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ある王の独白
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***
それは、私の即位百五十周年の祝いにと、占術師が私の未来を占った時に告げられた。
「王にとって必要不可欠な存在が異世界から現れる」
不思議な事に、この世界では異世界からの訪問者が度々訪れる。他国との外交で話を聞く事も珍しくはない。だから、それを聞いても特別驚く事はなかったし、歓迎してもいなかった。
何故なら、この世界の歴史の中で大概の訪問者は、国を救う存在どころか滅亡を促すような行いをする人物だったからだ。
もちろん、全てが当てはまらないとは分かっている。分かってはいたが、他国の王が訪問者に溺れ、国を崩壊させていくのを小さな頃から見てきた私は、父親から「あのような王には決してなるな」と念を押して言われていた。
私の国の歴史には、訪問者の記述は一切なかった。だから、これが初めてなのだと思う。
必要不可欠な存在……それはどういう意味なのかは分からないらしい。宰相や大臣達のように政治を共に治める優秀な人物なのか、はたまた私の人生に影響を及ぼす者なのか。占術師は肝心な所はぼやけていると言っていた。
だから、あまり期待しない方がいいかもしれないと自分に言い聞かせた。占いで人生を左右されるなど馬鹿げている。
今の国には、優秀な人材が沢山いる。これ以上増えても邪魔なだけだ。もし新たな人物が来たとしても、必要ないと言い含めて、どうにかして元の世界に即刻帰すつもりだった。
そして、預言の通りに訪問者は現れた。彼は城の中庭にいきなり現れ、意識を失っていたという。その服装は見たことのないもので、その身体の小ささから、最初は女だと皆が誤解していたらしい。宰相に「お会いになりますか」と聞かれたが、どうせすぐに帰す身だ。向こうも早く帰りたいだろうし、懐かれては迷惑だと、多忙を理由に避ける事にした。
*
訪問者に付けた使用人は優秀な逸材で、念のため、訪問者の前では耳と尻尾を隠すようにと告げておいた。この世界を受け入れず、錯乱して何か問題を起こされてはたまらないからだ。
使用人の報告によれば、訪問者の名前はリョウタロウというらしい。こちらの言葉を理解していないようだが、とにかくひたすら自分を指差してその言葉を告げていたという。
今はとにかく観察するしかない。彼がどのような存在なのか、しばらくは様子を見ようと思った。
だが、その意思はいともたやすく破られる事になった。訪問者が勝手に部屋を抜け出したと報告されたからだ。
使用人は、彼も言葉が分からず不安なのだ。私達も仕えるからには彼と意思の疎通が必要だ。頼むから彼に会ってはくれないかと懇願してきた。
最初は全く興味がなかったが、使用人の話を聞くと、訪問者の性格は悪くはなく、慕うに値する人柄だという。それならば何の影響も無いかもしれない。気乗りはしなかったが、後日面会の場を設ける事にした。
……それが、運命の出会いになるとは、この時の私は全く気づかずにいた。
◇
彼は異世界の人間で、獣化はしないらしい。この世界では人族と同じようだ。
何故この国に現れたのか、何故、人族の国ではなかったのか、疑問を挙げればきりがない。獣らしい姿を見せれば、自分とは違うと分かり、恐れてすぐに帰りたいと思うかもしれない。私は試しに獣の耳と尻尾を出したまま面会する事を決めた。
だが、彼は驚きはしたが怖がる事はなかった。その視線は私の頭に向かっていたが。
私の予想と違ったのは、私の方が彼から目を離せなくなってしまった事だ。
彼と目が合った瞬間、今まで経験した事のない感覚が身体中を駆け抜けた。
それはどう表現していいか分からない。全身が歓喜に湧き、まるで求めていた半身を取り戻したような、すぐにでも彼を抱き締めたい衝動に駆られた。
