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小ネタ もふもふは正義

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 桐生の手の怪我が治って、しばらく経った休みの日。
 オレは桐生を自宅マンションに呼んだ。


「あの時は暗くてよく見えなくてな。
 お前のコウモリ姿、じっくり見せろ」

「ええ……。
 格好悪いから好きじゃないんだけど。
 コウモリはネズミ目だし、ハムスターに羽がはえたようなものだよ?」


 オレは思った。
 それはつまり可愛いということか、と。
 もふもふしていて可愛いものは正義だ。
 少なくともオレの中では絶対だ。
 
  
「どうせ一度見たんだ。いいから見せろ」

「まあ、いいけど。
 服脱ぐところは見ないでね」


 言われたとおり向こうを向いた。
 桐生の衣擦れの音にどきどきしたことは、ここでは脇に置いておく。


 ぽとん、と床に何か落ちた。


 体毛がふわふわで、真っ黒で。
 目が黒くて大きくてくりくりしていて、。
 鼻がつやつやで。
 全長10センチくらいで。
 耳がぴくぴくしていて。
 リスのようなモモンガのような、世にも可愛い生き物が、いた。


「そんなにまじまじ見ないでよ。
 弱々しいし、微妙でしょ。
 この姿は人間に比べて何もかも弱いから、姿を隠したいときくらいしか」

「桐生!!」

「は、はい!?」

「可愛いぞ!!」

「へ!?」


 手のひらに乗せてみた。
 これは……手でこう、きゅっとつかめる大きさ……。
 桐生が不思議そうに、くりくりの目でオレを見ている。
 ああああああ。


「オレはコウモリのお前を愛せそうだ。
 いや、コウモリのお前を溺愛しそうだ」

「朝霧さん落ちついてください、目が怖いです落ち着いて」


 オレはしばらく、思う存分桐生のコウモリ姿をなで回し……もとい、観察しまくった。
 びよーんと伸びる皮膜の翼も、爪も、床をうまく歩けない姿も。
 ばたばたばた、と飛んではぼとっと落ちる姿も。
 たまに、ちちち、ちゅ、って声をあげるのも。
 愛おしすぎる。

  
「床に落ちたら痛いだろう。ほら、オレの膝においで」

「それ、僕が人間の姿でも言う?」

「言わんな」

 
 さらに数日後の話。


「僕のあの姿、自分で鏡見たりして調べたんだけど、『フルーツバット』に酷似してるみたいだ。
 日本にはいない種類で、果物や花の蜜、花粉などを食べるコウモリなんだ」

「食べる内容を聞くと、まるで妖精かなにかだな。
 (スマホを取り出して)『フルーツバット』…(検索中)」

「あ!! だめ、やめて!!
 『フルーツバット』はグロ画像出現の危険ワード!!」

「(硬直)」

「あ-、遅かったか……。
 パラオの郷土料理らしいんだよね。
 フルーツバットの姿焼きやら姿煮やら。
 顔がバッチリ残ってるのが、もう………」


 
※ 上記は事実です。
 グロ画像に耐性がない人は、画像検索しないように注意しましょう。


  
「エジプシャンルーセットオオコウモリ、ってちゃんと言えばよかった。
 そっちなら安全に検索できると思うよ、たぶん。
 全く同じではなく、僕の方が体躯はすごく小さいみたいだけど」
 
「桐生!!」

「ちょ、朝霧!?」

「オレは絶対に、お前を海外には行かせない
 あんな可愛い生き物を!! 丸焼きなんて!!」

「国内でも国外でも、僕は人間の姿で行くからね!?」






      小ネタおわり
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