想世のハトホル~オカン系男子は異世界でオカン系女神になりました~

曽我部浩人

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第1章 VRMMORPG アルマゲドン

第20話:アダマント鉱石を採りに行こう! ☆

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 アルマゲドンのサービススタートから──そろそろ1年。

「ミロ・カエサルトゥス──LVレベル94!」
「マリナ・マルガリーテ──LV90です!」

「ツバサ・ハトホル──LV97だ」

 LVMAXの99目前だー! とミロとマリナは万歳三唱した。

 ツバサもやらないと怒られそうな雰囲気なので、渋々と両手を挙げてつきあう。配信動画としての盛り上がりも必要なのだろう。

「しかしまあ……全パラメーターMAXからのLV上げなんて、普通のLV上げが楽に思える修羅の道をよく続けてきたもんだな」

 RPGのLV上げが苦にならない人でも、アルマゲドンでは苦行だろう。

 多分、LV20くらいで音を上げるはずだ。

 なにせアルマゲドンのアバターを強くするには、現実リアルの自分を鍛える勢いで経験値=SPソウルポイントを貯めなければならない。

 異世界に放り込まれたような現実感リアリティは、こんなところにまで及んでいた。

 おかげでアルマゲドンからの卒業報告は他のVRゲームの比ではない。
 
 はっきり言ってこのゲーム──キツいのだ。

 反面、どっぷり浸かったヘヴィユーザーも多い。

 努力すれば努力した分だけ報われ、それ以上の恩恵や見返りを得られることもあるため、強くなればなるほどゲーム内での全能感が強まるのだ。

 その全能感に魅了される者は少なくない。

 運営的にはトントンなのだろう。

 来る者拒まず去る者追わず、努める者には幸いあれ。

 そんな具合にアクティブユーザーは増減するも、「人気です」と言い張れる人数は確保できているそうだ。存外、ツバサたちのようなマゾが多いらしい。あるいはゲームという環境だからこそ血道を上げる者も少なくないのかも……。

 ユーザーをふるいにかけている──そうも受け取れる。

 義務に全力を費やす者は少ないが、趣味に全身全霊を注ぐ者は多い。

 たかがVRゲーム、れど仮想現実かそうげんじつ

 アルマゲドンは個々人ここじんが本気を出すに相応しい難易度を備えていた。幼いミロやマリナがめげずに頑張ってきたことを褒めてやりたい今日この頃だ。

「それもこれもツバサさんのおかげだよ。ありがとね、ツバサさん」

 珍しく神妙なことを言うミロに、ツバサは眉をしかめた。

「俺が? 別に何もしてないだろ」

 ううん、とミロは感慨深げに首を横に振った。

「ツバサさんが守ってくれたから、アタシたちは一度もデスペナルティを受けることがなかった。色んな戦い方を教えてくれたし、料理だって……だから、こんなにすっごく強くなれたんだ。それも最短ルートで……ありがとね」

 ちゃんとわかっていたのか──さすがミロ。

 ミロは自他共に認めるアホだ。

 よく考えないし、深く考えないし、後先考えない。思い立ったら吉日とばかりに動き出す行動力ぐらいしか褒めるところがない。

 だが、こいつは──物事の本質を狙い澄ましたように見抜く。

 事象じしょうの核心を突くことには長けているのだ。

 ツバサが放任主義を気取りながらもミロたちを守りつつ、戦い方の修行をつけたり、パラメーターを強化する食事の提供など、惜しみない愛情を注いでいたことを理解してくれていたのだ。

 そのことを素直に感謝されたツバサは、涙腺が熱くなってしまった。

 こんなことで泣くな──男だろ。

 そう言い聞かせながら必死で涙がこぼれ落ちそうなのを耐える。

「あ、あの、ワタシも……センセイ、ありがとうございます」

 マリナもツバサの前に来ると、帽子が落ちそうな勢いで頭を下げた。

「お父さんと会いたいってワガママから始まったのに、仲間にしてくれて、親切にしてくれて、ワタシ足手まといなのに、見捨てずに一緒にいてくれて……ワタシ、すっごく嬉しかったです! センセイが本当のお母さんみたいだと思いました!」