私は意味が分からなかった。思い出せたのは幼い頃、乳母から聞いた番の事。
王族は滅多に番に会う事はないが、この世にはあなたと一心同体のような、運命の人がいるのだと言っていた。それは己の身体と心を癒し、安らぎを与えるという。
彼を見ていると、何故か安心している自分がいた。こんな事は初めてだった。
王という立場は、常に気を張っていなければならない。今まで戦が多かったせいでもあるが、いつどこで命を狙われる可能性があるか分からない。それは城の中でも同じだ。この国は世界でも一、二を争う大国で、敵も多かった。
そんな立場の人間が大切な物を作ればどうなるか。それは小さな幼子でも分かるだろう。必ず狙われ、取引の材料にされるだけだ。
元々、私は他人にあまり興味がない。だから、時が来たら跡継ぎを産むだけの女を適当に選び、産ませるだけ産ませて正妃に据えるつもりだった。
もちろん、家柄や振る舞いは考慮しようと思ってはいたがそれだけだ。何の情も与えるつもりはなかった。女はすぐに自分が特別だと勘違いをする。今は発散したい時だけ使える女しか要らないと思っていた。
だが、自分の中の何かが彼を求め、早く手に入れろ、早く正妃にしろと叫んでいた。彼はお前の番なのだと主張していた。
信じられなかった。まさかこんな所で番に会うとは思わなかった。どうやら「必要不可欠な存在=番」という事のようだ。
歓喜に震える私の心をよそに、彼……リョウタロウは不思議そうな顔をしながら私に話しかけた。言葉が違うと気づいた瞬間、私は我に返っていた。早く言葉を通じるようにしなければ。そう思った。
この世界には魔術が存在し、魔力が強い者ほど獣になった時の力も強くなる。今回のように、異世界からの訪問者が言葉を理解するには特別な者だけしか知らない術を掛けねばならない。
彼は言葉を理解できるようになると、早速「ここはどこなのですか?」と聞いてきた。その言葉一つ一つが素晴らしく心地よい音楽に聞こえ、いつまでも聞いていたいと思った。これが番という物なのだろうか。私はたまらず、彼に名前と年齢を聞いていた。彼の口から聞きたかったからだ。
彼は素直に教えてくれた。二十六歳という年齢は私達にしてみれば赤子も同然だ。けど、彼はすでに成人しているという。
その世界によって年齢の重ね方が違うようだ。彼の世界では、私達の十倍で歳を重ねていたのだ。
そこから、私は彼に幾度となく会う機会を持ち、笑顔も見せて貰えるようになった。名前を呼ぶ時も親しみを込めて「リョウ」と呼び、私の名前も陛下ではなく「トウガ」と呼んで貰えるようになった。こんな些細な事が嬉しいなんて思う日が来るとは思わなかった。
私はすぐさまリョウを花嫁候補に推薦した。花嫁候補は今まで全て大臣達が決めていた。私が、王自ら選ぶのは異例の事で、裏を返せば彼に決まったも同然だった。
リョウの態度も悪くはない。このまま順調に行けばすぐにでも婚約できるはずだった。
だが、思いもよらぬ事が起きた。
リョウの世界では、同性との恋愛、結婚は常識ではなかったのだ。もちろんリョウも例に漏れず、恋愛対象は女だった。花嫁候補にはならないと拒絶したようだ。
私は愕然とした。今まで私は恋愛対象にも入っていなかった。ただの親切な人で終わっていたのだ。
ひとまずこの問題は置いておき、とにかくお妃候補の勉強はさせる事に決めた。勉強するうちに私を意識して貰えばいいと思った。
*
それからしばらく経ち、お妃教育ははかどっていたようだが、リョウは高熱を出して倒れてしまった。お妃教育で身体に負担が掛かったのかと心配したが、医師によれば番に出会った為に身体が変化、つまり女の部分を作るために負担が掛かっているせいだと言っていた。
心では拒絶しているが、身体は素直に変わりつつある。それが嬉しかった。
リョウはまだ理解していなくて、私に向かって謝ってきた。それが本当に健気に見えて、ますます私の隣にいて欲しいという思いが強くなった。
