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第2章 荒廃した異世界
第35話:ダインとフミカは仲良しこよし? ☆
しおりを挟む触手の軍勢を全滅させた後、マリナの手によって十重二十重に防御結界を張ってもらうと、ツバサたちはケット・シーたちの里に招かれた。
案内してくれたのはミーケとターマの姉弟だ。
戦闘に入る直前、近くの岩山に降ろして隠れさせた。
その後、安全を確認してから二人に隠れ里の人々へ紹介してもらったのだ。
ケット・シーたちの隠れ里は、岩山の洞窟の中にある。
洞窟の奥にくり抜かれたかのような大空洞が広がっており、そこは適当な大きさの広場にもなっていた。大空洞には無数の小さな横穴があり、その横穴1つ1つがケット・シーたちの家として使われている。
大空洞はあちこちの洞窟と繋がっていて、日光を取り込める場所や、水が湧いている場所もある。最低限の食糧と飲料水は確保できるらしい。
「積もる話もあるだろうが──まずは飯だな」
サイボーグ少年と踊り子少女は雰囲気からして神族。本来であれば食事は不要だが、聞けば昨日から触手たちとの連戦でバテバテだ。
そして、ケット・シーたちも見るからに腹を空かせている。
ターマやミーケを含めて、ケット・シーは総勢52人。
老若男女は元より、現実世界の猫のように種別的な特徴の差はあれど、総じて痩せている。こんな世界ではろくに食糧も手に入るまい。
「腹が減っては戦ができぬだ。ちょっと待ってなさい」
ツバサは広場に自分たちの拠点を召還する。
拠点から「こんな時のために」とジンに作らせた炊き出し専用の大鍋を持ち出すと、食糧貯蔵庫から食材を持ってきて調理に取り掛かる。
「ツバサさん、なに作るの?」
材料運びを手伝うミロに聞かれた。
「そうだな、この人数だから量が多く作れるものがいい。素材の栄養価を余すところなく摂れて、胃腸に優しく消化しやすいものがベストかな」
「胃腸に優しい?」
小首を傾げるミロに、ツバサはケット・シーたちへ目を向けた。
「彼らの痩せた身体を見ろ……もう何年もろくに食べてない証拠だ。恐らく胃腸も弱っている。そんな弱った胃腸にいきなり満漢全席フルコースみたいなボリュームのあるもの食わせたら、腹がおかしくなるわ」
胃腸は人が思うより繊細な器官だ。
たとえば長期間の絶食状態が続いた直後、ようやく食事にありつけた喜びから腹が弾けそうになるまで食べたりすると最悪の場合――死ぬ。
まず弱り切った消化器官では大量の飲食を受け付けられない。この時のショックが負担となって弱った身体にトドメをさすこともある。
そして低栄養状態が続いていた体内にいきなり大量の栄養が投入されると、ビタミン、ミネラル、リン、カリウム、マグネシウム、インスリン……といった体内に重要な成分のバランスがすべて狂ってしまう。
すべてが欠乏していたところに、急激に栄養を与えられて再活性化しようとするのだが、弱った肉体がなけなしの重要成分(特にリン、カリウム、マグネシウムなど)を大量に使ってしまい、それぞれの欠乏症が一気に発症する。
これが心不全などの致死的ダメージを引き起こすのだ。
リフィーディング症候群――という代謝合併症が原因らしい。
山籠もりの修行中、獲物が獲れず腹が減った時に師匠から教えられた知識だ。
「本当に長いことろくに食べてないのなら、まずは重湯(お粥の上澄み)、ビタミン豊富な野菜や果物のジュース、普通のお粥、よく煮た野菜のお味噌汁……って順番を踏んだ方がベストなんだがな」
これを数日から数週間かけて、弱った胃腸を回復させていくのだ。
普通の食事に戻るまで1~2週間は様子を見るべきだろう。
「なるほど、ちょっとずつ慣らすんだね」
アホなりに理解したミロが頷く後ろで、少年と少女が青ざめていた。
「ボリュームあるもん食わせちゃまずかったんか!?」
