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【今夜、話したいことがあるから部屋に行く】
朝、眼が覚めると、部長からラインが入っていた。
別れようとかそう言う話だろうか?
だとしたら話し合ったところで仕方がないし正直に言うと二人で会うのはキツイ 、情というのもあるけれど幸せそうな奥さんを見て自分の心の行き所がない。
【もう、プライベートで会うのはやめます。】
それだけ入力して送信した。
スマホをバッグに入れて駅まで歩く。
20分ほどで駅につき、スマホを改札にかざして通る。
エスカレーターに乗りながらふと、画面を見ると部長からの返信が入っていた。
普段は今夜部屋に行く と一行メッセが来るくらいで、僕が返事をしてもいつも既読スルーなのに、画面いっぱいに通知がはいっていた。
【どういうこと?】
【昨日は連絡しなくて悪かった】
【夜に行くから、その時に話をしよう】
別れ話じゃないのかな・・・
どちらにしても、もう会えない。
今まで、まわりが見えてなかった。部長の癒やしになればと思って居たが奥さんの様子とか子供が居るとかそんな姿をみてしまうとこの関係が良くないものだと思わざるを得ない。
奥さんが僕のことを知ったらきっと苦しむだろう。
僕が誰かを不幸にするとか・・・
無理だ 家庭が崩れる辛さを知っているから・・・
【拗ねているとかじゃないです。】
【もう、終わりにしたいです】
【会えません、来ないでください】
こんなに強く書いたら部長は怒るだろうか、でもせっかく父親のおかげで入社出来た会社だ。
ここをやめるのは嫌だし、仕事が無くなると借金も返せない・・・
そういえば、昨日の男、愛人契約とか・・・
生活の保証とか言っていたけど、手当とか出るんだろうか・・
って、からかわれただけだし・・・
その後も部長からLINEの返信があったがもう見るのはやめた。
庶務課の自分の席に着くと課長から呼び出しがあった。
「上層部の人事改編があって、今まで他社で活躍していた如月淳一くんが専務に就任することになった。それに伴い、辞令がでていて橋本君は秘書課に転属、そして如月専務の専属秘書となる」
そういうと、封筒から一枚の紙をとりだして哲に手渡した。
「これが辞令だ、今から自分のデスクを片付けて専務室に行ってくれ」
は? どういうこと?
「こんなに急なんですか?」
「まぁ、そうだな、しかし正規に辞令が出ているから従うしか無いだろう」
もちろん、逆らう気はない。というか僕には選択肢が無いし、そもそも課長に噛みついても仕方が無い。
「わかりました」
自分のデスクから必要なものを段ボールに入れて、庶務課の人たちに挨拶を済ませるとフロアーを出た。
どうして僕が秘書課なのだろう?
親父の工場は孫請けの零細企業で、大企業の子会社の経営不振の煽りを食らって倒産し親父は数日後、郊外のハイキングコースの崖下から遺体となって発見された。
事故死ということだが本当のところはわからない。
自殺では保険金が降りない可能性があるから親父は親父なりに家族を守ろうとしたのかもしれない。
大学四年で卒業を間近に控えていたが、もともと工場を継ぐ予定だった僕は就職活動もしてなかった。
債務整理をしながらも辛うじて大学は卒業したが、ここまでこの工場が逼迫していることに気づいていなかった。
工場で長く勤めていてくれた10人の従業員に親父の保険金から退職金を出し、残りを会社の借り入れ金の返済に充てたが到底足りず、担保に入っていた工場や自宅も手放すことになった。
それは実際お金を借りていたわけだから仕方がないことだが、沢山の思い出も誰か知らない人の元に渡ってしまったのが悲しい。
もともと精神の強くない母はこの一連の流れの中で心を病んでしまい、父の死から49日目に処方されていた睡眠薬を過剰に摂取して父の元へ行ってしまった。
借金はまだまだ残っている状況で、職を探さないといけないと思っていたところに、KISARAGIコーポレーションの人事部長を名乗る人物が僕の元にやってきた、それは親父から頼まれていたということでKISARAGIへの入社についての話だった。
就職も決まってなかったから、こんな大企業に就職できてありがたいという思いしかなく、二つ返事で入社を決めた。
今思えば親父とKISARAGIにどんな取り決めがあったのかは分からないが、借金を抱えて途方に暮れていた俺は渡りに船で庶務課での仕事にもやりがいを感じていた。
それがいきなり秘書課とか言われても、せいぜいが零細企業の社長である親父の補佐をしていたくらい。
大学では経営学部ではあったが実戦ではない。 重い気持ちでノロノロ歩いていたが、いつかは到着してしまう。
目の前には専務室の扉があった。
朝、眼が覚めると、部長からラインが入っていた。
別れようとかそう言う話だろうか?
