ある旅行者の日記・番外編

マメ

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【 side 王 】


 リョウが懐妊した。
 しかも、信じられない事に、子は一人ではなく、双子のようだった。私はらしくもなく、涙を流してしまった。
 私達の間には、本当はもう一人の子がいるはずだった。だが、ある男のせいでリョウは流産をし、リョウ本人ももう少しで命を失う所だった。思い出したくもないが、あの男の事は一生許す事はないだろう。
 あの男……リョウの命を奪おうとしたイシュラという男は、現在、通称「捨て島」と呼ばれる島に幽閉されている。ここは、凶悪犯や重罪人が流される場所で、話し相手といえば厳しい訓練を受けた看守くらいしかおらず、面会もほぼできない。基本的には自由が全く利かないようになっていて、少しでも逃げようとか、看守を取り込もうなどと考えれば即、懲罰が待っている。人権などなく、ただ、罪を償うためだけの場所。その名の通り、世間から捨てられた島……そんな場所だった。リョウはどんな場所か知りたがっていたが、優しいリョウには聞く事すら耐えられないだろう。
 捨て島に流された者の事は、定期的に報告を受けている。私が様子を見に行く事は滅多にないが、偶然、明日がその日だった。


 次の日、私と宰相のウルハは馬車に揺られて捨て島へと向かった。
 罪人が幽閉されている収容所は島の中心にある。収容所の入り口に降り立つと、看守長が数人の護衛と共に出迎えた。
「陛下、ようこそお越しくださいました」
「ああ。様子はどうだ?」
「はい。やはりこの島に来た者は、どんな凶悪犯でも大人しくなりますね。今は何も問題はございません」
「そうか。では、このままいつも通り続けてくれ」
「はっ!」
 看守長に様子を聞くと、いつも通りの答えが返ってきた。という事は、反乱を起こしたり、逃げようとする者はいないのだろう。
「……イシュラはどうだ?」
「はっ! そうですね……つい先日、暴れまして、懲罰房に入っていました」
「まだ落ち着かないのか?」
「はい、やはり、王族としてのプライドが邪魔をするようです」
「……まだ反省をしていないのですか?」
 この言葉にウルハも驚いていた。イシュラがここに収容されてから何年も経っているが、時折、このような報告を受けていた。未だに自分の罪を認めず、リョウへの恨みを吐いているらしい。どこまでも哀れな男だ。
「イシュラの様子を見せてくれ」
「私にも確認させてください」
「承知いたしました。では陛下、ウルハ様、こちらへどうぞ」
 看守長に付いて施設の中へと入ると、薄暗い廊下を通り、さらに地下へ地下へと進んでいった。
 この施設は、罪が重いほど収容される場所が地下深くになる。簡単に逃げられないようにするためだ。イシュラの罪は「王族殺害及び、殺人未遂」。これは最も重い罪になる。
 そして、私達はイシュラの房へとたどり着いた。その房の前には四人ほどの屈強な体格の看守がずらりと並んでいる。
 看守達は私達に気づくと、揃って敬礼をしてきた。
「ご苦労。イシュラの様子はどうだ?」
「はっ! 先日の懲罰のせいで弱ってはいますが、変わりありません」
「分かった。これからもよろしく頼む。開けてくれ」
「はっ!」
 看守が重たい鉄の扉を開けると、さらに鉄格子が現れた。その先の薄暗い部屋に、イシュラはいた。