「ウチら、猫ちゃんたちにいっぱい食料あげちゃたんスけど!?」
時既に遅し──彼らも施しを与えていたらしい。
しかし、ケット・シーたちはまだ腹を空かせている様子。
料理を作るツバサたちの周囲で、今か今かと待っている風だった。
とてもリフィーディング症候群を起こす寸前のような飢餓状態には見えない。精々、諸事情でご飯が食べられていない欠食児童といったところだ。
「……まあ、元気そうだから平気だろ」
ケット・シー、胃腸は丈夫なのかも知れない。
あと、粗食といえど少なからず食糧にありつけていたのだろう。
あれこれ考えた末、クリームシチューにすることにした。
それでも胃腸のことを考えて、濃度が薄めのスープタイプにする。
肉や野菜はたっぷりある。さっそく調理に取り掛かるツバサだが、ミルクが切れかかっていたのを思い出して「しまった」と舌打ちする。
栄養面を考慮すると、今さら普通のシチューにはしたくない。
「ミルクの代わりになるものなかった……かッ!?」
ある──ミルクとして使える食材が! しかも結構多めに!
そして、ツバサは顔から湯気が出るほど赤面した。
胸の奥にある乳腺という部分が張り詰めるような感覚さえ覚えた。実際にズクンズクンと脈打っており、羞恥心と反比例して活性化しているようだ。
今朝、あれだけ搾ったのに……ッ!
「ツバサさんどうしたの!? 頭が噴火しそうになってるよ!?」
「な、なんでもない! ちょっと行ってくる!」
言うが早いか、ツバサはミルクの代わりになるものを取りに拠点へ戻る。
数分後、一抱えはある牛乳缶を手に戻ってきた。
「そんなたくさんのミルク、食料庫にありましたっけ……?」
マリナが不思議そうな顔をした。
ツバサは俯いたまま眼を逸らす。
顔は真っ赤なままだし、湯気は先ほどより増えていた。
「あったというか……今朝、手に入った……」
今後、毎日いくらでも入手できるだろう。しかし、入手方法を明かすことは絶対にできない。これだけは隠し通さなければ!
これがバレたらツバサは──恥ずかしさのあまり悶絶する。
ミロは牛乳缶を覗き込み、クンクンと鼻を鳴らす。
「この匂い、どこかで嗅いだような……てかこれ、何ミルク? ハクタクでもないし、スラビーでもないし……飲んでも大丈夫なやつだよね?」
敢えて命名するなら──ハトホルミルクか?
「問題ない──毒味ならおまえとマリナで済ませてある」
「「いつ飲まされたの!?」」
今朝というより昨晩、飲ませたというより勝手に飲まれた。
そのことについては思い出したくもない。
これを飲んだ彼女たちを密かに分析してみたが、やたら強化がついていたり、パラメーターが上昇したりと、至れり尽くせりの効能があった。
恐らく、誰が飲んでも恩恵があるはずだ。
なにせ霊験あらたかな──女神のミルクなのだから。
ツバサは火山の噴煙みたいな湯気を出したまま、そのミルクでクリームシチュー(というよりスープ)を作っていった。
ケット・シーたちに取り皿とスプーンを配り、シチューを配るのはミロとマリナに任せた。2人ともエプロンを着けて、ちゃんと給仕係をしている。
「順番だよじゅんばーん! おかわりはいっぱいあるからねー!」
「センセイ特製クリームシチューはこちらでーす!」
おままごとみたいにも見えるが、それゆえ微笑ましい光景だ。
ハルカに頼んで(ハルカもノリノリで)作ってもらった、女の子向けの可愛いデザインをしたエプロンだ。
俺の娘たちは世界一可愛い! と断言できる。
そんな娘たちにあのミルクで作ったシチューを配らせる。
しかも、この場の全員に食べさせているのだ。
ケット・シーたちは涙を流して喜びながら食べてくれるし、何度も何度もツバサに感謝の言葉を述べてくれる。
それはとても嬉しいのだが……ツバサは心の中でもんどり打っていた。
──恥ずかしくて辛抱たまらんなぁこれ!!
