31 / 44
<不安>
不安
しおりを挟む
悠歩はタクシーに乗り込んでいた。
グラントでは逃げ出してしまったのに、郷の「会いたい」という言葉一つで勇気が生まれる。
合鍵をお互い交換しているし、一緒に住もうと言ってくれている、なにより郷さんは俺を大切にしてくれている。
いままでセレブな人たちと付き合っていたから何だというのだろう。
郷さんはあの子に俺を紹介するときにはっきりと”恋人”だと言ってくれた。その一言でいいんじゃないか。
そう思うと1分1秒でもはやく郷に会いたい、抱きしめてキスしてそのあと二人でトロトロに溶け合いたい。
部屋の前に着いたのはすっかり深夜になっていたためチャイムを鳴らすことは憚られカードキーをスキャンして中にはいる。
静かな室内、寝ているのかも知れないと音を立てないように寝室に向かう。
こっそりとベッドに入っていたら、目が覚めた時に驚くだろうか?
びっくりする郷の顔を想像しながらベッドルームに入るとそこには、手足が長いスレンダーな青年が何も身につけずベッドで眠っている。
あまりの衝撃に身体がぐらつき背後の壁に手がついてしまいドンという衝撃音をならす。
「だれ、郷?帰ってきてくれたの」
そう言って、裸の栗栖が起き上がった。
声もだせず壁にもたれていると栗栖が悠歩に気付く
「なにしてんの?のぞき?てか、どうやって入ってきたわけ?」
「合鍵をもってるから・・・郷さんは?」
鍵を持っているという言葉に反応して不機嫌な表情になる
「ゴムを買いに行ってる、使いすぎて無くなっちゃったから」
「ゴム?」
「そう、だから早く帰ってくんない?それとも本気でのぞきの趣味があるわけ?」
郷がどこに行ったのかわからないが、言えることは二人が愛し合うこのベッドに裸の栗栖がいるということ。
さっきまでのキラキラした気持ちはすっかりくすんでどん底に落とされた。
わざわざタクシーを拾ってこんな所まで来て・・・バカみたいだ。
郷が戻ってきたとして、裸の栗栖とふたりで待つのは無理だ。
栗栖が戻ってきたらやっぱり俺とは付き合えなくなったと言われるかも知れない。
それなら、今はなにも見てないし聞いていない方が別れを先延ばしに出来る方法なのかも知れない。
深夜だと、流しのタクシーを見つけるのは至難のワザである。
タクシーを呼べるスマホのアプリを使ってタクシーに乗り込んだところでスマホに着信を知らせる振動があった。
一瞬、郷さんかと思いドキドキしながら画面を見ると母親からの電話だった。
「どうしたの?」
母親は取り乱しているようで、なかなか言葉が出てこない。
「母さん、どうしたの?深呼吸して」
少しすると
「父さんが・・・・」
グラントでは逃げ出してしまったのに、郷の「会いたい」という言葉一つで勇気が生まれる。
合鍵をお互い交換しているし、一緒に住もうと言ってくれている、なにより郷さんは俺を大切にしてくれている。
いままでセレブな人たちと付き合っていたから何だというのだろう。
郷さんはあの子に俺を紹介するときにはっきりと”恋人”だと言ってくれた。その一言でいいんじゃないか。
そう思うと1分1秒でもはやく郷に会いたい、抱きしめてキスしてそのあと二人でトロトロに溶け合いたい。
部屋の前に着いたのはすっかり深夜になっていたためチャイムを鳴らすことは憚られカードキーをスキャンして中にはいる。
静かな室内、寝ているのかも知れないと音を立てないように寝室に向かう。
こっそりとベッドに入っていたら、目が覚めた時に驚くだろうか?
