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○月×日
妊娠を告げられてから二日が過ぎた。まだ夢の中にいるようだ。
王は公務を終えてからすぐに来てくれた。
最初は言うのをためらってしまったが、何かの病気なのかと絶望的な顔で言われてしまったので、安心してもらう為に妊娠を告げた。
王はプロポーズを受けた時のように固まっていた。そして、しばらくした後「本当か?」と呟いた。
うん、と頷くと痛いくらいに抱き締められて、ありがとうと言われた。
でも、プロポーズを受けたばかりだし、いきなりすぎて戸惑っている、自分が子どもを産むという実感がないと自分の気持ちを伝えたら、悪かった。私も焦りすぎたと何故か謝罪された。
どういう事だと聞いてみたら、王は気まずそうにしながらも説明してくれた。
この世界は様々な種族がいる。
同じ種族ならば人型のままでセックスしても普通に妊娠できるが、違う種族だとその確率は極端に下がってしまうそうだ。奇跡に近いらしい。
じゃあ、どうやって違う種族同士で妊娠させるのかというと、あまり知りたくなかったが、つまり、野生に近い獣の姿で交わる事なんだそうだ。
だから、俺が妊娠したのは王が獣の姿で襲った時だろうと言われた。
本当にすまない。あの時はお前が離れてしまうと思って焦っていた。子どもができれば逃げられないと思ったと王は言った。既成事実を作ったというわけだ。
そこまで王は追い詰められていたのかとびっくりしたが、この世界の妊娠のメカニズムにも驚いた。本当にファンタジーすぎる。だから今まであんなにヤってても出来なかったのか。
かなり複雑な気持ちになったが、今は王を受け入れている。ちゃんと産むから安心しろと言ったら、また抱き締められてありがとうと何度も言われた。
でも、もし二人目が欲しいと言われたら考えてしまうかも。獣の姿で犯されたのは怖かったし、苦しかったから。
これは王に言えないな。
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○月×日
やはりつわりが酷い。
公務の合間に王が様子を見に来たが、気持ち悪くて王の服に盛大に吐いてしまった。
王は気にするなと笑っていたが、高そうな服だったから本当に申し訳ない。
まだ食欲が出なくて点滴に繋がれている。栄養のあるものを摂らないといけないのは分かっているが、やはり食べると吐いてしまう。
世の中の女性はすごいな。
改めて母親の偉大さに気づいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
○月×日
国民への婚約発表まであと二日に迫ってきた。
俺の体調はまだ安定しない。
医師との相談の結果、今回は王一人で会見するという。慣れない場所で負担がかかり、子どもが流れたら大変だからだそうだ。
安定するまで妊娠の事は伏せておくらしいが、結婚式は延期になると言っていた。
この世界、というか、この国の種族の妊娠期間は人間と同じで約10ヶ月。身重で結婚式は辛いだろうと、産まれて落ち着いてからにするそうだ。
医師や使用人から、今は王に任せて身体を休めて下さい。違う種族の妊娠はただでさえ負担がかかるのですからと言われた。
まさか出産も難産じゃないだろうな。
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○月×日
昨日は婚約発表の日だった。
使用人がいろんな新聞を持ってきてくれたが、全ての記事が婚約の事でいっぱいだった。
この世界にはテレビのような物はあるが、全ての家庭にあるわけではなく、ごく一部にしか普及していないらしい。
だから、新聞や雑誌が人々の主な情報収集源になっている。
ちなみに俺はこの世界に来てからテレビは見せてもらえなかった。低俗な番組が多いからと言う理由だ。
使用人が特別に会見の様子は見せてくれると言ってくれていたが、体調が悪くてリアルタイムで見る事が出来なかった。
録画しておいた物を見せてもらったが、そこで見た王は笑顔を浮かべる様子もなく、淡々と婚約を発表していた。
いつも俺と一緒にいる時はけっこう笑っているけど、仕事モードの時はこうなんだろうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
○月×日
いきなりの婚約発表に世間は驚いているらしい。
他国へは予め報告していたらしいが、王も様々な所からの対応に追われているという。昨日も部屋に戻って来るなり疲れたとこぼしていた。
昨日は会見を見ている途中で具合が悪くなって最初の方しか見れなかった。
だから今日はまた最初から見ている。
なぜ婚約者は同席しないのか、今までそういった話が出ていなかったが、なぜいきなり決めたのかなど、様々な質問が飛んでいたが、王は表情を変えずに全て淡々と答えていた。
婚約者は体調を崩しており、会見できるような状態ではない。これは医師との間で決めた。
婚約を決めた理由は、私の求める王妃として相応しい心の持ち主であり、この人とならば生涯の伴侶として、時には戦友として共に生き、一生守っていきたいと心から思えたのが一番の理由だと言っていた。
けっこう恥ずかしい事を言ってくれているが、あまりに表情が変わらないので用意された嘘なんじゃないかと思ってしまった。全然嬉しそうに見えない。
聞きようによってはお妃候補の中から相応しい相手を選んだとも思えるし、俺が同席しないのも疑われる要因の一つだろう。
実際に新聞の記事には、「政略結婚か陛下自ら選ばれたかは分からず」などと書いてあるものもあった。
当たり前だが、王は俺の名前を婚約者として皆に告げ、性別は男性だと発表した。ついに俺の存在が広まるってわけだ。
使用人はここまで発表したからにはもう確定ですし、イシュラ様に気をつけて下さいねと言ってきた。きっと今は荒れているでしょうからと。
イシュラって来客者の事だよな。
忘れてた。接触して来ませんように。
