からだからでもいい?

長月〜kugatu〜

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<モテ期?>

モテ期?

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いくつもの小さいお店が並んでいるうちの一つ、黒と白のツートンでまとめられた扉に【グラント】と、大きくもなく小さくもないサイズで書かれたプレートを、ライトで照らしただけの外観で、知らなければ入りにくい、隠れ家的なバーのカウンター席の奥。

目立たない席で椎崎悠歩は戸惑っていた。

「1人?よかったら隣で一緒に飲んでいい?」
こんがりと日に焼けて、むしろ黒光りしているレベルで、まるで筋肉自慢グランプリにでも出場しそうなほど、鍛え上げられた身体を強調するべく、身体に合ってなさそうなサイズのシャツを第3ボタンまで外してLEDがはめ込まれているじゃないかと思うほど、白く光る歯を見せてニッコりと悠歩に微笑みかける。

「えっと・・人を待ってるので・・」

「さっきから見てるけど、もう1時間は待ってるよね?君をこんなに待たせるなんて正気じゃないよ、そんな奴放っておいていいんじゃないの」

「いや・・・そんなことは」
あまりにもグイグイとくる男にどうしていいかわからないでいると

「彼、嫌がってんじゃん。空気読めよ」

背後から聞こえてきた声の主を見ると、悠歩と同じくらいの年齢でブランド物らしきスーツに"着られて"いる感たっぷりの、さっぱりした顔つきの青年だった。

「誰、お前。」

「待ち合わせの相手に決まってんじゃん」


「あの~、どなたかは知らないですが、俺が待っているのは・・」
悠歩が話そうとするのを遮るように、さっぱり系青年は

「君が気づいていないだけだよ、前世で約束した待ち合わせが今日なんだよ、ちょっと遅れちゃたかな?」

そういうと、悠歩の目の前に腕を伸ばして袖をクイっと引き上げると、海賊映画で宝箱を開けた時のような、キラキラな物体が現れた。
覗きこんでみると、文字盤にぎっしりと宝石がはめ込まれて、枠にもみっちりと宝石が並べられた、何時だかよくわからない時計だった。


どうしよう、この人・・・何を言っているのか、わからないんだけど・・・
そう思っていたところに、黒光りLED青年が
「何を言ってるのかわかんねーんだけど?」
と、怒るというより、呆れた感じで話す。

「だからさ~、今、運命の再会をしてるってこと、邪魔しないでくれる?」

「「はぁ?」」
さすがにわけが分からず、悠歩とLED青年の声が重なる。
気心の知れた友人なら、
ハッピーアイスクリーム!とか、言いたいところだが、どっちも見ず知らずの人間だ。


そもそも、今まで誰かに誘われるという経験が無く、いつもは悠歩から誘って気づくと単なるセフレだったり、ほぼオナホ扱いだったりしていた為、急にモテ期が来たところで対応する術を持っていなかった。

困惑して縮こまっていると、
LED青年が、
「お前が訳の分からんこと言ってるから、彼が萎縮したじゃないか!」
そう言って、キラキラウォッチ君に牽制しつつ、悠歩に白い歯を見せつけながら笑いかけ
「ここに来るのは初めて?よかったら、色々と教えてあげるよ」
と、隣に座ろうとするのをウォッチくんが阻止するという微妙な小競り合いが始まった。


今までも、この席に座ってたし、
多分この人たちよりも古い常連なんだけどな・・・
でも、ホントに困ったな
人を待っているのは本当だし、でも迷惑をかけられないから、なんとかちゃんと説明しないと
「あのぅ・・本当に人を待ってるので・・」

悠歩がおずおずと話すと、

「「だからさ」」
2人の声がシンクロする
「「ずいぶんと、待ってるみたいだけど」」

「だから、その・・俺は大丈夫なので・・・」
モテ期はいいが、さすがにしつこいのと、ここで誘われるのは気まずい、どうしようと思っているところに


「彼の待ち人は、もうこの店におりますから、心配は無用ですよ」

黒髪を後ろに流し、黒縁メガネをかけたバーテンダーがにこやかに、そしてきっぱりと
「彼が待っているのは、わたしですから目の前で恋人を誘うのは遠慮してもらいたいですね」

一瞬にして、極部にブリザードがおこる

「え?ゴウさんの恋人だったんですか!」
「初めてみた顔だったから、失礼しました」
そう、言い残して2人はそそくさと元の席に戻って行った。


「郷さん・・・あの・・・すみません」

郷は悠歩の耳元に唇を近づけて
「あとで、お仕置きが必要なようですね」
と、囁くと悠歩の全身の水分が一気に沸きがった。
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