リョウには番に出会った時の感覚はないのかと医師に聞いてみたが、彼は異世界の人間なので、そのような感覚はないそうだ。厄介な事だ。
私の想いを彼は受け入れてくれるだろうかと心配になったが、仕方がない。番に出会えただけでも奇跡だと思わなくてはならないと心に刻んだ。
*
初めてリョウと身体を繋げた日は、いい意味でも悪い意味でも忘れる事はできない。
本当は優しくしてやりたかった。けど、リョウの口から「あなたの女にはならない。もとの世界に帰りたい」という言葉を聞いた瞬間、理性を無くしていた。
私は獣の姿になり、リョウを襲っていた。そして、気絶したリョウを自分の私室に連れていき、軟禁した。
帰したくはなかった。元の世界へ戻ればリョウは他の女の物になってしまう。それは我慢ならなかった。誰の物でもなく、私の物にしたかった。
私は嫌がるリョウを無理やり犯し、自分の物にした。番との、愛する人との行為がこんなにも幸福感を得られるだなんて思いもしなかった。私は夢中になって彼を抱いた。
だが、彼は怒ってしまった。当たり前だ。自分の意思とは関係なく、無理やり身体を開かれたのだから。
私の誕生を祝う宴には渋々参加していた。そこには様々な国の重鎮が訪れる。だから、彼を隣に置いた。そんな事は初めてだから、事実上のお披露目のような物だった。
本人は気づいていなかったが、大抵の国の人々はそれを理解していたようだ。彼がずっと笑顔で対応していたのもあり、各国から後々受け取った便りには、素晴らしい伴侶を見つけられたと書かれていた。
私は身体を繋げた日から、彼の温もりを忘れる事ができなかった。だから、宴が終わる頃に彼にわざと強い酒を勧め、彼が酔った隙をついて部屋に連れ帰った。
この国の酒は、度が強い物が多い。私は体質なのか、どれだけ飲んでも一切酔う事はない。たが、通常ならば大の男でもすぐに降参してしまうほどだ。彼の小さな身体では耐えられないだろう。案の定、彼は動く事ができなくなっていた。そして、素直に私を受け入れた。
抵抗しない彼は可愛かった。私の愛撫で可愛く鳴き、私の心を刺激した。
私は欲望の赴くまま、彼に沢山口づけを与え、彼を思う存分抱いた。
次の日からは、予想通り彼は怒っていたが、変化した身体の負担が大きいのか、夜になるとすぐに眠気を催すようになっていた。
私は抵抗できない彼を毎日のように抱いた。抱いているうちに彼も慣れてきたのか、素直に濡れるようになっていた。私を心から受け入れてくれたようで嬉しかった。
変化が訪れたのはそのすぐ後だった。
予想もしない客が現れた。
その客は、私のお妃候補の中でも一番有力だった国の王女と父親、つまり、王だった。私がいつまでも妃を選ばぬ事に業を煮やしたらしい。一国の主とその娘を邪険にするわけにも行かず、そのまま滞在させる事になってしまった。
王はかなりの野心家で、他の王女も他国に嫁がせ実権を握っていた。同じようにこの国を支配しようとしているのが見え見えだった。
彼は残された自分の娘を妃にするべく、ありとあらゆる方法で私と会わせようとした。だが私は興味のない女に割く時間などなかった。その女に会うならリョウに会った方が有意義な時間が過ごせるものだ。だから私は多忙を理由に彼らを避け続けた。
この二人のおかげで私のスケジュールは窮屈になり、リョウと会う時間が減ってしまったのが辛かった。
私は二人に王女と結婚をするつもりはないとはっきり告げた。最初からこうすれば良かったのかもしれない。
王は渋い顔をしていたが、幸いなのは王女の方が賢い女だったという事だ。あっさり私の言葉を受け入れ、私の態度などから自分には可能性がないと薄々気づいていたらしい。
決定的だったのは私がリョウを城下町に連れて行った事だという。ここまで多忙を極める私が計画を立て、彼を共に視察に向かった。それはかなりの待遇だと。
しかも驚くべき事に、彼女はリョウと度々会って話をしていたらしい。リョウの口から一度も話を聞いた事はなかったから、秘密にしていたのだろう。
私に隠し事をしていたのも許せないが、もしリョウが彼女に惚れていたらと思うと気が気ではなかった。
無事に王と王女は帰って行ったが、私はリョウを責めてしまった。その後はさらに多忙を極め、謝る事もできないまま、リョウに会う時間が減ってしまった。
使用人もリョウが頭を冷やしたいと言っているといい、なかなか会わせてくれなかった。
限界が来たのはこの時だ。私は体調をわずかに崩すようになり、公務に支障をきたすようになっていた。城の中の空気が張り詰め、皆が私の機嫌を窺っている。
このままではいけないと思った時、リョウが私に会いたいと言ってくれた。けど、ようやく会えて言われた言葉は私を拒絶する物だった。
リョウは城から出て一人で暮らすと言ってのけた。もちろん、それはできるはずがない。はじめから城に現れ、城での暮らししか経験のない彼はすぐにのたれ死んでしまうだろう。私は即座にできるわけがないと切り捨てた。けど彼は引かなかった。
彼は誰かと一緒に暮らし、常識を覚えていくと宣言した。
リョウが私以外の誰かと暮らす。
その事実を考えただけで目眩がした。彼を私以外の誰にも渡したくなかった。
私は咄嗟に彼を押し倒し、気づけばそのまま襲っていた。我慢が足りないのは分かっていた。けど、どうしても許せなかった。
リョウは私に貫かれてもなお、私の物にはならない、元の世界に帰ると叫んでいた。私は頭の中で何かが切れるのを感じた。
リョウには本当に申し訳ない事をしたと思っている。何を言っても言い訳にしかならないのも理解している。だが、この時の私はどうしても彼を手離したくはなかったのだ。どんな方法を使っても、彼がどのように思っても。
私は既成事実を作るために、リョウを孕ませるという方法を選んだ。
この世界は様々な種族がいて、異種族との間に子を作るためには野生に近い獣の姿で交わう必要がある。リョウは人間、すなわち、私との性交は彼の意識の中でも常識ではない物になる。
リョウは予想通り顔色を変えて怯え始めた。人型の時でさえ体格差があるのだ。彼の負担は相当のものだろう。
私はそれを承知で彼を襲い、彼の中に何度も種を植えつけた。彼の声は悲鳴から嗚咽に変わり、ひたすら助けを乞う言葉を紡いでいた。
全ての行為が終わった後、私の胸を占めるのは罪悪感だけだった。気持ちの伴わない行為がこんなにも虚しい物だと思ったのは初めてだった。やはりリョウは私に会いたくないと言っていたそうだ。これは私の自業自得だから仕方がない。しかし、愛する人に拒絶されたという事実が私の心を抉るように蝕んでいた。
リョウに会いたい。会って謝りたい。
そんな私の気持ちを嘲笑うかのように、新たな嵐が吹き荒れた。
嵐の中心は国を建て直す時に共に活躍した協力者、アレインの息子イシュラだった。
彼は私のお妃候補であり、自分に自信のある一番厄介な性格の持ち主だった。
イシュラは私の公務があるないにも関わらず、ひたすら私に付きまとった。公務があるから控えて欲しいと伝えてもそばにいようとする。これがリョウだったらどんなに嬉しかった事か。
黙って待っているならまだいい。だが、イシュラは私の公務を遮るように邪魔をしては自分に構わせようとした。
アレインには世話になった。彼がいなければこの国が平和になる事が数十年遅れたであろう。イシュラは父親の前では従順な息子を演じていたそうだ。だから気づくのが遅れてしまった。
イシュラは城の使用人を顎で使い、いつかは自分の物になるのだからと自由に振舞い、客人にも関わらず、城の備品も使い放題だったそうだ。我慢の限界に達した使用人の訴えにより発覚した。
私がアレインに遠慮せず、早く伝えて対処していれば良かったのかもしれない。
そうすれば、あのような事件を起こす事はなかったのだから。
*
度重なる激務に、イシュラの付きまとい……私の精神は落ち着かず、睡眠を削る日々が続いた。体調不良も続き、徐々に心が荒んでいくのを感じていた。リョウに出会う以前には感じた事の無いものだ。