『自らの恥部、その瀬戸際を責めるハイレベルな羞恥プレイ! さすがツバサ様! このクロコ・バックマウンド、感服いたしました!』
うるさい黙れ変態! 人様の脳内で小躍りするな!
クロコの幻影を脳裏に描いてそいつに罵倒でもしていなければ、ツバサは冷静さを保てなかった。こういう時、あの変態は便利である。
そういやあのエロメイドはどうしたんだろうか?
ちょっとだけ気になるが──もうしばらく忘れておこう。
そして、猫たちを守っていた少年と少女にも振る舞う。
あのミルクを使ったシチューだ、神族の体力回復の効果もあるだろう。
「はふはふっ……お、恩に着るぜよ姐さん! がっがっんぐぅ……あん時ゃもうダメかと思ったぜよ……にしても、美味いなぁこのシチュー!」
「ホントホント、最高ッス! 現実でもこんなの食べたことないッスよ! もういっぱいおかわり! ……あれ、お姉さんどうしたんスか?」
「な、なんでもない……」
誰が姐さんだ、と返してツバサは頬を紅潮させた。
少年が7杯、少女が3杯──それぞれ食べ終えて満足したらしい。
「改めて──助かったぜよ、姐さん!」
「本当ッス、ありがとうございますッス!」
少年はあぐらをかいたまま両の手を拳にして地面につける、昔の武士みたいな礼をした。少女も正座をしたまま三つ指をついて頭を下げる。
なかなか礼儀の行き届いた子たちだ──喋り方はちょっと変だが。
「申し遅れたぜよ、わしゃ大田だい……いかん、そっちは本名ぜよ。アルマゲドンじゃあダイン・ダイダボットと名乗っちゅうがじゃ。よろしゅうに」
「ウチは文渡文……そうッスね、本名はまずいか……ウチはフミカ・ライブラトートってハンドルネームで通してるッス。よろしくッス」
土佐弁っぽいサイボーグ少年が──ダイン・ダイダボット。
舎弟口調っぽい踊り子少女が──フミカ・ライブラトート。
どちらも実名を名乗りかけたが、踏み止まったのはいい判断だ。
現実世界に戻れた時のことを考えたら、個人情報は明かすべきではない。
意外にどうして賢明な判断ができるらしい。
ウチのアホ娘なら住所までバラしていただろう。
「俺はツバサ・ハトホル──あっちのアホっぽい娘がミロ・カエサルトゥス、賢そうな子がマリナ・マルガリーテだ。よろしくな」
自己紹介しつつ、ミロやマリナについても適当に紹介しておいた。
給仕係の2人は手を振っている。
「どーもー♪ アホだけどツバサさんの娘で嫁でーす♪」
「……あの、センセイの娘でマリナって言います。よろしくです」
これをダインとフミカは真に受けた。
「なんと、お袋さんじゃったか。ちくっと上のお姉さんじゃ思っとった」
「あんな大きなお子さんが2人……失礼ですがおいくつッスか?」
「誰が2人の子持ちのお袋さんだ!?」
思わず怒気を込めて大声を出すと、ツバサは自分たちの事情を明かした。
ミロとは幼なじみで、マリナは世話を見ているだけ。
そして──ツバサが本当は男だということも包み隠さずにだ。
「お、男の人だったんスか!? そんなご立派なのに……」
「な、なんと! 姐さんはアニキじゃったんか……ショックじゃあ……」
「おまえら、どこに注目してる?」
信じられないと言いたげな2人の視線は、ツバサの胸に注がれているのは言うまでもない。良くも悪くも自己主張しかしないな、このおっぱい。
しかし、このおっぱいをきっかけに、こちらの人間関係を話し終えると、ダインとフミカも自分たちのパーティがどのようなものかを明かしてくれた。
「では──君たちは基本的に2人で動いていたのか」
そうじゃ、とダインは肯定した。
「わしゃ物作りばっかりしとたんじゃが、フミはあれやこれや見たい知りたい調べたい言うんでな。アルマゲドンのワールド内をあっち行ったりこっち行ったり……なんで大所帯にゃならなかったんじゃ」
「ウチ、戦闘は弱いんでダイちゃんにボディーガード頼んでたッス」
ミサキとジンを思い出させる。仲も良さそうだ。
これはネットだけの繋がりではないと見た。
「君たち、もしかして現実でも知り合いじゃないか?」
これにダインはちょっと驚き、フミカは頬を軽く染めた。
「おお、ようわかったのぉ。わしらリアルでも友達じゃ」
「が、学校は違うんスけど、その……登下校でよく会うんスよね……」
どちらも高校生らしい。2年生くらいか?
