オメガの騎士は愛される

マメ

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「初めて……いやいや、そんなバカな……こんな美貌で、騎士団の副長まで務めていた人が、セックスの経験がないなど……そんなバカな……」
「は、恥を承知で告白、したのです……! 早く……!」
 俺は頭の中で思っていた事を口にしていたらしい。彼は息を荒げながら、早くと俺を急かした。
 セックスの経験がない。それはどこまでの事を言っているのだろう。もしかしたら、女とはあるが、男とはない、という意味かもしれない。そう考えた俺は、すかさず聞いていた。
「本当に、初めてなのですか?」
「はい……」
「女性との経験は?」
「ありま、せん……」
「男性とは……」
「あるわけ、な……セッ……クス、自体が、初めてで、何をするかも、分からな……」
「……うっ」
 セックス自体が、何をするかも分からない……?
 俺は耳を疑った。彼は俺よりも年上で、騎士団にいたからには、仲間同士でそのような知識や話をしているものだと思っていた。なのに、彼は何をするかも分からないと言っている。本当に何も知らない、純粋無垢な人間なのだろうか。だとすれば、俺が彼の最初の男になる訳で、全ての初めての経験を教えられる……という事になる。
「俺が、リノの全ての初めてを……好きに、教えられる……」
 ああ……こんな幸福があっていいのだろうか。経験豊富だと思っていた想い人が、実は何も知らない無垢な人間で、自分が全てを教えられるなど……神が俺にプレゼントをくれたとしか思えない。
 彼は不思議そうに俺を見ていたが、先ほどよりも苦しそうに眉をしかめていた。俺はその姿すら愛おしくなって、気づけば彼の唇を奪い、首すじを噛んで番にした。


 彼がセックスを知らないのは本当だった。男同士は尻にペニスを挿れるのだと教えると、入らないと泣きそうな声で訴えてきた。そこで思わず出しそうになってしまったが、なんとか堪えるのに苦労した。
 他にも……彼が発情期の時はたどたどしい手つきで自慰をしていた事も判明した。何とか確認したくて俺のペニスで再現してもらったが、これで気持ち良くなれていたのかと思うほどに拙い動きだった。俺はそこで、たっぷりと本当のセックスがどれだけ気持ちがいいのかを教える事を決めた。
 彼は戸惑いながらも、俺を受け入れてくれた。何度も「私の熱を静めるために」と口にしていたから、それは違うのだと、セックスとは愛し合う者同士が互いの愛を確かめるためにする行為なのだと、洗脳に近いくらいにしつこく言い聞かせた。彼は最初こそ恐る恐るといった様子だったが、俺のペニスを受け入れてからは心が開放されたのか、オメガのフェロモンを思う存分溢れさせ、俺のアルファの本能を刺激した。
 彼のフェロモンに充てられた俺は簡単に理性を飛ばした。彼も同じだ。互いに互いのフェロモンに引きずられ、獣のように愛し合った。彼は受け止められない快楽により、何度も精を出し、意識を飛ばしていたが、意識がない彼を犯すのも楽しかった。カウイが聞けば鬼畜と呼ばれそうだが、愛しい人が腕の中にいたのだ。その時の俺は、彼を抱き潰す事で頭がいっぱいだった。
 彼が姓の知識を持たない事をいい事に、他人が聞けば非常識と言われそうな行為も沢山した。彼は素直にそのようなものだと受け止めてくれた。彼の純粋さにさらに感動した。
 彼はセックス以外でも無垢なのだろうか。そういえば、戦場で話した時と口調が違っている。よくある話だが、剣を持つとスイッチが入るタイプなのかもしれない。だが、俺は戦場での彼も、プライベートの……ベッドの中での彼も等しく愛しいと感じていた。これも愛の為せるわざなのだろう。自分がこんな気持ちになる日が来るなんて思わなかった。
 
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