執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

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絆を結う

絡まる想い

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華視点

「ど、どこに連れてくんですか!」
iDカードをタッチし解錠された部室のドアを開けた途端、私は今ガシッと腕を掴まれ廊下を今来た道を逆走させられている。ズルズルと引きずられそうになるのをどうにか身体を方向転換を試み、つんのめりそうな身体を進行方向へ向けつつ、この無理矢理な行為に苛立って説明を求める。
「二人きりになれるとこ。」
その美麗な顔を悲壮感たっぷりな表情で、縋り付かれるようにされてしまうと・・どうにも、つい・・許してしまいそうだ。
空き会議室のドアを開けると、グイグイと押し込められガチャンと閉められる。
「もう、加藤さん・・しか・・。」
眉をしならせ切羽詰まった様子で、ドアを背に追い詰められるような形で接近されると・・無駄に心拍数が上がってしまう。

「ううんっ(咳払い)。安藤さん!一体何なんですかっ!」
もう、どうしてこうも強引なの!
綺麗だからって・・どうなのよ。
「もう・・加藤さんしか話を聞ける人いないんだもん。もうまずったのよ。失敗したのよ!」
だーっと唸りつつ、綺麗な艶やかな髪を無造作に搔き上げる。
・・これ、安藤さんがやると・・無駄に色っぽい。・・あっ。
「安藤さん・・昨日とシャツ一緒?ですか?え、まずったって・・。昨日確か宮本くんと飲みに行ってましたよね。ええっ!まさかっ!」
あの自分の彼女をエロ美神と称する残念キラキラ忠犬が・・まさかの浮気!?
「ん?まさか?・・違う!違う!そっちじゃなくて、昨日は山城くんも一緒で・・。」
「えぇぇっ!まさかの山城さん!!」
「いやだから。たしかに山城くんの事なんだけど。」
気だるげなため息さえどきりとしてしまう。
私の頭の中にあのいつも冷静で落ち着き払った山城さんがワイシャツをはだけさせ、これまた服をはだけたキャミソール姿でお色気たっぷりの安藤さんとエロいキスをするといっためくるめく18禁映像が浮かんだ。
ひぇぇ!
あれか、山城さん乗っかられちゃった!?
それとも・・実は肉食男子だった?・・あ、でも。
「山城さん、年下女子とって・・?」
がばりと安藤さんに肩を掴まれる。
「やっぱり??あのちょっと小さめなっ!?黒目がちの大きな瞳で幼い顔立ちのっ!?ああっ!やっぱりぃ!!」
勢いに押されつつも、
「見た事あるんですか?」
と聞くと、今日の出勤までの話を一部始終聞かされた。

「つまり昨日宮本くんと山城さんと飲みに行って、呑んだくれた宮本さんとともに山城さん家に押しかけて、宮本くんは撃沈してフレックス出社で、今朝は山城くんと安藤さん二人で電車に乗ったら、その年下女子に出くわしたと?」

→→(気になる方はミモザの君 偶然のようで 前半 をご覧ください)

「そう、そうなのっ。そしたら、その女の子「おはようございます」って言ったらすぐに行っちゃって、どう見ても学生だったから「なになに?どんな知り合いなわけ?」って山城くんに聞いたらさ・・。」
がっくりとうなだれた安藤さん。
「き、聞いたら?どうしたんです?」
めっちゃ気になるじゃないですか。
「・・うだった。」
ぼそっと話すから聞き取れずに「え?」と聞くと、
「泣きそうだったの。」
えっ!今泣きそうなのは安藤さんだけど、あの山城さんがっ!?
あの超多忙で電話が鳴り止まない緊急時でも、受話器を肩で挟み取引先と交渉しながらパソコンで契約書を作成し、たまたま部室に来た和田部長に心配されても「ええ、こんなもんです。問題ありません。」とか言っちゃう、あの山城さんがっ!!
「それは・・やばい。」
「でしょっ!そうでしょ!」
ドアを背に悲壮感たっぷりで詰め寄られ、手を握られて・・私は一体どうしたら??
「「どうしよう・・。」」
うっかりハモったところで・・、

ガチャガチャガチャ、ドンドン!!と大きな音がした。

「「!!」」
な、なんなの!心臓に悪い!