「誰がお母さんだ……」

 このコンボはずるい。

 ミロからの言葉を受けて涙腺が崩壊しかけているところに、ちっちゃいマリナがつたないながらも感謝の意を伝えてくる。感激のあまりおかしくなりそうだ。

 いつもは苛立つお母さん扱いさえ許してしまいたくなる。

 感涙の防波堤が決壊寸前だった。

 すると、ミロとマリナは道具箱インベントリにゴソゴソと手を入れる。

「そんなわけでこれ、日頃の感謝の気持ち!」
「母の日にはまだ早いですけど……受け取ってください!」

 2人が差し出してきたのは──赤いカーネーションの花束。

「だっ……誰がお母さんだッ!」

 絶叫したツバサは愛おしい2人を抱き締めて離そうとしなかった。

 爆乳の圧力で押し潰すように娘たちを抱擁ハグする。

「ツ、ツバサさん、苦しっ……息、肺が詰まぅ……ああっ! でもおっぱいの圧力が……待って待って! 背骨とか肩甲骨がギチギチいってるぅ!?」

「センセイ、苦しいです……な、なんか背骨が変な方に曲がりそう! 痛いです痛い本気で!? おっぱいに埋もれちゃいますってば!?」

 ついでに――力の加減を間違えてしまった。

   ~~~~~~~~~~~~

「オッチャンがレギュラー入りすると思った筋肉マニアなそこのアナタ、残念でした~♪ 今回の動画からオッチャンはいません!」

「いや、あの人はまた修行の旅に出ただけだからな?」

 ドンカイとはアスクレペイ湯で別れた。

『アルマゲドンにはアシュラから流れてきた格闘ゲーマーが仰山おると聞く。それほどこのゲームは格闘ゲーマー向けじゃからのぉ……そいつらを探しながらプレイするつもりじゃ。見所のある奴はスカウトしたいしのぉ』

 また会おう、と約束してドンカイは旅立っていったのだ。

「アタシの威光いこうに恐れを成したに違いない!」

「いや、まあ、うん……あながち否定できないな、それ」

 ドンカイがロの『得体の知れない気迫』に一目置いたのは間違いない。

 あれ以来、ミロに畏敬の念を抱いていた素振りもある。

「それで、今日はどうするんですか? やっぱりLV上げですか?」

 山道を歩きながらマリナが確認してきた。

 いくら防御力が高いとはいえ、ドレス姿なのでこの山道では違和感があるが、このドレスもオリハルコン繊維製だ。とある衣装作りの天才が作ってくれたので、ちょっとやそっとじゃ破れもしないし汚れもしない。

「となると、またSP稼ぎだよね」

 ドレスといったらミロもそうなのだが、こいつの場合は何を着てても動き回っているので、見慣れてくると戦闘服にしか見えなくなる。

 今時の戦うヒロインはみんなこんな格好だし──と納得しておこう。

 ところでツバサさん、とミロも予定を聞いてくる。

「種族変更はいつにするの?」

「LV99のMAXにしてからでいいんじゃないか? それまでは種族差により発生する特別ボーナスを最大限活用させてもらおう」

 下位種族(人間種)で上位種族を倒すとSPにボーナスがつく。

 ツバサたちはこれを利用することで、SPを大量にゲットしてきたのだ。

 アルマゲドンにおける最上位種族──神族と魔族。

 いわゆる神様や悪魔になるには、神族だと最低でもLV80、魔族だと最低LV75は必要とされている。ただし、魔族は比較的早く変更できる分、デメリットが少なくない。どちらを選ぶかは好みが分かれるところだ。

「ミロもマリナも神族がいいんだろ? ならLV99のが尚更いい。そこで初めて選べる神族もいるっていう噂だしな」

「神族かぁ~……とどのつまり神様だよね? 何にしよ~?」
「ワタシ、綺麗な女神様がいいです」

