪寒とはまったく異なる電流みたいな衝撃が、ツバサの背筋を這い上がる。直接的な快感ではないものの、立っているのが辛くなる気持ち良さがあった。
ミロに屈しそうになるが、歯を食い縛って堪える。
「くっ……トランクスがダメなら、ボクサーパンツだ!」
どちらかと言えば、最近の男性下着はこちらが主流だろう。
こちらなら生地に収縮性もあるので、このデカ尻でも難なくはける。
「ほら見ろ! これなら問題なくはけ……」
今度はしっかりはけたが、どこか違和感がある。
ボクサーパンツってこんなだっけ? なんだか大きなお尻とか太もものラインがくっきり映えるし、何もない股間がより一層目立つような……?
これ、本当に男性用か? やたらフェミニンな気がする。
すると、ミロがテヘペロ♪ と舌を出す。
「あ、ツバサさんごめーん。それボクサーパンツはボクサーパンツでも、女の子用のレディースだったわー。メンズじゃなくてレディースだったわー♪」
大事なことなので、ミロは丁寧に2回も繰り返した。
「おまえ……絶対、わざとだろ……」
もはや反論する気も失せるし、死にたくなるほど痛感させられた。
この身体で男性下着は無理──それを思い知らされる。
「えぇい! 次だ次! 要するに男装できればいいんだろ! 下着がショーツだろうがパンティーだろうがレディースのボクサーパンツだろうが、上っ面でも男物を着てればいんだろ!? シャツ寄越せ、ワイシャツだ!」
ワイシャツにビシッとしたリーマンスーツを着こなし、大人の男らしく振る舞えばいいんだ! とツバサはヤケになって言い張った。
「はいな、それじゃあホワイトカラーなワイシャツどうぞー♪ これもちゃんと現実のツバサさんのサイズに合わせてあるからねー?」
「うっ、そ、それは……当たり前だ!」
トランクスの一件もあり、同じサイズだとまた失敗するんじゃないかと思ったが、ここまで来たら引くに引けない。ツバサはワイシャツを引ったくるとすぐに袖を通して、ボタンをひとつずつはめていくのだが……。
「ほーら、今度こそちゃんと着ら……れ…………ッ!?」
──ない!? ボタンが留まらない!?
襟を留める1番目のボタンはともかく、そこから下の2、3番目のボタンが一向に留まらない。足下の視界をシャットアウトするほどの爆乳が、これでもかと存在感を誇っているためだった。
辛うじて襟元のボタンと5番目から下のボタンだけは留まっているが、開いたままのワイシャツからは乳房の谷間エロティックに覗けている。
というか──開けっぴろげだった。
「う、嘘だ……俺のおっぱい……いや、胸はここまで卑猥に……いや、いやらしく、違う! こ、こんな大きくなかったはず……」
心なしか──2ヶ月前より大きくなっているような?
そんなわけない! と首を振って否定する。
改めて、変わり果てた自分の肉体に戸惑ってしまう。
彼シャツなんて言葉はあるが、あれは男とは体格差がある小柄な女性が、彼氏のシャツを着てブカブカなのに萌えるものだ。
ツバサの場合、身長や体格は元の自分と大差ない。
男の自分と同サイズのワイシャツを着ているはずなのに、ろくにボタンが留められないのは大きく張り詰めた爆乳のせいだった。ぱっつんぱっつんにおっぱいが誇張されており、萌えるどころがエロス方面に全振りのヴィジュアルだった。
ミロは両眼を弓なりに曲げて、いやらしい視線をこちらに送る。
「ツバサさ~ん……ノーブラだからえらいことになってるよ?」
「えらいことって、あっ…………きゃっ!?」
つい女の子みたいな声を上げてしまった。
ピチピチに張りついているワイシャツの胸元は、乳房どころか乳首や乳輪の形までくっきり浮き彫りにしていた。
つまり──おっぱいのラインが丸わかりなのだ。
慌てて両手でその部分を覆い隠すと、ミロがまたクスリと笑う。
「そーやってるとさ、グラビアモデルの手ブラみたいだねー♪」
「誰が手ブラだ……ッ!」
屈辱のあまりギリギリと歯ぎしりをするツバサだが、手でのブラジャーを指摘されても恥ずかしくてやめられない。
あんなくっきり浮き出たもの、見られたくもなかった。
今度は腕で乳房を隠しつつ、意地でもボタンを留めようとする。
ギチギチとワイシャツが悲鳴を上げてもお構いなしだ。
「よ、よし、できた! ほら、ちゃんとボタン全部留まったぞ!」
成し遂げた とばかりにツバサはガッツポーズ。
次の瞬間──2、3番目のボタンがブチブチッ! と弾け飛んだ。
それがミロの両眼にジャストミートする。
「バルスッ!? いったーいッ! 目が、目がーーーッ!?」
ボタンの直撃を受けた両眼を押さえて、ミロはひとり大騒ぎをする。
自業自得だアホ、とツバサの溜飲はちょっと下がった。
そんな時、はたと閃いた。
「!! そうだよ、サラシをすればいいんだ! 下着はともかく、サラシでこの胸を押さえれば……きっと着られる! なんで気付かなかったんだ!」