だとしたら話し合ったところで仕方がないし正直に言うと二人で会うのはキツイ 、情というのもあるけれど幸せそうな奥さんを見て自分の心の行き所がない。
【もう、プライベートで会うのはやめます。】
それだけ入力して送信した。
スマホをバッグに入れて駅まで歩く。
20分ほどで駅につき、スマホを改札にかざして通る。
エスカレーターに乗りながらふと、画面を見ると部長からの返信が入っていた。
普段は今夜部屋に行く と一行メッセが来るくらいで、僕が返事をしてもいつも既読スルーなのに、画面いっぱいに通知がはいっていた。
【どういうこと?】
【昨日は連絡しなくて悪かった】
【夜に行くから、その時に話をしよう】
別れ話じゃないのかな・・・
どちらにしても、もう会えない。
今まで、まわりが見えてなかった。部長の癒やしになればと思って居たが奥さんの様子とか子供が居るとかそんな姿をみてしまうとこの関係が良くないものだと思わざるを得ない。
奥さんが僕のことを知ったらきっと苦しむだろう。
僕が誰かを不幸にするとか・・・
無理だ 家庭が崩れる辛さを知っているから・・・
【拗ねているとかじゃないです。】
【もう、終わりにしたいです】
【会えません、来ないでください】
こんなに強く書いたら部長は怒るだろうか、でもせっかく父親のおかげで入社出来た会社だ。
ここをやめるのは嫌だし、仕事が無くなると借金も返せない・・・
そういえば、昨日の男、愛人契約とか・・・
生活の保証とか言っていたけど、手当とか出るんだろうか・・
って、からかわれただけだし・・・
その後も部長からLINEの返信があったがもう見るのはやめた。
庶務課の自分の席に着くと課長から呼び出しがあった。
「上層部の人事改編があって、今まで他社で活躍していた如月淳一くんが専務に就任することになった。それに伴い、辞令がでていて橋本君は秘書課に転属、そして如月専務の専属秘書となる」
そういうと、封筒から一枚の紙をとりだして哲に手渡した。
「これが辞令だ、今から自分のデスクを片付けて専務室に行ってくれ」
は? どういうこと?
「こんなに急なんですか?」
「まぁ、そうだな、しかし正規に辞令が出ているから従うしか無いだろう」
もちろん、逆らう気はない。というか僕には選択肢が無いし、そもそも課長に噛みついても仕方が無い。
「わかりました」
自分のデスクから必要なものを段ボールに入れて、庶務課の人たちに挨拶を済ませるとフロアーを出た。
どうして僕が秘書課なのだろう?
親父の工場は孫請けの零細企業で、大企業の子会社の経営不振の煽りを食らって倒産し親父は数日後、郊外のハイキングコースの崖下から遺体となって発見された。
事故死ということだが本当のところはわからない。
自殺では保険金が降りない可能性があるから親父は親父なりに家族を守ろうとしたのかもしれない。
大学四年で卒業を間近に控えていたが、もともと工場を継ぐ予定だった僕は就職活動もしてなかった。
債務整理をしながらも辛うじて大学は卒業したが、ここまでこの工場が逼迫していることに気づいていなかった。
工場で長く勤めていてくれた10人の従業員に親父の保険金から退職金を出し、残りを会社の借り入れ金の返済に充てたが到底足りず、担保に入っていた工場や自宅も手放すことになった。
それは実際お金を借りていたわけだから仕方がないことだが、沢山の思い出も誰か知らない人の元に渡ってしまったのが悲しい。
もともと精神の強くない母はこの一連の流れの中で心を病んでしまい、父の死から49日目に処方されていた睡眠薬を過剰に摂取して父の元へ行ってしまった。
借金はまだまだ残っている状況で、職を探さないといけないと思っていたところに、KISARAGIコーポレーションの人事部長を名乗る人物が僕の元にやってきた、それは親父から頼まれていたということでKISARAGIへの入社についての話だった。
就職も決まってなかったから、こんな大企業に就職できてありがたいという思いしかなく、二つ返事で入社を決めた。
今思えば親父とKISARAGIにどんな取り決めがあったのかは分からないが、借金を抱えて途方に暮れていた俺は渡りに船で庶務課での仕事にもやりがいを感じていた。
それがいきなり秘書課とか言われても、せいぜいが零細企業の社長である親父の補佐をしていたくらい。
大学では経営学部ではあったが実戦ではない。 重い気持ちでノロノロ歩いていたが、いつかは到着してしまう。
目の前には専務室の扉があった。
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