 少女と幼女は夢見心地で期待を抱くが、ツバサは「この女性アバターだと女神しか選択肢がないんじゃないか?」と戦々恐々だった。

 しかもオカン系女神といえば──地母神ちぼしんくらいしか思いつかない。

 地母神ってもう母なる女神じゃねーか、と自分にツッコむ。

「……誰が地母神だ」

 思わず小声でいつもの台詞を言ってしまった。

「で、SP稼ぎにどこ向かっているの? 山の中?」

「SP稼ぎもできるだろうが、今日の目的はまるで違うぞ」

 アダマント鉱石を取りに行こう、と今日の目的を明かした。

「アダマントって……かなり前に実装された神々の金属?」

「あまりにも入手率が低いので、レアの上のスーパーレアの上のハイパーレア扱いされてて、それでできた装備どころか鉱石そのものを持っている人もいないから、都市伝説になりつつある……あの鉱石ですか?」

 ミロとマリナが言った通り、アダマントはオリハルコンを凌駕する超金属として実装されたにも関わらず、未だに出回っていないのだ。

 噂ばかりが先行して幻のレアアイテム扱いされている。

「それなんだが、昨日SNSを見ていたらこの辺りの洞窟で鉱床こうしょうが発見されたっていう報告があったんだ。ガセネタの可能性もあるが、アダマントを欲しがるプレイヤーは山ほどいる。そして、その大半が高LVプレイヤーだ」

「あ、ツバサさんがなに考えてるかわかっちゃった」

1, アダマント鉱石を採りに行く(一応、これが本命)。
2, そこには高LVプレイヤーがウジャウジャ。
3, そいつらを倒してSP稼ぎ(副次的な狙いはこれ)。
4, アダマントがあったら総取り。

「……って、ことでしょ? 違う?」

 ツバサの魂胆をまるっとお見通しでミロは得意げだった。

「ご名答、さすがに付き合いが長いな」

 アダマント鉱石がガセネタでないなら、それに釣られてきた同類のプレイヤーを狩ってSPを稼ぎ、LV99への糧とすればいいだけだ。

「フッフゥーン、だ! ツバサさんの考えてることなんかミロさん、一から百までお見通しだもんねー♪ なんせ、ツバサさんはアタシの嫁だし!」

「いや、そこはおまえが嫁だろ」

 なんで俺が嫁なんだよ、とツバサは訂正を促す。

現実リアルとVRをごっちゃにしない! アルマゲドンではツバサさんがアタシの嫁で、マリナちゃんとアタシのお母さんなの! そういう設定なの!」

「嫁で母ってどんな設定だよ……」

「いーじゃない、ゲームなんだから! 細かいこと言いっこなし!」

 バンバン! とツバサの背中を景気よく叩いた後、ミロは恋人みたいに腕を組んできた。サービスとばかりに胸を押し当ててくる。

「アタシのCカップじゃツバサさんにはサービスにもならないけどね」

「いや、それぐらいのサイズがちょうどいいよ」

 実際、自分の胸にJカップの乳房があるのは邪魔だ。

 足下はよく見えないから不用意になるし、腕を動かせば少なからず制限を受ける。武道家としてはデメリットがデカすぎるのだ。

 精々、視覚効果を期待して男の油断を誘うぐらいのメリットしかない。

「でも……ワタシは憧れます。将来、センセイみたいな誰もが振り向くナイスバディになりたいです! どーしたらなれますか?」

「あー……牛乳でも飲んでればいいんじゃないかな?」

 希望に満ちたマリナの質問だが、ツバサはぞんざいに返すしかなかった。

 ツバサ自身、どうしてこう・・なったのかわからないのだから──。

「とにかく今日のお題はアダマント鉱石だ。LV99になって神族になるなら、装備も強化しておいた方がいい。そのためにも欠かせない素材だからな」

「採れたらマスクの変態んとこに直行だね」

