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13話 裏倉庫 その2
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※ 軽度の地震描写が存在します。
苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
手にした懐中電灯を照らしながら、オレは倉庫の入り口に立った。扉を押して大きく中へ開く。
元シェルターという使いづらさ。構造上、手を放すと勝手に閉じてしまうのだ。
閉じても普通に開け閉めできるとはいえ、万が一のため、一人が手で扉を支えることになっている。
裏倉庫の中は、古い埃の匂いがした。光の輪が巨大なガラクタを顕わにしている。
「あ、鍵あった。
敷本ってネームームタグもついてる。間違いなさそうだね」
桐生が鍵を拾っているのがシルエットで見える。
その時だった。
ぐらっと地面が揺れた。
地震……!?
揺れはさほどではなかったが、今いる場所が場所だった。
無造作に置かれている巨大な物体がぐらぐら揺れる……倒れたらひとたまりもない!
「桐生!!」
名を叫んで、オレは倉庫に飛び込んだ。
この時点で1秒。
オレが離れたせいで、扉はゆっくり閉まりかけている。閉まりきったら歪むかもしれない、早く桐生を外へ!!
桐生の腕を掴む。引っ張る。この時点で2秒から3秒。
オレが引っ張ったせいで、桐生の手から懐中電灯が落ちた。
揺れはまだおさまっていない。
がくん、がこん。がたん。
何かがずれてこすれ合う嫌な音がした。この時点で4秒くらい。
「危ない、朝霧!!」
桐生がオレに抱きついた。
があん!! という轟音、振動。
気がつくとオレは、うずくまる姿勢の桐生の下に庇われていた。
懐中電灯は床しか照らしていない。真っ暗闇で何も見えない。
「桐生!! 桐生!?」
「大丈夫、何も当たってないから! 朝霧も動いちゃだめだ!!」
体に揺れを感じなくなったのは、10秒後くらいだった。
揺れは小さくても、思った以上に長かった。
余韻を残す廃棄物から、こすれ合う音がかすかに聞こえる。
吹き出した冷や汗が冷たかった。もし、何かの下敷きになっていたら……。
クソ理事長め!! 訴えたら勝つぞ!!
「桐生、無事か」
「うん。僕はなんともない。
少しずつ、確認してから動こう。なにかが倒れたからね」
桐生は手だけ伸ばして懐中電灯を拾った。
オレはどうやら、自分の懐中電灯を外に投げ捨ててしまったらしい。
パニックになっていたとはいえ、灯りを捨てるとは……。
桐生はオレを庇った姿勢のまま、あちこちを照らしている。
桐生はある一点を照らして、ぴたっと動きを止めた。
「朝霧。
扉はたしか、内側から引いて開ける作りだったよね」
桐生の声は動揺していた。
桐生の体の下から、オレも照らされた光を目で追った。
ひとつかふたつ、大型の何かが倒れたことは、音で想像がついていた。
あれは、シンク付きの実験用机……だろうか。
横長で巨大なそれが、扉のすぐ前で横倒しになっている。
「……朝霧」
「ああ」
懐中電灯の明かりを頼りに顔を見合わせ、オレと桐生はごくりと唾を飲み込んだ。
あの状態では、扉は開かない。
こんなところに、閉じ込められた……!?
つづく
苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
手にした懐中電灯を照らしながら、オレは倉庫の入り口に立った。扉を押して大きく中へ開く。
元シェルターという使いづらさ。構造上、手を放すと勝手に閉じてしまうのだ。
閉じても普通に開け閉めできるとはいえ、万が一のため、一人が手で扉を支えることになっている。
裏倉庫の中は、古い埃の匂いがした。光の輪が巨大なガラクタを顕わにしている。
「あ、鍵あった。
敷本ってネームームタグもついてる。間違いなさそうだね」
桐生が鍵を拾っているのがシルエットで見える。
その時だった。
ぐらっと地面が揺れた。
地震……!?
揺れはさほどではなかったが、今いる場所が場所だった。
無造作に置かれている巨大な物体がぐらぐら揺れる……倒れたらひとたまりもない!
「桐生!!」
名を叫んで、オレは倉庫に飛び込んだ。
この時点で1秒。
オレが離れたせいで、扉はゆっくり閉まりかけている。閉まりきったら歪むかもしれない、早く桐生を外へ!!
桐生の腕を掴む。引っ張る。この時点で2秒から3秒。
オレが引っ張ったせいで、桐生の手から懐中電灯が落ちた。
揺れはまだおさまっていない。
がくん、がこん。がたん。
何かがずれてこすれ合う嫌な音がした。この時点で4秒くらい。
「危ない、朝霧!!」
桐生がオレに抱きついた。
があん!! という轟音、振動。
気がつくとオレは、うずくまる姿勢の桐生の下に庇われていた。
懐中電灯は床しか照らしていない。真っ暗闇で何も見えない。
「桐生!! 桐生!?」
「大丈夫、何も当たってないから! 朝霧も動いちゃだめだ!!」
体に揺れを感じなくなったのは、10秒後くらいだった。
揺れは小さくても、思った以上に長かった。
余韻を残す廃棄物から、こすれ合う音がかすかに聞こえる。
吹き出した冷や汗が冷たかった。もし、何かの下敷きになっていたら……。
クソ理事長め!! 訴えたら勝つぞ!!
「桐生、無事か」
「うん。僕はなんともない。
少しずつ、確認してから動こう。なにかが倒れたからね」
桐生は手だけ伸ばして懐中電灯を拾った。
オレはどうやら、自分の懐中電灯を外に投げ捨ててしまったらしい。
パニックになっていたとはいえ、灯りを捨てるとは……。
桐生はオレを庇った姿勢のまま、あちこちを照らしている。
桐生はある一点を照らして、ぴたっと動きを止めた。
「朝霧。
扉はたしか、内側から引いて開ける作りだったよね」
桐生の声は動揺していた。
桐生の体の下から、オレも照らされた光を目で追った。
ひとつかふたつ、大型の何かが倒れたことは、音で想像がついていた。
あれは、シンク付きの実験用机……だろうか。
横長で巨大なそれが、扉のすぐ前で横倒しになっている。
「……朝霧」
「ああ」
懐中電灯の明かりを頼りに顔を見合わせ、オレと桐生はごくりと唾を飲み込んだ。
あの状態では、扉は開かない。
こんなところに、閉じ込められた……!?
つづく
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