「おい、起きろ」
 看守が声をかけると、俯いて床に座っていたイシュラがのろのろと頭を上げた。
 イシュラに会うのは、あの事件以来だった。あれから何度かこの収容所を視察したが、私は決して、イシュラに会おうとはしなかったから。
 今のイシュラは、昔のように華美な服を着ていない。薄汚れた簡素な服を身に着け、裸足のままだった。首の辺りには鞭で叩かれたような赤い筋もできていて、きっとこれが懲罰の痕なのだろう。身体にはもっと多くの傷があるはずだ。
 黒々としていた髪もパサパサで、全てが白髪になっていた。身体も以前よりは大分痩せている。あんなに自分の身だしなみに気を使っていた奴だ。今の自分は受け入れがたいだろう。
「……」
 イシュラは黙っている。目も虚ろで、思考が働いていないようだ。
「いつもああなのか?」
「はい。最近はあのように過ごしています。懲罰房に入れられた時の拷問で、体力が落ちているのだと思います」
「あとは?」
「看守を誘惑して、外に出ようと思ったようですが、失敗に終わった事が何度もあったようです」
「どういう事だ?」
「腹が痛いと言って房の中に看守を招き、抱いて欲しいと誘惑したのち、鍵を盗もうとしたそうです」
「その看守はどうした?」
「誘惑には乗らず、他の囚人へイシュラを差し出しました」
「囚人は一人か?」
「いえ、複数です。みんな性欲が溜まっていますから……一晩中、イシュラの悲鳴が聞こえていましたが、これも罰の一つとして済ませました。それで懲りたと思ったのですが、何度も同じ事を繰り返すのです」
「その度に……こいつを囚人達に渡すのか?」
「はい。そうしています。最近では、みんなに犯されるのが目的なのではないかと疑いたくなりますね。そのくらい頻繁になってきています。でも、終始悲鳴を上げているそうなので、どうだか……」
「そうか。相変わらず無法地帯だな」
「それを許したのは陛下ですよ?」
「それもそうだな……。まあ、イシュラにはいい薬になるだろう。元々、学習能力がない奴なのだ。それで良い。こいつに情けは必要ない」
「はい」
「何かあれば同じようにしてやれ。あとはお前の判断に任せる」
「了解しました」
 リョウが聞いたら卒倒しそうな内容だが、ここではこんな事が当たり前のように頻繁に起きている。だから、この島に送られた者の人権は無いに等しく、誰もがここに来るのを嫌がるのだ。ウルハもこう言った話に慣れているようで、平然と、顔色も変えずに聞いていた。
 すると、看守長がイシュラに声をかけた。
「おい、陛下と宰相殿がお越しになったぞ」
「……!」
 イシュラはカッと目を見開き、よろめきながらも立ち上がった。私達のいる鉄格子の前へのろのろと歩いてきたと思ったら、その鉄格子を掴み、ほろほろと涙を流し始めた。
「へ、陛下……、私を迎えに来てくださったのですね……!」
「「……」」
 こいつは何を言ってるんだ? 思わずウルハと顔を見合わせていると、イシュラはさらに言ってきた。
「私はあの男に嵌められたのです! 私は、何もしていない!」
「……あの男、とは?」
「りょ、リョウタロウです! あの男が、私の前で、自分から落ちていったのです!」
「……」
「私は悪くない! ここから出してください! 私なら、あなたの妃として相応しい働きができます! 世間知らずなあの男など早く追い出してくださいませ!」
 イシュラが叫んだ言葉は、二十年前と全く変わっていなかった。つまり、自分が正しいと思い込んでいて、反省の色などどこにもないという事だ。
「本当に反省していないんですね……驚きました」
「ああ。私もだ。さすがに、この暮らしをしていれば変わると思ったが……」
 いくら反省をしようとも、ここから出すつもりは一切なかった。だが、ここまで変わらぬとも思っていなかった。それはウルハも同じらしい。隣でため息を吐いている。
 私はイシュラの目を見て、淡々と口にした。
「お前に報告したい事がある」
「はい……!」
 やはり、まだ勘違いをしているようだ。イシュラの目が輝きを帯びている。ここから出して貰えると思っているらしい。
 私はこの男にとって、最も残酷な言葉を吐き出した。
「お前がここから出る事は、一生ない」
「え……?」
「お前は私の子を殺害し、愛する者も失わせようとした。そんな奴を妃に据えると思うのか?」
「で、でも、私は……!」
「裁判でもはっきりしている。お前がリョウを突き落とし、倒れて苦しみながら血を流しているリョウを一切助けようともせず、リョウの姿を見ながら笑っていたと、何人もの兵や使用人が証言していた。普通は怪我人を見て笑っていられる者などいない。そんな輩は精神異常者だ。妃には相応しくない」
「へ、陛下……」
「お前は今も、リョウの事をあの男と、世間知らずだと貶していた。そのような心の穢れた者を妃にするつもりはない」
「陛下! わた、私は……!」
「あれから何年経ったと思っている? 二十年だ。二十年も経っているというのに、お前には何の進歩も見られない。本当に残念だ」
「……」
「ああ……それから、私とリョウは二十年前にすでに結婚した。リョウは今、私との子を身篭っている。しかも、双子だ」
「え……」
「お前のせいで、リョウは子を作れぬ身体になって、ずっと苦しんでいた。だが、奇跡が起きた。お前が殺害した子が帰って来たのだ。その子が成長して、お前に復讐するかもしれんな。もちろん、私はそれを止める事はない」
「ひっ……!」
「その時を楽しみにしておけ。一生、怯えながらここで暮らすがいい」
「そ、そんな……」
「それから、お前は頻繁にここの囚人達に抱かれているようだな。味をしめたのか?」
「な、なぜそれを……!」
「複数の者に抱かれる事を趣味としている者を、私のそばに置く事はできぬ。お前はここで暮らすのが合っているのだろうな」
「陛下! 違います! 私は無理やり、決して、決して、自分の意思ではございません……!」
 イシュラは私に言い訳をしようとしてきたが、聞いているだけ時間の無駄だった。冷たい視線を浴びせ、看守長とウルハに話しかけた。
「もうここに用はない。帰るぞ」
「「はっ!」」
「陛下! お待ちくださ……陛下、陛下ーーーー!」
 歩を進める度にイシュラの悲痛な叫びが聞こえたが、私達は無視をした。すぐにギギィ……と、鉄の扉が閉まる音がして、イシュラの声は全く聞こえなくなった。


 ◇


 それから、私達は捨て島を後にして、無事に城へと帰ってきた。
 帰ってからも書類などの雑務がぎっしりと詰まっていたが、終われば愛しい妻が待っている。それを思えば辛くはなかった。
 そして、今日の仕事を終えて私室へと戻ると、リョウが夜着のままソファーに寝そべり、そのそばでトキが世話を焼いていた。今朝はいつも通りだったはずだが、様子がおかしい。リョウの顔色も悪い気がする。私はすぐにリョウのそばへ駆け寄った。
「リョウ、どうした? 具合が悪いのか?」
「……」
 リョウはあまり反応しなかった。その代わりに、トキが返事をした。
「今日はいつもよりつわりが酷いのです。吐き気もあるのでお休みにもなれないようで……」
 リョウの額に手を当てると熱かった。熱も出ているようだ。
「大丈夫か?」
 そう聞いてみると、リョウは急に眉間にしわを寄せ、私の服を掴んだかと思うと、いきなり嘔吐した。
「リョウタロウ様! 陛下……! お召し物が……!」
「私は大丈夫だ。それよりも何か拭く物を」
「は、はい! すぐにお持ちいたします!」
 私の服はリョウの吐瀉物で汚れてしまったが、それは気にもならなかった。それよりも、リョウの方が心配だ。
「う……げほっ」
 リョウははあはあと息を荒げている。私はその背中を擦りながら介抱していたが、リョウは少しずつ落ち着きを取り戻した。
「ご、ごめん……ずっと吐けなくて気持ち悪かったんだ」
「気にするな。少しは落ち着いたか?」
「うん……でも、まだ気持ち悪い……」
 私がリョウの頭を撫でていると、トキが戻ってきた。
「陛下、タオルをお持ちいたしました。お着替えもこちらに」
 さすがは優秀な使用人。トキは命令もしていないのに私の着替えも用意していた。
 私が着替えを済ませる間、リョウは薬を飲んだようで少しだけ回復していた。着替えを終えた私は、リョウが寝ているソファーに座り、リョウの頭を私の膝の上に乗せた。私が疲れている時、いつもこうしてもらっているから、今日は逆だ。
「……いつもと逆だね」
「たまにはいいだろう?」
「うん……トウガ……」
「何だ?」
「手……握ってて……」
「ああ」
 私がリョウの小さな手を握ると、リョウは目を閉じて黙ってしまった。あまり口を開きたくないのだろう。そこまで具合が悪いのは大変そうだが、その理由が私の子を身籠ったせいだと……私の子を産むために、この小さな身体で頑張ってくれているのだと思うと、愛しさで胸がいっぱいになる。昼間のイシュラの事など記憶から消したいくらいだった。
 私はリョウが眠るまで、ずっと手を握ったまま、頭を撫でていた。


 そうした日々がしばらく続き、リョウは大事を取って、国民の前に出る事がほとんどなくなった。私だけが表に出ている状態のため、一部では私達の不仲説が出ているらしい。妊娠を告げる会見まで開いたというのに、本当に驚いた。
 そして、さらに月日は流れ、リョウは臨月を迎えた。
 手術も再来週に決まり、城の中が子を迎える準備で慌しくなっている。
 安定期に入ってからは、以前のように一緒に休む事にしている。休む前にリョウの腹を触るのがいつの間にか習慣になっていて、今日も同じようにしてから二人で休んだ……はずだった。


「トウガ、トウガ」
 まだ深夜のはずなのに、耳元でリョウの声がした。いつもなら朝までぐっすり寝ているリョウにしては珍しい。目を開けてみると、リョウが私の身体を揺すりながら、顔を覗き込んでいた。
「……どうした?」
 私は優しく聞いてみた。リョウの目が不安そうに揺れていたから。怖い夢でも見たのだろうか。
 だが、リョウの口はとんでもない言葉を吐き出した。
「なんかさ、濡れてんだけど……」
「何がだ?」
「俺の夜着とベッドが濡れてる。漏らしたんかなあ」
「は……?」
 灯りを点けて見てみると、確かに寝台が濡れていた。しかも、良く見るとリョウの夜着も濡れている。
 私の心臓が、バクバクと急激に鼓動を奏で始めた。本人は分かっていないようだが、これは間違いなく、破水だ。
「……っ、リョウ! どこも痛くはないか?」
「痛くないけど?」
「いいか? このまま絶対に動くな! 待っていろ!」
 私はリョウを残し、慌てて寝室を出た。すぐに外にいた警備兵達にリョウの状態を告げると、彼らも慌てて医師を呼びにいった。すると、すぐに辺りがバタバタと騒がしくなり、トキと使用人達がリョウを運ぶためのストレッチャーを持ってきた。
「陛下! 先生の準備は整ったようです! リョウタロウ様をここに!」
「分かった。すぐに連れてくる」
 私再び部屋に入り、リョウを抱き上げ廊下に出た。
「え? え? みんなどうしたの?」
 リョウはストレッチャーに乗せられて運ばれていても、まだ何がなんだか分かっていないようで、まだキョトンとしている。それを見かねたのか、トキが慌ててリョウの耳元で囁いた。
「リョウタロウ様……あなたは破水したんですよ」
「え……」
「今から緊急手術に向かいます」
「リョウ、大丈夫だ。安心して元気な子を産んでくれ」
 私がリョウの手を握りながらそう言うと、リョウは目を見開き、数秒固まった後、大きな声で叫んでいた。
「ええええーーーーーーーーーー! 」
 リョウはそのまま、手術室へと運ばれていった。