「安藤っ!!そこにいるのは分かってる!華を返せっ!!」
ドスの効いた声が扉の向こうから聞こえた。
これは、、もしかしなくても・・ユウマさん・・。しかも超怒ってる。
「感づくの早すぎでしょ!加藤さん発信機でもつけられてんじゃないのっ!?」
「えっ!それは流石に・・。」
そう話す間にもドンドンと叩かれる扉。
「と、とりあえず鍵開けましょう!」
と手をドアに伸ばすと、手首を捕まれた。
「??」
と思ってるうちに、私の手首は安藤さんの腰へ引き寄せられぽすんと素敵な胸元へ抱き寄せられたところで、
バタンとドアが開けられる。

「っ!な、なにやってんだ!?」
安藤さんに謎なハグをされつつ、後ろでユウマさんの動揺した声がする。
「ちょっと、略奪??」
うふふと笑う安藤さん。
・・安藤さーん。先が思いやられます・・。


ユウマさん視点

出社すると、佐々木さんが狼狽えて挨拶もせずに掴みかかってきた。
「大変よっ!加藤さんがっ!!加藤さんが連れてかれちゃったわっ!」
「課長を取り合った女の争いよ!修羅場よ!どうするのー!?」
と、続きざまに食ってかかられる。
女の争い?
連れてかれた?
「まさか!総務のっ!?」
あのろくに仕事もしてなさそうなギラギラ肉食女子が華を!?
全身を真っ黒い感情が駆け巡ったところで、
「冴木課長。顔、ひどいわよ。相手は総務じゃなくて、安藤課長よ?全く、どうなってんの?過去の清算ぐらいきちっとできないと、捨てられるわよ?」
そう、離れた所から極寒のブリザードをふき荒らす美魔女谷口。
「ちゃんとしましたよ!って、そんなことよりどこに連れてったんですか?」
くそ、余計なことまで口が滑った。
「多分、左隣の小会議室。せいぜいすがりつくのね?」
クスッと冷たい笑みを向けられ言い返す言葉もない。その通り、どんな事態になったって華を離せはしないから。
「じゃあ、山城悪いがちょっと頼む・・な?」
もしかして、最悪な事態になっていたら、悪いが業務よりもこっちが優先だ。
ここは山城に・・と目を向けると・・。
デスクで一人心静かに黙想する山城の姿が。
またかっ!
こんな時に!
「宮本はっ!?」
「体調不良でフレックスですって。」と佐々木さん。
「ここはいいから、早く行きなさい。」
しっしとうざったそうにゼスチャーで促す美魔女に「恩に着ます」と告げ、急いで部室を出る。
そんな俺がやっとの思いでドアを開けて見たものは・・。
あのいつも人を巻き込んで嵐を起こす安藤に抱きつく華の姿。
「ちょっと、略奪?」
そう言って小首を傾げた安藤の人をおちょくった表情には怒りしか感じられない。
華の腕を引き寄せ、ウエストに腕を回し抱き寄せる。
「俺の。」
華を後ろから抱きしめる。
「ゆ、・・課長!」
焦った華の顔を覗き込むといつも通りにほおを真っ赤に染めていてホッとする。
「「かわいい。」」
は?とハモらせた安藤を見ると、真っ赤に染まった華をぐふぐふと見つめる不届き者と化していた。
「見るなっ。減る!!」
「ふふ。ほんと溺愛ね。妬けちゃうわ。」
ニヤッと笑った安藤を見て、ぴしりと華が固まるのが分かった。
ほんと、お前・・。
「やあね。違うわよ。冴木課長によ。こんな可愛い子捕まえちゃって羨ましいって言ってるのに。」
「おまえも自力でどうにかしろ。でも、周りを巻き込むなよ。」
イライラと言い返すと、
「ほらね、こんなんだから当てにならないと思って、加藤さんに相談してたんじゃない。」


「・・ということです。」と華の説明を聞き会議室で一部始終を聞き、宮本の体調不良の件と山城の黙想の件に納得がいった。
「で?どうすんだよ?」
「その女の子が山城くんの彼女ならちゃんと話せばいいと思うんだけど・・彼女じゃないんでしょ?」と安藤。
「誤解、してますよね。もし、女の子も山城さんの事好きだったら・・辛いですね。」と華。
「ああー!なんて間の悪さ。言ってくれれば、別々で電車に乗ったのに!」と安藤は吠えるが、あの山城が好きな女と電車に乗るから別々でお願いしますなんて言うわけない。
・・正直面倒くさい。が、山城の恋路が誤解でガラガラと崩れてしまっては気の毒だ。
「俺が山城に話してみるよ。」
人の恋愛相談なんて大したアドバイスが出来そうにないが。
「さすがです。冴木課長ならきっと山城さんも相談しやすいですし。」
そう言って可愛らしい笑みを浮かべる華につい甘い笑みを返していると、
「やってくれると思ってました!」
と、爽やかに笑う安藤。
こいつ、元々俺に動いて欲しくて、俺に直接言ったんじゃ無理だからわざわざ華を連れ出したのか?
「お前・・。」
いい加減にしろと言いかけたところで、
「お礼に20分、ここで打ち合わせしてていいですよ。業務は任せといてください!」
無駄に華やかな顔でウインクして出て行った。

