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そして、俺は紹介された店の前に佇んでいた。予約時間は午前十一時。お店が始まってすぐの時間だ。
本当に当たるのだろうか。いや、当たらなくてもいい。俺の結婚を後押しして欲しい。いざ、出陣。
俺はお店の扉を開け、その店へと入って行った。
「いらっしゃいませ」
扉を開けた瞬間、落ち着いた静かな声が聞こえた。どうやら受付の女性らしい。女性はワンピースを着ていた。
「ご予約の方でしょうか?」
「はい。花村と申します」
「少々お待ちください…花村様、辻井様のご紹介ですね。鑑定はルイ先生でよろしいでしょうか?」
「はい」
「それではこちらへどうぞ」
スタッフの女性は俺を個室に案内した。これは他の店でも同じ事だ。俺は広いテーブルの前に座るように促された。テーブルの上にはいかにも占い師が使うような水晶玉と、天然石だろうか。いくつかの色々な石と不思議な器具がタロットクロスの上に乗っていた。
「すみません…先生はもうすぐいらっしゃいますので、少々お待ちください」
女性はお茶を出したかと思うと、次の客の対応に向かっていった。
「……」
ドキドキする。ルイ先生……か。どんな鑑定をするんだろう。でも、辻井の奥さんの紹介だし、信頼できるよな。
初めての占い師に会うのは緊張する。最近はいくつものお店や占い師に会っていたので慣れたと思ったが、紹介されたのは初めてだ。俺は期待と緊張で心がいっぱいになっていた。
すると、ガチャ……と、部屋の扉が開く音がした。あまりの突然の出来事にビクッとなって扉に視線を向けると、俺よりも背の高い男性が入って来る所だった。
男性は「いかにも占い師です」といったようなフードつきの深緑のマントを身につけていた。ちなみにフードは目深く被っている。そして、口元はインドの踊り子がしているような黒いヴェールで隠れていて、俺に見えるのは目だけだった。はっきり言おう。怪しい。
ヤバい所に来てしまった。帰った方がいいだろうか。なんて考えている間に、彼は俺の前のテーブル越しに座ってしまった。
「……花村様ですね? 初めまして。私はルイと申します。今日はよろしくお願いいたします」
「あ……お、お願いいたします……」
男性は低く通るいい声でルイと名乗った。そして、自分の名刺を差し出した。これは紹介されたときにもらったモノとデザインが違っていたが、同じように「占い師 ルイ」と書かれていた。って事は、目の前の男性が紹介された占い師という事になる。女性じゃなかったのか……。
ルイと名乗った男性をよく見ると、右目が綺麗な青だった。カラコンだろうか。髪は……フードで隠れていて何色か見えない。でも、日本語を話しているし、片言でもないから日本人なのか。
やべえ。色々突っ込み所がありすぎて、何から聞いていいか分からない。
俺は頭の中がパニックになっていた。だが、そんな俺をよそに、彼は目の前でタロットをシャッフルし始め、すぐにカードを展開していた。ちなみにタロットの裏面はハート柄だった。意外に可愛いもの好きなんだろうか。初めて見る柄だった。
「……なるほど」
展開したカードを見てそう言った彼は、すぐにタロットを元に戻し、トントンとカードを揃えてクロスの上に置いたあと、俺の目をじっと見ながらこう言った。
「花村様……あなた、女運が悪いですね。今まで見てきた方の中でも最低最悪だ」
初めましてだというのにこの言葉。
確か、辻井の話では優しくて、背中を押してくれる人だったはず。
「は……?」
だが、俺に対して放たれたのは、ありえないほど辛辣な言葉だった。
本当に当たるのだろうか。いや、当たらなくてもいい。俺の結婚を後押しして欲しい。いざ、出陣。
俺はお店の扉を開け、その店へと入って行った。
「いらっしゃいませ」
扉を開けた瞬間、落ち着いた静かな声が聞こえた。どうやら受付の女性らしい。女性はワンピースを着ていた。
「ご予約の方でしょうか?」
「はい。花村と申します」
「少々お待ちください…花村様、辻井様のご紹介ですね。鑑定はルイ先生でよろしいでしょうか?」
「はい」
「それではこちらへどうぞ」
スタッフの女性は俺を個室に案内した。これは他の店でも同じ事だ。俺は広いテーブルの前に座るように促された。テーブルの上にはいかにも占い師が使うような水晶玉と、天然石だろうか。いくつかの色々な石と不思議な器具がタロットクロスの上に乗っていた。
「すみません…先生はもうすぐいらっしゃいますので、少々お待ちください」
女性はお茶を出したかと思うと、次の客の対応に向かっていった。
「……」
ドキドキする。ルイ先生……か。どんな鑑定をするんだろう。でも、辻井の奥さんの紹介だし、信頼できるよな。
初めての占い師に会うのは緊張する。最近はいくつものお店や占い師に会っていたので慣れたと思ったが、紹介されたのは初めてだ。俺は期待と緊張で心がいっぱいになっていた。
すると、ガチャ……と、部屋の扉が開く音がした。あまりの突然の出来事にビクッとなって扉に視線を向けると、俺よりも背の高い男性が入って来る所だった。
男性は「いかにも占い師です」といったようなフードつきの深緑のマントを身につけていた。ちなみにフードは目深く被っている。そして、口元はインドの踊り子がしているような黒いヴェールで隠れていて、俺に見えるのは目だけだった。はっきり言おう。怪しい。
ヤバい所に来てしまった。帰った方がいいだろうか。なんて考えている間に、彼は俺の前のテーブル越しに座ってしまった。
「……花村様ですね? 初めまして。私はルイと申します。今日はよろしくお願いいたします」
「あ……お、お願いいたします……」
男性は低く通るいい声でルイと名乗った。そして、自分の名刺を差し出した。これは紹介されたときにもらったモノとデザインが違っていたが、同じように「占い師 ルイ」と書かれていた。って事は、目の前の男性が紹介された占い師という事になる。女性じゃなかったのか……。
ルイと名乗った男性をよく見ると、右目が綺麗な青だった。カラコンだろうか。髪は……フードで隠れていて何色か見えない。でも、日本語を話しているし、片言でもないから日本人なのか。
やべえ。色々突っ込み所がありすぎて、何から聞いていいか分からない。
俺は頭の中がパニックになっていた。だが、そんな俺をよそに、彼は目の前でタロットをシャッフルし始め、すぐにカードを展開していた。ちなみにタロットの裏面はハート柄だった。意外に可愛いもの好きなんだろうか。初めて見る柄だった。
「……なるほど」
展開したカードを見てそう言った彼は、すぐにタロットを元に戻し、トントンとカードを揃えてクロスの上に置いたあと、俺の目をじっと見ながらこう言った。
「花村様……あなた、女運が悪いですね。今まで見てきた方の中でも最低最悪だ」
初めましてだというのにこの言葉。
確か、辻井の話では優しくて、背中を押してくれる人だったはず。
「は……?」
だが、俺に対して放たれたのは、ありえないほど辛辣な言葉だった。
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