 ◇


 話は瞬く間に城内に広まり、深夜にもかかわらず、ここに住んでいる全ての者が起床していた。
 そして、手術は約一時間ほどで終了した。
 手術室から出てきた時、リョウは眠っていた。下半身だけの麻酔だったはずなのに、どうしたのかと医師に聞いてみると、リョウは手術が終わるとすぐに意識を手放してしまったらしい。まだ子ども達も見ていないそうだ。「突然の緊張と疲労から解放されたからでしょう」と医師は笑っていた。
 子どもは二人とも男だった。つまり、一人は次の王になる。男女どちらでも構わないと思っていたが、やはり、後継ぎができたというのは素直に嬉しかった。
「赤ちゃんは早産だったため、保育器に入っています。ご覧になられますか?」
「あ、ああ……」
 待ちに望んだ我が子との対面は、想像した以上に感動的だった。保育器には獣の姿の二人がいて、鼻に管が繋がれていたが、身体をぴくぴくと動かしながら寝ていた。まだまだ小さな存在だが、二人とも私とリョウの毛色を受け継いでいて、黒々とした見事な毛並みだった。リョウがここにいたなら「早くモフモフしたい」などと言っていただろう。ちなみに、一人は首のまわりが白く、もう一人は足の先が白かった。
 私は感動のあまり、子ども達を見ながらしばらく言葉を発する事ができなかった。トキも同じだったようで、「おめでとうございます」と言いながら、私の隣でずっと涙を流していた。
 
 子ども達が生まれてから二週間、ようやくリョウに子ども達を会わせる日がやってきた。
 リョウはまだ傷が癒えていない状態だったが、二人を見るなり顔を緩ませながら「可愛い、可愛い」と、ずっと口にしていた。以前から説明はしていたものの、自分の子が獣の姿だという事実をリョウが受け入れられなかったらと不安だった。だが、その心配はいらなかったようだ。
 二人の名前はリョウに付けてもらうことにした。すると、リョウは自分の父親の話をした。以前も聞いた事があるが、リョウを男手一つで育ててくれた方だそうだ。
 違う世界に来ても、父親の事は忘れた事がない。だから、これからも忘れないように、二人にその名を受け継いで欲しいのだとリョウは言った。
 私に拒否できるはずがなかった。リョウはこの世界に来る事で、家族や友人、そして、元の世界での生活すべてを捨てる事になったのだから。
 リョウのような異世界からの来訪者は、この世界では珍しくはない。だから、元の世界に帰す方法は、実は世界中の王家には伝えられている。もちろん、我が国にも書簡が残されている。
 だが、この国に現れたのはリョウが初めてのため、その方法が本当に正しいのか、成功するかどうかは定かではない。まあ、そのような事が頻繁にある国に聞けばすぐに詳細は分かるのだが、私がそれを聞く事は一生ないと思っている。もちろん、リョウが知りたいと言ったとしても、絶対に教えるつもりはなかった。子ども達が成長したら書簡の事は伝えるつもりだが、それをどう使うかは、二人に委ねようと思う。
 王の子として生まれた子には、名前に「ガ」を付けるという決まりがある。父親の名は「ユウサイ」というらしい。
 だから、二人の名は「サイガ」と「ユウガ」と名付けた。サイガが兄で、ユウガが弟だ。
 リョウは何度も「サイガ」「ユウガ」と口にして、いつまでも飽きることなく二人を撫でていた。時折、「可愛すぎてもえる……」と聞こえてきたが、「もえる」とはどんな意味なのだろうか。「燃える」とは違うような気もするが、元の世界の言葉なのだろうか。私には分からなかった。
 時間になって二人を連れて行こうとした時も、リョウは「もう連れてっちゃうの?」と寂しそうにしていたのが可愛かった。


 街では二人の王子の話で持ちきりだそうだ。新聞や雑誌も見せてもらったが、やはりそれ一色だった。お披露目は二人が人型を取れるようになってから行う。だから、まだまだ先の話だというのに気が早いものだ。
 私は子どもが好きなわけではない。別に欲しくはないとさえ思っていた。私にとって、子どもとはその程度の物だった。なのに、リョウに出会ってからは子どもが欲しくなり、子ども達を見ていると、会えてよかった。どんな教育をしようか、この子達が住みやすい国にするためにはどうすればいいか。そんな事ばかり考えてしまう。
 リョウには笑われるかもしれないが、私をここまで変えてくれたリョウと子ども達には感謝しかない。
 すやすやと眠る二人の我が子を眺めながら、私は幸せを噛み締めていた。
 

                        


Fin.
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