「もしかして──彼氏彼女のカップルさんだったりしてー?」
話を聞いていたミロが茶化すと、フミカは恥ずかしそうに愛用の本で顔を隠して、ミロの邪推を小声で否定した。
「いや、あの、違うッス! そりゃ世間の人様からウォッチングされたらそう見える知れないッスけど……ウチら、まだそこまでの仲じゃ……」
「そうそう、ただの友達じゃ……あいたぁ!?」
ダインが朗らかな笑顔で否定した瞬間、フミカは彼の後頭部を持っていた分厚い本で思いっきり殴りつけた。しかも硬そうな角でだ。
「何するがじゃフミィ!?」
「ハエッス! ダイちゃんの頭にハエが止まってたッス!!」
フミカはむくれた顔でそっぽを向く。
「ハエか、ならしょうがないのぉ……ったく、わしの頭にゃよく止まるぜよ」
どうやらこれ、2人の恒例行事らしい。
なんて典型的なカップル(彼氏が鈍感ゆえに未成立)だ。言葉もない。
パーティー人数が増えなかった理由も、なんとなく察する。
「いやぁ~、これもまた青春だねぇ~♪」
既にツバサと相思相愛なミロは、先輩面で得意げに見守っていた。
「あの2人、今後どうなるんでしょうか……?」
そういうのに興味津々なお年頃のマリナも楽しそうだった。
お互いのことは大体知れたので、ツバサは話を進めた。
まずはこの世界へ来てからのことを尋ねる。
「君たちも、この世界に飛ばされてきたんだな?」
真面目な声音で問うと、ダインもフミカも表情が硬くなる。
「みんな同じぜよ。わしらん他にもアバターになったプレイヤーは、この世界に大勢いるはずじゃ……しかし……」
「いや、いたはずッスよね……多分、過去形ッス……」
暗い顔でうなだれる2人。ツバサはその表情から読み取った。
「見たんだな──あの触手に殺られたプレイヤーを」
まずはダインが、次いでフミカは認めるように頷いた。
先に口を開いたのはダインだった。
「いきなり妙なアナウンスが聞こえたぁ思うちょたら……気付けばこのカラッカラの世界ぜよ。右も左もわからずにうろちょろしとったら、似たようなプレイヤーを見かけたんじゃが……声をかける前に皆殺しされちょった……」
「ウチらは何とか倒せたんスけど……また悲鳴が聞こえたんで駆けつけたら、この猫ちゃんたちが襲われてて……おかげで昨日から戦い詰めッス」
ダインたちが飛ばされた先は、この洞窟と差して離れていない場所だったため、ケット・シーの助けを求める声が聞こえたらしい。
だからと言って助ける義務はない。
自分の命が惜しければ、悲鳴を無視して逃げればいいもの……この2人は我が身を顧みずにネコ族を助けていた。
どうやらツバサたちと同類──損をする性分らしい。
「お人好しだな、君たちは……」
同情するように微笑んだが、どうしても自嘲気味になってしまう。
するとダインも似たような顔をしていた。
「アニキに言われたかねぇぜよ……こんなもん、人として当然じゃき」
「まあ、正義の味方ぶってたのは否定できないッスね~」
少年と少女は照れ臭そうに、同じ仕種で頭を掻いていた。
次にツバサは、今日までの戦いについてダインたちに尋ねた。
時系列は大体こんな感じらしい。
時間の流れは、この異世界のものを基準にしている。
