ある旅行者の日記

マメ

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プロローグ

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 私は東のお城で使用人として働いている。
 今日はそこで見つけた日記の話をしよう。


 その日記は使われていない倉庫で発見された。
 古ぼけた表紙に黄ばんだ紙、それにもうすぐ消えそうなほど薄くなった文字。
普通なら汚い本として気にも止めなかったであろう。だが、私はなぜかそれが気になった。
 上司に聞けば、使われていない場所にあったのだから必要のないものだろう。好きにしていいと言ってくれた。普段からの行いが良かったのが幸いしたようだ。
 私は早速、自分の部屋に持ち帰り、少しずつ読み進める事にした。



 だが。


「これは……」

 そこに書かれていた文字は、この世界でほとんど使う人がいない言語だった。
なぜ分かったのかと言うと、私は学生時代、その言語の言葉の響きが好きで研究をしていたから。

「でも……」

 城の倉庫にあったという事は、城で生活していた人間の物だろう。現在、この言語を扱える人間は城でもわずかしかいない。
 とりあえず読んでみると、それはとある旅行者の日記だった。だが、ただの旅行者ではない。
……本来ならこの世界にいるはずのない、異世界からの旅行者だ。
 この人物が、なぜこの文字で書いたのかは分からない。けど、何か裏があるような気がして仕方なかった。
 私はゴクリと息を飲み、恐る恐るページをめくっていった。


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