「無駄だと思うけどなぁ~……」
ミロは眼球を真っ赤に腫らしてぼやいた。
ツバサはサラシを要求すると、すぐに巻きつけていく。
ギチギチにサラシを巻いて爆乳を押し潰そうとするが、その効果は目に見えるほど現れていない。こんもりした胸元の膨らみは健在だった。
鳩胸だ、と言い訳するのも難しいレベルの盛り上がり方だ。
そして、呼吸できないくらい息苦しい。
「ツ、ツバサさん大丈夫? 顔色とかおかしくなってるよ?」
ミロが真面目に心配するほどのようだ。
「ぜ、ぜぇ、はぁ、ぜぇ、な……なんの、これしきぃ……ッ!?」
ブヅン! と頼みの綱が切れる音がした。
きつく巻いていたはずのサラシが、ツバサの爆乳の圧力に耐えかねて引き千切られてしまったのだ。サラシの切れ端が床に散らばる。
解放されたツバサの胸は、バルンバルンとダイナミックに揺れ動いた。
そして、容赦ない敗北感がツバサを襲う。
口から魂の抜け出るようなため息を吐いたツバサは、膝から崩れ落ちて倒れ込みそうになるところで両手を床に付いた。
ツバサは挫折のポーズのまま、静かに啜り泣く。
「うっ、えっぐ……ひっく、ううっ、ぐすぅ……お、俺の負けだ……」
もうダメだ──さすがのツバサも心が折れた。
これ以上の恥を去らしたくない。羞恥心が保たない。
それなら早めに白旗を上げて降伏しよう、と諦めた結果である。
下着やワイシャツだけで何度も辱めを受けたのだ。これで男装しようものならもっと笑いものにされるという予感もあった。
あと──早く楽になりたかった、というのもある。
男物を着ようとして失敗する度、ニヤニヤと笑うミロが「ツバサさんはもう男の子じゃないんだよ~? ほ~ら、やっぱり着られないじゃな~い♪」という無言の圧力を発しており、事実その通りになってしまった。
その圧力に耐えられなかったのだ。
ミロに性的な意味で弄ばれて男としての自尊心がズタボロにされるのを恐れていたが、その前に徹底的に叩き潰された気分である。
「よっしゃーっ! ミロさん大勝利ーーーッ!」
ツバサが敗北を認めると、ミロは諸手を挙げて勝利を喜んだ。
嬉し泣きで万歳三唱をした後、ギラリと瞳を飢えた獣のように輝かせた。
「さーてと、それじゃあツバサさん、約束通りに……」
両手をワキワキと動かして、ほぼ全裸のツバサに躙り寄ってくる。
その気迫に飲まれたツバサは、強姦魔に脅える乙女のようにジリジリと後退るしかなかった。半泣きになりながら首を小さく左右に振る。
「まっ、ちょ、待ってミロ! まだ心の準備が……ッ!?」
「フッフッフッ……問答無用! ツバサさんは今夜アタシのもんだーッ!」
「いや、いやだ、ま……いやああああああああぁぁぁーーーッ!?」
飛び掛かってきたミロに押し倒されたり立たされたり座らされたり揉まれたり撫でられたり吸われたり…………色々とされた後、着替えさせられる。
「えっ、えっ、ううっ……こ、こんな格好……やだよぅ……」
「すごいよツバサさん! 今までで一番似合ってる! 超絶ステキ!!」
ミロによって強引に着替えさせられたツバサは、泣き顔のまま今の格好を見せつけられるように姿見鏡の前に立たされた。
ツバサが着せられたのは──ブライダルインナー。
結婚式で新婦がウェディングドレスの下に着る下着のことだ。
しかし、普通のブライダルインナーよりもエロティックにデザインされており、色合いもホワイトというにはピンクが勝っている。おまけに布地がレースみたいに薄いので、よく目を凝らせば大事な部分が透けて見えそうなのだ。
ガーターベルトやストッキングなんて初めて着せられた。
その上、頭には長い髪を覆うヴェールまで被らされている。
「こ、こんなの……花嫁衣装みたいじゃないか!?」
そうだよー♪ とミロは背中から腕を回して抱きついてくる。
重い乳房を支えるように持ち上げたと思ったら、いきなり手を離した。
下から支えられることで少し楽になった乳房の重みが、再び重力に従って重々しく落ちればズシン! という重量感によって息が詰まりそうになる。
同時に、激しく揺れる乳房に疼痛にも似た淡い快感が走った。
「…………うぁ」
それにツバサが喘ぎにも似た声を漏らすと、今度は愛玩動物でも愛でるみたいに優しく撫で回す。
ツバサの特大爆乳は信じられないほど感度がいいので、撫でられるだけでも意識が桃色に染まるようなな快感がこみ上げてくる。
男だった自分を忘れそうなくらいの気持ちよさだ。
また声が出そうになるのを唇を噛んで堪える。
「そう、ツバサさんは花嫁──そして、新郎はア・タ・シ♪」
ミロはツバサの体格の割に細い柳腰に手を回すと、軽々と抱き上げる。
いつの間にかミロも純白のタキシードに着替えていた。
ツバサは困惑した──まるで逆じゃないか!?
