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第一章 大樹の森

第二十八話 特別な魔法2

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「ん~~ソフィアいるかなぁ?」
 いつもは怖がってるヌィだけど、今日は逢うのを楽しみにギルドに向かう。


「ん?どうしたんだいアンジェ、私に何か用かい?」
「はい、今日はヌィが……」
「ついにデレた!?」
 私が声を掛けた途端、ソフィアは急に大声を出してヌィに迫る。

「違います……」
「…w…wooooof…wooof……」
 ヌィはやっぱりソフィアが苦手みたい、私が守らないと。


「うーん、氷の魔法か?私は聞いたことはないが……」
 ヌィが牛を凍らせた魔法、
 それは私の魔導書にも書いてなかったし、ソフィアも知らないみたい。

「よし、まずは試してみようじゃないか、どれどれちょっと触らせて……」
「…w…woooooof…うぅ…や、やめてぇ…うわぁ……」
『来ないで!止まって止まって止まってぇ!!』
 ごめんヌィ、私間に合わなかった。

 その時、ひんやりとした空気が流れた。

「ん……確かに…これは魔法だな……
 マナの流れが複雑でうまく放出できていないのだろう……
 これだと効果範囲はかなり狭いか」
 よかったぁ、ソフィアは正気に戻ったみたい。

「もう一度、そうだな…Led…氷をイメージして発動してみてくれないか?」
「う、うん、リォート?氷……アイス……」
『Led /氷/アイス』
 ぴきぴきって音がして、ヌィの手のひらに小さな氷が出来た。

「やったねっヌィ!」
 今まで魔法は使えないけどずっと練習を続けてたヌィ、
 そのことを思うと嬉しくなって私はヌィに飛びついちゃった。
 褒められてうれしいからかな?ヌィは顔を赤くして恥ずかしそうにした。





『Grom/雷/サンダー』
 ヌィの手の平がバチバチと音をたててる。

『Udar molnii/落雷/サンダーボルト』
 バチッって音がして指と地面の間が光った。

「うわぁ……すごい……」
 びっくりした、これも魔導書には載ってない初めて見る魔法。

「なんだい……それは……」 
「雷属性……なのかな?」
 ソフィアに言葉を教わって使った魔法だけどソフィアも知らないみたい。

「うぅむ……ヌィ君、これはやはり私が付きっ切りでもっと研究を」
「だめですっ」
 ヌィに迫るソフィアを私がさえぎる、怖がるからもうやめてあげて。
 それにヌィが私のそばからいなくなっちゃうのはイヤだもの。


 ▶▶|


「ヌィこっちこっちぃ」
 私は遅れて来たヌィの元に手を振りながら駆けつける。
 今日はレイチェルの家でこの前狩った牛のお肉で焼肉パーティ。

「はぃ、食べて食べて」
 とっておいた美味しそうなお肉を焼いてヌィへお皿ごと渡す。

「ありがとうアンジェ、いただきます………うまいっ!」
 ヌィが隣で美味しそうにお肉を食べる姿をみると何故かうれしくなる。

「ほら、このお肉が柔らかくておいしいよ」
「これがあまりとれない貴重な部位なんです」
 私とレイチェルは二人がかりでヌィのお皿にどんどんお肉を盛る。
 ヌィが来てからお肉がさっきより美味しい、なにか味付けをしたのかな?


「レイチェル……」
「は、はい……」
 突然ヌィが真剣な顔でレイチェルを見つめた。

「革か肉がなくなったらまた牛を狩ろう、その為におれは強くなるっ」
「あ、はい……ふふふ…」
「あはは……ヌィったら」
 レイチェルに続いて私にも笑顔がこぼれる。
 でも二人が見つめあってた時、なんかぎゅぅってなった、どうしてだろう。



『Zamorozit'/凍結/フリーズ』
 ヌィの魔法で冷たい空気が流れてゆっくりと凍っていく。


「冷たくて……おいしい!」
 ミルクシャーベットっていうみたい、
 一口食べただけで私はこのお菓子が好きになった。

「はぁ……シャリシャリとして……口の中で溶けていく……」
 レイチェルもとても幸せそうに眼を閉じる。



「面白いね……でも私は甘い物は……そうだ、これで作れないかい?」
 レイチェルのお父さんが口の周りに泡を付けながら飲み物をヌィに渡す。

「んー……どうかなぁ?冷やすだけの方がいいんじゃないかな?」
『Ostyt'/冷却/クール』
 ガラスでできたジョッキの表面に小さな水滴がいくつも浮かび上がる。

「ぷはぁ……なんだこの喉越しは……」
 レイチェルのお父さんはゴクゴクと喉を鳴らして一度で飲み干した、
 なんだかとてもご機嫌でヌィにおかわりを頼んでる。


 私も魔法はたくさん覚えたけど、誰かをこんなに喜ばせられるかなぁ。

 ヌィはすごいなぁ……
 魔法を覚えたばかりなのに、みんなをこんなに幸せにしてる。

「どうしたのアンジェ?」
 ヌィが私の隣に戻って来た。

 今は魔法も使ってないのに、私はとても幸せな気分。


 ▶▶|

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