(現実では深夜11時くらいだったはずなのに、異世界に来てみれば正午くらいだったので、時間の流れに違いがあるようだ)
・昨日のお昼 ~ 異世界転移。触手に殺されるプレイヤーを目撃。
ダインたちも襲われるが撃退(触手:1体)。
・昨日の午後 ~ ケット・シーたちの隠れ里に到着。
村を襲う触手の群れ(触手:約10体)。
殲滅できたのは夕方ぐらい。
・昨日の夜間 ~ それから数時間は何事もなし。
ケット・シーたちに食料をあげながら休憩。
・昨日の深夜 ~ 再び触手たちの襲撃。今度はかなりの数。
ダインたち、死力を尽くして撃滅。
終わった頃には夜が明けていた(触手:約100体)。
・本日の午前 ~ 一休みしていたら、再び触手による襲撃。
今度は軍勢で押し寄せてくる(触手:1000体以上)。
連戦による疲労でダインとフミカはヘロヘロ。
そこへ危機一髪でツバサたちが到着。
「……だいたい、こんな流れッス」
フミカが手にした本を読みながら教えてくれた。
日記でも書いているのか、これまでの出来事を詳細に覚えているようだ。
「襲撃の間隔がだんだん短くなっている。その上、触手の数が桁で増えているわけか……次の襲撃が来るのも時間の問題だな」
「やっぱり来るじゃろうか?」
ダインの顔が強張る。あれだけ追い詰められたら当然だ。
無慈悲かも知れないがツバサは断言する
「来るさ──あいつらはエネルギーを欲しがっているんだ」
この干涸らびた世界には、エネルギーを奪い取れるほどのものがあまり残されていない。それでも、あの触手たちは搾取できるものを探していた。
連中にしてみれば、ケット・シーの隠れ里は久々の獲物。
それにツバサたちのようなアルマゲドンから飛ばされてきたプレイヤーは、純度の高いエネルギー体である。是が非でも欲しいはずだ。
「連中、蟻みたいに情報を交換……いや、1匹残らず殲滅されても、ここに君たちがいることを知っていた。種族間で通じるテレパシーみたいなものがあるのかも知れないな。多分、数時間と開けずにまた来るぞ」
しかも今度は──1000を越える大軍勢となってだ。
ここに5人のプレイヤーがいることも伝わっている可能性が高い。
となれば、ここは奴らにとって最高の狩り場となる。
最悪の想定では、10000の規模で押し寄せてくるはずだ。
「人間の兵と違って軍備を整える必要もなさそうだし、着の身着のまま……いや、素っ裸で手ぶらのまま、数が集まったらすぐ来るはずだ」
なのに──フル装備の歩兵より高い戦闘能力を誇る。
「鬼石曼子よりおっかないッスね」
石曼子とは九州の雄、島津家の中国語読みだ。
豊臣秀吉の大陸出兵でその勇猛さを知らしめた島津家は、大軍であろうと強敵であろうと問答無用で打ち破る。彼我に戦力差があろうとお構いなし、異常なまでに勝利へ固執する執拗な戦い方で恐れられた。
鬼石曼子とは、その戦闘民族っぷりを畏怖した後の造語だ。
「……確かに進軍の苛烈さはよく似ているな」
フミカはなかなかマニアックな単語を知っている。歴女だろうか?
「とにかく──早急に対策を練る必要がありそうだな」
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