碌の塔

ゆか太郎

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夜明けは遠い

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 店の看板のネオンがどれも白く息を顰めている。つい数時間前まで夜の街を騒々しく照らしていた面影は何処へやら、今は路地裏の壁にひっそりとその身を這わせている。空を見上げれば、空は明るい青に染まっている。時折鳥が鳴きながら、舞っている。それをただ、眺めている。地面に体を投げ出して、知らない店の前の階段に頭を乗せて。

 膝を立てればぐしゃりとズボンのポケットの中から音がする。手を突っ込んでみると、タバコの空箱だった。捨てようと思って握りつぶしかけて、最後の一本が残っていることに気がついた。反対のポケットからライターを取り出して火をつける。悲しいかな、今やタバコの一本すら無駄にできない時代なのだ。軽く息を吸って、ふぅと煙を吐く。白んでいた空に、煙が溶けていく。

 ゆっくりと体を起こして、今度は深く煙草を吸った。二日酔いで痛んだ喉に煙が刺さる。けほ、と軽く咳き込みながら煙を吐く。ビル風に吹かれて煙は路地の奥へと流れていった。
 煙草を吸いながら表通りを見れば、朝の通勤時間帯だからか多くの人が歩いている。誰一人としてこちらに目を向けることなく歩き続ける人達を横目に立ち上がった。床に置いていたビールの缶を拾えば、ちゃぷりと軽く音がした。ぐいと煽れば、緩くなった苦味がほんの少しだけ喉を潤す。ギリギリまで短くなった煙草を缶に落とし、空箱と一緒にゴミ箱へと突っ込んだ。
 快晴なはずなのに陽の当たらない路地裏の空気はひどく冷たい。寂しくなった両手をポケットに突っ込んで、表通りを背に歩き出した。喉奥の苦味を押し込むように、冷たい空気を飲み込んだ。耳の奥にはまだ、昨夜の喧騒が響いていた。

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