「マスクの変態……あ、ジンさんですね。わかります」

 すっかりマリナにもマスクの変態=ジンが定着してしまった。

 あれから装備や拠点の制作を何度か頼んでいるので、いつしか顔見知りになってしまった。しかし、彼のいう『相棒』とやらには会えた試しがない。

 ジン曰く、『いつもタイミング最悪』とのこと。

 あまりに会えないので、ジンを冷やかしたことがある。

『なあ、君の相棒だという女の子……実在するのか?』
『イマジナリーフレンド、あ、この場合、イマジナリーガールフレンド?』

 これにジンは頭を抱えて腰を振って号泣した。

『お姉さまもお嬢ちゃんもひっどーい! 俺ちゃんの相棒は実在しますぅー! お姉様には負けるけど、ムチムチボインのドスケベボディな相棒がぁーッ!』

 ますます信じられなかったのは言うまでもない。

「それもこれも、アダマントがあればの話だけどな」

 なんだかんだと無駄話で時間を潰しながら山道を登っていると、ようやくSNSで噂されていた山の中腹にある洞窟の入り口が見えてきた。

 この洞窟の奥でアダマントの鉱床こうしょうが発見されたというが──。

「「「ぎぃやああああああああああああああああああああーっ!?」」」

 出迎えてくれたのは、プレイヤーたちの奏でる断末魔だった。

 洞窟の前は思ったより開けていて、ちょっとした広場になっているのだが、そこには多くのプレイヤーが臨戦状態でたむろしていた。

 だが──見る間に倒されていく。

 しかも集団による乱戦の結果ではない。

 たった1人によって殲滅せんめつされかかっているのだ。

 ある者は宙を舞いながら光の泡と消えていき、ある者は岩に叩きつけられてデスペナルティ、またある者は洞窟に放り込まれる前に光の泡になった。

 何者か知らないが、かなりの腕前だ。
 プレイヤー1人1人を確実に一撃で仕留めている。 

 あまりにも素早い。

 たむろするプレイヤーたちを障害物として利用しながら動いているので、ツバサの動体視力でも捉えきれない。

 朧気おぼろげながら確認できたのは──。

「女……の子、か?」

 かなり大人びて見えたが、明らかにツバサより年下だった。
 どうやら髪の長い女の子らしい。あと、胸が大きい。

 100人弱はいたであろうプレイヤーの群衆は見る見るうちに減っていき、ついには数えるほどになると、彼女の矛先はこちらに向いた。

「──来るッ!」

 真っ先に立ち向かったのはミロだった。

 背の長剣を抜き払うと、大振りに振るうことなく牽制の意味を込めて鋭い突きを連続で打ち込んでいく。のみならず、小刻みに切り払う攻撃も行っており、少女の急所に一太刀でも負わせようという努力が見られた。

 少女はこちらに姿を補足させない速度で向かってくると、ミロの剣にまさかの素手で応じた。ツバサのように徒手空拳で戦うスタイルのようだ。

 ミロの剣と少女の手が、幾度となくぶつかり合う。

「気功系技能スキルか──よく鍛えてある」

 ドンカイも使っていたが、硬気功などの肉体を硬質強化させる技能を両手に施してオリハルコンの長剣を素手で防いでいる。

 ただし、刃に触れるような真似はしない。剣の腹や鍔、それに剣を握る手などを拳で殴ったり手で払ったりすることで捌いていた。

 ミロも剣士としては腕前を上げている。

 それを素手で上回るとは──あの少女、ただ者ではない。

「まだまだぁっ!!」

 ミロは意気を上げると長剣のリーチを利用して一瞬だが少女の両手を押さえ込み、その隙に長剣を右手だけで持ち直し、左手をスカートに伸ばす。

 引き抜いたのは──オリハルコン製の短剣。

 短剣といってもミロの長剣と釣り合わせてなので、実際には普通の剣ぐらいの長さはある。それを両手に構えての二刀流だ。

 日本刀の大小で構える二刀流より、断然リーチが長い。

 それで少女と間合いを取り、応戦するつもりなのだ。

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!」
「ふっ……ッッッ!」

 剣と拳の応酬──なかなかの実力伯仲ぶりだ。

「……若干、ミロに分が悪いか」

 明らかに少女のが戦い慣れている。ミロも強くなったが、こればかりは現実にしろVRにしろ、積み重ねてきた経験の差が如実に現れるものだ。

 ミロの二刀流は、徐々に少女の拳打によって押し負けていた。

「くっ……これならどうだっ!」

 ミロは大きく飛び退くと、長剣を横薙ぎにするべく振りかぶる。

 振り払った長剣から、空を薙ぐように三日月状の斬撃が飛び出した。その威力は小さな林を薙ぎ払い、何人かのプレイヤーが巻き添えを食っていた。

 しかし、少女は──。

「すぅ…………破ッ!」

 両手に溜めた気を凝縮させると、それを気功波として打ち出すことで斬撃を吹き飛ばした。やはり気功系に秀でた格闘家のようだ。

 相殺されたことにより爆発が巻き起こる。

 舞い上がる土煙がミロに吹きつける。ミロは腕で目元を覆って吹きつけてくる粉塵を防いでいると、目の前の土煙に穴が空いた。

 爆発が起きた瞬間──。

 少女はそれを突っ切って、間合いを詰めていたのだ。

 ミロも気付いて長剣で防ごうとするが、少女の動きが圧倒的に早い。

 彼女の手刀はもうミロの喉元に迫っていた。

「はい、そこまで──選手交代だ」

 ツバサは2人に気付かれぬよう特殊な歩法で忍び寄り、決着がつく寸前に割り込んでミロを救った。ミロをマリナがいる方へ受け身が取れるよう優しく投げ飛ばして、ミロに襲いかかった少女を蹴り飛ばす。

「ッ! へぇ……本当にやるな」

 ただ蹴られただけではない。少女は蹴り飛ばされる寸前、ツバサの肩を蹴って威力を半減させたのだ。転んでもタダでは起きない精神は素晴らしい。

 ようやく少女は立ち止まり、その全貌を明らかにする。

 それは──女神と見紛うほど美しい少女だった。







 身長は高めで170㎝ぐらい。美しく整った顔立ちだが、どこか少女らしくない。むしろ少年的な凜々しさが目立ち、それが彼女の中性的かつミステリアスな美しさを際立てせいた。

 紫色の長い髪は背中を覆い隠すほど長く、ツバサほどではないにしろ大きく存在感のある乳房を抱えている。細い腰や肉付きの豊かな臀部も魅力的だ。

 そんな艶めかしく肉感的な肢体を、身体のラインが映えるタイトなボディースーツで着飾っていた。首から腹部まで大きく開いたデザインが扇情的だ。

 あれ、ツバサなら恥ずかしくて着られない。

 ミロに命令されても「これだけは許して!」と泣いて請うだろう。

「痛てて……あれ? あのスーツ、どっかで見たような……?」

 ミロもそうだが、ツバサも同意見である。

 この少女のボディスーツ、どこかで目にした記憶が……?

 何より、ツバサはこの少女に既視感きしかんがあった。

 恐らく──アシュラ・ストリートで会っている。

「そこの君、良ければ名前を聞かせてくれないか?」

 ツバサが穏便に話しかけると、少女は少しだけ佇まいを正した。どうやらこちらを年上と判断して、敬意を払う精神を持ち合わせているらしい。

 背筋をピンと伸ばして、少女ははっきりと名乗る。



「ミサキ──ミサキ・イシュタル」


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