バタンと扉が閉まると静まり返る小会議室。
「打ち合わせってなんかありました?」
振り返った華の鈍感さが愛しく思い、ぎゅっと華を抱きしめ自分の鼻先を華の髪に潜らせ華の匂いを堪能する。
「ユ、ユウマさん。ここ会社ですって!」
動揺する華が愛おしくてたまらない。
「これが打ち合わせだよ。・・恋人時間の。」
ちゅっちゅと華の頭に軽いキスをする間にも、華の身体をなぞる手の動きにはついエロさを含ませてしまう。
「ふあっ・・。だ、ダメです。恋人時間って、そんなの会社にはないですよっ!」
「くく。感じてんのに我慢しちゃうの?せっかく時間をもらったんだから、有効に使いたくない?」
ああ、軽くいたずらしようと思ってたんだけど・・。
無意識のうちに華の首元へと手を滑らせる。
びくんとする素直な身体。ここにキスして舐めあげたら、きっと止まんないだろうな。
ごくんと唾を飲み込んで、華の顔を見つめると、
「!!」
真っ赤な顔で、目は潤みうっすら口を開けた蕩けた華の表情。
「っく。」
ダイレクトに俺の下半身が攻撃される。
20分、20分でどこまで?
いつもは商談でつかうスペース。ドア一枚向こうの廊下は社員が歩く足音。
俺の目には、華の後ろにある会議室のソファ。
そのソファの背もたれを掴ませ、下着を足首に引っ掛けたまま前戯もそこそこに俺のをぐちゃぐちゃと突っ込んだら・・。
ぐわっと熱くなる下半身。
まずい、会社でこんなに興奮するなんて。
「はぁ。まずいな。」
自分の我慢のきかなさに情けなくなる。
「ユウマさん・・触っていい?」
えっ?と思ったと同時に、華が俺を抱きしめる。
あの華が会社で俺に抱きつくなんてっ!色々限界がっ。
「安藤さん、可愛い人ですね。」
俺の胸元に顔を埋めた華がポツリと呟く。
「綺麗で、仕事も出来て、可愛くて・・何だかちょっと、自信が・・。」
言い終える前に華をぎゅっと強く抱きしめる。

「ダメだよ。」
今更、離してなんてやれないから。
華のおとがいを持ち上げ、吐息を奪うようなキスをする。
この温もりを離せないから。
舌を絡ませ、唾液を交換し、華の甘さを味わう。
ちゅっともう一度バードキスをして唇を離して囁く。
「俺は華の。華は、俺の、だろ?」
ぐいっと抱き寄せると、隠しようもない俺の下半身の変化。
ビクッとする華に、
「俺がこんなになるのも華だけ。」
と情けない俺も伝える。だから、自信ないとか言わないで。
ぽっと顔を赤らめた華は・・、
そおっとおれの興奮しきったモノに触れる。
「は、華!ちょっと、、。」
焦って華の手に自分の手を添えるが、華の手は俺のモノを優しく包む。
「あっ。待って。ちょっと・・!!」
ズボン越しに俺のモノを擦り上げる華は、とうとうベルトに手をかける。
「華、それやばいから!」
止める俺に華は、
「ユウマさんが、私のって実感したい。」
潤んだ瞳で訴える華。
ーーー!
考えた。一瞬のうちに脳がトップギアで状況、残された時間、事後の事を。

「俺を信じられない?」

苦渋の末、俺は理性をとった。
今は、きちんと話すべきだ。
「そうじゃない、そうじゃないけど。」と俯く華。
「俺のこっから先の人生、全部華にあげたんだ。残り50年ぐらい?俺は華に俺を独占して欲しいんだ。」
「ユウマさん・・。」じわっと涙を浮かべる華。
「その代わり、俺も華を独占する。」
ニヤッと笑うとようやく華が笑った。

「ユウマさん、大好き。」
そういうと、華から甘いキスをしてきた。労わるように、確かめるように、ゆっくりとゆっくりと舌を絡め、互いの言葉にならない気持ちを溶け合えば、不安も少し小さくなる。
見つめ合い、抱きしめ合うと20分なんてすぐだ。
「行かなきゃ、ですね。」
「ああ。」
ほんとは抱きたかったが仕方ない。
「ユウマさん・・今日の夜、おうち行ってもいいですか?」
もじもじと聞いてくる華に襲いかかりたい気持ちをどうにか抑える。

「・・もちろん。その代わり、今日は優しく出来そうもない・・な。」
ああ、俺は今きっと今ヨダレを垂らした狼だ。

「今日は・・激しくてもいいから・・。」

ボソッと言う華に、ちょっと理性が切れかかったのは仕方がないことだ。

結局、俺たちが部室に戻ったのは30分後だった。















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