ツバサが新婚初夜の花嫁みたいな格好をさせられて、ミロはそんな花嫁のあられもない姿に情欲を滾らせる新郎みたいな格好で…………。
「逆だろこれぇッ!? こんなの間違って……きゃあっ!?」
ヒステリーじみた泣き声でツバサは訴える。
しかし、ミロはツバサの悲鳴に耳を貸すことはなく、抱き上げたツバサをベッドへ放り投げると、その上にのしかかってくる。
「間違ってなんかないよ? ツバサさんは今日アタシの花嫁になって、本当の意味でみんなのお母さんになるの。そんで、アタシは美少女だけど涙を飲んで男役をやってあげるから。みんなのパパでママってことでいいんじゃない?」
「お、おまえの言ってること無茶苦茶だ……あっ!?」
こちらの喚こうとする声は封じられる。
ミロはその小さな身体からは想像もつかない力でツバサを押さえ込み、その首を伸ばしてくるとツバサの首筋を攻めてくる。
唇と舌を巧みに使って、強すぎず弱すぎない力加減でだ。
「ではでは……まずは小手調べ!」
「おい、ミロッ! 待ってっ……ふぁ、んっ!?」
それからツバサは──執拗なまでに全身をいじられた。
ミロもまた、全身を使ってツバサを愛してくる。
女性化してからというもの、男性の時とは比較にならない感度に何度も翻弄されてきたが、その敏感すぎる感度をここまでいじられたのは初めてだ。
男とは比べものにならないその快楽に──ツバサの理性は沸騰した。
何度、快感の頂点に達したかわからないほどだ。
「も、もぉ……やめぇ……むりぃ、あ、あたま、おかしくなるぅ……」
思考回路が蒸発して、ミロよりアホになりそうだった。
「だらしないなぁ、ツバサさんは……本番はこれからだよ?」
「ほ、本番……てッ!?」
これまでが前戯!? 本当の意味で愛されるのはこれから!?
「前回は急ぎすぎた感があるからねー」
よほどツバサを堪能したのか、ミロは美味しそうに舌なめずりする。
自分のネクタイを緩め、タキシードを脱いでいく。
ミロも扇情的な下着姿を露わにした。
ロイヤルブルーカラーで、ツバサのインナーと対になるデザインだ。
「初っ端からオチン○ンはちょっとハードルが高かったみたいだから、まずは女の子同士で百合百合しましょうねー♪」
そして──本当の女の子に堕としてあげる。
「女の子の快感が病みつきになれば……いずれアタシの“あれ”もすんなり飲み込んでくれるようになるでしょ? それまで一緒に頑張ろうね!」
ツ・バ・サさん♪ とミロは無邪気に微笑んだ。
ツバサは答えることも逃れることもできず、ただ受け入れるしかなかった。
抵抗すらも許されないのなら、せめて──。
「お、おねがい……初めてだから……優しく……して……」
そう懇願するのがやっとだった。
ミロは無邪気な微笑みのまま口を真一文字に結ぶと、瞳をニンマリさせたままプルプル震えて、何かを我慢しているようだった。
やがて、それが限界を迎える。
笑顔を大爆発させたミロは、可愛らしい声で叫ぶように言った。
「優しくしてあげたいけど……ごめん、無理!」
だって──ツバサさんが可愛すぎるから!!
その日、ツバサは夜が開けるまで悲鳴を上げ続けた。
断末魔にも勝る絶叫で、甘ったるい鳴き声を上げさせられたのだ。
~~~~~~~~~~~~
次の日のこと──。
ツバサは生まれて初めて家事をボイコットした。
朝一番でミロを部屋から追い出し、自室に引き籠もってしまったのだ。
それでも昼過ぎには部屋を出て、いつも通りに家事をした。
しかし、その日は決してジンのマスクを外そうとせず、ミロが近付くと虫の居所が悪い雌ライオンのように威嚇するという謎の行動を取っていた。
明日はクロコ救出に出発するというのに──。
ミロ以外の面子は母親の奇行に戦々恐々となったが、夜には元通りの母親に戻ってくれたので、ホッと胸を撫で下ろした。
そして──全員でミロを問い詰めた。
誰がどう見たって、ミロがツバサに何かしたのが原因だからだ。
ミロは気まずそうに人差し指で頬を掻いて一言。
「ごめん──やりすぎた」
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