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○月×日
妊娠を告げられてから二日が過ぎた。まだ夢の中にいるようだ。
王は公務を終えてからすぐに来てくれた。
最初は言うのをためらってしまったが、何かの病気なのかと絶望的な顔で言われてしまったので、安心してもらう為に妊娠を告げた。
王はプロポーズを受けた時のように固まっていた。そして、しばらくした後「本当か?」と呟いた。
うん、と頷くと痛いくらいに抱き締められて、ありがとうと言われた。
でも、プロポーズを受けたばかりだし、いきなりすぎて戸惑っている、自分が子どもを産むという実感がないと自分の気持ちを伝えたら、悪かった。私も焦りすぎたと何故か謝罪された。
どういう事だと聞いてみたら、王は気まずそうにしながらも説明してくれた。
この世界は様々な種族がいる。
同じ種族ならば人型のままでセックスしても普通に妊娠できるが、違う種族だとその確率は極端に下がってしまうそうだ。奇跡に近いらしい。
じゃあ、どうやって違う種族同士で妊娠させるのかというと、あまり知りたくなかったが、つまり、野生に近い獣の姿で交わる事なんだそうだ。
だから、俺が妊娠したのは王が獣の姿で襲った時だろうと言われた。
本当にすまない。あの時はお前が離れてしまうと思って焦っていた。子どもができれば逃げられないと思ったと王は言った。既成事実を作ったというわけだ。
そこまで王は追い詰められていたのかとびっくりしたが、この世界の妊娠のメカニズムにも驚いた。本当にファンタジーすぎる。だから今まであんなにヤってても出来なかったのか。
かなり複雑な気持ちになったが、今は王を受け入れている。ちゃんと産むから安心しろと言ったら、また抱き締められてありがとうと何度も言われた。
でも、もし二人目が欲しいと言われたら考えてしまうかも。獣の姿で犯されたのは怖かったし、苦しかったから。
これは王に言えないな。
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○月×日
やはりつわりが酷い。
公務の合間に王が様子を見に来たが、気持ち悪くて王の服に盛大に吐いてしまった。
王は気にするなと笑っていたが、高そうな服だったから本当に申し訳ない。
まだ食欲が出なくて点滴に繋がれている。栄養のあるものを摂らないといけないのは分かっているが、やはり食べると吐いてしまう。
世の中の女性はすごいな。
改めて母親の偉大さに気づいた。
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○月×日
国民への婚約発表まであと二日に迫ってきた。
俺の体調はまだ安定しない。
医師との相談の結果、今回は王一人で会見するという。慣れない場所で負担がかかり、子どもが流れたら大変だからだそうだ。
安定するまで妊娠の事は伏せておくらしいが、結婚式は延期になると言っていた。
この世界、というか、この国の種族の妊娠期間は人間と同じで約10ヶ月。身重で結婚式は辛いだろうと、産まれて落ち着いてからにするそうだ。
医師や使用人から、今は王に任せて身体を休めて下さい。違う種族の妊娠はただでさえ負担がかかるのですからと言われた。
まさか出産も難産じゃないだろうな。
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○月×日
昨日は婚約発表の日だった。
使用人がいろんな新聞を持ってきてくれたが、全ての記事が婚約の事でいっぱいだった。
この世界にはテレビのような物はあるが、全ての家庭にあるわけではなく、ごく一部にしか普及していないらしい。
だから、新聞や雑誌が人々の主な情報収集源になっている。
ちなみに俺はこの世界に来てからテレビは見せてもらえなかった。低俗な番組が多いからと言う理由だ。
使用人が特別に会見の様子は見せてくれると言ってくれていたが、体調が悪くてリアルタイムで見る事が出来なかった。
録画しておいた物を見せてもらったが、そこで見た王は笑顔を浮かべる様子もなく、淡々と婚約を発表していた。
いつも俺と一緒にいる時はけっこう笑っているけど、仕事モードの時はこうなんだろうか。
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○月×日
いきなりの婚約発表に世間は驚いているらしい。
他国へは予め報告していたらしいが、王も様々な所からの対応に追われているという。昨日も部屋に戻って来るなり疲れたとこぼしていた。
昨日は会見を見ている途中で具合が悪くなって最初の方しか見れなかった。
だから今日はまた最初から見ている。
なぜ婚約者は同席しないのか、今までそういった話が出ていなかったが、なぜいきなり決めたのかなど、様々な質問が飛んでいたが、王は表情を変えずに全て淡々と答えていた。
婚約者は体調を崩しており、会見できるような状態ではない。これは医師との間で決めた。
婚約を決めた理由は、私の求める王妃として相応しい心の持ち主であり、この人とならば生涯の伴侶として、時には戦友として共に生き、一生守っていきたいと心から思えたのが一番の理由だと言っていた。
けっこう恥ずかしい事を言ってくれているが、あまりに表情が変わらないので用意された嘘なんじゃないかと思ってしまった。全然嬉しそうに見えない。
聞きようによってはお妃候補の中から相応しい相手を選んだとも思えるし、俺が同席しないのも疑われる要因の一つだろう。
実際に新聞の記事には、「政略結婚か陛下自ら選ばれたかは分からず」などと書いてあるものもあった。
当たり前だが、王は俺の名前を婚約者として皆に告げ、性別は男性だと発表した。ついに俺の存在が広まるってわけだ。
使用人はここまで発表したからにはもう確定ですし、イシュラ様に気をつけて下さいねと言ってきた。きっと今は荒れているでしょうからと。
イシュラって来客者の事だよな。
忘れてた。接触して来ませんように。
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