これほどまでに番という存在は影響のあるものなのかと驚いた。
イシュラは私の気持ちに気づかず、思いのままに行動している。ふとした拍子にイシュラを殺したい衝動に駆られた時、このままではまずいと宰相達に思いを告げた。
宰相と大臣は急ぐようにリョウの所へ行った。なんとか頼み込み、私と会う約束を交わしたようだ。
数日留守にしても影響のないよう、必要な書類は全て片付けた。残りは後宮でやればいい。対面する必要のある公務は、全て体調不良という名目で控える事にした。これは最近の私を見ていた宰相が提案した。
心置きなくリョウタロウ様とお話下さいませという使用人の言葉に甘え、私は後宮の扉を開いた。
待っていたのは愛しい人。私は何を言おうか考える前に、気づけば謝罪の言葉を口にしていた。そこで私の記憶は途切れてしまった。
目が覚めたら、寝台のそばにはリョウがいた。使用人から私の様子を聞いていたらしい。心配そうに「大丈夫か」と声を掛けてくれた。
怒ってないのかと聞いてみれば、病人に怒るほど鬼じゃないと言ってくれた。その優しさが嬉しかった。
私は今までの無礼を詫びた。余裕がなかった。こんな事は初めてなのだと訴えた。
リョウは無理をするなと言ってくれたが、今言わなければリョウはすぐにでも私の元を離れてしまうと思った。だから必死だった。倒れそうになっても必死にリョウにしがみついた。
そして、私はリョウに妃になって欲しいと、愛していると告げた。
リョウは私が自分を好きだと気づいていなかったらしい。それは拍子抜けだったが、目が覚めたら返事をする。だから今は休めと言ってくれた。
私は獣の姿の方が回復が早い。だから、リョウに膝を貸してくれと伝えてみた。弱っている私に情が移ったのか、彼は仕方ないなと笑ってくれた。
私は彼を寝台に上がらせてから、獣の姿になると、そのまま落ちるように眠りについた。うとうとしながら感じた手の温もりが心地よかった。その手はいつまでも私の頭や顎の下を撫でていて、とても安心できた。こんなに安らかな眠りは久しぶりだった。
~中略~
そして、私達は紆余曲折を経て結婚した。婚約中の妊娠や流産という大事件もあったが、犯人のイシュラは捨て島へと移送され、残りの人生をそこで過ごす事になった。本人は最後まで抵抗していたようだが、ここまで証拠が揃っているなら逃げられまい。父親のアレインも彼を勘当した。
私も二度とリョウに会わせるつもりはないし、リョウも彼を許すつもりはないと言ってくれた。一生監獄で己の罪を償い、あの時私に殺された方がましだと思う人生を歩めばいい。
王らしからぬ言動だとは分かっている。しかし、彼はリョウを消そうとし、私達の子どもを死に至らしめたのだ。このくらいは許して欲しい。
成婚から二十年が過ぎ、ようやく私達は子どもを授かる事ができた。信じられない事に双子の王子だった。
きっと、あの時亡くなった我が子が戻って来てくれたのだと思わずにはいられない。リョウは笑っていたが、そうだなと頷いてくれた。
今はまだ産まれたばかりで頼りない。人型をとるまでには時間がかかるだろう。
リョウは元々動物が好きらしく、二人の王子に付きっきりで構う日々が続いている。それは微笑ましい事だが、たまには私も構って欲しいと思うのは我が儘だろうか。
リョウは獣化した私の毛並みや肉球を触るのが好きだから、久しぶりに触らせてみるのも悪くはない。
王子達が私の後を継ぐまでまだまだ月日はかかるだろう。だからそれまで、リョウと共にさらに良い国にしようと思う。
自分とは違う種族の私を受け入れ、共に人生を歩んでくれるリョウには感謝の気持ちしかない。
生涯の愛を誓い、この気持ちを一生伝え続けて行けたらいいと願っている。
……リョウタロウ、お前に一生変わらぬ愛を誓おう。
愛している。
Fin .
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