びっくりする郷の顔を想像しながらベッドルームに入るとそこには、手足が長いスレンダーな青年が何も身につけずベッドで眠っている。
あまりの衝撃に身体がぐらつき背後の壁に手がついてしまいドンという衝撃音をならす。
「だれ、郷?帰ってきてくれたの」
そう言って、裸の栗栖が起き上がった。
声もだせず壁にもたれていると栗栖が悠歩に気付く
「なにしてんの?のぞき?てか、どうやって入ってきたわけ?」
「合鍵をもってるから・・・郷さんは?」
鍵を持っているという言葉に反応して不機嫌な表情になる
「ゴムを買いに行ってる、使いすぎて無くなっちゃったから」
「ゴム?」
「そう、だから早く帰ってくんない?それとも本気でのぞきの趣味があるわけ?」
郷がどこに行ったのかわからないが、言えることは二人が愛し合うこのベッドに裸の栗栖がいるということ。
さっきまでのキラキラした気持ちはすっかりくすんでどん底に落とされた。
わざわざタクシーを拾ってこんな所まで来て・・・バカみたいだ。
郷が戻ってきたとして、裸の栗栖とふたりで待つのは無理だ。
栗栖が戻ってきたらやっぱり俺とは付き合えなくなったと言われるかも知れない。
それなら、今はなにも見てないし聞いていない方が別れを先延ばしに出来る方法なのかも知れない。
深夜だと、流しのタクシーを見つけるのは至難のワザである。
タクシーを呼べるスマホのアプリを使ってタクシーに乗り込んだところでスマホに着信を知らせる振動があった。
一瞬、郷さんかと思いドキドキしながら画面を見ると母親からの電話だった。
「どうしたの?」
母親は取り乱しているようで、なかなか言葉が出てこない。
「母さん、どうしたの?深呼吸して」
少しすると
「父さんが・・・・」
1
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
ジン・デイジー
須藤慎弥
BL
十和(とわ)の好きなタイプは
清楚系美人。
小柄で親しみやすいキャラである十和は、
初恋の人を胸に秘めて彼女を作るもフラれてばかり。
おまけに大学卒業後に就職した会社も半年で辞める事になり、凹んでいた。
そんな中、ツイてないと嘆く十和の前に現れた
理想の人、バーテンダーの伊織(いおり)さん。
物言わぬ彼女の正体とは一体──。
※BLove様にて行われました
【BLove短編小説コンテスト「嘘からはじまる恋」】応募作で、優秀賞を頂きました。
※性描写は一頁目のみ
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
おいしいじかん
ストロングベリー
BL
愛重めの外国人バーテンダーと、IT系サラリーマンが織りなす甘くて優しい恋物語です。美味しい料理もいくつか登場します。しっとりしたBLが読みたい方に刺されば幸いです。
桜吹雪と泡沫の君
叶けい
BL
4月から新社会人として働き始めた名木透人は、高校時代から付き合っている年上の高校教師、宮城慶一と同棲して5年目。すっかりお互いが空気の様な存在で、恋人同士としてのときめきはなくなっていた。
慣れない会社勤めでてんてこ舞いになっている透人に、会社の先輩・渡辺裕斗が合コン参加を持ちかける。断り切れず合コンに出席した透人。そこで知り合った、桜色の髪の青年・桃瀬朔也と運命的な恋に落ちる。
だが朔也は、心臓に重い病気を抱えていた。
ふれて、とける。
花波橘果(はななみきっか)
BL
わけありイケメンバーテンダー×接触恐怖症の公務員。居場所探し系です。
【あらすじ】
軽い接触恐怖症がある比野和希(ひびのかずき)は、ある日、不良少年に襲われて倒れていたところを、通りかかったバーテンダー沢村慎一(さわむらしんいち)に助けられる。彼の店に連れていかれ、出された酒に酔って眠り込んでしまったことから、和希と慎一との間に不思議な縁が生まれ……。
慎一になら触られても怖くない。酒でもなんでも、少しずつ慣れていけばいいのだと言われ、ゆっくりと距離を縮めてゆく二人。
小さな縁をきっかけに、自分の居場所に出会うお話です。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
蜘蛛の巣
猫丸
BL
オメガバース作品/R18/全10話(7/23まで毎日20時公開)/真面目α✕不憫受け(Ω)
世木伊吹(Ω)は、孤独な少年時代を過ごし、自衛のためにβのフリをして生きてきた。だが、井雲知朱(α)に運命の番と認定されたことによって、取り繕っていた仮面が剥がれていく。必死に抗うが、逃げようとしても逃げられない忌まわしいΩという性。
混乱に陥る伊吹だったが、井雲や友人から無条件に与えられる優しさによって、張り詰めていた気持ちが緩み、徐々に心を許していく。
やっと自分も相手も受け入れられるようになって起こった伊吹と井雲を襲う悲劇と古い因縁。
伊吹も知らなかった、両親の本当の真実とは?
※ところどころ差別的発言・暴力的行為が出てくるので、そういった描写に不快感を持たれる方はご遠慮ください。
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる